(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017500
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】歩行器用安全具及び歩行器
(51)【国際特許分類】
A61H 3/04 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
A61H3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121814
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】520133145
【氏名又は名称】株式会社大樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】金澤 真弓
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA24
4C046BB07
4C046CC01
4C046DD07
4C046DD26
4C046DD40
4C046DD41
4C046DD42
4C046DD43
4C046FF02
(57)【要約】
【課題】歩行器を使用した歩行訓練中の使用者の安全性を向上させることができる歩行器用安全具を提供する。
【解決手段】キャスタ又は車輪53付きの歩行器50に装着されて用いられる安全具であって、使用者14の腰周りに装着される腰部保持構造2と、使用時に歩行器50と腰部保持構造2の間に介設され、腰部保持構造2と歩行器50のフレーム51とを直接又は間接的につなぐ安全帯3と、少なくとも腰部保持構造2を歩行器50に対して着脱させる連結構造4とを備え、この連結構造4は、環状部5と、この環状部5に掛着されるレバー付きナスカンフック6と、を備えている歩行器用安全具1Bによる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスタ又は車輪付きの歩行器に取設されて用いられる安全具であって、
使用者の腰周りに装着される腰部保持構造と、
使用時に前記歩行器と前記腰部保持構造の間に介設され、前記腰部保持構造と前記歩行器のフレームとを直接又は間接的につなぐ安全帯と、
少なくとも前記腰部保持構造を前記歩行器に対して着脱させる連結構造と、を備え、
前記連結構造は、
環状部と、
前記環状部に掛着されるレバー付きナスカンフックと、を備えていることを特徴とする歩行器用安全具。
【請求項2】
前記腰部保持構造は、ズボンであることを特徴とする請求項1に記載の歩行器用安全具。
【請求項3】
前記腰部保持構造は、前記使用者が装着した際に腸骨周りを被覆するように配されるクッション材を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歩行器用安全具。
【請求項4】
前記腰部保持構造は、前記使用者が装着した際の前記腸骨周りに設けられ、前記クッション材を収容するポケットを備えていることを特徴とする請求項3に記載の歩行器用安全具。
【請求項5】
前記腰部保持構造は、介助用ハンドルを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の歩行器用安全具。
【請求項6】
前記安全帯の一の端部は、前記介助用ハンドルに直接又は間接的に連結され、
前記安全帯の他の端部側に、前記レバー付きナスカンフックを備え、
前記環状部は、前記歩行器のフレームに直接又は間接的に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の歩行器用安全具。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の歩行器用安全具と、
前記歩行器と、を備えていることを特徴とする歩行器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャスタ又は車輪付きの歩行器に取設して用いられ、歩行器の使用中に使用者から歩行器が意図せず離れてしまうのを防ぐことができる歩行器用安全具及び歩行器に関する。
【0002】
一般に、肢体不自由者や高齢者等は、自力で安定した歩行ができない場合に、移動やリハビリにおいてキャスタ又は車輪付きの歩行器を使用することがある。
このような歩行器の一例である従来公知の馬蹄型歩行器について
図9を参照しながら説明する。
図9(a)は従来公知の歩行器を背面側から見た斜視図であり、(b)は同歩行器の別の使用態様を示す斜視図である。
キャスタ又は車輪を備えた歩行器として、例えば
図9(a)に示すような馬蹄型歩行器50(以下、単に歩行器50という)が知られている。
このような歩行器50は、
図9(a)に示すように、例えば平面視コ字状をなすフレーム51の所望箇所に複数本の支柱52を備え、それぞれの支柱52の下端にキャスタ又は車輪53を備えてなるものである。また、歩行器50は、必要に応じてキャスタ又は車輪53の近傍にフレーム51’を備えている。
さらに、歩行器50は、
図9(b)に示すように、フレーム51上にスライド構造55を介して鉛直方向におけるレベル調節が可能な肘置マット54を備えている。
【0003】
一般に、このような歩行器50の安全な使用方法として、例えば下記のような使用方法が知られている。
より具体的には、まず、使用者が
図9(a),(b)に示すような歩行器50の平面視コ字状をなすフレーム51内に進入して肘置マット54上に腕を載置した際に、使用者の肘が直角になるようスライド構造55[
図9(b)を参照]により、肘置マット54の上面レベルを調節する。次いで、この状態で、使用者は手指で肘置マット54を持ってゆっくりと歩行器50とともに歩行する。
【0004】
ところが、使用者が上述のような安全な方法に依らず歩行器50を使用した場合、より具体的には、肘置マット54上に使用者が自らの腕を載置することなく、歩行器50にもたれかかるようにして歩行した場合に、意図せず使用者の身体から歩行器50が離間してしまうおそれがあった。この場合、不意に使用者が支えを失い、転倒するリスクが極めて高い。
また、歩行器50の使用者が特に身体機能の衰えた高齢者である場合は、万一使用者が転倒した際に骨折等の外傷を負ってしまった場合に、使用者がそのまま寝たきりになってしまうおそれがあった。
上述のような、従来公知のキャスタ又は車輪53を備えた歩行器50を使用する際の課題については、インターネット上においてヒヤリハットの事例が公開されている(参考URL; http://www.techno-aids.or.jp/hiyari/detail.php?id=68&p=4)。
そして、上述のような課題に対処するために、例えば以下に示すような先願が知られている。
【0005】
特許文献1には「歩行器用制動装置」という名称で、安定した歩行ができない人を補助するための歩行器に取付け可能な歩行器用制動装置に関する考案が開示されている。
特許文献1に開示される考案である歩行器用制動装置は、同文献中の
図1に記載される符号をそのまま用いて説明すると、中央に歩行者が立って歩行可能な空間を形成し、歩行者が歩行中にその上部を把持又は歩行者の体の一部が接触するようになっているフレーム2と、このフレーム2の下端に設けられている複数の車輪とを有する歩行器10に後付け可能となっている歩行器用制動装置1であって、歩行器10の進行方向と逆方向に歩行可能な空間から出た歩行者の体が接触する接触部材と、その接触部材に従動して接地面を押圧する下端押圧部とを有してなるものである。
上記構成の特許文献1に開示される考案によれば、既存の歩行器に容易に着脱可能であり、かつ歩行器の車輪のロックを防止し、しかも認知症患者等でも安全に運動することが可能な歩行器用制動装置を提供することができる。
【0006】
特許文献2には「歩行器」という名称で、足腰の弱い高齢者や肢体不自由者のリハビリテーションに適した歩行器に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される発明である歩行器は、使用者の周囲を取り囲む、下端部にキャスタが取付けられたフレームと、複数の吊下部材によってフレームに吊り下げられたサドルとを備え、上記フレームは、使用者が掴まる手摺部を有しているとともに、使用者が側方から進入または退出することができるように、周方向の一部が上端から下端にわたって開放されており、少なくとも一の吊下部材は、サドルまたはフレームに着脱自在に連結されていることを特徴とするものである。
上記構成の特許文献2に開示される発明によれば、使用者の周囲を取り囲むフレームに、サドルが吊り下げられているので、足腰や腕力が極めて弱い高齢者や肢体不自由者であっても、サドルに着座した状態で手摺部を掴んで上半身を支えることにより、無理なく歩行訓練の姿勢を保持することができる。また、歩行訓練は、高齢者等がサドルに着座した状態で、足を少しずつ動かすことによって行えばよいので、高齢者等や介助者に大きな負担を強いることがなく、座ることのできる高齢者等であれば一人で歩行訓練を行うことも可能である。
さらに、特許文献2に開示される発明によれば、サドルを吊り下げている少なくとも一の吊下部材は、サドルまたはフレームに着脱自在に連結されている。このため、その吊下部材をサドルまたはフレームから外した状態で高齢者等をフレーム内に進入させた後、外した吊下部材をサドルまたはフレームに連結することにより、高齢者等に大きな負担をかけることなく、サドルに着座させることができるというメリットも有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3225628号公報
【特許文献2】特開2002-282315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1に開示される考案では、歩行器の上フレーム(21)内に使用者が進入した後で、歩行器用制動装置(1)を適切な位置にセッティングする作業を使用者が自ら行うことは困難であると考えられる。
このため、特許文献1に開示される考案の場合は、その使用に際して介助者の手助けが必ず必要になる。このため、その利便性を向上し難いという課題があった。
さらに、特許文献1に開示される考案の場合は、歩行器を使用した歩行訓練中に、万一使用者が膝折れを起こしてしまった場合に、使用者の体重を支える手立てがない。この場合、歩行器を用いた歩行訓練中に、使用者が歩行器のフレーム(21,26)内で転倒して骨折するリスクがある。このため、特許文献1に開示される発明の場合は、使用時の安全性について依然として課題があった。
【0009】
特許文献2に開示される発明の場合は、サドル(30)を備えているので、先の特許文献1に開示される考案を用いる場合のように、歩行器を用いた使用者の歩行訓練中に、本体フレーム(13)内で使用者が転倒しても、使用者が骨折するリスクは低いと考えられる。
しかしながら、特許文献2に開示される発明の場合も、回動アーム(14)の閉動作及びその連結作業を、使用者が自ら行うことは困難であると考えられる。
また、特許文献2に開示される発明の場合は、サドル(30)や回動アーム(14)を備えた歩行器1自体を新調する必要がある。
つまり、特許文献2に開示される発明の場合は、先の
図9(a),(b)に示すような既存のキャスタ又は車輪53を備えた歩行器50を上手く活用することができないという課題があった。
【0010】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、キャスタ又は車輪を備える既存の歩行器に後付けすることができ、かつ手指の機能が衰えたり、視力が低下したりした高齢者や肢体不自由者でも自力で歩行器に着脱することができ、しかも歩行器を使用した歩行訓練中の使用者の安全性を向上させることができる歩行器用安全具及び歩行器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための第1の発明である歩行器用安全具は、キャスタ又は車輪付きの歩行器に取設されて用いられる安全具であって、使用者の腰周りに装着される腰部保持構造と、使用時に歩行器と腰部保持構造の間に介設され、腰部保持構造と歩行器のフレームとを直接又は間接的につなぐ安全帯と、少なくとも腰部保持構造を歩行器に対して着脱させる連結構造とを備え、この連結構造は、環状部と、この環状部に掛着されるレバー付きナスカンフックと、を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
上記構成の第1の発明において、安全帯は、使用者の腰周りに装着される腰部保持構造を歩行器に連結することで、歩行器の使用中に意図せず使用者の手の届かない位置に歩行器が離れていってしまうのを防ぐという作用を有する。この場合、使用者が、歩行器にもたれかかるようにして歩行する場合に、歩行器が意図せず使用者の身体から離れてしまうのを防ぐという作用を有する。
さらに、第1の発明において使用者の腰回りに装着される腰部保持構造は、上記安全帯とともに使用者の体重を支えるという作用を有する。つまり、歩行器を使用した歩行訓練中に、使用者が万一膝折れを起こした場合に、腰部保持構造及び安全帯を介して使用者の体重を、歩行器のフレームにより支えるという作用を有する。
また、連結構造が、環状部と、この環状部に掛着されるレバー付きナスカンフックにより構成されていることで、少なくとも腰部保持構造を歩行器に対して着脱する作業を、使用者が自ら行うことを可能にするという作用を有する。つまり、歩行器の使用者が、手指の機能や視力が衰えた高齢者や肢体不自由者であっても、歩行器に対する腰部保持構造の着脱を、介助者の手を借りることなく行えるようにするという作用を有する。
【0013】
なお、第1の発明における安全帯は、必ずしも帯状である必要はなく、十分な強度を有していれば、紐状でもよい。あるいは、安全帯として金属製のワイヤ等を使用することもできる。
また、第1の発明において連結構造を構成する「環状部」は、単体で「環」を形成するリング状の物体以外に、2以上のパーツにより切れ目のない「環構造」を形成するものでもよい。また、上述のような単体であるリング状の物体、あるいは2以上のパーツからなる環構造は、それ自体が変形性を有してもよいし、変形性を有しなくともよい。
さらに、連結構造を構成する「レバー付きナスカンフック」は、ナスカンフックの外縁に操作用のつまみやレバーを備えているものの総称であり、特定の形態のものを指し示すものではない。
【0014】
第2の発明である歩行器用安全具は、上述の第1の発明であって、腰部保持構造は、ズボンであることを特徴とするものである。
上記構成の第2の発明は、上述の第1の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第2の発明において腰部保持構造の態様をズボンとすることで、使用者による腰部保持構造の着脱を、衣服の着脱と同様に行うことを可能にするという作用を有する。
【0015】
第3の発明である歩行器用安全具は、上述の第1又は第2の発明であって、腰部保持構造は、使用者が装着した際に腸骨周りを被覆するように配されるクッション材を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第3の発明は、上述の第1又は第2の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第3の発明においてクッション材は、使用者が自らの腰回りに腰部保持構造を装着した状態で、かつ歩行器に腰部保持構造を連結していない時に、万一転倒してしまった場合でも、使用者の腸骨周りに作用する衝撃を緩和して、この部分を骨折するのを防ぐという作用を有する。
【0016】
第4の発明である歩行器用安全具は、上述の第3の発明であって、腰部保持構造は、使用者が装着した際の腸骨周りに設けられ、クッション材を収容するポケットを備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第4の発明は、上述の第3の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第4の発明において、腰部保持構造が、クッション材を収容するためのポケットを備えていることで、腰部保持構造へのクッション材の着脱を可能にするという作用を有する。
この場合、使用者のニーズに合わせて緩衝効果を有するクッション材を腰部保持構造に付加することができる。
また、腰部保持構造からクッション材を取外せることで、腰部保持構造のクリーニングが容易になる。
また、腰部保持構造に設けられるポケットからクッション材を取外した場合、このポケットを小物入れとして利用することもできる。
【0017】
第5の発明であるである歩行器用安全具は、上述の第1乃至第4のいずれかの発明であって、腰部保持構造は、介助用ハンドルを備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第5の発明は、上述の第1乃至第4のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第5の発明において腰部保持構造が環構造をなす介助用ハンドルを備えていることで、歩行器から取外した腰部保持構造を介助用品として使用することができる。
この場合、腰部保持構造に設けられる介助用ハンドルを介助者が把持することで、使用者の身体を引き起りたり、着座させたりする動作を安全かつ容易に行うことを可能にするという作用を有する。
【0018】
第6の発明であるである歩行器用安全具は、上述の第5の発明であって、安全帯の一の端部は、直接又は間接的に介助用ハンドルに連結され、安全帯の他の端部側に、レバー付きナスカンフックを備え、環状部は、歩行器のフレームに直接又は間接的に設けられていることを特徴とするものである。
上記構成の第6の発明は、上述の第5の発明による作用と同じ作用を有する。また、腰部保持構造に設けられる介助用ハンドルは、通常、被介助者の体重、すなわち歩行器の使用者の体重が作用しても支障が生じないように十分な強度を有している。
このため、この介助用ハンドルに安全帯の一の端部を直接又は間接的に連結することで、歩行器を用いた歩行訓練中に、万一使用者が歩行器のフレーム内で万一膝折れを起こして倒れ込んだ場合でも、腰部保持構造及び安全帯を介して使用者の体重を歩行器フレームでしっかりと支えることができる。
また、第6の発明では、既存の介助用ハンドル付きの介護ベルトや、介護用ズボンをそのまま腰部保持構造として転用することができる。
この場合、第6の発明である歩行器用安全具の製造コストを廉価にするという作用を有する。
【0019】
第7の発明であるである歩行器は、上述の第1乃至第6のいずれかの発明である歩行器用安全具と、キャスタ又は車輪付きの歩行器と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第7の発明において歩行器用安全具による作用は、上述の第1乃至第6のそれぞれの発明である歩行器用安全具による作用と同じである。また、歩行器は、使用者が歩行訓練をする際に、使用者の体重を支えてその転倒を防止するという作用を有する。
また、第7の発明によれば、従来公知のキャスタ又は車輪付きの歩行器に上述の第1乃至第6のいずれかの発明である歩行器用安全具を付加するだけで、その使用時の使用者の安全性を大幅に向上させるという作用を有する。
【発明の効果】
【0020】
上述のような第1の発明によれば、既存のキャスタ又は車輪付きの歩行器(例えば、馬蹄型歩行器等)に後付けできる歩行器用安全具を提供することができる。
この場合、既存の歩行器を使用した歩行訓練時の、使用者の安全性を大幅に向上させることができる。
つまり、第1の発明によれば、歩行器を使用して歩行訓練をする際に、使用者が誤って歩行器に寄りかかるようにして歩行した際に、使用者の身体から意図せず歩行器が離れていってしまうのを防ぐことができる。この場合、使用者が不意に支えを失って、転倒事故が起こるのを好適に防ぐことができる。
また、第1の発明によれば、歩行器を使用した歩行訓練中に、歩行器のフレーム内で使用者が万一膝折れを起こして倒れ込んだ場合でも、使用者の体重を腰部保持構造及び安全帯を介して、歩行器のフレームにより支えることができる。
この場合、歩行器のフレーム内で、使用者の転倒事故が起こるのを好適に防ぐことができる。
よって、第1の発明によれば、歩行器を使用した歩行訓練時の使用者の安全性を大幅に向上させることができる。
【0021】
さらに、第1の発明では、腰部保持構造を歩行器に対して着脱させるための連結構造が、環状部及びレバー付きナスカンフックの2種類のパーツにより構成されている。この場合、連結構造として例えばアジャスターバックルを用いる場合のように、使用者が狭小なメス構造にオス構造を差し込む動作を行う必要がない。
また、使用者が第1の発明の連結構造を操作して少なくとも腰部保持構造を歩行器に連結する際に、使用者は一方の手で環状部を保持し、他方の手でレバー付きナスカンフックを操作してこれらを連結すればよい。
この場合、連結構造を構成する環状部にレバー付きナスカンフックを連結する作業は、使用者の視覚によらず使用者の手指の感覚のみを頼って行うことができる。
また、レバー付きナスカンフックの開閉操作は、使用者の指先によってのみ行われるのではなく、使用者の手指全体を使用してその操作を行うことができる。
このため、第1の発明によれば、手指の機能が低下していたり、視力が低下したりした高齢者や肢体不自由者でも、自力でかつ容易に腰部保持構造を歩行器に連結することができる。
このことは、第1の発明における腰部保持構造を歩行器に着脱する際に、使用者が介助者の手を借りる必要がないことを意味している。よって、第1の発明によれば、使用者にとって使い勝手の良い歩行器用安全具を提供することができる。
さらに、第1の発明は、その構造が極めてシンプルであるため、その製造コストを廉価にできるというメリットも有する。
【0022】
第2の発明は、上述の第1の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第2の発明によれば、腰部保持構造がズボンであるので、使用者は衣服を着脱するのと同じ要領で腰部保持構造を自らの腰回りに着脱することができる。
よって、第2の発明によれば、使用者にとって着脱が容易な腰部保持構造を提供することができる。
また、腰部保持構造の外観が、通常の衣服に近いことで、使用者の着用時の違和感を軽減することができるという効果も有する。
【0023】
第3の発明は、上述の第1又は第2の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第3の発明によれば、使用者が自らの腰回りに腰部保持構造を装着した状態で、かつ歩行器に腰部保持構造を連結していない時に万一転倒してしまった場合でも、使用者の腸骨周りの骨を保護して、骨折するのを防ぐという効果を有する。
この結果、第3の発明によれば、使用者の腰回りに装着される腰部保持構造が歩行器に連結されていない状況でも、歩行者の身体の安全性を向上させることができる。
よって、第3の発明によれば、歩行器を用いた歩行訓練時と、その前後の使用者の身体の安全性を向上させることができる。
【0024】
第4の発明は、上述の第3の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第4の発明によれば、必要に応じて腰部保持構造からクッション材を取外すことができる。このため、第4の発明によれば、腰部保持構造に対してクリーニング等のメンテナンスを容易に行うことができる。
また、第4の発明によれば、必要に応じて性能の異なるクッション材に交換することができる。
この場合、第4の発明における腰部保持構造を、使用者側のニーズに応じてより高機能でかつ高付加価値な製品として提供したり、より廉価な製品として提供したりすることができる。
よって、第4の発明によれば、目的に応じてその性能を容易に変更できるという効果を有する。
【0025】
第5の発明は、上述の第1乃至第4のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第5の発明によれば、使用者が立ち上がったり、着座したりする際に介助が必要な場合に、介助者は介助用ハンドルを使用して使用者の介助を行うことができる。この場合、腰部保持構造が介助ハンドルを備えていない場合に比べて、容易かつ安全に使用者を立ち上がらせたり、着座させたりすることができる。
加えて、腰部保持構造が介助ハンドルを備えている場合は、使用者を介助する介助者の身体的な負担を大幅に軽減することができる。
よって、第5の発明の発明によれば、腰部保持構造を介助用品としても使用できるので、第5の発明の汎用性を一層向上させることができる。
【0026】
第6の発明は、上述の第5の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第6の発明によれば、介助用ハンドルを、腰部保持構造に安全帯を連結するための連結構造として使用することができる。
この場合、腰部保持構造に、安全帯を連結するための連結構造を別途設ける必要がない。よって、第6の発明における腰部保持構造の形態をシンプルにできる。
また、第6の発明によれば、市販品である介助用ハンドルを備えた介助用ベルトや介助用ズボンを、無加工のまま腰部保持構造に転用することができる。これにより、第6の発明の製造コストを廉価にできる。
よって、使用者が既に介助用ハンドルを備えた介助用ベルトや介助用ズボンを所有している場合は、レバー付きナスカンフックを備えかつ腰部保持構造の介助用ハンドルに接続可能な安全帯、環状部、並びに必要に応じて設けられる歩行器への環状部の固定構造を別途準備するだけで、第6の発明として用いることができる。
この場合は、第6の発明の一部、すなわち介助用ハンドルを備えた腰部保持構造以外を、別体パーツとして準備すればよいので、第6の発明の実施に要するコストを一層廉価にできる上、第6の発明の利用を一層促進することができる。
したがって、第6の発明によれば、利便性、安全性並びに経済性に優れた歩行器用安全具を提供することができる。
【0027】
第7の発明は、上述のような第1乃至第6のいずれかの発明である歩行器用安全具を備えたキャスタ又は車輪付きの歩行器を物の発明として特定したものであり、その効果は、第1乃至第6のそれぞれの発明による効果と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施例1に係る歩行器用安全具の使用状態を示す背面図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る歩行器用安全具における腰部保持構造、安全帯及び連結構造(の一部)の斜視図である。
【
図3】(a)本発明の実施例1に係る歩行器用安全具に用いられるレバー付きナスカンフックの閉状態を示す平面図であり、(b)同レバー付きナスカンフックの開状態を示す平面図である。
【
図4】(a)実施例1の第1変形例に係る歩行器用安全具の使用状態を示す背面図であり、(b)実施例1の第2変形例に係る歩行器用安全具の使用状態を示す背面図である。
【
図5】実施例1の第3変形例に係る歩行器用安全具の使用状態を示す背面図である。
【
図6】本発明の実施例2に係る歩行器用安全具の使用状態を示す背面図である。
【
図7】本発明の実施例2に係る歩行器用安全具における腰部保持構造、安全帯及び連結構造(の一部)の斜視図である。
【
図8】本発明の実施例3に係る歩行器用安全具における腰部保持構造、安全帯及び連結構造(の一部)の斜視図である。
【
図9】(a)従来公知の歩行器を背面側から見た斜視図であり、(b)同歩行器の別の使用態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態に係る歩行器用安全具及びそれを備えた歩行器について
図1乃至
図8を参照しながら説明する。
【0030】
[1;実施例1]
<1-1;実施例1の基本構成について>
はじめに、
図1乃至
図3を参照しながら実施例1に係る歩行器用安全具について説明する。
図1は本発明の実施例1に係る歩行器用安全具の使用状態を示す背面図である。また、
図2は同歩行器用安全具における腰部保持構造、安全帯及び連結構造の一部の斜視図である。さらに、
図3(a)は同歩行器用安全具に用いられるレバー付きナスカンフックの閉状態を示す平面図であり、(b)は同レバー付きナスカンフックの開状態を示す平面図である。なお、先の
図9に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。また、本実施形態では、本発明品である歩行器用安全具1A
1及びその変形例を、先の
図9(a),(b)に示す馬蹄型歩行器に取設して用いる場合を例に挙げて説明しているが、本発明品である歩行器用安全具及びその変形例に係る歩行器用安全具は、
図9に示す以外のキャスタ又は車輪を備えた従来公知又は既存の歩行器に取設して用いることができる。
【0031】
図1は実施例1に係る歩行器用安全具1A
1を、先の
図9(a)に示す状態の歩行器50に取付けた状態でその背面側から、つまり先の
図9(a)中の符号Xで示す方向から見た図である。
図1及び
図2に示すように、実施例1に係る歩行器用安全具1A
1は、例えば使用者14の腰周りに周設される腰部保持構造2と、使用時に歩行器50と腰部保持構造2の間に介設され、腰部保持構造2と歩行器50のフレーム51を直接又は間接的につなぐ安全帯3と、少なくとも腰部保持構造2を歩行器50に対して着脱させる連結構造4と、を備えてなるものである。なお、実施例1に係る歩行器用安全具1A
1は、既存の歩行器50に後付けしてもよいし、新品の歩行器50に予め備えていてもよい。
また、上述の実施例1に係る歩行器用安全具1A
1における連結構造4は、例えば
図1に示すように、歩行器50のフレーム51に直接又は間接的に取設される環状部5と、安全帯3の腰部保持構造2に接続されない側の他の端部3b側に設けられ、環状部5に着脱可能に掛着されるレバー付きナスカンフック6を備えている。
【0032】
なお、後段において図面を参照しながら説明するが、本発明に係る歩行器用安全具(例えば歩行器用安全具1A
1等)における連結構造4は、歩行器50と腰部保持構造2の間に架設される安全帯3のいずれかの端部、又は安全帯3の胴部(端部以外)に設けられている。
そして、本発明に係る歩行器用安全具(例えば歩行器用安全具1A
1等)が、連結構造4を備えていることで、腰部保持構造2を、あるいは腰部保持構造2及び安全帯3の少なくとも一部を、歩行器50に着脱することができる。
より具体的には、例えば
図1に示す歩行器用安全具1A
1では連結構造4を備えていることで、腰部保持構造2及び安全帯3の両者を、歩行器50に着脱することができる。
【0033】
なお、
図1及び
図2に示す実施例1に係る歩行器用安全具1A
1では、腰部保持構造2として例えば腰ベルト2aを使用する場合を例に挙げて説明しているが、腰部保持構造2の態様を腰ベルト2aに特定する必要は必ずしもない。なお、腰部保持構造2の他の態様の例については、後段において図面を参照しながら詳細に説明する。
さらに、
図1及び
図2に示す実施例1に係る歩行器用安全具1A
1では、使用者14が腰部保持構造2を装着した際の体側にそれぞれループ状の接続部8を備え、この接続部8に安全帯3を連結する場合を例に挙げて説明しているが、安全帯3の連結構造は接続部8でなくともよい。なお、この点についても後段において図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
さらに、上述の実施例1に係る歩行器用安全具1A
1の連結構造4を構成するレバー付きナスカンフック6は、例えば
図3(a)に示すように、開閉可能な環構造16の一部をなす本体部6aと、同じく開閉可能な環構造16の一部をなす回動部6bと、この回動部6bを本体部6aに回動可能に軸支する回動軸6cとを備えている。
さらに、レバー付きナスカンフック6は、回動部6bに突起状の操作レバー6dを備えている。これにより、使用者14は自らの手指で容易に回動部6bの開閉動作を行うことができる。
また、
図3中には特に示していないが、レバー付きナスカンフック6は、例えば本体部6a内に、回動部6bを常時閉状態となるよう付勢する弾性部材として例えばバネ等を備えている。
このようなレバー付きナスカンフック6は、操作レバー6dを
図3(a)中の矢印方向に押圧することで、回動部6bが回動軸6cを基軸に回動する。この結果、
図3(b)に示すように本体部6a及び回動部6bの間に切れ目が生じて、環構造16への環状部5(図示せず)の出し入れが可能になる。
加えて、レバー付きナスカンフック6は、環構造16を形成しない本体部6aの端部に、必要に応じて接続リング6eを備えていてもよい。なお、この接続リング6eは任意選択構成要素である。
そして、レバー付きナスカンフック6が接続リング6eを備えている場合は、レバー付きナスカンフック6に安全帯3等を容易に連結することができる。
なお、レバー付きナスカンフック6が接続リング6eを備えない場合は、例えばレバー付きナスカンフック6に一体に金属板を延設しておき、リベット等を用いて安全帯3を連結してもよい。
【0035】
<1-2;実施例1に係る歩行器用安全具の使用方法について>
上述のような実施例1に係る歩行器用安全具1A
1の使用方法について
図1及び
図2を参照しながら説明する。
まず、実施例1に係る歩行器用安全具1A
1を使用するための準備作業として、歩行器50に連結構造4を構成する環状部5を取設する。
より具体的には、例えば樹脂製繊維材等からなり十分な強度と耐久性を有するバンド7aと、アジャスターバックル7b等の連結部材により環構造を形成することができる固定具7を用いて、本発明に係る環状部5を歩行器50のフレーム51に固定する。なお、本発明に係る環状部5は単一の部材から構成されるものでもよいし、複数の部材を連結して環状にしたものでもよい。
また、実施例1に係る歩行器用安全具1A
1の取付け対象である歩行器50が、例えば他の付属品の着脱を目的として、例えばフレーム51等に予め環状部5に相当する構成を備えている場合は、本発明に係る環状部5を、あるいは環状部5及び固定具7の設置を省略することができる。この場合、歩行器50に予め設けられている環状部が、本発明に係る歩行器用安全具1A
1等における連結構造4の環状部5となる。
ただし、歩行器50に予め備えられる環状部5に相当する構成、あるいは環状部5及び固定具7に相当する構成は、使用者14の体重を支えることができる程度の十分な強度を有している必要がある。
【0036】
さらに、本発明に係る環状部5を歩行器50に着脱可能に取設するための固定具7は、歩行器50において例えばフレーム51と支柱52が交差している箇所に設置するとよい。この場合、歩行器50から意図せず固定具7及び環状部5が外れてしまうのを防止できる。
なお、固定具7の態様が、例えば
図1に示すようなバンド7a及びアジャスターバックル7bからなる環構造以外である場合、すなわち固定具7がクランプ等の金具である場合は、その取付け位置は必ずしもフレーム51と支柱52の交差部分でなくともよい。
さらに、歩行器50における固定具7の位置ずれを防ぐための何らかの構造を備えている場合も、固定具7の取設箇所はフレーム51と支柱52が交差している箇所に限定する必要はない。
【0037】
次に、使用者14はベルト状の腰部保持構造2を自らの腰回りに巻き付けるなどして装着する。この時、ベルト状の腰部保持構造2の端部同士の固定は、例えば図示しない面ファスナ等により行ってもよいし、これに加えて
図2に示すようなアジャスターバックル等を備えた外れ防止構造2bを備えていてもよい。なお、腰ベルト2aに面ファスナ等を設けることなく外れ防止構造2bのみを備えていてもよい。さらに、腰部保持構造2である腰ベルト2aの端部同士の固定は、上記以外の従来公知の固定技術を支障なく採用することができる。
また、使用者14がその腰回りに腰部保持構造2を装着した場合、使用者14の左右それぞれの体側に安全帯3が配置されるようにする。
【0038】
この後、腰部保持構造2を装着した使用者14は、先の
図9(a)又は
図9(b)に示す歩行器50のフレーム51の開放端からフレーム51の中空部に進入して、腰部保持構造2に連結されている安全帯3の他の端部3bに取設されるレバー付きナスカンフック6を手に取り、このレバー付きナスカンフック6を自らの手指で開操作して[
図3(b)を参照]、歩行器50のフレーム51に取設されている環状部5にレバー付きナスカンフック6を連結する。
また、腰部保持構造2に連結されている他の安全帯3の他の端部3bに取設されるレバー付きナスカンフック6も同様にして、歩行器50のフレーム51に取設されている他の環状部5に連結する。
この結果、使用者14の腰回りに装着されている腰部保持構造2が歩行器50に安全帯3を介して連結される。
なお、歩行器50と腰部保持構造2の連結状態を解除するには、上記手順を逆に行えばよい。
【0039】
<1-3;実施例1の基本構成による作用・効果について>
上述のような実施例1に係る歩行器用安全具1A1によれば、キャスタ又は車輪53付きの歩行器50(例えば、馬蹄型歩行器等)に後付けすることができる歩行器用安全具を提供することができる。
この場合、従来公知のキャスタ又は車輪53を備えた歩行器50を用いて歩行訓練をする際に、使用者14の腰回りに歩行器50のフレーム51を、安全帯3を介して連結しておくことができる。
このため、使用者14が正しく歩行器50を使用しない場合でも、つまり使用者14が誤って歩行器に寄りかかるようにして歩行しても、使用者14の身体から意図せず歩行器が離れていってしまうのを防ぐことができる。この場合、使用者14が不意に支えを失って転倒事故を起こすのを防止できる。
【0040】
また、実施例1に係る歩行器用安全具1A1によれば、歩行器50を使用した歩行訓練中に、フレーム51内で使用者14が万一膝折れを起こして倒れ込んだ場合でも、使用者14の体重を腰部保持構造2及び安全帯3を介して、フレーム51により支えることができる。この場合、歩行器50のフレーム51内で、使用者14が転倒事故を起こすのを防ぐことができる。
よって、上述のような実施例1に係る歩行器用安全具1A1によれば、既存のキャスタ又は車輪53付きの歩行器50を使用して歩行訓練をする際の、使用者14の安全性を大幅に向上させることができる。
【0041】
さらに、実施例1に係る歩行器用安全具1A
1では、腰部保持構造2を歩行器50に着脱させる連結構造4が、
図1に示すように、環状部5及びレバー付きナスカンフック6により構成されている。
他方、連結構造4として例えばアジャスターバックルを用いる場合は、使用者14はアジャスターバックルの狭小なメス構造にオス構造を差し込む動作を行う必要があり、極めて煩雑であった。この場合、手指の機能が低下していたり、視力が低下していたりする高齢者や肢体不自由者が自力でアジャスターバックルの連結やその解除を行うことが難しく、結果として歩行器50への腰部保持構造2の着脱を使用者14が自ら行うことができない場合があった。このことは、使用者14が歩行器50を使用した歩行訓練を行う際に、必ず介助者の手助けが必要になることを意味し、歩行器50の利便性を向上し難かった。
【0042】
これに対して、実施例1に係る歩行器用安全具1A1のように連結構造4として環状部5とレバー付きナスカンフック6の組合せを用いる場合は、使用者14は自らの片方の手で環状部5を保持し、他方の手でレバー付きナスカンフック6を操作することでこれらを容易に連結したり、その状態を解除したりすることができる。
この場合、レバー付きナスカンフック6は、指先だけでなく手指全体を使用してその開操作を行うことができるので、指先の機能が低下している使用者14でもその操作が容易である。
また、レバー付きナスカンフック6の連結対象が環状部5であることで、使用者14はレバー付きナスカンフック6の連結対象を触覚のみで認識することも可能である。このことは、視力が低下した使用者14でも自力でかつ容易に、連結構造4の連結作業とその解除を行えることを意味している。
【0043】
よって、実施例1に係る歩行器用安全具1A1によれば、連結構造4として環状部5とレバー付きナスカンフック6の組合せを用いることで、手指の機能が低下していたり、視力が低下したりした高齢者や肢体不自由者でも、自力でかつ容易に腰部保持構造2を歩行器50に連結したり、その状態を解除したりすることができる。
さらに、実施例1に係る歩行器用安全具1A1は、その構造が極めてシンプルであるため、その製造コストを廉価にできる。
また、実施例1に係る歩行器用安全具1A1は、既存の歩行器(例えば歩行器50等)に後付けできるので、歩行器用安全具1A1の使用に際し、安全具付きの新たな歩行器(例えば特許文献2を参照)を購入する必要がない。
よって、実施例1に係る歩行器用安全具1A1によれば、使用者14に歩行器50を連結したり、その状態を解除したりする動作を容易に行うことができ、設置に要するコストが廉価で、しかも歩行器用安全具1A1を備えない歩行器50を用いて歩行訓練する場合に比べて使用者14の歩行器50の使用時の安全性を大幅に向上させることができる。
【0044】
<1-4;連結構造の変形例について>
ここで、
図4及び
図5を参照しながら実施例1に係る歩行器用安全具1A
1における連結構造4の配置に関する様々な変形例について説明する。
図4(a)は実施例1の第1変形例に係る歩行器用安全具の使用状態を示す背面図であり、(b)は実施例1の第2変形例に係る歩行器用安全具の使用状態を示す背面図である。なお、
図1乃至
図3及び
図9に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図4(a)に示すように、実施例1の第1変形例に係る歩行器用安全具1A
2は、先の
図1に示す歩行器用安全具1A
1の連結構造4を構成するレバー付きナスカンフック6と環状部5の配置を逆転させたものである。
すなわち、第1変形例に係る歩行器用安全具1A
2は、
図4(a)に示すように、安全帯3の他の端部3b側に環状部5を、また歩行器50に直接又は間接的に設けられるレバー付きナスカンフック6を備えている。なお、
図4(a)では、レバー付きナスカンフック6を、固定具7を用いて間接的に歩行器50のフレーム51に取設している場合を例に挙げて説明している。
この場合も、上述の実施例1に係る歩行器用安全具1A
1を用いる場合と同様の作用・効果を奏する。
【0045】
さらに、
図4(b)に示すように、実施例1の第2変形例に係る歩行器用安全具1A
3は、歩行器50に固定具7を用いて安全帯3の端部(一の端部3a)を連結するとともに、歩行器50に連結されない側の安全帯3の端部(他の端部3b)と腰部保持構造2の間に連結構造4を設けている。
なお、
図4(b)では、歩行器50のフレーム51に固定具7を用いて間接的に安全帯3を連結する場合を例に挙げて説明しているが、例えば安全帯3の一の端部3aに大きなループを設けておき、このループをフレーム51にくぐらせながら掛止させることで、フレーム51に直接安全帯3を取設することもできる(図示せず)。
さらに、
図4(b)では、歩行器50に連結されない側の安全帯3の端部側、つまり
図4(b)中における他の端部3b側にレバー付きナスカンフック6を、また腰部保持構造2側に環状部5をそれぞれ設ける場合を例に挙げて説明しているが、レバー付きナスカンフック6と環状部5の配置を逆転させてもよい。
いずれの場合も、先の歩行器用安全具1A
1を用いる場合と同様の作用・効果を奏する。
【0046】
また、
図5は実施例1の第3変形例に係る歩行器用安全具の使用状態を示す背面図である。なお、
図1乃至
図4及び
図9に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図5に示すように、腰部保持構造2である例えば腰ベルト2aは、使用者14が腰回りに装着した際に、その体側に、又は腰ベルト2aを使用者14の正面又は背面側から見た場合の体側寄りに、介助用ハンドル9を備えている。また、この介助用ハンドル9は、上述の部位のそれぞれに少なくとも1(複数可)備えていればよい。
そして、腰部保持構造2が、上述のような介助用ハンドル9を備える場合に、
図5に示すように、この介助用ハンドル9に直接又は間接的に安全帯3を連結してもよい。つまり、端部(他の端部3b)にレバー付きナスカンフック6を備えた安全帯3の一の端部3aを、腰部保持構造2に設けられる介助用ハンドル9に連結してもよい。
【0047】
より詳細には、実施例1の第3変形例に係る歩行器用安全具1A4において、介助用ハンドル9に安全帯3を連結する方法としては、例えば安全帯3の一の端部3a側に、紐又はバンドからなるループ(環構造)を形成しておき、このループを介助用ハンドル9にくぐらせるようにして安全帯3の一の端部3aを介助用ハンドル9に掛止する方法がある(パターン1)。
あるいは、図示しない金属製の環状具、例えばナスカンフック等を用いて安全帯3の一の端部3aと腰部保持構造2に設けられる介助用ハンドル9とを連結してもよい(パターン2)。
実施例1の第3変形例に係る腰部保持構造2に設けられる介助用ハンドル9は、介助者が腰部保持構造2を装着した使用者14(被介助者)の立ち上り動作や着座動作を補助する際の操作用ハンドルとして用いられる。このため、腰部保持構造2に設けられる介助用ハンドル9は、通常、使用者14の体重を支えられるよう十分な強度を有している。このため、腰部保持構造2に設けられる介助用ハンドル9は、安全帯3の連結対象として特に適している。
【0048】
また、腰部保持構造2に設けられる介助用ハンドル9への安全帯3の連結方法として特に上記パターン1を採用する場合(
図5を参照)は、介助用ハンドル9に金具等を用いることなく安全帯3を着脱可能に連結することができる。
さらに、腰部保持構造2に設けられる介助用ハンドル9への安全帯3の連結方法として特に上記パターン2を採用する場合(図示せず)は、介助用ハンドル9への安全帯3の連結をワンタッチで行うことができる。
【0049】
そして、いずれの場合も、腰部保持構造2に設けられる介助用ハンドル9に安全帯3を連結する場合は、既存の介助用ハンドル9付きの腰ベルト等の介護用品を、無加工のまま実施例1の第3変形例に係る歩行器用安全具1A4に転用することができる。
この場合、連結構造4と安全帯3の組合せ、あるいはこれらに加えて必要に応じて連結構造4の一部を歩行器50に固定するための固定具(例えば固定具7等)を、介助用ハンドル9付きの腰部保持構造2(例えば腰ベルト2a等)の付属品として提供するだけで、実施例1の第3変形例に係る歩行器用安全具1A4を実施することができる。この場合、実施例1の変形例に係る歩行器用安全具1A4との製造に要するコスト及び手間を大幅に省くことができる。
さらに、この場合は、既存の介助用ハンドル9付きの腰ベルト2a等の介護用品を、従来公知の介助用の介護用品としても、本発明に係る歩行器用安全具としても利用できるので、介助用ハンドル9付きの腰ベルト2a等の用途を広げることができる。
【0050】
なお、
図5では介助用ハンドル9を備える腰部保持構造2の態様が例えば腰ベルト2aである場合を例に挙げて説明しているが、腰部保持構造2の態様は腰ベルト2a以外にも介護用のズボンや腰巻でもよい。
あるいは、
図5に示す腰ベルト2aは、この腰ベルト2aを使用者14の腰回りに装着した際に、使用者14の股下に配設される第2の安全帯(図示せず)を備えていてもよい。
なお、実施例1に係る腰部保持構造2が特に腰ベルト2aであり、かつこの腰ベルト2aが上述の第2の安全帯を備えている場合(
図1乃至
図5を参照)は、歩行器50の使用中に使用者14が万一転倒しそうになった場合に、腰ベルト2aのみを装着している場合に比べてより確実に使用者14の体重を歩行器50のフレーム51で支えることができる。つまり、腰ベルト2aが意図せず使用者14の腰回りから外れてしまい、使用者14が転倒してしまうという事態を確実に回避することができる。
【0051】
また、
図5では安全帯3の他の端部3bにレバー付きナスカンフック6を備えている場合を例に挙げて説明しているが、
図5における環状部5とレバー付きナスカンフック6の配置を逆転させた場合でも同様の作用・効果を奏する。
さらに、
図1乃至
図5に示すように、実施例1に係る腰部保持構造2が介助用ハンドル9を備えている場合、この介助用ハンドル9は使用者14の胴回り(腰回り)と略平行に、より具体的には使用者14の体軸に対して直交(略直交の概念も含む)する方向に、取設されていてもよい。この場合、この介助用ハンドル9を介助者が把持して、使用者14の動作を補助する際に、介助者の手や腕に力を入り易くすることができる。この場合、介助者が効率良く使用者14の動作を補助することができる。
また、特に図示しないが、実施例1に係る歩行器用安全具1A
1を構成する連結構造4は、安全帯3の端部側に設ける必要は必ずしもなく、安全帯3の胴部(端部以外)に設けてもよい。この場合も、実施例1及びその変形例に係る1A
1~1A
4等と同様の作用・効果を奏する。
【0052】
<1-5;実施例1の細部構造について>
実施例1及びその変形例に係る歩行器用安全具1A1~1A4、或いは図示しない実施例1の変形例において、連結構造4を構成する環状部5や、レバー付きナスカンフック6のサイズは特に限定されないが、これらのサイズが過度に小さい又は大きいと、使用者14による操作性が低下すると考えられる。
このため、本発明において連結構造4を構成する環状部5やレバー付きナスカンフック6(ただし接続リング6e部分を除く)は、これらのそれぞれを平面視した際の最大長を少なくとも3cm以上にしておくとよい。
さらに、特にレバー付きナスカンフック6(ただし接続リング6e部分を除く)が人の手の平のサイズを超えて大きいと、それ自体の重量が大きくなる上、操作レバー6dの操作にある程度の握力を要することになるため、その操作性が低下すると考えられる。このため、接続リング6eを除いたレバー付きナスカンフック6の最大長が15cmを下回るものを選ぶとよい。
なお、環状部5やレバー付きナスカンフック6のサイズが上記範囲を超えていても本発明を使用できないということはないが、身体機能が低下したり、視力が低下したりした高齢者や肢体不自由者にとってはかえって操作しづらくなる可能性がある。
【0053】
さらに、実施例1及びその変形例に係る歩行器用安全具1A1~1A4、並びに図示しない実施例1の変形例を歩行器50に連結し、かつ安全帯3及び連結構造4が弛まないように水平に配した場合に、歩行器50のフレーム51の内側面から腰部保持構造2の外側面までの距離Lは、使用者14の腋下から指先までの長さ以下となるよう設定しておくとよい。
つまり、上記距離Lは、実施例1及びその変形例に係る歩行器用安全具1A1~1A4、並びに図示しない実施例1の変形例を歩行器50に連結した状態で、歩行器50のフレーム51の内側面から腰部保持構造2を離間させることができる距離の最大値である。
この場合、実施例1及びその変形例に係る歩行器用安全具1A1~1A4、並びに図示しない実施例1の変形例を歩行器50に連結した状態で使用者14が歩行訓練を行う際に、歩行器50が使用者14の手の届かない位置に離れていってしてしまうのを好適に防ぐことができる。
このような事情から、上記距離Lは、15~65cmの範囲内になるように、より望ましくは20~50cmの範囲内になるよう設定しておくとよい。なお、上記距離Lが、使用者14の腋下から指先までの長さ以下である場合で、かつ上記範囲を超える場合に本発明品が目的とする機能を発揮しないということはないが、使用者14の体形や体格によっては、十分に機能しない場合もある。
【0054】
さらに、連結構造4(環状部5及びレバー付きナスカンフック6)、安全帯3、並びに必要に応じて設けられる固定具7や接続部8の材質は特に限定されないが、使用者14の全体重が作用しても容易に切断したり破損したりしないような十分な強度と耐久性を有する材質により構成されていればよい。
【0055】
また、実施例1に係る歩行器用安全具1A
1や、その変形例に係る歩行器用安全具1A
2~1A
4、並びに図示しない実施例1の変形例のいずれかを、キャスタ又は車輪を備えた歩行器(例えば先の
図9に示す歩行器50等)に取設してなるものが、本発明の実施例1に係る安全具付歩行器15である。
なお、実施例1に係る安全具付歩行器15による作用・効果は、実施例1に係る歩行器用安全具1A
1や、その変形例に係る歩行器用安全具1A
2~1A
4、並びに図示しない実施例1の変形例のいずれかによる作用・効果と同じである。
【0056】
[2;実施例2]
続いて、実施例2に係る歩行器用安全具について
図6及び
図7を参照しながら説明する。
図6は本発明の実施例2に係る歩行器用安全具の使用状態を示す背面図である。また、
図7は本発明の実施例2に係る歩行器用安全具における腰部保持構造、安全帯及び連結構造(の一部)の斜視図である。なお、
図1乃至
図5及び
図9に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例2に係る歩行器用安全具1Bは、
図6及び
図7に示すように、先の実施例1及びその変形例に係る歩行器用安全具1A
1~1A
4、並びに図示しない実施例1の変形例における腰部保持構造2としてズボン10を用いてなるものである。
なお、
図6及び
図7では、腰部保持構造2である腰ベルト2aにズボン10を一体に付加する場合を例に挙げて説明しているが、腰部保持構造2は腰ベルト2aを備えていない従来公知のズボン10でもよい。その場合は、
図6及び
図7中において腰ベルト2aに設けられる各構成が、ズボン10のウエスト部分に取設されることになる。
さらに、ズボン10は図示される長ズボン以外にも、短パンでもよい。
【0057】
上述のように実施例2に係る歩行器用安全具1Bにおいて腰部保持構造2をズボン10にすることで、使用者14が歩行器用安全具1Bを備えた歩行器50を用いた歩行訓練中に、万一フレーム51内で膝折れを起こした場合でも、ズボン10及び安全帯3を介してフレーム51によりしっかりと使用者14の体重を支えることができる。
特に、腰部保持構造2がズボン10である場合は、
図6に示すように、使用者14の股下に配設される布地を備えている。このため、腰部保持構造2として腰ベルト2aを単独で用いる場合に比べて、使用者14の腰回りから腰部保持構造2が外れるリスクを大幅に低減できる。
これにより、実施例2に係る歩行器用安全具1Bを備えた歩行器50を用いて使用者14が歩行訓練を行う際の安全性を一層向上させることができる。
【0058】
さらに、実施例2に係る歩行器用安全具1Bでは、腰部保持構造2の態様がズボン10であることで、使用者14は衣服を脱ぎ着するように腰部保持構造2を着脱することができて便利である。
また、腰部保持構造2がズボン10である場合は、その外観を使用者14が普段身にまとう衣服とほぼ同じにできるので、腰部保持構造2を装着して歩行訓練を行う際の心理的な抵抗感も軽減することができる。この結果、使用者14に対し、歩行器50を使用した歩行訓練時に実施例2に係る歩行器用安全具1Bを使用することを促すことができる。
【0059】
なお、特に図示しないが、実施例2に係る歩行器用安全具1Bのズボン10が腰ベルト2aを備えていない場合は、ズボン10の腰回りに周設されてズボン10を構成する布地と一体に設けられる第1の補強パーツを備えていてもよい。なお、この第1の補強パーツは任意選択構成要素である。
このように、ズボン10が第1の補強パーツを備えている場合は、ズボン10の腰回りの強度を向上させることができる。
【0060】
また、ズボン10が上記第1の補強パーツを備える場合は、この第1の補強パーツに連結され、使用者14の股下に配設されるとともにズボン10を構成する生地と一体に設けられる第2の補強パーツを備えていてもよい。なお、この第2の補強パーツは任意選択構成要素である。
このように、ズボン10が第1の補強パーツに加えて第2の補強パーツを備えている場合は、ズボン10の腰回りの強度を一層向上させることができる。
【0061】
さらに、実施例2に係る歩行器用安全具1Bにおけるズボン10は、
図6及び
図7に示すように、必要に応じて腰回りに位置する部分に、介助用ハンドル9を備えていてもよい。なお、ズボン10に設けられる介助用ハンドル9は任意選択構成要素である。
また、実施例2に係る歩行器用安全具1Bにおけるズボン10が介助用ハンドル9を備えている場合の作用・効果は、先の実施例1又はその変形例に係る歩行器用安全具1A
1~1A
4、或いは図示しない実施例1の変形例における腰部保持構造2が介助用ハンドル9を備えていることによる効果と同じである。
【0062】
さらに、実施例2に係る歩行器用安全具1Bにおけるズボン10は、使用者14がズボン10を装着した場合の腸骨周りを被覆するように配されるクッション材12を備えていてもよい。なお、ズボン10に設けられるクッション材12は任意選択構成要素である。
この場合、使用者14が実施例2に係る歩行器用安全具1Bを備えた歩行器50による歩行訓練を行う前後に、ズボン10を装着したまま歩行器50から離れている時に、万一使用者14が転倒してしまっても、クッション材12により腸骨及びその周辺に加わる衝撃を緩衝することができる。この場合、使用者14が腸骨及びその周辺の骨を骨折するリスクを大幅に低減することができる。
一般に、高齢者が腸骨やその周辺の骨を骨折した場合は、その後寝たきり状態になってしまうリスクが高い。これに対し、腰部保持構造2であるズボン10を装着した際の腸骨周りにクッション材12を備えていることで、歩行器50の使用前後における使用者14の身体の安全性を一層向上させることができる。
【0063】
そして、実施例2に係る歩行器用安全具1Bにおけるズボン10が特にクッション材12を備えている場合に、ズボン10はこのクッション材12を収容するポケット11を備えていてもよい。なお、ズボン10に設けられるポケット11は任意選択構成要素である。
この場合、使用者14は必要時にズボン10にクッション材12を取設して、腸骨周りの衝撃吸収性を向上させることができる。また、この場合は、緩衝効果がより優れたクッション材12に交換することができるので、実施例2に係る歩行器用安全具1Bの機能性を一層向上させることができる。
また、ズボン10がポケット11を備える場合は、必要に応じてズボン10からクッション材12を取外すことができる。この場合、ズボン10に対する洗濯等のメンテナンスが容易になる。
この結果、実施例2に係る歩行器用安全具1Bの腰部保持構造2を衛生的に保つことができる。
【0064】
加えて、実施例2に係る歩行器用安全具1Bにおけるズボン10がポケット11を備えている場合、このポケット11は、クッション材12を収容するためのクッション収容部11aと、このクッション収容部11aの開口を塞ぐ被せ部11bを備えていてもよい。なお、ポケット11を構成するクッション収容部11a及び被せ部11bはともに任意選択構成要素である。
この場合、クッション材12が収容されるクッション収容部11aの開口を、被せ部11bで被覆して容易に閉状態にしておくことができる。
この結果、クッション収容部11aから意図せずクッション材12が外れて紛失してしまうのを防ぐことができる。この結果、実施例2に係る歩行器用安全具1Bの機能性を向上させることができる。
【0065】
また、実施例2に係る歩行器用安全具1Bにおいて、腰部保持構造2であるズボン10に安全帯3を連結する場合、ズボン10に対して安全帯3を着脱可能に構成してもよい。
この場合、ズボン10を洗濯する際に、安全帯3をズボン10から取外すことができるので、ズボン10に対する洗濯等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0066】
[3;実施例3]
最後に、実施例3に係る歩行器用安全具について
図8を参照しながら説明する。
図8は本発明の実施例3に係る歩行器用安全具における腰部保持構造、安全帯及び連結構造(の一部)の斜視図である。なお、
図1乃至
図7及び
図9に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例3に係る歩行器用安全具1Cは、
図8に示すように、先の実施例1及びその変形例に係る1A
1~1A
4、並びに図示しない実施例1の変形例における腰部保持構造2(例えば腰ベルト2a)として腰巻13を備えてなるものである。
【0067】
実施例3に係る歩行器用安全具1Cは、先の実施例1及びその変形例に係る1A1~1A4、並びに図示しない実施例1の変形例における腰ベルト2aよりも使用者14の身体との接触面積が広い。
このため、腰部保持構造2が腰ベルト2aである場合と比較して、使用者14の腰回りから外れ難いという効果を有する。
なお、実施例3に係る歩行器用安全具1Cにおける腰巻13の材質としては、例えば伸縮性を有する編地等を用いることができる。
【0068】
また、実施例3に係る歩行器用安全具1Cにおける腰巻13は、
図8に示すように、使用者14が腰巻13を装着した際に、腸骨周りを被覆するように配されるクッション材12を備えていてもよい。なお、腰巻13に設けられるクッション材12は任意選択構成要素である。
また、腰巻13がクッション材12を備えることによる効果は、実施例2に係る歩行器用安全具1Bのズボン10がクッション材12を備えることによる効果と同じである。
【0069】
さらに、実施例3に係る歩行器用安全具1Cにおける腰巻13は、特に図示しないが、実施例2の場合と同様にクッション材12を収容するためのポケットを備えていてもよい。なお、腰巻13に設けられるポケットは任意選択構成要素である。
また、実施例3に係る歩行器用安全具1Cにおける腰巻13がポケットを備えることによる効果は、実施例2の歩行器用安全具1Bの腰部保持構造2(ズボン10)がポケット11を備えることによる効果と同じである。
【0070】
加えて、実施例3に係る歩行器用安全具1Cにおける腰巻13がポケットを備える場合、このポケットはクッション材12を収容するクッション収容部と、このクッション収容部の開口を塞ぐ被せ部により構成されてもよい。なお、腰巻13に設けられるクッション収容部と被せ部はともに任意選択構成要素である。
また、実施例3に係る歩行器用安全具1Cにおける腰巻13のポケットが、クッション収容部と被せ部からなる場合の効果は、実施例2の歩行器用安全具1Bの腰部保持構造2(ズボン10)におけるポケット11が、クッション収容部11a及び被せ部11bから構成される場合の効果と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように本発明は、キャスタ又は車輪を備える既存の歩行器に後付けすることができ、かつ手指の機能が衰えたり、視力が低下したりした高齢者や肢体不自由者でも自力で歩行器に着脱することができ、しかも歩行器を使用した歩行訓練中の使用者の安全性を向上させることができる歩行器用安全具及び歩行器であり、介護用品に関する技術分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1A1~1C…歩行器用安全具 2…腰部保持構造 2a…腰ベルト 2b…外れ防止構造 3…安全帯 3a…一の端部 3b…他の端部 4…連結構造 5…環状部 6…レバー付きナスカンフック 6a…本体部 6b…回動部 6c…回動軸 6d…操作レバー 6e…接続リング 7…固定具 7a…バンド 7b…アジャスターバックル 8…接続部 9…介助用ハンドル 10…ズボン 11…ポケット 11a…クッション収容部 11b…被せ部 12…クッション材 13…腰巻 14…使用者 15…安全具付歩行器 16…環構造 50…歩行器 51,51’…フレーム 52…支柱 53…キャスタ又は車輪 54…肘置マット 55…スライド構造