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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175046
(43)【公開日】2023-12-08
(54)【発明の名称】掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/04 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
A47L9/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023184405
(22)【出願日】2023-10-27
(62)【分割の表示】P 2021514203の分割
【原出願日】2020-04-15
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/016388
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】508157370
【氏名又は名称】バルミューダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 玄
(72)【発明者】
【氏名】直原 佑哉
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 一真
(72)【発明者】
【氏名】毛利 重実
(72)【発明者】
【氏名】小久保 周
(72)【発明者】
【氏名】反町 幹夫
【テーマコード(参考)】
3B061
【Fターム(参考)】
3B061AA06
3B061AD05
(57)【要約】
【課題】吸引ヘッドの滑るような軽い操作性を実現する掃除機を提供する。
【解決手段】本発明に係る掃除機は、清掃面上のゴミを掻き出して吸引部にゴミを集塵する吸引ヘッド、を有してなり、吸引ヘッドは、互いに逆の方向に回転する一対の回転軸と、回転軸に取り付けられる回転ブラシと、回転軸に取り付けられる2つのホバー用ブラシと、吸引ヘッドの動きに合わせて回動軸を中心に回動する回動部を備える2つのキャスター部と、を備えて、ホバー用ブラシとキャスター部それぞれは、吸引ヘッドが清掃面に載置されたとき、清掃面に対する吸引ヘッドの支点となる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃面上のゴミを掻き出して吸引部に前記ゴミを集塵する吸引ヘッド、
を有してなり、
前記吸引ヘッドは、
互いに逆の方向に回転する一対の回転軸と、
前記回転軸に取り付けられる回転ブラシと、
前記回転軸に取り付けられる2つのホバー用ブラシと、
前記吸引ヘッドの動きに合わせて回動軸を中心に回動する回動部を備える2つのキャスター部と、
を備えて、
一対の前記回転軸それぞれの軸方向は、互いに平行で、
前記清掃面と接触した前記回転ブラシは、前記回転ブラシが取り付けられた前記回転軸の回転に伴い、前記回転の方向と同じ方向に回転しながら、前記清掃面上の前記ゴミを掻き出して、前記吸引部に前記ゴミを集塵し、
前記ホバー用ブラシは、前記ホバー用ブラシが取り付けられた前記回転軸の回転に伴い、前記回転の方向と同じ方向に回転して、
前記ホバー用ブラシの外縁部を構成する毛の長さは、前記回転ブラシの外縁部を構成する毛の長さより長く、
前記ホバー用ブラシの下端の高さ位置は、前記回転ブラシの下端の高さ位置よりも下方であり、
前記ホバー用ブラシが前記清掃面に当接したとき、前記ホバー用ブラシの前記外縁部は、前記ホバー用ブラシが取り付けられた前記回転軸の前記回転に伴い、前記回転の方向と逆方向に倒れて、
前記ホバー用ブラシと前記キャスター部それぞれは、前記吸引ヘッドが前記清掃面に載置されたとき、前記清掃面に対する前記吸引ヘッドの支点となる、
ことを特徴とする掃除機。
【請求項2】
前記回転軸に取り付けられた2つの前記ホバー用ブラシのうち、一方の前記ホバー用ブラシが取り付けられた前記回転軸上の位置から前記回転軸の前記軸方向の中心点までの距離は、他方の前記ホバー用ブラシが取り付けられた前記回転軸上の位置から前記中心点までの距離と、等しく、
一方の前記ホバー用ブラシは、前記ホバー用ブラシが取り付けられた前記回転軸に取り付けられた前記回転ブラシの長手方向の一端側に配置されて、
他方の前記ホバー用ブラシは、前記ホバー用ブラシが取り付けられた前記回転軸に取り付けられた前記回転ブラシの前記長手方向の他端側に配置されて、
前記キャスター部は、一対の前記回転軸それぞれから等距離上に配置される、
請求項1記載の掃除機。
【請求項3】
2つの前記キャスター部のうち、一方の前記キャスター部は、前記吸引ヘッドにおける前記軸方向の一端側に配置されて、他方の前記キャスター部は、前記吸引ヘッドにおける前記軸方向の他端側に配置されて、
前記ホバー用ブラシそれぞれは、一対の前記回転軸それぞれの前記軸方向の前記中心点を結ぶ仮想線を中心として、線対称に配置される、
請求項2記載の掃除機。
【請求項4】
前記キャスター部の下端の高さ位置は、前記回転ブラシの下端の高さ位置と同じである、
請求項1記載の掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、清掃面上のゴミを吸い取る吸引ヘッドに複数の回転ブラシを搭載した掃除機が知られている。例えば、特許文献1に開示された掃除機(床面清掃装置)は、ノズル本体の前後に配置された一対の回転ブラシを有する。これらの回転ブラシは、モータの駆動力によって互いに相対する方向に回転すると共に、ユーザによるノズル本体の前後方向への移動操作に応じて上下に変位する。すなわち、ノズル本体が前方に押される操作時には、この押し力に対して正力を与える後方の回転ブラシは清掃面であるカーペットに食い込んで接触すると共に、この押し力に対して反力を与える前方の回転ブラシはカーペットより浮いて離れた状態となる。一方、ノズル本体が後方に引かれる操作時には、この引き力に対して正力を与える前方の回転ブラシはカーペットに食い込んで接触すると共に、この引き力に対して反力を与える後方の回転ブラシはカーペットより浮いて離れた状態となる。このように、ノズル本体の前後方向への移動操作に応じて、前後の回転ノズルのうち、一方の回転ブラシがカーペットと接触し、他方の回転ブラシがカーペットから離れる。これにより、掃除機は、清掃面からノズル本体への抵抗が少ない状態で前後方向へ移動する。
【0003】
また、特許文献2に開示された掃除機(電気掃除機ヘッド)は、前後に配置された一対の回転ブラシ(第1のローラ,第2のローラ)を有する。第1のローラは、掃除機が清掃面上を第1の方向に動かされたときに回転が可能であり、掃除機が第1の方向とは反対方向である第2の方向に動かされたときには回転が防止される。第2のローラは、掃除機が清掃面上を第2の方向に動かされたときに回転が可能であり、掃除機が第1の方向に動かされたときには回転が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-225932号公報
【特許文献2】特表2018-534040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、吸引ヘッドの滑るような軽い操作性を実現する掃除機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る掃除機は、清掃面上のゴミを掻き出して吸引部にゴミを集塵する吸引ヘッド、を有してなり、吸引ヘッドは、互いに逆の方向に回転する一対の回転軸と、回転軸に取り付けられる回転ブラシと、回転軸に取り付けられる2つのホバー用ブラシと、吸引ヘッドの動きに合わせて回動軸を中心に回動する回動部を備える2つのキャスター部と、を備えて、一対の回転軸それぞれの軸方向は、互いに平行で、清掃面と接触した回転ブラシは、回転ブラシが取り付けられた回転軸の回転に伴い、回転の方向と同じ方向に回転しながら、清掃面上のゴミを掻き出して、吸引部にゴミを集塵し、ホバー用ブラシは、ホバー用ブラシが取り付けられた回転軸の回転に伴い、回転の方向と同じ方向に回転して、ホバー用ブラシの外縁部を構成する毛の長さは、回転ブラシの外縁部を構成する毛の長さより長く、ホバー用ブラシの下端の高さ位置は、回転ブラシの下端の高さ位置よりも下方であり、ホバー用ブラシが清掃面に当接したとき、ホバー用ブラシの外縁部は、ホバー用ブラシが取り付けられた回転軸の回転に伴い、回転の方向と逆方向に倒れて、ホバー用ブラシとキャスター部それぞれは、吸引ヘッドが清掃面に載置されたとき、清掃面に対する吸引ヘッドの支点となる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、吸引ヘッドの滑るような軽い操作性を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明にかかる掃除機の実施の形態を示す外観斜視図である。
図2図1の掃除機が備える吸引ヘッドの外観斜視図である。
図3図1の掃除機が備える吸引ヘッドを模式的に示す概略下面図である。
図4図1の掃除機が備える吸引ヘッドの展開斜視図である。
図5図1の掃除機が備える吸引ヘッドの断面図である。
図6】回転ブラシ単体における力学的作用の説明図である。
図7図1の掃除機が備える一対の回転ブラシにおける力学的作用の説明図である。
図8】本発明にかかる掃除機が備える吸引ヘッドの別の実施の形態を示す正面図である。
図9図8の吸引ヘッドの下面図である。
図10図8のA-A線における断面図である。
図11図8のB-B線における断面図である。
図12図8の吸引ヘッドが清掃面に載置された状態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
●掃除機(1)●
●掃除機(1)の構成
図1は、本発明にかかる掃除機の実施の形態(第1実施形態)を示す外観斜視図である。
【0010】
掃除機1は、スティック型の掃除機であり、吸引ヘッド2と、本体部3と、持ち手棒部4と、自在継手部5と、を主体に構成されている。
【0011】
吸引ヘッド2は、清掃面(地面)上のゴミ(塵)を吸い取る。吸引ヘッド2は、使用時に清掃面と対向してゴミを吸い取る部材または構造体である。吸引ヘッド2の「ヘッド」は、頭部や先端部といった場所を指す意味である。「ヘッド」の形状は、後述するスティック体との大小関係を含めて特段限定されるものではない。吸引ヘッド2は、吸引口2aを備える。吸引口2aは、吸引ヘッド2の略中央に設けられ、吸引ヘッド2を上下に貫通する。吸引ヘッド2の具体的構成については、後述する。
【0012】
なお、吸引ヘッド2は、吸引源である吸引モータ(不図示)を搭載してもよく、あるいは、吸引モータを搭載しなくてもよい。
【0013】
本体部3は、ゴミ収納部(不図示)、充電式の電池(不図示)などを内部に収容する。本体部3は、筒状である。本体部3の重量は、持ち手棒部4の重量よりも重い。
【0014】
なお、吸引ヘッドが吸引モータを搭載しない場合、本体部は、吸引モータを収容する。
【0015】
持ち手棒部4は、使用時にユーザに握られる。すなわち、ユーザは、持ち手棒部4を手で握って掃除機1を操作する。「ユーザ」は、掃除機1の使用者(操作者)である。持ち手棒部4は、本体部3の上端(図1における紙面上側の端)に取り付けられる。持ち手棒部4は、本体部3の上端から上方(図1における紙面上側の方向)に向かって延在する。持ち手棒部4の上部には、掃除機1の電源のオン/オフスイッチなどの操作ボタンなどが適宜の箇所に配置される。
【0016】
持ち手棒部4は、本体部3に着脱自在である。持ち手棒部4が本体部3に連結されて、本体部3と持ち手棒部4とが一体化されたとき、本体部3と持ち手棒部4とは、全体として、吸引ヘッド2より上方に向かって棒状に延在するスティック体を構成する。
【0017】
このように、重量のある本体部3が吸引ヘッド2に近い下方(図1における紙面下側の方向)に配置されることで、ユーザに与える掃除機1全体の重量感は、軽減される。
【0018】
自在継手部5は、吸引ヘッド2と本体部3(スティック体)とを連結する。すなわち、吸引ヘッド2は、自在継手部5を介して本体部3(スティック体)に連結される。換言すれば、本体部3(スティック体)は、自在継手部5を介して吸引ヘッド2に連結される。自在継手部5は、吸引ヘッド2に対して本体部3(スティック体)が全方位に亘って任意の角度で自由に傾くことを可能にする。
【0019】
自在継手部5の一端(下端)は、吸引ヘッド2の上部略中央に取り付けられる。すなわち、自在継手部5の一端は、吸引口2aと位置的に対応する。つまり、吸引口2aの軸心(軸線)は、自在継手部5の軸心と一致する。これにより、吸引口2aは、吸引ヘッド2が吸引するゴミの流路としての役割と、自在継手部5の取付部位としての役割と、を担う。
【0020】
自在継手部5の他端(上端)は、本体部3(スティック体)の下端に取り付けられる。自在継手部5の軸心は、本体部3(スティック体)の軸心と一致する。すなわち、自在継手部5の軸心は、本体部3(スティック体)の軸心上に位置する。これにより、本体部3と持ち手棒部4とが一体化されたスティック体は、吸引口2aの軸心(軸線)上に位置すると共に、吸引ヘッド2に対して全方位に亘って任意の角度で自由に傾く。
【0021】
自在継手部5は、外周または内周を覆う樹脂材などの可撓性素材の覆い部材(不図示)を備える。すなわち、自在継手部5の外周または内周は、覆い部材によって覆われる。覆い部材は、吸引ヘッド2側の吸引口2aから本体部3に至るゴミの流路の外漏れを防止する。
【0022】
●吸引ヘッド(1)の構成
図2は、吸引ヘッド2の外観斜視図である。
【0023】
吸引ヘッド2は、吸引口2aと、カバー体6と、回転ブラシ7(第1の回転ブラシ)と、回転ブラシ8(第2の回転ブラシ)と、回転軸A1と、回転軸A2と、駆動機構9と、キャスター部10(図3参照)と、吸引部11(図4参照)と、を備える。回転ブラシ7と回転ブラシ8とは、一対の回転ブラシを構成する。
【0024】
カバー体6は、内部に一対の回転ブラシ7,8を収容する。カバー体6は、複数の部材で構成されるカバー部材(上部カバー6a、サイドカバー6b、サイドカバー6c、ローラーカバー6d、ローラーカバー6e)が組み立てられることにより構成される。カバー部材(図4参照)については、後述する。
【0025】
一対の回転ブラシ7,8のそれぞれは、回転しながら清掃面と部分的に当接(接地・接触)して、清掃面上のゴミや、清掃面が毛足の長いカーペットの表面の場合に毛足の内部に入り込んだゴミを掻きとって、吸引部11に集塵する。一対の回転ブラシ7,8のそれぞれは、駆動機構9により回転駆動する。
【0026】
回転ブラシ7は、回転軸A1に回転自在に取り付けられて、カバー体6の内部に収容される。回転ブラシ7は、吸引ヘッド2の前方に配置される。具体的には、回転ブラシ7は、吸引口2aの前方に配置される。回転ブラシ7は、その外周に柔らかいブラシが取り付けられて構成される。
【0027】
「前方」は、吸引ヘッド2の短手方向の一方(図2における紙面左下方向)である。すなわち、回転ブラシ7は、図2に示される2つの回転ブラシのうち、紙面左側の回転ブラシである。
【0028】
回転軸A1は、カバー体6に収容されて、回転ブラシ7を回転させる。回転軸A1は、吸引ヘッド2の幅方向に延在する。
【0029】
「幅方向」は、吸引ヘッド2の長手方向である。
【0030】
回転ブラシ8は、回転軸A2に回転自在に取り付けられて、カバー体6の内部に収容される。回転ブラシ8は、吸引ヘッド2の後方に配置される。具体的には、回転ブラシ8は、吸引口2aの後方に配置される。回転ブラシ8は、その外周に柔らかいブラシが取り付けられて構成される。
【0031】
「後方」は、前方とは反対の方向、すなわち、吸引ヘッド2の短手方向の他方(図2における紙面右上方向)である。つまり、回転ブラシ8は、図2に示される2つの回転ブラシのうち、紙面右側の回転ブラシである。
【0032】
回転軸A2は、カバー体6に収容されて、回転ブラシ8を回転させる。回転軸A2は、吸引ヘッド2の幅方向に延在する。回転軸A2の軸方向は、回転軸A1の軸方向と平行である。
【0033】
すなわち、吸引ヘッド2は、回転軸A1と回転軸A2とを備える。
【0034】
このように、本実施形態(第1実施形態)では、一対の回転ブラシ7,8は、吸引ヘッド2の前後、より具体的には、吸引口2aを挟んで前後方向に並んで配置されている。
【0035】
駆動機構9は、回転ブラシ7と回転ブラシ8のそれぞれを回転駆動させる。駆動機構9は、回転ブラシ7と回転ブラシ8のそれぞれに内蔵、あるいは、カバー体6の内部(例えば、カバー体6の側部)に収容される。駆動機構9は、例えば、モータなどの駆動源を含む。
【0036】
ここで、本発明の特徴は、回転ブラシ7と回転ブラシ8とが互いに逆方向に回転することにある。すなわち、例えば、前方の回転ブラシ7は反時計回り方向に回転し、後方の回転ブラシ8は時計回り方向に回転する。
【0037】
なお、一対の回転ブラシの回転駆動は、種々の方法により実現される。すなわち、例えば、一対の回転ブラシの回転駆動は、単一の駆動源により発生された動力を複数の動力伝達機構で回転ブラシそれぞれに分配してもよい。あるいは、一対の回転ブラシの回転駆動は、複数の駆動源のそれぞれを回転ブラシそれぞれに個別に割り当ててもよい。
【0038】
図3は、吸引ヘッド2を模式的に示す概略下面図である。
同図に示された3本の一点鎖線は、キャスター部10が配置される位置を説明するための仮想線である。すなわち、例えば、同図に示された3本の一点鎖線のうち、上下の一点鎖線は、回転軸A1の位置と、回転軸A2の位置と、を示す。同図に示された3本の一点鎖線のうち、真ん中の一点鎖線は、前後方向における、回転軸A1の位置と、回転軸A2の位置と、の中間の位置を示す。
【0039】
キャスター部10は、清掃面上を全方位に亘って転がり自在である。キャスター部10は、清掃面に対する回転ブラシ7の接地高さ位置と、清掃面に対する回転ブラシ8の接地高さ位置と、を一定に維持する。キャスター部10は、掃除機1の使用時に清掃面を転がることで、キャスター部10自身の摩耗を減らす。キャスター部10は、吸引ヘッド2の下部に設けられる。キャスター部10は、例えば、ボール式のキャスターや車輪式のキャスターである。
【0040】
ここで、キャスター部10は、前後方向において、回転ブラシ7と回転ブラシ8との中間に配置される。すなわち、キャスター部10は、回転ブラシ7と回転ブラシ8それぞれと等距離に配置される。より好ましくは、キャスター部10は、回転軸A1と回転軸A2との中央(中心線上)に配置される。すなわち、キャスター部10は、図4に示される3本の一点鎖線のうち、回転軸A1の位置を示す線(一点鎖線)と、回転軸A2の位置を示す線(一点鎖線)と、の間の中心の線(すなわち、真ん中の一点鎖線)上に配置される。キャスター部10が中央に配置される理由は、掃除機の動作時に、キャスター部10を支点として、回転ブラシ7,8のいずれかが清掃面に接地されて、ゴミの掻き出し効率を高めるためである。
【0041】
キャスター部10は、第1のキャスター部10Rと第2のキャスター部10Lとを備える。第1のキャスター部10Rは、吸引ヘッド2の幅方向の右側部(後述するサイドカバー6cの下部)に設けられる。第2のキャスター部10Lは、吸引ヘッド2の幅方向の左側部(後述するサイドカバー6bの下部)に設けられる。
【0042】
「左側」は、掃除機1の使用時における前方に対する左方、すなわち、図3における紙面右側である。「右側」は、掃除機1の使用時における前方に対する右方、すなわち、図3における紙面左側である。
【0043】
以下の説明において、第1のキャスター部10Rと第2のキャスター部10Lとを区別することなく総称する場合、キャスター部10と総称する。
【0044】
図4は、吸引ヘッド2の展開斜視図である。
【0045】
カバー体6を構成する複数のカバー部材は、上部カバー6aと、サイドカバー6bと、サイドカバー6cと、ローラーカバー6dと、ローラーカバー6eと、を備える。サイドカバー6bとサイドカバー6cとは、一対のサイドカバーを構成する。ローラーカバー6dとローラーカバー6eとは、一対のローラーカバーを構成する。
【0046】
上部カバー6aは、平面視略中央に吸引口2aを備えると共に、下部に吸引部11が取り付けられる。上部カバー6aの形状は、吸引ヘッド2の幅方向に延在するプレート形状である。吸引部11は、吸引モータの吸引力により、掃除機1が清掃面上のゴミ(塵)を吸い取るための空間を区画する。
【0047】
サイドカバー6bの下面視略中央には、キャスター部10(第2のキャスター部10L)が取り付けられる。サイドカバー6bは、上部カバー6aの幅方向の左端に取り付けられる。サイドカバー6cの下面視略中央には、キャスター部10(第1のキャスター部10R)が取り付けられる。サイドカバー6cは、上部カバー6aの幅方向の右端に取り付けられる。すなわち、一対のサイドカバー6b、6cは、上部カバー6aの両端(左右端)に取り付けられる。
【0048】
ローラーカバー6dは、前方の回転ブラシ7を回転自在に収容する。ローラーカバー6dは、サイドカバー6bとサイドカバー6cとに挟持されて、固定される。ローラーカバー6eは、後方の回転ブラシ8を回転自在に収容する。ローラーカバー6eは、サイドカバー6bとサイドカバー6cとに挟持されて、固定される。
【0049】
図5は、吸引ヘッド2の断面図である。
【0050】
前述のとおり、キャスター部10は、清掃面に対する回転ブラシ7の接地高さ位置と、清掃面に対する回転ブラシ8の接地高さ位置と、を一定に維持する。清掃面に対するキャスター部10の接地面は、一対の回転ブラシ7,8の接地面と同一平面上である。あるいは、清掃面に対する一対の回転ブラシ7,8の接地面は、清掃面に対するキャスター部10の接地面よりも若干低い。「低い」とは、清掃面に対する一対の回転ブラシ7,8の接地面が清掃面に対するキャスター部10の接地面よりも上方(図5における紙面上方)に位置することである。キャスター部10と回転ブラシ7,8とは、各々の接地面が同一平面上、または、回転ブラシ7,8の設置面の方が若干低くなるように、吸引ヘッド2に配置されている。
【0051】
前述のとおり、回転ブラシ7と回転ブラシ8それぞれは、その外周にブラシが取り付けられて構成される。そのため、吸引ヘッド2がキャスター部10を備えない場合、吸引ヘッド2(掃除機1)の自重により、一対の回転ブラシ7,8(特に外周縁)が清掃面に押し付けられる。一対の回転ブラシ7,8が清掃面に押し付けられると、清掃面は、回転するブラシにより傷つけられ得る。また、一対の回転ブラシ7,8が清掃面に押し付けられると、吸引ヘッド2の操作性が悪くなり得る(吸引ヘッド2が清掃面上を滑りにくくなり得る)。キャスター部10は、清掃面が一対の回転ブラシ7,8に傷つけられるおそれや、吸引ヘッド2の操作性が悪くなるおそれを低減する。
【0052】
●力学的作用の説明
図6は、回転ブラシ(ローラ)単体における力学的作用の説明図である。
【0053】
回転ブラシの質量を「m」、半径を「r」とし、回転ブラシが清掃面(地面)と接地している状態で発生するトルクを「T」とすると、回転ブラシの回転運動による清掃面に対して発生する力Fは、F=T/rとなる。また、清掃面と回転ブラシとの間の摩擦係数を「μ」とすると、「T/r<μmg」の条件下では、回転ブラシは、清掃面が固定されていることに対する反作用で、進む。この現象は、環境を単純化した場合に発生する。この原理は、車が走る原理や、コロで物体を運ぶ際にコロが物体の重さに影響されない原理と同様の原理である。
【0054】
一方、「T/r>μmg」の条件下では、回転ブラシはスリップして清掃面上を進まなくなり、回転ブラシはその場で回転して浮いたように清掃面上を滑る。「T/r>μmg」の条件下は、例えば、トルクTが十分に大きい場合や、回転ブラシと清掃面との間の摩擦係数μが十分に小さい場合である。本実施形態(第1実施形態)は、かかる現象を回転ブラシ7と回転ブラシ8とに利用したものである。
【0055】
ここで、本実施形態(第1実施形態)において、回転ブラシ7のトルクを「T1」、回転ブラシ7の半径を「r1」、回転ブラシ7と清掃面との間の摩擦係数を「μ」、回転ブラシ7の分散質量を「m1」、重力加速度を「g」とすると、回転ブラシ7の回転によって生じる力(T1/r1)は、回転ブラシ7と清掃面との間の摩擦係数μと、回転ブラシ7の分散質量m1と、重力加速度gとの乗算値(μ*m1*g)よりも大きい。回転ブラシ7の回転によって生じる力は、本発明における第1の力である。
【0056】
また、本実施形態(第1実施形態)において、回転ブラシ8のトルクを「T2」、回転ブラシ8の半径を「r2」、回転ブラシ8と清掃面との間の摩擦係数を「μ」、回転ブラシ8の分散質量を「m2」、重力加速度を「g」とすると、回転ブラシ8の回転によって生じる力(T2/r2)は、回転ブラシ8と清掃面との間の摩擦係数μと、回転ブラシ8の分散質量m2と、重力加速度gと、の乗算値(μ*m2*g)よりも大きい。回転ブラシ8の回転によって生じる力は、本発明における第2の力である。
【0057】
ここで、吸引ヘッド2の全体の重さを「Mg」とすると、「分散質量m1」は吸引ヘッド2の全体の重さMgが回転ブラシ7に分散した質量であり、「分散質量m2」は吸引ヘッド2の全体の重さMgが回転ブラシ8に分散した質量である。「分散質量m1」と「分散質量m2」との和(m1+m2)は、吸引ヘッド2の全体の重さMgである。
【0058】
以上の観点から、摩擦係数μは小さい方が好ましい。摩擦係数μを小さくするための望ましい方法は、例えば、回転ブラシ7と回転ブラシ8それぞれの素材を、より摩擦係数μの低い素材にすることである。
【0059】
図7は、一対の回転ブラシ7,8における力学的作用の説明図である。
【0060】
回転ブラシ7と回転ブラシ8とを対向して配置すると共に、同じトルクで、かつ、回転ブラシ7の回転と回転ブラシ8の回転とを逆向きに回転させる場合において、第1の力の大きさと第2の力の大きさとの絶対値が同一の場合、回転ブラシ7が前方に進む力は、回転ブラシ8が後方に進む力に相殺される。ここで、「相殺」は、第1の力の大きさと第2の力の大きさとの差が完全に無くなる場合のみならず、第1の力と第2の力との差が小さくなる場合を含む。「第1の力の大きさと第2の力の大きさとの差が小さくなる場合」は、掃除機1のユーザが掃除機1を軽く操作できるという作用効果が発揮される程度の差である。
【0061】
また、本実施形態(第1実施形態)における掃除機1において、キャスター部10は、支点として作用する。キャスター部10が支点として作用することで、回転ブラシ7と回転ブラシ8との清掃面に対する接地面は、減少する。そのため、吸引ヘッド2の瞬間的な摩擦係数が減り、吸引ヘッド2はその場にとどまりながら回転ブラシ7と回転ブラシ8とが回転する。
【0062】
さらに、吸引ヘッド2の摩擦係数は、減少する。そのため、吸引ヘッド2は浮いたような状態となる。回転ブラシ7が前方に進む力は、回転ブラシ8が後方に進む力に相殺される。その結果、ユーザ(操作者)は、所望の方向、特に前後方向に吸引ヘッド2をスムーズに移動できる。
【0063】
さらにまた、キャスター部10は全方向に亘って転がり自在である。そのため、キャスター部10は、ユーザが吸引ヘッド2を移動させる操作性を妨げない。その結果、ユーザは、従来困難であった左右方向に吸引ヘッド2をスムーズに移動できる。
【0064】
●まとめ(1)●
このように、本実施形態(第1実施形態)における掃除機1によれば、掃除機1は、吸引ヘッド2が備える回転ブラシ7と回転ブラシ8とを互いに逆方向に回転させ、回転ブラシ7の進む力を回転ブラシ8の進む力で相殺する。これにより、掃除機1は、吸引ヘッド2の滑るような軽い操作性を実現する。
【0065】
また、本実施形態(第1実施形態)における掃除機1によれば、掃除機1は、吸引ヘッド2の下部にキャスター部10を設ける。これにより、回転ブラシ7と回転ブラシ8とが柔らかくても、清掃面に対する回転ブラシ7の接地高さ位置と、回転ブラシ8の接地高さ位置とは、一定に維持される。これにより、掃除機1は、吸引ヘッド2の滑るような軽い操作性をより高いレベルで実現する。
【0066】
さらに、本実施形態(第1実施形態)における掃除機1によれば、本体部3と持ち手棒部4とを一体化した棒状部材(スティック体)は、吸引口2aの軸線上に位置すると共に、自在継手部5の機能によって、全方位に亘って任意の角度で自由に傾く。これにより、ユーザは、掃除機1を操作する際に、前後の方向を意識することなく、任意の方向に吸引ヘッド2を自在に移動できる。
【0067】
なお、上述した第1実施形態では、掃除機が吸引ヘッドに2つの回転ブラシを搭載する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、掃除機は、吸引ヘッドの搭載スペースが許す限り、より多くの個数の回転ブラシを搭載してもよい。
【0068】
●掃除機(2)●
次に、本発明にかかる掃除機の別の実施の形態(以下「第2実施形態」という。)について、先に説明した実施の形態(第1実施形態)と異なる部分を中心に説明する。本実施の形態における掃除機は、吸引ヘッドの構成が第1実施形態と異なる。
【0069】
●掃除機(2)の構成
図8は、第2実施形態の掃除機100が備える吸引ヘッド20の正面図である。
同図は、吸引ヘッド20を説明するためのもので、掃除機100を構成する部材のうち、吸引ヘッド20のみを示す。
【0070】
掃除機100は、吸引ヘッド20と、本体部(不図示)と、持ち手棒部(不図示)と、自在継手部(不図示)と、を有してなる。第2実施形態における本体部と持ち手棒部と自在継手部それぞれの機能や構成は、第1実施形態における本体部3と持ち手棒部4と自在継手部5それぞれの機能や構成と同様である。そのため、第2実施形態における本体部と持ち手棒部と自在継手部それぞれの具体的な説明は、省略する。
【0071】
●吸引ヘッド(2)の構成
図9は、吸引ヘッド20の下面図である。
図10は、図8のA-A線における断面図である。
以下、図8図9図10とを参照して、吸引ヘッド20の構成の説明をする。なお、図8図10とは、吸引ヘッド20が清掃面CS(図12参照)から離間している状態(以下「離間状態」という。)を示す。
【0072】
吸引ヘッド20は、吸引口20aと、吸引部20bと、キャスター部21と、第1ホバー用ブラシ22と、第2ホバー用ブラシ23と、第1回転軸24A1と、第2回転軸24A2と、安全キャスター25と、カバー体26と、第1回転ブラシ27と、第2回転ブラシ28と、第1モータ(不図示)と、第2モータ(不図示)と、を備える。第1回転ブラシ27と第2回転ブラシ28とは、一対の回転ブラシを構成する。
【0073】
吸引口20aは、一対の回転ブラシ27,28により吸引部20bに集塵されたゴミが通過する通路である。吸引口20aは、吸引ヘッド20の略中央に設けられ、吸引ヘッド20を上下方向に貫通する。吸引部20bは、清掃面CS上のゴミが集塵される空間を区画する。集塵された塵は、モータ(不図示)の吸引力により、吸引口20aを介して、本体部内のゴミ収納部に収納される。
【0074】
カバー体26は、内部に一対の回転ブラシ27,28を収容する。カバー体26は、カバー部材である、上部カバー26aと、サイドカバー26bと、サイドカバー26cと、ローラーカバー26dと、ローラーカバー26eと、を備える。第2実施形態におけるカバー部材の構成および機能は、第1実施形態におけるカバー部材の構成および機能と同様である。
【0075】
一対の回転ブラシ27,28のそれぞれは、回転しながら清掃面CSと部分的に当接(接地・接触)して、清掃面CS上のゴミや、清掃面CSが毛足の長いカーペットの表面の場合に毛足の内部に入り込んだゴミを掻き出して、吸引部20bに集塵する。第1回転ブラシ27の形状と大きさと質量それぞれが、第2回転ブラシ28の形状と大きさと質量それぞれと同じである。
【0076】
第1回転ブラシ27は、第1回転軸24A1に取り付けられて、カバー体6(ローラーカバー26d)の内部に収容される。第1回転ブラシ27は、第1モータの回転駆動による第1回転軸24A1の回転に伴い、回転する。第1回転ブラシ27は、吸引ヘッド20の前方に配置される。具体的には、第1回転ブラシ27は、吸引口20aの前方に配置される。
【0077】
「前方」は、吸引ヘッド20の短手方向の一方(図9における紙面上方向)である。
【0078】
第1回転ブラシ27は、第1回転体271と、第1回転体271の外周に取り付けられる第1ブラシ部272と、を備える。
【0079】
第1回転体271は、第1回転軸24A1に取り付けられる。第1回転体271は、例えば、プラスチックやABS樹脂などの合成樹脂製である。
【0080】
第1ブラシ部272は、第1回転体271の外周に取り付けられた基布273と、基布273上から突出するように基布273に織り込まれた清掃部274と、を備える。
【0081】
清掃部274は、基布273に織り込まれた複数の種類の毛の集合体である。清掃部を構成する毛の種類は、例えば、ポリアミド製の毛やアクリル樹脂製の毛などの任意の材質の毛である。清掃部274は、硬さや材質の異なる2種類の毛により構成される。清掃部274の全部または先端部分は、本発明における「第1回転ブラシ27の外縁部」の例である。
【0082】
なお、清掃部を構成する毛の種類の数は、「2」に限定されない。すなわち、例えば、毛の種類の数は、「1」または「3以上」でもよい。
【0083】
第1回転軸24A1は、第1モータの回転駆動により、第1回転ブラシ27を回転させる。第1回転軸24A1は、図10の紙面反時計回り方向に回転する。第1回転ブラシ27は、第1回転軸24A1の回転と共に、反時計回り方向に回転する。第1回転ブラシ27が反時計回り方向に回転することで、第1回転ブラシ27により掻き出されたとられた清掃面CS上のゴミは、吸引部20bに集塵される。第1回転軸24A1が回転する方向、すなわち、図10の紙面反時計回り方向は、本発明における第1方向である。
【0084】
第1回転軸24A1は、カバー体26に収容される。第1回転軸24A1は、吸引ヘッド20の幅方向に延在する。
【0085】
「幅方向」は、吸引ヘッド20の長手方向である。
【0086】
第2回転ブラシ28は、第2回転軸24A2に取り付けられて、カバー体6(ローラーカバー26e)の内部に収容される。第2回転ブラシ28は、第2モータの回転駆動による第2回転軸24A2の回転に伴い、回転する。第2回転ブラシ28は、吸引ヘッド20の後方に配置される。具体的には、第2回転ブラシ28は、吸引口20aの後方に配置される。
【0087】
「後方」は、前方とは反対の方向、すなわち、吸引ヘッド20の短手方向の他方(図9における紙面下方向)である。
【0088】
第2回転ブラシ28は、第2回転体281と、第2回転体281の外周に取り付けられる第2ブラシ部282と、を備える。
【0089】
第2回転体281と第2ブラシ部282それぞれの構成は、第1回転体271と第1ブラシ部272それぞれの構成と同様である。
【0090】
なお、第2ブラシ部282が備える清掃部284の全部または先端部分は、本発明における「第2回転ブラシ28の外縁部」の例である。
【0091】
第2回転軸24A2は、第2モータの回転駆動により、第2回転ブラシ28を回転させる。第2回転軸24A2は、図10の紙面時計回り方向に回転する。これにより、第2回転ブラシ28は、第2回転軸24A2の回転と共に、時計回り方向に回転する。すなわち、第2回転軸24A2と第2回転ブラシ28とは、第1回転軸24A1が回転する方向(第1方向)と逆方向(第2方向)に回転する。第2回転ブラシ28が時計回り方向に回転することで、第2回転ブラシ28により掻き出された清掃面CS上のゴミは、吸引部20bに集塵される。
【0092】
第2回転軸24A2は、カバー体26に収容される。第2回転軸24A2は、吸引ヘッド20の幅方向に延在する。すなわち、第2回転軸24A2の軸方向は、第1回転軸24A1の軸方向と平行である。
【0093】
第1ホバー用ブラシ22は、第1回転軸24A1に取り付けられて、カバー体6(ローラーカバー26d)の内部に収容される。第1ホバー用ブラシ22は、第1右方ホバー用ブラシ22Rと第1左方ホバー用ブラシ22Lとを備える。
【0094】
第1ホバー用ブラシ22(第1右方ホバー用ブラシ22R,第1左方ホバー用ブラシ22L)は、第1モータの回転駆動による第1回転軸24A1の回転に伴い、回転する。第1ホバー用ブラシ22は、第1回転ブラシ27と清掃面CSとの間の摩擦力を低減する。図8に示されるように、第1ホバー用ブラシ22の下端の高さ位置は、第1回転ブラシ27の下端の高さ位置よりも下方(図8における紙面下側の方向)である。すなわち、第1ホバー用ブラシ22の外径は、第1回転ブラシ27の外径よりも大きい。
【0095】
なお、第2ホバー用ブラシ23の外径と第2回転ブラシ28の外径との関係は、前述の第1ホバー用ブラシ22の外径と第1回転ブラシ27の外径との関係と、同様である。
【0096】
また、第1ホバー用ブラシ22の形状と大きさと質量のそれぞれは、第2ホバー用ブラシ23の形状と大きさと質量のそれぞれと同じである。
【0097】
ここで、第1ホバー用ブラシ22は、本発明における第1摩擦力低減部材の例である。第1右方ホバー用ブラシ22Rは、本発明における第1右方摩擦力低減部材の例である。第1左方ホバー用ブラシ22Lは、本発明における第1左方摩擦力低減部材の例である。
【0098】
また、第2ホバー用ブラシ23は、本発明における第2摩擦力低減部材の例である。第2右方ホバー用ブラシ23Rは、本発明における第2右方摩擦力低減部材の例である。第2左方ホバー用ブラシ23Lは、本発明における第2左方摩擦力低減部材の例である。
【0099】
第1右方ホバー用ブラシ22Rは、第1回転軸24A1の長手方向の一端側(図9における紙面左側)に配置される。具体的には、第1右方ホバー用ブラシ22Rは、第1回転ブラシ27の一端(第1回転体271の右側の端)よりも外側(右方)に配置される。第1右方ホバー用ブラシ22Rの構成については、後述する。
【0100】
第1左方ホバー用ブラシ22Lは、第1回転軸24A1の長手方向の他端側(図9における紙面右側)に配置される。具体的には、第1左方ホバー用ブラシ22Lは、第1回転ブラシ27の他端(第1回転体271の左側の端)よりも外側(左方)に配置される。第1左方ホバー用ブラシ22Lの構成については、後述する。
【0101】
このように、第1回転ブラシ27は、第1右方ホバー用ブラシ22Rと第1左方ホバー用ブラシ22Lとの間に配置される。
【0102】
また、第1回転軸24A1の軸方向の第1中心点(不図示)から第1右方ホバー用ブラシ22Rまでの距離は、第1中心点から第1左方ホバー用ブラシ22Lまでの距離と等しい。
【0103】
第2ホバー用ブラシ23は、第2回転軸24A2に取り付けられて、カバー体6(ローラーカバー26e)の内部に収容される。第2ホバー用ブラシ23は、第2モータの回転駆動による第2回転軸24A2の回転と共に、回転する。第2ホバー用ブラシ23は、第2回転ブラシ28と清掃面CSとの間の摩擦力を低減する。第2ホバー用ブラシ23は、第2右方ホバー用ブラシ23Rと、第2左方ホバー用ブラシ23Lと、を備える。
【0104】
第2右方ホバー用ブラシ23Rは、第2回転軸24A2の長手方向の一端側に配置される。具体的には、第2右方ホバー用ブラシ23Rは、第2回転ブラシ28の一端(第2回転ブラシ28の右側の端)よりも外側(右方)に配置される。第2右方ホバー用ブラシ23Rの構成については、後述する。
【0105】
第2左方ホバー用ブラシ23Lは、第2回転軸24A2の長手方向の他端側に配置される。具体的には、第2左方ホバー用ブラシ23Lは、第2回転ブラシ28の他端(第2回転ブラシ28の左側の端)よりも外側(左方)に配置される。第2左方ホバー用ブラシ23Lの構成については、後述する。
【0106】
このように、第2回転ブラシ28は、第2右方ホバー用ブラシ23Rと第2左方ホバー用ブラシ23Lとの間に配置される。
【0107】
また、第2回転軸24A2の軸方向の第2中心点(不図示)から第2右方ホバー用ブラシ23Rまでの距離は、第2中心点から第2左方ホバー用ブラシ23Lまでの距離と等しい。
【0108】
このように、吸引ヘッド20において、第1右方ホバー用ブラシ22Rと第2右方ホバー用ブラシ23Rのそれぞれは、第1中心点と第2中心点とを結ぶ線(仮想線)を中心として、第1左方ホバー用ブラシ22Lと第2左方ホバー用ブラシ23Lのそれぞれと線対称である。
【0109】
また、吸引ヘッド20において、第1右方ホバー用ブラシ22Rと第1左方ホバー用ブラシ22Lのそれぞれは、第1回転軸24A1と第2回転軸24A2それぞれから等距離の線(仮想線)を中心として、第2右方ホバー用ブラシ23Rと第2左方ホバー用ブラシ23Lのそれぞれと線対称である。
【0110】
第1右方ホバー用ブラシ22Rの構成は、第1左方ホバー用ブラシ22Lの構成と、第2右方ホバー用ブラシ23Rの構成と、第2左方ホバー用ブラシ23Lの構成と、同様である。そのため、各左右のホバー用ブラシの構成について、第1右方ホバー用ブラシ22Rを例に説明する。
【0111】
第1右方ホバー用ブラシ22Rは、第1右方回転体(不図示)と、第1右方回転体の外縁に取り付けられる第1右方ブラシ部222Rと、を備える。
【0112】
第1右方回転体は、第1回転軸24A1に取り付けられる。第1右方回転体は、例えば、プラスチックやABS樹脂などの合成樹脂製である。第1右方回転体の外径は、第1回転体271の外径と同じである。第1右方回転体は、第1回転体271に連続して、一体に形成される。すなわち、第1右方回転体は、第1回転体271と同一部材で形成された一体物である。
【0113】
第1右方ブラシ部222Rは、第1右方回転体の外周に取り付けられた第1右方基布(不図示)と、第1右方基布上から突出するように第1右方基布に織り込まれた第1右方パイル部224Rと、を備える。第1右方パイル部224Rは、第1右方基布に織り込まれた複数の種類の毛の集合体である。第1右方パイル部を構成する毛の種類は、例えば、ポリアミド製の毛やアクリル樹脂製の毛などの任意の材質の毛である。
【0114】
第1右方パイル部224Rを構成する毛の長さは、清掃部274を構成する毛の長さよりも長い。これにより、第1右方ホバー用ブラシ22R(第1ホバー用ブラシ22)の外径は、第1回転ブラシ27の外径よりも大きい。
【0115】
なお、第1右方回転体の外径は、第1回転体の外径と異なってもよい。この場合、第1右方ホバー用ブラシ22R(第1ホバー用ブラシ22)の外径が、第1回転ブラシ27の外径よりも大きくなるように、第1右方パイル部を構成する毛の長さと、清掃部を構成する毛の長さと、が設定される。
【0116】
前述のとおり、第1右方ホバー用ブラシ22Rの構成は、第1左方ホバー用ブラシ22Lの構成と、第2右方ホバー用ブラシ23Rの構成と、第2左方ホバー用ブラシ23Lの構成と、同様である。すなわち、第1左方ホバー用ブラシ22Lは、第1左方回転体(不図示)と、第1左方ブラシ部(不図示)と、を備える。第1左方ブラシ部は、第1左方基布(不図示)と、第1左方パイル部(不図示)と、を備える。
【0117】
また、第2右方ホバー用ブラシ23Rは、第2右方回転体(不図示)と、第2右方ブラシ部232R(図10参照)と、を備える。第2右方ブラシ部232Rは、第2右方基布(不図示)と、第2右方パイル部234R(図10参照)と、を備える。さらに、第2左方ホバー用ブラシ23Lは、第2左方回転体(不図示)と、第2左方ブラシ部(不図示)と、を備える。第2左方ブラシ部は、第2左方基布(不図示)と、第2左方パイル部(不図示)と、を備える。
【0118】
第1右方パイル部224Rの全部または先端部分と、第1左方パイル部の全部または先端部分とは、本発明における「第1摩擦力低減部材の第1外縁部」の例である。すなわち、第1ホバー用ブラシ22は、第1外縁部を備える。
【0119】
第2右方パイル部234Rの全部または先端部分と、第2左方パイル部の全部または先端部分とは、本発明における「第2摩擦力低減部材の第2外縁部」の例である。すなわち、第2ホバー用ブラシ23は、第2外縁部を備える。
【0120】
キャスター部21は、吸引ヘッド20に取り付けられて、吸引ヘッド20の進行方向に沿って、回転する。キャスター部21は、清掃面CS上を全方位に亘って回動可能である。キャスター部21の下端の高さ位置は、第1回転ブラシ27の下端の高さ位置と、第2回転ブラシ28の下端の高さ位置と、同じである。キャスター部21は、清掃面CSに対する第1回転ブラシ27の接地高さと、清掃面CSに対する第2回転ブラシ28の接地高さと、を一定に維持する。すなわち、清掃面CSに対するキャスター部21の接地面は、一対の回転ブラシ27,28の接地面と略同一平面上である。
【0121】
また、キャスター部21の下端の高さ位置は、第1ホバー用ブラシ22の下端の高さ位置と、第2ホバー用ブラシ23の下端の高さ位置よりも、上方である。
【0122】
キャスター部21は、第1回転軸24A1と第2回転軸24A2それぞれから等距離の線(仮想線)上に配置される。キャスター部21は、第1キャスター部21Rと第2キャスター部21Lとを備える。第1キャスター部21Rの形状と大きさと質量それぞれは、第2キャスター部21Lの形状と大きさと質量それぞれと同じである。
【0123】
第1キャスター部21Rは、第1回転軸24A1と第2回転軸24A2それぞれから等距離の線(仮想線)上において、一対の回転ブラシ27,28の長手方向の一端側に配置される。第1キャスター部21Rの構成については、後述する。
【0124】
第2キャスター部21Lは、第1回転軸24A1と第2回転軸24A2それぞれから等距離の線(仮想線)上において、一対の回転ブラシ27,28の長手方向の他端側に配置される。第2キャスター部21Lの構成については、後述する。
【0125】
第1キャスター部21Rと第2キャスター部21Lとを結ぶ線(仮想線)は、第1回転軸24A1と第2回転軸24A2それぞれから等距離の線(仮想線)に一致する。すなわち、第1キャスター部21Rと第2キャスター部21Lとを結ぶ線(仮想線)の方向は、第1回転軸24A1の軸方向と第2回転軸24A2の軸方向それぞれと平行である。つまり、第1キャスター部21Rと第2キャスター部21Lとを結ぶ線(仮想線)の方向は、一対の回転ブラシ27,28の長手方向と平行である。
【0126】
第2キャスター部21Lの構成は、第1キャスター部21Rの構成と同様である。そのため、キャスター部21の構成について、第1キャスター部21Rの構成を例に、図9図11とを参照しながら説明する。
【0127】
図11は、図8のB-B線における断面図である。
【0128】
第1キャスター部21Rは、車輪211Rと、回動部212Rと、車輪軸AX1と、回動軸AX2と、を備える。
【0129】
車輪211Rは、車輪軸AX1に取り付けられる。車輪211Rは、図11に実線矢印で示されているように、車輪軸AX1を中心に回転する。車輪軸AX1は、回動部212Rに取り付けられる。
【0130】
回動部212Rは、回動軸AX2に取り付けられる。回動部212Rは、図11に一点鎖線矢印で示されているように、回動軸AX2を中心に回転する。回動部212Rは、車輪軸AX1を備えると共に、車輪211Rの上方略半分を収容する。
【0131】
図9を参照して、第1キャスター部21Rの動作を説明する。
【0132】
吸引ヘッド20が前後方向に移動する場合、回動部212Rは、車輪軸AX1が左右方向と平行になるように、回動軸AX2(図11参照)を中心に回動する。回動部212Rがこの位置に回動した上で、車輪211Rは車輪軸AX1を中心に回転する。その結果、吸引ヘッド20は、スムーズに前後方向に移動する。
【0133】
吸引ヘッド20が左右方向に移動する場合、回動部212Rは、車輪軸AX1が前後方向と平行になるように、回動軸AX2を中心に回動する。回動部212Rがこの位置に回動した上で、車輪211Rは車輪軸AX1を中心に回転する。その結果、吸引ヘッド20は、スムーズに左右方向に移動する。
【0134】
前述のとおり、第2キャスター部21Lの構成は、第1キャスター部21Rの構成と同様である。すなわち、第2キャスター部21Lは、図9に示されるように、車輪211Lと、回動部212Lと、車輪軸AX1と、回動軸(不図示)と、を備える。吸引ヘッド20が任意の方向に移動するとき、第2キャスター部21Lは、第1キャスター部21Rの前述の動作と同じ動作をする。
【0135】
図8図10とに戻る。
安全キャスター25は、吸引部20bに取り付けられる。安全キャスター25は、吸引部20bに対して、上下方向(図8における紙面上下方向)に進退可能である。安全キャスター25は、前後方向に回転可能な車輪251を備える。
【0136】
安全キャスター25は、吸引ヘッド20が清掃面CSに載置された状態(以下「載置状態」という。)のとき、上方に後退する。第1モータと第2モータとは、載置状態のとき通電状態になる。通電状態の第1モータと第2モータとは、一対の回転ブラシ27,28を駆動する。駆動された一対の回転ブラシ27,28は、回転する。清掃面CSに対する安全キャスター25の接地高さ位置(安全キャスター25の下端の高さ位置)は、載置状態のとき、清掃面CSに対するキャスター部21の接地高さ位置(キャスター部21の下端の高さ位置)と同じ高さ位置になる(図12参照)。
【0137】
一方、安全キャスター25は、離間状態のとき、下方に前進する。第1モータと第2モータとは、離間状態のとき通電状態が解除された状態(非通電状態)になる。非通電状態の第1モータと第2モータとは、一対の回転ブラシ27,28を駆動しない。駆動されない一対の回転ブラシ27,28は、回転しない。つまり、通電状態において駆動されて回転していた一対の回転ブラシ27,28の回転は、非通電状態で止まる。安全キャスター25の下端の高さ位置は、離間状態のとき、キャスター部21の下端の高さ位置よりも下方に位置する。
【0138】
第1モータは、第1回転軸24A1を回転駆動させる。第1モータは、一対の回転ブラシ27,28の長手方向の他端側に配置される。具体的には、第1モータは、吸引口20aよりも他端側に配置される。
【0139】
第2モータは、第2回転軸24A2を回転駆動させる。第2モータは、一対の回転ブラシ27,28の長手方向の一端側に配置される。具体的には、第1モータは、吸引口20aよりも一端側に配置される。
【0140】
このように、第1モータと第2モータとは、一対の回転ブラシ27,28の長手方向において、吸引口20aの両側に配置される。換言すれば、吸引口20aは、第1モータと第2モータとの間に配置される。
【0141】
●吸引ヘッド(2)の載置状態の構成
図12は、吸引ヘッド20が清掃面CSに載置された状態を示す模式断面図である。
同図は、掃除機100の使用時に、吸引ヘッド20が清掃面CSに載置されることで、第1キャスター部21Rと、安全キャスター25と、第1回転ブラシ27と、第1右方ホバー用ブラシ22Rと、第2回転ブラシ28と、第2右方ホバー用ブラシ23Rとが、清掃面CSに当接していることを示す。
【0142】
前述のとおり、載置状態のとき、安全キャスター25は、上方に後退する。このときの安全キャスター25の清掃面CSに対する接地面は、キャスター部21の清掃面CSに対する接地面と略同一平面上である。
【0143】
第1ホバー用ブラシ22(第1右方ホバー用ブラシ22R,第1左方ホバー用ブラシ22L(図9参照))の外径は、第1回転ブラシ27の外径よりも大きい。そのため、吸引ヘッド20が清掃面CSに載置される際、第1ホバー用ブラシ22は、第1回転ブラシ27やキャスター部21よりも先に清掃面CSに当接する。
【0144】
第1右方ホバー用ブラシ22Rの第1外縁部は、複数の種類の毛の集合体で構成される。そのため、第1回転ブラシ27(第1回転ブラシ27の外縁部)とキャスター部21とが清掃面CSに当接するとき、第1右方ホバー用ブラシ22Rは、第1外縁部が変形して(倒れて)、清掃面CSに載置される。
【0145】
同様に、第1回転ブラシ27とキャスター部21とが清掃面CSに当接するとき、第1左方ホバー用ブラシ22Lは、第1外縁部が変形して、清掃面CSに載置される。
【0146】
すなわち、第1回転ブラシ27(第1回転ブラシ27の外縁部)とキャスター部21とが清掃面CSに当接するとき、第1ホバー用ブラシ22は、第1外縁部が変形して、清掃面CSに載置される。
【0147】
第2ホバー用ブラシ23(第2右方ホバー用ブラシ23R,第2左方ホバー用ブラシ23L(図9参照))の外径は、第2回転ブラシ28の外径よりも大きい。そのため、吸引ヘッド20が清掃面CSに載置される際、第2ホバー用ブラシ23は、第2回転ブラシ28やキャスター部21よりも先に清掃面CSに当接する。
【0148】
第2右方ホバー用ブラシ23Rの第2外縁部は、複数の種類の毛の集合体で構成される。そのため、第2回転ブラシ28(第2回転ブラシ28の外縁部)とキャスター部21とが清掃面CSに当接するとき、第2右方ホバー用ブラシ23Rは、第2外縁部が変形して(倒れて)、清掃面CSに載置される。
【0149】
同様に、第2回転ブラシ28とキャスター部21とが清掃面CSに当接するとき、第2左方ホバー用ブラシ23Lは、第2外縁部が変形して、清掃面CSに載置される。
【0150】
すなわち、第2回転ブラシ28(第2回転ブラシ28の外縁部)とキャスター部21とが清掃面CSに当接するとき、第2ホバー用ブラシ23は、第2外縁部が変形して、清掃面CSに載置される。
【0151】
キャスター部21の下端の高さ位置は、第1回転ブラシ27の下端の高さ位置と、第2回転ブラシ28の下端の高さ位置と、同じである。そのため、載置状態において、キャスター部21と一対の回転ブラシ27,28とは、清掃面CSに当接する。換言すれば、載置状態において、一対の回転ブラシ27,28の清掃部274,284が清掃面CSに当接しているとき、キャスター部21は、清掃面CSに当接する。
【0152】
ここで、清掃面CSに当接する一対の回転ブラシ27,28の清掃部274,284を構成する毛の先端部分が必要以上に倒れると、一対の回転ブラシ27,28が回転しても、各清掃部274,284は清掃面CSを撫でるだけになり、ゴミを掻き出せない。
【0153】
そのため、「第1回転ブラシ27の外縁部が清掃面に当接する」状態は、第1回転ブラシ27の外縁部が清掃面CSに接触する程度である。すなわち、第1回転ブラシ27の外縁部が清掃面に当接する状態は、清掃部274(図10参照)を構成する毛の先端部分が清掃面CSに接触する程度である。つまり、第1回転ブラシ27の外縁部が清掃面に当接する状態は、清掃部274を構成する毛の先端部分がほとんど倒れない(変形しない)か、あるいは、若干倒れる程度である。
【0154】
同様に、「第2回転ブラシ28の外縁部が清掃面に当接する」状態は、第2回転ブラシ28の外縁部が清掃面CSに接触する程度である。すなわち、第2回転ブラシ28の外縁部が清掃面に当接する状態は、清掃部284(図10参照)を構成する毛の先端部分が清掃面CSに接触する程度である。つまり、第2回転ブラシ28の外縁部が清掃面に当接する状態は、清掃部284を構成する毛の先端部分がほとんど倒れないが、あるいは、若干倒れる程度である。
【0155】
●吸引ヘッド(2)の動作
前述のとおり、第1回転ブラシ27の回転方向は、第2回転ブラシ28の回転方向とは逆である。また、第1回転ブラシ27のトルクは、第2回転ブラシ28のトルクと同じである。さらに、第1回転ブラシ27の回転運動により清掃面CSに対して発生する力の大きさの絶対値は、第2回転ブラシ28の回転運動により清掃面CSに対して発生する力の大きさの絶対値と同一である。これらにより、第1回転ブラシ27の回転により発生する第1回転ブラシ27が前方に進む力は、第2回転ブラシ28の回転により発生する第2回転ブラシ28が後方に進む力に相殺される。換言すれば、第1回転ブラシ27の回転により発生する前方への力(トラクション)は、第2回転ブラシ28の回転により発生する後方への力(トラクション)に相殺される。
【0156】
同様に、第1ホバー用ブラシ22のトルクは、第2ホバー用ブラシ23のトルクと同じである。また、第1ホバー用ブラシ22の回転運動により清掃面CSに対して発生する力の大きさの絶対値は、第2ホバー用ブラシ23の回転運動により清掃面CSに対して発生する力の大きさの絶対値と同一である。これらにより、第1ホバー用ブラシ22の回転により発生する第1ホバー用ブラシ22が前方に進む力は、第2ホバー用ブラシ23の回転により発生する第2ホバー用ブラシ23が後方に進む力に相殺される。
【0157】
また、第1回転ブラシ27の外縁部とキャスター部21とが清掃面CSに当接するとき、第1ホバー用ブラシ22は、その外縁部が変形して(倒れて)、清掃面CSに当接する。第1ホバー用ブラシ22の外縁部(第1外縁部)が変形する方向は、第1回転ブラシ27の回転方向とは逆、すなわち、時計回り方向である。第2回転ブラシ28の外縁部とキャスター部21とが清掃面CSに当接するとき、第2ホバー用ブラシ23は、その外縁部が変形して(倒れて)、清掃面CSに当接する。第2ホバー用ブラシ23の外縁部(第2外縁部)が変形する方向は、第2回転ブラシ28の回転方向とは逆、すなわち、反時計回り方向である。そのため、第1ホバー用ブラシ22と、第2ホバー用ブラシ23と、キャスター部21とは、吸引ヘッド20が載置状態のとき、清掃面CSに対する吸引ヘッド20の支点として作用する。
【0158】
第1ホバー用ブラシ22と、第2ホバー用ブラシ23と、キャスター部21とが、支点として作用することで、第1回転ブラシ27と第2回転ブラシ28との清掃面CSに対する接地面は、減少する。特に、第1ホバー用ブラシ22の第1外縁部と、第2ホバー用ブラシ23の第2外縁部とは変形して(倒れて)清掃面CSに当接するため、摩擦力は減少する。その結果、吸引ヘッド20の瞬間的な摩擦係数が減り、吸引ヘッド20はその場にとどまりながら第1回転ブラシ27と第2回転ブラシ28とが回転する。
【0159】
このように、吸引ヘッド20の摩擦係数が減少するため、吸引ヘッド20は清掃面CSから浮いたような状態となる。また、第1回転ブラシ27が前方に進む力は、第2回転ブラシ28が後方に進む力に相殺される。そのため、掃除機100のユーザは、所望の方向に吸引ヘッド20をスムーズに移動操作できる。
【0160】
また、キャスター部21(第1キャスター部21R,第2キャスター部21L)は、車輪軸AX1と回動軸AX2とにより、全方位に亘って回動可能である。そのため、キャスター部21は、ユーザが吸引ヘッド20を移動させる際の操作の快適性を妨げない。これにより、ユーザは、所望の方向に吸引ヘッド20をスムーズに移動操作できる。
【0161】
●まとめ(2)●
以上説明した第2実施形態における掃除機100によれば、第1回転ブラシ27の回転により発生する第1回転ブラシ27が前方に進む力は、第2回転ブラシ28の回転により発生する第2回転ブラシ28が後方に進む力に相殺される。すなわち、吸引ヘッド20の摩擦係数は、減少する。これにより、掃除機100は、吸引ヘッド20の滑るような軽い操作性を実現する。
【0162】
また、吸引ヘッド20の摩擦係数が減少することにより、一対の回転ブラシ27,28を駆動する第1モータと第2モータそれぞれにかかる負荷は、小さくなる。第1モータと第2モータそれぞれにかかる負荷が小さくなることは、各モータの小型化やコストの低減化に寄与する。
【0163】
さらに、吸引ヘッド20の摩擦係数が減少することにより、一対の回転ブラシ27,28の回転により発生する力の数値(絶対値)は小さくなる。そのため、仮に第1モータと第2モータの一方または双方に回転数などのばらつきがある場合であっても、一対の回転ブラシ27,28の回転により発生する力の差は、小さくなる。その結果、第1モータと第2モータそれぞれは、回転数制御などの複雑な制御を必要としない。
【0164】
さらにまた、前述のとおり、一対の回転ブラシ27,28の用途や機能は、第1ホバー用ブラシ22および第2ホバー用ブラシ23の用途や機能と、異なる。また、掃除機100は、一対の回転ブラシ27,28と、第1ホバー用ブラシ22および第2ホバー用ブラシ23と、を別々に備える。そのため、一対の回転ブラシ27,28と、第1ホバー用ブラシ22および第2ホバー用ブラシ23とは、それぞれ用途や機能に応じて最適に設計される。
【0165】
さらにまた、第2実施形態における掃除機100によれば、吸引ヘッド20が載置状態のとき、第1ホバー用ブラシ22と、第2ホバー用ブラシ23と、キャスター部21とは、清掃面CSに対する吸引ヘッド20の支点として作用する。そのため、第1回転ブラシ27や第2回転ブラシ28の清掃面CSに対する接地面は、減少する。その結果、吸引ヘッド20の瞬間的な摩擦係数が減る。これにより、吸引ヘッド20がその場にとどまりながら、第1回転ブラシ27と第2回転ブラシ28とは回転する。そのため、掃除機100のユーザは、所望の方向に吸引ヘッド20をスムーズに移動操作できる。
【0166】
なお、以上説明した第2実施形態では、吸引ヘッド20は、安全キャスター25を備えていた。しかし、本発明において、吸引ヘッドは、安全キャスターを備えなくてもよい。
【0167】
また、以上説明した第2実施形態では、第1ホバー用ブラシ22は、第1回転ブラシ27の長手方向において、第1回転ブラシ27よりも外側に配置されていた。しかし、第1ホバー用ブラシの配置位置は、これに限らない。すなわち、第1ホバー用ブラシを構成する第1右方ホバー用ブラシと第1左方ホバー用ブラシとは、第1中心点と第2中心点とを結ぶ線(仮想線)を中心として、線対称となる位置に配置されればよい。
【0168】
同様に、第2ホバー用ブラシ23は、第2回転ブラシ28の長手方向において、第2回転ブラシ28よりも外側に配置されていた。しかし、第2ホバー用ブラシの配置位置は、これに限らない。すなわち、第2ホバー用ブラシを構成する第2右方ホバー用ブラシと第2左方ホバー用ブラシとは、第1中心点と第2中心点とを結ぶ線(仮想線)を中心として、線対称となる位置に配置されればよい。
【0169】
換言すれば、第1右方ホバー用ブラシと第2右方ホバー用ブラシとは、第1中心点と第2中心点とを結ぶ線(仮想線)を中心として、第1左方ホバー用ブラシと第2左方ホバー用ブラシとに線対称となる位置に配置されればよい。同様に、第1右方ホバー用ブラシと第1左方ホバー用ブラシとは、第1回転軸と第2回転軸それぞれから等距離の線(仮想線)を中心として、第2右方ホバー用ブラシと第2左方ホバー用ブラシとに線対称となる位置に配置されればよい。
【0170】
なお、本発明において、第1ホバー用ブラシを構成するブラシの数は、2つに限らない、すなわち、例えば、第1ホバー用ブラシを構成するブラシの数は、「1」または「3以上」でもよい。つまり、第1ホバー用ブラシが1つのブラシで構成されるとき、そのブラシは、第1中心点に配置される。また、例えば、第1ホバー用ブラシが3つのブラシで構成されるときは、1つのブラシは第1中心点に配置され、残る2つのブラシは第1中心点から等距離の第1回転軸上に配置される。
【0171】
同様に、本発明において、第2ホバー用ブラシを構成するブラシの数は、2つに限らない、すなわち、例えば、第2ホバー用ブラシを構成するブラシの数は、「1」または「3以上」でもよい。つまり、ホバー用ブラシが1つのブラシで構成されるとき、そのブラシは、第2中心点の位置に配置される。また、例えば、第2ホバー用ブラシが3つのブラシで構成されるときは、1つのブラシは第2中心点に配置され、残る2つのブラシは第2中心点から等距離の第2回転軸上に配置される。
【符号の説明】
【0172】
1 掃除機
2 吸引ヘッド
2a 吸引口
3 本体部
4 持ち手棒部
5 自在継手部
6 カバー体
6a 上部カバー
6b,6c サイドカバー
6d,6e ローラーカバー
7,8 回転ブラシ
9 駆動機構
10 キャスター部
10R 第1のキャスター部
10L 第2のキャスター部
11 吸引部
100 掃除機
20 吸引ヘッド
20a 吸引口
21 キャスター部
21R 第1キャスター部
21L 第2キャスター部
22 第1ホバー用ブラシ(第1摩擦力低減部材)
22R 第1右方ホバー用ブラシ(第1右方摩擦力低減部材)
22L 第1左方ホバー用ブラシ(第1左方摩擦力低減部材)
23 第2ホバー用ブラシ(第2摩擦力低減部材)
23R 第2右方ホバー用ブラシ(第2右方摩擦力低減部材)
23L 第2左方ホバー用ブラシ(第2左方摩擦力低減部材)
24A1 第1回転軸
24A2 第2回転軸
27 第1回転ブラシ
28 第2回転ブラシ
CS 清掃面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12