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特開2023-175058位置推定通信装置、位置推定通信システム及び位置推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175058
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】位置推定通信装置、位置推定通信システム及び位置推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/76 20060101AFI20231205BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20231205BHJP
   G01S 5/12 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G01S13/76
G01S7/02 218
G01S5/12
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083550
(22)【出願日】2022-05-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平峰 正信
【テーマコード(参考)】
5J062
5J070
【Fターム(参考)】
5J062AA01
5J062BB01
5J062BB05
5J062CC14
5J062GG02
5J070AB01
5J070AC02
5J070AC12
5J070AC13
5J070AD06
5J070AD10
5J070AE09
5J070AF03
5J070BC15
(57)【要約】
【課題】小型化されたアレイアンテナ構成によって無線通信機の3次元空間の位置を容易に推定できる位置推定通信装置を得る。
【解決手段】本開示の位置推定通信装置1は、電波を送受信する複数のアンテナ素子31、32、33を、互いの距離が電波の波長の1/2以下となるようにアレイ状に配置されるアンテナ部3と、複数のアンテナ素子31、32、33のそれぞれに対応し、無線通信機2との間で電波による双方向通信を行い、受信電波の位相情報及び無線通信機2との間の送受信時の時刻情報を出力する無線回路41、42、43、及び無線回路41、42、43の動作を同期化する同期信号を出力する同期回路44を有し、受信電波の位相情報及び送受信時の時刻情報を出力する無線通信処理部4と、受信電波の位相情報及び送受信時の時刻情報に基づき、無線通信機2の位置を推定する位置推定部5と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送受信する複数のアンテナ素子を、互いの距離が前記電波の波長の1/2以下となるようにアレイ状に配置されるアンテナ部と、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれに対応して一つずつ設けられ、前記複数のアンテナ素子を用いて外部の無線通信機との間で前記電波による双方向通信を行い、前記複数のアンテナ素子による受信電波の位相情報及び前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の送受信時の時刻情報を出力する複数の無線回路、前記複数の無線回路の動作を同期化する同期信号を出力する同期回路、を有し、前記複数のアンテナ素子における前記受信電波の位相情報及び前記送受信時の時刻情報を出力する無線通信処理部と、
前記受信電波の位相情報及び前記送受信時の時刻情報に基づき、前記無線通信機の位置を推定する位置推定部と、
を備える位置推定通信装置。
【請求項2】
前記位置推定部は、前記受信電波の位相情報を用いて、隣接する2つの前記アンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する電波の到来角度を算出し、前記送受信時の時刻情報を用いて前記アンテナ素子と前記無線通信機との間の距離を算出し、前記電波の到来角度及び前記距離に基づいて、前記無線通信機の3次元位置を推定することを特徴とする請求項1に記載の位置推定通信装置。
【請求項3】
前記アンテナ部は、3個の前記アンテナ素子を有し、3個の前記アンテナ素子は、正三角形の各頂点位置にそれぞれ配置され2次元アレイ状を呈することを特徴とする請求項1または2に記載の位置推定通信装置。
【請求項4】
前記アンテナ部は、n個の前記アンテナ素子を有し、n個の前記アンテナ素子は、n角形の各頂点位置にそれぞれ配置され2次元アレイ状を呈することを特徴とする請求項1または2に記載の位置推定通信装置。
【請求項5】
前記位置推定部は、
前記受信電波の位相情報を用いて隣接するアンテナ素子間の受信電波の位相差を計測する位相差計測部と、
前記受信電波の位相差を用いて、隣接する2つの前記アンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する前記電波の到来角度を計算する到来角度計算部と、
前記無線通信処理部が出力する前記送受信時の時刻情報に基づき、前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の前記電波の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、
前記電波の伝搬時間に基づき、前記アンテナ素子と前記無線通信機との間の前記距離を計算する距離計算部と、
複数の前記1次元アレイアンテナのそれぞれのアンテナ軸の座標系に対する角度、及び前記1次元アレイアンテナごとの前記電波の到来角度及び前記距離に基づき算出された前記無線通信機が存在する推定領域を用いて、3次元位置を前記無線通信機の位置として推定する3次元位置推定部と、
を備える請求項2に記載の位置推定通信装置。
【請求項6】
前記位置推定部は、
前記アンテナ部を回転させる回転機構部と、
前記アンテナ素子が受信する前記受信電波の位相情報に基づき、隣接するアンテナ素子間の受信電波の位相差を計測する位相差計測部と、
前記受信電波の位相差を用いて、前記1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する前記電波の到来角度を計算する到来角度計算部と、
前記無線通信処理部が出力する送受信時の時刻情報に基づき、前記無線通信機との間の前記電波の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、
前記電波の伝搬時間を用いて前記無線通信機との間の距離を計算する距離計算部と、
前記受信電波の位相情報及び前記距離を取得した時点の前記回転機構部の制御による回転角度、前記1次元アレイアンテナにおける前記電波の到来角度、及び前記距離に基づき前記無線通信機が存在する推定領域を逐次計算し、前記アンテナ部の回転前後の現在時刻の推定領域及び過去時刻の推定領域に基づき算出された3次元位置を前記無線通信機の位置として推定する3次元位置推定部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の位置推定通信装置。
【請求項7】
前記アンテナ部は、2個以上のアンテナ素子を有し、全ての前記アンテナ素子を直線状に配置した1次元アレイアンテナとして構成されることを特徴とする請求項6に記載の位置推定通信装置。
【請求項8】
前記位置推定通信装置及び前記無線通信機の通信方式は、UWB通信方式であることを特徴とする請求項1または2に記載の位置推定通信装置。
【請求項9】
位置推定通信装置と無線通信機との間で電波を用いて双方向通信することにより、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定する位置推定通信システムであって、
前記位置推定通信装置は、請求項1、2、5、6、7のいずれか1項に記載の位置推定通信装置であり、
前記無線通信機は、
前記位置推定通信装置と前記電波による双方向通信を行う端末アンテナ部と、
前記端末アンテナ部によって送受信する前記電波の処理を行う端末無線通信処理部と、
を備える位置推定通信システム。
【請求項10】
前記位置推定通信装置及び前記無線通信機の通信方式は、UWB通信方式であることを特徴とする請求項9に記載の位置推定通信システム。
【請求項11】
前記無線通信機は、携帯端末であることを特徴とする請求項9に記載の位置推定通信システム。
【請求項12】
位置推定通信装置と無線通信機との間で電波による双方向通信を行うことにより、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定する位置推定方法であって、
前記位置推定通信装置の複数のアンテナ素子の中から1つのアンテナ素子を選択するステップと、
選択された前記アンテナ素子に対応する無線回路から前記無線通信機に対して前記電波による無線信号を出力するステップと、
前記無線通信機から返信された前記無線信号を前記複数のアンテナ素子の中の2つにより構成される1次元アレイアンテナによって受信するステップと、
前記無線回路が出力する送受信時の時刻情報を用いて前記電波の伝搬時間を計測するステップと、
前記電波の伝搬時間を用いて前記位置推定通信装置と前記無線通信機との間の距離を算出するステップと、
前記無線回路が出力する受信電波の位相情報に基づき1次元アレイアンテナにおける受信電波の位相差を計測するステップと、
前記受信電波の位相差に基づき前記電波の到来角度を計算するステップと、
前記電波の到来角度及び前記距離を用いて、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定するステップと、
を備える位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、位置推定通信装置、位置推定通信システム及び位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電波による無線通信機、あるいは、無線通信機を実装する対象物の位置を推定して、推定された位置情報を活用するシステムには、様々なものが存在する。例えばかかるシステムの一例として、スマートエントリー・スマートスタートシステム(以下、スマートシステムと呼ぶ)がある。また、近年では、スマートフォンを鍵としたデジタルキーというスマートシステムも市販されるようになった。
【0003】
このようなスマートシステムでは、ユーザが鍵をポケットあるいはカバンに入れておいても、一定の距離まで車両に接近すると、ユーザ側のドア照明が点灯し、ユーザがさらに接近するとドアが解錠する。また、ユーザが車両から一定距離を離れると自動的にドアを施錠する。ユーザが車両内に乗り込んだ場合は、従来のように鍵穴にキーを挿すことなく、車両内に装備されたエンジンスタートボタンを押すことでエンジンが始動するようになっている。
【0004】
他の一例としてリモートパーキングシステムがある。これは、車両の外からスマートフォンあるいは専用鍵を用いて、車両が駐車位置までの自立走行を許可するコントローラとして使用される。この場合、コントローラを持ったユーザが車両と一定の距離以内あるいは位置関係に滞在していることが安全機能上の動作許可条件となっている。
【0005】
さらに、車両以外へのスマートシステムの展開も考えられる。たとえば、ドローンと操縦者との位置関係を推定して飛行制御を行いたい場合、ドローンとコントローラにそれぞれ無線通信機を搭載し、無線通信機間の双方向通信によって位置関係を推定することが可能であり、位置情報を利用することで、スマートシステムの安全性及びサービスの向上が期待される。
【0006】
また、屋内外における車両、人などの位置を推定するシステムとしてリアルタイム位置情報システム(Real Time Location System:RTLS)が挙げられる。一般に知られているシステムとして、全地球測位システム(Global Positioning System:GPS)を適用したシステムがある。GPSは、車両、スマートフォンのユーザのナビゲーションの用途などに広く利用されている。GPSを適用したRTLSの場合、位置推定には、複数の衛星からの電波を受信する必要がある。
【0007】
しかしながら、建造物による遮蔽、トンネル等の構造物の中、特に屋内場所においてはGPSの電波受信が困難となる場合があった。このため、GPSの衛星に代わって、無線通信機を設置し、無線通信機に関する座標位置と距離情報に基づき位置推定するRTLSシステムがある。RTLSシステムは、ユーザから預かった車両を所定の位置に自動駐車する自動バレーパッキング、屋内における無線端末の所有者、車両などの位置を地図上に反映して提供するなど、様々なシステムが提案され、また、提供されている。
【0008】
特許文献1に開示されている車両用位置推定システムは、車両と無線端末の一種である携帯端末との距離及び位置関係を無線通信によって推定するスマートシステムに関するものである。開示された車両用位置推定システムでは、車両に搭載された無線通信機とユーザによって携帯される携帯端末との間の電波の伝搬時間に基づき車両に対する携帯端末との距離を算出し、算出された距離に基づいて携帯端末の位置を推定する。車載無線通信機と携帯端末との間の通信方式として超広帯域情報システム(Ultra Wide Band:UWB)を使用し、インパルス信号を送信してから受信するまでの伝搬時間に基づいて、両者の距離を算出する。両者の距離に基づく3辺測量方式等によって、車両に対する携帯端末の相対位置を推定する。UWB通信方式を用いることで高い位置精度を得ることができる。
【0009】
特許文献1に開示の車両用位置推定システムでは、3台以上の無線通信機を、それぞれ長い間隔をあけて設置する必要がある。車両内及び車両外全周にわたって位置を推定する場合は、多数の車載無線通信機の設置が必要となる。
【0010】
特許文献2に開示されている携帯機位置推定システムは、特許文献1と同様、車両と携帯端末との距離及び位置関係を無線通信によって推定するシステムであって、スマートシステムに限定せず、リモートパーキングシステムなどにも適用が容易になるように距離測定のための通信の手順を工夫している。
【0011】
特許文献2に開示されている携帯機位置推定システムは、特許文献1と同様、携帯端末の位置を推定するために、複数の無線通信機と通信することにより距離測定を実行する。一般に、測定精度を高めるためには、より多くの無線通信機と通信して距離を計測することが望ましいものの、無線通信機が増加するにともない、距離測定に要する通信回数が増加する。そこで、開示された携帯機位置推定システムでは、通信回数の増加を抑制するための通信手順を考案し、位置推定に必要な時間を短縮し、かつ、通信の際に消費される電力を低減している。
【0012】
特許文献3に開示された位置推定方法はRTLSに関するもので、特許文献1及び2と同様にUWB通信方式を利用する。開示された位置推定方法は、特許文献1及び2と同様に距離に基づく3辺測量方式であって、携帯端末と通信する無線通信機を位置推定したい領域に複数設置することを前提としている。距離測定のための通信には、ばらつきが存在し、ばらつきによって位置精度が低下する。そこで、特許文献3に開示された位置推定方法では、このばらつきを考慮して、ばらつきの大きさによって測定距離に重みづけするなどの手法で、ばらつき要因による推定位置の精度を高めようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2020-122727号公報
【特許文献2】国際公開2020/031550号
【特許文献3】特許第4567093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1ないし3に開示されたいずれの位置推定システムにおいても、携帯端末の位置を推定するためには携帯端末と通信する無線通信機が複数台必要となるので、無線通信機の台数が増える毎にシステム構築のためのコストが増加する。また、通信による測距は測定ばらつきがあるため、複数台の無線通信機を近距離に配置すると測定ばらつきにより推定位置が大きく変動しするという問題があった。
【0015】
かかる問題を解決するためには、複数台の無線通信機は近接配置することができないので、測定ばらつきを考慮して無線通信機間の間隔をあけて配置することが必要となる。したがって、複数台の無線通信機を設置するには一定の広さの空間エリアが必要となるため、レイアウトに制約が生じるという課題がある。位置推定システムを車両よりも小型の移動機、たとえばドローンに搭載しようとする場合、複数台の無線通信機を搭載することができないなどの問題もある。
【0016】
また、複数の無線通信機と通信する方式では、1回の位置推定のために無線通信機の台数分の通信を行う必要があるため、位置推定のための測定時間が長くなる。携帯端末などの移動体を遅延なく位置推定して追跡するためには、位置推定に要する計測時間をなるべく短縮する必要がある。特許文献2に記載の通信手順は、位置推定のための測定時間を短縮する方法を述べているものの、より一層の測定時間の短縮が望まれる。
【0017】
本開示は上記のような問題点を解消するためになされたもので、無線通信を利用して対象物の相対位置を推定する際に、小型化された無線通信処理部を有し、かつ、短い処理時間で位置を推定できる位置推定通信装置、位置推定通信システム及び位置推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示に係る位置推定通信装置は、
電波を送受信する複数のアンテナ素子を、互いの距離が前記電波の波長の1/2以下となるようにアレイ状に配置されるアンテナ部と、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれに対応して一つずつ設けられ、前記複数のアンテナ素子を用いて外部の無線通信機との間で前記電波による双方向通信を行い、前記複数のアンテナ素子による受信電波の位相情報及び前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の送受信時の時刻情報を出力する複数の無線回路、前記複数の無線回路の動作を同期化する同期信号を出力する同期回路、を有し、前記複数のアンテナ素子における前記受信電波の位相情報及び前記送受信時の時刻情報を出力する無線通信処理部と、
前記受信電波の位相情報及び前記送受信時の時刻情報に基づき、前記無線通信機の位置を推定する位置推定部と、を備える。
【0019】
本開示に係る位置推定通信システムは、
位置推定通信装置と無線通信機との間で電波を用いて双方向通信することにより、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定する位置推定通信システムであって、
前記位置推定通信装置は、上述の位置推定通信装置であり、
前記無線通信機は、
前記位置推定通信装置と前記電波による双方向通信を行う端末アンテナ部と、
前記端末アンテナ部によって送受信する前記電波の処理を行う端末無線通信処理部と、を備える。
【0020】
本開示に係る位置推定方法は、
位置推定通信装置と無線通信機との間で電波による双方向通信を行うことにより、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定する位置推定方法であって、
前記位置推定通信装置の複数のアンテナ素子の中から1つのアンテナ素子を選択するステップと、
選択された前記アンテナ素子に対応する無線回路から前記無線通信機に対して前記電波による無線信号を出力するステップと、
前記無線通信機から返信された前記無線信号を前記複数のアンテナ素子の中の2つにより構成される1次元アレイアンテナによって受信するステップと、
前記無線回路が出力する送受信時の時刻情報を用いて前記電波の伝搬時間を計測するステップと、
前記電波の伝搬時間を用いて前記位置推定通信装置と前記無線通信機との間の距離を算出するステップと、
前記無線回路が出力する受信電波の位相情報に基づき1次元アレイアンテナにおける受信電波の位相差を計測するステップと、
前記受信電波の位相差に基づき前記電波の到来角度を計算するステップと、
前記電波の到来角度及び前記距離を用いて、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本開示に係る位置推定通信装置、位置推定通信システム及び位置推定方法によれば、基板上に実装された複数のアンテナ素子によるアレイ状のアレイアンテナを用いて無線通信を行い、また、受信電波の位相差の測定時間が短縮されるため、装置及びシステムの小型化が可能で、かつ、短い処理時間で位置を推定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態1に係る位置推定通信装置及び位置推定通信システムの構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係る位置推定通信装置及び位置推定通信システムにおいて、アンテナ素子間の受信電波の位相差によって電波の到来角度を測定する方法を説明する模式図である。
図3】実施の形態1に係る位置推定通信装置及び位置推定通信システムにおいて、伝搬時間によって距離を測定する方法を説明する模式図である。
図4】実施の形態1に係る位置推定通信装置及び位置推定通信システムにおいて、電波の到来角度と距離を計測するためのアレイアンテナの基本構成を示す模式図である。
図5】実施の形態1に係る位置推定通信装置及び位置推定通信システムにおいて、電波の到来角度及び距離に基づき、無線通信機の推定位置として円周エリアを導出する様相を示す模式図である。
図6】実施の形態1に係る位置推定通信装置及び位置推定通信システムにおいて、2次元アレイアンテナによる電波の到来角度及び距離によって無線通信機の3次元位置を推定する様相を示す模式図である。
図7】実施の形態1に係る位置推定通信装置及び位置推定通信システムにおいて、2次元アレイアンテナによって無線通信機の3次元位置を推定する場合の様相を示す模式図である。
図8】実施の形態1に係る位置推定方法における位置推定の処理フローを表すフローチャートである。
図9】スマートキーレスに対する実施の形態1に係る位置推定通信システムと従来の位置推定通信システムによる実施例を比較した図である。
図10】RTLSに対する実施の形態1に係る位置推定通信システムと従来の位置推定通信システムによる実施例を比較した図である。
図11】実施の形態2に係る位置推定通信装置及び位置推定通信システムの構成を示す図である。
図12】実施の形態2に係る位置推定通信装置及び位置推定通信システムにおいて、1次元アレイアンテナを回転した場合の電波の到来角度及び距離によって無線通信機を位置推定する様相を示す模式図である。
図13】実施の形態2に係る位置推定方法における位置推定の処理フローを表すフローチャートである。
図14】実施の形態1及び2に係る位置推定通信装置及び位置推定通信システムを実現するハードウェア構成を示す図である。
図15】実施の形態1及び2に係る位置推定通信装置及び位置推定通信システムを実現するハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る位置推定通信装置及び位置推定通信システムの構成の一例を示す図である。
【0024】
<実施の形態1に係る位置推定通信システム100の構成>
位置推定通信システム100は、位置推定通信装置1及び無線通信機2を備える。位置推定通信装置1は、アンテナ部3と、無線通信処理部4と、位置推定部5と、で構成される。
【0025】
無線通信機2は、端末アンテナ部21と、端末無線通信処理部22と、を備える。無線通信機2は、位置推定通信装置1から送信された電波を、端末アンテナ部21によって受信し、端末無線通信処理部22において電波の受信処理をした後、送信信号を生成して、端末アンテナ部21を介して電波による返信処理を実施する。
【0026】
<実施の形態1に係る位置推定通信装置1の構成>
以下、位置推定通信装置1の各構成について、説明する。
アンテナ部3は、図1に示すように、3つのアンテナ素子である第1アンテナ素子31、第2アンテナ素子32、及び第3アンテナ素子33を基板上にパターン実装することにより構成している。なお、図1に示されたアンテナ部3は、アンテナ部の最少構成としての一例である。
【0027】
アンテナ部3の各アンテナ素子は、図1に示すように、一辺がUWB通信方式における電波の波長の1/2以下となる正三角形の各頂点位置にそれぞれ配置される。正三角形の各一辺上の2つのアンテナ素子は、1つの1次元アレイアンテナとして機能することができる。つまり、正三角形の各頂点にそれぞれ配置された各アンテナ素子は、正三角形の一辺ごとに1つの1次元アレイアンテナとして機能し、それぞれのアンテナ軸が互いに60度の角度を有する3組の1次元アレイアンテナを形成する。
【0028】
3組の1次元アレイアンテナは、具体的には、第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32、第2アンテナ素子32と第3アンテナ素子33、第3アンテナ素子33と第1アンテナ素子31の各組み合わせによってそれぞれ形成される。位置推定通信装置1は、それぞれのアンテナ素子を介して、無線通信機2に対して測位を目的とする送受信を行う。
【0029】
無線通信機2は、位置推定通信装置1のアンテナ素子から発せられた電波を端末アンテナ部21によって受信し、端末無線通信処理部22によって電波の受信処理をした後、返信信号を生成して、端末アンテナ部21を介して返信処理を実施する。
【0030】
無線通信処理部4は、第1アンテナ素子31、第2アンテナ素子32、及び第3アンテナ素子33に1つずつ対応した3つの無線回路である第1無線回路41、第2無線回路42、及び第3無線回路43と、全ての無線回路を同期動作させる同期回路44と、で構成される。位置推定通信装置1からの電波の送信時は、いずれか1つの無線回路が選択され、選択された無線回路に対応するアンテナ素子から電波が送信される。
【0031】
また、無線通信処理部4は、電波の受信時は同期回路44が同期信号を出力し、全ての無線回路が同期しながら、各無線回路に対応するアンテナ素子が受信する電波波形を処理する。無線通信処理部4は、電波の受信時は、正確に同一タイミングで、電波波形の位相を受信電波の位相情報φとして出力する。すなわち、無線通信処理部4は、第1アンテナ素子31、第2アンテナ素子32、及び第3アンテナ素子33にそれぞれ対応した受信電波の位相φn(n=1、2、3)を同時に出力する。また、無線通信処理部4は、電波の送受信時は、3つのアンテナ素子中のいずれかのアンテナ素子に関する送信時刻及び受信時刻を送受信時の時刻情報として出力する。
【0032】
位置推定部5は、第1無線回路41、第2無線回路42、及び第3無線回路43がそれぞれ出力する受信電波の位相情報φに基づいて、1次元アレイアンテナを構成する2つのアンテナ素子間の受信電波の位相差Δφを計測する位相差計測部51と、位相差Δφに基づいてアンテナ軸に対する電波の到来角度θを計算する到来角度計算部52と、第1無線回路41、第2無線回路42、及び第3無線回路43のいずれかが出力する送受信時の時刻情報に基づいて電波が往復する伝搬時間TOF(Time Of Flight)を計算する伝搬時間計算部53と、伝搬時間TOFに基づいて距離Rを計算する距離計算部54と、全アンテナ軸に対する電波の到来角度θ及び距離Rを入力として位置推定通信装置1に対する無線通信機2の3次元空間位置を計算する3次元位置推定部55と、で構成される。
【0033】
<実施の形態1に係る位置推定通信装置1及び位置推定通信システム100の動作原理>
図2は、実施の形態1に係る位置推定通信装置1及び位置推定通信システム100において、アンテナ素子間の受信電波の位相差Δφによって電波の到来角度θを測定する方法を説明する模式図である。位置推定部5に含まれる到来角度計算部52による、アンテナ素子間の受信電波の位相差Δφによる電波の到来角度θの計測方式を、図2を用いて説明する。
【0034】
3つのアンテナ素子の中の2つのアンテナ素子、例えば、第1アンテナ素子31及び第2アンテナ素子32を、電波の波長λの1/2以下の距離Dとなるように離間して配置する。図2に示すように、電波がアンテナ軸に対して角度θの方向から到来する場合、電波の送信源である無線通信機2から、それぞれのアンテナ素子に電波が伝搬する距離の間に、伝送距離の距離差Pが発生する。伝搬距離の距離差Pは、第1アンテナ素子31及び第2アンテナ素子32において同時刻で受信する両アンテナ素子間の受信電波の位相差Δφとして観測される。位相差計測部51は、第1無線回路41及び第2無線回路42が受信した電波波形の位相φnに基づいて、アンテナ素子間の受信電波の位相差Δφを計測する。受信電波の位相差Δφと電波の到来角度θとの間には、以下の式(1)の関係が成立する。
【0035】
【数1】
したがって、到来角度計算部52は、以下の式(2)に基づき、電波の到来角度θを算出することができる。
【0036】
【数2】
【0037】
なお、式(2)から分かるように、受信電波の位相差Δφから電波の到来角度θへのマッピングが[0,π]に1対1となるようにするため、距離Dについて、D≦λ/2と設定している。すなわち、アンテナ部3の構成の一部である第1アンテナ素子31及び第2アンテナ素子32は、平面上にアレイ状に配置され、隣接するアンテナ素子間の距離D、つまり、第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32との間の距離Dが電波の波長λの1/2以下に設定されている。
【0038】
図3を用いて、位置推定通信装置1の第1アンテナ素子31と無線通信機2の端末アンテナ部21との間の距離Rに関して、位置推定通信装置1と無線通信機2間の電波を用いた双方向通信によって発生する伝搬時間TOFに基づいて、位置推定通信装置1と無線通信機2との間の距離Rを計算する方法の一例を説明する。
【0039】
位置推定通信装置1における第1無線回路41は、第1アンテナ素子31から無線通信機2に電波を送信する。無線通信機2の端末アンテナ部21は位置推定通信装置1から送信された電波を受信し、端末無線通信処理部22において受信処理した後、端末アンテナ部21から返信信号を送信する。返信に際しては、無線通信機2で受信処理に要した処理時間TBの情報を追加する。
【0040】
位置推定通信装置1では、第1アンテナ素子31によって受信した電波を、第1無線回路41が受信処理する。伝搬時間計算部53は、第1無線回路41における送信時刻及び受信時刻から算出した遅延時間TAと、無線通信機2から送信される処理時間TBとを用いて、以下の式(3)を用いて伝搬時間TOFを計算する。なお、各アンテナ素子と各無線回路との間の遅延時間は事前に計測し、遅延時間TA及び処理時間TBに反映させる。
【0041】
【数3】
距離計算部54は、伝搬時間TOFから、位置推定通信装置1の第1アンテナ素子31と無線通信機2の端末アンテナ部21との距離Rを算出する。光速をcとすると、伝搬時間TOFを用いて距離Rを、式(4)を用いて算出することが可能である。すなわち、距離計算部54は、以下の式(4)を用いて、距離Rを算出する。
【0042】
【数4】
【0043】
その他の2つのアンテナ素子においても、同様に、無線通信機2の端末アンテナ部21との通信によって、それぞれ距離Rを取得することができる。ただし、通常の測定範囲において、アンテナ素子間の距離Dが距離Rに対して非常に小さい場合は、いずれかの距離Rを代表値とすることができる。
【0044】
<実施の形態1に係る位置推定方法の動作原理>
3次元位置推定部55における位置推定方法を、図4ないし図7を使って説明する。図4は、実施の形態1に係る位置推定通信装置1及び位置推定通信システム100において、電波の到来角度θ及び距離Rを計測するためのアレイアンテナの基本構成を示す模式図である。アンテナ部3は、2つのアンテナ素子である第1アンテナ素子31及び第2アンテナ素子32を、電波の波長λの1/2以下の距離Dの間隔で基板上にパターン実装した1次元アレイアンテナの構成を有する。
【0045】
図4に示される2つのアンテナ素子は、図2において説明した第1アンテナ素子31及び第2アンテナ素子である。2つのアンテナ素子間の受信電波の位相差Δφによって、アンテナ軸Xに対する電波の到来角度θの測定が可能となる。また、図3において説明したように、無線通信機2と2つのアンテナ素子の中でいずれかのアンテナ素子との距離、もしくは、無線通信機2と両方のアンテナ素子の距離の平均値を、距離Rとして算出することができる。
【0046】
図5は、図4に示す1次元アレイアンテナによって測定した電波の到来角度θ及び距離Rに基づき、無線通信機2の位置を推定する様相を説明する模式図である。図2では、電波の到来角度θを平面的に表現していたが、図5では3次元空間における電波の到来角度θを想定する。また、便宜上、第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32とを結ぶ直線軸Xを基準として、図5に示すように直交する3軸(X、Y、Z)を考えることとする。
【0047】
無線通信機2が送信する電波の到来角度θとは、3次元的な広がりのある空間においては、図5で示すように、電波の到来経路が、アンテナ軸X上の一点を円錐頂点Tとし、電波の到来角度θを頂角の1/2、アンテナ軸Xを回転軸とする円錐体の円錐側面S上の母線となることを意味している。さらに、アンテナ部3と無線通信機2との距離は距離Rで表されることから、無線通信機2の位置はさらに限定される。すなわち、電波の到来角度θで決定される上述の円錐体の母線長が距離Rとなる円錐体において、無線通信機2の位置は、円錐底面Uにおける円周C上のいずれかの位置に存在すると推定できることになる。
【0048】
図6は、3つのアンテナ素子である第1アンテナ素子31、第2アンテナ素子32、及び第3アンテナ素子33を、基板上の正三角形の各頂点位置に実装した2次元アレイアンテナで構成されるアンテナ部3による無線通信機2の3次元位置の推定の様相について、上面図及び側面図を用いて説明する図である。
【0049】
図6に示すように、2次元アレイアンテナは、3組の1次元アレイアンテナとして、第1アンテナ素子31及び第2アンテナ素子32からなる1次元第1アレイアンテナ12A、第2アンテナ素子32及び第3アンテナ素子33からなる1次元第2アレイアンテナ23A、第3アンテナ素子33及び第1アンテナ素子31からなる1次元第3アレイアンテナ31A、で構成されると考えることができる。
【0050】
上述したように、測定した全てのアンテナ素子に対する受信電波の位相情報φに基づき、1次元第1アレイアンテナ12A、1次元第2アレイアンテナ23A、及び1次元第3アレイアンテナ31Aのそれぞれに対する受信電波の位相差Δφを算出し、さらに、電波の到来角度θも算出することができる。また、アンテナ部3と無線通信機2との間の距離Rも同時に算出されるため、1次元第1アレイアンテナ12A、1次元第2アレイアンテナ23A、及び1次元第3アレイアンテナ31Aによる無線通信機2が存在する推定領域として、それぞれ推定領域C12、推定領域C23、及び推定領域C31のような円錐体の円錐底面Uの周辺領域を計算することができる。
【0051】
3次元位置推定部55は、図6に示すように、3組の推定領域C12、C23、C31からの距離誤差が最小となるような3次元の空間座標位置を計算し、算出された位置を無線通信機2の推定位置として出力する。図7は、実施の形態1において、無線通信機2の3次元位置を推定した場合の模式図であり、アンテナ部3を底面とする全天空における位置を推定している。
【0052】
<実施の形態1に係る位置推定方法の処理フロー>
実施の形態1に係る位置推定方法の処理フローの概要を、図8に示すフローチャートを用いて説明する。位置推定通信装置1が位置推定を開始すると、ステップS101において、無線通信処理部4が起動する。起動時に同期回路44が同期信号を出力し、3つのアンテナ素子である第1アンテナ素子31、第2アンテナ素子32、及び第3アンテナ素子33に一つずつ対応した3つの無線回路である第1無線回路41、第2無線回路42、及び第3無線回路43にそれぞれ同期信号を入力して同期動作が開始され、ステップS102の処理に進む。
【0053】
ステップS102において、3つのアンテナ素子である第1アンテナ素子31、第2アンテナ素子32、及び第3アンテナ素子33の中からいずれか1つのアンテナ素子が選択され、選択されたアンテナ素子に対応する無線回路を用いて、無線通信機2に対して電波による無線信号を送信する。無線通信機2は無線信号を受信すると、端末無線通信処理部22から位置推定通信装置1に対して無線信号を返信する。つまり、選択されたアンテナ素子と無線通信機2との間で、双方向通信が開始される。返信された無線信号は、全てのアンテナ素子、つまり3つのアンテナ素子によって受信され、ステップS101において既に同期動作している全ての無線回路によって処理される。
【0054】
ステップS103において、選択された無線回路が出力する送受信時の時刻情報を用いて伝搬時間TOFを計測する。さらに、ステップS104において、伝搬時間TOFを用いて位置推定通信装置1と無線通信機2との間の距離Rを計算して、ステップS107の処理に進む。
【0055】
ステップS103及びステップS104の各処理と並行して、ステップS105において、全ての無線回路が出力する受信電波の位相情報φに基づき、3つの1次元アレイアンテナ(全アンテナ)における受信電波の位相差Δφを計測して、ステップS106の処理に進む。
【0056】
ステップS106において、隣接したアレイアンテナの受信電波の位相差Δφに基づき、3つの1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する電波の到来角度θn(n=1、2、3)を計算する。
【0057】
ステップS107において、ステップS104において計算された距離Rと、ステップS106において計算された3つの1次元アレイアンテナの各アンテナ軸に対する電波の到来角度θn(n=1、2、3)と、各アンテナ軸に関する位置推定通信装置1のローカル座標系における設置角度である角度φn(n=1、2、3)に基づき、1次元アレイアンテナのそれぞれに対応する3つの推定領域C12、C23、及びC31を計算する。3つの推定領域C12、C23、及びC31を用いて、距離誤差が最小となる位置を計算し、計算結果を無線通信機2の推定位置として出力する。推定位置の出力後、ステップS108において、位置推定処理が終了指示を受け付けるまでステップS102に戻り、上述の各処理が繰り返される。
以上が、実施の形態1に係る位置推定方法の処理フローの概要である。
【0058】
<実施の形態1に係る位置推定通信システムと従来の位置推定通信システムとの比較>
実施の形態1に係る位置推定通信システムのスマートシステムとしての実施例を、従来の位置推定通信システムによる実施例と併せて図9に示す。図9(a)は、従来の位置推定通信システムを適用した実施例である。従来の位置推定通信システムでは、距離のみを使って、無線通信機2の位置推定を行う。代表的な方法として3辺測量方式あるいは多辺測量方式が使われている。
【0059】
従来の位置推定通信システムでは、車両に搭載する無線通信機は、例えば、図9(a)に示すように、無線通信機1A、無線通信機1B、及び無線通信機1Cのような複数台の無線通信機が必要になる。一方、実施の形態1に係る位置推定通信システム100では、図9(b)に示すように、車両に搭載する無線通信機を兼ねる位置推定通信装置1は1台で良い。したがって、実施の形態1に係る位置推定通信システム100は、レイアウト自由度及びコスト面、さらには測定時間の短縮の面において、従来の位置推定通信システムよりも有利となる。
【0060】
図10に、実施の形態1に係る位置推定通信システム100のRTLSへの実施例を、従来システムによる実施例と併せて示す。図10(a)は、従来の位置推定通信システムの構成である。距離のみを用いて位置推定を行う従来の位置推定通信システムでは、スマートシステムの場合と同様に多辺測量方式であるため、天井など見通しの良い場所に複数の無線通信機を設置する必要があった。例えば、図10(a)に示す一例では、無線通信機1A、無線通信機1B、無線通信機1C、及び無線通信機1Dの合計4台の無線通信機を設置する必要があった。
【0061】
一方、実施の形態1に係る位置推定通信システム100では、図10(b)に示すように、設置する無線通信機2は、通信が成立する距離に依存するものの、1台の無線通信機2によってカバーできる範囲においては1つで良いため、レイアウト自由度及びコスト面、さらには測定時間の短縮の面において、従来の位置推定通信システムよりも有利となる。
【0062】
<実施の形態1に係る位置推定通信装置1及び位置推定通信システム100の特徴及び効果>
実施の形態1に係る位置推定通信システム100は、双方向通信することにより、位置推定通信装置1に対する無線通信機2の位置を推定するものであって、位置推定通信装置1は、電波を送受信するアンテナ部3と、アンテナ部3から電波として送受信する無線信号を処理する無線通信処理部4と、無線通信処理部4が出力する情報から位置推定通信装置1に対する無線通信機2の相対位置を推定する位置推定部5と、で構成される。アンテナ部3は、電波を送受信する複数のアンテナ素子を平面上に、隣接するアンテナ素子間の距離が電波の波長λの1/2以下になるように2次元アレイ状に配置した構成としている。
【0063】
位置推定通信装置1の構成の1つである無線通信処理部4は、個々のアンテナ素子による受信電波の位相情報φと、位置推定通信装置1と無線通信機2との間の送受信時の時刻情報とを出力する複数の無線回路である第1無線回路41、第2無線回路42、及び第3無線回路43と、個々の無線回路の動作タイミング、特に受信動作を同期化するための同期信号を出力する同期回路44を有しており、個々のアンテナ素子における受信電波の位相情報φを同一時刻で同時に出力する機能を有する構成とする。位置推定部5は、受信電波の位相情報φを用いて、隣接するアンテナ素子を1次元アレイアンテナとみなし、1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する電波の到来角度θを算出し、また、送受信時の時刻情報に基づきアンテナ素子と無線通信機2側の端末アンテナ部21との間の距離Rを算出し、複数のアンテナ軸に対する電波の到来角度θ及び距離Rに基づいて位置推定通信装置1に対する無線通信機2の3次元位置を推定することを特徴としている。
【0064】
アンテナ部3は、アンテナ素子を平面上に2次元アレイ状に配置した上で、隣接する2つのアンテナ素子を選択することで、複数の1次元アレイアンテナで構成されているとみなすこができる。1次元アレイアンテナにおけるアンテナ素子では、電波の伝搬距離に差ができるため、アンテナ素子間で電波の受信時刻に遅延が発生する。無線通信処理部4は、この遅延を求めるための受信電波の位相情報φ及び送受信時の時刻情報を測定し、出力する。同期回路44は、全ての無線回路を同期化するため、1回の測定でアンテナ部3を構成する全てのアンテナ素子に対する受信電波の位相情報φの測定が可能となる。
【0065】
位置推定部5は、上述の受信電波の位相情報φに基づき、アンテナ部3を構成する1次元アレイアンテナの各アンテナ軸に対する電波の到来角度θを算出する。電波の到来経路は、1次元アレイアンテナ位置を頂点、1次元アレイアンテナのアンテナ軸を回転軸、円錐体の円錐頂点Tを電波の到来角度θの2倍とする円錐側面S上に存在する母線となる。また、位置推定部5は、アンテナ部3のアンテナ素子に対する送受信時の時刻情報に基づき、距離Rを算出する。電波の到来角度θ及び距離Rを同時に求めることができるため、無線通信機2が存在する領域を、上述した円錐側面Sの母線の距離を位置推定通信装置1と無線通信機2との間の距離とした円錐体の円錐底面Uの円周C上に限定することができる。すなわち、円錐底面Uの円周Cは、と無線通信機2の位置として推定される推定領域を表す。
【0066】
アンテナ部3を、位置推定通信装置1の座標系に対するアンテナ軸の角度が異なる複数の1次元アレイアンテナによって構成した場合、上述の円錐体の円錐底面Uの円周Cで表される推定領域が、3次元空間上に複数領域導出される。したがって、複数の円錐底面Uの円周Cで表される推定領域に基づいて無線通信機2の位置を推定することが可能となる。
【0067】
実施の形態1に係る位置推定通信装置1及び位置推定通信システム100では、アンテナ部3は、少なくとも3個以上のアンテナ素子を有し、アンテナ素子の平面上での実装位置が正多角形の各頂点位置となるように配置された構成であり、多角形の辺をなす隣接する2つのアンテナ素子による1次元アレイアンテナのアンテナ軸が、互いに角度を有するように2次元アレイ配置されることを特徴としている。すなわち、隣接するアンテナ素子以外のアンテナ素子との距離を、隣接アンテナ素子間の距離以上に保持できるため、隣接するアンテナ素子以外の他のアンテナ素子からの影響を受けにくいアンテナ構成となっている。
【0068】
さらに、実施の形態1に係る位置推定通信装置1及び位置推定通信システム100では、アンテナ部3のサイズを小さく抑えることが可能となる。アンテナサイズが小さくなると、通信距離がアンテナ素子間距離と比較して十分に長い場合、各アンテナ素子と無線通信機2との距離はほぼ同一とみなすことができる。したがって、1つのアンテナ素子と無線通信機2との距離で代表できるため、距離測定のための通信回数を削減できるというメリットもある。また、アンテナサイズが小さいため、無線通信処理部4の各構成要素も互いに近距離配置が可能となる結果、同期回路44と無線回路とを接続する配線を短く、かつ等距離とすることが容易となり、回路実装しやすいというメリットも生じる。
【0069】
実施の形態1に係る位置推定通信装置1及び位置推定通信システム100では、位置推定部5は、受信電波の位相情報φに基づいて隣接するアンテナ素子間の受信電波の位相差Δφを計算する位相差計測部51と、受信電波の位相差Δφから1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する電波の到来角度θを計算する到来角度計算部52と、無線通信処理部4が出力する送受信時の時刻情報に基づき位置推定通信装置1と無線通信機2の間の電波の伝搬時間TOFを計測する伝搬時間計算部53と、伝搬時間から位置推定通信装置1と無線通信機2の間の距離を計算する距離計算部54と、個々の1次元アレイアンテナ軸の位置推定通信装置1の座標系に対する角度と、個々の1次元アレイアンテナにおける電波の到来角度θ及び距離Rに基づいて計算した無線通信機2が存在する推定領域に基づき、距離誤差が最小となる3次元位置を無線通信機2の位置として推定する3次元位置推定部55で構成されることを特徴としている。
【0070】
電波の到来角度θは、1次元アレイアンテナの個々のアンテナ素子と無線通信機2との通信距離の差に基づいて計算することができる。位置推定通信システム100では、この距離の差を受信電波の位相情報φに基づく受信電波の位相差Δφから算出している。位置推定通信システム100の同期回路44は、無線回路を正確に同期動作させるため、同一の電波波形に対して、アンテナ部3を構成する全てのアンテナ素子である第1アンテナ素子31、第2アンテナ素子32、及び第3アンテナ素子33に対する受信電波の位相情報φを一度に測定できる。すなわち、1回の測定で任意の1次元アレイアンテナの受信電波の位相差Δφを求めることができるため、任意の1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する電波の到来角度θを同時に算出することが可能となる。
【0071】
位置推定通信装置1と無線通信機2との間の距離は、双方向通信による伝搬時間TOFから算出することができる。伝搬時間計算部53は、無線通信処理部4が出力する送受信時の時刻情報から伝搬時間TOFを算出し、距離計算部54は伝搬時間TOFを光速cで除算することで正確な距離を算出することができる。無線通信過程で距離計算できるため、電波の到来角度θ及び位置推定通信装置1と無線通信機2の間の距離Rを、同時に算出することが可能となる。
【0072】
3次元位置推定部55は、測定結果から算出された受信電波の位相差Δφ及び距離Rに基づいて各アンテナ軸に対する円錐体の円錐底面の円周領域を算出し、受信電波の位相情報φ及び距離Rに基づき、距離誤差が最小となる位置を無線通信機2の推定位置として算出する。ここで、アンテナ部3の各アンテナ素子は互いに近距離で配置されている。たとえば、UWB通信方式の8GHz帯の電波による無線通信を行う場合、アンテナ素子間の距離は2cm以下に設定される。したがって、位置推定通信装置1と無線通信機2との間の距離が十分に大きい場合は、個々のアンテナ素子による距離の差は小さいので、いずれかのアンテナ素子に関する距離を代表値とすることができる。よって、1回の無線通信で位置推定に必要な受信電波の位相情報φ、すなわち受信電波の位相差Δφ及び距離Rが同時に測定できるため、と無線通信機2に対する位置推定が容易に可能となる。
【0073】
<実施の形態1の効果>
以上、実施の形態1に係る位置推定通信装置1及び位置推定通信システム100によれば、複数のアンテナ素子を用いて2次元アレイアンテナを構成し、2次元アレイアンテナを構成する2つのアンテナ素子によって形成される複数の1次元アレイアンテナによる複数のアンテナ軸に対し、受信電波の位相差Δφ及び伝搬時間TOFを計測し、位置推定対象となる無線通信機からの電波の到来角度θ及び無線通信機までの距離Rを算出し、電波の到来角度θ及び距離Rに基づき無線通信機に対する位置推定を行うので、小型化されたアレイアンテナの構成によって位置推定対象である無線通信機の3次元空間上の位置を容易に推定できるという効果を奏する。また、無線通信処理部を同期化する同期回路を用いて、全てのアンテナ素子に対する受信電波の位相情報φを同時に測定するため、全ての隣接するアンテナ素子からなるアンテナ軸に対する受信電波の位相差Δφを1回の測定によって処理できるので、測位のための処理時間を大幅に短縮できるという効果を奏する。
【0074】
実施の形態2.
図11は、実施の形態2に係る位置推定通信装置1a及び位置推定通信システム100aの構成を示す図である。
【0075】
<実施の形態2に係る位置推定通信システム100aの構成>
位置推定通信システム100aは、位置推定通信装置1a及び無線通信機2を備える。位置推定通信装置1aは、アンテナ部3aと、無線通信処理部4aと、位置推定部5aと、で構成される。
【0076】
無線通信機2は、実施の形態1と同様、端末アンテナ部21と、端末無線通信処理部22と、で構成される。無線通信機2は、位置推定通信装置1から発する電波を端末アンテナ部21によって受信し、端末無線通信処理部22において電波の受信処理をした後、送信信号を生成して、端末アンテナ部21を介して返信処理を実施する。
【0077】
<実施の形態2に係る位置推定通信装置1aの構成>
実施の形態2に係る位置推定通信装置1aにおけるアンテナ部3aは、図11に示すように、2つのアンテナ素子である第1アンテナ素子31及び第2アンテナ素子32を基板上にパターン実装することにより構成される。なお、図11に示されたアンテナ部3aは、アンテナ部の最少構成としての一例である。
【0078】
2つのアンテナ素子間の距離Dが、UWB通信方式による電波の波長λの1/2以下となるように配置される。2つのアンテナ素子は1次元アレイアンテナ12Bとして機能することができる。なお、それぞれのアンテナ素子を介して、無線通信機2に対して測位を目的とした双方向通信が行われる。
【0079】
実施の形態2に係る位置推定通信装置1aにおける無線通信処理部4aは、第1アンテナ素子31及び第2アンテナ素子32にそれぞれ対応した2つの無線回路である第1無線回路41及び第2無線回路42と、2つの無線回路を同期動作させる同期回路44と、で構成される。
【0080】
無線通信処理部4aは、電波の送信時は、2つの無線回路の中からいずれか1つの無線回路を選択し、選択された無線回路に対応するアンテナ素子から無線通信機2に向けて電波が送信される。また、無線通信処理部4aは、電波の受信時は、同期回路44が同期信号を出力し、2つの無線回路が同期して、対応するアンテナ素子が受信する電波波形を処理する。
【0081】
無線通信処理部4aは、電波受信時は、同一タイミングで正確に電波波形の位相を受信電波の位相情報φとして出力する。すなわち、無線通信処理部4aは第1アンテナ素子31及び第2アンテナ素子32のそれぞれに対応した位相φn(n=1、2)を同時に出力する。また、無線通信処理部4aは、電波送信時は、いずれかのアンテナ素子に関する送信時刻及び受信時刻を、送受信時の時刻情報として出力する。
【0082】
実施の形態2に係る位置推定通信装置1aにおける位置推定部5aは、アンテナ部3aを回転させる回転機構部56と、第1無線回路41及び第2無線回路42が出力する受信電波の位相情報φに基づき、1次元アレイアンテナ12Bを構成する2つのアンテナ素子における受信電波の位相差Δφを計測する位相差計測部51と、受信電波の位相差Δφを用いて1次元アレイアンテナ12Bのアンテナ軸に対する電波の到来角度θを計算する到来角度計算部52と、第1無線回路41及び第2無線回路42のいずれか一方が出力する送受信時の時刻情報を用いて電波が往復する伝搬時間TOFを計算する伝搬時間計算部53と、伝搬時間TOFに基づいて位置推定通信装置1aと無線通信機2との間の距離Rを計算する距離計算部54と、回転機構部56から出力される回転角度ωと、回転したアンテナ軸に対する電波の到来角度θ及び距離Rに基づいて、無線通信機2が存在する推定領域を逐次計算し、推定領域に基づき算出された距離誤差が最小となる3次元位置を無線通信機2の位置として推定する3次元位置推定部55と、で構成される。
【0083】
上述した実施の形態1に係る位置推定通信装置1と同様、到来角度計算部52は、図2で説明したように、式(1)及び式(2)を用いて電波の到来角度θを計算する。伝搬時間計算部53は、式(3)を用いて伝搬時間TOFを算出し、距離計算部54は、式(4)を用いて距離Rを算出する。
【0084】
<実施の形態2に係る位置推定通信装置1a及び位置推定通信システム100aの動作原理>
実施の形態2における位置推定部5aによる位置推定方法を、図4図5及び図12を用いて説明する。実施の形態2におけるアンテナ部3aは、2つのアンテナ素子である第1アンテナ素子31及び第2アンテナ素子32が実装された1次元アレイアンテナ12Bが基本的な構成となる。したがって、実施の形態1において図4及び図5を用いて説明した動作原理によって、無線通信機2からの電波の到来角度θ、及び位置推定通信装置1aと無線通信機2との間の距離Rをそれぞれ計測することができる。したがって、図5に示すように、無線通信機2は、電波の到来角度θを頂角の1/2、距離Rを母線長とする円錐体の円錐底面Uにおける円周Cの領域に存在すると推定される。
【0085】
図12は、実施の形態2のような1つの1次元アレイアンテナ12Bによる3次元位置の推定の様相を説明する模式図である。図12は、実施の形態2に係る位置推定通信装置1aにおいて特徴的な構成の一つである回転機構部56によって、アンテナ部3aを回転しながら位置推定を行う様相を示している。回転機構部56は、アンテナ部3aを連続的に回転し、通信による位置推定を実施した各時刻における回転角度ωを出力する。図12において、過去時刻t0におけるアンテナ部3aの位置はアンテナ部3a_t0と、現在時刻t1におけるアンテナ部3aの位置はアンテナ部3a_t1と、それぞれ表している。
【0086】
図12は、時刻t0(過去時刻)及び時刻t1(現在時刻)における電波の到来角度θ及び距離Rをそれぞれ測定し、測定結果に基づいて円錐底面の円周領域からなる過去時刻t0の推定領域C12_t0及び現在時刻t1の推定領域C12_t1を導出している様相を図示したものである。推定領域は、アンテナ部3aの回転とともに連続した時系列上の推定領域として計算される。現在時刻t1の推定領域C12_t1及び過去時刻t0の推定領域C12_t0を用いて、距離誤差が最小となる位置を無線通信機2の3次元位置として推定する。
【0087】
回転機構部56によってアンテナ部3aを回転させることで、1次元アレイアンテナ12Bを2次元アレイアンテナとみなすことができるため、静止している無線通信機2に対して正確な位置推定が可能となる。また、無線通信機2が移動している場合であっても、位置推定の時間間隔が無線通信機2の移動速度に対して十分に短時間である場合は、位置の推定誤差を小さく抑制することが可能である。
【0088】
実施の形態2に係る位置推定通信装置1aでは、1次元アレイアンテナ12Bは1組しかないので、電波の到来角度θ及び距離Rも1組のみ出力される。
【0089】
<実施の形態2に係る位置推定方法の処理フロー>
実施の形態2に係る位置推定方法の処理フローの概要を、図13に示すフローチャートを用いて説明する。
【0090】
実施の形態2に係る位置推定通信装置1aが位置推定を開始すると、ステップS201において、無線通信処理部4aが起動する。このとき、同期回路44が同期信号を出力し、第1無線回路41及び第2無線回路42が同期信号を入力して同期処理が開始される。同期処理と同時に、回転機構部56がアンテナ部3aを構成する1次元アレイアンテナ12Bの回転を開始する。
【0091】
ステップS103からステップS106までは、実施の形態1に係る位置推定方法の処理フローである図8に示されるフローチャートと同様、電波の到来角度θ及び距離Rを算出する。ステップS103からステップS106までは実施の形態1において説明したとおりなので、説明を省略する。
【0092】
ステップS207において、電波の到来角度θ及び距離R、並びに回転機構部56が出力するアンテナ軸の回転角度ωの過去値、つまり、過去時刻t0における回転角度ω_t0、及び、現在値、つまり、現在時刻t1における回転角度ω_t1に基づき、無線通信機2の推定領域をそれぞれ計算し、時系列データとして記憶する。そして、過去時刻t0の推定領域C12_t0、及び現在時刻t1の推定領域C12_t1を用いて、距離誤差が最小となる位置を無線通信機2の3次元位置として出力する。その後、ステップS108において、位置推定処理が終了指示を受け付けるまで、ステップS102へ戻り、各処理が繰り返される。
以上が、実施の形態2に係る位置推定方法の処理フローの概要である。
【0093】
<実施の形態2に係る位置推定通信装置1a及び位置推定通信システム100aの特徴及び効果>
実施の形態2に係る位置推定通信装置1a及び位置推定通信システム100aでは、アンテナ部3aは、2個以上のアンテナ素子を有し、全てのアンテナ素子を直線軸上に配置した1次元アレイアンテナ12Bで構成されることを特徴としている。実施の形態2では、最少構成の場合、アンテナ素子の個数は2となる。したがって、アンテナ部3a及び無線通信処理部4aのサイズの小型化が可能となる。
【0094】
実施の形態2に係る位置推定通信装置1a及び位置推定通信システム100aでは、位置推定部5は、アンテナ部3aを回転させる回転機構部56と、無線通信処理部4aが出力する受信電波の位相情報φに基づいて、隣接するアンテナ素子間の受信電波の位相差Δφを計算する位相差計測部51と、受信電波の位相差Δφに基づき隣接する2つのアンテナ素子で構成される1次元アレイアンテナ12Bのアンテナ軸に対する電波の到来角度θを計算する到来角度計算部52と、無線通信処理部4aが出力する送受信時の時刻情報に基づき位置推定通信装置1aと無線通信機2との間の電波の伝搬時間TOFを計測する伝搬時間計算部53と、伝搬時間TOFに基づき位置推定通信装置1aと無線通信機2との間の距離Rを計算する距離計算部54と、受信電波の位相情報φを測定した時点での回転機構部56の制御による位置推定通信装置1aの座標系における回転角度ωと、1次元アレイアンテナ12Bにおける電波の到来角度θ及び距離Rに基づいて、無線通信機2が存在する推定領域を逐次計算し、現在時刻t1の推定領域C12_t1及び過去時刻t0の推定領域C12_t0を用いて、距離誤差が最小となる3次元位置を無線通信機2の位置として推定する3次元位置推定部55と、で構成されることを特徴とする。
【0095】
回転機構部56がアンテナ部3aを回転させることで、アンテナ部3aの1次元アレイアンテナ12Bのアンテナ軸も回転する。図12において、過去時刻t0におけるアンテナ部3aの位置はアンテナ部3a_t0と、現在時刻t1におけるアンテナ部3aの位置はアンテナ部3a_t1と、それぞれ表している。
【0096】
位置推定通信装置1aの構成の1つである無線通信処理部4aは、回転角度ωnにおける受信電波の位相情報φ及び送受信時の時刻情報を逐次出力する。つまり、時系列的にデータを取得することで、見かけ上、回転角度ωnの複数のアンテナ軸による受信電波の位相情報φ及び送受信時の時刻情報を取得したことになる。位相差計測部51及び到来角度計算部52は、受信電波の位相情報φに基づき到来角度θnを算出する。伝搬時間計算部53及び距離計算部54も、送受信時の時刻情報に基づき距離Rnを算出する。
【0097】
3次元位置推定部55は、連続する1次元アレイアンテナ12Bの回転角度ωn、電波の到来角度θn、及び距離Rnを用いて、円錐体の円錐底面の円周領域を推定領域として順次算出し、現在時刻の推定領域及び過去時刻の推定領域を用いて、距離誤差が最小となる位置を無線通信機2の推定位置として決定する。実施の形態2では、見かけ上、複数の1次元アレイアンテナ12Bで構成されているようになり、測定のサンプリングが、被対象物の移動速度に対し、十分早い場合は精度よく位置を推定することが可能となる。
【0098】
<実施の形態2の効果>
以上、実施の形態2に係る位置推定通信装置1a及び位置推定通信システム100aによれば、アンテナ部は、少なくとも2個のアンテナ素子を直線軸上に配置した1次元アレイアンテナで構成され、必要とするアンテナ素子の最小個数は2個で良いため、アンテナ部及び無線通信処理部を小型化することが可能となるので、位置推定通信装置及び位置推定通信システムのサイズを小型化することが可能となる効果を奏する。
【0099】
実施の形態1及び2において、無線通信方式としては、アンテナの小型化と、今後スマートフォン等の情報端末を無線通信機2として利用する場合を考慮して、すでに情報端末に標準搭載されている、または標準化が進展している高周波無線仕様、例えばUWB通信方式などを採用することが望ましい。
【0100】
また、実施の形態1及び2において、アンテナ部3に実装されるアンテナ素子の個数と、アレイアンテナの形状は、アンテナサイズのシステム上の制約内であれば、図1あるいは図11に示すような構成のアレイアンテナに限定されるわけではない。
【0101】
以上、実施の形態1及び2に係る位置推定通信装置1、1a及び位置推定通信システム100、100aの各構成要素の機能が、ハードウェア及びソフトウェア等のいずれか一方で実現される構成について説明した。しかしながら、これに限られたものではなく、実施の形態1及び2に係る位置推定通信装置1、1a及び位置推定通信システム100、100aの一部の構成要素を専用のハードウェアで実現し、別の一部の構成要素をソフトウェア等で実現する構成であっても良い。
【0102】
たとえば、図14及び図15に示すように、一部の構成要素については専用のハードウェアとしての処理回路150でその機能を実現し、他の一部の構成要素についてはプロセッサ151としての処理回路150が、メモリ152に格納された実施の形態1及び2に係る位置推定通信方法をコンピュータ等で実行させるためのプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
【0103】
さらに、図15に示すように、実施の形態1及び2に係る位置推定通信装置1、1a及び位置推定通信システム100、100aの各機能部等が用いる設定データは、ソフトウェアの一部、すなわち、実施の形態1及び2に係る位置推定方法をコンピュータ等で実行させるためのプログラム154が記憶されている記録媒体153からメモリ152にインストールされても良い。
【0104】
以上のように、実施の形態1及び2に係る位置推定通信装置1、1a及び位置推定通信システム100、100aは、ハードウェア、ソフトウェア等、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0105】
<本願の諸態様のまとめ>
以下、本願の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0106】
(付記1)
電波を送受信する複数のアンテナ素子を、互いの距離が前記電波の波長の1/2以下となるようにアレイ状に配置されるアンテナ部と、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれに対応して一つずつ設けられ、前記複数のアンテナ素子を用いて外部の無線通信機との間で前記電波による双方向通信を行い、前記複数のアンテナ素子による受信電波の位相情報及び前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の送受信時の時刻情報を出力する複数の無線回路、前記複数の無線回路の動作を同期化する同期信号を出力する同期回路、を有し、前記複数のアンテナ素子における前記受信電波の位相情報及び前記送受信時の時刻情報を出力する無線通信処理部と、
前記受信電波の位相情報及び前記送受信時の時刻情報に基づき、前記無線通信機の位置を推定する位置推定部と、
を備える位置推定通信装置。
【0107】
(付記2)
前記位置推定部は、前記受信電波の位相情報を用いて、隣接する2つの前記アンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する電波の到来角度を算出し、前記送受信時の時刻情報を用いて前記アンテナ素子と前記無線通信機との間の距離を算出し、前記電波の到来角度及び前記距離に基づいて、前記無線通信機の3次元位置を推定することを特徴とする付記1に記載の位置推定通信装置。
【0108】
(付記3)
前記アンテナ部は、3個の前記アンテナ素子を有し、3個の前記アンテナ素子は、正三角形の各頂点位置にそれぞれ配置され2次元アレイ状を呈することを特徴とする付記1または2に記載の位置推定通信装置。
【0109】
(付記4)
前記アンテナ部は、n個の前記アンテナ素子を有し、n個の前記アンテナ素子は、n角形の各頂点位置にそれぞれ配置され2次元アレイ状を呈することを特徴とする付記1または2に記載の位置推定通信装置。
【0110】
(付記5)
前記位置推定部は、
前記受信電波の位相情報を用いて隣接するアンテナ素子間の受信電波の位相差を計測する位相差計測部と、
前記受信電波の位相差を用いて、隣接する2つの前記アンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する前記電波の到来角度を計算する到来角度計算部と、
前記無線通信処理部が出力する前記送受信時の時刻情報に基づき、前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の前記電波の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、
前記電波の伝搬時間に基づき、前記アンテナ素子と前記無線通信機との間の前記距離を計算する距離計算部と、
複数の前記1次元アレイアンテナのそれぞれのアンテナ軸の座標系に対する角度、及び前記1次元アレイアンテナごとの前記電波の到来角度及び前記距離に基づき算出された前記無線通信機が存在する推定領域を用いて、3次元位置を前記無線通信機の位置として推定する3次元位置推定部と、
を備える付記2に記載の位置推定通信装置。
【0111】
(付記6)
前記位置推定部は、
前記アンテナ部を回転させる回転機構部と、
前記アンテナ素子が受信する前記受信電波の位相情報に基づき、隣接するアンテナ素子間の受信電波の位相差を計測する位相差計測部と、
前記受信電波の位相差を用いて、前記1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する前記電波の到来角度を計算する到来角度計算部と、
前記無線通信処理部が出力する送受信時の時刻情報に基づき、前記無線通信機との間の前記電波の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、
前記電波の伝搬時間を用いて前記無線通信機との間の距離を計算する距離計算部と、
前記受信電波の位相情報及び前記距離を取得した時点の前記回転機構部の制御による回転角度、前記1次元アレイアンテナにおける前記電波の到来角度、及び前記距離に基づき前記無線通信機が存在する推定領域を逐次計算し、前記アンテナ部の回転前後の現在時刻の推定領域及び過去時刻の推定領域に基づき算出された3次元位置を前記無線通信機の位置として推定する3次元位置推定部と、を備えることを特徴とする付記2に記載の位置推定通信装置。
【0112】
(付記7)
前記アンテナ部は、2個以上のアンテナ素子を有し、全ての前記アンテナ素子を直線状に配置した1次元アレイアンテナとして構成されることを特徴とする付記6に記載の位置推定通信装置。
【0113】
(付記8)
前記位置推定通信装置及び前記無線通信機の通信方式は、UWB通信方式であることを特徴とする付記1から7のいずれか1項に記載の位置推定通信装置。
【0114】
(付記9)
位置推定通信装置と無線通信機との間で電波を用いて双方向通信することにより、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定する位置推定通信システムであって、
前記位置推定通信装置は、付記1から7のいずれか1項に記載の位置推定通信装置であり、
前記無線通信機は、
前記位置推定通信装置と前記電波による双方向通信を行う端末アンテナ部と、
前記端末アンテナ部によって送受信する前記電波の処理を行う端末無線通信処理部と、
を備える位置推定通信システム。
【0115】
(付記10)
前記位置推定通信装置及び前記無線通信機の通信方式は、UWB通信方式であることを特徴とする付記9に記載の位置推定通信システム。
【0116】
(付記11)
前記無線通信機は、携帯端末であることを特徴とする付記9または10に記載の位置推定通信システム。
【0117】
(付記12)
位置推定通信装置と無線通信機との間で電波による双方向通信を行うことにより、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定する位置推定方法であって、
前記位置推定通信装置の複数のアンテナ素子の中から1つのアンテナ素子を選択するステップと、
選択された前記アンテナ素子に対応する無線回路から前記無線通信機に対して前記電波による無線信号を出力するステップと、
前記無線通信機から返信された前記無線信号を前記複数のアンテナ素子の中の2つにより構成される1次元アレイアンテナによって受信するステップと、
前記無線回路が出力する送受信時の時刻情報を用いて前記電波の伝搬時間を計測するステップと、
前記電波の伝搬時間を用いて前記位置推定通信装置と前記無線通信機との間の距離を算出するステップと、
前記無線回路が出力する受信電波の位相情報に基づき1次元アレイアンテナにおける受信電波の位相差を計測するステップと、
前記受信電波の位相差に基づき前記電波の到来角度を計算するステップと、
前記電波の到来角度及び前記距離を用いて、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定するステップと、
を備える位置推定方法。
【0118】
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
【0119】
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0120】
1、1a 位置推定通信装置、1A、1B、1C、1D、2 無線通信機、3、3a アンテナ部、4、4a 無線通信処理部、5、5a 位置推定部、12A 1次元第1アレイアンテナ、12B 1次元アレイアンテナ、23A 1次元第2アレイアンテナ、31A 1次元第3アレイアンテナ、21 端末アンテナ部、22 端末無線通信処理部、31 第1アンテナ素子、32 第2アンテナ素子、33 第3アンテナ素子、41 第1無線回路、42 第2無線回路、43 第3無線回路、44 同期回路、51 位相差計測部、52 到来角度計算部、53 伝搬時間計算部、54 距離計算部、55 3次元位置推定部、56 回転機構部、100、100a 位置推定通信システム、150 処理回路、151 プロセッサ、152 メモリ、153 記録媒体、154 プログラム、C 円周、S 円錐側面、T 円錐頂点、U 円錐底面、C12、C23、C31 推定領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2023-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送受信する複数のアンテナ素子を、互いの距離が前記電波の波長の1/2以下となるようにアレイ状に配置されるアンテナ部と、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれに対応して一つずつ設けられ、前記複数のアンテナ素子を用いて外部の無線通信機との間で前記電波による双方向通信を行い、前記複数のアンテナ素子による受信電波の位相情報及び前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の送受信時の時刻情報を出力する複数の無線回路、前記複数の無線回路の動作を同期化する同期信号を出力する同期回路、を有し、前記複数のアンテナ素子における前記受信電波の位相情報及び前記送受信時の時刻情報を出力する無線通信処理部と、
前記受信電波の位相情報を用いて、隣接する2つの前記アンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する電波の到来角度を算出し、前記送受信時の時刻情報を用いて前記アンテナ素子と前記無線通信機との間の距離を算出し、前記電波の到来角度及び前記距離に基づいて、前記無線通信機の3次元位置を推定する位置推定部と、を備え、
前記位置推定部は、
前記受信電波の位相情報を用いて隣接するアンテナ素子間の受信電波の位相差を計測する位相差計測部と、
前記受信電波の位相差を用いて、隣接する2つの前記アンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する前記電波の到来角度を計算する到来角度計算部と、
前記無線通信処理部が出力する前記送受信時の時刻情報に基づき、前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の前記電波の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、
前記電波の伝搬時間に基づき、前記アンテナ素子と前記無線通信機との間の前記距離を計算する距離計算部と、
複数の前記1次元アレイアンテナのそれぞれのアンテナ軸の座標系に対する角度、及び前記1次元アレイアンテナごとの前記電波の到来角度及び前記距離に基づき、アンテナ軸上の一点を円錐頂点とし、前記電波の到来角度を頂角の1/2、前記アンテナ軸を回転軸とする円錐体の母線長が前記距離となる円錐体の円錐底面における円上のいずれかを前記無線通信機が存在する推定領域として前記無線通信機の3次元位置を推定する3次元位置推定部と、
を備える位置推定通信装置。
【請求項2】
電波を送受信する複数のアンテナ素子を、互いの距離が前記電波の波長の1/2以下となるようにアレイ状に配置されるアンテナ部と、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれに対応して一つずつ設けられ、前記複数のアンテナ素子を用いて外部の無線通信機との間で前記電波による双方向通信を行い、前記複数のアンテナ素子による受信電波の位相情報及び前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の送受信時の時刻情報を出力する複数の無線回路、前記複数の無線回路の動作を同期化する同期信号を出力する同期回路、を有し、前記複数のアンテナ素子における前記受信電波の位相情報及び前記送受信時の時刻情報を出力する無線通信処理部と、
前記受信電波の位相情報を用いて、隣接する2つの前記アンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する電波の到来角度を算出し、前記送受信時の時刻情報を用いて前記アンテナ素子と前記無線通信機との間の距離を算出し、前記電波の到来角度及び前記距離に基づいて、前記無線通信機の3次元位置を推定する位置推定部と、を備え、
前記位置推定部は、
前記アンテナ部を回転させる回転機構部と、
前記アンテナ素子が受信する前記受信電波の位相情報に基づき、隣接するアンテナ素子間の受信電波の位相差を計測する位相差計測部と、
前記受信電波の位相差を用いて、前記1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する前記電波の到来角度を計算する到来角度計算部と、
前記無線通信処理部が出力する送受信時の時刻情報に基づき、前記無線通信機との間の前記電波の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、
前記電波の伝搬時間を用いて前記無線通信機との間の距離を計算する距離計算部と、
前記受信電波の位相情報及び前記距離を取得した時点の前記回転機構部の制御による回転角度、前記1次元アレイアンテナにおける前記電波の到来角度、及び前記距離に基づき前記無線通信機が存在する推定領域を逐次計算し、前記アンテナ部の回転前後の異なる時刻における2つの推定領域からの距離誤差が最小となる3次元の空間座標位置を前記無線通信機の3次元位置として推定する3次元位置推定部と、
を備える位置推定通信装置。
【請求項3】
前記アンテナ部は、3個の前記アンテナ素子を有し、3個の前記アンテナ素子は、正三角形の各頂点位置にそれぞれ配置され2次元アレイ状を呈することを特徴とする請求項1または2に記載の位置推定通信装置。
【請求項4】
前記アンテナ部は、n個の前記アンテナ素子を有し、n個の前記アンテナ素子は、n角形の各頂点位置にそれぞれ配置され2次元アレイ状を呈することを特徴とする請求項1または2に記載の位置推定通信装置。
【請求項5】
前記アンテナ部は、2個以上のアンテナ素子を有し、全ての前記アンテナ素子を直線状に配置した1次元アレイアンテナとして構成されることを特徴とする請求項に記載の位置推定通信装置。
【請求項6】
前記位置推定通信装置及び前記無線通信機の通信方式は、UWB通信方式であることを特徴とする請求項1または2に記載の位置推定通信装置。
【請求項7】
位置推定通信装置と無線通信機との間で電波を用いて双方向通信することにより、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定する位置推定通信システムであって、
前記位置推定通信装置は、請求項1、2、5のいずれか1項に記載の位置推定通信装置であり、
前記無線通信機は、
前記位置推定通信装置と前記電波による双方向通信を行う端末アンテナ部と、
前記端末アンテナ部によって送受信する前記電波の処理を行う端末無線通信処理部と、
を備える位置推定通信システム。
【請求項8】
前記位置推定通信装置及び前記無線通信機の通信方式は、UWB通信方式であることを特徴とする請求項に記載の位置推定通信システム。
【請求項9】
前記無線通信機は、携帯端末であることを特徴とする請求項に記載の位置推定通信システム。
【請求項10】
位置推定通信装置と無線通信機との間で電波による双方向通信を行うことにより、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定する位置推定方法であって、
前記位置推定通信装置の複数のアンテナ素子の中から1つのアンテナ素子を選択するステップと、
選択された前記アンテナ素子に対応する無線回路から前記無線通信機に対して前記電波による無線信号を出力するステップと、
前記無線通信機から返信された前記無線信号を前記複数のアンテナ素子の中の2つにより構成される1次元アレイアンテナによって受信するステップと、
前記無線回路が出力する送受信時の時刻情報を用いて前記電波の伝搬時間を計測するステップと、
前記電波の伝搬時間を用いて前記位置推定通信装置と前記無線通信機との間の距離を算出するステップと、
前記無線回路が出力する受信電波の位相情報に基づき1次元アレイアンテナにおける受信電波の位相差を計測するステップと、
前記受信電波の位相差に基づき前記電波の到来角度を計算するステップと、
複数の前記1次元アレイアンテナのそれぞれのアンテナ軸の座標系に対する角度、及び前記1次元アレイアンテナごとの前記電波の到来角度及び前記距離に基づき、アンテナ軸上の一点を円錐頂点とし、前記電波の到来角度を頂角の1/2、前記アンテナ軸を回転軸とする円錐体の母線長が前記距離となる円錐体の円錐底面における円上のいずれかを前記無線通信機が存在する推定領域として前記無線通信機の3次元位置を推定するステップと、
を備える位置推定方法。
【請求項11】
位置推定通信装置と無線通信機との間で電波による双方向通信を行うことにより、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定する位置推定方法であって、
前記位置推定通信装置の隣接する2つのアンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナを回転させるステップと、
前記位置推定通信装置の前記1次元アレイアンテナが受信する受信電波の位相情報に基づき、前記隣接する2つのアンテナ素子間の受信電波の位相差を計測するステップと
受信電波の位相差を用いて、前記1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する前記電波の到来角度を計算するステップと
送受信時の時刻情報に基づき、前記無線通信機との間の前記電波の伝搬時間を計測するステップと
前記電波の伝搬時間を用いて前記無線通信機との間の距離を計算するステップと
前記受信電波の位相情報及び前記距離を取得した時点の前記1次元アレイアンテナの回転角度、前記1次元アレイアンテナにおける前記電波の到来角度、及び前記距離に基づき前記無線通信機が存在する推定領域を逐次計算し、前記1次元アレイアンテナの回転前後の現在時刻の推定領域及び過去時刻の推定領域に基づき算出された3次元位置を前記無線通信機の位置として推定するステップと
を備える位置推定方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本開示に係る位置推定通信装置は、
電波を送受信する複数のアンテナ素子を、互いの距離が前記電波の波長の1/2以下となるようにアレイ状に配置されるアンテナ部と、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれに対応して一つずつ設けられ、前記複数のアンテナ素子を用いて外部の無線通信機との間で前記電波による双方向通信を行い、前記複数のアンテナ素子による受信電波の位相情報及び前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の送受信時の時刻情報を出力する複数の無線回路、前記複数の無線回路の動作を同期化する同期信号を出力する同期回路、を有し、前記複数のアンテナ素子における前記受信電波の位相情報及び前記送受信時の時刻情報を出力する無線通信処理部と、
前記受信電波の位相情報を用いて、隣接する2つの前記アンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する電波の到来角度を算出し、前記送受信時の時刻情報を用いて前記アンテナ素子と前記無線通信機との間の距離を算出し、前記電波の到来角度及び前記距離に基づいて、前記無線通信機の3次元位置を推定する位置推定部と、を備え、
前記位置推定部は、
前記受信電波の位相情報を用いて隣接するアンテナ素子間の受信電波の位相差を計測する位相差計測部と、
前記受信電波の位相差を用いて、隣接する2つの前記アンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する前記電波の到来角度を計算する到来角度計算部と、
前記無線通信処理部が出力する前記送受信時の時刻情報に基づき、前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の前記電波の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、
前記電波の伝搬時間に基づき、前記アンテナ素子と前記無線通信機との間の前記距離を計算する距離計算部と、
複数の前記1次元アレイアンテナのそれぞれのアンテナ軸の座標系に対する角度、及び前記1次元アレイアンテナごとの前記電波の到来角度及び前記距離に基づき、アンテナ軸上の一点を円錐頂点とし、前記電波の到来角度を頂角の1/2、前記アンテナ軸を回転軸とする円錐体の母線長が前記距離となる円錐体の円錐底面における円上のいずれかを前記無線通信機が存在する推定領域として前記無線通信機の3次元位置を推定する3次元位置推定部と、を備える。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本開示に係る位置推定方法は、
位置推定通信装置と無線通信機との間で電波による双方向通信を行うことにより、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定する位置推定方法であって、
前記位置推定通信装置の複数のアンテナ素子の中から1つのアンテナ素子を選択するステップと、
選択された前記アンテナ素子に対応する無線回路から前記無線通信機に対して前記電波による無線信号を出力するステップと、
前記無線通信機から返信された前記無線信号を前記複数のアンテナ素子の中の2つにより構成される1次元アレイアンテナによって受信するステップと、
前記無線回路が出力する送受信時の時刻情報を用いて前記電波の伝搬時間を計測するステップと、
前記電波の伝搬時間を用いて前記位置推定通信装置と前記無線通信機との間の距離を算出するステップと、
前記無線回路が出力する受信電波の位相情報に基づき1次元アレイアンテナにおける受信電波の位相差を計測するステップと、
前記受信電波の位相差に基づき前記電波の到来角度を計算するステップと、
複数の前記1次元アレイアンテナのそれぞれのアンテナ軸の座標系に対する角度、及び前記1次元アレイアンテナごとの前記電波の到来角度及び前記距離に基づき、アンテナ軸上の一点を円錐頂点とし、前記電波の到来角度を頂角の1/2、前記アンテナ軸を回転軸とする円錐体の母線長が前記距離となる円錐体の円錐底面における円上のいずれかを前記無線通信機が存在する推定領域として前記無線通信機の3次元位置を推定するステップと、
を備える。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送受信する複数のアンテナ素子が正多角形の各頂点位置となるように配置され、隣接する2つの前記アンテナ素子の距離が前記電波の波長の1/2以下となるようにアレイ状に配置されるアンテナ部と、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれに対応して一つずつ設けられ、前記複数のアンテナ素子を用いて外部の無線通信機との間で前記電波による双方向通信を行い、前記複数のアンテナ素子による受信電波の位相情報及び前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の送受信時の時刻情報を出力する複数の無線回路、前記複数の無線回路の動作を同期化する同期信号を出力する同期回路、を有し、前記複数のアンテナ素子における前記受信電波の位相情報及び前記送受信時の時刻情報を出力する無線通信処理部と、
前記受信電波の位相情報を用いて、隣接する2つの前記アンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する電波の到来角度を算出し、前記送受信時の時刻情報を用いて前記アンテナ素子と前記無線通信機との間の距離を算出し、前記電波の到来角度及び前記距離に基づいて、前記無線通信機の3次元位置を推定する位置推定部と、を備え、
前記位置推定部は、
前記受信電波の位相情報を用いて隣接するアンテナ素子間の受信電波の位相差を計測する位相差計測部と、
前記受信電波の位相差を用いて、隣接する2つの前記アンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する前記電波の到来角度を計算する到来角度計算部と、
前記無線通信処理部が出力する前記送受信時の時刻情報に基づき、前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の前記電波の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、
前記電波の伝搬時間に基づき、前記アンテナ素子と前記無線通信機との間の前記距離を計算する距離計算部と、
複数の前記1次元アレイアンテナのそれぞれのアンテナ軸の座標系に対する角度、及び前記1次元アレイアンテナごとの前記電波の到来角度及び前記距離に基づき、アンテナ軸上の一点を円錐頂点とし、前記電波の到来角度を頂角の1/2、前記アンテナ軸を回転軸とする円錐体の母線長が前記距離となる円錐体の円錐底面における円上のいずれかを前記無線通信機が存在する推定領域として前記1次元アレイアンテナごとに前記推定領域を算出し、複数の前記推定領域からの距離誤差が最小となるような3次元の空間座標位置を計算することにより、前記無線通信機の3次元位置を推定する3次元位置推定部と、
を備える位置推定通信装置。
【請求項2】
電波を送受信する複数のアンテナ素子を、互いの距離が前記電波の波長の1/2以下となるようにアレイ状に配置されるアンテナ部と、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれに対応して一つずつ設けられ、前記複数のアンテナ素子を用いて外部の無線通信機との間で前記電波による双方向通信を行い、前記複数のアンテナ素子による受信電波の位相情報及び前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の送受信時の時刻情報を出力する複数の無線回路、前記複数の無線回路の動作を同期化する同期信号を出力する同期回路、を有し、前記複数のアンテナ素子における前記受信電波の位相情報及び前記送受信時の時刻情報を出力する無線通信処理部と、
前記受信電波の位相情報を用いて、隣接する2つの前記アンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する電波の到来角度を算出し、前記送受信時の時刻情報を用いて前記アンテナ素子と前記無線通信機との間の距離を算出し、前記電波の到来角度及び前記距離に基づいて、前記無線通信機の3次元位置を推定する位置推定部と、を備え、
前記位置推定部は、
前記アンテナ部を回転させる回転機構部と、
前記アンテナ素子が受信する前記受信電波の位相情報に基づき、隣接するアンテナ素子間の受信電波の位相差を計測する位相差計測部と、
前記受信電波の位相差を用いて、前記1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する前記電波の到来角度を計算する到来角度計算部と、
前記無線通信処理部が出力する送受信時の時刻情報に基づき、前記無線通信機との間の前記電波の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、
前記電波の伝搬時間を用いて前記無線通信機との間の距離を計算する距離計算部と、
前記受信電波の位相情報及び前記距離を取得した時点の前記回転機構部の制御による回転角度、前記1次元アレイアンテナにおける前記電波の到来角度、及び前記距離に基づいて、アンテナ軸上の一点を円錐頂点とし、電波の到来角度を頂角の1/2、アンテナ軸を回転軸とする円錐体の母線長が前記距離となる円錐体の円錐底面における円周上のいずれかを前記無線通信機が存在する推定領域として逐次計算し、前記アンテナ部の回転前後の異なる時刻における2つの推定領域からの距離誤差が最小となる3次元の空間座標位置を前記無線通信機の3次元位置として推定する3次元位置推定部と、
を備える位置推定通信装置。
【請求項3】
前記アンテナ部は、3個の前記アンテナ素子を有し、3個の前記アンテナ素子は、正三角形の各頂点位置にそれぞれ配置され2次元アレイ状を呈することを特徴とする請求項1または2に記載の位置推定通信装置。
【請求項4】
前記アンテナ部は、n個の前記アンテナ素子を有し、n個の前記アンテナ素子は、n角形の各頂点位置にそれぞれ配置され2次元アレイ状を呈することを特徴とする請求項1または2に記載の位置推定通信装置。
【請求項5】
前記アンテナ部は、2個以上のアンテナ素子を有し、全ての前記アンテナ素子を直線状に配置した1次元アレイアンテナとして構成されることを特徴とする請求項2に記載の位置推定通信装置。
【請求項6】
前記位置推定通信装置及び前記無線通信機の通信方式は、UWB通信方式であることを特徴とする請求項1または2に記載の位置推定通信装置。
【請求項7】
位置推定通信装置と無線通信機との間で電波を用いて双方向通信することにより、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定する位置推定通信システムであって、
前記位置推定通信装置は、請求項1、2、5のいずれか1項に記載の位置推定通信装置であり、
前記無線通信機は、
前記位置推定通信装置と前記電波による双方向通信を行う端末アンテナ部と、
前記端末アンテナ部によって送受信する前記電波の処理を行う端末無線通信処理部と、
を備える位置推定通信システム。
【請求項8】
前記位置推定通信装置及び前記無線通信機の通信方式は、UWB通信方式であることを特徴とする請求項7に記載の位置推定通信システム。
【請求項9】
前記無線通信機は、携帯端末であることを特徴とする請求項7に記載の位置推定通信システム。
【請求項10】
位置推定通信装置と無線通信機との間で電波による双方向通信を行うことにより、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定する位置推定方法であって、
電波を送受信する複数のアンテナ素子が正多角形の各頂点位置となるように配置され、隣接する2つの前記アンテナ素子の距離が前記電波の波長の1/2以下となるようにアレイ状に配置される前記位置推定通信装置の前記複数のアンテナ素子の中から1つのアンテナ素子を選択するステップと、
選択された前記アンテナ素子に対応する無線回路から前記無線通信機に対して前記電波による無線信号を出力するステップと、
前記無線通信機から返信された前記無線信号を前記複数のアンテナ素子の中の2つにより構成される1次元アレイアンテナによって受信するステップと、
前記無線回路が出力する送受信時の時刻情報を用いて前記電波の伝搬時間を計測するステップと、
前記電波の伝搬時間を用いて前記位置推定通信装置と前記無線通信機との間の距離を算出するステップと、
前記無線回路が出力する受信電波の位相情報に基づき1次元アレイアンテナにおける受信電波の位相差を計測するステップと、
前記受信電波の位相差に基づき前記電波の到来角度を計算するステップと、
複数の前記1次元アレイアンテナのそれぞれのアンテナ軸の座標系に対する角度、及び前記1次元アレイアンテナごとの前記電波の到来角度及び前記距離に基づき、アンテナ軸上の一点を円錐頂点とし、前記電波の到来角度を頂角の1/2、前記アンテナ軸を回転軸とする円錐体の母線長が前記距離となる円錐体の円錐底面における円上のいずれかを前記無線通信機が存在する推定領域として前記1次元アレイアンテナごとに前記推定領域を算出し、複数の前記推定領域からの距離誤差が最小となるような3次元の空間座標位置を計算することにより、前記無線通信機の3次元位置を推定するステップと、
を備える位置推定方法。
【請求項11】
位置推定通信装置と無線通信機との間で電波による双方向通信を行うことにより、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定する位置推定方法であって、
前記位置推定通信装置の隣接する2つのアンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナを回転させるステップと、
前記位置推定通信装置の前記1次元アレイアンテナが受信する受信電波の位相情報に基づき、前記隣接する2つのアンテナ素子間の受信電波の位相差を計測するステップと、
受信電波の位相差を用いて、前記1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する前記電波の到来角度を計算するステップと、
送受信時の時刻情報に基づき、前記無線通信機との間の前記電波の伝搬時間を計測するステップと、
前記電波の伝搬時間を用いて前記無線通信機との間の距離を計算するステップと、
前記受信電波の位相情報及び前記距離を取得した時点の前記1次元アレイアンテナの回転角度、前記1次元アレイアンテナにおける前記電波の到来角度、及び前記距離に基づいて、アンテナ軸上の一点を円錐頂点とし、電波の到来角度を頂角の1/2、アンテナ軸を回転軸とする円錐体の母線長が前記距離となる円錐体の円錐底面における円周上のいずれかを前記無線通信機が存在する推定領域として逐次計算し、前記1次元アレイアンテナの回転前後の異なる時刻における2つの推定領域からの距離誤差が最小となる3次元の空間座標位置を前記無線通信機の3次元位置として推定するステップと、
を備える位置推定方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本開示に係る位置推定通信装置は、
電波を送受信する複数のアンテナ素子が正多角形の各頂点位置となるように配置され、隣接する2つの前記アンテナ素子の距離が前記電波の波長の1/2以下となるようにアレイ状に配置されるアンテナ部と、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれに対応して一つずつ設けられ、前記複数のアンテナ素子を用いて外部の無線通信機との間で前記電波による双方向通信を行い、前記複数のアンテナ素子による受信電波の位相情報及び前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の送受信時の時刻情報を出力する複数の無線回路、前記複数の無線回路の動作を同期化する同期信号を出力する同期回路、を有し、前記複数のアンテナ素子における前記受信電波の位相情報及び前記送受信時の時刻情報を出力する無線通信処理部と、
前記受信電波の位相情報を用いて、隣接する2つの前記アンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する電波の到来角度を算出し、前記送受信時の時刻情報を用いて前記アンテナ素子と前記無線通信機との間の距離を算出し、前記電波の到来角度及び前記距離に基づいて、前記無線通信機の3次元位置を推定する位置推定部と、を備え、
前記位置推定部は、
前記受信電波の位相情報を用いて隣接するアンテナ素子間の受信電波の位相差を計測する位相差計測部と、
前記受信電波の位相差を用いて、隣接する2つの前記アンテナ素子によって構成される1次元アレイアンテナのアンテナ軸に対する前記電波の到来角度を計算する到来角度計算部と、
前記無線通信処理部が出力する前記送受信時の時刻情報に基づき、前記複数のアンテナ素子と前記無線通信機との間の前記電波の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、
前記電波の伝搬時間に基づき、前記アンテナ素子と前記無線通信機との間の前記距離を計算する距離計算部と、
複数の前記1次元アレイアンテナのそれぞれのアンテナ軸の座標系に対する角度、及び前記1次元アレイアンテナごとの前記電波の到来角度及び前記距離に基づき、アンテナ軸上の一点を円錐頂点とし、前記電波の到来角度を頂角の1/2、前記アンテナ軸を回転軸とする円錐体の母線長が前記距離となる円錐体の円錐底面における円上のいずれかを前記無線通信機が存在する推定領域として前記1次元アレイアンテナごとに前記推定領域を算出し、複数の前記推定領域からの距離誤差が最小となるような3次元の空間座標位置を計算することにより、前記無線通信機の3次元位置を推定する3次元位置推定部と、を備える。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本開示に係る位置推定方法は、
位置推定通信装置と無線通信機との間で電波による双方向通信を行うことにより、前記位置推定通信装置に対する前記無線通信機の位置を推定する位置推定方法であって、
電波を送受信する複数のアンテナ素子が正多角形の各頂点位置となるように配置され、隣接する2つの前記アンテナ素子の距離が前記電波の波長の1/2以下となるようにアレイ状に配置される前記位置推定通信装置の前記複数のアンテナ素子の中から1つのアンテナ素子を選択するステップと、
選択された前記アンテナ素子に対応する無線回路から前記無線通信機に対して前記電波による無線信号を出力するステップと、
前記無線通信機から返信された前記無線信号を前記複数のアンテナ素子の中の2つにより構成される1次元アレイアンテナによって受信するステップと、
前記無線回路が出力する送受信時の時刻情報を用いて前記電波の伝搬時間を計測するステップと、
前記電波の伝搬時間を用いて前記位置推定通信装置と前記無線通信機との間の距離を算出するステップと、
前記無線回路が出力する受信電波の位相情報に基づき1次元アレイアンテナにおける受信電波の位相差を計測するステップと、
前記受信電波の位相差に基づき前記電波の到来角度を計算するステップと、
複数の前記1次元アレイアンテナのそれぞれのアンテナ軸の座標系に対する角度、及び前記1次元アレイアンテナごとの前記電波の到来角度及び前記距離に基づき、アンテナ軸上の一点を円錐頂点とし、前記電波の到来角度を頂角の1/2、前記アンテナ軸を回転軸とする円錐体の母線長が前記距離となる円錐体の円錐底面における円上のいずれかを前記無線通信機が存在する推定領域として前記1次元アレイアンテナごとに前記推定領域を算出し、複数の前記推定領域からの距離誤差が最小となるような3次元の空間座標位置を計算することにより、前記無線通信機の3次元位置を推定するステップと、を備える。