(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175060
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】プリント基板の製造方法及びプリント基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20231205BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20231205BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H05K3/28 B
H05K3/00 V
H05K3/34 502A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087297
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】相馬 英雄
(72)【発明者】
【氏名】石川 善文
【テーマコード(参考)】
5E314
5E319
【Fターム(参考)】
5E314AA25
5E314AA27
5E314BB02
5E314BB11
5E314CC01
5E314DD07
5E314DD10
5E314FF01
5E314FF05
5E314FF06
5E314FF16
5E314GG26
5E319AA03
5E319AA07
5E319AC02
5E319AC03
5E319AC13
5E319GG20
(57)【要約】
【課題】精度の高い特性インピーダンスを実現するプリント基板の製造方法及びプリント基板等の提供。
【解決手段】プリント基板の製造方法は、基材上に導体により配線を形成し、配線の少なくとも一部を覆うソルダーレジスト層を形成し、ソルダーレジスト層の厚み、及び、配線の特性インピーダンスの少なくとも一方を計測することによって計測結果を取得し、計測結果、及び、配線の特性インピーダンスの目標値である目標インピーダンスに基づいて、ソルダーレジスト層の厚みの変更量を設定し、設定された変更量に基づいて、ソルダーレジスト層の厚みを変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に導体により配線を形成し、
前記配線の少なくとも一部を覆うソルダーレジスト層を形成し、
前記ソルダーレジスト層の厚み、及び、前記配線の特性インピーダンスの少なくとも一方を計測することによって計測結果を取得し、
前記計測結果、及び、前記配線の前記特性インピーダンスの目標値である目標インピーダンスに基づいて、前記ソルダーレジスト層の厚みの変更量を設定し、
設定された前記変更量に基づいて、前記ソルダーレジスト層の厚みを変更する、
プリント基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記計測結果及び前記目標インピーダンスに基づいて、前記ソルダーレジスト層の削除量を設定し、
設定された前記削除量に基づいて、前記ソルダーレジスト層の厚みを削減する、
プリント基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記計測結果及び前記目標インピーダンスに基づいて、前記ソルダーレジスト層の増加量を設定し、
設定された前記増加量に基づいて、前記ソルダーレジスト層の厚みを増加させる、
プリント基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項において、
前記ソルダーレジスト層の厚みを変更するときに、前記ソルダーレジスト層のうち、平面視において前記配線と重複する領域の厚みを変更するプリント基板の製造方法。
【請求項5】
請求項2において、
前記ソルダーレジスト層の厚みを削減するときに、前記ソルダーレジスト層のうち、平面視において前記配線と重複する領域の厚みを変更し、
前記削除量は、前記配線が露出しない値に設定されるプリント基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れか一項において、
前記ソルダーレジスト層の厚みを変更するときに、前記ソルダーレジスト層のうち、平面視において前記配線からの距離が所定以下であり、且つ、前記配線と重複しない領域の厚みを変更するプリント基板の製造方法。
【請求項7】
請求項2において、
前記ソルダーレジスト層の厚みを削減するときに、前記ソルダーレジスト層のうち、平面視において前記配線からの距離が所定以下であり、且つ、前記配線と重複しない領域の厚みを削減し、
前記削除量は、前記基材が露出する値を含む範囲の何れかの値に設定されるプリント基板の製造方法。
【請求項8】
請求項2において、
前記ソルダーレジスト層のうち、平面視において前記配線と重複する領域の厚みを測定し、
前記配線と重複する領域の前記ソルダーレジスト層の厚みが所定閾値以上と判定された場合、前記配線と重複する領域の前記ソルダーレジスト層の厚みを削減し、
前記配線と重複する領域の前記ソルダーレジスト層の厚みが前記所定閾値未満と判定された場合、前記配線からの距離が所定以下であり、且つ、前記配線と重複しない領域の前記ソルダーレジスト層の厚みを削減するプリント基板の製造方法。
【請求項9】
基材と、
前記基材上に導体によって形成される配線と、
前記配線の少なくとも一部を覆うソルダーレジスト層と、
を含み、
平面視において、前記配線のうち特性インピーダンスの目標値である目標インピーダンスの要求精度が高い第1配線に対応する領域を第1領域とし、前記目標インピーダンスの要求精度が前記第1配線に比べて低い第2配線に対応する領域を第2領域としたとき、
前記第1領域における前記ソルダーレジスト層の厚みが、前記第2領域における前記ソルダーレジスト層の厚みと異なるプリント基板。
【請求項10】
請求項9において、
前記第1領域における前記ソルダーレジスト層の厚みが、前記第2領域における前記ソルダーレジスト層の厚みに比べて薄いプリント基板。
【請求項11】
請求項9において、
前記第1領域における前記ソルダーレジスト層の厚みが、前記第2領域における前記ソルダーレジスト層の厚みに比べて厚いプリント基板。
【請求項12】
請求項9乃至11の何れか一項において、
前記第1領域は、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)配線に対応する領域、または、USB(Universal Serial Bus)配線に対応する領域であるプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板の製造方法及びプリント基板等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板を製造する種々の方法が知られている。例えば特許文献1には、銅薄膜エッチングによって回路パターン(配線パターン)を形成した後、回路パターンのインピーダンスを測定し、測定データに基づいて追加エッチングを行う手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリント基板の製造においては、配線パターンの形成後に、ソルダーレジストの塗布印刷が行われる。配線パターンの最終的なインピーダンスは、ソルダーレジストの印刷厚み等により変化する。特許文献1の手法は、ソルダーレジスト塗布前の銅箔パターン幅の調整を行うものであるため、最終的なインピーダンスを所望値に調整できない可能性がある。
【0005】
本開示のいくつかの態様によれば、精度の高い特性インピーダンスを実現するプリント基板の製造方法及びプリント基板等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、基材上に導体により配線を形成し、前記配線の少なくとも一部を覆うソルダーレジスト層を形成し、前記ソルダーレジスト層の厚み、及び、前記配線の特性インピーダンスの少なくとも一方を計測することによって計測結果を取得し、前記計測結果、及び、前記配線の前記特性インピーダンスの目標値である目標インピーダンスに基づいて、前記ソルダーレジスト層の厚みの変更量を設定し、設定された前記変更量に基づいて、前記ソルダーレジスト層の厚みを変更する、プリント基板の製造方法に関係する。
【0007】
本開示の他の態様は、基材と、前記基材上に導体によって形成される配線と、前記配線の少なくとも一部を覆うソルダーレジスト層と、を含み、平面視において、前記配線のうち特性インピーダンスの目標値である目標インピーダンスの要求精度が相対的に高い第1配線に対応する領域を第1領域とし、前記目標インピーダンスの要求精度が相対的に低い第2配線に対応する領域を第2領域としたとき、前記第1領域における前記ソルダーレジスト層の厚みが、前記第2領域における前記ソルダーレジスト層の厚みと異なるプリント基板に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】プリント基板の製造方法を説明するフローチャートである。
【
図2A】配線パターンの形成ステップを説明する断面図である。
【
図2B】配線パターンの形成ステップを説明する断面図である。
【
図2C】配線パターンの形成ステップを説明する断面図である。
【
図2D】配線パターンの形成ステップを説明する断面図である。
【
図3】ソルダーレジスト層の形成ステップを説明する断面図である。
【
図4】ソルダーレジスト層の厚みと特性インピーダンスの関係例である。
【
図5A】ソルダーレジスト層形成後のプリント基板の平面図の例である。
【
図5B】ソルダーレジスト層の厚み調整後のプリント基板の平面図の例である。
【
図6】ソルダーレジスト層の厚み調整後のプリント基板の断面図の例である。
【
図7】ソルダーレジスト層の厚み調整後のプリント基板の断面図の例である。
【
図8】ソルダーレジスト層の厚み調整後のプリント基板の断面図の例である。
【
図9】ソルダーレジスト層の厚み調整後のプリント基板の断面図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本開示の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.第1実施形態
図1は、本実施形態に係るプリント基板100の製造方法を説明するフローチャートである。本実施形態におけるプリント基板100は、例えば柔軟性のない絶縁体である基材10を用いたリジッド基板である。ただしプリント基板100は、柔軟性のある基材10を用いたフレキシブル基板であってもよいし、これらを合わせたリジッドフレキシブル基板であってもよい。以下では、リジッド基板を例に説明を行う。また以下では片面基板の例について説明するが、本実施形態のプリント基板100は、両面基板や多層基板であってもよい。
【0011】
また本実施形態におけるプリント基板100は、ガラスエポキシ基板であってもよいし、ガラスコンポジット基板であってもよいし、他の種類の基板であってもよい。即ち、本実施形態におけるプリント基板100の基材10は、種々の材料を用いて実現することが可能である。
図1に示す処理の前に、基材10が準備されているものとする。
【0012】
まずステップS101において、基材10上に導体を用いて配線が形成される。ここでの配線とは、具体的には所定のパターンに従って複数の配線が基材10上に配置される配線パターンである。ここでの導体は例えば金属であり、狭義には銅薄膜20である。ただし、本実施形態における導体は、銅以外の金属が用いられてもよいし、非金属の導体が用いられてもよい。
【0013】
図2A~
図2Dは、ステップS101の配線パターンの形成ステップの一例を説明する断面図である。なお、
図2A~
図2Dは、形成中のプリント基板100のうちの一部の領域のみを示すものであり、例えば基材10や銅薄膜20等は、図面には不図示の領域まで延伸して設けられてもよい。また図面がプリント基板100の一部のみを図示する点は、後述する
図3や
図6~
図9においても同様である。
【0014】
まず
図2Aに示すように、基材10上に銅薄膜20の層が形成される。さらに
図2Bに示すように、配線パターンに従った形状のレジスト30が形成される。例えば、銅薄膜20の全体を覆うようにレジスト30の層が形成された後、配線パターンと同じ形状のフォトマスクを用いてレジスト30を感光させることによって、
図2Bに示すレジスト30のパターンが形成されてもよい。さらに銅箔エッチングが行われることによって、
図2Cに示すように、レジスト30が形成された領域以外の銅薄膜20が除去される。この後、レジスト30を除去することによって、配線パターンが形成される。
図2Dでは、配線21、配線22、配線23、配線24が形成された例を示している。なお、基材10に配線パターンを形成する手法は種々知られており、本実施形態ではそれらを広く適用可能である。
【0015】
配線パターンの形成後、ステップS102において、ソルダーレジスト層40が形成される。
図3は、ソルダーレジスト層40が形成されたプリント基板100の断面図の例である。ソルダーレジスト層40は、配線パターンを保護するために塗布される絶縁膜である。例えば、ソルダーレジスト層40を形成することによって、プリント基板100への部品実装時に、半田が不必要な部分に付着することを抑制できる。またソルダーレジスト層40は、配線間のショート抑制にも寄与する。例えば、ソルダーレジスト層40は、配線パターンが形成された基材10のうち、電気的な接点となる部分を除いた領域に塗布される。なおソルダーレジストは、形成手法によってアルカリ現像型ソルダーレジスト、UV硬化型ソルダーレジスト、熱硬化型ソルダーレジスト等、いくつかの種類が知られており、本実施形態ではそれらを広く適用可能である。
図3の例では、配線21~配線24を覆うようにソルダーレジスト層40が形成されている。
【0016】
図4は、ソルダーレジスト層40の厚みと、特性インピーダンスの関係の一例を示す図である。ここでのソルダーレジスト層40の厚みとは、例えばプリント基板100に交差(狭義には直交)する方向から観察した平面視において、配線と重複する領域でのソルダーレジスト層40の厚みである。例えば、
図3において、配線21~配線24と重複する領域における厚みL1が、
図4におけるソルダーレジスト層40の厚みであってもよい。
図4に示すように、ソルダーレジスト層40の厚みに応じて、特性インピーダンスが変化する。例えばソルダーレジスト層40の厚みが薄くなるほど、特性インピーダンスの値が大きくなる。また配線と重複しない領域における厚み(例えば
図3の厚みL2)と特性インピーダンスの関係が求められてもよく、この場合も、ソルダーレジスト層40の厚みが薄くなるほど、特性インピーダンスの値が大きくなる。
【0017】
上述した特許文献1は、回路パターン(配線パターン)の形成後、且つ、ソルダーレジストの塗布前に、当該配線パターンの再エッチングを行う手法である。特許文献1の手法は、例えば
図1のフローチャートにおいて、ステップS101の処理を繰り返すことに相当する。しかし
図4に示したように、ソルダーレジスト層40に応じて特性インピーダンスが変化するため、特許文献1の手法によって特性インピーダンスを調整したとしても、その後のソルダーレジスト層40の形成によって特性インピーダンスが目標値からずれる可能性がある。ソルダーレジスト層40の厚みが常に一定であれば、ソルダーレジスト層40による特性インピーダンスの変化量を考慮して、配線パターンを調整しておくことが可能かもしれない。しかし、ソルダーレジスト層40の厚みはロット毎、あるいは基板毎にばらつく可能性がある。
【0018】
よって本実施形態に係るプリント基板100の製造方法は、以下のステップを含んでもよい。プリント基板100の製造方法は、基材10上に導体により配線(配線21~配線24を含む)を形成するステップ(S101)と、配線の少なくとも一部を覆うソルダーレジスト層40を形成するステップ(S102)を含む。さらにプリント基板100の製造方法は、ソルダーレジスト層40の厚み、及び、配線の特性インピーダンスの少なくとも一方を計測することによって計測結果を取得するステップ(S103)と、計測結果、及び、配線の特性インピーダンスの目標値である目標インピーダンスに基づいて、ソルダーレジスト層40の厚みの変更量を設定するステップ(S105)と、設定された変更量に基づいて、ソルダーレジスト層40の厚みを変更するステップ(S106)を含む。例えばステップS101及びS102は、プリント基板の製造装置(狭義には現像、エッチング、剥離等を実行する装置)によって実行される。ステップS103は計測装置によって実行される。計測装置は、光電センサー等を用いた厚み測定装置であってもよいし、X線検査装置であってもよいし、後述する時間領域反射を用いた装置であってもよいし、他の装置であってもよい。また計測装置は、上記の装置の動作を制御するプロセッサーを含んでもよい。ステップS105の処理は、例えばプロセッサーにより実行される。ここでのプロセッサーはPC(Personal Computer)やサーバーに含まれてもよいし、上記の製造装置や計測装置に含まれてもよい。ステップS106は、例えばプリント基板の製造装置(狭義にはレーザー加工機)によって実行される。
【0019】
本実施形態の手法では、ソルダーレジスト層40を形成した後に、当該ソルダーレジスト層40の厚みを調整することによって、特性インピーダンスを目標インピーダンスに近づけることができる。即ち、形成済のソルダーレジスト層40による特性インピーダンスへの影響を考慮した上で、最終的な特性インピーダンスを調整することが可能であるため、特性インピーダンスの値を精度よく調整することが可能になる。この際、ソルダーレジスト層40の厚みや特性インピーダンスの計測結果を踏まえて調整を行うため、適切な調整を実現できる。以下、本実施形態の具体的な手法について詳細に説明する。
【0020】
ソルダーレジスト層40の形成後、ステップS103において、ソルダーレジスト層40の厚み、及び、配線の特性インピーダンスの少なくとも一方を計測する処理が行われることによって、計測結果が取得される。即ち、ここでの計測結果は、ソルダーレジスト層40の厚みであってもよいし、特性インピーダンスの値であってもよいし、この両方であってもよい。
【0021】
例えば、ロット毎に1枚のプリント基板を所与の切断面を用いて切断、研磨することによって、断面観察試料が作成される。断面観察については種々の手法が公知であり、本実施形態ではそれらを広く適用可能である。断面観察によって、ソルダーレジスト層40の厚みを計測結果として取得できる。ここでの厚みは、配線と重複する領域の厚み(例えば
図3における厚みL1)であってもよいし、配線と重複しない領域の厚み(例えば
図3における厚みL2)であってもよいし、この両方であってもよい。なおステップS103においては、ステップS101で形成された配線パターンのうち、特性インピーダンスの調整対象となる配線の近傍のソルダーレジスト層40の厚みが計測されてもよい。ただし、位置に応じたソルダーレジスト層40の厚みばらつきが十分小さいと想定される場合、プリント基板100の任意の位置で厚み計測が行われてもよい。
【0022】
また、断面観察において、配線の幅や間隔が測定されてもよい。配線の幅とは、各配線の短手方向の長さを表す。
図3の例であれば、配線21の幅は、幅L3に対応する。また配線の間隔とは、異なる2つの配線の間の距離を表す。
図3の例であれば、配線の間隔は、間隔L41、L42、L43等である。間隔L41は、配線21と配線22の間隔を表す。間隔L42は、配線21と配線23の間隔を表す。間隔L43は、配線22と配線24の間隔を表す。
【0023】
なお、ソルダーレジスト層40の厚みの測定は、破壊的な手法に限定されず、非破壊的な手法が用いられてもよい。例えば、X線顕微鏡等を用いることによって、プリント基板100の断面構造が非破壊で観察されてもよい。この場合も同様に、断面構造の観察結果に基づいて、ソルダーレジスト層40の厚みが計測結果として取得される。
【0024】
またステップS103において、調整対象となる配線の特性インピーダンスが計測されてもよい。特性インピーダンスの計測は、例えば時間領域反射(TDR:time domain reflectometry)が用いられてもよい。TDRは、配線に高速なパルス等を印加し、反射波形を観察する手法である。これにより、特性インピーダンスの値が計測結果として取得される。ただし、特性インピーダンスを測定する手法はTDRに限定されず、これを発展させた手法や他の手法が用いられてもよい。
【0025】
ステップS104において、計測結果が許容範囲内であるかが判断される。例えば、HDMI(High-Definition Multimedia Interface,HDMIは登録商標)配線では、特性インピーダンスの値を100Ω±10%に設定することが要求される。またUSB(Universal Serial Bus)配線では、特性インピーダンスの値を90Ω±10%に設定することが要求される。このように、要求される特性インピーダンスが決まっている配線がある場合、当該配線での計測結果が要求を満たしているか否かが判定される。
【0026】
例えばステップS103において特性インピーダンスが測定されている場合、ステップS104において、当該特性インピーダンスが目標インピーダンスの範囲内であるかが判定される。ここでの目標インピーダンスとは、特性インピーダンスの目標値であり、例えばHDMI配線の場合90Ω~110Ωの範囲であってもよい。なお、経年劣化等による特性インピーダンスの変動も考慮し、より厳しい目標インピーダンスが設定されてもよい。
【0027】
また
図4に示したように、ソルダーレジスト層40の厚みと特定の配線の特性インピーダンスの値の関係は、シミュレーション等を用いて特定できる。例えば
図6を用いて後述するように領域RE1の厚みを調整することで配線21及び配線22の特性インピーダンスの調整が行われる場合、領域RE1でのソルダーレジスト層40の厚みと、配線21及び配線22の特性インピーダンスの関係を示すシミュレーション結果が予め取得される。なお
図7~
図8を用いて後述するように、ソルダーレジスト層40の厚み調整の対象領域は異なる領域であってもよいため、具体的な対象領域の位置や形状に応じてシミュレーションの設定が変更されてもよい。また厚み調整の対象領域は動的に変更されてもよく、対象領域が異なる複数のパターンのシミュレーション結果が予め取得されてもよい。例えば、シミュレーション結果と目標インピーダンスに基づいて、ソルダーレジスト層40の目標厚みの範囲が設定されてもよい。そしてステップS103においてソルダーレジスト層40の厚みが測定されている場合、ステップS104において、当該厚みが目標厚みの範囲内であるかが判定されてもよい。
【0028】
計測結果が許容範囲内である場合(ステップS104:Yes)、ステップS105~S106の処理が行われずに、
図1に示す処理が終了する。即ち、既に特性インピーダンスが所望の条件を満たしているため、ソルダーレジスト層40の厚み調整は省略が可能である。
【0029】
一方、計測結果が許容範囲内でない場合(ステップS104:No)、ステップS105において、ソルダーレジスト層40の厚みの変更量が設定される。例えば、上述したように、シミュレーション等に基づいて、ソルダーレジスト層40の厚みと、特性インピーダンスの関係を示す情報が取得されていてもよい。本実施形態では、当該関係を示す情報と、ソルダーレジスト層40の厚み及び特性インピーダンスの少なくとも一方を含む測定結果とに基づいて、厚みの変更量が求められる。
【0030】
例えばステップS103において特性インピーダンスが測定されている場合、当該特性インピーダンスに基づいて、現在のソルダーレジスト層40の厚みが求められる。なお上述したように、測定結果が現在のソルダーレジスト層40の厚みを含んでもよい。また、目標インピーダンスの値が既知であるため、目標インピーダンスを実現するソルダーレジスト層40の厚みを求めることも可能である。例えば目標インピーダンスが上記のとおり90Ω~110Ω等の範囲を有する場合、当該範囲に含まれる何れかの値が選択され、選択された値を実現するソルダーレジスト層40の厚みが、目標厚みとして求められる。選択される値は、目標インピーダンスの範囲のうち、中心、あるいはそれに近い値に設定されてもよく、HDMI配線の例であれば100Ωであってもよい。ただし、選択される値は、必ずしも目標インピーダンスの範囲の中央付近となる必要は無く、目標インピーダンスの範囲内にあればよい。
【0031】
以上のように、測定結果と目標インピーダンスに基づいて、現在のソルダーレジスト層40の厚みと、目標となるソルダーレジスト層40の厚みが求められる。よってこれらの差分を求めることによって、ソルダーレジスト層40の厚みの変更量が求められる。
【0032】
ステップS106において、設定された変更量に基づいてソルダーレジスト層40の厚みが変更される。ここで、本実施形態に係るプリント基板100の製造方法は、計測結果及び目標インピーダンスに基づいて、ソルダーレジスト層40の削除量を設定するステップ(ステップS105に対応)と、設定された削除量に基づいて、ソルダーレジスト層40の厚みを削減するステップ(ステップS106に対応)とを含んでもよい。換言すれば、ソルダーレジスト層40の厚み変更は、ソルダーレジスト層40の厚みを削減することによって実現されてもよい。このようにすれば、ソルダーレジスト層40の厚みを増加させるための再塗布等が不要であるため、レーザー加工による厚み削除等、比較的容易な工程により厚み調整を行うことが可能になる。例えば、本実施形態のプリント基板100では、対象となる配線の特性インピーダンスが目標インピーダンス内、もしくは目標インピーダンスよりも低くなりやすいように、ステップS102における配線の幅や配線間隔、ステップS103におけるソルダーレジスト層40の厚みが設定されてもよい。このようにすれば、特性インピーダンスを増加させる方向の調整が必要となる蓋然性が高くなるため、ソルダーレジスト層40の厚み調整として、厚みを削減する工程が実行される。
【0033】
図5A及び
図5Bは、プリント基板100に交差する方向から観察した平面視における、ソルダーレジスト層40の厚み調整の対象となる領域の例を示す図である。例えば
図5Aは、厚み調整前の基板を表し、配線WIが特性インピーダンスの調整対象となる配線である。配線WIは、例えばHDMI配線やUSB配線である。
図5Bは、厚み調整後の基板を表し、例えば
図5Aとは異なる色味で表現された領域REがソルダーレジスト層40の厚み調整が行われた領域を表す。
図5Bに示すように、ソルダーレジスト層40の厚み調整は、調整対象の配線WIに沿った領域であってもよい。例えば、領域REは、配線WIの一方側の端点と、他方側の端点との間の領域である。配線WIの一方側の端点とは、例えばHDMIケーブルが接続されるコネクタとの電気的な接点を表し、他方側の端点とは、例えばHDMIケーブルからの信号を処理するHDMI処理用IC(integrated circuit)との電気的な接点を表す。このようにすれば、対象の配線WIの広い範囲(狭義には配線WIの全体)の特性インピーダンスを適切に調整することが可能になる。
【0034】
図6は、厚み調整後のプリント基板100の断面構成を例示する図である。
図6の例において、特性インピーダンスの調整対象となる配線は、例えば配線21及び配線22である。
図6に示すように、本実施形態に係るプリント基板100の製造方法は、ソルダーレジスト層40の厚みを変更するときに(ステップS106)、ソルダーレジスト層40のうち、平面視において配線(配線21及び配線22)と重複する領域の厚みを変更してもよい。ソルダーレジスト層40のうち、配線の特性インピーダンスに最も寄与するのは、当該配線を覆う領域であると考えられる。よって、平面視において配線と重複する領域のソルダーレジスト層40の厚みを調整することによって、特性インピーダンスを効率的に調整することが可能になる。
【0035】
なお、ソルダーレジスト層40の厚みを削減するときに(ステップS106)、ソルダーレジスト層40のうち、平面視において配線と重複する領域の厚みを変更する場合、削除量は、配線が露出しない値に設定されてもよい。上述したように、ソルダーレジスト層40は、配線を保護するために形成されるものであるため、配線が露出するほどにソルダーレジスト層40が削除されてしまっては、ソルダーレジスト層40を形成する意義が損なわれる可能性がある。その点、削除量の最大値を抑制することによって、配線を適切に保護できる。
【0036】
また、ソルダーレジスト層40の厚みを変更するときに(ステップS106)、ソルダーレジスト層40のうち、平面視において配線からの距離が所定以下であり、且つ、配線と重複しない領域の厚みを変更することも妨げられない。この場合も、配線からの距離がある程度近い領域のソルダーレジスト層40の厚みが調整されるため、当該配線の特性インピーダンスを適切に調整できる。
図6に示す例では、平面視において配線21及び配線22のいずれかと重複する領域と、配線21及び配線22のいずれとも重複しない領域の両方を含む領域RE1が、ソルダーレジスト層40の厚み調整の対象領域として設定される。
図6に示すように、ある程度広い領域におけるソルダーレジスト層40を一括で削除することによって、レーザー加工等を用いた厚みの削減処理を容易に実現することが可能になる。また、配線と重複するソルダーレジスト層40の厚みが元々薄い場合、当該領域での削除量が制限されるため、配線と重複しない領域のソルダーレジスト層40を削除することによって特性インピーダンスを調整する意義が大きい。
【0037】
例えばソルダーレジスト層40の厚みを削減するときに(ステップS106)、ソルダーレジスト層40のうち、平面視において配線からの距離が所定以下であり、且つ、配線と重複しない領域の厚みを削減する場合、削除量は、基材10が露出する値を含む範囲において設定されてもよい。基材10が露出したとしても、配線(銅薄膜)の劣化やショートの危険性はない。よって、配線と重複しない領域のソルダーレジスト層40の厚みを調整する場合、ソルダーレジスト層40の厚みを大きく削減することが可能である。
【0038】
ステップS106において、ソルダーレジスト層40の厚み調整が行われた後、
図1に示すように、再度、ステップS104の計測処理が実行されてもよい。このようにすれば、厚み調整後の特性インピーダンス、及び、ソルダーレジスト層40の厚みの少なくとも一方を計測できる。即ち、ステップS106での調整によって、特性インピーダンスが目標インピーダンスの範囲内となったか否かを判定できる。なお2回目以降の計測処理も上記の例と同様に、特性インピーダンスの測定が行われてもよいし、ソルダーレジスト層40の厚みが計測されてもよいし、その両方が行われてもよい。また1回目では特性インピーダンスと厚みの両方が計測され、2回目では何れか一方が計測される等、場面に応じて計測処理の内容が変更されてもよい。例えば1回目の計測処理では、ロット内の所与のプリント基板100を対象として破壊的な手法によりソルダーレジスト層40の厚みが計測され、当該計測結果に基づいて、当該ロット内の別のプリント基板100(狭義には出荷対象となるプリント基板100)のソルダーレジスト層40の厚み調整が行われてもよい。そして2回目の計測処理では、当該別のプリント基板100を対象として非破壊的な手法によりソルダーレジスト層40の厚みが計測されてもよい。また2回目の計測処理では、厚みの計測が省略され、特性インピーダンスの計測のみが行われてもよい。
【0039】
計測処理によって特性インピーダンスが目標インピーダンスの範囲内であると判定された場合、
図1に示す処理が終了する。計測処理によって特性インピーダンスが目標インピーダンスの範囲内でないと判定された場合、再度、削除量の設定、及び、ソルダーレジスト層40の厚み削減が行われる(ステップS105、S106)。計測処理を繰り返しつつ厚み調整を行うことによって、特性インピーダンスを精密に調整することが可能になる。
【0040】
以上のようにソルダーレジスト層40の厚み調整によって、配線パターンの特性インピーダンスを調整することが可能になる。よってソルダーレジスト層40の形成前に特性インピーダンスを調整する従来手法に比べて、特性インピーダンスを精度よく調整することが可能になる。
【0041】
なお
図6では、配線と重複する領域及び配線と重複しない領域の両方を含む領域RE1の全体において、同じ削除量だけソルダーレジスト層40の厚みが削減される例を説明した。ただし、ソルダーレジスト層40の厚みを削減する手法は
図6に示した例に限定されない。例えば、配線と重複する領域のみの厚みが削減され、配線と重複しない領域の厚みが削減されてなくてもよい。このようにすれば、特性インピーダンスへの寄与が大きい領域に限定してソルダーレジスト層40の厚みを調整することが可能になる。この場合、例えば
図4に対応する情報として、配線と重複する領域のソルダーレジスト層40の厚みのみを変更した場合の、当該配線の特性インピーダンスの変化を特定する情報が予め取得されている。そしてステップS103において、例えば配線と重複する領域のソルダーレジスト層40の厚みが計測され、ステップS105において、当該計測結果と目標インピーダンス(目標厚み)に基づいて削除量が決定される。
【0042】
図7は、厚み調整後のプリント基板100の断面構成を例示する他の図である。
図7に示すように、配線と重複しない領域のみの厚みが削減され、配線と重複する領域の厚みが削減されてなくてもよい。
図7の例であれば、ソルダーレジスト層40のうち、特性インピーダンスの調整対象となる配線21及び配線22の間の領域RE2の厚みが削減される。
図7での削減量は、基材10が露出する量としているが、他の削減量が設定されてもよい。また
図7に示すように、ソルダーレジスト層40のうち、特性インピーダンスの調整対象となる配線21に対して、配線22とは逆側の領域RE3の厚みが削減されてもよい。同様に、ソルダーレジスト層40のうち、特性インピーダンスの調整対象となる配線22に対して、配線21とは逆側の領域RE4の厚みが削減されてもよい。上述したように、配線と重複しない領域では削減によって配線が露出する危険性が低く、削除量を柔軟に設定可能である。この場合、例えば
図4に対応する情報として、配線と重複しない領域のソルダーレジスト層40の厚みのみを変更した場合の、当該配線の特性インピーダンスの変化を特定する情報が予め取得されている。そしてステップS103において、例えば配線と重複しない領域のソルダーレジスト層40の厚みが計測され、ステップS105において、当該計測結果と目標インピーダンス(目標厚み)に基づいて削除量が決定される。
【0043】
また本実施形態では、ソルダーレジスト層40の厚みの測定結果に基づいて、ソルダーレジスト層40の厚み調整の対象となる領域が動的に変更されてもよい。例えば、ステップS103に示す測定処理において、ソルダーレジスト層40のうち、少なくとも平面視において配線と重複する領域の厚みが測定されてもよい。そして配線と重複する領域のソルダーレジスト層40の厚みが所定閾値以上と判定された場合、配線と重複する領域のソルダーレジスト層40の厚みが削減される。この場合、配線と重複しない領域のソルダーレジスト層40の厚みは削減されてもよいし、されなくてもよい。一方、配線と重複する領域のソルダーレジスト層40の厚みが所定閾値未満と判定された場合、配線からの距離が所定以下であり、且つ、配線と重複しない領域のソルダーレジスト層40の厚みが削減されてもよい。この場合、配線と重複する領域のソルダーレジスト層40の厚みは削減されない。このようにすれば、配線を覆うソルダーレジスト層40の厚みに応じて、厚み調整の対象領域を適切に設定できる。例えば配線を覆うソルダーレジスト層40の厚みが十分であれば、より特性インピーダンスへの影響が大きい領域を削除するという観点から厚み調整の対象領域が設定され、厚みが不十分であれば。配線を保護するという観点から厚み調整の対象領域が設定される。
【0044】
またソルダーレジスト層40の厚みの変更量は、平面視における位置に応じて異なってもよい。
図8は、厚み調整後のプリント基板100の断面構成を例示する他の図である。
図8における領域RE1は
図6の領域RE1に対応し、領域RE2~RE4は
図7の領域RE2~RE4に対応する。
図8の例では、領域RE1内、且つ、領域RE2~RE4のいずれとも異なる領域は、相対的に少ない削除量でソルダーレジスト層40が削除され、領域RE2~RE4内は、相対的に多い削除量でソルダーレジスト層40が削除される。このようにすれば、配線との位置に応じて削除量を柔軟に設定することが可能になる。
【0045】
以上、ソルダーレジスト層40の厚みを削除する領域や削除量についていくつかの例を示したが、ソルダーレジスト層40の厚みを削減する手法は
図6~
図8に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【0046】
例えば、ステップS105においては、測定結果と目標インピーダンスに基づいて厚み調整の方向(厚みを削除するか増加させるか)が決定され、削除量や増加量の値は所与の固定値であってもよい。例えば本実施形態では、ステップS104において特性インピーダンスが目標インピーダンスの範囲内と判定されるまで、ソルダーレジスト層40の厚みが固定の変更量ずつ変更されてもよい。
【0047】
またソルダーレジスト層40の厚み調整は、プリント基板100への部品実装後に行われてもよい。ここでの部品とは、抵抗、キャパシタ、コンデンサ、IC等であり、例えば半田等を用いてプリント基板100に固定される電子部品である。このようにすれば、部品装着後の特性インピーダンスを個別に調整できるため、より特性インピーダンスの精度を向上させることが可能になる。
【0048】
また本実施形態の手法は、基材10と、基材上に導体(例えば銅薄膜20)によって形成される配線(配線21等)と、配線の少なくとも一部を覆うソルダーレジスト層40と、を含むプリント基板100に適用できる。プリント基板100のうち、平面視において第1配線に対応する領域を第1領域とし、第2配線に対応する領域を第2領域とする。第1配線とは、配線のうち特性インピーダンスの目標値である目標インピーダンスの要求精度が相対的に高い配線を表す。第2配線とは、配線のうち目標インピーダンスの要求精度が第1配線に比べて低い配線を表す。本実施形態のプリント基板100は、第1領域におけるソルダーレジスト層40の厚みが、第2領域におけるソルダーレジスト層40の厚みと異なる。ここで比較される厚みは、例えば基材10の表面から、ソルダーレジスト層40の表面までの距離であってもよい。例えば第1領域や第2領域が配線と重複する領域である場合、各領域での厚みは、ソルダーレジスト層40の実際の厚みと、配線の厚みの和であってもよい。
【0049】
なお、ソルダーレジスト層40を全ての領域において均等に塗布しようとしても誤差が生じる可能性があり、厚み調整を行う前であっても平面視における位置に応じてソルダーレジスト層40の厚みに微差が生じる可能性がある。しかし、本実施形態の手法はレーザー加工等を用いて意図的にソルダーレジスト層40の厚みを調整するものであるため、厚みの変更量は自然に生じる微差に比べて識別可能な程度に大きい。よって本実施形態のプリント基板100におけるソルダーレジスト層40の第1領域での厚みと第2領域での厚みの差は、1回のソルダーレジスト層40の塗布工程において生じる厚みばらつきの最大値に比べて大きくてもよい。1回のソルダーレジスト層40の塗布工程において生じる厚みばらつきは、用いられる製造装置の特性や、実際に製造された製品の計測結果等から統計的に求めることが可能である。
【0050】
図5A、
図5Bの例であれば、目標インピーダンスの要求精度が相対的に高い第1配線とは、配線WIに対応し、第1領域とは領域REに対応する。具体的には、第1領域は、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)配線に対応する領域、または、USB(Universal Serial Bus)配線に対応する領域であってもよい。上述したように、HDMI配線やUSB配線は目標インピーダンスの要求精度が他の配線に比べて高いため、ソルダーレジスト層40の厚み調整の対象となりやすい。換言すれば、これらの配線に対応する第1領域のソルダーレジスト層40の厚みを第2領域での厚みと異ならせることによって、当該配線の特性インピーダンスを精度よく調整することが可能になる。
【0051】
上述した例では、特性インピーダンスを調整する際にはソルダーレジスト層40の厚みが削減される。そのため、第1領域におけるソルダーレジスト層40の厚みは、第2領域におけるソルダーレジスト層40の厚みに比べて薄くなる。
【0052】
2.第2実施形態
以上では、レーザー加工等を用いてソルダーレジスト層40の厚みを削減することによって、配線パターンの特性インピーダンスを調整する例について説明した。ただし本開示の一態様はこれに限定されない。
【0053】
例えば
図1のステップS105において、計測結果及び目標インピーダンスに基づいて、ソルダーレジスト層40の増加量を設定する処理が行われてもよい。そしてステップS106において、設定された増加量に基づいて、ソルダーレジスト層40の厚みを増加させる処理が行われる。例えば、ソルダーレジスト層40の厚みを増加させる対象領域以外の領域をマスクし、対象領域にソルダーレジストを再度塗布する処理が行われる。
図4を用いて上述したように、ソルダーレジスト層40の厚みを増加させることによって、特性インピーダンスを減少させることが可能である。よって、現在の特性インピーダンスが目標インピーダンスに比べて大きい場合、ソルダーレジスト層40の厚みを増加させることによって、特性インピーダンスを適切に調整することが可能になる。
【0054】
即ち、本実施形態に係るプリント基板100では、平面視において、配線のうち特性インピーダンスの目標値である目標インピーダンスの要求精度が相対的に高い第1配線に対応する領域を第1領域とし、目標インピーダンスの要求精度が相対的に低い第2配線に対応する領域を第2領域としたとき、第1領域におけるソルダーレジスト層40の厚みが、第2領域におけるソルダーレジスト層40の厚みに比べて厚い。第1領域のソルダーレジスト層40の厚みを第2領域での厚みと異ならせることによって、要求精度の高い配線の特性インピーダンスを精度よく調整することが可能になる。
【0055】
図9は、厚み調整後のプリント基板100の断面構成を例示する図である。
図9の例において、特性インピーダンスの調整対象となる配線は、例えば配線21及び配線22である。
図9に示すように、本実施形態に係るプリント基板100の製造方法は、ソルダーレジスト層40の厚みを変更するステップ(ステップS106)において、ソルダーレジスト層40のうち、平面視において配線(配線21及び配線22)と重複する領域の厚みを増加させる。ソルダーレジスト層40のうち、配線の特性インピーダンスに最も寄与するのは、当該配線を覆う領域であると考えられる。よって、平面視において配線と重複する領域のソルダーレジスト層40の厚みを調整することによって、特性インピーダンスを効率的に調整することが可能になる。
【0056】
またソルダーレジスト層40の厚みを増加させるステップにおいて、ソルダーレジスト層40のうち、平面視において配線からの距離が所定以下であり、且つ、配線と重複しない領域の厚みを増加させる処理が行われてもよい。配線と重複しない領域であっても、配線との距離が近い領域であれば当該配線の特性インピーダンスに影響を与える。よって、配線からの距離が所定以下であり、且つ、配線と重複しない領域の厚みを増加させることによっても、対象の配線の特性インピーダンスを適切に調整することが可能である。
【0057】
なお
図9では、配線と重複する領域及び配線と重複しない領域の両方を含む領域RE5の全体において、同じ増加量だけソルダーレジスト層40の厚みが増加する例を説明した。このようにすれば、ソルダーレジスト層40の厚みを増加させる領域を1つにまとめること、且つ、当該領域での厚みの増加幅を一定にすることが可能であるため、ソルダーレジストの再塗布に係る工程を容易に実現することが可能になる。ただし、ソルダーレジスト層40の厚みを増加させる領域、厚みは
図9に示した例に限定されない。例えば、配線と重複する領域のみの厚みが増加してもよいし、配線と重複しない領域の厚みのみが増加してもよい。また各領域の厚みの増加量がそれぞれ異なってもよい。
【0058】
なお、ソルダーレジスト層40の厚みを増加させる場合、厚みを削減する場合と異なり、厚み調整によって配線が露出することは想定されない。よって、配線と重複する領域の厚みを調整する場合であっても、配線が露出するか否かという観点から調整量に上限を設ける必要は無い。
【0059】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。またプリント基板等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0060】
10…基材、20…銅薄膜、21~24…配線、30…フォトマスク、40…ソルダーレジスト層、L1,L2…厚み、L3…配線幅、L41~L43…配線間隔、WI…配線、RE,RE1~RE5…ソルダーレジスト層の厚みを変更する領域