(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175091
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】燃料集合体
(51)【国際特許分類】
G21C 3/30 20060101AFI20231205BHJP
G21C 3/10 20060101ALI20231205BHJP
G21C 3/33 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G21C3/30 100
G21C3/10 100
G21C3/33 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087361
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤本 清志
(72)【発明者】
【氏名】永吉 拓至
(72)【発明者】
【氏名】古市 肇
(72)【発明者】
【氏名】光安 岳
(57)【要約】
【課題】
ばねがルースパーツとなりにくい構造で、かつ、燃料棒の振動と燃料集合体の圧力損失の増加を抑制できること。
【解決手段】
本発明の燃料集合体は、上記課題を解決するために、燃料棒の上下両端部に設けられた端栓と、該端栓の少なくとも上部を支持するタイプレートとを備えた燃料集合体であって、前記端栓は、その表面に複数の支持突起を備えていると共に、前記端栓に形成された開口部を通して該端栓の内部に形成されている単一空間に一部が収納され、残りの一部が外部に突出して閉ループ化されたばねを有し、複数の前記支持突起と前記閉ループ化されたばねが、前記タイプレートに形成されている差込み孔の内壁に接触して前記端栓が支持されていることを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料棒の上下両端部に設けられた端栓と、該端栓の少なくとも上部を支持するタイプレートとを備えた燃料集合体であって、
前記端栓は、その表面に複数の支持突起を備えていると共に、前記端栓に形成された開口部を通して該端栓の内部に形成されている単一空間に一部が収納され、残りの一部が外部に突出して閉ループ化されたばねを有し、複数の前記支持突起と前記閉ループ化されたばねが、前記タイプレートに形成されている差込み孔の内壁に接触して前記端栓が支持されていることを特徴とする燃料集合体。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料集合体であって、
前記端栓の表面には、120°間隔で2方向に前記支持突起が、1方向に前記ばねが設けられていることを特徴とする燃料集合体。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料集合体であって、
前記支持突起と前記ばねは、前記タイプレートに形成されている前記差込み孔に前記端栓を差し込んだ時に、前記支持突起と前記ばねの接触する部分が点接触或いは点接触に近い状態になるように前記支持突起は半円形状となっていると共に、前記ばねは部分的に1ヵ所飛び出る形状の出っ張り部を有する形状となっていることを特徴とする燃料集合体。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料集合体であって、
前記ばねは、前記端栓に設けた2つの前記開口部の一方を通して前記ばねの一部及び残りの一部の端部が前記単一空間に収納されて閉ループ化され、前記支持突起と前記閉ループ化されたばね及び前記タイプレートに形成されている前記差込み孔の内壁で前記端栓の横方向の支持構造を構成することを特徴とする燃料集合体。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料集合体であって、
2つの前記開口部は、前記端栓の上部及び下部に形成された上部開口部及び下部開口部であり、前記単一空間は、前記端栓内で前記上部開口部と前記下部開口部を連通する開口部連通部であることを特徴とする燃料集合体。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料集合体であって、
前記ばねは、短辺と長辺を有する矩形形状の板材が、前記板材の中間部を中心に2つ折りされて閉ループ化された板ばねであることを特徴とする燃料集合体。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料集合体であって、
前記板ばねの閉ループ化は、前記板ばねの前記短辺側の両端部或いは両端部付近を溶接して固定するか、又は前記板ばねの前記短辺側の両端部付近に切り込みを設け、前記切り込み部分を嵌め合わせて固定するか、若しくは前記板ばねの前記短辺側の両端部付近に設けられた開口部と、前記開口部の位置がずれないようにするための留め具と、前記留め具を前記端栓内に通すための留め具挿入孔と、前記留め具挿入孔から前記留め具が抜けないようにするための挿入孔止め具とを用いて固定することで行なわれることを特徴とする燃料集合体。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料集合体であって、
前記開口部連通部の上方には、2つ折りされた前記板ばねの板ばね中間部が収納できる板ばね中間部収納部が形成され、前記開口部連通部の下方には、閉ループ化された前記板ばねの両端部が収納できる板ばね端部収納部が形成されていることを特徴とする燃料集合体。
【請求項9】
燃料棒の上下両端部に設けられた端栓と、該端栓の少なくとも上部を支持するタイプレートとを備えた燃料集合体であって、
前記端栓の周囲に設置され、断面が円筒形又は多角形に形成された筒状の板を備え、前記筒状の板に前記端栓が挿入されて前記筒状の板と前記端栓とを接触させることで前記筒状の板が前記端栓上に固定配置され、かつ、前記筒状の板には、前記タイプレートの内壁面と対向するように前記筒状の板の外側に出っ張り型のばね及び複数の支持突起を有し、前記出っ張り型のばねと複数の前記支持突起及び前記タイプレートに形成されている差込み孔の内壁で前記端栓の横方向の支持構造を構成することを特徴とする燃料集合体。
【請求項10】
請求項9に記載の燃料集合体であって、
前記筒状の板は六角形状を成し、六角形状の前記筒状の板は、その外側面に120°間隔で2方向に前記支持突起が、1方向に出っ張り型のばねが設けられていることを特徴とする燃料集合体。
【請求項11】
請求項10に記載の燃料集合体であって、
前記端栓と対向するように、六角形状の前記筒状の板の内側に突起状の端栓抑え部を複数備え、複数の前記端栓抑え部と前記端栓とが点接触することで前記端栓と六角形状の前記筒状の板が一体化されていることを特徴とする燃料集合体。
【請求項12】
燃料棒の上下両端部に設けられた端栓と、該端栓の少なくとも上部を支持するタイプレートとを備えた燃料集合体であって、
前記端栓の周囲に設置され、断面が円筒形又は多角形に形成された筒状の板を備え、前記筒状の板に前記端栓が挿入されて前記筒状の板と前記端栓とを接触させることで前記筒状の板が前記端栓上に固定配置され、かつ、前記筒状の板には、前記端栓の外表面と対向するように前記筒状の板の内側に出っ張り型のばね及び複数の支持突起を有し、前記出っ張り型のばねと複数の前記支持突起及び前記端栓で前記端栓の横方向の支持構造を構成することを特徴とする燃料集合体。
【請求項13】
請求項12に記載の燃料集合体であって、
前記筒状の板は六角形状を成し、六角形状の前記筒状の板は、その内側面に120°間隔で2方向に前記支持突起が、1方向に出っ張り型のばねが設けられていることを特徴とする燃料集合体。
【請求項14】
請求項13に記載の燃料集合体であって、
前記タイプレートと対向するように、六角形状の前記筒状の板の外側に突起状の抑え部を複数備え、複数の前記抑え部と前記タイプレートとが点接触することで前記タイプレートと六角形状の前記筒状の板が一体化されていることを特徴とする燃料集合体。
【請求項15】
請求項12乃至14のいずれか1項に記載の燃料集合体であって、
六角形状の前記筒状の板の縦方向の両端部に、筒状の板抜け防止用折り曲がり部を備え、前記筒状の板抜け防止用折り曲がり部が前記タイプレートの上面と下面に引っ掛かることで、前記タイプレートの設置高さ位置で前記端栓の横方向の支持構造が構成されることを特徴とする燃料集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料集合体に係り、原子炉圧力容器内の炉心に稠密配置される複数本の燃料棒と、この複数本の燃料棒を支持固定するタイプレートとで構成されるものに好適な燃料集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術分野における背景技術として、例えば、特許文献1に記載の「燃料集合体の上部タイプレート」がある。
【0003】
この特許文献1には、燃料要素間の伸びに差異が生じても、上部タイプレートと燃料要素との間の拘束力をほぼ一定に保持し、かつ、燃料要素の縦方向の伸び及び水流による振動を吸収し易い構造の上部タイプレートを提供するために、燃料要素の上部端栓を挿入することができる差込み穴を穿設し、この差込み穴へ上部端栓を挿入した燃料要素を、その上部で保持するようにした燃料集合体の上部タイプレートにおいて、差込み穴への内面に、燃料要素の上部端栓と凸面で当接して該上部端栓へ押圧力を付与することができる板ばねを、穴中心に関して対称位置に複数個取り付けたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、炉心に複数の燃料集合体を装荷し、横断面が十字型の制御棒を燃料集合体間に挿入する沸騰水型原子炉において、複数の燃料棒を燃料集合体のチャンネルボックス内に稠密に配置すると共に、運転中にチャンネルボックス内でボイドを発生させることによって中性子スペクトルを硬化させ、核分裂プルトニウム転換比を向上させた沸騰水型原子炉(以下、低減速スペクトル沸騰水型原子炉と称する)が開発中されている。
【0006】
低減速スペクトル沸騰水型原子炉では、従来の沸騰水型原子炉と同様に、燃料棒の上部と下部にはそれぞれ上部端栓と下部端栓が設けてあり、上部端栓は上部タイプレートの差込み孔に差し込み、下部端栓は下部タイプレートの差込み孔に差し込むことで燃料棒上端部及び下端部を支持している。
【0007】
開発中の低減速スペクトル沸騰水型原子炉では、より多くの燃料棒を稠密に配置するため、燃料棒径を従来のBWR燃料(例えば、9×9の燃料配置)よりも細くしている。そのため、流力振動による燃料棒破損の防止対策が必要となる。最新の沸騰水型原子炉(例えば、11×11の燃料配置)では、燃料棒上端部及び下端部に燃料棒の振動対策とされる燃料スペーサを配置した設計が既に存在する。
【0008】
上述した特許文献1には、燃料棒の上部端栓が上部タイプレートの差込み孔に差込まれた状態で、上部タイプレートの上部端栓の差込み孔の内壁に板バネを90°間隔で4方向に設置し、板ばねにより燃料棒上部端栓部の振動を抑制できることが記載されている。
【0009】
しかし、特許文献1では、上部タイプレートの差込み孔の内壁面に4枚の板ばねを溶接設置しているが、板ばねと上部タイプレートの材質が異なることが推測されるため(例えば、板ばねはインコネル製、上部タイプレートはステンレス製)、異種金属の溶接部の破損によって板ばねがルースパーツ化するリスクが考えられる。
【0010】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ばねがルースパーツとなりにくい構造で、かつ、燃料棒の振動と燃料集合体の圧力損失の増加を抑制できる燃料集合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の燃料集合体は、上記目的を達成するために、燃料棒の上下両端部に設けられた端栓と、該端栓の少なくとも上部を支持するタイプレートとを備えた燃料集合体であって、前記端栓は、その表面に複数の支持突起を備えていると共に、前記端栓に形成された開口部を通して該端栓の内部に形成されている単一空間に一部が収納され、残りの一部が外部に突出して閉ループ化されたばねを有し、複数の前記支持突起と前記閉ループ化されたばねが、前記タイプレートに形成されている差込み孔の内壁に接触して前記端栓が支持されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の燃料集合体は、上記目的を達成するために、燃料棒の上下両端部に設けられた端栓と、該端栓の少なくとも上部を支持するタイプレートとを備えた燃料集合体であって、前記端栓の周囲に設置され、断面が円筒形又は多角形に形成された筒状の板を備え、前記筒状の板に前記端栓が挿入されて前記筒状の板と前記端栓とを接触させることで前記筒状の板が前記端栓上に固定配置され、かつ、前記筒状の板には、前記タイプレートの内壁面と対向するように前記筒状の板の外側に出っ張り型のばね及び複数の支持突起を有し、前記出っ張り型のばねと複数の前記支持突起及び前記タイプレートに形成されている差込み孔の内壁で前記端栓の横方向の支持構造を構成することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の燃料集合体は、上記目的を達成するために、燃料棒の上下両端部に設けられた端栓と、該端栓の少なくとも上部を支持するタイプレートとを備えた燃料集合体であって、前記端栓の周囲に設置され、断面が円筒形又は多角形に形成された筒状の板を備え、前記筒状の板に前記端栓が挿入されて前記筒状の板と前記端栓とを接触させることで前記筒状の板が前記端栓上に固定配置され、かつ、前記筒状の板には、前記端栓の外表面と対向するように前記筒状の板の内側に出っ張り型のばね及び複数の支持突起を有し、前記出っ張り型のばねと複数の前記支持突起及び前記端栓で前記端栓の横方向の支持構造を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ばねがルースパーツとなりにくい構造で、かつ、燃料棒の振動と燃料集合体の圧力損失の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の燃料集合体が採用される沸騰水型原子炉の全体構成の概略を示す縦断面図である。
【
図2】沸騰水型原子炉に採用される従来の燃料集合体を示す部分断面図である。
【
図3】沸騰水型原子炉に採用される従来の燃料集合体内に組み込まれる燃料棒を示す全体図である。
【
図4】沸騰水型原子炉に採用される従来の燃料集合体内に燃料棒を組み込んだ状態の上部端栓の支持状態を示す部分断面図である。
【
図5】沸騰水型原子炉に採用される従来の燃料集合体内に燃料棒を組み込んだ状態の下部端栓の支持状態を示す部分断面図である。
【
図6】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例1における燃料棒の上部端栓に設けた横方向の支持構造部を示す斜視図である。
【
図7(a)】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例1における燃料棒の上部端栓に設けた横方向の支持構造部を示す正面図である。
【
図8】
図7(c)のA-A線に沿った断面図である。
【
図9】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例1における燃料棒に横方向の支持構造部を設けた上部端栓を燃料集合体内に組込んだ状態を示す部分詳細断面図である。
【
図10(a)】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例1における燃料棒の下部端栓に設けた横方向の支持構造部を示す正面図である。
【
図12】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例1における燃料棒で横方向の支持構造部を設けた下部端栓を燃料集合体内に組み込んだ状態の部分詳細断面図である。
【
図13】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例1における燃料棒の上部端栓或いは下部端栓に用いられる横方向の支持構造部を構成する板ばねを示す斜視図である。
【
図14】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例1における燃料棒の上部端栓に用いられる板ばねを取り付けるために必要な開口部を示す
図7(a)のB-B線に沿った断面図である。
【
図15】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例1における燃料棒の上部端栓の上部開口部に板ばね端部を挿入し始めている状態を示す断面図である。
【
図16】
図15の状態から板ばねの板ばね中間部が上部端栓内の板ばね中間部収納部に収納されている状態を示す断面図である。
【
図17】
図16の状態で板ばねの両端部両端部を溶接部で接合した状態を示す断面図である。
【
図18】
図17の状態から溶接部で接合された板ばねの両端部両端部が上部端栓内の板ばね端部収納部に収納されている状態を示す断面図である。
【
図19】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例2における燃料棒の上部端栓或いは下部端栓に用いられる横方向の支持構造部を構成する板ばねを示す斜視図である。
【
図20】
図19に示した板ばねの両端部に設けた切込部同士を嵌め合わせた状態を示す斜視図である。
【
図21】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例3における燃料棒の上部端栓或いは下部端栓に用いられる横方向の支持構造部を構成する板ばねを示す斜視図である。
【
図23】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例4における燃料棒の上部端栓に設けた横方向の支持構造部を示す斜視図である。
【
図25】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例4における燃料棒の上部端栓の周囲に設けた六角形状の筒状の板の展開図である。
【
図26】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例4における燃料棒の上部端栓の周囲に設けられる六角形状の筒状の板を示す斜視図である。
【
図28】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例5における燃料棒の上部端栓に設けた横方向の支持構造部を示す斜視図である。
【
図30】沸騰水型原子炉に採用される本発明の燃料集合体の実施例5における燃料棒の上部端栓の周囲に設けられる六角形状の筒状の板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の燃料集合体を説明する。なお、以下に説明する各実施例において、同一構成部品には同符号を使用する。
【0017】
先ず、本発明の燃料集合体が採用される沸騰水型原子炉100を、
図1を用いて説明する。
図1に示す本発明の燃料集合体が採用される沸騰水型原子炉100は、低減速スペクトル沸騰水型原子炉である。
【0018】
図1に示すように、沸騰水型原子炉100は、原子炉圧力容器101の内部に配置される円筒状の炉心シュラウド102と、この炉心シュラウド102の内部に配置され、複数の燃料集合体120が正方格子状に配置される炉心103と、原子炉圧力容器101の内部に配置され炉心103を覆うシュラウドヘッド104と、シュラウドヘッド104に配置され上方へ延伸する気水分離器105と、気水分離器105の上方に配置される蒸気乾燥器106と、炉心シュラウド102の内部に配置され炉心103の上端部に配置される上部格子板129と、炉心シュラウド102の内部に配置され炉心103の下端部に配置される炉心支持板108と、炉心支持板108に配置される燃料支持金具109と、原子炉圧力容器101の内部に配置され燃料集合体120の核反応を制御するため、炉心103に横断面十字形状の制御棒(
図2に示す十字型制御棒132)を挿入可能とする制御棒案内管110と、原子炉圧力容器101の底部よりも下方に配置される制御棒駆動機構ハウジング(図示せず)の内部に配置され、十字型制御棒132と連結する制御棒駆動機構111と、原子炉圧力容器101の底部に、その下方から原子炉圧力容器101の内部に貫通するように配置され、インペラ117を備えるインターナルポンプ113と、から概略構成されている。
【0019】
また、上記したインターナルポンプ113は、円筒状の炉心シュラウド102の外面と原子炉圧力容器101の内面との間に形成される環状のダウンカマ114に向けて配置される。
【0020】
また、原子炉圧力容器101の内部の冷却水(サブクール水:飽和状態より低い温度の冷却水)118は、インターナルポンプ113によって、原子炉圧力容器101の底部側から炉心103の内部に流入し、炉心103の内部に流入した冷却水118は、燃料集合体120(
図2参照)の核反応により加熱されて気液二相流となり、気水分離器105に流入する。
【0021】
気水分離器105に流入した気液二相流は、湿分を含む蒸気(気相)と水(液相)とに分離され、水(液相)は、再び冷却水118としてダウンカマ114に降下し、一方、蒸気(気相)は、蒸気乾燥器106に流入して湿分が除去され、主蒸気配管115を介してタービン(図示せず)に供給される。タービンに供給された蒸気は、復水器(図示せず)で水に戻され、給水配管116を介して原子炉圧力容器101の内部に流入する。
【0022】
また、後述するが、炉心103は、正方格子状に配置される複数の(4つの)燃料集合体120と、この燃料集合体120の核反応を制御するため、燃料集合体120間に配置される十字型制御棒132と、を有している。
【0023】
次に、燃料集合体120について、
図2を用いて説明する。
【0024】
図2に示す燃料集合体120は、上記したように炉心103に複数体が配置され、正方格子状に配置されている。
【0025】
図2に示すように、燃料集合体120は、四角筒状(四角形状又は正方形状)のチャンネルボックス125と、このチャンネルボックス125に正方形状に稠密に配置された燃料棒121と、縦方向(燃料集合体120の高さ方向:縦方向)に複数個が配置され、燃料棒121を横方向(水平方向)に一定間隔で支持する(燃料集合体120の高さ方向で燃料棒121が相互に接触しないように任意の間隔で燃料棒121を支持する)スペーサ122と、燃料棒121の上部を固定する上部タイプレート124と、燃料棒121の下部を固定する下部タイプレート123と、上部タイプレート124に配置されたハンドル130と、から概略構成されている。
【0026】
そして、
図2に示す燃料集合体120は、その上部が上部格子板129で支持され、その下部が燃料支持金具109で支持されている。
【0027】
また、隣接する燃料集合体120の間には、十字型制御棒132が上下方向に移動するための十字型制御棒132の移動空間140が形成され、十字型制御棒132の移動空間140は、チャンネルボックス125に配置されているチャンネルスペーサ133によって形成されている。
【0028】
また、燃料支持金具109には、下部タイプレート123の下部を嵌め込む上部開口部127が形成され、隣接する上部開口部127間には、十字型制御棒132が上下方向に移動するための制御棒移動用開口部128が形成されている。
【0029】
図2に示す燃料集合体120に採用されている燃料棒121を
図3に示す。
【0030】
図3に示すように、燃料棒121の上端部及び下端部には、それぞれ上部端栓134及び下部端栓135が設けてある。
【0031】
燃料集合体120内における燃料棒121の上部端栓134の従来の支持部を
図4に、下部端栓135の従来の支持部を
図5に示す。
【0032】
図4及び
図5には、上部タイプレート124と下部タイプレート123とを結合する数本の燃料棒(図示せず)以外の燃料棒121を示している。
【0033】
燃料棒121の上部は、
図4に示すように、上部タイプレート124に形成された差込み孔138に、燃料棒121の上部端栓134を差込むことで支持されている。また、燃料棒121の本体が熱伸びにより上部タイプレート124に接触しないように、燃料棒121と上部タイプレート124の間には膨張スプリング136を設けており、この膨張スプリング136の伸縮により、燃料棒121の本体の熱伸びを吸収している。なお、膨張スプリング136に加わる力は、上部タイプレート124の下面137で受けている。
【0034】
一方、燃料棒121の下部は、
図5に示すように、下部タイプレート123に形成された差込み孔139に、燃料棒121の下部端栓135を差込むことで支持されており、燃料棒121の荷重は、下部端栓135の上方に形成されたテーパ部135aで受けている。
【実施例0035】
次に、本発明の燃料集合体120の実施例1について説明する。
【0036】
本発明の燃料集合体120の実施例1における特徴となる構成要素は、
図6、
図7(a)、
図7(b)、7(c)、
図8及び
図9に示す燃料棒121の上部端栓134に設けた板ばね1と複数の支持突起2a及び2bと支持突起3a及び3bである。以下、これについて詳細に説明する。
【0037】
図6は、燃料棒121の上部端栓134に設けた横方向の支持構造部の斜視図、
図7(a)は、燃料棒の上部端栓に設けた横方向の支持構造部の正面図、
図7(b)は、
図7(a)の側面図、
図7(c)は、
図7(b)の平面図、
図8は、
図7(c)のA-A線に沿った断面図、
図9は、燃料棒121で横方向の支持構造部を設けた上部端栓134を燃料集合体120内に組込んだ状態の部分詳細断面図である。
【0038】
図6及び
図7(a)、
図7(b)及び
図7(c)に示すように、燃料棒121の上部端栓134には、板ばね1と複数の支持突起2a及び2bと支持突起3a及び3bが設けてある。
【0039】
即ち、
図7(c)に示すように、上部端栓134の表面には、120°間隔で2方向に支持突起2a及び支持突起3aが、1方向に板ばね1が設けられている。
図7(a)に示すように、支持突起2a及び2bと支持突起3a及び3bは縦方向に2ヵ所設けられており、それらの支持突起2aと2b及び支持突起3aと3bの位置は、板ばね1を挿入する上部端栓134に形成された上部開口部4aの高さと下部開口部4bの高さと同レベルの位置とする(板ばね1の出っ張り部1dを中心にして、支持突起2aと2b及び支持突起3aと3bが同じ間隔で配置されている)。
【0040】
図8は、上部端栓134における支持突起3a及び3bと板ばね1を設けている部分の縦断面図(
図7(c)のA-A線に沿った断面図)を示し、
図9は、
図8の上部端栓134を上部タイプレート124に形成された差込み孔138に差し込んだ状態の部分詳細断面図を示す。
【0041】
図9に示すように、支持突起3a及び3bと板ばね1の形状は、上部タイプレート124に形成された差込み孔138に上部端栓134を差し込んだ時に、支持突起3a及び3bと板ばね1の接触する部分が点接触或いは点接触に近い状態になるように、支持突起3a及び3bの形状は半円形状となっており、板ばね1の形状は部分的に1ヵ所飛び出る形状の出っ張り部1dを有する形状となっている(例えば、ポンチによる部分的に深絞り加工を施して出っ張り部1dを形成している)。
【0042】
なお、支持突起2a及び2bは、支持突起3a及3bと同様の形状とする。
図9に示すように、上部端栓134に設けた支持突起3a及び3bと板ばね1は、上部タイプレート124に形成された差込み孔138の内壁面とそれぞれ点接触している(図示していないが、支持突起2a及びも支持突起3a及び3bと同様)。
【0043】
このような構成とするにより、原子炉運転中に冷却水の流れが生じた場合においても、燃料棒121の上部端栓134は、板ばね1と支持突起2a及び2bと支持突起3a及び3bとによる支持により横方向の振動を抑制することができる。また、燃料棒121の振動対策としてのスペーサも不要となり、圧力損失増加の抑制効果も期待できる。
【0044】
なお、
図9に示すように、燃料棒121の縦方向の動きについては、膨張スプリング136で支持しているので問題はない。
【0045】
次に、
図10(a)、
図10(b)、
図10(c)、
図11及び
図12に、燃料棒121の下部端栓135に設けている板ばね11と複数の支持突起12a及び12bと支持突起13a及び13bを示す。
【0046】
燃料棒121の下部端栓135は、
図10(c)に示すように、
図7(c)と同様に、下部端栓135の表面には、120°間隔で2方向に支持突起12a及び13aが、1方向に板ばね11が設けられている。
図10(a)に示すように、支持突起12a及び12bと支持突起13a及び13bは縦方向に2ヵ所設けられており、それらの支持突起12a及び12bと支持突起13a及び13bの位置は、板ばね11を挿入する下部端栓135に形成された上部開口部14aの高さと下部開口部14bの高さと同レベルの位置とする(板ばね11の出っ張り部11dを中心にして、支持突起12aと12b及び支持突起13aと13bが同じ間隔で配置されている)。
【0047】
図11は、
図10(b)の下部端栓135における支持突起13a及び13bと板ばね11を設けている部分の縦断面図(
図10(c)のD-D線に沿った断面図)を示し、
図12は、
図11の下部端栓135を下部タイプレート123に形成された差込み孔139に差し込んだ状態の部分詳細断面図を示す。
【0048】
図12に示すように、支持突起13a及び13bと板ばね11の形状は、下部タイプレート123に形成された差込み孔139に下部端栓135を差し込んだ時に、支持突起13a及び13bと板ばね11の接触する部分が点接触或いは点接触に近い状態になるように、支持突起13a及び13bの形状は半円形状となっており、板ばね11の形状は部分的に1ヵ所飛び出る形状の出っ張り部11dを有する形状となっている(例えば、ポンチにより部分的に深絞り加工を施して出っ張り部11dを形成している)。
【0049】
なお、支持突起12a及び12bは、支持突起13a及び13bと同様の形状とする。
図12に示すように、下部端栓135に設けた支持突起13a及び13bと板ばね11は、下部タイプレート123に形成された差込み孔139の内壁面とそれぞれ点接触する(図示していないが、支持突起12a及び12bも支持突起13a及び13bと同様)。
【0050】
このような構成とすることにより、原子炉運転中に冷却水の流れが生じた場合においても、
図9と同様に、下部端栓135は支持突起13a及び13bと板ばね11による支持により横方向の振動を抑制できる。
【0051】
【0052】
図13は、燃料棒121の上部端栓134へ取り付ける前の板ばね1を示す。
【0053】
図13に示すように、板ばね1は、その端部が短辺1eを形成し、その短辺1eから上方に延びている長辺1fを形成する矩形形状であり、短辺1eの長さは上部端栓134の外径よりも短くなっている。
【0054】
また、
図13に示すように、板ばね1は、燃料棒121の上部端栓134に取り付ける前に、板ばね中間部1aを中心に2つ折りの状態に加工されていると共に、上部端栓134の外側に配置される板ばね1の中央(板ばね中間部1aと板ばね端部1bとの中間位置)には、2つ折りの状態に加工された板ばね1を上部端栓134に取り付けた後、上部タイプレート124に形成された差込み孔138の内壁面と接触させるための出っ張り部1dが形成されている。
【0055】
また、
図14は、2つ折りの状態に加工された板ばね1を上部端栓134に取り付ける部分の断面図(
図7(a)のB-B線に沿った断面図)を示す。
【0056】
図14に示すように、燃料棒121の上部端栓134の表面には、上部開口部4aと下部開口部4bの2つの開口部を設けており、その上部開口部4aと下部開口部4bは、上部端栓134内の単一空間である開口部連通部6を通じて繋がっており、開口部連通部6の上方には、板ばね1の板ばね中間部1aが収納できる板ばね中間部収納部5aが形成され、開口部連通部6の下方には、板ばね1の板ばね端部1b及び1cが収納できる板ばね端部収納部5bが形成されている。
【0057】
図15は、燃料棒121の上部端栓134の上部開口部4aに板ばね端部1cを挿入し始めている状態を示しており、
図16は、燃料棒121の上部端栓134の上部開口部4aから挿入した板ばね端部1cを、下部開口部4bを介して上部端栓134内から取り出した状態を示している。
【0058】
図16に示すように、板ばね1の板ばね中間部1aは、上部端栓134内の板ばね中間部収納部5aに収納されている。
【0059】
図17は、板ばね1の板ばね端部1bと板ばね端部1cの両端部を溶接部7で接合した状態を示しており、
図18は、板ばね1の板ばね端部1bと板ばね端部1cの両端部を接合した溶接部7を、上部端栓134内の板ばね端部収納部5bに収納している状態を示している。
【0060】
図18に示す状態で上部端栓134を上部タイプレート124の差込み孔138に差し込むと、板ばね1の出っ張り部1dと上部タイプレート124の差込み孔138の内壁面との接触により、板ばね1の出っ張り部1dは、上部端栓134側に押される状態となる。その動きに連動し、板ばね中間部1aと板ばね端部1bは、それぞれ板ばね中間部1a及び板ばね中間部収納部5aと板ばね端部収納部5bの中で上方向、下方向に動作する。
【0061】
従って、原子炉運転中に冷却水の流れが生じた場合においても、板ばね1が上部端栓134から外れることはなく、ルールパーツになることはない。また、板ばね1の板ばね端部1bと板ばね端部1cの両端部を接合している溶接部7が破損した場合においても、板ばね1の板ばね端部1bと板ばね端部1cは、板ばね端部収納部5bの中にあるため、板ばね1が上部端栓134から外れることはない。
【0062】
なお、本実施例では、上部端栓134への板ばね1の取り付け手順を説明したが、下部端栓135への板ばね11の取り付け手順も同様である。また、
図13、
図14、
図15、
図16、
図17及び
図18は、上部端栓134に板ばね1を設置する手順を分かりやすく説明したものであり、板ばね1が閉ループ化されると共に、上部端栓134内に板ばね1の一部が配置される構造であればよく、本実施例に限定されるものではない。
【0063】
このような本実施例によれば、従来の燃料集合体120の構造を大きく変更せず、板ばね1、11がルースパーツになるリスクを低減できる閉ループ化した板ばね1、11と複数の支持突起2a、2b、3a、3b、12a、12b、13a及び13bにより燃料棒121の振動抑制に有効な横方向の支持構造を、燃料棒121の上部端栓134及び下部端栓135に有する燃料集合体120を提供することができる。
【0064】
また、上記対応により、燃料棒121の振動対策としてのスペーサも不要となり、圧力損失増加の抑制効果も期待できる。