(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175100
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】セラミック部材、セラミック装置、およびセラミック部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087377
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乾 靖彦
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131CA09
5F131CA33
5F131CA42
5F131EB11
5F131EB17
5F131EB18
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】亀裂の発生を抑制することができるセラミック部材を提供できる。
【解決手段】セラミック部材10は、第2表面11S2を有するとともに、第2表面11S2に配され、底面13と、底面13から第2表面11S2まで延びる側面14とで規定される凹部12を備えるセラミックス製の本体部11と、本体部11の内部に配された内部電極21A、21Bと、内部電極21A、21Bに電気的に接続され、底面13に配された接続パッド22と、を備え、側面14に底面13に隣接する部位が、底面13に近づくほど外側に向かって傾くテーパ面14Aとなっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面を有するとともに、前記外面に配され、底面と、前記底面から前記外面まで延びる側面とで規定される凹部を備えるセラミックス製の本体部と、
前記本体部の内部に配された内部電極と、
前記内部電極に電気的に接続され、前記底面に配された接続パッドと、を備え、
前記側面において少なくとも前記底面に隣接する部位が、前記底面に近づくほど外側に向かって傾くテーパ面となっている、セラミック部材。
【請求項2】
前記テーパ面が、前記側面において前記底面に隣接する一部にのみ配されている、請求項1に記載のセラミック部材。
【請求項3】
前記接続パッドに接続され、金属を含む第1外部部材をさらに備える、請求項1または請求項2に記載のセラミック部材。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のセラミック部材と、
前記セラミック部材の前記外面に接着され、金属を含む第2外部部材と、を備えるセラミック装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のセラミック部材と、
前記セラミック部材の前記外面に金属接着剤を介して接着された第3外部部材と、を備えるセラミック装置。
【請求項6】
第1接合面を有するパッド用セラミックグリーンシートの前記第1接合面に、接続パッドとなる導電層を形成するパッド形成工程と、
前記パッド用セラミックグリーンシートにおいて前記第1接合面とは異なる他面に他のセラミックグリーンシートを積層してメインブロックを形成するメインブロック形成工程と、
1枚、または積層された複数の凹部用セラミックグリーンシートにより構成され、第2接合面を有するサブブロックを形成するサブブロック形成工程と、
前記サブブロックに、前記第2接合面に開口部を有する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔の内周面において、少なくとも前記第2接合面に隣接する部位に、前記第2接合面に近づくほど外側に向かって傾くテーパ面を形成するテーパ面形成工程と、
前記メインブロックと前記サブブロックとを、前記第1接合面と前記第2接合面とが重ねられ、かつ、前記導電層が前記貫通孔の内部に配されるように積層し、圧着して圧着体を形成する圧着工程と、
前記圧着体を焼成する焼成工程と、を含むセラミック部材の製造方法。
【請求項7】
前記テーパ面形成工程において、前記開口部に面取り加工を施すことにより、前記貫通孔の内周面において前記第2接合面に隣接する一部にのみ前記テーパ面を形成する、請求項6に記載のセラミック部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、セラミック部材、セラミック装置、およびセラミック部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置に使用される静電チャックやヒータには、内部に電極が埋設されたセラミック部材が使用されている。セラミック部材は、表面に凹部を有し、この凹部の内面には、内部電極に電気的に接続された給電パッドが配されている。給電パッドには、内部電極に電力を供給するための給電端子が接続されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成のセラミック部材は、製造の過程において、凹部の底面と側面とで構成される角部を起点として亀裂が生じることがあり、改善が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示されるセラミック部材は、外面を有するとともに、前記外面に配され、底面と、前記底面から前記外面まで延びる側面とで規定される凹部を備えるセラミックス製の本体部と、前記本体部の内部に配された内部電極と、前記内部電極に電気的に接続され、前記底面に配された接続パッドと、を備え、前記側面において少なくとも前記底面に隣接する部位が、前記底面に近づくほど外側に向かって傾くテーパ面となっている。
【0006】
また、本明細書によって開示されるセラミック部材の製造方法は、第1接合面を有するパッド用セラミックグリーンシートの前記第1接合面に、接続パッドとなる導電層を形成するパッド形成工程と、前記パッド用セラミックグリーンシートにおいて前記第1接合面とは異なる他面に他のセラミックグリーンシートを積層してメインブロックを形成するメインブロック形成工程と、1枚、または積層された複数の凹部用セラミックグリーンシートにより構成され、第2接合面を有するサブブロックを形成するサブブロック形成工程と、前記サブブロックに、前記第2接合面に開口部を有する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔の内周面において、少なくとも前記第2接合面に隣接する部位に、前記第2接合面に近づくほど外側に向かって傾くテーパ面を形成するテーパ面形成工程と、前記メインブロックと前記サブブロックとを、前記第1接合面と前記第2接合面とが重ねられ、かつ、前記導電層が前記貫通孔の内部に配されるように積層し、圧着して圧着体を形成する圧着工程と、前記圧着体を焼成する焼成工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本明細書によって開示されるセラミック部材、およびセラミック部材の製造方法によれば、亀裂の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態のセラミック装置の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態のセラミック装置の断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態のセラミック部材の製造工程において、複数のセラミックグリーンシートに導電層および接続用ビアが形成された状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態のセラミック部材の製造工程において、メインブロックおよびサブブロックが形成された状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態のセラミック部材の製造工程において、メインブロックおよびサブブロックが圧着された状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、変形例1のセラミック部材において、凹部の周辺部分を拡大して示す断面図である。
【
図8】
図8は、変形例2のセラミック部材において、凹部の周辺部分を拡大して示す断面図である。
【
図9】
図9は、従来のセラミック部材において、凹部の周辺部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
(1)本明細書によって開示されるセラミック部材は、外面を有するとともに、前記外面に配され、底面と、前記底面から前記外面まで延びる側面とで規定される凹部を備えるセラミックス製の本体部と、前記本体部の内部に配された内部電極と、前記内部電極に電気的に接続され、前記底面に配された接続パッドと、を備え、前記側面において少なくとも前記底面に隣接する部位が、前記底面に近づくほど外側に向かって傾くテーパ面となっている。
【0010】
上記の構成によれば、凹部の底面と側面とで構成される角部に集中する応力を緩和することができ、この角部を起点とするクラックの発生を抑制できる。
【0011】
(2)上記(1)のセラミック部材において、前記テーパ面が、前記側面において前記底面に隣接する一部にのみ配されていても構わない。
【0012】
凹部の内部空間が相対的に大きくなると、空気よりも熱伝導率が大きいセラミック部材の体積が相対的に小さくなるため、接続パッドからセラミック部材を介した伝熱(熱引き)量が相対的に低下し、接続パッドが高温になってしまうことが懸念される。テーパ面が、前記側面において前記底面に隣接する部位にのみ配されるようにすることにより、凹部の内部空間の大きさを必要最低限度とし、接続パッドが高温になってしまうことを回避できる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)のセラミック部材が、前記接続パッドに接続され、金属を含む第1外部部材をさらに備えていても構わない。
【0014】
上記の構成は、内部に金属を含む部材が接続される接続パッドが配される凹部に好適に適用できる。
【0015】
(4)本明細書によって開示されるセラミック装置は、上記(1)、(2)、または(3)に記載のセラミック部材と、前記セラミック部材の前記外面に接着され、金属を含む第2外部部材と、を備える。あるいは、本明細書によって開示されるセラミック装置は、上記(1)、(2)、または(3)に記載のセラミック部材と、前記セラミック部材の前記外面に金属接着剤を介して接着された第3外部部材と、を備える。
【0016】
内部電極に高電圧が印加された場合に、接続パッドと金属を含む第2外部部材との間、または接続パッドと金属接着剤との間で、異常放電が発生することが懸念される。凹部の側面にテーパ面が配されていると、テーパ面が配されない場合と比較して、接続パッドと第2外部部材または金属接着剤との沿面距離が長くなるため、異常放電を抑制することができる。
【0017】
(5)本明細書によって開示されるセラミック部材の製造方法は、第1接合面を有するパッド用セラミックグリーンシートの前記第1接合面に、接続パッドとなる導電層を形成するパッド形成工程と、前記パッド用セラミックグリーンシートにおいて前記第1接合面とは異なる他面に他のセラミックグリーンシートを積層してメインブロックを形成するメインブロック形成工程と、1枚、または積層された複数の凹部用セラミックグリーンシートにより構成され、第2接合面を有するサブブロックを形成するサブブロック形成工程と、前記サブブロックに、前記第2接合面に開口部を有する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔の内周面において、少なくとも前記第2接合面に隣接する部位に、前記第2接合面に近づくほど外側に向かって傾くテーパ面を形成するテーパ面形成工程と、前記メインブロックと前記サブブロックとを、前記第1接合面と前記第2接合面とが重ねられ、かつ、前記導電層が前記貫通孔の内部に配されるように積層し、圧着して圧着体を形成する圧着工程と、前記圧着体を焼成する焼成工程と、を含む。
【0018】
上記の構成によれば、凹部の底面と側面とで構成される角部に集中する応力を緩和することができ、この角部を起点とするクラックの発生を抑制できる。
【0019】
(6)上記(5)のセラミック部材の製造方法における前記テーパ面形成工程において、前記開口部に面取り加工を施すことにより、前記貫通孔の内周面において前記第2接合面に隣接する一部にのみ前記テーパ面を形成しても構わない。
【0020】
このような構成によれば、貫通孔の内周面全体をテーパ面とする場合と比較して、テーパ面形成後の圧着工程において、貫通孔の周辺部分が変形することを抑制できる。
【0021】
[実施形態の詳細]
本明細書によって開示される技術の具体例を、以下に
図1から
図9を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
[セラミック装置1の構成]
本実施形態のセラミック装置1は、対象物である半導体ウェハW(以下「ウェハW」と略記する)を所定の処理温度に加熱しながら、静電引力によって吸着し保持する静電チャックである。セラミック装置1は、
図1および
図2に示すように、セラミック部材10と、セラミック部材10に接合層40を介して接合されるベース部材30(第2外部部材、第3外部部材の一例)と、を備える。
【0023】
[セラミック部材10]
セラミック部材10は、
図1に示すように、全体として円板状をなしている。セラミック部材10は、
図2に示すように、本体部11と、本体部11の内部に配された内部電極(第1電極21Aおよび第2電極21B)と、を備える。本体部11は、例えば窒化アルミニウムやアルミナを主成分とするセラミックスにより形成されている。本体部11の一面は、第1表面11S1となっており、第1表面11S1と反対側に位置し、第1表面11S1と平行な他面は、第2表面11S2(外面の一例)となっている。第1表面11S1は、ウェハWを吸着し保持する吸着面とされている。
【0024】
第1電極21A及び第2電極21Bは、例えば、タングステンやモリブデン等を含む導電性材料によって形成されている。本実施形態では、第1電極21Aが、ウェハWを第1表面11S1上に吸着するための静電引力を発現するチャック電極として機能しており、第2電極21Bが、ウェハWを加熱するためのヒータ電極として機能している。
【0025】
本体部11は、
図2および
図3に示すように、第2表面11S2に配された複数の凹部12を有している。複数の凹部12のそれぞれは、第2表面11S2から第1表面11S1に向かって窪んだ形状をなしており、第2表面11S2よりも内側(第1表面11S1に近接した位置)に配され、第2表面11S2と平行な底面13と、底面13から第2表面11S2まで延びる側面14とで規定される空間である。
図3に示すように、側面14の一部はテーパ面14Aとなっており、残りの部分は、立設面14Bとなっている。テーパ面14Aは、底面13に隣接して配され、底面13に近づくほど、外側に向かって、つまり、凹部12の内径が大きくなる向きに傾く面である。立設面14Bは、テーパ面14Aにおいて第2表面11S2側の端縁から第2表面11S2まで、第2表面11S2に対して垂直に延びる面である。側面14の一部にテーパ面14Aが配されていることによって、底面13と側面14とで構成される角部15を起点としてクラックが生じることを抑制できる。底面13から、テーパ面14Aにおける第2表面11S2側の端縁までの距離で表される、テーパ面14Aの第1の形成深さD1は、底面13から第2表面11S2までの距離で規定される凹部12の深さD0に対して、5%以上50%以下であることが好ましい。また、立設面14Bを延長した延長面と底面13とが交差する位置と角部15との距離で表される、テーパ面14Aの第2の形成深さD2は、凹部12の深さD0に対して5%以上50%以下であることが好ましい。なお、第1の形成深さD1と第2の形成深さD2とは等しくてもよく、異なっていても構わない。
【0026】
各凹部12の底面13には、
図2および
図3に示すように、接続パッド22が配されている。接続パッド22は、例えば、タングステンやモリブデン等を含む導電性材料によって形成されている。複数の凹部12のうち一の凹部12の内部には、配線部23Aによって第1電極21Aと電気的に接続された接続パッド22が配されており、他の一つの凹部12の内部には、配線部23Bによって第2電極21Bと電気的に接続された接続パッド22が配されている。配線部23A、23Bは、第1表面11S1および第2表面11S2に対して垂直方向に延びる接続用ビアと、第1表面11S1および第2表面11S2に対して平行方向に延びる内部配線とによって構成されている。なお、図面の見易さを考慮し、
図2では、接続用ビアと内部配線とを詳細に示さず、配線部23A、23Bを簡略化して図示している。
【0027】
[ベース部材30]
ベース部材30は、主として金属(アルミニウム、アルミニウム合金等)により構成される部材である。ベース部材30は、
図1に示すように、円板状であって、セラミック部材10よりも大きな径を有する。ベース部材30は、
図2に示すように、セラミック部材10の第2表面11S2に対向する第3表面30S1と、第3表面30S1とは反対側の第4表面30S2とを有している。
【0028】
ベース部材30は、
図2に示すように、内部に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流通可能な冷媒流路31を有している。また、ベース部材30は、第3表面30S1と第4表面30S2との間を厚み方向に貫通する端子挿通孔32を有しており、端子挿通孔32の内部には、筒状のインシュレータ33が埋設されている。インシュレータ33は、絶縁性材料(例えばポリエーテルイミドなどの樹脂)からなる。
【0029】
ベース部材30は、第3表面30S1に配された接合層40を介してセラミック部材10の第2表面11S2に接着されている。接合層40としては、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を含むボンディングシートを用いることができる。接合層40は、
図3に示すように、厚み方向に貫通し、インシュレータ33の内部空間と凹部12の内部空間とを連通する連通孔41を有している。
【0030】
[給電端子50]
複数の接続パッド22のそれぞれには、第1電極21Aおよび第2電極21Bへの給電のための給電端子50(第1外部部材の一例)が接続されている。給電端子50は、
図2に示すように、インシュレータ33の内部に配されている。給電端子50の一端部には、
図3に示すように、接続パッド22への接続用の給電ピン51が配されている。給電ピン51は、金属製であって、丸棒状のピン本体51Aと、ピン本体51Aの一端に配された円板状の頭部51Bとを備えており、頭部51Bが、接続パッド22に対して例えばロウ付けにより接続されている。給電端子50の他端は、電源(図示せず)に接続されている。
【0031】
[セラミック部材10の製造方法]
次に、上記のセラミック装置1を構成するセラミック部材10の製造方法の一例を説明する。
【0032】
セラミックグリーンシート61A、61B、61C、61D、61Eが、例えば、以下の方法によって製造される。酸化アルミニウム粉末、酸化マグネシウム粉末、アクリル系樹脂(バインダ)、分散剤、可塑剤等を混合し、トルエン等の有機溶剤を加えて、ボールミルで混練する。得られた混練物をドクターブレード法によってシート状に成形する。
【0033】
次に、メインブロック60Mおよびサブブロック60Sが形成される。
【0034】
本実施形態では、メインブロック60Mは、4枚のセラミックグリーンシート61A、61B、61C、61Dによって形成され、サブブロック60Sは、1枚の凹部用セラミックグリーンシート61Eによって形成される。
【0035】
まず、メインブロック60Mの形成について説明する。
図4に示すように、セラミックグリーンシート61B、61C、61Dに、例えばパンチングによって孔を形成し、この孔の内部に導電性ペーストを充填することによって、接続用ビア63を形成する。次に、セラミックグリーンシート61A、61B、61C、61Dの表面に、第1電極21A、第2電極21B、接続パッド22、および内部配線となる導電層62A、62B、62C、62Dを形成する。導電層62A、62B、62C、62Dは、例えばスクリーン印刷法や転写法などの公知の方法によって形成することができる。複数のセラミックグリーンシート61A、61B、61C、61Dのうち一枚は、パッド用セラミックグリーンシート61Dであり、このパッド用セラミックグリーンシート61Dの一面(第1接合面61S1)に、接続パッド22となる導電層62Cが形成される(パッド形成工程)。
【0036】
次に、
図5に示すように、パッド用セラミックグリーンシート61Dと他のセラミックグリーンシート61A、61B、61Cとを積層して、メインブロック60Mを形成する(メインブロック形成工程)。パッド用セラミックグリーンシート61Dにおいて第1接合面61S1の反対側の他面61S3に、セラミックグリーンシート61Cが積層され、その上にさらにセラミックグリーンシート61B、61Aが順次積層される。複数のセラミックグリーンシート61A、61B、61C、61Dは積層された後、必要に応じ、圧着されてもよい。
【0037】
次に、サブブロック60Sの形成について説明する。本実施形態では、1枚の凹部用セラミックグリーンシート61Eがそのままサブブロック60Sとなる。サブブロック60Sの一面(
図5の上面)は、第2接合面61S2となっている。
【0038】
次に、サブブロック60Sに、例えばドリルを用いて、第2接合面61S2に開口部64Aを有する貫通孔64を形成する(貫通孔形成工程)。次に、貫通孔64の内周面において、第2接合面61S2に隣接する部位(
図5の上端部)に例えばC面取り加工を施すことにより、テーパ面64Bを形成する(テーパ面形成工程)。
【0039】
次に、
図6に示すように、メインブロック60Mとサブブロック60Sとを、第1接合面61S1と第2接合面61S2とが重ねられ、かつ、接続パッド22となる導電層62Cが貫通孔64の内部に配されるように積層し、圧着して圧着体60Pを形成する(圧着工程)。
【0040】
得られた圧着体60Pを焼成することにより、セラミック部材10が得られる(焼成工程)。
【0041】
ここで、テーパ面14Aを有しない従来のセラミック部材100(
図9参照)では、凹部101の底面102と側面103とで構成される角部104を起点として亀裂105が生じることがあった。この原因の1つは、以下のようであると考えられる。
【0042】
セラミック部材100の製造工程において、焼成の際には、メインブロック106Mおよびサブブロック106Sに収縮が生じる。凹部101となる貫通孔を有しないメインブロック106Mには、全体的に内側に向かって収縮しようとする力が働くが、凹部101となる貫通孔を有するサブブロック106Sにおいて、貫通孔の周辺領域では、収縮しようとする力が、貫通孔が広がろうとする方向に働く。このため、凹部101の周辺においては、
図9において矢印で示すように、メインブロック106Mとサブブロック106Sとに互いに反対方向の力が働くこととなり、角部104に応力が集中し、亀裂105が発生すると推察される。
【0043】
また、圧着工程において貫通孔の周辺部分が変形して亀裂105が発生し、この亀裂105が焼成工程において拡大する場合もあると考えられる。
【0044】
本実施形態のように凹部12の側面14にテーパ面14Aが設けられていると、凹部12の底面13と側面14とで構成される角部15への応力集中が緩和され、亀裂の発生を抑制できると考えられる。
【0045】
[セラミック装置1によるウェハWの吸着]
セラミック装置1は、例えば半導体製造装置の一部として使用される。セラミック装置1を半導体製造装置のチャンバ内に設置し、セラミック部材10の第1表面11S1上にウェハWを載置する。チャック電極として機能する第1電極21Aへの給電が行われると、静電引力が生じて第1表面11S1にウェハWが吸着される。また、ヒータ電極として機能する第2電極21Bへの給電が行われると、第2電極21Bが発熱し、発生した熱が本体部11を介してウェハWに伝わって、ウェハWが加熱される。チャンバ内に原料ガスが導入され、ベース部材30に高周波電力が印加されると、プラズマが発生し、ウェハWにバイアス電圧が生じて処理が行われる。
【0046】
このとき、金属製であるベース部材30と接続パッド22との間で異常放電が発生することが懸念される。凹部12の側面14にテーパ面14Aが配されていると、テーパ面14Aが配されない場合と比較して、接続パッド22とベース部材30との沿面距離が長くなるため、異常放電を抑制することができる。
【0047】
[作用効果]
以上のように本実施形態によれば、セラミック部材10は、第2表面11S2を有するとともに、第2表面11S2に配され、底面13と、底面13から第2表面11S2まで延びる側面14とで規定される凹部12を備えるセラミックス製の本体部11と、本体部11の内部に配された内部電極21A、21Bと、内部電極21A、21Bに電気的に接続され、底面13に配された接続パッド22と、を備え、側面14に底面13に隣接する部位が、底面13に近づくほど外側に向かって傾くテーパ面14Aとなっている。
【0048】
また、セラミック部材10の製造方法は、第1接合面61S1を有するパッド用セラミックグリーンシート61Dの第1接合面61S1に、接続パッド22となる導電層62Cを形成するパッド形成工程と、パッド用セラミックグリーンシート61Dにおいて第1接合面61S1とは異なる他面61S3に他のセラミックグリーンシート61A、61B、61Cを積層してメインブロック60Mを形成するメインブロック形成工程と、凹部用セラミックグリーンシート61Eにより構成され、第2接合面61S2を有するサブブロック60Sを形成するサブブロック形成工程と、サブブロック60Sに、第2接合面61S2に開口部64Aを有する貫通孔64を形成する貫通孔形成工程と、貫通孔64の内周面において第2接合面61S2に隣接する部位に、第2接合面61S2に近づくほど外側に向かって傾くテーパ面14Aを形成するテーパ面形成工程と、メインブロック60Mとサブブロック60Sとを、第1接合面61S1と第2接合面61S2とが重ねられ、かつ、導電層62Cが貫通孔64の内部に配されるように積層し、圧着して圧着体60Pを形成する圧着工程と、圧着体60Pを焼成する焼成工程と、を含む。
【0049】
上記の構成によれば、凹部12の底面13と側面14とで構成される角部15に集中する応力を緩和することができ、この角部15を起点とするクラックの発生を抑制できる。
【0050】
また、テーパ面14Aが、側面14において底面13に隣接する一部にのみ配されている。
【0051】
ここで、凹部12の内部空間が相対的に大きくなると、空気よりも熱伝導率が大きいセラミック部材10の体積が相対的に小さくなるため、接続パッド22からセラミック部材10を介した伝熱(熱引き)量が相対的に低下し、接続パッド22が高温になってしまうことが懸念される。テーパ面14Aが、側面14において底面13に隣接する部位にのみ配されるようにすることにより、凹部12の内部空間の大きさを必要最低限度とし、接続パッド22が高温になってしまうことを回避できる。
【0052】
また、セラミック部材10が、接続パッド22に接続される給電端子50をさらに備える。上記の構成は、給電端子50のような金属を含む部材が接続される接続パッド22が配される凹部12に好適に適用できる。
【0053】
また、セラミック装置1は、上記のセラミック部材10と、セラミック部材10の第2表面11S2に、接合層40を介して接着された金属製のベース部材30と、を備える。
【0054】
内部電極21A、21Bに高電圧が印加された場合に、ベース部材30と接続パッド22との間で異常放電が発生することが懸念される。凹部12の側面14にテーパ面14Aが配されていると、テーパ面14Aが配されない場合と比較して、接続パッド22とベース部材30との沿面距離が長くなるため、異常放電を抑制することができる。
【0055】
また、上記のセラミック部材10の製造方法におけるテーパ面形成工程において、開口部64Aに面取り加工を施すことにより、貫通孔64の内周面において第2接合面61S2に隣接する一部にのみテーパ面14Aを形成する。
【0056】
このような構成によれば、貫通孔64の内周面全体をテーパ面とする場合と比較して、テーパ面形成後の圧着工程において、貫通孔64の周辺部分が変形することを抑制できる。
【0057】
<変形例1>
図7に示すセラミック部材80は、上記実施形態と同様に、第2表面11S2よりも内側に配され、第2表面11S2と平行な底面82と、底面82から第2表面11S2まで延びる側面83とで規定される凹部81を有している。凹部81の一部は、給電端子50を接続パッド22に接続する際に、給電端子50を接続パッド22と位置合わせするための治具を受ける治具受部81Aとなっている。側面83は、底面82側から、テーパ面83A、第1立設面83B、治具受面83C、および第2立設面83Dが、この順に連なって構成されており、治具受部81Aは、治具受面83Cと第2立設面83Dとで規定される空間である。テーパ面83Aは、上記実施形態と同様に、底面82に隣接して配され、底面82に近づくほど外側に向かって、つまり、凹部81の内径が大きくなるように傾く面である。第1立設面83Bは、テーパ面83Aにおいて第2表面11S2側の端縁から第2表面11S2に向かって、第2表面11S2に対して垂直に延びる面である。治具受面83Cは、第1立設面83Bの第2表面11S2側の端縁から径方向外側に延び、底面82よりも第2表面11S2に近接して配される、第2表面11S2と平行な面である。第2立設面83Dは、治具受面83Cの端縁から第2表面11S2まで、第2表面11S2に対して垂直に延びる面である。治具受部81Aは、例えば、焼成工程の後、凹部81の開口部の孔縁に研磨加工を施すことにより形成することができる。その他の構成は上記実施形態と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
このように凹部81が治具受部81Aを有していると、治具受部81Aを有しない場合と比較して、接続パッド22とベース部材30との沿面距離がさらに長くなるため、異常放電をいっそう抑制することができる。
【0059】
<変形例2>
図8に示すセラミック部材90は、上記実施形態と同様に、第2表面11S2よりも内側に配され、第2表面11S2と平行な底面92と、底面92から第2表面11S2まで延びる側面93とで規定される凹部91を有しており、凹部91の一部は、上記変形例1とは異なる形状の治具受部91Aとなっている。側面93は、底面92側から、テーパ面93A、治具受面93B、および立設面93Cが、この順に連なって構成されており、治具受部91Aは、治具受面93Bと立設面93Cとで規定される空間である。テーパ面93Aは、上記実施形態と同様に、底面92に隣接して配され、底面92に近づくほど外側に向かって、つまり、凹部91の内径が大きくなるように傾く面である。治具受面93Bは、テーパ面93Aの第2表面11S2側の端縁から径方向外側に延び、底面92よりも第2表面11S2に近接して配される、第2表面11S2と平行な面である。立設面93Cは、治具受面93Bの端縁から第2表面11S2まで、第2表面11S2に対して垂直に延びる面である。その他の構成は上記実施形態と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
変形例1と同様に、凹部91が治具受部91Aを有していると、接続パッド22とベース部材30との沿面距離がさらに長くなるため、異常放電を抑制することができる。
【0061】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、1つの凹部12、81、91の内部に1つの接続パッド22が配されていたが、1つの凹部の内部に複数の接続パッドが配されていても構わない。
(2)上記実施形態では、テーパ面14A、83A、93Aが、凹部12、81、91を規定する側面14、83、93のうち一部にのみ配されていたが、凹部を規定する側面全体がテーパ面であっても構わない。
(3)テーパ面は、平面でなくてもよく、例えば、凹面または凸面になっていても構わない。
(4)テーパ面と底面との角度は任意であり、鋭角になっていれば足りる。
(5)上記実施形態では、接続パッド22に金属製の給電端子50が接続されている例を示したが、第1外部部材は給電端子とは異なる部材であってもよく、例えば金属製の端子を備える温度センサであっても構わない。
(6)セラミック部材の内部に埋設される電極は、ヒータ電極、チャック電極以外でもよく、例えばドライブ電極であっても構わない。
(7)上記実施形態では、メインブロックが4枚のセラミックグリーンシートにより形成される例を示したが、メインブロックを構成するセラミックグリーンシートは3枚以下であってもよく、5枚以上であっても構わない。
(8)上記実施形態では、1つのメインブロックをサブブロックに積層する例を示したが、メインブロックが2つ以上であっても構わない。その際、積層および圧着の順序に特に制限はなく、例えば、2つのメインブロックを積層した後にサブブロックを積層してもよく、1つのメインブロックをサブブロックに積層して圧着した後、さらに他のメインブロックを積層して圧着しても構わない。
(9)メインブロックを構成するセラミックグリーンシートとして、例えば、流体を流通される流通路を形成するための孔を有するセラミックグリーンシートが含まれていても構わない。
(10)上記実施形態では、サブブロックは1枚のセラミックグリーンシートにより構成されていたが、サブブロックが2枚以上のセラミックグリーンシートにより構成されていても構わない。
(11)上記実施形態および変形例では、セラミック部材10に対して、金属製のベース部材30が、樹脂接着剤を含む接合層40で接着されている例を示したが、金属と非金属材料(例えばセラミックス)との複合材により構成されたベース部材(第2外部部材)が、樹脂接着剤を含む接合層によって接着されていても構わない。
(12)上記実施形態および変形例では、セラミック部材10に対して、金属製のベース部材30が、樹脂接着剤を含む接合層40で接着されている例を示したが、金属材料のみ、または金属材料と非金属材料(例えばセラミックス)との複合材により構成されたベース部材(第2外部部材、第3外部部材)が、金属接着層を含む接合層で接着されていても構わない。あるいは、非金属材料のみにより構成されたベース部材(第3外部部材)が、金属接着層を含む接合層で接着されていても構わない。接合層が金属接着剤を含む場合には、接合層と接続パッドとの間でも異常放電が発生することが懸念されるが、凹部の側面にテーパ面が配されていると、テーパ面が配されない場合と比較して、接続パッドと接合層との沿面距離が長くなるため、異常放電を抑制することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:セラミック装置
10、80、90:セラミック部材
11:本体部
11S1:第1表面
11S2:第2表面(外面)
12、81、91:凹部
13、82、92:底面
14、83、93:側面
14A、83A、93A:テーパ面
14B、93C:立設面
15:角部
21A:第1電極(内部電極)
21B:第2電極(内部電極)
22:接続パッド
23A、23B:配線部
30:ベース部材(第2外部部材)
30S1:第3表面
30S2:第4表面
31:冷媒流路
32:端子挿通孔
33:インシュレータ
40:接合層
41:連通孔
50:給電端子(第1外部部材)
51:給電ピン
51A:ピン本体
51B:頭部
60M:メインブロック
60P:圧着体
60S:サブブロック
61A、61B、61C:セラミックグリーンシート
61D:パッド用セラミックグリーンシート
61E:凹部用セラミックグリーンシート
61S1:第1接合面
61S2:第2接合面
61S3:他面
62A、62B、62C、62D:導電層
63:接続用ビア
64:貫通孔
64A:開口部
64B:テーパ面
81A:治具受部
83B:第1立設面
83C:治具受面
83D:第2立設面
91A:治具受部
93B:治具受面
100:従来のセラミック部材
101:凹部
102:底面
103:側面
104:角部
105:亀裂
106M:メインブロック
106S:サブブロック
D0:凹部の深さ
D1:第1の形成深さ
D2:第2の形成深さ
W:ウェハ