(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175105
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】消火システム
(51)【国際特許分類】
A62C 37/40 20060101AFI20231205BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20231205BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A62C37/40
A62C35/68
G08B17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087384
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】増田 有行
【テーマコード(参考)】
2E189
5G405
【Fターム(参考)】
2E189CA06
2E189CA10
2E189CC02
2E189CH03
2E189MB05
5G405CA29
5G405EA41
(57)【要約】
【課題】瞬時に広がる火災に対してより迅速な検知および消火を可能とする消火システムを得る。
【解決手段】火災監視エリアに設けられ、火災の発生を感知する火災感知器と、火災感知器による感知結果に基づいて消火設備を起動する火災受信機とを備えた消火システムであって、火災監視エリアを撮像する撮像装置をさらに備え、火災受信機は、撮像装置により撮像された画像データに対して画像処理を施した結果に基づいて、火災監視エリアにおいて火災が予知されると判定した場合には、火災感知器による感知結果に依存せずに消火設備を起動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災監視エリアに設けられ、火災の発生を感知する火災感知器と、
前記火災感知器による感知結果に基づいて消火設備を起動する火災受信機と
を備えた消火システムであって、
前記火災監視エリアを撮像する撮像装置をさらに備え、
前記火災受信機は、前記撮像装置により撮像された画像データに対して画像処理を施した結果に基づいて、前記火災監視エリアにおいて火災が予知されると判定した場合には、前記火災感知器による前記感知結果に依存せずに前記消火設備を起動する
消火システム。
【請求項2】
前記火災受信機は、前記画像データに対して前記画像処理を施すことで火災発生の危険度を推定し、前記危険度があらかじめ設定した判定閾値以上となった場合には、前記火災が予知されると判定する
請求項1に記載の消火システム。
【請求項3】
前記火災受信機は、前記撮像装置から前記画像データとして動画像データを取得し、前記動画像データに対して前記画像処理を施すことで放火特有の挙動を特定できた場合には、前記危険度が前記判定閾値以上の値であると推定し、前記消火設備を起動する
請求項2に記載の消火システム。
【請求項4】
前記火災受信機は、隣接する複数の火災監視エリアにまたがる複数の動画像データに対して前記画像処理を施すことで、前記放火特有の挙動を特定する
請求項3に記載の消火システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理技術を利用して消火設備を起動する消火システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災感知器により火災の発生を検知し、消火設備を起動する消火システムが、従来から多数提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。このような従来システムは、小さな火種から拡大する火災に対して有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】能美防災 ホームページ、リニューアルのご提案、NSシステム、インターネット(URL:https://www.nohmi.co.jp/product/renewal_fef/nss.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
火災の種類は、燃焼の特性から、下表1のように分類されている。
【0006】
【0007】
従来システムは、A火災に対しては有効に機能する。しかしながら、B火災に対しては、従来システムでは、火災感知器が動作するまでに時間が掛かることで、放水を行うまでに時間が掛かってしまう場合が考えられる。
【0008】
近年では、放火等によるB火災が社会問題化している。特に、B火災では、火災が瞬時に広がってしまう特性がある。火災感知器を用いた従来の消火システムでは、火災検知に時間が掛かってしまう問題以外にも、火災感知器がB火災の進行により焼損してしまい、火災自体が感知できない状況も考えられる。従って、B火災に対して火災検知および消火をより迅速に行うことができる消火システムが強く望まれている。
【0009】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、瞬時に広がる火災に対してより迅速な検知および消火を可能とする消火システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る消火システムは、火災監視エリアに設けられ、火災の発生を感知する火災感知器と、火災感知器による感知結果に基づいて消火設備を起動する火災受信機とを備えた消火システムであって、火災監視エリアを撮像する撮像装置をさらに備え、火災受信機は、撮像装置により撮像された画像データに対して画像処理を施した結果に基づいて、火災監視エリアにおいて火災が予知されると判定した場合には、火災感知器による感知結果に依存せずに消火設備を起動するものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、瞬時に広がる火災に対してより迅速な検知および消火を可能とする消火システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施の形態1における消火システムの全体構成を示した図である。
【
図2】従来の一般的な消火システムの全体構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の消火システムの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る消火システムは、特に放火のような、瞬時に広がる火災に対して、火災検知および消火開始に遅れが生じないように、火災感知器による感知結果に依存せずに、画像処理結果に基づいて直ちに消火設備を起動することができる構成を有する点に技術的特徴を有するものである。
【0014】
実施の形態1.
まず始めに、従来の一般的な消火システムについて説明する。
図2は、従来の一般的な消火システムの全体構成を示した図である。
図2に示した消火システムにおける各構成要素の概略機能について説明する。
【0015】
火災感知器101は、各火災監視エリアに設けられ、火災の発生を感知する。スプリンクラヘッド102は、火災の発生に伴って上昇した熱により開放する弁体を有し、弁体が開放状態となることで、消火薬剤あるいは水を火災監視エリアに向けて噴霧する。
【0016】
火災受信機103は、火災感知器101により火災が感知されたことを示す発報信号を受信した場合には、発報信号を消火システム制御盤105に送信する。さらに、消火システム制御盤105は、火災受信機103から発報信号を受信した場合には、発報信号をアラーム弁104に送信する。
【0017】
アラーム弁104は、スプリンクラヘッド102が開放状態であるか否かを認識する。そして、アラーム弁104は、スプリンクラヘッド102が開放状態となったことを認識し、かつ、消火システム制御盤105から発報信号を受信する、というAND条件が成立した場合には、火災監視エリアにおいて火災が発生したと判定し、各種の消火設備を起動させる。
【0018】
なお、アラーム弁104は、スプリンクラヘッド102の作動時に開放状態となる遠隔操作弁を有し、スプリンクラヘッド102の噴霧圧力を調整することができる。
【0019】
中継器盤106は、アラーム弁104と消火システム制御盤105との間の信号伝送経路上に設けられ、アラーム弁104の制御および信号の送受の中継の役目を果たす。加圧送水装置107は、消火設備に水を供給する装置である。具体的には、スプリンクラヘッド102から水を噴霧する場合には自動的に起動し、貯水槽から水を吸い上げ、加圧した水を設備側に供給する。
【0020】
消火薬剤貯蔵タンクユニット108は、消火設備に消火薬剤を供給する装置である。具体的には、スプリンクラヘッド102から消火薬剤を噴霧する場合には自動的に起動し、タンクに収容された消火薬剤を加圧して設備側に供給する。
【0021】
このような
図2に示した従来の消火システムでは、火災感知器101により火災が感知され、かつ、スプリンクラヘッド102が開放状態となった、というAND条件が成立した場合に、火災が発生したと判定している。すなわち、従来の消火システムでは、AND条件が成立しない限り噴霧を実行せず、一方の条件だけで噴霧してしまう誤噴霧を回避している。
【0022】
しかしながら、AND条件に基づいて火災が発生したか否かを判断すると、誤噴霧を防止することはできるが、従来技術の課題として上述したように、火災検知の遅延の問題、あるいは火災感知器が焼損して火災検知自体ができなくなる問題が懸念される。特に、放火等により瞬時に広がる火災に対して迅速な消火を行うためは、このような問題がネックとなる。
【0023】
そこで、本開示では、画像処理技術を応用して火災が予知されると判定された場合には、火災感知器による感知結果に依存せずに、直ちに消火設備を起動して消火作業を開始できる構成を有することを技術的特徴としている。
【0024】
図1は、本開示の実施の形態1における消火システムの全体構成を示した図である。
図1に示した本実施の形態1に係る消火システムは、先の
図2に示した従来の構成に加え、複数の撮像装置10および画像処理装置20をさらに備えて構成されている。
【0025】
複数の撮像装置10のそれぞれは、個々に割り当てられた火災監視エリアに設置され、火災監視エリアの状態を動画像として撮像する。画像処理装置20は、複数の撮像装置10により撮像されたそれぞれの動画像データに対して画像処理を施す。より具体的には、画像処理装置20は、動画像データをAI(Artificial Intelligence:人工知能)に連動させることで、瞬時に広がるおそれのある火災発生の予兆をリアルタイムに検知することができる。
【0026】
例えば、画像処理装置20は、不審物の持参、周囲の人を脅す動作などを、瞬時に広がる火災につながるおそれのある放火特有の挙動として、ディープラーニングを利用して画像解析を行うことで、火災発生の危険度を推定することができる。
【0027】
また、画像処理装置20は、放火特有の挙動の中でも、例えば、B火災につながるような油の散布動作など、直接火災につながる特有の挙動が特定できた場合には、危険度を判定閾値以上の高い値として推定することもできる。
【0028】
すなわち、画像処理装置20は、撮像装置10により撮像された動画像データを、単に記憶しておくだけではなく、瞬時に広がる火災を予兆するための指標となる危険度を推定するために活用することができる。
【0029】
なお、画像処理装置20は、ある1つの撮像装置により撮像された動画像データを活用するとともに、複数の火災監視エリアにまたがる複数の動画像データを活用して、危険度を推定することもできる。例えば、隣接する複数の火災監視エリアにまたがって、所定速度以上の早さで突進する人物、逃げ惑う集団等を放火特有の挙動として、ディープラーニングを利用して画像解析を行うことで、火災発生の危険度を推定することもできる。
【0030】
また、画像処理装置20は、動画像データばかりでなく、静止画による1以上の画像データに基づいて危険度を推定することも可能である。
【0031】
そして、画像処理装置20は、推定した危険度があらかじめ設定した判定閾値以上となった場合には、火災受信機103に対して火災予知信号を出力する。火災受信機103は、画像処理装置20から火災予知信号を受信した場合には、火災感知器101による感知結果およびスプリンクラヘッド102の弁体の状態に依存せずに火災信号を出力し、消火作業を起動する。
【0032】
この結果、火災受信機103は、火災感知器101により火災が感知され、かつ、スプリンクラヘッド102が開放状態となるAND条件が成立していない状況においても、画像処理装置20から火災予知信号を受信することで、直ちに消火作業を起動できる。従って、
図2の構成により、瞬時に広がる火災に対してより迅速な検知および消火を可能とする消火システムを実現できる。
【0033】
また、画像処理装置20は、推定した危険度が判定閾値に達していない場合であっても、瞬時に広がる火災を未然に防ぐ目的で、推定した危険度が、判定閾値よりも小さい値としてあらかじめ設定された警告閾値以上であると判定した場合には、火災予知信号の代わりに警告報知信号を出力することも可能である。
【0034】
火災受信機103は、画像処理装置20から警告報知信号を受信した場合には、火災信号を出力しない代わりに、報知装置を介して警告情報を通知することができる。この結果、通知により、放火犯による放火を未然に防ぐ、あるいは、火災監視エリアにいる人々に避難等を促す注意喚起を行うことができる。
【0035】
また、火災受信機103は、画像処理装置20から火災予知信号を受信した場合には、直ちに消火作業を起動するばかりでなく、それぞれの火災監視エリアで取得された動画像データに基づいて、適切な位置の防火扉、シャッタ等の設備を連動させることもできる。
【0036】
なお、画像処理装置20は、必ずしも個別に設ける構成とする必要はなく、火災受信機103内に画像処理装置20の機能を持たせる構成を採用することも可能である。この場合には、火災受信機30は、画像処理結果に基づいて火災監視エリアにおいて火災が予知されると判定した場合には、火災感知器による感知結果に依存せずに消火設備を直ちに起動することができる。
【0037】
以上のように、実施の形態1によれば、画像処理技術を応用して瞬時に広がる火災につながる危険度を推定し、推定結果に応じて直ちに消火作業の起動を行うことができる。この結果、瞬時に広がる火災に対してより迅速な検知および消火を可能とする消火システムを実現できる。
【0038】
また、危険度の推定結果に応じて、放火犯に対する警告、あるいは火災監視エリア内にいる人々への注意喚起を迅速に行うことができる。この結果、瞬時に広がる火災を未然に防ぐことが可能となる。
【0039】
なお、上述した実施の形態では、火災感知器により火災が感知され、かつ、スプリンクラヘッドが開放状態となったAND条件が成立することで消火設備を起動させる消火システムに対して画像処理機能を付加する場合について説明した。しかしながら、本開示に係る消火システムは、このようなシステム構成には限定されない。
【0040】
例えば、スプリンクラヘッドが熱により作動する条件が必要ではなく、感知器の発報信号を基に、一斉開放弁のようなバルブを開放状態として消火設備を起動させるような消火システムに対しても、画像処理機能を付加することが可能である。このようなシステム構成によっても、瞬時に広がる火災に対してより迅速な検知および消火を可能とする消火システムを実現するという同様の効果を得ることができる。
【0041】
すなわち、本開示に係る消火システムは、火災感知器による感知結果に基づいて消火設備を起動するような種々の消火システムに対して、火災監視エリアを撮像する撮像装置を付加する構成を採用することができる。この結果、画像データに対する画像処理結果に基づいて火災監視エリアにおいて火災が予知されると判定した場合に、火災感知器による感知結果に依存せずに、直ちに消火設備を起動することができ、放火等に対して迅速に対応可能な消火システムを実現できる。
【符号の説明】
【0042】
10 撮像装置、20 画像処理装置、101 火災感知器、102 スプリンクラヘッド、103 火災受信機、104 アラーム弁、105 消火システム制御盤、106 中継器盤、107 加圧送水装置、108 消火薬剤貯蔵タンクユニット。