(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175106
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】消火システム
(51)【国際特許分類】
A62C 31/12 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A62C31/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087385
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】足立 成紀
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189BA03
2E189BB06
(57)【要約】
【課題】泡を発生した後にも泡発生器に対して室内空気を継続して提供できる構成を備えた消火システムを得る。
【解決手段】泡水溶液が収容された薬剤タンクと、泡水溶液を加圧するための圧縮された高圧気体が収容された加圧ボンベと、室内空気を取り込むための吸気口を有し、高圧気体により加圧された泡水溶液と室内空気とから生成した泡を放出することで消火を行う泡発生器とを備え、一端が吸気口に接続され、他端が吸気口よりも高い位置に突出する形状を有する延長吸気管をさらに備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡水溶液が収容された薬剤タンクと、
前記泡水溶液を加圧するための圧縮された高圧気体が収容された加圧ボンベと、
室内空気を取り込むための吸気口を有し、前記高圧気体により加圧された前記泡水溶液と前記室内空気とから生成した泡を放出することで消火を行う泡発生器と
を備え、
一端が前記吸気口に接続され、他端が前記吸気口よりも高い位置に突出する形状を有する延長吸気管
をさらに備える消火システム。
【請求項2】
前記延長吸気管は、前記他端が、前記泡発生器の設置位置に応じて、前記泡発生器から放出された前記泡によって埋まらない高さとなる形状を有している
請求項1に記載の消火システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、泡発生器から放出される泡を利用した消火システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災感知器により火災の発生を検知し、消火を行う消火システムが、従来から多数提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような従来システムは、小さな火種から拡大する火災に対して有効である。
【0003】
火災の種類は、燃焼の特性から、下表1のように分類されている。
【0004】
【0005】
従来システムは、A火災に対しては有効に機能する。しかしながら、B火災に対しては、従来システムでは、火災感知器が動作するまでに時間が掛かることで、放水を行うまでに時間が掛かってしまう場合が考えられる。さらに、表1に示したように、B火災に対しては、水による消火が困難であるという問題がある。
【0006】
近年では、放火等によるB火災が社会問題化している。特に、B火災では、火災が瞬時に広がってしまう特性がある。そこで、水の代わりに、消火薬剤と空気とから生成した泡を用いて消火を行う消火設備が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
非特許文献1に記載されたパッケージ型泡消火設備は、泡消火を行う設備をパッケージ型とすることで、配管工事、電源工事、水源、ポンプなどを不要とし、軽量、コンパクトで施工が簡単な構成となっている。
【0008】
さらに、泡を生成するために必要となる空気として、煙、熱が含まれてしまうおそれのある室内空気を使用可能とするインサイドエア方式を採用することで、新鮮な外気を導入する必要もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】能美防災 ホームページ パッケージ型泡消火設備「MIDEX III」、(https://www.nohmi.co.jp/product/bubble_fire_extinguishing/midex3.html)
【非特許文献2】能美防災 ホームページ 、高発泡消火設備「Perf-Ex(パーフェックス)」(https://www.nohmi.co.jp/product/bubble_fire_extinguishing/perf-ex/index.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
放火では、床面等に引火性物質が散布され、瞬時に広がる火災が発生するおそれが考えられる。そして、このような放火を防止するために、現状の室内のデッドスペースを利用して、パッケージ型の泡消火システムを設置できることが望まれる。
【0012】
例えば、病院等の待合室では、椅子あるいはテーブルの下の床面に、パッケージ型の泡消火システムを設置できることが望まれる。このような設置を行うことで、デッドスペースを有効利用できるとともに、床面に対して泡を迅速に放出できる。
【0013】
ただし、インサイドエア方式を採用し、泡を発生させるためには、泡発生器に室内空気を継続的に取り込むことが必須となる。しかしながら、パッケージ型の泡消火器を床面に設置した場合には、泡発生器から放出された泡により、泡発生器の吸気口が泡で埋め尽くされてしまうおそれがある。この場合には、吸気口から室内空気を継続的に取り込むことが不可能となり、泡を発生できなくなるケースが考えられる。
【0014】
また、パッケージ型以外の泡消火器においても、泡発生器から放出された泡により吸気口が埋め尽くされてしまった場合には、吸気口から室内空気を継続的に取り込むことが不可能となり、泡を発生できなくなるケースが考えられる。
【0015】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、泡を発生した後にも泡発生器に対して室内空気を継続して提供できる構成を備えた消火システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示に係る消火システムは、泡水溶液が収容された薬剤タンクと、泡水溶液を加圧するための圧縮された高圧気体が収容された加圧ボンベと、室内空気を取り込むための吸気口を有し、高圧気体により加圧された泡水溶液と室内空気とから生成した泡を放出することで消火を行う泡発生器とを備え、一端が吸気口に接続され、他端が吸気口よりも高い位置に突出する形状を有する延長吸気管をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、泡を発生した後にも泡発生器に対して室内空気を継続して提供できる構成を備えた消火システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る消火システムの全体構成図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る消火システムのレイアウトの一例を示した説明図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る手動操作により泡を放出する消火システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の消火システムの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る消火システムは、泡発生器の吸気口に対して、継続して室内空気を供給することのできるように、一端が吸気口に接続され、他端が吸気口よりも高い位置に突出する形状を有する延長吸気管を備える点に技術的特徴を有するものである。
【0020】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る消火システムの全体構成図である。本実施の形態1に係る消火システムは、薬剤タンク10、加圧ボンベ20、泡発生器30、感熱開放継手41、および筐体100を備えて構成されている。
【0021】
また、筐体100は、構造壁101、および開口部102を備えるととともに、各構成部品が、この筐体100に取り付けられて、パッケージ型の消火システムが構築されている。ここで、構造壁101は、泡発生器30から放出される泡を筐体100の外部に誘導するための構造物である。また、開口部102は、泡発生器30から放出される泡を筐体100の外部に放出するために常時開放となっている。
【0022】
なお、開口部102は、平常時には閉状態となっており、泡放出時に開状態となる蓋部により覆っておくこととも可能である。この場合、蓋部は、環境温度が許容温度を超えた際に、高圧気体により加圧された泡水溶液が供給されることで、閉状態から開状態に切り換えられる構成を採用することができる。
【0023】
図1は、環境温度が許容温度を超えた場合の泡放出時における全体構成を示している。次に、個々の構成要素について、詳細に説明する。
【0024】
薬剤タンク10には、泡原液と水とが混合された泡水溶液が収納されている。加圧ボンベ20には、泡水溶液を加圧するための圧縮された高圧気体が収容されている。高圧気体としては、窒素等を用いることが考えられる。加圧ボンベ20内の圧力により泡水溶液を泡発生器30に供給することで、商用電源を不要とした構成を実現している。
【0025】
泡発生器30は、高圧気体により加圧された泡水溶液を泡として放出することで消火を行う機構であり、筐体100の内部に収納されている。環境温度が許容温度を超えた際に、筐体100内に収納された泡発生器30から放出される泡が、開口部102を通過して筐体100の外部に放出させることとなる。また、泡発生器30は、泡を生成するために必要な室内空気を取り込むための吸気口31を有しており、詳細は後述する。
【0026】
種々の火災監視現場に応じて、泡発生器30から適切な方向に泡を放出できるように、筐体100の設置位置、筐体100内における泡発生器30および吸気口31の設置位置、開口部の位置、構造壁101の形状等が決定されることとなる。なお、消火能力の観点から、泡発生器30としては、発泡倍率の大きい高膨張泡を放出できるものが望ましい。
【0027】
ここで、泡の発泡倍率に関して、低発泡、中発泡、高発泡とは、一般的には以下のような倍率範囲として定義することができる。
低発泡:倍率20以下
中発泡:倍率20を超え、80以下
高発泡:倍率80を超え、1000以下
【0028】
感熱開放継手41は、高圧気体により加圧された泡水溶液を、薬剤タンク10から泡発生器30に送る供給経路上に設けられている。感熱開放継手41は、常時は供給経路を遮断状態としており、火災監視時において環境温度が許容温度を超えた場合には、機械的に弁体が開放状態となることで、供給経路を遮断状態から開放状態に切り換えるように動作する感熱動作機構として機能する。
【0029】
一例として、感熱開放継手41は、環境温度が70度程度を越えた際に機械的に破壊されるグラスバルブを弁体として有しており、このグラスバルブの部分が筐体100の外部に位置するように配置されている。
【0030】
感熱開放継手41内に設けられている供給経路の1次側は、配管を介して薬剤タンク10と接続されており、高圧気体により加圧された泡水溶液が薬剤タンク10から感熱開放継手41の一次側に供給される。
【0031】
一方、感熱開放継手41内に設けられている供給経路の2次側は、配管を介して、泡発生器30に接続されている。環境温度が許容温度を超えていない場合には、感熱開放継手41の供給経路が遮断状態となっている。従って、高圧気体により加圧された泡水溶液は、感熱開放継手41の1次側まで供給されているが、2次側には供給されていない状態となっている。
【0032】
その後、環境温度が許容温度を超えた場合には、感熱開放継手41内のグラスバルブが機械的に破壊され、感熱開放継手41の供給経路が開放状態となり、
図1に示した泡放出状態となる。すなわち、感熱開放継手41の供給経路が開放状態となることで、高圧気体により加圧された泡水溶液が、感熱開放継手41の2次側に接続された配管を介して泡発生器30に供給されることとなる。
【0033】
この結果、泡発生器30から泡が放出される。さらに、泡発生器30から放出された泡が開口部102を通過して筐体100の外部に流れ出ることとなる。
【0034】
本実施の形態1に係る泡発生器30は、室内空気を取り込むための吸気口31を有しており、高圧気体により加圧された泡水溶液と、室内空気とを混合してインサイドエア方式により生成した泡を放出する機構を採用している。さらに、本実施の形態1に係る泡発生器30は、現状の室内のデッドスペースを利用して、例えば、椅子あるいはテーブルの下の床面に設置することを想定している。
【0035】
従って、泡発生器30自身が発生し、床面に向けて放出された泡によって吸気口31が埋め尽くされるような状況が生じた場合には、泡発生器30が室内空気を取り込むことができず、泡を生成する機能が正常に働かなくなる。
【0036】
そこで、本実施の形態1に係る消火システムでは、一端が吸気口31に接続され、他端が吸気口よりも高い位置に突出する形状を有する延長吸気管200を備えている。延長吸気管200は、第1吸気管200aと第2吸気管200bとで構成することができる。
【0037】
第1吸気管200aは、一端が吸気口31に接続されて、他端が床面に沿って横方向に延びている。また、第2吸気管200bは、一端が第1吸気管200aの他端に接続され、他端が床面に対して上方に延びている。このように、延長吸気管200は、第1吸気管200aと第2吸気管200bとで構成されるL字形状を有し、床面から離れた位置において室内空気を取り込むことができる。
【0038】
なお、第2吸気管200bの延長長さは、監視対象エリアにおいて積み上げる泡の高さに応じて適宜調整される。すなわち、延長吸気管200は、第2吸気管200bの他端が、泡発生器30から放出された泡によって埋まらない高さとなる形状を有するように、設置環境に応じて適宜調整される。
【0039】
すなわち、延長吸気管200は、一端が、泡発生器30の吸気口に接続され、他端が、泡発生器30の設置位置に応じて、泡発生器30により放出された泡によって埋まらない高さで突出する形状を有している。このような形状を有する延長吸気管200を設置環境に応じて設計することで、延長吸気管200の先端が、泡発生器30が放出した泡により埋まってしまうことを防止でき、泡を発生した後にも泡発生器30に対して室内空気を継続して提供できる。
【0040】
換言すると、延長吸気管200は、一端が吸気口に接続され、他端が吸気口よりも高い位置に突出する形状を有するような形状を有することで、延長吸気管200を接続いない場合と比較して、吸気口の位置を実質的に高くすることができる。この結果、延長吸気管200を接続いない場合と比較して、泡発生器30に対して室内空気をより長時間にわたって継続して提供できる構成を備えた消火システムを実現できる。
【0041】
図2は、本開示の実施の形態1に係る消火システムのレイアウトの一例を示した説明図である。具体的には、
図2では、室内1に2つの椅子2a、2bが設置され、椅子2aの下のデッドスペースに筐体100が設置されるとともに、椅子2aと椅子2bとの間にできたデッドスペース3を利用して延長吸気管200が配置された状態を、上面図として示している。
【0042】
このようなレイアウトにより、現状の室内1のデッドスペース3を利用して、配管工事および電源工事なしに、本開示に係るパッケージ型の泡消火システムを設置できる。さらに、延長吸気管200を室内1の隅のデッドスペース3に設けることで、室内1に泡が放出された後にも、床面等に設置された泡発生器30に対して室内空気を継続して提供できる構成を容易に実現できる。
【0043】
なお、
図1では、環境温度が許容温度を超えた状態を感熱開放継手41により検出し、感熱開放継手41の供給経路が開放状態となることで、自動的に泡を放出する構成を備えた消火システムについて説明した。しかしながら、本実施の形態1に係る消火システムは、手動操作により泡を放出する構成を採用することも可能である。
【0044】
図3は、本開示の実施の形態1に係る手動操作により泡を放出する消火システムの全体構成図である。
図3に示した消火システムは、先の
図1に示した構成と比較すると、感熱開放継手41の代わりに、手動操作弁42を備えて構成されている。
【0045】
図3に示した消火システムは、状況に応じて、人手により手動操作弁42が開放状態にされることで、直ちに泡を放出することができる構成となっている。このような手動操作により泡を放出する構成を備えた消火システムを、先の
図2に示した室内1に設置することも可能である。この場合には、手動操作を実施しやすい位置に手動操作弁42を配置することとなる。
【0046】
以上のように、本実施の形態1に係る消火システムによれば、B火災にも対応できる消火性能を有し、デッドスペースを有効利用して容易に設置でき、コストダウンを図ることが可能な消火システムを実現できる。
【0047】
なお、上述した実施の形態1では、筐体に収納されたパッケージ型の泡消火システムを椅子の下に設置する場合について説明したが、このような構成に限定されるものではない。非特許文献2に記載されたようなシステムに採用される泡発生器を床面等に設置した構成においても、延長吸気管を用いて吸気口を適切な高さに配置することができる。
【0048】
すなわち、泡消火器を床面等に設置する種々の構成に対して、本開示の延長吸気管を適用することで、泡を発生した後にも泡発生器に対して室内空気を継続して提供できる消火システムを実現することができる。
【0049】
また、延長吸気管200の内部に、異物が入らないように、第2吸気管200bの先端パンチングメタルあるいはネットのようなものを設けてもよい。これにより、いたずらなどによる延長吸気管200の詰りを防止することができる。
【0050】
なお、延長吸気管200全体がパンチングメタルのような構造を有している場合には、第2吸気管200bの先端(第1吸気管200aと接続されない側)は、蓋などにより密閉されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 薬剤タンク、20 加圧ボンベ、30 泡発生器、31 吸気口、41 感熱開放継手、42 手動操作弁、100 筐体、101 構造壁、102 開口部、200 延長吸気管、200a 第1吸気管、200b 第2吸気管。