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特開2023-175108受信装置、放送システム、および、受信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175108
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】受信装置、放送システム、および、受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/488 20110101AFI20231205BHJP
   H04N 21/435 20110101ALI20231205BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20231205BHJP
   H04H 20/28 20080101ALI20231205BHJP
   H04H 40/18 20080101ALI20231205BHJP
【FI】
H04N21/488
H04N21/435
H04B1/16 Z
H04H20/28
H04H40/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087389
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100129115
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 進
(74)【代理人】
【識別番号】100131473
【弁理士】
【氏名又は名称】覚田 功二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀樹
【テーマコード(参考)】
5C164
5K061
【Fターム(参考)】
5C164FA04
5C164UB10P
5C164UB41S
5C164UD11P
5C164YA24
5K061AA11
5K061BB07
(57)【要約】
【課題】受信品質を確保できるアンテナの設定を促す受信装置、放送システム、および、受信方法を提供する。
【解決手段】データ信号と制御信号を搬送する受信信号からインジェクションレベルを示すインジェクションレベル情報が取得されるとき、低電力階層信号の伝送を示す通知情報を含むアンテナレベル情報を出力部に出力し、前記低電力階層信号は、前記データ信号において高電力階層信号よりも低い信号レベルの階層に多重化され、前記インジェクションレベルは、前記高電力階層信号のレベル幅である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号と制御信号を搬送する受信信号からインジェクションレベルを示すインジェクションレベル情報が取得されるとき、
低電力階層信号の伝送を示す通知情報と、前記データ信号の受信状態を示すアンテナレベル情報を出力部に出力する受信処理部を備え、
前記低電力階層信号は、前記データ信号において高電力階層信号よりも低い信号レベルの階層に多重化され、前記インジェクションレベルは、前記高電力階層信号と前記低電力階層信号とのレベル比である
受信装置。
【請求項2】
前記データ信号に基づいてキャリア対ノイズ比を推定するノイズ推定部を備え、
前記受信処理部は、
前記キャリア対ノイズ比に相当する混合ノイズレベルに基づくアンテナレベル情報を前記出力部に出力する
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記受信処理部は、
前記混合ノイズレベルから前記インジェクションレベルを線形領域で差し引いて環境ノイズレベルを算出し、
前記環境ノイズレベルに基づくアンテナレベル情報を前記出力部に出力する
請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記制御信号に基づいてキャリア対ノイズ比を推定するノイズ推定部を備え、
前記受信処理部は、
前記キャリア対ノイズ比に相当する環境ノイズレベルに基づくアンテナレベル情報を前記出力部に出力する
請求項1に記載の受信装置。
【請求項5】
前記受信処理部は、
前記環境ノイズレベルから前記インジェクションレベルを対数領域で差し引き、前記低電力階層信号の信号レベルに基づくアンテナレベル情報を定める
請求項3に記載の受信装置。
【請求項6】
前記受信処理部は、
前記環境ノイズレベルに基づいて受信信号の受信状態を判定する
請求項5に記載の受信装置。
【請求項7】
前記受信処理部は、
前記受信信号のチャンネルごとに、前記環境ノイズレベルが所定のレベルよりも低いチャンネルを示すリストを作成する
請求項6に記載の受信装置。
【請求項8】
少なくとも前記データ信号および前記インジェクションレベル情報を多重化して放送信号を生成する多重化部と、
前記放送信号を送信する送信部と、を備える送信装置と、
前記放送信号を前記受信信号として受信する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の受信装置と、を備える
放送システム。
【請求項9】
受信装置における方法であって、
前記受信装置は、
データ信号と制御信号を搬送する受信信号からインジェクションレベルを示すインジェクションレベル情報が取得されるとき、
低電力階層信号の伝送を示す通知情報と、前記データ信号の受信状態を示すアンテナレベル情報を出力部に出力する受信処理ステップを実行し、
前記低電力階層信号は、前記データ信号において高電力階層信号よりも低い信号レベルの階層に多重化され、前記インジェクションレベルは、前記高電力階層信号と前記低電力階層信号とのレベル比である
受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、放送システム、および、受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代地上デジタルテレビジョン方式による放送サービス(以下、「次世代放送」と呼ぶ)では、階層分割多重化(LDM:Layered Division Multiplexing)方式を用いて複数の方式の放送信号を多重化することが検討されている。ここで、ISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式を用いた2K放送の放送信号(以下、「2K信号」と呼ぶ)に次世代放送で採用予定の4K放送の放送信号(以下、「4K信号」)を異なる信号レベルの階層に割り当てて、同一帯域内で多重化して放送することが検討されている。ISDB-T方式は、従来から地上デジタルテレビジョン放送で採用された放送方式である。2K放送は、既存のハイビジョンテレビジョン(HDTV: High-Definition Television)放送サービスにおいて採用されている放送方式である。既存の2K放送と次世代放送との互換性を担保するため、図5に例示されるように、多重化において2K信号を信号レベル(出力レベル)が高い高電力階層(UL:Upper Layer)に、4K信号を信号レベルが低い低電力階層(LL:Lower Layer)に割り当てて放送することが検討されている。
【0003】
ULに割り当てられる2K信号は、ARIB STD-B31で規定されたOFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing,直交周波数分割多重)の変調方式を用いて変調して放送波を用いて搬送される。ARIB STD-B31は、ISDB-T方式に基づく地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式を規定する標準規格である。2K信号は、音声、映像などを搬送するデータ(データ信号)に、参照信号(同期再生用パイロット信号)や制御信号(TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control、伝送多重化設定制御)信号/AC(Auxiliary Channel、補助チャンネル)信号)を多重化して構成される。LLに割り当てられる4K信号は、所定の変調方式(例えば、OFDM)を用いて変調される。特許文献1には、データ信号に付加される参照信号や制御信号をヌルとする方式が記載されている。
【0004】
上記2K信号を受信することができる既存の2K放送専用の受信装置(以下、「2K受信装置」と呼ぶ)は、受信した信号に含まれる低電力階層の成分をノイズ(雑音)とみなして、2K信号を復調できる。
次世代放送を受信することができる受信装置(以下、「4K対応受信装置」と呼ぶ」)は、2K受信装置と同様の手法を用いて、受信したデータ信号からULに割り当てられる信号(以下、「UL信号」と呼ぶことがある)を2K信号として復調できる。4K対応受信装置は、受信した信号から2K信号を差し引き、LLに割り当てられる信号(以下、「LL信号」と呼ぶことがある)を4K信号として取り出すことができる。4K対応受信装置においても、取り出した2K信号を用いて2K放送を提供することができる。UL信号とLL信号の信号レベルの比(以下、「レベル比」と呼ぶ)は、インジェクションレベル(IL:Injection Level)と呼ばれる。このインジェクションレベルは、UL信号の信号レベル比に相当する。2K受信装置にとっては、ILは、送信点でのほぼC/N(キャリア対ノイズ比:Carrier-to-Noise Ratio)に相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-184666号公報
【特許文献2】特開2002-124931号公報
【特許文献3】特開2020-150521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、同じ環境ノイズレベルのもとでは、受信装置において測定されるC/Nは、ILの増加に伴い低下する。同一のILのもとでは、C/Nは、環境ノイズレベルの増加に伴い低下する。受信装置は、ARIB TR B-14の規定に従い、放送波を受信するためのアンテナの方向調整時に、アンテナレベル値を表示して簡便にアンテナ設置が可能とすることが求められている。一例として、アンテナレベルの表示値として、入力キャリアのC/N(dB、5.6MHz帯域)の2倍の値を概算換算値とする方法などがある。従って、受信装置は入力キャリアを搬送する信号成分のC/Nを求める機能を必要とする。ここで、環境ノイズとは、LL信号を含まない外来のノイズ、および、受信機内で発生するノイズを含む。前記規定のC/NのNは、環境ノイズのレベルを示す。
【0007】
特許文献2には、ISDB-T方式で放送される放送信号のC/Nを測定する測定装置について記載されている。当該測定装置は、周波数が異なるA階層、B階層、C階層それぞれのデータ信号のC/Nと特別サブキャリア(TMCC信号、AC信号)のC/Nを、それぞれ測定することが可能である。近年の受信装置では、C/Nの測定機能を有しており、かかる復調チップには、例えば、データ信号のC/Nのみを測定するものと、TMCC信号、AC信号のC/Nのみを測定するものの2種が存在する。データ信号のC/Nを測定するものには、環境ノイズ成分にLL信号をノイズとみなした量を加えた値をノイズレベル(混合ノイズレベル)として得られる。そのため、LL信号が多重された放送が開始されると、当該復調チップによれば、従来の受信装置のように、環境ノイズ成分とデータキャリアの比から算出していたアンテナレベル値は得られない。このように、採用される復調チップによって、アンテナレベル値の意味が異なるため、たとえアンテナレベル値が一定の目標値となるようにアンテナを設置しても、期待される受信品質が得られなくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、データ信号と制御信号を搬送する受信信号からインジェクションレベルを示すインジェクションレベル情報が取得されるとき、低電力階層信号の伝送を示す通知情報を含むアンテナレベル情報を出力部に出力する受信処理部を備え、前記低電力階層信号は、前記データ信号において高電力階層信号よりも低い信号レベルの階層に多重化され、前記インジェクションレベルは、前記高電力階層信号と前記低電力階層信号とのレベル比である受信装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、LL信号が多重された放送が開始される前後で、同じ基準で、受信品質を確保できるアンテナの設定を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る放送システムの機能構成例を示す概略ブロック図である。
図2】本実施形態に係る放送装置の機能構成例を示す概略ブロック図である。
図3】本実施形態に係る受信装置の機能構成例を示す概略ブロック図である。
図4】LDM方式を用いて伝送された2K信号と4K信号の受信例を示す説明図である。
図5】データ信号の階層構造を例示する説明図である。
図6】本実施形態に係るアンテナ設定画面の第1例を示す図である。
図7】本実施形態に係るアンテナ設定画面の第2例を示す図である。
図8】本実施形態に係るアンテナ設定画面の第3例を示す図である。
図9】本実施形態に係るアンテナ設定画面の第4例を示す図である。
図10】シンボル配置を例示する説明図である。
図11】TMCCキャリアへのビット割当を例示する説明図である。
図12】本実施形態に係る受信処理の第1例を示すフローチャートである。
図13】本実施形態に係る受信処理の第2例を示すフローチャートである。
図14】本実施形態に係る受信処理の第3例を示すフローチャートである。
図15】本実施形態に係る受信処理の第4例を示すフローチャートである。
図16】LDM伝送記述子におけるIL情報の記述例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、本実施形態に係る放送システム1の概要について説明する。図1は、本実施形態に係る放送システム1の機能構成例を示す概略ブロック図である。
放送システム1は、放送装置10と受信装置20を含んで構成される。図1の例では、受信装置20の数は1台であるが、一般には複数となりうる。
【0012】
放送装置10は、LDM方式を用いて多重化されたデータ信号を含めた放送信号を送信する。放送装置10は、データ信号、参照信号、および、制御信号を多重化して放送信号を生成する。データ信号は、放送番組のコンテンツデータを搬送する信号である。データ信号は、複数の階層の信号が、異なる信号レベルの値域ごとに多重化して形成される。以下の説明では、図5に例示されるように、LDM方式に従い信号レベルが異なる2階層の信号を多重化して一群のデータ信号が構成される場合を主とする。2階層の信号のうち、信号レベルが高い階層であるULに割り当てられる信号が「高電力階層信号」に相当し、信号レベルが低い階層であるLLに割り当てられる信号が「低電力階層信号」に相当する。制御信号は、受信装置20における放送信号の受信を制御するための信号である。特許文献3に記載されているように、ILを示すIL情報は、例えば、制御信号のTMCC信号に含めて伝送されてもよい。放送装置10は、所定の放送方式を用いて生成した放送信号を放送伝送路BTに送出する。なお、高電力階層信号に係る放送方式は、低電力階層信号に係る放送方式とは異なっていてもよい。放送装置10は、例えば、ISDB-T方式に基づく1階層の信号をULに割り当て、高電力階層信号として送信信号を生成する。放送装置10に1系統の信号しか提供されない場合には、LDM方式を用いて低電力階層信号と多重化せずに放送信号を送信してもよい。
【0013】
放送伝送路BTは、放送信号を一方向的に不特定かつ複数の送信先として受信装置20に伝送する伝送路である。放送伝送路BTは、典型的には所定の周波数帯域の放送波により構成される。放送伝送路BTは、その一部に通信ネットワークを含んで構成されてもよい。かかる通信ネットワークは、例えば、インターネット、公衆無線ネットワーク、構内ネットワーク、専用回線、などのいずれの種類のネットワークであってもよい。
【0014】
受信装置20は、LDM方式に基づくLLのデータ信号の伝送がなされないとき(始まるまで)、ISDB-T方式を用いて、多重化されずにULに割り当てられたデータ信号を受信する。受信装置20は、LDM方式に基づくデータ信号が伝送されたとき、LLに割り当てられた低電力階層信号を含んだデータ信号を受信する。受信装置20は、放送伝送路BTで伝送された放送信号を受信信号として受信する。受信装置20は、受信信号からデータ信号、参照信号、および、制御信号を分離する。受信装置20は、制御信号、またはデータ信号を監視(モニタ)し、ILを示すIL情報の取得の有無を判定する。IL情報が取得されるとき、受信装置20は、低電力階層信号が伝送されていることを示す通知情報とデータ信号の受信状態を示すアンテナレベル情報を生成し、これらを出力する。受信装置は、例えば、データ信号のC/Nを算出し、算出したC/Nに基づく混合ノイズレベルとILを用いて算出される環境ノイズレベルに基づくアンテナレベル情報を生成する。受信装置は、制御信号のC/Nを算出し、算出したC/Nに基づく環境ノイズレベルとILを用いて算出される混合ノイズレベルに基づくアンテナレベル情報を生成するものであってもよい。
【0015】
放送装置10は、放送事業者、コンテンツ配信事業者、などの事業者が使用する事業設備を構成する装置となりうる。受信装置20は、主に一般のユーザが使用するユーザ装置となりうる。受信装置20は、専用のテレビジョン受信装置、録画装置、セットトップボックス、などであってもよいし、テレビジョン放送を受信する機能を有していれば、受信を主機能として有しない電子機器であってもよい。受信装置20は、例えば、多機能携帯電話機(スマートフォン)、タブレット端末装置、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)などであってもよい。
【0016】
なお、高電力階層信号には、汎用的なサービスに係るコンテンツが伝達される。低電力階層信号には、例えば、高電力階層信号よりもサービスレベルが高いコンテンツ、または、高電力階層信号に係るサービスレベルを向上させるための情報が伝達される。以下の説明では、図4に示すように、高電力階層信号、低電力階層信号として、それぞれ第1放送信号、第2放送信号が適用される場合を主とする。送信信号の信号レベルを「出力レベル」と呼び、受信信号の信号レベルを「受信レベル」と呼んで区別することがある。
【0017】
次に、本実施形態に係る放送装置10の機能構成例について説明する。図2は、本実施形態に係る放送装置10の機能構成例を示す概略ブロック図である。放送装置10は、第1放送信号取得部122、第2放送信号取得部124、レベル調整部126、階層多重化部128、フレーム構成部130、変調部132、および、送信部134を含んで構成される。
【0018】
第1放送信号取得部122は、第1放送信号を取得する。第1放送信号は、第1放送方式に基づく第1周波数帯域の第1データキャリアシンボルを含んで構成される。第1放送信号として、例えば、2K信号が取得される。第1放送方式として、例えば、ISDB-T方式が用いられる。第1放送信号取得部122には、例えば、放送装置10の外部からデータパケットが入力され、入力されたデータパケットを第1データキャリアシンボルに変換する。データパケットは、例えば、MPEG-2 Systemsに規定されたTS(Transport Stream)パケットであってもよいし、MMT(MPEG Media Transport)に規定されたMMTパケットであってもよい。第1放送信号取得部122は、入力されたデータパケットに対して誤り訂正符号化、インタリーブ、および、マッピングを行い、第1データキャリアシンボルを生成する。第1放送信号取得部122は、誤り訂正符号化において、例えば、リードソロモン符号を生成する。第1放送信号取得部122は、インタリーブにおいて、誤り訂正符号化されたビットデータの順序を、第1放送信号に対する放送方式に所定の順序に並び替える。第1放送信号取得部122は、マッピングにおいて、順序が並び替えられたビットデータを所定の変調方式と符号化率に応じた信号点のIQ(In-phase Quadrature-phase)座標に変換し、変換されたIQ座標を表すシンボルを定める。第1放送信号取得部122は、例えば、変調方式として64QAM(Quadrature Amplitude Modulation、直交振幅変調)を用い、符号化率を3/4に設定させておく。第1放送信号取得部122は、第1データキャリアシンボルを階層多重化部128に出力する。
【0019】
第2放送信号取得部124は、第2放送信号を取得する。第2放送信号は、第2放送方式に基づく第2周波数帯域の第2データキャリアシンボルを含んで構成される。第2放送信号として、例えば、4K信号が取得される。第2放送方式として、例えば、地上放送高度化方式が用いられる。第2放送信号取得部124は、例えば、放送装置10の外部から入力されたデータパケットに対して、誤り訂正符号化、インタリーブ、および、マッピングを行い第2データキャリアシンボルに変換する。第2放送信号取得部124は、誤り訂正符号化において、例えば、BCH(Bose Chaudhuri Hocquenghem)符号を外符号として生成し、LDPC(Low Density Parity Check)符号を内符号として生成する。第2放送信号取得部124は、インタリーブにおいて、誤り訂正符号化されたビットデータの順序を、第2放送信号に対する放送方式に所定の順序に並び替える。第2放送信号取得部124は、順序が並び替えられたビットデータを所定の変調方式と符号化率に応じた信号点のIQ座標に変換し、変換されたIQ座標を表すシンボルを定める。第2放送信号取得部124は、第1放送信号よりも低い符号化率でマッピングを行ってもよい。これにより、ノイズに対する耐性が高くなる。第2放送信号取得部124は、例えば、変調方式と符号化率の組として64QAM、1/2、16QAM、1/2を用いる。第2放送信号取得部124は、第2データキャリアシンボルをレベル調整部126に出力する。
【0020】
なお、第2周波数帯域の帯域幅は、第1周波数帯域の帯域幅よりも広く、かつ、第2周波数帯域は、第1周波数帯域を含んでもよい。第1周波数帯域は、第1データキャリアと第2データキャリアが多重化される帯域(以下、「LDM帯域」と呼ぶことがある)となる。第2周波数帯域のうち第1周波数帯域が含まれない帯域を「非LDM帯域」と呼ぶことがある。
【0021】
レベル調整部126は、第2放送信号取得部124から入力される第2データキャリアシンボルに対して、第2データキャリアの出力レベルよりもILに相当するレベル差だけ低くなるように、振幅を調整する。レベル調整部126は、振幅を調整した第2データキャリアを階層多重化部128に出力する。
階層多重化部128は、第1放送信号取得部122から入力される第1データキャリアシンボルがULに割り当てられ、レベル調整部126から入力される第2データキャリアシンボルがLLに割り当てられるように、LDM方式に従って多重化する。階層多重化部128は、多重化されたデータキャリアをなすデータ信号の出力レベルが所定の信号レベルCとなるようにデータキャリアの振幅を調整する。階層多重化部128は、振幅を調整したデータキャリアシンボルをフレーム構成部130に出力する。第1データキャリアシンボルで表現される第1放送信号は高電力階層信号、第2データキャリアシンボルで表現される第2放送信号は低電力階層信号として多重化される。
【0022】
フレーム構成部130には、階層多重化部128からデータキャリアシンボルが入力され、データキャリアへ割り当て、参照信号をなす参照キャリア、および、制御信号をなす制御キャリアを有するOFDMフレームを構成する。参照キャリアには、例えば、SP(Scattered Pilot)キャリアが含まれる。制御キャリアには、例えば、TMCCキャリア、AC(Auxiliary Channel)などが含まれる。フレーム構成部130は、所定の期間ごとに予め定めたシンボル配置に従って取得したデータキャリア、参照キャリア、および、制御キャリアのそれぞれをキャリアシンボル位置に割り当て、フレームごとの送信信号を構成する。シンボル配置は、所定の期間および周波数帯域における複数のキャリアシンボル位置のそれぞれに対するシンボルの種別ごとの割り当てを示す。個々のキャリアシンボル位置は、伝送リソースの単位とするチャネル(周波数)とシンボル(時刻)の組で指示される。フレーム構成部130は、フレームごとに構成した放送信号を変調部132に出力する。参照信号として、例えば、疑似乱数系列の一種である15次M系列が用いられる。TMCC信号をなすTMCCキャリアを用いて、IL情報が伝達されてもよい。
【0023】
LDM帯域では、第1データキャリアと、第2データキャリアに対して、共通のキャリアシンボル位置にSPキャリア、TMCCキャリア、ACキャリアが配置される。そして、第2データキャリアに対して付加されるSPキャリア、TMCCキャリア、および、ACキャリアは、それぞれヌルと設定されてもよい。第1データキャリアに対して付加されるSPキャリア、TMCCキャリア、および、ACキャリアには、他の信号が実質的に多重化されないため、特性の劣化が防止される。非LDM帯域では、第2データキャリアに対して独自に、SPキャリア、TMCCキャリア、および、ACキャリアが配置されるキャリアシンボル位置が設定されてもよい。
【0024】
変調部132は、フレーム構成部130から入力される放送信号を所定の変調方式を用いて、変調された放送信号を送信部134に出力する。変調部132は、所定の変調方式として、例えば、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing、直交周波数分割多重)方式を用いることができる。
【0025】
送信部134は、変調部132から入力される放送信号を放送伝送路BTに送出する。放送伝送路BTとして放送波が用いられる場合には、送信部134は、入力される基底帯域の放送信号を放送チャンネルに対応する周波数帯域の放送信号にアップコンバートし、アップコンバートした放送信号をアンテナに供給する。アンテナからは、放送信号を搬送する放送波が放射される。
なお、第2放送信号が取得されない場合には、データ信号には第1放送信号が含まれ、ULに割り当てられる。その場合、IL情報は放送信号で搬送されない。
【0026】
次に、本実施形態に係る受信装置20の機能構成例について説明する。図3は、本実施形態に係る受信装置20の機能構成例を示す概略ブロック図である。以下の説明では、主に受信装置20が4K対応受信装置である場合を例にする。但し、第2復号部218と受信処理部230が第2放送信号で伝送される放送番組のコンテンツを提示する機能を省略することで、2K受信装置として機能することもできる。
【0027】
受信装置20は、受信部212、復調部214、第1復号部216、第2復号部218、多重信号分離部222、ノイズ推定部224、および、受信処理部230を含んで構成される。受信装置20の一部、例えば、第1復号部216、第2復号部218、ノイズ推定部224のそれぞれ、または、それらの全部もしくは一部の組は、専用の集積回路(チップ)を含んで構成されてもよい。また、ノイズ推定部224をなす集積回路は、他の機能部、例えば、受信部212、復調部214、第1復号部216、第2復号部218、および、多重信号分離部222の全部または一部の機能を有していてもよい。受信装置20は、プロセッサを備え、プロセッサが所定のプログラムに記述された命令で指示される処理を実行して受信処理部230の機能を発揮してもよい。
【0028】
受信部212は、放送伝送路BTを経由して伝送される放送信号を受信信号として受信する。放送伝送路BTとして放送波が用いられる場合には、受信部212は、アンテナを用いて受波された放送波に基づく放送信号の周波数帯域を、放送チャンネルに対応する周波数帯域から基底帯域にダウンコンバートする。放送チャンネルは、受信処理部230から入力される選局情報を用いて通知される。受信部212は、ダウンコンバートした受信信号を復調部214に出力する。受信部212は、例えば、チューナを備える。
【0029】
復調部214は、受信部212から入力される受信信号を所定の復調方式を用いて復調する。所定の復調方式として、変調部132において放送信号の変調に用いられた変調方式に対応する復調方式を用いればよい。復調部214は、予め定めた割当設定を用いて、データシンボル、制御シンボルおよび参照シンボルのキャリアシンボル位置を特定し、データ信号、制御信号および参照信号に分離する。割当設定の具体例については、後述する。復調部214は、分離したデータ信号と制御信号を第1復号部216と第2復号部218に出力する。
【0030】
第1復号部216は、復調部214から入力されるデータ信号、TMCC信号およびAC信号を復号する。第1復号部216は、デマッピング部216a、デインタリーブ部216b、および、誤り訂正復号部216cを備え、データ信号、TMCC信号、および、AC信号に対して以下の処理を実行する。デマッピング部216aは、第1放送信号、即ち、高電力階層信号に対応する信号に対してデマッピングを行う。デマッピング部216aは、その信号を構成するシンボルで表される信号点のIQ座標を、第1放送信号に対するマッピングに用いたマッピング方式に対応するデマッピング方式を用いてビットデータに変換し、デインタリーブ部216bに出力する。この段階で、第2放送信号の成分はノイズとして除去される。また、デマッピング部216aは、データ信号または制御信号に対して公知の手法を用いてMER(Modulation Error Ratio、変調誤差率)を算出し、算出したMERをノイズ推定部224に出力する。MERは、信号を表現するシンボルの値の所定の基準値からの揺らぎの大きさを示す指標値である。
【0031】
デインタリーブ部216bは、デマッピング部216aから入力されるビットデータに対してデインタリーブを行い、ビットデータの順序を並び替える。デインタリーブ部216bは、デインタリーブにおいて、変換されたビットデータの順序を、インタリーブ前の第1放送信号を表すビットデータの順序と同じになるように変更する。デインタリーブ部216bは、順序を並び替えたビットデータを誤り訂正復号部216cに出力する。
【0032】
誤り訂正復号部216cは、デインタリーブ部216bから入力される順序が並び替えビットデータに対して誤り訂正復号を行い、第1放送信号を取得する。誤り訂正復号部216cは、誤り訂正復号において、放送装置10における第1放送信号に対する誤り訂正符号化に用いた誤り訂正符号化方式に対応する誤り訂正復号方式を用いる。誤り訂正復号部216cは、復号した第1放送信号を第2復号部218、および、多重信号分離部222に出力する。
【0033】
第2復号部218は、復調部214から入力される受信信号と第1復号部216から入力される第1放送信号から第2放送信号を復号する。第2復号部218は、誤り訂正符号化部218a、インタリーブ部218b、マッピング部218c、乗算部218d、遅延部218e、減算部218f、デマッピング部218g、デインタリーブ部218h、および、誤り訂正復号部218iを備える。
【0034】
誤り訂正符号化部218aは、誤り訂正復号部216cから入力される第1放送信号に対して誤り訂正符号化を行い、得られたビットデータをインタリーブ部218bに出力する。誤り訂正符号化部218aは、誤り訂正符号化において、放送装置10における第1放送信号に対する誤り訂正符号化に用いた誤り訂正符号化方式を用いる。
【0035】
インタリーブ部218bは、誤り訂正符号化部218aから入力されるビットデータに対して、放送装置10における第1放送信号に基づくビットデータに対する並び替えと同じ順序に並び替える。インタリーブ部218bは、順序を並び替えたビットデータをマッピング部218cに出力する。
【0036】
マッピング部218cは、インタリーブ部218bから入力された順序が並び替えられたビットデータを、放送装置10における第1放送信号に対するマッピングに係る変調方式と符号化率と同様の変調方式と符号化率に応じた信号点のIQ座標に変換し、変換されたIQ座標を表すシンボルを定める。マッピング部218cは、定めたシンボルからなる第1データキャリアシンボルを乗算部218dに出力する。
【0037】
乗算部218dは、マッピング部218cから入力される第1データキャリアシンボルに電力比を乗算し、電力を調整した第1データキャリアシンボルを減算部218fに出力する。電力比を、マッピング部218cから出力される第1データキャリアシンボルの電力に対する遅延部218eから入力される受信信号の電力の比となるように設定しておく。これにより、第1データキャリアシンボルの電力と受信信号の電力が等しくなる。
【0038】
遅延部218eには、復調部214から入力される受信信号に対して減算部218fに出力する時刻を遅延させる。受信信号に対する遅延時間は、デマッピング部216aにその受信信号が供給される時刻から、デインタリーブ部216b、誤り訂正復号部216c、誤り訂正符号化部218a、インタリーブ部218b、マッピング部218c、および、乗算部218dを経由して第1データキャリアシンボルが入力される時刻までの所要時間に相当する。これにより、復調部214からの受信信号と乗算部218dからの第1データキャリアシンボルとが同期する。
【0039】
減算部218fは、復調部214から入力される受信信号から乗算部218dから入力される第1データキャリアシンボルを減算し、第1放送信号に基づく成分を除去する。減算部218fは、減算により得られた低電力階層信号をなす第2データキャリアシンボルをデマッピング部218gに出力する。
【0040】
デマッピング部218gは、減算部218fから入力される第2データキャリアシンボルに対してデマッピングを行う。デマッピング部218gは、第2データキャリアシンボルで表される信号点のIQ座標を、第2放送信号に対するマッピングに用いたマッピング方式に対応するデマッピング方式を用いてビットデータに変換し、デインタリーブ部218hに出力する。
【0041】
デインタリーブ部218hは、デマッピング部218gから入力されるビットデータに対してデインタリーブを行い、ビットデータの順序を並び替える。デインタリーブ部218hは、デインタリーブにおいて、変換されたビットデータの順序を、インタリーブ前の第2放送信号を表すビットデータの順序と同じになるように変更する。デインタリーブ部218hは、順序を並び替えたビットデータを誤り訂正復号部218iに出力する。
【0042】
誤り訂正復号部218iは、デインタリーブ部218hから入力される順序が並び替えビットデータに対して誤り訂正復号を行い、第2放送信号を取得する。誤り訂正復号部218iは、誤り訂正復号において、放送装置10における第2放送信号に対する誤り訂正符号化に用いた誤り訂正符号化方式に対応する誤り訂正復号方式を用いる。誤り訂正復号部218iは、復号した第2放送信号を多重信号分離部222に出力する。
【0043】
よって、図4に例示されるように、高電力階層信号と低電力階層信号が階層多重化して伝送される場合には、第1復号部216により制御信号で伝達されるILに相当するレベル幅を有する高電力階層信号(2K信号、第1放送信号に相当)が受信信号から抽出される。後述するように、受信装置20において、高電力階層信号に含まれる低電力階層信号(4K信号、第2放送信号に相当)の成分は復号に成功せずノイズとみなされる。第2復号部218により、受信信号から高電力階層信号を差し引いて低電力階層信号が抽出される。
【0044】
多重信号分離部222は、制御信号、または、データ信号を監視し、IL情報が含まれているか否かを判定する。多重信号分離部222には、予めIL情報が含まれる可能性がある信号の種類と領域を設定しておき、設定された種類の信号のうち、設定された領域に割り当てられたシンボルを監視する。多重信号分離部222は、制御信号に有効なIL情報が含まれているとき、第2放送信号が送出されていると判定することができる。受信状態処理部234は、例えば、TMCC信号のうちIL情報が割り当てられる所定のシンボルの復号に成功し、かつ、IL情報で示されるILが所定の値域内の値であるとき、有効なIL情報が検出できたと判定できる。多重信号分離部222は、有効なIL情報が検出できるとき、第1放送信号に含まれるデータ信号と第2放送信号に含まれるデータ信号がLDM方式を用いて多重化されていると判定できる。多重信号分離部222は、それ以外の場合、データ信号がLDM方式を用いて多重化されていないと判定することができる。この判定は、受信装置20が第2放送信号に基づく放送サービスを提供できる受信装置であるか否かに関わらず実行される。多重信号分離部222は、制御信号、またはデータ信号からIL情報を分離し、分離したIL情報を受信処理部230に出力する。
LDM方式を用いて放送信号が伝送されていると判定するとき、多重信号分離部222は、第2復号部218から入力される第2放送信号からデータ信号を分離し、分離したデータ信号を受信処理部230に出力する。
【0045】
ノイズ推定部224は、受信信号の一部を用いてC/Nを算出し、算出したC/Nをノイズレベルとして受信処理部230に出力する。このC/Nは、受信信号の信号レベルCを1として正規化されたノイズレベルとみなすこともできる。ノイズ推定部224は、第1種の機能と第2種の機能のいずれかを有する。第1種の機能は、受信信号の一部としてデータ信号に基づいてC/Nを算出する機能である。図4に例示されるように、第1種の機能では第1放送信号から分離されたデータ信号のうち低電力階層信号(第2放送信号)をノイズとみなし、第1放送信号のC/Nが算出される。第2種の機能は、受信信号の一部として第1放送信号に含まれる制御信号に基づいて第1放送信号のC/Nを算出する機能である。制御信号として、TMCC信号とAC信号の一方または両方が用いられる。第1種の機能を有するノイズ推定部224は、デマッピング部216aで算出したデータ信号のMERに基づいてC/Nを算出する。第2種の機能を有するノイズ推定部224は、デマッピング部216aで算出した制御信号のMERに基づいてC/Nを推定する。ノイズ推定部224は予め定めた公知の換算式を用いてMERをC/Nに換算することができる。
【0046】
受信処理部230は、受信した放送信号に基づく放送番組の提供、および、その提供に係る処理を実行する。受信処理部230は、受信制御部232、受信状態処理部234、および、コンテンツ処理部236を備える。
受信制御部232は、入力部250から入力される操作信号に基づき放送番組の受信を制御する。受信制御部232は、受信の要否、受信対象とする放送チャンネルの設定(選局)、などを実行する。受信制御部232は、設定した放送チャンネルを示す選局情報を受信部212に出力する。受信制御部232は、多重信号分離部222からIL情報が入力されるとき、第1放送信号から分離されたデータ信号と、第2放送信号から分離されたデータ信号のいずれかを、操作信号に基づいて選択してもよい。受信制御部232は、選択したデータ信号をコンテンツ処理部236に出力する。
【0047】
受信状態処理部234は、ノイズ推定部224から入力されるノイズレベルと多重信号分離部222から入力されるIL情報に基づいて、放送信号の受信状態を示す指標をアンテナレベル情報として定める。受信制御部232は、例えば、入力部250から入力される操作信号により受信状態照会が指示されるとき、アンテナレベル情報を配置した表示画面をアンテナ設定画面として構成し、構成したアンテナ設定画面を示す表示データを出力部240に出力する。受信状態照会は、例えば、受信装置20の設置、放送信号受信用のアンテナ設定、方向調整、初回起動時などの場合に指示されうる。
【0048】
データ信号がLDM方式を用いて多重化されていない場合、つまり、多重信号分離部222からIL情報が入力されないとき、受信状態処理部234は、ノイズ推定部224から入力されるノイズレベルを採用する。採用されるノイズレベルは、ノイズ推定部224が第1種の機能と第2種の機能のいずれかを有するかに関わらず、ほぼ等しい値となる。受信状態処理部234は、採用したノイズレベルNをアンテナレベル値に変換する。アンテナレベル値は、受信状態の良否をより容易に把握できる指標値として用いられる。受信状態処理部234は、算出したアンテナレベル値を配置したアンテナ設定画面を構成する。受信状態処理部234は、例えば、採用したノイズレベルN(単位:dB)の正負反転値の2倍の値(-2N)をアンテナレベル値として定めることができる。
【0049】
データ信号がLDM方式を用いて多重化されている場合、つまり、多重信号分離部222からIL情報が入力されるとき、受信状態処理部234は、低電力階層信号である第2放送信号の伝送を示す通知情報と、高電力階層信号である第1放送信号のノイズレベルを用いて算出されるアンテナレベル値を表すアンテナ設定画面を構成する。通知情報として、例えば、IL情報で伝達されるILの値が表されてもよい。ノイズ推定部224が第1種の機能と第2種の機能を有するかにより、ノイズ推定部224から通知される第1放送信号のノイズレベルが異なりうるためである。通知情報は、ILの値に代えて、または、ILの値とともに、低電力階層信号の伝送を示す文字列、記号、模様、などで表されてもよい。そのため、アンテナ設定画面を視認するユーザは、通知情報に接することで第2放送信号が伝送されていることを知得することができる。ひいては、ユーザは、第2放送信号の伝送に起因するアンテナレベル値の変動を意識することができる。
【0050】
ノイズ推定部224が第1種の機能を有する場合には、低電力階層信号もノイズ成分の一部として含む高電力階層信号の信号レベルCを基準とするC/NLLが得られる。つまり、高電力階層信号のノイズ成分は、図5に例示されるように、環境ノイズの成分に低電力階層信号の成分が混合した混合ノイズとみなすことができる。混合ノイズの信号レベル(以下、「混合ノイズレベル」と呼ぶ)NLLは、図5に例示されるように、低電力階層信号(第2放送信号)の信号レベルLLと環境ノイズのレベル(以下、「環境ノイズレベル」と呼ぶ)Nを合算した値に相当する。そのため、C/NLLは、低電力階層信号が送出されないときに得られる環境ノイズの信号レベルNに対する高電力階層信号の信号レベルCの比をもって定めたC/Nよりも低くなる。
【0051】
そこで、受信状態処理部234は、式(1)に示すように、混合ノイズレベルNLLからILを実数領域で差し引いて環境ノイズレベルNを算出することができる。
N = 10 log (10(NLL/10) - 10(-IL/10)) … (1)
式(1)において、環境ノイズレベルN、混合ノイズレベルNLL、インジェクションレベルILの単位は、いずれもdBである。ここで、高電力階層信号の信号レベルCが1(0(dB))となるように正規化されている。そのため、環境ノイズレベルNの正負を反転した正負反転値-Nが、高電力階層信号の信号レベルCの比であるC/Nとして得られる。
【0052】
受信状態処理部234は、環境ノイズレベルN、混合ノイズレベルNLLを、それぞれアンテナレベル値に変換する。受信状態処理部234は、例えば、環境ノイズレベルの正負反転値の2倍(-2N)、混合ノイズレベルの正負判定値の2倍(-2NLL)をそれぞれアンテナレベル値として算出する。このアンテナレベル値は、C/Nの2倍となる概算換算値に相当する。受信状態処理部234は、低電力階層信号の伝送を示す通知情報として、例えば、ILと、算出したアンテナレベル値を配置したアンテナ設定画面を構成する。受信状態処理部234は、構成したアンテナ設定画面を示す表示データを出力部240に出力する。
【0053】
ノイズ推定部224が第2種の機能を有する場合には、低電力階層信号の影響を受けない制御信号のMERからC/Nが得られる。そのため、ノイズ推定部224から得られる環境ノイズレベルNは、高電力階層信号のノイズレベルとして直ちに利用することができない。データ信号は映像、音声、などのコンテンツを伝達する信号であり、高電力階層データ信号のアンテナレベルは、受信信号の受信品質を判定するうえで重要な情報であるため、アンテナ設定画面に表示させる必要性が高い。
【0054】
そこで、受信状態処理部234は、式(2)に示すように、環境ノイズレベルNに低電力階層信号の信号レベルを実数領域で加算して混合ノイズレベルNLLを算出する。式(2)において、低電力階層データ信号の信号レベルは、高電力階層信号の信号レベルCが1(0(dB))となるように正規化している。そのため、混合ノイズレベルNLLの正負判定値-NLLは、混合ノイズレベルNLLに対する高電力階層信号の信号レベルCの比であるC/NLLとして得られる。
NLL = 10 log(10(-IL/10)+10(N/10)) … (2)
【0055】
受信状態処理部234は、環境ノイズレベルN、混合ノイズレベルNLLを、上記に説明した手法で、それぞれアンテナレベル値に変換することができる。受信状態処理部234は、通知情報として、例えば、ILと、算出したアンテナレベル値を配置したアンテナ設定画面を示す表示データを出力部240に出力する。
【0056】
受信状態処理部234は、第1種の機能を有する場合には式(1)で算出された環境ノイズレベルNと混合ノイズレベルNLLから、または、第2種の機能を有する場合には式(3)に示すように環境ノイズレベルNから導出されるC/NとILから、低電力階層信号のC/Nに相当する混合ノイズレベル対環境ノイズレベル比NLL/Nを求めることができる。
NLL/N=(C/N)×1/IL … (3)
受信状態処理部234は、算出したNLL/Nを実効的な低電力階層信号レベルLLに対するアンテナレベル値として変換し、得られたアンテナレベル値をさらに含むアンテナ設定画面を構成してもよい。受信装置20が第2放送信号を受信可能とする受信機である場合には、低電力階層で伝送される低電力階層信号レベルLLを表示し、表示された低電力階層信号レベルLLをさらに考慮してアンテナを設定する必要性が高いためである。
上記のアンテナ設定画面において、アンテナレベル値およびILが棒グラフ、アンテナの本数などを用いて図示されてもよい。アンテナレベル値とILの表示態様としての色、輝度、などは、その種類(例えば、環境ノイズレベル、高電力階層信号の混合ノイズレベル、低電力階層信号レベルなど)により異なっていてもよい。
【0057】
受信状態処理部234は、算出した環境ノイズレベルに基づいて受信信号の受信状態が所定の推奨値で示される受信状態よりも良好であるか否かを判定してもよい。受信状態処理部234は、例えば、環境ノイズレベルNに対応するC/Nが推奨値以上となるか否かを判定してもよい。推奨値として、例えば、ARIB STD-B21に記載された所要CN比が用いられてもよいし、この所要CN比に対して、予め定めた正値をマージンとして加算した値が用いられてもよい。所要CN比は、変調方式と符号化率の組ごとに定められている。
【0058】
コンテンツ処理部236は、多重信号分離部222から入力されるデータ信号で伝達される放送番組のコンテンツを提示するための処理を行う。コンテンツ処理部236は、入力されたデータ信号で伝達される放送番組のコンテンツを表すコンテンツデータを復号する。コンテンツ処理部236は、例えば、データ信号で搬送される符号化映像データと符号化音声データを分離する。コンテンツ処理部236は、分離した符号化映像データに対して映像復号処理を実行して映像データを生成し、分離した符号化音声データに対して音声復号処理を実行して音声データを生成する。
【0059】
コンテンツ処理部236は、復号したコンテンツデータで伝達されるコンテンツを提示するための提示データを生成し、生成した提示データを出力部240に出力する。
コンテンツ処理部236は、例えば、復号した映像を配置した表示画面を表す表示データを生成し、出力部240に出力する。また、コンテンツ処理部236は、復号した音声を再生するための再生データを生成し、出力部240に出力する。
【0060】
出力部240は、受信処理部230から入力される提示データに基づいて放送番組のコンテンツを提示する。出力部240は、例えば、ディスプレイとスピーカを備える。ディスプレイは、コンテンツ処理部236から入力される表示データに従って放送番組の表示画面を表示する。スピーカは、コンテンツ処理部236から入力される再生データに従って音声を再生する。なお、ディスプレイは、受信状態処理部234から入力される表示データに従ってアンテナレベル値を含む表示画面を表示することもある。
【0061】
入力部250は、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作に応じて操作信号を生成する。入力部250は、生成した操作信号を受信処理部230に出力する。入力部250は、ボタン、つまみ、ダイヤル、などの専用の部材を備えてもよいし、タッチセンサ、マウス、キーボード、などの汎用の部材を備えてもよい。入力部250として機能するタッチセンサは、出力部240として機能するディスプレイと一体化したタッチパネルとして構成されてもよい。入力部250は、他機器(例えば、リモートコントローラ、多機能携帯電話機)から操作信号を受信するセンサを備えてもよい。入力部250は、受信した操作信号を受信装置20に出力してもよい。
【0062】
(アンテナ設定画面)
次に、本実施形態に係るアンテナ設定画面の例について説明する。図6は、本実施形態に係るアンテナ設定画面の第1例を示す図である。この例に係るアンテナ設定画面は、低電力階層信号が多重化されずに伝送される場合に表示される。図6の例では、アンテナレベル値として80と、アンテナレベル基準値として40以上がアンテナレベル値の推奨値である旨のメッセージが配置されている。このアンテナ設定画面によりアンテナレベル値がアンテナレベル基準値を超えることが表されることで、十分な受信品質を期待できることが伝達される。
【0063】
図7は、本実施形態に係るアンテナ設定画面の第2例を示す図である。この例に係るアンテナ設定画面は、受信装置20が2K受信装置であって低電力階層信号がLDM方式に基づいて多重化されて伝送され、多重信号分離部222において、有効なIL情報が抽出され、低電力階層信号が送られていると判断され、かつ、ノイズ推定部224が第1種の機能を有する場合に表示される。図7の例では、環境ノイズレベルに基づくアンテナレベル値として50、混合ノイズレベルに基づくアンテナレベル値として30.97、多重信号分離部222において抽出した値であるILとして16が表示されている。
【0064】
この例では、混合ノイズレベルに基づくアンテナレベル値が「データ領域のアンテナレベル」と、データ信号に係る受信品質を表示している。また、アンテナレベル基準値として40以上がアンテナレベル値の推奨値である旨のメッセージが配置されている。表示されたアンテナレベル値とメッセージに接したユーザは、アンテナ設置時に表示されたアンテナレベル値が40以上となるように、アンテナの位置や向きを調整することが促される。この値は低電力階層信号が送出される前(4K放送が始まる前)の値と変わらないため、ユーザに混乱を与えずに済む。一方で、データ領域のアンテナレベルは、上記のC/NLLに対応する値であり、高電力階層信号の実効的な信号品質を表し、アンテナの調整に当たり本来表示するべきである。また、インジェクションレベルは、低電力階層信号に対応した受信機(即ち、4K対応受信機)の普及状況で変更されることや、放送局、放送チャンネル、などによって異なる可能性がある。このインジェクションレベルは、アンテナの調整に役立つ情報として、表示されている。
【0065】
図8は、本実施形態に係るアンテナ設定画面の第3例を示す図である。この例に係るアンテナ設定画面は、受信装置20が2K受信装置であって低電力階層信号がLDM方式に基づいて多重化されて伝送され、かつ、ノイズ推定部224が第2種の機能を有する場合に表示される。この例に係るアンテナ設定画面は、図7に例示されるアンテナ設定画面と同様の項目が表示される。図8の例では、環境ノイズレベルに基づくアンテナレベル値として80、混合ノイズレベルに基づくアンテナレベル値として45.83、ILとして16が表示されている。これによって、ユーザはノイズ推定部224が第1種の機能を有する場合と共通の表示を見ながら、アンテナ調整を可能とする。
【0066】
図9は、本実施形態に係るアンテナ設定画面の第4例を示す図である。この例に係るアンテナ設定画面は、受信装置20が4K対応受信装置であって低電力階層信号がLDM方式に基づいて多重化されて伝送される場合に表示される。このアンテナ設定画面には、ノイズ推定部224が第1種の機能を有するか、第2種の機能を有するかに関わらず、共通の項目が含まれてもよい。図9の例では、環境ノイズレベルに基づくアンテナレベル値として80、高電力階層信号に対する混合ノイズレベルに基づくアンテナレベル値として45.83、低電力階層信号レベルに基づくアンテナレベル値として48、ILとして16が表示されている。この例では、高電力階層信号に対する混合ノイズレベルに基づくアンテナレベル値が「2Kデータ領域のアンテナレベル」、低電力階層信号レベルに基づくアンテナレベル値が「4Kデータ領域のアンテナレベル」と、それぞれ高電力階層信号、低電力階層信号に係る受信品質である旨が表記されている。また、高電力階層信号のアンテナレベル基準値として40以上がアンテナレベル値の推奨値である旨のメッセージとともに、低電力階層信号のアンテナレベル基準値として36以上がアンテナレベル値の推奨値である旨のメッセージが配置されている。
【0067】
この例では、環境ノイズレベルに基づくアンテナレベル値、高電力階層信号に対する混合ノイズレベルに基づくアンテナレベル値は、いずれもアンテナレベル基準値以上となる。低電力階層信号レベルに基づくアンテナレベル値は、低電力階層信号レベルに基づくアンテナレベル基準値以上となる。このアンテナ設定画面に接したユーザには、高電力階層信号に係るアンテナレベル値、低電力階層信号に係るアンテナレベル値ともに、それぞれのアンテナレベル基準値以上となり、高電力階層信号で提供される2K放送、低電力階層信号で提供される4K放送ともに十分な受信品質を期待できることが伝達される。
【0068】
次に、放送信号のシンボル配置例について説明する。放送信号を構成するデータ信号、参照信号、および、制御信号のそれぞれのキャリアシンボルを割り当てるキャリアシンボル位置は、予め定めた割当設定において規定されている。図10は、本実施形態に係る割当設定の一例を示す。図10は、シンボル配置の例としてモード3を例示する。図10は、フレームごとに203行432列のキャリアシンボル位置を有することを示す。各行にOFDMシンボル番号、各列にキャリア番号を示す。OFDMシンボル番号は、個々のOFDMシンボルに対して割り当てられる時刻に対応する。キャリア番号は、個々のキャリア、即ち、周波数を示す。
【0069】
図10において、個々の細かい四角形のうち塗りつぶされていないものが、データ信号が割り当てられるキャリアシンボル位置を示す。網掛け、縦縞、横縞で塗りつぶされている領域が、それぞれSP信号、TMCC信号、AC信号が割り当てられるキャリアシンボル位置を示す。SP信号を構成する個々のキャリアシンボルは、データ信号が割り当てられるデータ領域において、各1個のキャリアシンボル位置に分散して割り当てられる。TMCC信号、AC信号は、それぞれ一定のキャリアについて時間的に継続して割り当てられる。TMCC信号、AC信号が割り当てられるキャリアは、それぞれ、TMCCキャリア、ACキャリアと呼ばれる。
【0070】
IL情報は、例えば、TMCC信号の一部として伝達される。図11は、TMCCキャリアに対するビット割当例を示す。図11の例では、フレームごとにTMCCキャリアを用いて204ビットの情報が搬送される。TMCCキャリアでは、1ビットの復調基準信号、16ビットの同期信号、3ビットのセグメント形式識別、102ビットのTMCC情報、および、82ビットのパリティビットが搬送される。IL情報は、TMCC情報に含めて5ビットで伝達される。IL情報は、ビット110からビット114を用いて表現される。図11にIL情報の値の意味を例示する表を併記する。値が0または31とは、LL信号が伝送されていないことを示し、値が1から30とは、LL信号が伝送されることと、現実に伝達されるIL値を示す。
【0071】
なお、IL情報は、TMCC信号に代え、AC信号の一部として伝達されてもよいし、ソフトウェアダウンロードの告知情報(SDTT:Software Download Trigger Table)の一部として伝達されてもよい。SDTTは、データ信号により放送番組のコンテンツデータと多重化されるARIB STD-B21 に規定されるテーブルである。
IL情報は、NIT(Network Information Table、ネットワーク情報テーブル)を用いて伝達されてもよい。NITは、平成21年2月20日総務省令告示第88号で規定された情報テーブルである。NITは、主に変調周波数などの伝送路の情報と放送番組を関連付ける情報を伝送するために用いられるテーブルである。IL情報を伝達する際、例えば、LDM伝送記述子(LDM_transmission_descriptor)を用いてNITに記述する。図16は、LDM伝送記述子における、IL情報の記載例を示す。本記述子がNITの一部として送られている場合は、LL信号が送られていることを示される。本記述子のinjection levelのフィードにIL値が5ビットで記述され、1~31のいずれかのdB値を示す。なお、NITとSDTTは、いずれもデータ信号に含まれる。
【0072】
次に、本実施形態に係る放送信号の受信処理の例について説明する。図12は、本実施形態に係る受信処理の第1例を示すフローチャートである。図12は、受信装置20が2K受信装置であってノイズ推定部224が第1種の機能を有する場合を例にする。
【0073】
(ステップS102)受信部212は、放送伝送路BTを経由して放送波で伝送される放送信号を受信信号として受信する。復調部214は、受信された受信信号を復調する。復調された受信信号から高電力階層信号(第1放送信号)を復号し、復号した高電力階層信号からデータ信号、および、制御信号がデマッピング部216aに入力され、データ信号のMERを算出して、ノイズ推定部224に渡す。
(ステップS104)ノイズ推定部224は、渡されたデータ信号のMERからC/Nを算出する。
【0074】
(ステップS106)多重信号分離部222は、制御信号またはデータ信号を監視し、所定の領域からIL情報の取得を試みる。
(ステップS108)多重信号分離部222は、有効なIL情報の取得の成否に基づいて、データ信号がLDM方式を利用して多重化されているか否かを判定する。LDM方式を利用して多重化されていると判定するとき(ステップS108 YES)、ステップS110の処理に進む。LDM方式を利用して多重化されていないと判定するとき(ステップS108 NO)、ステップS114の処理に進む。
【0075】
(ステップS110)受信状態処理部234は、式(1)に従って、算出されたC/Nに対応する混合ノイズレベルNLLとインジェクションレベルILに基づいて環境ノイズレベルNを算出する。
(ステップS112)受信状態処理部234は、環境ノイズレベルNと混合ノイズレベルNLLのそれぞれに対応するアンテナレベル値を算出する。受信状態処理部234は、算出したアンテナレベル値とインジェクションレベルILを表す表示画面を構成する。受信状態処理部234は、構成した表示画面を示す表示データを出力部240に出力し、表示画面を画面表示させる。その後、図12の処理を終了する。
(ステップS114)受信状態処理部234は、算出されたC/Nに基づくノイズレベルNに対応するアンテナレベル値を表す表示画面をアンテナ設定画面として構成する。受信状態処理部234は、構成したアンテナ設定画面を示す表示データを出力部240に出力し、アンテナ設定画面を画面表示させる。その後、図12の処理を終了する。
【0076】
図13は、本実施形態に係る受信処理の第2例を示すフローチャートである。図13は、受信装置20が2K受信装置であってノイズ推定部224が第2種の機能を有する場合を例にする。
図13の処理は、図12のステップS104、S110に代えて、ステップS124、S130の処理を有する。ステップS102、S106、S108、S112、S114の処理については、図12の説明を援用する。
【0077】
(ステップS124)ノイズ推定部224は、分離された制御信号からC/Nを算出する。
(ステップS130)受信状態処理部234は、式(2)に従って、算出されたC/Nに対応する環境ノイズレベルとインジェクションレベルILに基づいて混合ノイズレベルNLLを算出する。
【0078】
図14は、本実施形態に係る受信処理の第3例を示すフローチャートである。図14は、受信装置20が4K対応受信装置であってノイズ推定部224が第1種の機能を有する場合を例にする。
図14の処理は、図12のステップS112に代えて、ステップS142の処理を有し、さらにステップS140の処理を有する。ステップS102、S104、S106、S108、S110、S114の処理については、図12の説明を援用する。
【0079】
(ステップS140)受信状態処理部234は、式(3)に従って、環境ノイズレベルNとインジェクションレベルILに基づいて実効的な低電力階層信号レベルLLを算出する。
(ステップS142)受信状態処理部234は、環境ノイズレベルN、混合ノイズレベルNLLおよび低電力階層信号レベルLLのそれぞれに対応するアンテナレベル値を算出する。受信状態処理部234は、算出したアンテナレベル値とインジェクションレベルILを表す表示画面を構成する。受信状態処理部234は、構成した表示画面を示す表示データを出力部240に出力し、表示画面を画面表示させる。
【0080】
図15は、本実施形態に係る受信処理の第4例を示すフローチャートである。図15は、受信装置20が4K対応受信装置であってノイズ推定部224が第2種の機能を有する場合を例にする。
図14の処理は、図13のステップS112に代えて、ステップS142の処理を有し、さらにステップS140の処理を有する。ステップS102、S106、S108、S114の処理については、図12の説明を援用する。ステップS124、S130の処理については、図13の説明を援用する。ステップS140、S142の処理については、図14の説明を援用する。
【0081】
なお、放送局や放送地域によっては、単一の放送チャンネルに限らず、複数の放送チャンネル(物理チャンネル)を用いて放送サービスを提供することがある(MFN:Multiple Frequency Network)。受信状態処理部234は、複数の放送チャンネルのうち、環境ノイズレベル、混合ノイズレベル、または、低電力階層信号レベルが所定の基準レベルよりも低い放送チャンネルを示すサービスID(Identifier)が記述されたサービスリスト(受信可能周波数テーブル)を生成してもよい。受信状態処理部234は、生成した受信可能周波数テーブルを受信処理部230に設定してもよい。受信状態処理部234は、受信装置20の設置時または初回起動時における受信可能チャンネルのサーチ(初期スキャン)の際に受信可能周波数テーブルを作成する処理を行ってもよい。
また、受信状態処理部234は、放送チャンネルごとに環境ノイズレベル、混合ノイズレベル、または、低電力階層信号レベルを図示する受信状態表示画面を受信処理部230に生成させ、出力部240に提示させてもよい。受信状態表示画面は、受信の可否または受信可能とする放送サービスが、それぞれ異なる表示態様で表現されてもよい。
【0082】
受信状態処理部234は、放送チャンネルごとに推定された環境ノイズレベル、混合ノイズレベル、または、低電力階層信号レベルに基づいて受信可否を判定し、受信可能と判定した放送チャンネルをサーチしてもよい。受信状態処理部234は、サーチにより特定した受信可能チャンネルを示すサービスIDを示す受信可能周波数テーブルとして生成してもよい。
【0083】
受信状態処理部234は、地域ごとに受信可能周波数テーブルを生成し、受信制御部232に設定してもよい。受信制御部232は、自装置が設置される地域に応じて、設定された受信可能周波数テーブルを選択してもよい。受信処理部230は、例えば、4台以上のGPS(Global Positioning System)衛星から受信したGPS信号を用いて自装置の設置位置を定め、予め設定された地図情報を参照して設置位置に含まれる地域を特定することができる。
【0084】
以上に説明したように、本実施形態に係る受信装置20は、データ信号と制御信号を搬送する受信信号からインジェクションレベルを示すインジェクションレベル情報が取得されるとき、低電力階層信号の伝送を示す通知情報と、データ信号の受信状態を示すアンテナレベル情報を出力部240に出力する受信処理部230を備える。低電力階層信号は、データ信号において高電力階層信号よりも低い信号レベルの階層に多重化され、インジェクションレベルは、高電力階層信号と低電力階層信号とのレベル比である。
この構成によれば、高電力階層信号と低電力階層信号のレベル比を示すインジェクションレベル信号が取得されるとき、低電力階層信号の伝送を示す通知情報とデータ信号の受信状態を示すアンテナレベル情報が出力される。高電力階層信号に多重化された低電力階層信号の伝送が通知されるため、通知情報に接したユーザに低電力階層信号の伝送によるアンテナレベル情報の変化を考慮したアンテナ設定が促すことができる。
【0085】
受信装置20は、高電力階層信号のキャリア対ノイズ比に基づく混合ノイズレベルを推定するノイズ推定部224を備えてもよい。受信処理部230は、混合ノイズレベルとインジェクションレベルを用いて環境ノイズレベルを算出し、環境ノイズレベルに基づくアンテナレベル情報を定める。
この構成によれば、高電力階層信号からキャリア対ノイズ比に基づく混合ノイズレベルが推定される場合、インジェクションレベルを用いて環境ノイズレベルに基づくアンテナレベル情報が得られる。そのため、混合ノイズレベルの他、環境ノイズレベルを参照して、高電力階層信号の受信品質の確保が促される。
【0086】
受信装置20は、受信信号で搬送される制御信号のキャリア対ノイズ比に基づく環境ノイズレベルを推定するノイズ推定部224を備えてもよい。受信処理部230は、環境ノイズレベルとインジェクションレベルを用いて混合ノイズレベルを算出し、混合ノイズレベルに基づくアンテナレベル情報を定める。
この構成によれば、制御信号からキャリア対ノイズ比に基づく環境ノイズレベルが推定される場合、インジェクションレベルを用いて混合ノイズレベルに基づくアンテナレベル情報が得られる。そのため、環境ノイズレベルの他、混合ノイズレベルを参照して、高電力階層信号の受信品質の確保が促される。
【0087】
制御信号は、少なくとも伝送多重制御信号(TMCC信号)および補助チャンネル信号(AC信号)のいずれか含んでもよい。
この構成によれば、データ信号に含まれる低電力階層信号の影響を受けずに環境ノイズレベルを推定することができる。また、既存の伝送多重制御信号または補助チャンネル信号を用いてインジェクションレベルが伝達することで、新たに定義される信号を用いる場合よりも、経済的な普及が可能となる。
【0088】
受信処理部230は、環境ノイズレベルからインジェクションレベルを差し引き、低電力階層信号の信号レベルに基づくアンテナレベル情報を定めてもよい。
この構成によれば、高電力階層信号の他、低電力階層信号の受信品質を示すアンテナレベル情報が得られる。そのため、低電力階層信号の受信品質をさらに考慮したアンテナの調整が促される。
【0089】
また、受信処理部230は、環境ノイズレベルに基づいて受信信号の受信状態を判定してもよい。
この構成によれば、放送チャンネルごとにアンテナの設置状態、周囲環境に依存する環境ノイズレベルを用いることで、受信装置20の受信の適否を定量的に評価することができる。
【0090】
また、受信状態処理部234は、前記受信信号のチャンネルごとに、前記環境ノイズレベルが所定のレベルよりも低いチャンネルを示すリスト(例えば、サービスリスト、受信可能周波数テーブル)を作成してもよい。
この構成によれば、リストを参照して、環境ノイズレベルが低いチャンネルを選局でき、より環境ノイズレベルの高いチャンネルを回避することができる。そのため、受信品質の高いチャンネルの放送を確実に受信することができる。
【0091】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。
【0092】
上記の説明では、高電力階層信号、低電力階層信号に、それぞれ第1放送信号として2K信号、第2放送信号として4K信号を割り当てる場合を例にしたが、これには限られない。高電力階層信号に低電力階層信号よりも解像度が低い映像を提供する放送番組のコンテンツの信号が割り当てられればよい。例えば、高電力階層信号、低電力階層信号に、それぞれ1K信号、2K信号が割り当てられてもよいし、それぞれ1K信号、4K信号が割り当てられてもよい。1K信号は、高精細度テレビジョン(HDTV:High-Definition Television)放送サービスにおいて採用されている放送方式に係る放送信号の一種である。
【0093】
また、低電力階層信号には、高電力階層信号で提供される放送サービスに対する付加サービスに用いられる付加信号が割り当てられてもよい。その場合、コンテンツ処理部236は、データ信号から高電力階層信号を棄却せずに、高電力階層信号と付加信号をいずれも採用し、コンテンツの提示に用いる。例えば、高電力階層信号に2K信号が採用される場合、低電力階層信号に4K信号と2K信号との差分信号が付加信号として割り当てられてもよい。コンテンツ処理部236は、抽出した2K信号と差分信号から4K信号を合成し、合成した4K信号を復号して4K放送のコンテンツを提示可能とする。
【0094】
また、受信装置20の一部の構成が省略されてもよいし、他の構成が追加されてもよい。例えば、受信装置20において、出力部240と入力部250の一方または両方が、その他の機能部と各種のデータを入出力可能に接続できれば、受信装置20において必ずしも一体に備わっていなくてもよい。例えば、セットトップボックスとして構成される受信装置20において、コンテンツ処理部236と出力部240をなすディスプレイが省略されてもよい。録画装置として構成される受信装置20において、出力部240をなすディスプレイが省略されてもよい。
【0095】
また、上述の受信装置20の一部、例えば受信処理部230の一部または全部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、それらの機能を実現してもよい。受信処理部230の機能は、アプリケーションプログラムとしてのブラウザを実行して実現されてもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…放送システム、10…放送装置、20…受信装置、122…第1放送信号取得部、124…第2放送信号取得部、126…レベル調整部、128…階層多重化部、130…フレーム構成部、132…変調部、134…送信部、212…受信部、214…復調部、216…第1復号部、218…第2復号部、222…多重信号分離部、224…ノイズ推定部、230…受信処理部、232…受信制御部、234…受信状態処理部、236…コンテンツ処理部、240…出力部、250…入力部
図1
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