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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175117
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】電池パックの保護構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20231205BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20231205BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20231205BHJP
【FI】
B60K1/04 Z ZHV
H01M50/249
H01M50/244 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087403
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】池上 徹弥
【テーマコード(参考)】
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB25
3D235BB44
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE63
3D235FF05
5H040AA07
5H040AA14
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY08
5H040CC13
5H040CC18
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】車両のフロアの下側に電池パックを搭載する際に、より外部からの衝撃に対して保護効果の高い保護構造の提供を目的とする。
【解決手段】車両のフロア下に搭載される電池パックの保護構造であって、電池パックを収容したケース体と、前記ケース体の下側に配設したアンダー部材を備え、前記アンダー部材は複数のパネルからなり、隣り合うパネルが複数の嵌合凹部及び嵌合片の嵌合により連結していることを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロア下に搭載される電池パックの保護構造であって、
電池パックを収容したケース体と、前記ケース体の下側に配設したアンダー部材を備え、
前記アンダー部材は複数のパネルからなり、隣り合うパネルが複数の嵌合凹部及び嵌合片の嵌合により連結していることを特徴とする電池パックの保護構造。
【請求項2】
前記複数の嵌合凹部及び嵌合片のうち、一対の嵌合凹部及び嵌合片は一方が係止部を、他方が被係止部を有し、
前記係止部と被係止部とが相互に係止又は前記アンダー部材の下側から上方への荷重負荷時に係止し合うことを特徴とする請求項1に記載の電池パック保護構造。
【請求項3】
前記隣り合うパネルの連結部分において、前記係止部及び被係止部を有して係止可能な一対の嵌合凹部及び嵌合片を、少なくとも2組以上有していることを特徴とする請求項2に記載の電池パック構造。
【請求項4】
前記隣り合うパネルの連結部分において、一方のパネルが底部の位置が異なる複数の嵌合凹部を有し、他方のパネルが前記複数の嵌合凹部に対応して頂点の位置が異なる複数の嵌合片を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車等に電池パックを駆動源として搭載する際の保護構造に関し、特に車両のフロアの下側に電池パックを搭載する際の保護構造に係る。
【背景技術】
【0002】
二次電池からなる電池パックは、バッテリーモジュール,電池モジュール等とも称され、電気自動車やハイブリッド自動車等の駆動源として搭載されている。
電池パックを車両に搭載する構造には、車両のリア側やフロント側等、車体空間部に搭載する構造の他に、近年は車体のフロアの下側に搭載する構造も検討されている。
電池パックを車両のフロアの下側に搭載する場合、例えば路面の凹凸や走行中の飛石等により下側から上方に向けて負荷される荷重から電池を保護する必要がある。
本発明者らは特許文献1、2に開示するように、相互に隣り合う一対の凸部と凹部の嵌合(1組の嵌合)により連結した複数のパネル部材を電池パックの下方に配設した電池パックの保護構造をこれまでに開発してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-183222号公報
【特許文献2】特開2021-70386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、車両のフロアの下側に電池パックを搭載する際に、より外部からの衝撃に対して保護効果の高い保護構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電池パックの保護構造は、車両のフロア下に搭載される電池パックの保護構造であって、電池パックを収容したケース体と、前記ケース体の下側に配設したアンダー部材を備え、前記アンダー部材は複数のパネルからなり、隣り合うパネルが複数の嵌合凹部及び嵌合片の嵌合により連結していることを特徴とする。
【0006】
ここで、複数の嵌合凹部及び嵌合片の嵌合とは、1つの嵌合凹部に対する嵌合片の嵌合を1組とした場合に、少なくとも2組以上の嵌合部があることをいう。
アンダー部材を構成する複数のパネルのうち、隣り合うパネルを嵌合凹部及び嵌合片からなる嵌合部を複数形成して互いに連結することで、従来よりも連結部分の剛性を高くできる。
アンダー部材に下側外部から荷重が負荷された場合には、複数の嵌合部を介して効率よく隣接するパネルへ応力を分散できるので、アンダー部材全体としての強度も高い。
これにより、従来のように強度を確保するための溶接が不要となり、溶接の手間やコストをカットできる。
なお、電池パックを収容したケース体とは、繰り返し充電使用可能な、いわゆる二次電池及びその制御機器等を収容したものであり、その構造に特に制限はない。
【0007】
本発明において、前記複数の嵌合凹部及び嵌合片のうち、一対の嵌合凹部及び嵌合片は一方が係止部を、他方が被係止部を有し、前記係止部と被係止部とが相互に係止又は前記アンダー部材の下側から上方への荷重負荷時に係止し合うものであってもよい。
一対の係止部と被係止部とは、相互に嵌合組付けが可能な範囲で予め係止していてもよいが、少なくともアンダー部材への荷重負荷時に隣り合うパネルが互いの係止部と被係止部で係止し合えば、荷重が加わってもパネル同士の離れを防ぐことができ、連結部分の強度が高くなる。
よって、係止部と被係止部とは組付け作業が容易になるように相互に所定のクリアランスを有していてもよい。
また、前記隣り合うパネルの連結部分において、前記係止部及び被係止部を有して係止可能な一対の嵌合凹部及び嵌合片を、少なくとも2組以上有していることが好ましい。
このようにすれば、アンダー部材を構成するいずれのパネルに荷重が負荷されても、いずれかの嵌合部に設けた係止部及び被係止部が係止し合うので、より連結部分の強度を確保しやすい。
アンダー部材を構成する各パネルは、例えばアルミニウム合金の押出材により製作した中空断面形状からなるものであってもよい。
これにより、中空部の変形により外部からの入力荷重を吸収することができるので、保護強度の向上と軽量化の両立を図ることができる。
【0008】
本発明において、前記隣り合うパネルの連結部分において、一方のパネルが底部の位置が異なる複数の嵌合凹部を有し、他方のパネルが前記複数の嵌合凹部に対応して頂点の位置が異なる複数の嵌合片を有していてもよい。
一方のパネルに設けた複数の嵌合凹部が、その凹部を構成する底部までの深さが異なる場合、他方のパネルにはこの底部に対応した位置に頂点を有する嵌合片を備えていることが好ましい。
例えば、一方のパネルに設けた2つの嵌合凹部のうち、上側の第1凹部よりも下側の第2凹部の底部の位置が深い場合、第2凹部と嵌合する嵌合片が第1凹部の底部のおよそ下側に位置することで、この嵌合片からの荷重を第1凹部の底部でも受けることができ、衝撃に対して優れた強度を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電池パックの保護構造によれば、電池パックの下方に配設したアンダー部材を複数のパネルから構成するとともに、隣り合うパネルを複数の嵌合凹部及び嵌合片の嵌合により連結したので、従来よりも連結部分の剛性が高く、複数の嵌合部を介して効率よく隣接するパネルへ応力を分散できるので、外部からの衝撃に対する電池パックの保護効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る電池パックの保護構造例を示す。
図2】隣り合うパネルの連結部分を拡大図で示す。
図3図2において、一方のパネルの下側から上方に向けて荷重が負荷された際の状態例を示す。
図4図2において、他方のパネルの下側から上方に向けて荷重が負荷された際の状態例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る車両に搭載する電池パックの保護構造の例を以下、図に基づいて説明する。
図1に電池パックの車両搭載部分の断面図を示す。
電池パックの保護構造は、複数のパネルからなるアンダー部材1と、このアンダー部材の上側に取付けたケース体2を備え、ケース体2の内部に車両の駆動電源となる複数の電池パック3が収容されている。
ケース体の構造に特に制限はないが、車体のフロアラインの下側に搭載する場合には外部から水が浸入しないようになっているのが好ましい。
本実施例のケース体2は、板状の下部4に断面L字形状の側壁部5の鍔部5aを固定し、下部4に対して枠状に側壁部5を立設してある。
ケース体の下部4のうち、図1に示すように鍔部5aと対向又は鍔部5aよりも外側に位置する取付部4aをアンダー部材1に直接固定してある。
なお、アンダー部材にケース体が間接的に固定されてあってもよく、後述するアンダー部材1の中間パネル(例えば第1パネル10等)とケース体の下部4が固定し合っていてもよい。
【0012】
アンダー部材1は、両端部側に位置する一対の締結パネル30と、その間を連結した複数の中間パネルで構成され、各パネルがアルミニウム合金の押出材で製作された例である。
中間パネルの数に特に制限はなく、以下、隣り合う中間パネルを第1パネル10,第2パネル20として説明するが、隣り合うパネルの一方が締結パネルであってもよい。
第1パネル10,第2パネル20は、それぞれ上面部11,21と下面部12,22との間をつなぐ複数のリブを有し、その間に複数の中空部が形成されている。
締結パネル30は、中間パネルに連設される連設部31から上方及び外側に締結部32を有し、本実施例はこの締結部32にケース体2の下部の取付部4aを取付けるとともに、締結部32を車体フレーム6に締結部材7を用いて締結固定した例である。
【0013】
図2に、第1パネル10と第2パネル20の連結部分を拡大図で示す。
隣り合うパネルは、複数の嵌合凹部と嵌合片の嵌合により連結している。
嵌合凹部が、底部とその両側に立設した一対の側部で構成される凹部であれば、嵌合片は一対の側部の間に挿入され、一対の嵌合凹部と嵌合片とで嵌合部が形成される。
複数の嵌合部はそれぞれ、嵌合凹部の側部と嵌合片が当接可能である以外に、嵌合凹部の底部に凸状の嵌合片の頂点が当接可能であってもよい。
以下、具体的に、第1パネルと第2パネルの嵌合連結について説明する。
第1パネル10は、上面部11と下面部12との間をつなぐ端部側のリブとして第1リブ13を有する。
第1リブ13は、上面部や下面部に並列した中間部14と、この中間部と上面部11、下面部12をそれぞれ上下につなぐ第1底部15、第2底部16からなる。
本実施例は第1パネルの一方の端部に、上面部11の先端側及び中間部14を一対の側部とし、第1底部15が底部となる第1凹部17と、下面部12の先端側及び中間部14を一対の側部とし、第2底部16が底部となる第2凹部18を有し、この2つの嵌合凹部のほかに中間部14の先端側が第3凸部14aとなる1つの嵌合片を有している。
一方、第2パネル20は、上面部21と下面部22との間をつなぐ端部リブとして第2リブ23を有し、この第2リブが第1パネルの第1リブと対向している。
第2リブ23は、上面部21及び下面部22のそれぞれの先端側を上下につなぐ連結部26と、連結部26から第1パネルの第1リブ13に向かって突出した第1凸部24,第2凸部25を有する。
2つの嵌合片(第1凸部24,第2凸部25)は、各パネルの上面部11、21がおよそ水平な状態で、第1パネルの2つの嵌合凹部(第1凹部17,第2凹部18)にそれぞれ挿入され、2つの嵌合部が形成される。
第2パネルの第1パネルと隣り合う端部には、さらに第1凸部24及び第2凸部25を一対の側部とし、連結部26が底部となる第3凹部27を有するので、この第3凹部に第1パネルの第3凸部14aが嵌合する。
本実施例は嵌合部を3つ有する例であるが、隣り合うパネルが2つ以上の嵌合部を有して連結できればよい。
例えば、第1リブにさらに中間部と、中間部同士を上下につなぐ底部を設ければ、中間部と底部からなる新たな凹部を形成でき、これに対応した凸部を第2リブに設けて嵌合部を増やしてもよい。
図2では、凹部と凸部との間に隙間を設けてあるが、これは隣り合うパネル同士が水平方向に相互に嵌合しやすくなっていることを説明するためであり、組付け可能であればこの隙間は不要である。
【0014】
本実施例は、第1パネルに設けた2つの嵌合凹部のうち、第1凹部17が第2凹部18よりも底部の位置が浅い例である。
すなわち、第1底部15が第2底部16よりも第2パネル側に位置している。
これに対応して、第2パネルに設けた2つの嵌合片のうち、第1凸部24よりも第2凸部25の頂点が第1パネル側に突出した位置にある。
このように隣り合うパネルの連結部分において、一方のパネルに設けた複数の凹部の底部位置が異なるとともに、これに対応して他方のパネルに設けた複数の凸部の頂点位置が異なっていてもよい。
これにより、例えば図3に示すように第2パネルの下面部22に上方に向かって荷重が負荷された場合に、第2凸部25から第1パネルの中間部14を介して第1底部15で荷重を受けることができる。
すなわち、複数の凹部の底部の位置が異なることで、第2凸部の頂点25bと第1凹部の底部である第1底部15との間に重なり部dができる。
【0015】
アンダー部材の下側から上方に向けて荷重が負荷された際に、一対の嵌合凹部及び嵌合片が互いに左右方向に係止することで、パネルの連結部分の剛性はより高くなる。
そこで、本実施例は第1凹部と第1凸部、第2凹部と第2凸部が互いに係止可能なようにそれぞれ係止部と被係止部を設けてある。
なお、第3凹部と第3凸部が互いに係止可能な係止部と被係止部を有していてもよい。
本実施例は、例えば図3に示すように第2パネルの下面部22の先端に垂設された連結部26が、略L字形状の階段部26aを介して上面部21の先端と接続され、上面部21の先端が連結部26よりも第2パネル側(内側)に位置している。
これに対応して、第1パネルの上面部11の先端を連結部26よりも第2パネル側(外側)に突出してあるので、この上面部11の先端側を下側に張り出して第1係止部11aとし、第2パネルの第1凸部24の根元側を上方に引き上げて第1被係止部24aとした。
また、第1パネルの下面部12の先端側に第2係止部12aを、この第2係止部に係止可能なように第2パネルの第2凸部25の先端側に第2被係止部25aを設けた例であるが、係止部と被係止部を設ける位置は適宜選択できる。
一対の凹部及び凸部は所定のクリアランスからなる隙間を有して嵌合し、設けた係止部及び被係止部が荷重負荷時に係止することが好ましい。
このようにすれば、例えば各パネルの上面部11,21がおよそ水平な状態では、凹部及び凸部(係止部及び被係止部)が干渉せずにパネルの連結作業をスムーズにできる。
係止部と被係止部がそれぞれ爪状であり、パネルがやや傾くことで爪同士が引っ掛かるものであってもよい。
このように係止部と被係止部を設けることで、図3,4に示すように隣り合うパネルのいずれのパネルの下側から上方へ荷重が負荷されても、第1係止部11a及び第1被係止部24a、及び/又は、第2係止部12a及び第2被係止部25aが係止し合うので、連結部分の強度が高い。
【符号の説明】
【0016】
1 アンダー部材
2 ケース体
3 電池パック
10 第1パネル
11a 第1係止部
12a 第2係止部
17 第1凹部
18 第2凹部
20 第2パネル
24 第1凸部
24a 第1被係止部
25 第2凸部
25a 第2被係止部
図1
図2
図3
図4