(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175135
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】帯電防止用コーティング剤、帯電防止ガラス基板、及び太陽光パネル
(51)【国際特許分類】
C09D 1/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
C09D1/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087435
(22)【出願日】2022-05-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】504326402
【氏名又は名称】株式会社スケッチ
(71)【出願人】
【識別番号】522213753
【氏名又は名称】株式会社節電ECOショップ
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】島田 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】南 早也人
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038HA021
4J038HA161
4J038HA441
4J038KA06
4J038NA11
4J038NA20
4J038PB09
4J038PC03
(57)【要約】
【課題】帯電防止性、親水性、及び耐摩耗性等の耐久性に優れているとともに、可視光透過率が高いコート層をガラス製の基材表面に常温で容易に形成することが可能な帯電防止用コーティング剤、並びにこの帯電防止用コーティング剤を用いた帯電防止ガラス基板を提供する。
【解決手段】酸化スズ(SnO2)、シリカ(SiO2)、酸化タングステン(WO3)、単層カーボンナノチューブ、及び液媒体を含有する常温硬化型の帯電防止用コーティング剤である。また、ガラス製の基材と、基材の表面上に設けられた、帯電防止用コーティング剤で形成された硬化層であるコート層と、を備える帯電防止ガラス基板である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化スズ(SnO2)、シリカ(SiO2)、酸化タングステン(WO3)、単層カーボンナノチューブ、及び液媒体を含有する常温硬化型の帯電防止用コーティング剤。
【請求項2】
前記単層カーボンナノチューブの含有量が、0.008~0.07質量%である請求項1に記載の帯電防止用コーティング剤。
【請求項3】
前記単層カーボンナノチューブの直径が、3nm以下である請求項1に記載の帯電防止用コーティング剤。
【請求項4】
前記液媒体が、水溶性有機溶媒及び水を含む請求項1に記載の帯電防止用コーティング剤。
【請求項5】
ガラス製の基材の表面にコート層を形成するために用いられる請求項1~4のいずれか一項に記載の帯電防止用コーティング剤。
【請求項6】
ガラス製の基材と、
前記基材の表面上に設けられた、請求項5に記載の帯電防止用コーティング剤で形成された硬化層であるコート層と、を備える帯電防止ガラス基板。
【請求項7】
前記コート層の表面抵抗値が106Ω以下であり、
下記式(1)より算出される可視光透過率の変動割合が、-0.5%以上である請求項6に記載の帯電防止ガラス基板。
R={(T-TB)/TB}×100 ・・・(1)
R:可視光透過率の変動割合(%)
TB:基材の可視光透過率(%)
T:帯電防止ガラス基板の可視光透過率(%)
【請求項8】
太陽光パネル用の保護カバーである請求項7に記載の帯電防止ガラス基板。
【請求項9】
請求項8に記載の帯電防止ガラス基板を保護カバーとして備える太陽光パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止用コーティング剤、帯電防止ガラス基板、及び太陽光パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光パネルは、複数枚の太陽電池(セル)をパネル状に接続して必要な電力と電流が得られるように構成されている。太陽光パネルは、通常、屋外に設置されるために継続的に風雨に曝される。したがって、太陽光パネルの表面には、太陽光パネルを保護するための保護カバーが取り付けられる。
【0003】
太陽光パネルを保護するための保護カバーとしては、通常、ガラス製の基材が用いられている。そして、このようなガラス製の基材の表面に微細な凹凸を形成して親水性を高め、降雨による汚れ効果を向上させた保護カバーが用いられている。なお、発電時にはより多くの太陽光を太陽電池へと取り込む必要があるので、光透過率の高い保護カバーを用いることが必要とされる。
【0004】
関連する従来技術として、例えば、ガラス基板の表面に、酸化錫層又は酸化チタン層、及び所定表面粗さのオーバーコート層を順次設けた、親水性を向上させることで防汚性を高めた太陽電池用の透明電極付きガラスが提案されている(特許文献1)。しかし、表面に凹凸を設けたガラス製の基材の場合、砂漠等の降水量の少ない地域に設置される太陽光パネルに用いられる場合には、凹凸がある分、砂等の汚れがかえって溜まりやすいとともに、降雨による洗浄も期待しにくいといった課題があった。さらに、特許文献1で提案された透明電極付きガラスを製造するには特別の工場設備が必要とされるため、汎用性に欠けるといった課題もあった。
【0005】
これに対して、酸化スズ(SnO2)及びシリカ(SiO2)を配合した塗布液が提案されている(特許文献2及び3)。特許文献2及び3で提案された塗布液によれば、ガラス製の基材に直接塗布した後に常温で硬化させることで、帯電防止性等の特性を有する塗膜を形成することが可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-007363号公報
【特許文献2】特開2013-080067号公報
【特許文献3】特開2013-130593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2及び3で提案された塗布液によれば、特殊な設備等を必要とせず、設置済みの太陽光パネルの保護カバーに対しても帯電防止性等の特性を有する塗膜を形成することが可能であった。しかし、形成される塗膜の帯電防止性、親水性、及び耐摩耗性等の耐久性等の特性については必ずしも十分であるとはいえず、さらなる改良の余地があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、帯電防止性、親水性、及び耐摩耗性等の耐久性に優れているとともに、可視光透過率が高いコート層をガラス製の基材表面に常温で容易に形成することが可能な帯電防止用コーティング剤を提供することにある。
【0009】
また、本発明の課題とするところは、帯電防止性、親水性、及び耐摩耗性等の耐久性に優れているとともに、可視光透過率が高いコート層を備えた帯電防止ガラス基板、並びにこの帯電防止ガラス基板を用いた太陽光パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示す帯電防止用コーティング剤が提供される。
[1]酸化スズ(SnO2)、シリカ(SiO2)、酸化タングステン(WO3)、単層カーボンナノチューブ、及び液媒体を含有する常温硬化型の帯電防止用コーティング剤。
[2]前記単層カーボンナノチューブの含有量が、0.008~0.07質量%である前記[1]に記載の帯電防止用コーティング剤。
[3]前記単層カーボンナノチューブの直径が、3nm以下である前記[1]又は[2]に記載の帯電防止用コーティング剤。
[4]前記液媒体が、水溶性有機溶媒及び水を含む前記[1]~[3]のいずれかに記載の帯電防止用コーティング剤。
[5]ガラス製の基材の表面にコート層を形成するために用いられる前記[1]~[4]のいずれかに記載の帯電防止用コーティング剤。
【0011】
また、本発明によれば、以下に示す帯電防止ガラス基板が提供される。
[6]ガラス製の基材と、前記基材の表面上に設けられた、前記[1]~[5]のいずれかに記載の帯電防止用コーティング剤で形成された硬化層であるコート層と、を備える帯電防止ガラス基板。
[7]前記コート層の表面抵抗値が106Ω以下であり、下記式(1)より算出される可視光透過率の変動割合が、-0.5%以上である前記[6]に記載の帯電防止ガラス基板。
R={(T-TB)/TB}×100 ・・・(1)
R:可視光透過率の変動割合(%)
TB:基材の可視光透過率(%)
T:帯電防止ガラス基板の可視光透過率(%)
[8]太陽光パネル用の保護カバーである前記[6]又は[7]に記載の帯電防止ガラス基板。
【0012】
さらに、本発明によれば、以下に示す太陽光パネルが提供される。
[9]前記[8]に記載の帯電防止ガラス基板を保護カバーとして備える太陽光パネル。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、帯電防止性、親水性、及び耐摩耗性等の耐久性に優れているとともに、可視光透過率が高いコート層をガラス製の基材表面に常温で容易に形成することが可能な帯電防止用コーティング剤を提供することができる。
【0014】
また、本発明によれば、帯電防止性、親水性、及び耐摩耗性等の耐久性に優れているとともに、可視光透過率が高いコート層を備えた帯電防止ガラス基板、並びにこの帯電防止ガラス基板を用いた太陽光パネルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<帯電防止用コーティング剤>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本明細書における各種物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)、湿度50%RHにおける値である。
【0016】
本発明の帯電防止用コーティング剤(以下、単に「コーティング剤」とも記す)の一実施形態は、常温硬化型のコーティング剤であり、酸化スズ(SnO2)、シリカ(SiO2)、酸化タングステン(WO3)、単層カーボンナノチューブ、及び液媒体を含有する。以下、本実施形態のコーティング剤の詳細について説明する。
【0017】
酸化スズ(SnO2)は、帯電防止材料として主に機能する成分である。シリカ(SiO2)は、低屈折材料、親水性材料、及びバインダーとして主に機能する成分である。酸化タングステン(WO3)は、光触媒として主に機能する成分である。単層カーボンナノチューブ(以下、「SWCNT」とも記す)は、帯電防止材料として主に機能する成分である。また、SWCNTは熱伝導率が高いことから、形成されるコート層の熱伝導性を向上させうる成分であり、解氷促進効果も期待される。
【0018】
一般的なガラス用のコート剤にSWCNTを含有させると、このコート剤でコーティングしたガラス製の基材の可視光透過率は顕著に低下する傾向にある。これに対して、本実施形態のコーティング剤は、SWCNTとともに酸化タングステン(WO3)を含有する。SWCNTとともに酸化タングステン(WO3)を含有させることで、酸化タングステン(WO3)を含有させずにSWCNTのみを含有させた場合と異なり、コーティングしたガラス製の基材の可視光透過率が実質的に低下せず、好ましくは向上させることができる。
【0019】
前述の通り、酸化スズ(SnO2)は帯電防止材料としても機能する成分であることから、酸化スズ(SnO2)を含有するがSWCNTを含有しないコート剤であっても、ある程度の導電性が発揮され、帯電防止性を示すコート層を形成することができる。但し、酸化スズ(SnO2)による導電性は湿度に依存し、低湿度の環境下(例えば、砂漠等)では十分な導電性が発揮されず、帯電防止性が不十分になる。これに対して、本実施形態のコーティング剤は、SWCNTを用いることで導電性が発揮され、帯電防止性を示すコート層を形成しうるものである。SWCNTによる導電性は、SWCNTどうしが絡みつくことで形成される導電パスによって発現すると考えられ、湿度に依存しない。このため、SWCNTを含有する本実施形態のコート剤によれば、湿度の高低に影響されず、砂漠等の低湿度の環境下であっても十分な導電性が発揮され、良好な帯電防止性を示すコート層を形成することができる。
【0020】
(酸化スズ(SnO2))
酸化スズは、通常、分散した微粒子の状態でコーティング剤に含有される。酸化スズの平均粒子径は、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径が小さい酸化スズの微粒子を用いることで、可視光透過率に及ぶ影響が小さくなり、可視光透過率がより高いガラス基板を製造しうるコーティング剤とすることができる。なお、本明細書における「平均粒子径」は、体積基準の粒度分布における50%粒子径(メジアン径(D50))を意味する。
【0021】
コーティング剤中の酸化スズの含有量は、コーティング剤の用途等に応じて適宜設定すればよい。コーティング剤中の酸化スズの含有量は、通常、0.05~0.3質量%であり、好ましくは0.1~0.2質量%である。
【0022】
(シリカ(SiO2))
低屈折材料は、表面反射の抑制によりガラスの可視光透過率を高める材料である。低屈折材料として用いるシリカは、通常、分散した微粒子の状態でコーティング剤に含有される。シリカの平均粒子径は、10nm以下であることが好ましい。平均粒子径10nm以下のシリカの微粒子を用いることで、可視光透過率がより高いガラス基板を製造しうるコーティング剤とすることができる。
【0023】
親水性材料として用いるシリカは、通常、分散した微粒子の状態でコーティング剤に含有される。シリカの粒径が小さいほど、形成されるコート層の水との接触角が小さくなり、親水性が高くなる。このため、低屈折材料として用いる前述のシリカに比して、より粒径の小さいシリカをさらに含有することが好ましい。具体的には、本実施形態のコーティング剤は、平均粒子径2nm以下のアモルファスシリカをさらに含有することが好ましい。
【0024】
コーティング剤中のシリカの含有量(低屈折材料として用いるシリカとアモルファスシリカの合計含有量)は、コーティング剤の用途等に応じて適宜設定すればよい。コーティング剤中のシリカの含有量は、通常、0.5~3質量%であり、好ましくは1~2質量%である。
【0025】
(酸化タングステン(WO3))
酸化タングステンは、通常、分散した微粒子の状態でコーティング剤に含有される。酸化タングステンの平均粒子径は、50nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがさらに好ましい。
【0026】
コーティング剤中の酸化タングステンの含有量は、コーティング剤の用途等に応じて適宜設定すればよい。コーティング剤中の酸化タングステンの含有量は、通常、0.1~0.5質量%であり、好ましくは0.2~0.3質量%である。
【0027】
(単層カーボンナノチューブ)
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、分散状態でコーティング剤に含有される。SWCNTの直径は、通常、3nm以下、好ましくは1~2nmである。
【0028】
コーティング剤中のSWCNTの含有量は、0.008~0.07質量%であることが好ましく、0.015~0.045質量%であることがさらに好ましい。SWCNTの含有量を上記の範囲内とすることで、表面抵抗値がより低く、帯電防止性にさらに優れているとともに、可視光透過率がコーティング前と同等以上である帯電防止ガラス基板を製造しうるコーティング剤とすることができる。
【0029】
(液媒体)
液媒体としては、揮発性の水溶性有機溶媒や水を用いることができる。これらの液媒体を用いることで、常温条件で容易に硬化させることが可能な常温硬化型のコーティング剤とすることができる。揮発性の水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類を用いることができる。
【0030】
(コーティング剤の調製)
本実施形態のコーティング剤は、例えば、酸化スズ、シリカ、酸化タングステン、及びSWCNT等の各成分、又はこれらの各成分の水や水溶性有機溶媒等の分散体と、液媒体とを混合することで容易に調製することができる。
【0031】
<帯電防止ガラス基板及び太陽光パネル>
上述のコーティング剤を用いることで、例えば、太陽光パネル用の保護カバーとして好適な帯電防止ガラス基板を製造することができる。すなわち、本発明の帯電防止ガラス基板の一実施形態は、ガラス製の基材と、この基材の表面上に設けられた、前述のコーティング剤で形成された硬化層であるコート層とを備える。そして、本発明の太陽光パネルの一実施形態は、この帯電防止ガラス基板を保護カバーとして備えるものである。
【0032】
ガラス製の基材の表面上に設けられるコート層は、前述のコーティング剤で形成された硬化層であるため、帯電防止性、親水性、及び耐摩耗性等の耐久性に優れているとともに、可視光透過率が高い。例えば、コート層の表面抵抗値は、好ましくは106Ω以下、さらに好ましくは105Ω以下、特に好ましくは104Ω以下である。そして、下記式(1)より算出される帯電防止ガラス基板の可視光透過率の変動割合は、好ましくは-0.5%以上、さらに好ましくは-0.2%以上、特に好ましくは0.0%以上である。なお、コート層の厚さは、通常、100~200nm程度である。このため、本実施形態の帯電防止ガラス基板は、太陽光パネル用の保護カバーとして好適である。
R={(T-TB)/TB}×100 ・・・(1)
R:可視光透過率の変動割合(%)
TB:基材の可視光透過率(%)
T:帯電防止ガラス基板の可視光透過率(%)
【0033】
コート層を形成するために用いる本実施形態のコーティング剤は、常温硬化型のコーティング剤である。このため、刷毛塗りやスプレー等の所望とする方法によってガラス製の基材の表面にコーティング剤を塗布した後、常温(25℃)条件で乾燥することで硬化層であるコート層が形成され、目的とする帯電防止ガラス基板を得ることができる。このように、前述のコーティング剤を用いれば、特殊な設備等を必要とせず、塗布及び常温乾燥するだけで、帯電防止性をはじめとする優れた特性を示すコート層を形成することができるので、既設の太陽光パネルに設置されるガラス製の保護カバーの表面に対しても容易に施工することができる。
【0034】
本実施形態の太陽光パネルの保護パネルとして用いられる帯電防止ガラス基板は、表面抵抗値が低く、帯電防止性に優れているため、土埃等の汚れが付着しにくく、仮に付着したとしても容易に落ちやすい。また、帯電防止ガラス基板の表面は親水性が高いため、付着した汚れは雨水等によっても容易に洗い流される。さらに、帯電防止性の向上に寄与するSWCNTを含有するコーティング剤で形成されたコート層を備えながらも、可視光透過率はむしろ向上する傾向にあることから、太陽電池(セル)の発電効率を妨げにくい。そして、熱伝導率の高いSWCNTを含有するコーティング剤で形成されたコート層を備えるため、積雪が予想される寒冷地等に設置されたとしても、解氷促進効果の発揮が期待される。
【実施例0035】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0036】
<材料の用意>
以下に示す材料を用意した。
・酸化スズ(SnO2)の水分散液(スケッチ社製、SnO2の含有量:4%、SnO2の平均粒子径:2nm)
・シリカ(SiO2)のメタノール分散液(スケッチ社製、SiO2の含有量:20%、SnO2の平均粒子径:10nm以下)
・アモルファスシリカ(SiO2)の水分散液(スケッチ社製、SiO2の含有量:1.6%、SnO2の平均粒子径:2nm以下)
・酸化タングステン(WO3)の水分散液(WO3の含有量:5%、WO3の平均粒子径:40nm)
・単層カーボンナノチューブ(SWCNT)(直径:1~2nm)
【0037】
<コーティング剤の調製>
(実施例1~5、比較例1~3)
酸化スズの水分散液、シリカのメタノール分散液、アモルファスシリカの水分散液、酸化タングステンの水分散液、SWCNT、及びメタノールを表1示す組成(%)となるように混合して、各コーティング剤を調製した。
【0038】
<帯電防止ガラス基板の製造>
調製した各コーティング剤を厚さ3mmのフロートガラス(ノーマルガラス、厚さ:3mm)に10mL/m2となるように塗布した後、常温(25℃)で30分間放置した。これにより、塗布した各コーティング剤を硬化させてコート層を形成し、帯電防止ガラス基板を得た。形成したコート層の厚さは、いずれも150~200nmの範囲内であった。なお、コーティング剤を塗布しない(コート層を形成しない)フロートガラスを参考例1として用意した。
【0039】
<評価>
(表面抵抗値)
表面抵抗計(商品名「デジタル表面抵抗テスターTR-SR100」、ペパレス製作所社製)を使用して、製造した帯電防止ガラス基板のコート層表面の表面抵抗値を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
(可視光透過率)
透過率測定器(商品名「光学特性機LS-183」、Shenzhen Linshang Technology社製)を使用して、製造した帯電防止ガラス基板の可視光透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
(耐摩耗性)
製造した帯電防止ガラス基板のコート層表面を不織布で20往復摩擦する乾式摩擦を行った。接触角計(商品名「接触角計B100」、あすみ技研社製)を使用して、乾式摩擦前後のコート層表面の水との接触角をそれぞれ測定し、以下に示す評価基準にしたがってコート層の耐摩耗性を評価した。結果を表1に示す。
A:接触角の変化が5°以下であった。
B:接触角の変化が5°を超えて10°以下であった。
C:接触角の変化が10°を超えていた。
【0042】