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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175141
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ダンパー装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20231205BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/01 451
B41J2/175 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087443
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小栗 崇嘉
(72)【発明者】
【氏名】伊田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】服部 理沙
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA26
2C056EB50
2C056EB52
2C056EC19
2C056EC20
2C056EC64
2C056FA10
2C056KB35
2C056KB37
2C056KC20
(57)【要約】
【課題】従来の技術に比べてより正確に、ダンパー装置に貯留されている液体の圧力を検知することができるようにしたダンパー装置を提供する。
【解決手段】液体を一時的に貯留する貯留室と、上記貯留室内の圧力の変化に応じて変位する変位部材と、上記変位部材の変位を検知する検知部とを有し、上記変位部材と上記検知部とを同一の取り付けユニット上に取り付けるようにした。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を一時的に貯留する貯留室と、
前記貯留室内の圧力の変化に応じて変位する変位部材と、
前記変位部材の変位を検知する検知部と
を有し、
前記変位部材と前記検知部とを同一の取り付けユニット上に取り付けた
ことを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダンパー装置において、
前記変位部材は、所定の間隔を開けて複数のスリットを形成したエンコーダスケールと遮蔽部とを備え、
前記検知部は、前記エンコーダスケールと、前記エンコーダスケールを読み取るエンコーダセンサーとを有する
ことを特徴とするダンパー装置。
【請求項3】
請求項2に記載のダンパー装置において、
前記エンコーダスケールと遮蔽部とは、前記変位部材の先端部に形成された
ことを特徴とするダンパー装置。
【請求項4】
請求項1、2または3のいずれか1項に記載のダンパー装置において、
前記貯留室は、
開口部を備えたケース本体と、
前記開口部を覆うように前記ケース本体配置したダンパー膜と、
前記ダンパー膜の上から前記ケース本体の前記開口部分に配置された
枠状部材
とを有する
ことを特徴とするダンパー装置。
【請求項5】
請求項4に記載のダンパー装置において、
前記枠状部材は、前記ケース本体の前記開口部分の外縁部に圧入された
ことを特徴とするダンパー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパー装置に関する。さらに詳細には、本発明は、液体を供給する液体供給部と液体を吐出する液体吐出部とをつなぐ液体供給路に配置されたダンパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、業務用などに用いる大型のインクジェットプリンタにおいては、大容量のインク(液体)を貯留したインクカートリッジ(液体供給部)を、インク吐出ヘッド(液体吐出部)が搭載されたキャリッジから離して配置する構成、所謂、オフキャリッジ方式が採用されている。
【0003】
このオフキャリッジ方式のインクジェットプリンタでは、キャリッジの移動によって大きな動圧変動が生じ、その動圧変動がインク吐出ヘッドにかかると、インクの吐出が安定しなかったり、インクの液滴がインク吐出ヘッドから不意に落下して印刷物を汚したりすることがあるという問題点があった。
【0004】
こうした問題点を解決するために、従来より、インク吐出ヘッドにおけるインクの圧力変動を小さく抑える技術が検討されており、インク吐出ヘッドにおけるインクの圧力変動を小さく抑えるための構成として、キャリッジにおいて、インク流路(液体供給路)におけるインク吐出ヘッドの前段に、インク(液体)を一時的に貯留するダンパー装置を配設し、このダンパー装置に貯留されている液体の圧力が常に所定の値となるように管理することにより、インク吐出ヘッドにおけるインクの圧力変動を小さくするようにした手法が知られている。
【0005】
ここで、特開2011-207206号公報には、サブタンク(上記したダンパー装置に相当する構成である。)を備えた従来の画像形成装置(上記したインクジェットプリンタに相当する装置である。)が開示されている。
【0006】
この特開2011-207206号公報に開示された従来の画像形成装置においては、キャリッジの主走査方向に沿って装置本体にエンコーダスケールを配設するとともに、キャリッジにエンコーダスケールを読み取るエンコーダセンサーを配設し、エンコーダセンサーによりエンコーダスケールを読み取ることによりキャリッジの移動量を検出するようにして、当該検出した移動量に基づきサブタンクに貯留されている液体の変位量を検知するようにしたものであった。
【0007】
従って、特開2011-207206号公報に開示された従来の画像形成装置によれば、エンコーダスケールとエンコーダセンサーとの組み合わせという簡便な構成により、サブタンクに貯留されている液体の変位量、即ち、ダンパー装置に貯留されている液体の圧力を管理することができるものであった。
【0008】
しかしながら、特開2011-207206号公報に開示された従来の画像形成装置によれば、エンコーダスケールが装置本体に配設される一方で、エンコーダセンサーが装置本体に対して相対的に移動するキャリッジに配設されているとともに、キャリッジの移動量に基づきサブタンク(ダンパー装置)に貯留されている液体の変位量、即ち、サブタンク(ダンパー装置)に貯留されている液体の圧力を間接的に検知している。
【0009】
このため、上記した従来の技術においては、エンコーダスケールやエンコーダセンサーの取付位置のばらつきの影響を受けたり、サブタンク(ダンパー装置)に貯留されている液体の変位量、即ち、サブタンク(ダンパー装置)に貯留されている液体の圧力を直接的に検知していないことの影響を受けることにより、サブタンク(ダンパー装置)に貯留されている液体の変位量、即ち、サブタンク(ダンパー装置)に貯留されている液体の圧力を正確に検知することができない恐れがあるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011-207206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来の技術の有する上記したような種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の技術に比べてより正確に、ダンパー装置に貯留されている液体の圧力を検知することができるようにしたダンパー装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明によるダンパー装置は、液体を貯留する貯留室と当該貯留室に貯留された液体の圧力の変動に応じて変位する変位部材とを有するダンパー本体部と、ダンパー本体部の変位部材の変位を検知する検知部とを同一の取り付けユニット上に配設したものである。
【0013】
従って、本発明によるダンパー装置によれば、貯留室に貯留された液体の圧力の変動に応じて変位する変位部材と当該変位部材の変位を検知する検知部とが同一の取り付けユニット上に配設されているため、変位部材と検知部とを取り付ける際における取付位置のばらつきが生じ難くなり、また、貯留室に貯留されている液体の圧力変動を直接的に検知しているので、従来の技術に比べてより正確に、ダンパー装置に貯留されている液体の圧力を検知することができるようになる。
【0014】
即ち、本発明によるダンパー装置は、液体を一時的に貯留する貯留室と、上記貯留室内の圧力の変化に応じて変位する変位部材と、上記変位部材の変位を検知する検知部とを有し、上記変位部材と上記検知部とを同一の取り付けユニット上に取り付けるようにしたものである。
【0015】
従って、本発明によるダンパー装置によれば、変位部材と検知部とが、同一の取り付けユニットの上にあるため、変位部材と検知部とを固定する際の取り付け位置のばらつきを抑制することができる。
【0016】
また、本発明によるダンパー装置は、上記した本発明によるダンパー装置において、上記変位部材は、所定の間隔を開けて複数のスリットを形成したエンコーダスケールと遮蔽部とを備え、上記検知部は、上記エンコーダスケールと、上記エンコーダスケールを読み取るエンコーダセンサーとを有するとを有するようにしたものである。
【0017】
また、本発明によるダンパー装置は、上記した本発明によるダンパー装置において、上記エンコーダスケールと遮蔽部とは、上記変位部材の先端部に形成されるようにしたものである。
【0018】
また、本発明によるダンパー装置は、上記した本発明によるダンパー装置において、上記貯留室は、開口部を備えたケース本体と、上記開口部を覆うように上記ケース本体配置したダンパー膜と、上記ダンパー膜の上から上記ケース本体の上記開口部分に配置された
枠状部材とを有するようにしたものである。
【0019】
従って、本発明によるダンパー装置によれば、貯留室の外側に枠状部材を配置することにより、液体、温湿度などの外的要因によって生じる部材変形によるダンパー膜の変形を抑制することができ、このため変位部材を変位させる圧力のばらつきを抑制することができる。
【0020】
また、本発明によるダンパー装置は、上記した本発明によるダンパー装置において、上記枠状部材は、上記ケース本体の上記開口部分の外縁部に圧入されたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上説明したように構成されているので、従来の技術に比べてより正確に、ダンパー装置に貯留されている液体の圧力を検知することができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施の形態の一例によるダンパー装置を備えたインクジェットプリンタの構成を模式的に示す概略構成斜視説明図である。
図2図2は、本発明の実施の形態の一例によるダンパー装置におけるダンパー本体部の構成を模式的に示す概略構成斜視説明図である。
図3図3は、図2に示すダンパー本体部の分解斜視説明図である。
図4図4(a)(b)(c)は、本発明の実施の形態の一例によるダンパー装置の一部拡大斜視説明図である。なお、図4(a)は、第1変位部材および第2変位部材とエンコーダセンサーとの位置関係を示す。図4(b)は、第1変位部材の先端部を示す。図4(c)は、第2変位部材の先端部を示す。
図5図5は、本発明の実施の形態の一例によるダンパー装置における初期設定の処理を示すフローチャートである。
図6図6(a)(b)は、本発明の実施の形態の一例によるダンパー装置における検知動作の説明図である。
図7図7は、本発明の実施の形態の他の例によるダンパー装置におけるダンパー本体部の構成を模式的に示す概略構成斜視説明図である。
図8図8は、図7に示すダンパー本体部の分解斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるダンパー装置の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0024】
なお、以下の説明においては、同一または相当する構成については、それぞれ同一の符号を用いて示すこととして、その詳細な説明については適宜に省略する。
【0025】
(I) 本発明の実施の形態の一例によるダンパー装置の構成の説明
【0026】
図1には、本発明の実施の形態の一例によるダンパー装置を備えたインクジェットプリンタの構成を模式的に示す概略構成斜視説明図があらわされている。
【0027】
図2には、本発明の実施の形態の一例によるダンパー装置におけるダンパー本体部の構成を模式的に示す概略構成斜視説明図があらわされている。
【0028】
図3には、図2に示すダンパー本体部の分解斜視説明図があらわされている。
【0029】
図4(a)(b)(c)には、本発明の実施の形態の一例によるダンパー装置の一部拡大斜視説明図があらわされている。なお、図4(a)は、第1変位部材および第2変位部材とエンコーダセンサーとの位置関係を示す。図4(b)は、第1変位部材の先端部を示す。図4(c)は、第2変位部材の先端部を示す。
【0030】
本発明の実施の形態の一例によるダンパー装置100は、大容量のインクを貯留したインクカートリッジ202とインク吐出ヘッド30とを連結するインク流路(図示せず。)におけるインク吐出ヘッド30の前段の位置において、インクジェットプリンタ10のキャリッジ26に配設されている。
【0031】
ここで、インクジェットプリンタ10は、後述する側方ユニット18内に配設されたマイクロコンピューター200により全体の動作を制御されており、基台部材12に支持されるとともに主走査方向に延長して配設された固定系のベース部材14と、ベース部材14の左右両端に配設された側方部材16L、16Rと、側方部材16R側に配設された側方ユニット18と、左右2つの側方部材16L、16Rを連結する中央壁20と、中央壁20の壁面に主走査方向に延長して配設されたガイドレール22と、中央壁20の壁面に平行して主走査方向に移動自在に配設されたベルト24と、ベルト24に固定的に配設されるとともにガイドレール22に摺動自在に装着されたキャリッジ26と、側方ユニット18内に配設されたインクカートリッジ202と、ベース部材14上に位置する媒体たる記録紙28と対向するようにしてキャリッジ26に配設されたインク吐出ヘッド30と、インクカートリッジ202とインク吐出ヘッド30とを連結するインク流路(図示せず。)におけるインク吐出ヘッド30の前段の位置においてキャリッジ26に配設されたダンパー装置100とを有して構成されている。
【0032】
こうしたインクジェットプリンタ10の全体の動作は、側方部材16R側に配設された操作パネル70に設けられた各種の操作子72の操作などに基づき、側方ユニット18内に搭載されたマイクロコンピューター200によって制御される。
【0033】
なお、符号74は、操作パネルに設けられた表示装置(ディスプレイ)であり、インクジェットプリンタ10の動作状態や使用者への作業指示を表示する。
【0034】
また、インクジェットプリンタ10においては、上記したように媒体として記録紙28を用いるものとする。この記録紙28は、給紙装置(図示せず。)によってベース部材14上に供給され、幅方向たる主走査方向において所定の長さを有するとともに、主走査方向と直交する方向、即ち、副走査方向(なお、本明細書ならびに特許請求の範囲においては、「主走査方向と直交する方向」を「副走査方向」と適宜に称することとする。)に搬送されるように構成されている。
【0035】
また、側方ユニット18内には、印刷が終了したときなどの所定のタイミングでキャリッジ26が位置する待機位置Pが設けられている。
【0036】
即ち、キャリッジ26が待機位置Pに位置するときには、キャリッジ26内に設けられたインク吐出ヘッド30も待機位置Pに位置することになる。
【0037】
そして、この待機位置Pの下方側には、キャップ装置32が設けられている。
【0038】
こうしたインクジェットプリンタ10においては、マイクロコンピューター200の制御により、キャリッジ26を主走査方向に移動するとともに、記録紙28を副走査方向に移動しながら、インク吐出ヘッド30から記録紙28に向けてインクを吐出することにより印刷を行う。
【0039】
ここで、上記したダンパー装置100は、ダンパー本体部102と、ダンパー本体部102に配設された第1変位部材114ならびに第2変位部材116の変位を検知する検知部としてのエンコーダセンサー104とを有して構成されている。
【0040】
ダンパー本体部102は、中央壁106aにそれぞれ対向する左右両面(図2ならびに図3における左方側の面と右方側の面とである。)が開口した中空構造のケース本体106と、当該左右両面の開口部分をそれぞれ覆うようにケース本体106の外壁面に取り付けられたダンパー膜108(左方側の面の開口部分を覆うダンパー膜については、斜視図における視線方向の関係上、図2乃至図3には図示されていない。)とを備えている。
【0041】
ケース本体106は、例えば、樹脂により形成されており、ケース本体106と当該ケース本体の106の左右両面の開口部分をそれぞれ覆うダンパー膜108とに囲まれた領域により、インクカートリッジ202に貯留されたインクを貯留するインク貯留室110が形成される。
【0042】
従って、ダンパー本体部102においては、中央壁106aを挟んで2つのインク貯留室110が形成されている。
【0043】
以下、ダンパー本体部102を構成する各部材について詳細に説明するが、こうした各部材は中央壁106aを対称線としてそれぞれ対称に配置されている。
【0044】
ダンパー膜108は、ケース本体106の左右両面の開口部分をそれぞれ覆うようにケース本体106に配置した後に、ケース本体106の開口部分よりも若干大径に形成された開口部分を有する円環形状の枠状部材112を、ダンパー膜108の上からケース本体106の開口部分の外縁部に圧入することにより、ケース本体106に対して配設される。
このケース本体106に対するダンパー膜108の取り付けの際には、ダンパー膜108がインク貯留室110の内側および外側にそれぞれ撓むことができる程度の張力で配設されるようにする。
【0045】
この枠状部材112を設けることにより、ケース本体106の開口部の形状を強固に維持することができるようになり、ケース本体106の開口部が変形するというような外的要因によって、ダンパー膜108が変形することが抑止される。
【0046】
このため、ケース本体106の開口部が変形するなどの外的要因による第1変位部材114と第2変位部材116とによるダンパー膜108の撓み変形の検知(「第1変位部材114と第2変位部材116とによるダンパー膜108の撓み変形の検知」については、後述する。)のばらつきを抑制することができる。
【0047】
ここで、上記したダンパー膜108は、感圧膜の一例であり、インク貯留室110内の圧力に応じて撓み変形可能なように構成されている。
【0048】
ダンパー膜108は、典型的には可撓性を有する樹脂製のフィルムである。ダンパー膜108は、単層構造であってもよいし、異なる材質のフィルムが積層され一体化された多層構造であってもよい。
【0049】
また、ダンパー膜108のインク貯留室110側の面には、例えば、耐インク腐食性の向上を目的として、コーティングが施されていてもよい。
【0050】
右方側の面の開口部分を覆うダンパー膜108のインク貯留室110と反対側の面には、第1変位部材114が配置されている。同様に、左方側の面の開口部分を覆うダンパー膜のインク貯留室110と反対側の面には、第2変位部材116が配置されている。
【0051】
ケース本体106の壁面(図2乃至図3における上方側の面)には、インクカートリッジ202に貯留されたインクをインク貯留室110へ流入させるインク流入口118が形成されている。
【0052】
一方、ケース本体106の他の壁面(図2乃至図3における下方側の面)には、インク貯留室110内のインクをインク吐出ヘッド30へ流出させるための吐出用インク流出口(図示せず。)が形成されている。
【0053】
インク貯留室110は略円筒形状に形成されており、インク貯留室110には所定量のインクが一時的に貯留される。
【0054】
また、ダンパー膜108の略中央部位には、受圧板120(後に詳述する。)が配設されている。
【0055】
インク貯留室110の内部において、ケース本体106のダンパー膜108と対向する中央壁106aの面には突起部106bが形成されており、テーパーバネ(図示せず。)の一方の端部たる底部(図示せず。)が位置決めされて配置されている。一方、テーパーバネ(図示せず。)の他方の端部たる頂部(図示せず。)は、受圧板120に接続されており、これによりテーパーバネは受圧板120を介してダンパー膜108と連結されている。
【0056】
これにより、テーパーバネは、ダンパー膜108をインク貯留室110の外側に押圧する弾性部材として機能する。
【0057】
テーパーバネは、圧縮された状態に維持されている。これによって、ダンパー膜108はインク貯留室110の外側に向けて押圧され、撓んだ状態となっている。インク貯留室110に貯留されたインクが所定量まで減少して、インク貯留室110内がある程度減圧されると、ダンパー膜108はテーパーバネのばね力(弾性力)に抗してインク貯留室110の内側に撓む。
テーパーバネは、圧縮されていないときには円錐台形状を備えており、当該円錐台形状の高さ方向に徐々に内径が変化するように構成されている。テーパーバネにおいて、円錐台形状の外径が最も大きい側の端部が底部であり、円錐台形状の外径が最も小さい側の端部が頂部である。
【0058】
テーパーバネは圧縮されるにつれて上記高さ方向に縮んでいき、全圧縮された時に略平坦の板状となる。
【0059】
こうしたテーパーバネは、ケース本体106の中央壁106aからダンパー膜108の方に近づくにつれて内径が小さくなるように配置されている。
【0060】
なお、テーパーバネの材質は特に限定されない。テーパーバネには、例えば、耐インク腐食性の向上を目的として、コーティングが施されていてもよい。
【0061】
上記したように、インク貯留室110の内部において、ダンパー膜108とテーパーバネとの間には受圧板120が配置されている。
【0062】
受圧板120は、インク貯留室110の外側に向かってダンパー膜108を均質的に押圧するように、ダンパー膜108の略中央部位に配置されている。
【0063】
受圧板120は、典型的には円板形状を備えており、ダンパー膜108よりも硬質な材料で構成されるとよい。
【0064】
また、受圧板120は、ダンパー膜108の撓み変形を阻害しないように、比較的軽量であるとよい。受圧板120は、例えば、ポリプロピレン系樹脂により形成することができる。
インク貯留室110の外側には、第1変位部材114と第2変位部材116とが配置されている。第1変位部材114と第2変位部材116とは、ダンパー膜110の撓み変形の度合い(位置変化)からインク貯留量を検知するインク貯留量検知装置である。
【0065】
第1変位部材114と第2変位部材116とは、2つの係合部122a、122bによってケース本体106の壁面にそれぞれ係合されている。
【0066】
また、第1変位部材114は受圧板120側に突出形成された突起部(図示せず。)を備えており、一方、受圧板120は凹部120aを備えていて、第1変位部材114の上記した突起部を凹部120a内に配置することにより、第1変位部材114は受圧板120に係合されている。
【0067】
従って、第1変位部材114は、ダンパー膜108の撓み変形に応じて、2つの係合部122a、122bを支点として矢印A方向と矢印B方向とに揺動する。
【0068】
同様に、第2変位部材116は受圧板120側に突出形成された突起部116cを備えており、一方、受圧板120に第2変位部材116の上記した突起部116aを位置させることにより、第2変位部材116は受圧板120と連動するように配置される。
【0069】
従って、第2変位部材116は、ダンパー膜108の撓み変形に応じて、2つの係合部122a、122bを支点として矢印C方向と矢印D方向とに揺動する。
【0070】
例えば、インク貯留室110に貯留されているインクが少なくなると、ダンパー膜108がインク貯留室16の内側に撓む。このダンパー膜108の撓み変形に伴って、第1変位部材114は、2つの係合部122a、122bを支点として矢印A方向に揺動し、一方、第2変位部材116は、2つの係合部122a、122bを支点として矢印C方向に揺動する。
【0071】
逆に、インク貯留室110にインクが供給されてインク貯留量が増えると、ダンパー膜108がインク貯留室110の外側に撓む。このダンパー膜108の撓み変形に伴って、第1変位部材114は、2つの係合部122a、122bを支点として矢印B方向に揺動し、一方、第2変位部材116は、2つの係合部122a、122bを支点として矢印D方向に揺動する。
【0072】
従って、ダンパー装置100においては、第1変位部材114と第2変位部材116が揺動する際の変位量の情報に基づいて、インク貯留室110に貯留されているインクの圧力を直接的に検知することができる。
【0073】
ここで、第1変位部材114と第2変位部材116が揺動する際の変位量は、エンコーダセンサー104により検知され、エンコーダセンサー104における検出信号がマイクロコンピューター200へ送られる。マイクロコンピューター200はエンコーダセンサー104の検出信号に応じて、インクカートリッジ202に貯留されたインクをインク貯留室110へ送液する送液ポンプ(図示せず。)を駆動または停止する。
【0074】
即ち、上記構成によれば、ダンパー装置10におけるインク貯留室110内のインクの圧力、即ち、インク貯留量に応じて送液ポンプを作動させることができる。これにより、インク貯留室110内に予め設定された量のインクを維持することができ、インク貯留室110内のインクの圧力を予め設定された値に管理することができる。
【0075】
第1変位部材114の先端部114aは、第2変位部材116側に向けて屈曲形成されている。
【0076】
第1変位部材114が矢印A方向または矢印B方向に揺動することにより、先端部114aが矢印A方向または矢印B方向に移動する。
【0077】
第1変位部材114の先端部114aには、エンコーダセンサー104の読み取り対象となるエンコーダスケール114aaと、エンコーダスケール114aaが形成されていない遮蔽部114abとが設けられている。エンコーダスケール114aaと遮蔽部114abとは、エンコーダスケール114aaの方が遮蔽部114abよりも第2変位部材116側に配置されている。
【0078】
同様に、第2変位部材116の先端部116aは、第1変位部材114側に向けて屈曲形成されている。
【0079】
第2変位部材116が矢印C方向または矢印D方向に揺動することにより、先端部116aが矢印C方向または矢印D方向に移動する。
第2変位部材116の先端部116aには、エンコーダセンサー104の読み取り対象となるエンコーダスケール116aaと、エンコーダスケール116aaが形成されていない遮蔽部116abとが設けられている。エンコーダスケール116aaと遮蔽部116abとは、エンコーダスケール116aaの方が遮蔽部116abよりも第2変位部材116側に配置されている。
【0080】
ここで、上記したエンコーダスケール114aa、116aaは、所定の間隔を開けて複数のスリットを形成することにより構成されている。
【0081】
また、エンコーダセンサー104は、レーザーなどの光源104aとフォトダイオードなどの受光素子104bとを組み合わせて構成されている。
【0082】
これらのエンコーダスケール114aa、116aaとエンコーダセンサー104とにより、所謂、従来より公知の透過型の光学式リニアエンコーダが構築されるものである。
【0083】
従って、第1変位部材114については、エンコーダスケール114aaの矢印A方向または矢印B方向への移動に伴い、エンコーダセンサー104の光源104aから照射された光がスリットを通過してエンコーダセンサー104の受光素子104bにより受光されることにより(図6(b)を参照する。)、エンコーダスケール114aaにおける光が通過したスリットを検知して、当該検知したスリットの数を計数することができる。
【0084】
同様に、第2変位部材116については、エンコーダスケール116aaの矢印C方向または矢印D方向への移動に伴い、エンコーダセンサー104の光源104aから照射された光がスリットを通過してエンコーダセンサー104の受光素子104bにより受光されることにより(図6(b)を参照する。)、エンコーダスケール116aaにおける光が通過したスリットを検知して、当該検知したスリットの数を計数することができる。
【0085】
こうしたダンパー装置10においては、エンコーダセンサー104とエンコーダスケール114aa、116aaとが、キャリッジ26上に固定された取り付けユニット27上に配設されている。
【0086】
即ち、エンコーダセンサー104とエンコーダスケール114aa、116aaとを、同一の取り付けユニット27上に配設して固定するため、エンコーダセンサー104ならびにエンコーダスケール114aa、116aaを固定する際における取付位置のばらつきを抑制することができる。
【0087】
(II) 本発明の実施の形態の一例によるダンパー装置の動作の説明
【0088】
図5には、本発明の実施の形態の一例によるダンパー装置における初期設定の処理を示すフローチャートがあらわされている。
【0089】
図6(a)(b)は、本発明の実施の形態の一例によるダンパー装置における検知動作の説明図があらわされている。
【0090】
上記においてインクジェットプリンタ10においては、工場出荷時やインクカートリッジ202を交換した際などにおいては、ダンパー装置10のインク貯留室110に貯留されたインクの圧力を検知する動作を実施するための初期設定の処理を行う。
【0091】
なお、以下の説明においては、説明を簡明にして本発明の理解を容易にするために、ダンパー装置10における第1変位部材114における検知動作について主に説明するものとする。第1変位部材114と対称に配置されている第2変位部材116については、第1変位部材114と移動の方向が対称となるに過ぎないので、その説明については適宜に省略する。
【0092】
この初期設定処理においては、まず、第1変位部材114の先端部114aが矢印A方向に移動されて、エンコーダセンサー104が遮蔽部114abを検知する位置(図6(a)を参照する。)までインク貯留室110内のインクを抜き取って減圧し、インク貯留室110内の圧力として予め設定された基準圧力よりも低い圧力とする(ステップS502)。
【0093】
ステップS502の処理を終了すると、ステップS504の処理へ進み、インク貯留室110内にインクを注入して、インク貯留室110内の圧力を基準圧力まで上昇させることになるが、この際に、エンコーダセンサー104はエンコーダスケール114aaにおける光が通過したスリットを検知して(図6(b)を参照する。)、基準圧力になるまでに検知したスリットの数(スリットカウント)を計数して記録する。
【0094】
ステップS504の処理を終了すると、ステップS506の処理へ進み、ステップS504の処理で記録したスリットカウント位置で、必要な各種の制御動作が実行されるようにマイクロコンピューター200に記録する。
【0095】
ステップS506の処理を終了すると、ステップS508の処理へ進み、インク貯留室110内の圧力を基準圧力よりも低圧になるように減圧する。
【0096】
ステップS508の処理を終了すると、ステップS510の処理進み、インク貯留室110内の圧力を基準圧力まで上昇して、基準圧力で必要な各種の制御動作が実行されるか確認し、この初期設定処理を終了する。
【0097】
(III) 本発明によるダンパー装置の作用効果の説明
【0098】
以上において説明したように、本発明によるダンパー装置100によれば、エンコーダスケール114aa、116aaを備えた第1変位部材114ならびに第2変位部材116とエンコーダセンサー104とが、いずれも取り付けユニット27という同一の部材上に配置されているため、エンコーダスケール114aa、116aaとエンコーダセンサー104とを固定して取り付ける際の固定位置のバラツキを抑制することができるようになる。
【0099】
また、本発明によるダンパー装置100によれば、枠状部材112を設けることにより、ケース本体106の開口部の形状を強固に維持することができるようになって、ケース本体106の開口部が変形するというような外的要因によって、ダンパー膜108が変形することが抑止される。
【0100】
このため、ケース本体106の開口部が変形するなどの外的要因による第1変位部材114と第2変位部材116とによるダンパー膜108の検知のばらつきを、効果的に抑制することができるようになる。

(IV) その他の実施の形態および変形例の説明
【0101】
上記した実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができる。即ち、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。
【0102】
例えば、上記した実施の形態は、以下の(IV-1)乃至(IV-4)に示すように変形するようにしてもよい。
【0103】
(IV-1) 上記した実施の形態においては、第1変位部材114の先端部114aを第2変位部材116側に向けて屈曲形成し、また、第2変位部材116の先端部116aを第1変位部材114側に向けて屈曲形成したが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、図7乃至図8に示すように、第1変位部材114の先端部114aを第2変位部材116から離れる方向側(図7乃至図8における右方側)に向けて屈曲形成し、また、第2変位部材116の先端部116aを第1変位部材114から離れる方向側(図7乃至図8における左方側)に向けて屈曲形成するようにしてもよい。
【0104】
(IV-2) 上記した実施の形態においては、第1変位部材114ならびに第2変位部材116の変位を検知する検知部として、透過型の光学式リニアエンコーダを用いた場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論であり、例えば、磁気式リニアエンコーダや電磁誘導式リニアエンコーダなどような、各種のセンサーを用いるようにしてもよい。
【0105】
(IV-3) 上記した実施の形態においては、枠状部材112を円環形状に形成した場合について説明したが、枠状部材112の形状は円環形状にこれに限られるものではないことは勿論であり、枠状部材112はケース本体106の開口部の形状に合わせて適宜の形状に形成してよい。例えば、ケース本体106の開口部の形状が四角形の場合には、枠状部材112も四角枠形状に形成すればよい。
【0106】
(IV-4) 上記した実施の形態ならびに上記した(IV-1)乃至(IV-3)に示す各種の他の実施の形態や変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、インクジェットプリンタやカッティングヘッド付きインクジェットプリンタなどにおけるダンパー装置のように、液体を供給する液体供給部と液体を吐出する液体吐出部とをつなぐ液体供給路に配置されたダンパー装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0108】
10 インクジェットプリンタ
12 基台部材
14 ベース部材
16L、16R 側方部材
18 側方ユニット
20 中央壁
22 ガイドレール
24 ベルト
26 キャリッジ
27 取り付けユニット
28 記録紙
30 インク吐出ヘッド
32 キャップ装置
70 操作パネル
72 操作子
74 表示装置
100 ダンパー装置
102 ダンパー本体部
104 エンコーダセンサー(検知部)
104a 光源
104b 受光素子
106 ケース本体
106a 中央壁
106b 突起部
108 ダンパー膜
110 インク貯留室(貯留室)
112 枠状部材
114 第1変位部材(変位部材)
114a 先端部
114aa エンコーダスケール(検知部)
114ab 遮蔽部
116 第2変位部材(変位部材)
116a 先端部
116aa エンコーダスケール(検知部)
116ab 遮蔽部
116c 突起部
118 インク流入口
120 受圧板
120a 凹部
122a、122b 係合部
200 マイクロコンピューター
202 インクカートリッジ
P 待機位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8