(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175151
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材及びこれを用いた蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/129 20210101AFI20231205BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20231205BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20231205BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20231205BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20231205BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20231205BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20231205BHJP
H01M 50/105 20210101ALN20231205BHJP
【FI】
H01M50/129
H01M50/131
H01M50/193
H01G11/80
H01G11/78
H01M50/119
H01M50/121
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087458
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 建人
(72)【発明者】
【氏名】村田 光司
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
【Fターム(参考)】
5E078AA09
5E078AA12
5E078AB02
5E078EA04
5E078EA07
5E078EA09
5E078EA15
5E078HA02
5E078HA12
5E078HA13
5E078HA26
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011HH02
5H011KK00
(57)【要約】
【課題】耐熱性に優れ且つ高温環境下であっても水分バリア性に優れる外装材を提供すること。
【解決手段】本開示の一側面は、蓄電デバイス用外装材であって、基材層と、第一接着層と、金属箔層と、第二接着層と、シーラント層と、をこの順で備える積層構造を有し、第二接着層が、少なくとも酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネート化合物との反応物を含み、第二接着層が、下記式(1)の不等式で表される条件を満たす、外装材である。
0.01≦{(C+D)-B}/A≦0.60 …(1)
[式中、A~Dは、赤外分光法により測定される第二接着層の赤外線吸収スペクトルにおける強度であって、Aは、波数3040~2760cm
-1の最大強度を示し、Bは、波数1850~1780cm
-1の最大強度を示し、Cは、波数1760~1600cm
-1の最大強度を示し、Dは、波数2150~2090cm
-1の最大強度を示す。]
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイス用外装材であって、
基材層と、
第一接着層と、
金属箔層と、
第二接着層と、
シーラント層と、
をこの順で備える積層構造を有し、
前記第二接着層が、少なくとも酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネート化合物との反応物を含み、
前記第二接着層が、下記式(1)の不等式で表される条件を満たす、外装材。
0.01≦{(C+D)-B}/A≦0.60 …(1)
[式中、A~Dは、赤外分光法により測定される前記第二接着層の赤外線吸収スペクトルにおける強度であって、Aは、波数3040~2760cm-1の最大強度を示し、Bは、波数1850~1780cm-1の最大強度を示し、Cは、波数1760~1600cm-1の最大強度を示し、Dは、波数2150~2090cm-1の最大強度を示す。]
【請求項2】
前記多官能イソシアネート化合物が、脂肪族多官能イソシアネート化合物の多量体及び芳香環を含む多官能イソシアネート化合物の多量体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の外装材。
【請求項3】
前記第一接着層と前記金属箔層の間、及び、前記第二接着層と前記金属箔層の間の一方又は両方に、腐食防止処理層を備える、請求項1又は2に記載の外装材。
【請求項4】
前記シーラント層が、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂のうち少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の外装材。
【請求項5】
前記第一接着層及び前記第二接着層のうち少なくとも一方が、硫化水素吸着物質を含む、請求項1又は2に記載の外装材。
【請求項6】
前記第二接着層が、カルボジイミド化合物を更に含む、請求項1又は2に記載の外装材。
【請求項7】
全固体電池用である、請求項1又は2に記載の外装材。
【請求項8】
蓄電デバイス本体と、
前記蓄電デバイス本体から延在する電流取出し端子と、
前記電流取出し端子を挟持し且つ前記蓄電デバイス本体を収容する、請求項1又は2に記載の外装材と、
を備える蓄電デバイス。
【請求項9】
全固体電池である、請求項8に記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイス用外装材及びこれを用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスとして、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電デバイスの更なる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池に用いられる外装材として、軽量で、放熱性が高く、低コストで作製できる多層フィルムが用いられるようになっている。
【0003】
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池は、ラミネート型リチウムイオン電池と称される。外装材が電池内容物(正極、セパレータ、負極、電解液等)を覆っており、内部への水分の浸入を防止する。ラミネート型のリチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、該凹部内に電池内容物を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止することで製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リチウムイオン電池の次世代電池として、全固体電池と称される蓄電デバイスの研究開発がなされている。全固体電池は、電解物質として有機電解液を使用せず、固体電解質を使用するという特徴を有する。リチウムイオン電池は、電解液の沸点温度(80℃程度)よりも高い温度条件で使用することができないのに対し、全固体電池は100℃を超える温度条件で使用することが可能であると共に、高い温度条件下(例えば100~150℃)で作動させることによってリチウムイオンの伝導度を高めることができる。
【0006】
しかし、外装材として上記のような多層フィルムを使用してラミネート型の全固体電池を製造する場合、外装材の耐熱性が不十分であると、高温環境下での層間密着性が確保できず、ラミネート強度が低下して全固体電池のパッケージの密封性が低下するおそれがある。外装材は、例えば、基材層、金属箔層及びシーラント層が接着剤層等を介して積層された構造を有しているが、高温環境下では金属箔層とシーラント層との間の密着性が低下しやすい。
【0007】
また、全固体電池に使用される硫化物系固体電解質は、大気中の水分と反応して硫化水素ガスを発生し電池の性能を低下させる場合がある。内層側に用いる接着剤として、一般的に耐熱性があるものとしてウレタン接着剤やエポキシ接着剤が挙げられる。しかし、これらの接着剤は水分バリア性が十分ではない。また、水分バリア性が高い接着剤として、例えば、酸変性ポリオレフィン系接着剤が挙げられる。しかし、これらの接着剤は、耐熱性が十分ではない。このように接着剤の耐熱性と水分バリア性とはトレードオフの関係になっている。そして、全固体電池に使用される外装材には、高温環境下であっても水分バリア性に優れることが求められる。
【0008】
本開示の一側面は、耐熱性に優れ且つ高温環境下であっても水分バリア性に優れる外装材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面は、蓄電デバイス用外装材であって、基材層と、第一接着層と、金属箔層と、第二接着層と、シーラント層と、をこの順で備える積層構造を有し、第二接着層が、少なくとも酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネート化合物との反応物を含み、第二接着層が、下記式(1)の不等式で表される条件を満たす、外装材である。
0.01≦{(C+D)-B}/A≦0.60 …(1)
[式中、A~Dは、赤外分光法により測定される第二接着層の赤外線吸収スペクトルにおける強度であって、Aは、波数3040~2760cm-1の最大強度を示し、Bは、波数1850~1780cm-1の最大強度を示し、Cは、波数1760~1600cm-1の最大強度を示し、Dは、波数2150~2090cm-1の最大強度を示す。]
【0010】
上記外装材は、耐熱性及び水分バリア性に優れる。このような効果が奏される理由について本発明者らは以下のように考えている。すなわち、第二接着層に含まれる酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネート化合物との反応物は、ウレタン結合を有する。ウレタン結合は極性基であるため、第二接着層と金属箔層との間の密着性が向上する。また、酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネート化合物との反応物は、酸変性ポリオレフィン中のカルボン酸と、多官能イソシアネート化合物との反応により生じる架橋構造を有する。そのため、第二接着層自体の耐熱性も向上する。
【0011】
また、一般的な酸変性ポリオレフィンを用いた場合には、ガラス転移温度が低いため、高温環境下では酸変性ポリオレフィンの分子鎖の絡み合いが解消されてしまう。そのため、分子間の隙間が広くなり、外装材の水分バリア性が低下する。一方、酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネート化合物との反応物を用いた場合には、複数の酸変性ポリオレフィン分子間で多官能イソシアネート化合物による架橋構造が構築される。そのため、ガラス転移温度が高くなり分子鎖の絡み合いが解消されにくくなる。
【0012】
そして、第二接着層において、赤外分光法により測定される赤外線吸収ピークについて、{(C+D)-B}/A(以下、「X」ともいう。)が0.01以上0.60以下であることが規定されている。Aは、上記反応物のオレフィン構造に由来する波数3040~2760cm-1の最大強度を示し、Bは、上記反応物の無水マレイン酸構造に由来する波数1850~1780cm-1の最大強度を示し、Cは、上記反応物のウレタン結合に由来する波数1760~1600cm-1の最大強度を示し、Dは、カルボジイミド化合物に由来する波数2150~2090cm-1の最大強度を示す。上記Xが、0.01以上であることで、第二接着層がウレタン結合を十分有することとなる。それにより、層間の密着力と、第二接着層自体の耐熱性が優れたものとなる。また、上記Xが、0.60以下であることで、第二接着層の水分子との親和を抑え、また、架橋構造による分子間の隙間を抑えることができる。それにより、外装材は、耐熱性及び水分バリア性に優れたものとなる。また、外装材は、耐硫化水素性にも優れる
【0013】
一態様において、脂肪族多官能イソシアネート化合物の多量体及び芳香環を含む多官能イソシアネート化合物の多量体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいてよい。多官能イソシアネート化合物が脂肪族多官能イソシアネート化合物の多量体である場合、イソホロンジイソシアネートの多量体等の大きなイソシアネート化合物である場合と比較して、架橋反応により構築される分子間の隙間が小さくなる。そのため、外装材は水分バリア性に一層優れる。また、多官能イソシアネート化合物が芳香環を含む多官能イソシアネート化合物の多量体である場合、芳香環同士の相互作用(π-πスタッキング)により分子間の距離が狭まる。そのため、外装材は水分バリア性に一層優れる傾向がある。
【0014】
一態様において、上記包装材は、第一接着層と金属箔層の間、及び、第二接着層と金属箔層の間の一方又は両方に、腐食防止処理層を備えていてよい。外装材は、腐食防止処理層を備えることで、腐食防止処理層が設けられた接着層と金属箔層との間の密着性が向上する。それにより、上記外装材は、耐熱性に一層優れる傾向がある。また、腐食防止処理層により、外装材に耐硫化水素性が付与される。それにより、外装材は、硫化水素暴露後であっても、耐熱性に優れる傾向がある。
【0015】
一態様において、シーラント層は、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂のうち少なくとも1種を含んでいてよい。これらの樹脂は、例えば、アクリル系樹脂と比較して融点が高く、また、酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネート化合物との反応物を含む第二接着層との相性がよく接着性に優れる。また、これらの樹脂は、例えば、アクリル系樹脂と比較して柔軟性に優れる。また、例えば、アクリル系樹脂と比較して水分子との親和性が低い。そのため、外装材は、耐熱性及び水分バリア性に一層優れる傾向がある。
【0016】
一態様において、第一接着層及び第二接着層のうち少なくとも一方は、硫化水素吸着物質を含んでいてよい。これにより、外装材は、硫化水素暴露後であっても、耐熱ラミネート強度が一層優れる傾向がある。
【0017】
一態様において、第二接着層は、カルボジイミド化合物を更に含んでいてよい。これにより、外装材は、耐熱性に一層優れる傾向がある。このような効果が奏される理由について、本発明者らは、高い極性を持つカルボジイミド基が、金属箔層や第二接着層中で他の極性基と水素結合を形成しているためと推察している。
【0018】
上記外装材は、全固体電池用であってよい。
【0019】
本開示の他の一側面は、蓄電デバイス本体と、前記蓄電デバイス本体から延在する電流取出し端子と、前記電流取出し端子を挟持し且つ前記蓄電デバイス本体を収容する、上記外装材と、を備える蓄電デバイスである。上記蓄電デバイスは、全固体電池であってよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示の一側面によれば、耐熱性に優れ且つ高温環境下であっても水分バリア性に優れる外装材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の一実施形態に係る蓄電デバイス用外装材の概略断面図である。
【
図2】赤外分光法により測定される第二接着層の赤外線吸収スペクトルの一例を示す模式図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る蓄電デバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0023】
[蓄電デバイス用外装材]
図1は、本発明の蓄電デバイス用外装材の一実施形態を模式的に表す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の外装材(蓄電デバイス用外装材)10は、基材層11と、該基材層11の一方の面側に設けられた第一接着層12と、該第一接着層12の基材層11とは反対側に設けられた、両面に腐食防止処理層14a,14bを有する金属箔層13と、該金属箔層13の第一接着層12とは反対側に設けられた第二接着層15と、該第二接着層15の金属箔層13とは反対側に設けられたシーラント層16と、が積層された積層体である。ここで、腐食防止処理層14aは金属箔層13の第一接着層12側の面に、腐食防止処理層14bは金属箔層13の第二接着層15側の面に、それぞれ設けられている。外装材10において、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電デバイスの外部側、シーラント層16を蓄電デバイスの内部側に向けて使用される。以下、各層について説明する。
【0024】
<基材層11>
基材層11は、蓄電デバイスを製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。特に大型用途の蓄電デバイスの外装材の場合等は、耐擦傷性、耐薬品性、絶縁性等も付与できる。
【0025】
基材層11は、シーラント層16の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有することが好ましい。基材層11がシーラント層16の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有することで、ヒートシール時に基材層11(外側の層)が融解することに起因して外観が悪くなることを抑制できる。シーラント層16が多層構造である場合、シーラント層16の融解ピーク温度は最も融解ピーク温度が高い層の融解ピーク温度を意味する。基材層11の融解ピーク温度は好ましくは290℃以上であり、より好ましくは290~350℃である。基材層11として使用でき且つ上記範囲の融解ピーク温度を有する樹脂フィルムとしては、ナイロンフィルム、PETフィルム、ポリアミドフィルム、ポリフェニレンスルファイドフィルム(PPSフィルム)、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。融解ピーク温度は、JIS K7121-1987に記載の方法に準拠して求められる値を意味する。
【0026】
基材層11として、市販のフィルムを使用してもよいし、コーティング(塗工液の塗布及び乾燥)によって基材層11を形成してもよい。なお、基材層11は単層構造であっても多層構造であってもよく、熱硬化性樹脂を塗工することによって形成してもよい。また、基材層11は、例えば、各種添加剤(例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等)を含んでもよい。
【0027】
基材層11の融解ピーク温度T11とシーラント層16の融解ピーク温度T16の差(T11-T16は、好ましくは20℃以上である。この温度差が20℃以上であることで、ヒートシールに起因する外装材10の外観の悪化をより一層十分に抑制できる。基材層11の厚さは好ましくは5~50μmであり、より好ましくは12~30μmである。
【0028】
<第一接着層12>
第一接着層12は、腐食防止処理層14aが設けられた金属箔層13と基材層11とを接着する層である。第一接着層12は、基材層11と金属箔層13とを強固に接着するために必要な接着力を有すると共に、成型する際において、基材層11によって金属箔層13が破断されることを抑制するための追随性も有する。なお、追随性とは、部材が伸縮等により変形したとしても、第一接着層12が剥離することなく部材上に留まる性質である。
【0029】
第一接着層12を形成する接着成分としては、例えば、ウレタン系化合物、ウレア系化合物エポキシ系化合物、シリコン系化合物、並びに酸化アルミニウム及びシリカ等の無機系酸化物が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。ウレア系化合物は、アミン系化合物及びアミン誘導体と、多官能イソシアネート化合物とを反応することで得られる。ウレタン系化合物は、ポリオール樹脂と、多官能イソシアネート化合物とを反応することで得られる。
【0030】
アミン系化合物は、分子内にアミノ基を有する化合物である。ここで、アミノ基とは、-NH2、-NHR、-NR2を意味する。ただし、Rは、アルキル基及びアリール基を表す。アミン誘導体は、アミン系化合物から誘導され、分子内にアミノ基を有しない化合物である。
【0031】
アミン系化合物及びアミン誘導体は、顕在性硬化剤であってもよく、潜在性硬化剤であってもよい。潜在性硬化剤は、外部刺激により活性化されてイソシアネート基と反応しうる反応性基を生成する硬化剤である。アミン系化合物及びアミン誘導体が潜在性硬化剤である場合、ポットライフが向上する傾向にある。外部刺激としては、例えば、熱及び湿気が挙げられる。潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、イミン系硬化剤、アミンイミド系硬化剤、ジシアンジアミド系硬化剤、芳香族系ポリアミン硬化剤、脂肪族系ポリアミン硬化剤、ポリアミドアミン系硬化剤、三級アミン塩系硬化剤及びオキサゾリジン系硬化剤が挙げられる。このうち、加熱により活性化される潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、ジシアンジアミド系硬化剤、ポリアミン系硬化剤及びアミンイミド系硬化剤が挙げられる。湿気により活性化される潜在性硬化剤としては、例えば、イミン系硬化剤及びオキサゾリジン系硬化剤が挙げられる。ポットライフが一層向上する傾向にあることから、潜在性硬化剤は、湿気により活性化されるものであることが好ましい。
【0032】
ポリオール樹脂としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール及びポリアクリルポリオールが挙げられる。
【0033】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸の一種以上とジオールとを反応させることで得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0034】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン及びペンタエリスリトール等に、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加重合させて製造されるものが挙げられる。
【0035】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジフェニルカーボネート等といった炭酸ジエステルとジオールとを反応させることで得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0036】
ポリアクリルポリオールとしては、例えば、少なくとも水酸基含有アクリルモノマーと(メタ)アクリル酸とを共重合して得られる共重合体が挙げられる。この場合、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を主成分として含んでいることが好ましい。水酸基含有アクリルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0037】
多官能イソシアネート化合物は、複数のイソシアネート基を含み、上記アミン系樹脂又はポリオールを架橋する働きを担う。多官能イソシアネート化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。多官能イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族多官能イソシアネート化合物、脂環式多官能イソシアネート化合物及び芳香環を有する多官能イソシアネート化合物が挙げられる。
【0038】
脂肪族多官能イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等が挙げられる。脂環式多官能イソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。芳香環を有する多官能イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、これらの化合物の多量体(例えば、三量体)も用いることができ、具体的には、アダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体等を用いることができる。
【0039】
多官能イソシアネート化合物は、ポットライフが向上する観点より、そのイソシアネート基がブロック剤と結合していてもよい。ブロック剤としては、例えば、メチルエチルケトオキシム(MEKO)等が挙げられる。ブロック剤が多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基から脱離する温度は、50℃以上であってよく、ポットライフが一層向上することから、60℃以上であることが好ましい。ブロック剤が多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基から脱離する温度は、140℃以下であってよく、外装材の成型カール耐性が向上することから、120℃以下であることが好ましい。
【0040】
ブロック剤の解離温度を低下させるため、解離温度を低下させる触媒を用いてもよい。そのような解離温度を低下させる触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン及びN-メチルモルホリン等の三級アミン、並びにジブチル錫ジラウレート等の金属有機酸塩が挙げられる。
【0041】
第一接着層12は、外装材の外部に存在する硫化水素による金属箔層13の腐食を抑制できるため、硫化水素吸着物質を含んでいてもよい。このような硫化水素吸着物質としては、例えば、酸化亜鉛及び過マンガン酸カリウムが挙げられる。第一接着層12が硫化水素吸着物質を含む場合、外装材の外部に存在する硫化水素による金属箔層13の腐食を抑制できることから、その含有量は、第一接着層12の全量に対して1~50質量%であることが好ましい。
【0042】
第一接着層12の厚さは、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、1~10μmが好ましく、2~6μmがより好ましい。
【0043】
第一接着層12は、例えば、上述した成分を含む組成物を塗工することで得られる。塗工方法は、公知の手法を用いることができるが、例えば、グラビアダイレクト、グラビアリバース(ダイレクト、キス)及びマイクログラビアが挙げられる。
【0044】
組成物は、溶剤を含んでいてもよい。このような溶剤としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びアルコール類が挙げられる。溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
<第二接着層15>
第二接着層15は、腐食防止処理層14bが設けられた金属箔層13とシーラント層16とを接着する層である。第二接着層15は、少なくとも酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネート化合物との反応物(以下、「反応物A」ともいう)を含む。反応物Aを得るための成分は、酸変性ポリオレフィン及び多官能イソシアネート化合物のみであってもよく、酸変性ポリオレフィン及び多官能イソシアネート化合物に加えてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、カルボジイミド化合物、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、シランカップリング剤、シリカフィラー、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、潜在性硬化剤及び酸化劣化防止剤が挙げられる。反応物Aは、耐熱性及び水分バリア性に一層優れる傾向があることから、少なくとも酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネート化合物とカルボジイミド化合物との反応物であることが好ましい。
【0046】
酸変性ポリオレフィンの水酸基価は、反応性の観点から、5~120KOHmg/gであることが好ましく、10~80KOHmg/gであることがより好ましく、20~60KOHmg/gであることが更に好ましい。
【0047】
酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、無水マレイン酸とポリオレフィンとを反応させることで得られる無水マレイン酸変性ポリオレフィンが挙げられる。無水マレイン酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン及び無水マレイン酸変性ポリエチレンが挙げられる。
【0048】
多官能イソシアネート化合物としては、第一接着層と同様のものを用いてよい。多官能イソシアネート化合物は、外装材が水分バリア性に一層優れる傾向があることから、脂肪族多官能イソシアネート化合物の多量体及び芳香環を含む多官能イソシアネート化合物の多量体であることが好ましい。
【0049】
少なくとも酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネート化合物とを反応させる際の多官能イソシアネート化合物の配合量は、反応性の観点から、酸変性ポリオレフィン100質量部に対して、0.5~40質量部であることが好ましく、3~30質量部であることがより好ましく、5~20質量部であることが更に好ましい。
【0050】
少なくとも酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネート化合物とカルボジイミド化合物とを反応させる際のカルボジイミド化合物の配合量は、耐熱性及び密着性の観点から、酸変性ポリオレフィン100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.3~7質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが更に好ましい。
【0051】
酸変性ポリオレフィンの配合量は、反応物Aを得るための成分の全量を基準として、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってもよい。
【0052】
図2は、赤外分光法により測定される第二接着層15の赤外線吸収スペクトルの一例を示す模式図である。第二接着層15は、下記式(1)の不等式で表される条件を満たす。
0.01≦{(C+D)-B}/A≦0.60 …(1)
[式中、A~Dは、赤外分光法により測定される第二接着層の赤外線吸収スペクトルにおける強度であって、Aは、波数3040~2760cm
-1の最大強度を示し、Bは、波数1850~1780cm
-1の最大強度を示し、Cは、波数1760~1600cm
-1の最大強度を示し、Dは、波数2150~2090cm
-1の最大強度を示す。]
【0053】
{(C+D)-B}/Aは、耐熱性に一層優れる傾向があることから、0.05以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.3以上であることが更に好ましい。{(C+D)-B}/Aは、水分バリア性に一層優れる傾向があることから、0.5以下であることが好ましく、0.45以下であることがより好ましく、0.4以下であることが更に好ましい。
【0054】
赤外線吸収スペクトルピーク強度は、フーリエ変換赤外線(FT-IR)分光分析法の減衰全反射(ATR:Attenuated Total Reflection)により測定することができる。
【0055】
第二接着層15は、耐熱性に一層優れる傾向があることから、カルボジイミド化合物を含むことが好ましい。カルボジイミド化合物は、酸変性ポリオレフィンに含まれるカルボキシル基に対して反応促進剤及び架橋剤として作用する。
【0056】
第二接着層15は、第一接着層と同様に硫化水素吸着物質を含んでいてもよい。硫化水素吸着物質の種類及び含有量は、第一接着層と同様であってよい。
【0057】
第二接着層15の厚さは、1~5μmであることが好ましい。第二接着層15の厚さが1μm以上であることにより、金属箔層13とシーラント層16との十分な接着強度が得られ易い。第二接着層15の厚さが5μm以下であることにより、第二接着層15の割れの発生を抑制できる傾向にある。
【0058】
第二接着層15は、第一接着層12と同様の方法で得られる。
【0059】
<金属箔層13>
金属箔層13は、水分が蓄電デバイスの内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、金属箔層13は、深絞り成型をするために延展性を有していてよい。金属箔層13としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔を用いることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。金属箔層13としては、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、アルミニウム箔が好ましい。
【0060】
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、更なる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いるのがより好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1~9.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい(例えば、JIS規格でいう8021材、8079材よりなるアルミニウム箔)。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。
【0061】
金属箔層13に使用する金属箔は、所望の耐電解液性を得るために、例えば、脱脂処理が施されていることが好ましい。また、製造工程を簡便にするためには、上記金属箔としては、表面がエッチングされていないものが好ましい。中でも、金属箔層13に使用する金属箔は、耐電解液性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いるのが好ましい。アルミニウム箔に脱脂処理する場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。上記脱脂処理としては、例えば、ウェットタイプの脱脂処理、又はドライタイプの脱脂処理を用いることができるが、製造工程を簡便にする観点から、ドライタイプの脱脂処理が好ましい。
【0062】
上記ドライタイプの脱脂処理としては、例えば、金属箔を焼鈍処理する工程において、処理時間を長くすることで脱脂処理を行う方法が挙げられる。金属箔を軟質化するために施される焼鈍処理の際に、同時に行われる脱脂処理程度でも充分な耐電解液性が得られる。
【0063】
また、上記ドライタイプの脱脂処理としては、上記焼鈍処理以外の処理であるフレーム処理及びコロナ処理等の処理を用いてもよい。さらに、上記ドライタイプの脱脂処理としては、例えば、金属箔に特定波長の紫外線を照射した際に発生する活性酸素により、汚染物質を酸化分解及び除去する脱脂処理を用いてもよい。
【0064】
上記ウェットタイプの脱脂処理としては、例えば、酸脱脂処理、アルカリ脱脂処理等の処理を用いることができる。上記酸脱脂処理に使用する酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸等の無機酸を用いることができる。これらの酸は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、アルカリ脱脂処理に使用するアルカリとしては、例えば、エッチング効果が高い水酸化ナトリウムを用いることができる。また、弱アルカリ系の材料及び界面活性剤等が配合された材料を用いて、アルカリ脱脂処理を行ってもよい。上記説明したウェットタイプの脱脂処理は、例えば、浸漬法、スプレー法により行うことができる。
【0065】
金属箔層13の厚さは、バリア性、耐ピンホール性及び加工性の点から、9~200μmであることが好ましく、15~150μmであることがより好ましく、15~100μmであることが更に好ましい。金属箔層13の厚さが9μm以上であることにより、成型加工により応力がかかっても破断しにくくなる。金属箔層13の厚さが200μm以下であることにより、外装材の質量増加を低減でき、蓄電デバイスの重量エネルギー密度低下を抑制することができる。
【0066】
<腐食防止処理層14a,14b>
腐食防止処理層14a,14bは、金属箔層13の腐食を防止するためにその表面に設けられる層である。また、腐食防止処理層14aは、金属箔層13と第一接着層12との密着力を高める役割を果たす。また、腐食防止処理層14bは、金属箔層13と第二接着層15との密着力を高める役割を果たす。腐食防止処理層14a及び腐食防止処理層14bは、同一の構成の層であってもよく、異なる構成の層であってもよい。
【0067】
腐食防止処理層14a,14bは、例えば、腐食防止処理層14a,14bの母材となる層に対して、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、腐食防止能を有するコーティング剤を塗工するコーティングタイプの腐食防止処理あるいはこれらの処理を組み合わせた腐食防止処理を実施することで形成することができる。
【0068】
上述した処理のうち脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、特に熱水変性処理及び陽極酸化処理は、処理剤によって金属箔(アルミニウム箔)表面を溶解させ、耐腐食性に優れる金属化合物(アルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト))を形成させる処理である。このため、このような処理は、金属箔層13から腐食防止処理層14a,14bまで共連続構造を形成している構造を得るために、化成処理の定義に包含されるケースもある。
【0069】
脱脂処理としては、酸脱脂、アルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては、上述した硫酸、硝酸、塩酸及びフッ酸等の無機酸を単独、又はこれらを混合して得られた酸脱脂を用いる方法が挙げられる。また酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウム等のフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、金属箔層13の脱脂効果だけでなく不動態である金属のフッ化物を形成させることが可能であり、耐フッ酸性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウム等を用いる方法が挙げられる。
【0070】
上記熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中に金属箔層13を浸漬処理することで得られるベーマイト処理を用いることができる。上記陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理を用いることができる。また、上記化成処理としては、例えば、クロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、或いはこれらを2種以上組み合わせた処理を用いることができる。これらの熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理は、上述した脱脂処理を事前に施すことが好ましい。
【0071】
なお、上記化成処理としては、湿式法に限らず、例えば、これらの処理に使用する処理剤を樹脂成分と混合し、塗布する方法を用いてもよい。また、上記腐食防止処理としては、その効果を最大限にすると共に、廃液処理の観点から、塗布型クロメート処理が好ましい。
【0072】
コーティングタイプの腐食防止処理に用いられるコーティング剤としては、希土類元素酸化物ゾル、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するコーティング剤が挙げられる。特に、希土類元素酸化物ゾルを含有するコーティング剤を用いる方法が好ましい。
【0073】
腐食防止処理層14a,14bの単位面積あたりの質量は0.005~0.200g/m2の範囲内が好ましく、0.010~0.100g/m2の範囲内がより好ましい。0.005g/m2以上であれば、金属箔層13に腐食防止機能を付与し易い。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/m2を超えても、腐食防止機能は飽和しこれ以上の効果が見込めない。なお、上記内容では単位面積あたりの質量で記載しているが、比重がわかればそこから厚さを換算することも可能である。
【0074】
腐食防止処理層14a,14bの厚さは、腐食防止機能、及びアンカーとしての機能の点から、例えば10nm~5μmであることが好ましく、20~500nmであることがより好ましい。
【0075】
<シーラント層16>
シーラント層16は、外装材10に対し、ヒートシールによる封止性を付与する層であり、蓄電デバイスの組み立て時に内側に配置されてヒートシール(熱融着)される層である。
【0076】
シーラント層16としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、又はポリエステル系樹脂からなるフィルムが挙げられる。シーラント層16は、融点が高く、得られる外装材の耐熱性が一層向上することから、ポリオレフィン系樹脂、又はポリエステル系樹脂からなるフィルムが好ましく、ポリエステル系樹脂からなるフィルムがより好ましい。
【0077】
アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等が挙げられる。これらアクリル系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度及び高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;並びに、プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0079】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。これらポリエステル系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
シーラント層16は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。シーラント層16が多層構成である場合は、各層同士を共押出により積層してもよく、ドライラミネートにより積層してもよい。
【0081】
シーラント層16は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤及び粘着付与剤等の各種添加材を含んでいてもよい。
【0082】
シーラント層16の厚さは、10~100μmであることが好ましく、20~60μmであることがより好ましい。シーラント層16の厚さが10μm以上であることにより、十分なヒートシール強度を得ることができ、100μm以下であることにより、外装材端部からの水蒸気の浸入量を低減することができる。
【0083】
シーラント層16の融解ピーク温度は、耐熱性が一層向上することから、200~280℃であることが好ましい。
【0084】
外装材10は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタなどの蓄電デバイス用の外装材として好適に用いることができる。中でも、外装材10は、耐熱性に優れ且つ高温環境下であっても水分バリア性に優れるため、そのような環境での使用が想定される固体電解質を用いた全固体電池用の外装材として好適である。
【0085】
以上、本実施形態の蓄電デバイス用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0086】
例えば、
図1では、金属箔層13の両面に腐食防止処理層14a,14bが設けられている場合を示したが、腐食防止処理層14a,14bのいずれか一方のみが設けられていてもよく、腐食防止処理層が設けられていなくてもよい。
【0087】
[外装材の製造方法]
次に、外装材10の製造方法について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0088】
外装材10の製造方法として、例えば、下記の工程S11~S13をこの順に実施する方法が挙げられる。
工程S11:金属箔層13の一方の面上に腐食防止処理層14aを形成し、金属箔層13の他方の面上に腐食防止処理層14bを形成する工程。
工程S12:腐食防止処理層14aの金属箔層13とは反対側の面と、基材層11とを、第一接着層12を介して貼り合わせる工程。
工程S13:腐食防止処理層14bの金属箔層13とは反対側の面上に、第二接着層15を介してシーラント層16を形成する工程。
【0089】
<工程S11>
工程S11では、金属箔層13の一方の面上に腐食防止処理層14aを形成し、金属箔層13の他方の面上に腐食防止処理層14bを形成する。腐食防止処理層14a及び14bは、それぞれ別々に形成されてもよく、両方が一度に形成されてもよい。具体的には、例えば、金属箔層13の両方の面に腐食防止処理剤(腐食防止処理層の母材)を塗布し、その後、乾燥、硬化、焼付けを順次行うことで、腐食防止処理層14a及び14bを一度に形成する。また、金属箔層13の一方の面に腐食防止処理剤を塗布し、乾燥、硬化、焼き付けを順次行って腐食防止処理層14aを形成した後、金属箔層13の他方の面に同様にして腐食防止処理層14bを形成してもよい。腐食防止処理層14a及び14bの形成順序は特に制限されない。また、腐食防止処理剤は、腐食防止処理層14aと腐食防止処理層14bとで異なるものを用いてもよく、同じのものを用いてもよい。腐食防止処理剤の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、ダイコート法、バーコート法、キスコート法、コンマコート法、小径グラビアコート法等の方法を用いることができる。
【0090】
<工程S12>
工程S12では、腐食防止処理層14aの金属箔層13とは反対側の面と、基材層11とが、第一接着層12を形成する接着剤を用いてドライラミネーション等の手法で貼り合わせられる。工程S12では、第一接着層12の接着性の促進のため、加熱処理を行ってもよい。加熱処理時の温度は、外装材が成型カール耐性に優れることから、140℃以下であることが好ましい。
【0091】
<工程S13>
工程S12後、基材層11、第一接着層12、腐食防止処理層14a、金属箔層13及び腐食防止処理層14bがこの順に積層された積層体の腐食防止処理層14bの金属箔層13とは反対側の面と、シーラント層16とが、第二接着層15を形成する接着剤を用いてドライラミネーション等の手法で貼り合わせられる。工程S13では、第二接着層15の接着性の促進のため、加熱処理を行ってもよい。加熱処理時の温度は、外装材が成型カール耐性に優れることから、140℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。
【0092】
以上説明した工程S11~S13により、外装材10が得られる。なお、外装材10の製造方法の工程順序は、上記工程S11~S13を順次実施する方法に限定されない。例えば、工程S12を行ってから工程S11を行う等、実施する工程の順序を適宜変更してもよい。
【0093】
[蓄電デバイス]
図3は、上述した外装材を用いて作製した蓄電デバイスの一実施形態を示す斜視図である。
図3に示されるように、蓄電デバイス50は、電極を含む電池要素(蓄電デバイス本体)52と、上記電極から延在し、電池要素52から電流を外部に取り出すための2つの金属端子(リード、電流取出し端子)53と、電池要素52を気密状態で包含する外装材10とを含んで構成される。外装材10は、上述した本実施形態に係る外装材10であり、電池要素52を収容する容器として用いられる。外装材10では、基材層11が最外層であり、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電デバイス50の外部側、シーラント層16を蓄電デバイス50の内部側となるように、1つのラミネートフィルムを2つ折りにして周縁部を熱融着することにより、又は、2つのラミネートフィルムを重ねて周縁部を熱融着することにより、内部に電池要素52を包含した構成となる。金属端子53は、シーラント層16を内側として容器を形成する外装材10によって挟持され、密封されている。金属端子53は、タブシーラントを介して、外装材10によって挟持されていてもよい。
【0094】
電池要素52は、正極と負極との間に電解質を介在させてなるものである。金属端子53は、集電体の一部が外装材10の外部に取り出されたものであり、銅箔やアルミ箔等の金属箔からなる。
【0095】
本実施形態の蓄電デバイス50は、全固体電池であってもよい。この場合、電池要素52の電解質には硫化物系固体電解質等の固体電解質が用いられる。本実施形態の蓄電デバイス50は、本実施形態の外装材10を用いているため、高温環境下(例えば150℃)で使用された場合であっても優れたラミネート強度、シール強度及び水分バリア性を確保することができる。
【実施例0096】
以下に、本開示を実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0097】
<基材層(厚さ25μm)>
一方の面をコロナ処理したポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
【0098】
<第一接着層(厚さ4μm)>
第一接着層の材料として、ウレタン樹脂(三井化学社製、商品名「主剤:タケラックA-515(固形分濃度50質量%)、硬化剤:タケネートD-140(固形分濃度74質量%)」)を準備した。これらの材料を主剤100質量部に対して硬化剤30質量部の割合で配合し、酢酸エチルで固形分濃度が30質量%となるように希釈したものを接着剤として用いた。
【0099】
<第一腐食防止処理層(基材層側)及び第二腐食防止処理層(シーラント層側)>
(CL-1):溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」を用いた。なお、ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾルは、酸化セリウム100質量部に対して、リン酸のNa塩を10質量部配合して得た。
(CL-2):溶媒として蒸留水を用い固形分濃度5質量%に調整した「ポリアリルアミン(日東紡社製)」90質量%と、「ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)」10質量%からなる組成物を用いた。
【0100】
<第二接着層(厚さ3μm)>
表1に記載の主剤及び多官能イソシアネート化合物と、カルボジイミドとを表1に示す比率で配合した接着剤を用いた。接着剤は、不揮発分が15質量%となるようにトルエンを適宜配合した。表1に記載の主剤及び多官能イソシアネート化合物と、カルボジイミドの詳細は、以下のとおりである。
【0101】
{主剤}
・酸変性ポリオレフィン(不揮発分の割合:30質量%、水酸基価:40KOHmg/g、理研ビタミン株式会社製、グレード名:「リケエイド MG-400EM」)
・ポリアクリルポリオール(不揮発分の割合:50質量%、水酸基価:10~20KOHmg/g、官能基当量:5610g/mol、三菱レイヨン株式会社製、グレード名:「LR209」)
【0102】
{多官能イソシアネート化合物}
・HDI系(ヘキサメチレンジイソシアネート-アダクト体、不揮発分の割合:50質量%、NCO含有量:18.7質量%、官能基当量:225g/mol、旭化成株式会社製、グレード名:「E402-80B」)
・TDI系(トリレンジイソシアネート-アダクト体、不揮発分の割合:50質量%、NCO含有量:17.7質量%、官能基当量:237g/mol、日本ポリウレタン工業株式会社製、グレード名:「コロネートL」)
・IPDI系(イソホロンジイソシアネート-アダクト体、不揮発分の割合:74.6質量%、NCO含有量:10.3質量%、官能基当量:408g/mol、三井化学株式会社製、グレード名:「D-140N」)
【0103】
{カルボジイミド}
カルボジイミドは、日清紡ケミカル社製の「V-07」(グレード名、不揮発分の割合が50質量%)を用いた。
【0104】
<金属箔層(厚さ35μm)>
焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)を準備した。
【0105】
<シーラント層(厚さ40~70μm)>
表1に記載の材料を用いた。表1に記載の材料の詳細は、以下のとおりである。
・アクリル樹脂フィルム(大倉工業社製、商品名「OXIS-PMMA」)
・ポリエステルフィルム(東洋坊社製、商品名「オリエステルDE046」)
・PPフィルム(ポリプロピレンフィルム、出光興産社製、商品名「ユニラックスRT-680CA」)
【0106】
[外装材の製造]
<実施例1~5及び比較例1~3>
ドライラミネート手法により接着剤(第一接着層)を用いて金属箔層を基材層に貼り付け、80℃で120時間エージングを行った。次いで、金属箔層の第一接着層が接着している面とは反対の面にドライラミネート手法により接着剤(第二接着層)を用いてシーラント層を貼り付け、60℃で120時間エージングを行った。
【0107】
このようにして得られた積層体を、加熱処理し、外装材(基材層/第一接着層/金属箔層/第二接着層/シーラント層)を製造した。
【0108】
<実施例6~9>
まず、金属箔層に、第一及び第二腐食防止処理層を以下の手順で設けた。すなわち、金属箔層の両方の面に(CL-1)を、ドライ塗布量として70mg/m2となるようにマイクログラビアコートにより塗布し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL-2)を、ドライ塗布量として20mg/m2となるようにマイクログラビアコートにより塗布することで、(CL-1)と(CL-2)からなる複合層を第一及び第二腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL-1)と(CL-2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。
【0109】
この第一及び第二腐食防止処理層を設けた金属箔層を用いたこと以外は実施例1と同様にして外装材(基材層/第一接着層/第一腐食防止処理層/金属箔層/第二腐食防止処理層/第二接着層/シーラント層)を製造した。
【0110】
[外装材の評価]
<実施例1~9及び比較例1,2>
{赤外線吸収スペクトルピークの測定}
外装材をカットし、シーラント層と金属箔層との間、又はシーラント層と腐食防止処理層との間を剥離した。剥離により露出した第二接着層の最表面についてフーリエ変換赤外線(FT-IR)分光分析法の減衰全反射(ATR:Attenuated Total Reflection)で赤外線吸収スペクトルピークを測定した。赤外線吸収スペクトルにおける強度から下記式(2)で定義されるXを算出した。結果を表2に示した。
X={(C+D)-B}/A …(2)
[式中、A~Dは、赤外分光法により測定される第二接着層の赤外線吸収スペクトルにおける強度であって、Aは、波数3040~2760cm-1の最大強度を示し、Bは、波数1850~1780cm-1の最大強度を示し、Cは、波数1760~1600cm-1の最大強度を示し、Dは、波数2150~2090cm-1の最大強度を示す。]
【0111】
測定装置及び条件の詳細は、下記のとおりである。
(測定装置及び条件)
測定装置:Spectrum Spotlight 400(商品名、PerkinElmer社製)
プリズム:ゲルマニウム
波数分解能:4cm-1
積算回数:4回
ベースライン:波数2400~2600cm-1間の直線部
【0112】
[ラミネート強度の評価]
(80℃環境下でのラミネート強度)
15mm幅にカットした外装材を、80℃の高温環境に5分間放置した。その後、外装材の金属箔層とシーラント層との間の80℃の環境下でのラミネート強度を、引張速度50mm/分の条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いて90度剥離試験により測定した。また、得られたラミネート強度に基づき、以下の基準にて評価を行った。結果を表2に示す。
A:ラミネート強度が2.5N/15mm以上
B:ラミネート強度が2.0N/15mm以上2.5mm未満
C:ラミネート強度が1.5N/15mm以上2.0mm未満
D:ラミネート強度が1.5N/15mm未満
【0113】
(150℃環境下でのラミネート強度)
外装材を放置する温度を150℃とし、90度剥離試験を行う温度を150℃としたこと以外は、80℃環境下でのラミネート強度と同様にして150℃環境下でのラミネート強度を測定し、得られたラミネート強度を評価した。結果を表2に示した。
【0114】
(硫化水素暴露後のラミネート強度)
15mm幅にカットした外装材を、硫化水素濃度20ppm、100℃の環境下で1週間放置した。その後、外装材の金属箔層とシーラント層との間の150℃の環境下でのラミネート強度を、引張速度50mm/分の条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いて90度剥離試験により測定した。得られたラミネート強度を80℃環境下でのラミネート強度と同様の基準で評価した。結果を表2に示した。
【0115】
[耐熱シール強度の評価]
外装材を、120mm×60mmサイズに切り出し、シーラント層が内側になるように半分に折りたたんだ。次いで、折りたたんだ部分とは反対側の端部を220℃/0.5MPa/3秒で10mm幅にヒートシールし、6時間室温で保管した。その後、ヒートシール部の長手方向中央部を幅15mm×長さ300mmで切り出し、ヒートシール強度測定用サンプルを製作した。このサンプルを150℃の試験環境に5分間放置した後、サンプルのヒートシール部に対し、引張速度50mm/分の条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いてT字剥離試験を行った。そして、得られたヒートシール強度に基づき、以下の基準にて評価を行った。結果を表2に示した。
A:ヒートシール強度が15N/15mm以上
B:ヒートシール強度が10N/15mm以上、15N/15mm未満
C:ヒートシール強度が5N/15mm以上、10N/15mm未満
D:ヒートシール強度が5N/15mm未満
【0116】
[水分バリア性の評価]
120mm×110mmの外装材をシーラント層同士が対向するように重ね合わせ、外形寸法120mm×55mmに折り畳んだ。次いで、両側の端縁部を220℃/0.5MPa/3秒で10mm幅にヒートシールし、一辺が開口した袋を作製した。その後、内容物に脱水済みエチレングリコールを3mL注入し、残りの1辺を3mm幅でヒートシールした。なお、10mm幅のシール部分は水分透過がほぼないものとみなし、3mmシール部を測定対象とした。作製した電池用容器を120℃、90%RHの環境下に4週間保存し、保存後のエチレングリコールに含まれる水分量をカールフィッシャーにて測定し、水分透過率を測定した。得られた水分透過率に基づき、以下の基準にて評価を行った。結果を表2に示した。
A:水分透過率が250ppm以下
B:水分透過率が250ppm超300ppm以下
C:水分透過率が300ppm超350ppm以下
D:水分透過率が350ppm超
【0117】
[総合評価]
外装材を下記の基準で総合評価した。各評価の合計値とは、ラミネート強度、耐熱シール強度及び水分バリア性の評価の評価基準の「A」、「B」、「C」及び「D」をそれぞれ3点、2点、1点、0点としたときの合計値である。結果を表2に示した。
A:各評価の合計値が13点以上の場合。
B:各評価の合計値が9点以上12点以下の場合。但し、Dランクが1つでもある場合を除く
C:各評価の合計値が5点以上8点以下の場合。但し、Dランクが1つでもある場合を除く
D:各評価でDランクが1つ以上ある場合
【0118】
【0119】
【0120】
本開示の要旨は以下の[1]~[9]に存する。
[1]蓄電デバイス用外装材であって、
基材層と、
第一接着層と、
金属箔層と、
第二接着層と、
シーラント層と、
をこの順で備える積層構造を有し、
第二接着層が、少なくとも酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネート化合物との反応物を含み、
第二接着層が、下記式(1)の不等式で表される条件を満たす、外装材。
0.01≦{(C+D)-B}/A≦0.60 …(1)
[式中、A~Dは、赤外分光法により測定される第二接着層の赤外線吸収スペクトルにおける強度であって、Aは、波数3040~2760cm-1の最大強度を示し、Bは、波数1850~1780cm-1の最大強度を示し、Cは、波数1760~1600cm-1の最大強度を示し、Dは、波数2150~2090cm-1の最大強度を示す。]
[2]多官能イソシアネート化合物が、脂肪族多官能イソシアネート化合物の多量体及び芳香環を含む多官能イソシアネート化合物の多量体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]に記載の外装材。
[3]第一接着層と金属箔層の間、及び、第二接着層と金属箔層の間の一方又は両方に、腐食防止処理層を備える、[1]又は[2]に記載の外装材。
[4]シーラント層が、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂のうち少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の外装材。
[5]第一接着層及び第二接着層のうち少なくとも一方が、硫化水素吸着物質を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の外装材。
[6]第二接着層が、カルボジイミド化合物を更に含む、[1]~[5]のいずれかに記載の外装材。
[7]全固体電池用である、[1]~[6]のいずれかに記載の外装材。
[8]蓄電デバイス本体と、
蓄電デバイス本体から延在する電流取出し端子と、
電流取出し端子を挟持し且つ蓄電デバイス本体を収容する、[1]~[7]のいずれかに記載の外装材と、
を備える蓄電デバイス。
[9]全固体電池である、[8]に記載の蓄電デバイス。
10…外装材(蓄電デバイス用外装材)、11…基材層(外側の層)、12…第一接着層、13…金属箔層、14a,14b…腐食防止処理層、15…第二接着層、16…シーラント層、50…蓄電デバイス。