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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175159
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】撹拌装置、撹拌翼
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/90 20220101AFI20231205BHJP
   B01F 31/85 20220101ALI20231205BHJP
   B01F 23/53 20220101ALI20231205BHJP
   B01F 23/57 20220101ALI20231205BHJP
【FI】
B01F27/90
B01F31/85
B01F23/53
B01F23/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087469
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】502369746
【氏名又は名称】住友重機械プロセス機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】彌富 隆一
【テーマコード(参考)】
4G035
4G036
4G078
【Fターム(参考)】
4G035AB46
4G036AB22
4G078AA03
4G078AA26
4G078AB01
4G078BA05
4G078BA09
4G078CA08
4G078DA01
4G078DA08
(57)【要約】
【課題】超音波によって流体や流体中の粒子を効果的に微細化できる撹拌装置等を提供する。
【解決手段】撹拌装置1は、流体を収容する撹拌槽2と、回転によって撹拌槽2内の流体を撹拌する撹拌翼3と、撹拌槽2内で撹拌翼3に近接配置され、超音波を発振する超音波発振部4と、を備える。撹拌翼3の回転軸31に垂直な断面において、撹拌翼3と超音波発振部4の最接近距離(G)は撹拌槽2の槽径Dの3%以下である。流体はカーボンブラックを含み、粘度は100cP以上である。超音波発振部4は撹拌槽2の側壁に取り付けられ、撹拌翼3の回転軸31に平行な軸方向に沿って延在する。超音波発振部4は、撹拌翼3の回転軸31に近い内周側において当該撹拌翼3と近接する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を収容する撹拌槽と、
回転によって前記撹拌槽内の流体を撹拌する撹拌翼と、
前記撹拌槽内で前記撹拌翼に近接配置され、超音波を発振する超音波発振部と、
を備える撹拌装置。
【請求項2】
前記撹拌翼の回転軸に垂直な断面において、前記撹拌翼と前記超音波発振部の最接近距離は前記撹拌槽の槽径の3%以下である、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記流体の粘度は100cP以上である、請求項1または2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記流体はカーボンブラックを含む、請求項1または2に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記超音波発振部は前記撹拌槽の側壁に取り付けられる、請求項1または2に記載の撹拌装置。
【請求項6】
前記超音波発振部は、前記撹拌翼の回転軸に平行な軸方向に沿って延在する、請求項1または2に記載の撹拌装置。
【請求項7】
前記超音波発振部は、前記撹拌翼の回転軸に近い内周側において当該撹拌翼と近接する、請求項1または2に記載の撹拌装置。
【請求項8】
前記超音波発振部は、前記撹拌翼の回転軸から遠い外周側において当該撹拌翼と近接する、請求項1または2に記載の撹拌装置。
【請求項9】
前記超音波発振部は、前記撹拌翼の回転軸に近い内周側および前記撹拌翼の回転軸から遠い外周側において当該撹拌翼と近接する、請求項1または2に記載の撹拌装置。
【請求項10】
前記超音波発振部は、前記撹拌翼の回転方向に対向する方向に超音波を発振する、請求項1または2に記載の撹拌装置。
【請求項11】
前記超音波発振部は、当該超音波発振部と前記撹拌翼の回転軸を結ぶ径方向に超音波を発振する、請求項1または2に記載の撹拌装置。
【請求項12】
撹拌槽内の流体を回転によって撹拌する撹拌翼であって、前記撹拌槽内で超音波を発振する超音波発振部と接触せず、その近傍を回転可能な形状を有する撹拌翼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撹拌装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転によって撹拌槽内の流体を撹拌する撹拌翼と、撹拌槽内で超音波を発振する超音波発振部を備える撹拌装置が開示されている。撹拌翼によって混合される撹拌槽内の流体が、超音波発振部によって効果的に微細化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-202277号公報
【特許文献2】特開2009-247969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の撹拌装置は、撹拌翼が発生させる流体の流れを超音波発振部に導くものである。しかし、例えば流体の粘度が高くなると、撹拌翼が発生させる流れが減衰してしまい、流体が超音波発振部に到達しにくくなる恐れがある。また、超音波発振部が発振する超音波も、例えば高粘度の流体では減衰しやすくなる恐れがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、超音波によって流体や流体中の粒子を効果的に微細化できる撹拌装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の撹拌装置は、流体を収容する撹拌槽と、回転によって撹拌槽内の流体を撹拌する撹拌翼と、撹拌槽内で撹拌翼に近接配置され、超音波を発振する超音波発振部と、を備える。
【0007】
この態様では、超音波発振部が撹拌槽内で撹拌翼に近接配置されるため、超音波によって流体や流体中の粒子を効果的に微細化できる。
【0008】
本発明の別の態様は、撹拌翼である。この撹拌翼は、撹拌槽内の流体を回転によって撹拌する撹拌翼であって、撹拌槽内で超音波を発振する超音波発振部と接触せず、その近傍を回転可能な形状を有する。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、超音波によって流体や流体中の粒子を効果的に微細化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】撹拌装置の縦断面図である。
図2】撹拌槽の上面視断面を模式的に示す。
図3】撹拌翼と超音波発振部の第1の変形例を示す。
図4】撹拌翼と超音波発振部の第2の変形例を示す。
図5】撹拌翼と超音波発振部の第3の変形例を示す。
図6】撹拌翼と超音波発振部の第4の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る撹拌装置1の縦断面図である。本実施形態では、撹拌装置1が図1の上下方向または縦方向である鉛直方向に設置されるものとし、上下方向、縦方向、鉛直方向を同義的に使用すると共に、左右方向、横方向、水平方向を同義的に使用する。なお、本発明は鉛直方向に設置されない撹拌装置1にも適用可能であり、そのような場合には上下方向、縦方向と鉛直方向が異なり、左右方向、横方向と水平方向が異なる。また、後述するように、上下方向、縦方向、鉛直方向には撹拌翼3の回転軸31が設けられるため、上下方向、縦方向、鉛直方向を軸方向ともいう。更に、左右方向、横方向、水平方向は撹拌槽2や撹拌翼3の径を定めるため、左右方向、横方向、水平方向を径方向ともいう。
【0014】
撹拌装置1は、撹拌対象の流体を収容する撹拌槽2と、回転によって撹拌槽2内の流体を撹拌する撹拌翼3を備える。撹拌槽2は、上方に設けられて軸方向に延在する円管状の直胴部21と、直胴部21と連続して下方に設けられる底部22を備える。直胴部21の内周壁または側壁は上面視で円状の断面を有し、その直径Dを以下では撹拌槽2の槽径Dともいう。なお、直胴部21および/または撹拌槽2の上面視の断面は非円状の任意の形状でよい。この場合の撹拌槽2の槽径Dは、断面形状の内接円の直径でもよいし、断面形状の外接円の直径でもよいし、これらの平均値や中間値でもよい。直胴部21の上方の少なくとも一部は撹拌対象の流体を投入できるように開口されており、撹拌翼3による流体の撹拌中には蓋等によって閉塞可能になっている。なお、撹拌対象の流体は、直胴部21の側面に設けられる供給ノズル等の流体供給口から撹拌槽2内に供給されてもよい。
【0015】
撹拌槽2の底部22は、直胴部21の下端から下方に膨出する湾曲形状に形成されている。底部22の中央には、湾曲形状の膨出端によって撹拌槽2の最下部が形成される。撹拌槽2の最下部には、撹拌槽2内の流体を撹拌装置1外に排出可能な排出口が設けられてもよい。この排出口は、バルブ等の排出口開閉部によって開閉可能に構成される。撹拌槽2に撹拌対象の流体を投入して保持させる際や排出前の流体を撹拌翼3によって撹拌して濃度を均一化する際は閉状態に制御されたバルブ等が排出口を閉じ、濃度が均一化された後の排出対象の流体を撹拌翼3によって撹拌しながら排出する際は開状態に制御されたバルブ等が排出口を開ける。なお、撹拌後の流体は撹拌槽2の上方等における蓋が開けられた状態の開口から排出されてもよい。また、撹拌後の流体は、直胴部21の側面に設けられる排出ノズル等の流体排出口から撹拌槽2外に排出されてもよい。
【0016】
円管状の直胴部21と曲面状の底部22の水平方向の境界線はタンジェントラインTLとも呼ばれる。以下では、タンジェントラインTLと撹拌槽2内の流体の表面または液面LLの間の鉛直方向の距離を基準高さともいう。また、撹拌槽2(底部22)の最下部と撹拌槽2内の流体の液面LLの間の鉛直方向の距離は液高さとも呼ばれる。
【0017】
図1の紙面に垂直な方向を法線方向とする平板状の撹拌翼3は、撹拌槽2の鉛直方向の中心軸と略一致する鉛直方向の回転軸31の周りに回転可能に設けられる。回転軸31の上方には、回転動力を発生させるモータ等の回転駆動部や、当該回転動力を所望の回転数(または回転速度)やトルクに変換する変速機や減速機等の回転動力変換部が設けられる。なお、必要に応じて複数枚の撹拌翼3を回転軸31に設けてもよい。図1における撹拌翼3は、後述の図3等における小型の撹拌翼3に比べて大型であり、レイノルズ数または撹拌レイノルズ数が100以上の撹拌に好適である。
【0018】
撹拌翼3は、主に二つのフェーズで有意に異なる単位体積当たりの撹拌動力Pv[kW/m3]を生成するように、回転軸31に連結されたモータおよび/または変速機等によって異なる態様で回転駆動される。第1のフェーズは、撹拌槽2(底部22)の最下部の排出口(不図示)が閉じられた状態における撹拌フェーズであり、比較的大きいPvを生成するように撹拌翼3が比較的高速で回転駆動される。この撹拌フェーズでは、比較的大きい撹拌動力によって効果的に撹拌、粉砕、微細化、混合された撹拌槽2内の流体の濃度が後続の排出フェーズの前に均一化される。第2のフェーズは、撹拌槽2(底部22)の最下部の排出口(不図示)が開けられた状態における排出フェーズであり、比較的小さいPvを生成するように撹拌翼3が比較的低速で回転駆動される。この排出フェーズでは、比較的小さい撹拌動力によって先の撹拌フェーズで均一化された濃度を効果的に維持しながら、排出口を通じて所望濃度の流体を排出させる。
【0019】
以上のような撹拌装置1によれば、撹拌フェーズと排出フェーズの二つの連続するフェーズを通じて、撹拌槽2内での撹拌と撹拌槽2外への排出を任意の流体(液体)を対象として行える。但し、以下で説明する超音波発振部4が撹拌翼3に併設された撹拌装置1は、例えば粘度が100cP以上の高粘度の流体に適用するのが好ましい。このような高粘度の流体としては、カーボンブラック等の微粒子を含む任意の流体(油、ワニス、ゴム、ポリマー溶液、溶融樹脂など)が例示される。
【0020】
撹拌翼3による撹拌は、微視的には回転する撹拌翼3が生成する渦によって行われる。一般的な撹拌翼3が生成できる渦のサイズは典型的には数ミクロンから数十ミクロンであり、ディスパー型等の撹拌性能が高い撹拌翼3でも数百ナノメートル程度である。これに対して、例えば典型的なカーボンブラックの径は20-50nm程度であるため、撹拌翼3だけではカーボンブラック等の小径のナノ粒子の凝集体を微細化および/または分散できない。一方、超音波発振部4が発振する超音波は、数ナノメートルから数十ナノメートル以下のサイズの渦を生成するため、カーボンブラック等の微粒子凝集体も容易に微細化および/または分散できる。また、カーボンブラック等の微粒子は極めて凝集しやすいため、超音波等によって微細化および/または分散された微粒子が再凝集しないように、撹拌の際には例えば粘度が100cP以上の高粘度の流体にカーボンブラック等の微粒子が混合される。更に、超音波等によって微粒子凝集体が微細化および/または分散されることで微粒子の総表面積が大きくなるため、流体の粘度は撹拌によって一層高くなる。
【0021】
超音波を発振する超音波振動子や超音波発振器等の超音波発振部4は、撹拌槽2内で撹拌翼3に近接配置される。前述のように、平板状の撹拌翼3は軸方向の回転軸31の周りに回転するため、当該撹拌翼3と超音波発振部4の径方向の距離は変動する。ここで「超音波発振部4が撹拌翼3に近接配置される」とは、回転する撹拌翼3が径方向に超音波発振部4に最も接近した図1の状態において、撹拌翼3と超音波発振部4が径方向の隙間Gを介して近接することをいう。換言すれば、撹拌翼3は、撹拌槽2内で超音波を発振する超音波発振部4と接触せず、その近傍を回転可能な形状を有する。
【0022】
図2は、撹拌翼3の回転軸31に垂直な上面視断面を模式的に示す。この例では、撹拌翼3が回転軸31の周りに反時計回り方向に回転する。超音波発振部4は、撹拌槽2(直胴部21)の側壁または内周壁に取付部材41によって取り付けられている。反時計回り方向に回転する撹拌翼3と対向または略正対するように配置された超音波発振部4は、その近傍を回転する撹拌翼3および/または隙間Gに向けて超音波を発振する。このように超音波発振部4は、撹拌翼3によって撹拌される流体に効果的に超音波を加えられる。なお、超音波発振部4が発振する超音波は、撹拌翼3の回転方向(図2の例では反時計回り方向)に対向する反回転方向(図2の例では時計回り方向)でもよいし、超音波発振部4と撹拌翼3の回転軸31を結ぶ径方向(図2の例では左右方向)でもよいし、反回転方向と径方向の両方の成分を含んでもよい。特に、超音波発振部4が径方向に発振する超音波は、撹拌翼3との隙間Gに直接的に加えられるため、この僅かな隙間Gにおいて流体に加わる強いせん断力と相まって、極めて効果的に流体を微細化できる。
【0023】
撹拌翼3と超音波発振部4の径方向の最接近距離である隙間Gは、撹拌翼3と超音波発振部4の間の強いせん断力の生成と、隣接する超音波発振部4による超音波の集中的または局所的な印加の主に二つの観点から、可能な限り小さくするのが好ましい。具体的には、カーボンブラック等を含む粘度が100cP以上の各種の高粘度流体について検討した結果、撹拌翼3と超音波発振部4の最接近距離(隙間G)が撹拌槽2の槽径Dの3%以下(G≦0.03×D)であれば、実用的に十分な撹拌作用および/または微細化作用が実現されうることが見出された。一般的に、流体の粘度が高いほど撹拌および/または微細化の難易度は高まるため、以上の条件(G≦0.03×D)は低粘度流体にも有効である。もちろん、当該条件を緩和して隙間Gをより大きくしてもよい(但し、槽径Dの3%以下が好ましい)。
【0024】
撹拌対象の流体の粘度が高くなると、撹拌翼が発生させる流れが減衰しやすくなり、特許文献1のように撹拌翼と超音波発振部が離れている場合には、流体が超音波発振部に到達しにくくなる。また、超音波発振部が発振する超音波も、高粘度の流体では減衰しやすくなる。本実施形態では、超音波発振部4が撹拌槽2内で撹拌翼3に近接配置されるため、撹拌翼3の回転によって高粘度流体を超音波発振部4に直接的に導くことができ、特に強いせん断力が働く隙間G内に導かれた高粘度流体に対して更に超音波発振部4が超音波を直接的に与えることで、極めて効果的に高粘度流体や流体中の粒子を微細化できる。
【0025】
図2に示されるように、撹拌槽2の側壁に沿って一または複数のバッフル5が配置されている。また、図1に示されるように、各バッフル5は液面LLとタンジェントラインTLの間の基準高さの略全体に亘って軸方向に沿って延在する。邪魔板とも呼ばれるバッフル5は、流体が慣性によって撹拌翼3と同様に回転してしまう供回りを防ぐために設けられる。撹拌翼3によって周方向に回転された流体がバッフル5に当たることで軸方向の流れが発生するため、流体は供回りをせずに回転する撹拌翼3によって効果的に撹拌される。
【0026】
複数のバッフル5は、典型的には撹拌槽2の周方向に沿って略等間隔で設けられる。図2の例では、撹拌槽2の内周壁に沿って略45度の間隔で設けられていた八つのバッフル5の一つが超音波発振部4に置き換えられている。この場合、超音波発振部4と周方向に隣接するバッフル5の間隔(約45度)は、隣接するバッフル5同士の間隔(45度)と略等しい。なお、既存の八つのバッフル5はそのままにして、バッフル5が設けられていない撹拌槽2の周方向位置に超音波発振部4を追加的に設置してもよい。また、超音波発振部4は複数設けられてもよい。この場合、複数のバッフル5と同様に、複数の超音波発振部4は、撹拌槽2の周方向に沿って対称的に配置されるのが好ましい。
【0027】
図1に示されるように、超音波発振部4は液面LLとタンジェントラインTLの間の基準高さの略全体に亘って軸方向に沿って延在する。図1では模式的に超音波発振部4を軸方向に長尺の一つの部材として示しているが、それぞれが超音波を発振する複数の超音波振動子を軸方向に並べることによって超音波発振部4を構成してもよい。図1の例では、軸方向に沿って延在する超音波発振部4が、撹拌翼3の回転軸31に近い内周側において当該撹拌翼3と近接している。換言すれば、回転する撹拌翼3が径方向に超音波発振部4に最も接近した図1の状態において、超音波発振部4の内周側の軸方向の縁と撹拌翼3の外周側の軸方向の縁が、互いに略平行になって径方向の隙間Gを介して対向している。このように、撹拌槽2の直胴部21における撹拌翼3の基準高さ(タンジェントラインTL以下の部分を除く軸方向の長さ(但し、撹拌翼3はタンジェントラインTL以下まで延びていてもよい))の略全体に亘って、強いせん断力と超音波発振部4による超音波が集中的に加えられる微小な隙間Gが形成されるため、極めて効果的に流体や流体中の粒子を撹拌および/または微細化できる。
【0028】
図3は、撹拌翼3と超音波発振部4の第1の変形例を示す。変形例の説明において、図1および/または図2と同様の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。図3の紙面に垂直な方向を法線方向とする平板状の撹拌翼3は、撹拌槽2の鉛直方向の中心軸と略一致する鉛直方向の回転軸31の周りに回転可能に設けられる。この錨状またはU字状の撹拌翼3はアンカー翼とも呼ばれ、レイノルズ数または撹拌レイノルズ数が100未満の撹拌に好適である。同様のレイノルズ数の撹拌に好適な他の撹拌翼3として、リボン翼またはヘリカルリボン翼が例示される。
【0029】
超音波を発振する超音波振動子や超音波発振器等の超音波発振部4は、撹拌槽2内で撹拌翼3に近接配置される。ここで「超音波発振部4が撹拌翼3に近接配置される」とは、回転する撹拌翼3が径方向に超音波発振部4に最も接近した図3の状態において、撹拌翼3と超音波発振部4が径方向の隙間Gを介して近接することをいう。換言すれば、撹拌翼3は、撹拌槽2内で超音波を発振する超音波発振部4と接触せず、その近傍を回転可能な形状を有する。前述の他の例と同様に、撹拌翼3と超音波発振部4の径方向の最接近距離である隙間Gは、撹拌翼3と超音波発振部4の間の強いせん断力の生成と、隣接する超音波発振部4による超音波の集中的または局所的な印加の主に二つの観点から、可能な限り小さくするのが好ましい。具体的には、カーボンブラック等を含む粘度が100cP以上の高粘度流体について、撹拌翼3と超音波発振部4の最接近距離(隙間G)を撹拌槽2の槽径Dの3%以下(G≦0.03×D)とするのが好ましい。
【0030】
超音波発振部4は液面LLとタンジェントラインTLの間の基準高さの略全体に亘って軸方向に沿って延在する。図3の例では、軸方向に沿って延在する超音波発振部4が、撹拌翼3の回転軸31から遠い外周側において当該撹拌翼3と近接している。換言すれば、回転する撹拌翼3が径方向に超音波発振部4に最も接近した図3の状態において、超音波発振部4の外周側の軸方向の縁と撹拌翼3の内周側の軸方向の縁が、互いに略平行になって径方向の隙間Gを介して対向している。このように、撹拌槽2の直胴部21における撹拌翼3の基準高さ(タンジェントラインTL以下の部分を除く軸方向の長さ)の略全体に亘って、強いせん断力と超音波発振部4による超音波が集中的に加えられる微小な隙間Gが形成されるため、極めて効果的に流体や流体中の粒子を撹拌および/または微細化できる。
【0031】
図4は、撹拌翼3と超音波発振部4の第2の変形例を示す。図4の紙面に垂直な方向を法線方向とする上下左右の複数(4枚)の平板状の撹拌翼3は、撹拌槽2の鉛直方向の中心軸と略一致する鉛直方向の回転軸31の周りに一体的に回転可能に設けられる。図4における左側の上下の撹拌翼3の間の軸方向の隙間には、超音波発振部4の取付部材41が径方向に沿って内周側に延在または貫通している。取付部材41の内周側の端に取り付けられている超音波発振部4は、軸方向に沿って上側および下側に延在して上下の撹拌翼3に近接配置される。なお、特許文献2に示されるように、一または複数の撹拌翼3の法線方向は、図4の紙面に垂直な方向に対して傾斜していてもよい。また、一または複数の撹拌翼3は平面状に限らず、特許文献2に示されるようなヘリカル状(螺旋状)等の曲面状でもよい。
【0032】
ここで「超音波発振部4が撹拌翼3に近接配置される」とは、回転する撹拌翼3が径方向に超音波発振部4に最も接近した図4の状態において、撹拌翼3と超音波発振部4が径方向の隙間Gを介して近接することをいう。換言すれば、撹拌翼3は、撹拌槽2内で超音波を発振する超音波発振部4と接触せず、その近傍を回転可能な形状を有する。前述の他の例と同様に、撹拌翼3と超音波発振部4の径方向の最接近距離である隙間Gは、撹拌翼3と超音波発振部4の間の強いせん断力の生成と、隣接する超音波発振部4による超音波の集中的または局所的な印加の主に二つの観点から、可能な限り小さくするのが好ましい。具体的には、カーボンブラック等を含む粘度が100cP以上の高粘度流体について、撹拌翼3と超音波発振部4の最接近距離(隙間G)を撹拌槽2の槽径Dの3%以下(G≦0.03×D)とするのが好ましい。
【0033】
図4の例では、軸方向に沿って上下に延在する超音波発振部4が、撹拌翼3の回転軸31から遠い外周側において上下2枚の撹拌翼3と近接している。換言すれば、回転する撹拌翼3が径方向に超音波発振部4に最も接近した図4の状態において、超音波発振部4の外周側の軸方向の縁と上下2枚の撹拌翼3の内周側の軸方向の縁が、互いに略平行になって径方向の隙間Gを介して対向している。このように、強いせん断力と超音波発振部4による超音波が集中的に加えられる微小な隙間Gが上下2枚の撹拌翼3について形成されるため、極めて効果的に流体や流体中の粒子を撹拌および/または微細化できる。特に、上下2枚の撹拌翼3の間の軸方向の隙間(取付部材41が貫通する空間)と上下の各隙間Gの間で流体の流れが生じるため、上下の各隙間Gにおいて分散処理および/または微細化処理が施される流体や流体中の粒子の実質的な量を多くできる。
【0034】
図5は、撹拌翼3と超音波発振部4の第3の変形例を示す。図5における撹拌翼3は、図1における撹拌翼3に超音波発振部4の外周側に回り込む一対の外周翼32を追加的に設けたものである。外周翼32は、撹拌槽2の底部22において撹拌翼3の本体の下部から外周側に延びて超音波発振部4の下方を通過する。その後に撹拌槽2の直胴部21の側壁に沿って上側に延びた外周翼32は、超音波発振部4に外周側から近接配置される。この結果、超音波発振部4は、外周側の外周翼32および内周側の撹拌翼3の本体によって径方向の両側から挟み込まれる。
【0035】
回転する撹拌翼3(外周翼32を含む)が径方向に超音波発振部4に最も接近した図5の状態において、超音波発振部4の径方向の両側には撹拌翼3との間に微小な隙間Gが形成される。前述の他の例と同様に、撹拌翼3と超音波発振部4の径方向の最接近距離である隙間Gは、撹拌翼3と超音波発振部4の間の強いせん断力の生成と、隣接する超音波発振部4による超音波の集中的または局所的な印加の主に二つの観点から、可能な限り小さくするのが好ましい。具体的には、カーボンブラック等を含む粘度が100cP以上の高粘度流体について、撹拌翼3と超音波発振部4の最接近距離(隙間G)を撹拌槽2の槽径Dの3%以下(G≦0.03×D)とするのが好ましい。
【0036】
図5の例では、軸方向に沿って延在する超音波発振部4が、撹拌翼3の回転軸31に近い内周側において撹拌翼3の本体と近接しており、撹拌翼3の回転軸31から遠い外周側において撹拌翼3の外周翼32と近接している。換言すれば、回転する撹拌翼3が径方向に超音波発振部4に最も接近した図5の状態において、超音波発振部4の内周側の軸方向の縁と撹拌翼3の本体の外周側の軸方向の縁が、互いに略平行になって径方向の隙間Gを介して対向していると共に、超音波発振部4の外周側の軸方向の縁と撹拌翼3の外周翼32の内周側の軸方向の縁が、互いに略平行になって径方向の隙間Gを介して対向している。このように、強いせん断力と超音波発振部4による超音波が集中的に加えられる微小な隙間Gが超音波発振部4の径方向の両側に形成されるため、極めて効果的に流体や流体中の粒子を撹拌および/または微細化できる。
【0037】
図6は、撹拌翼3と超音波発振部4の第4の変形例を示す。図6における撹拌翼3は、図4における撹拌翼3に超音波発振部4の内周側で軸方向に延在する一対の内周翼33を追加的に設けたものである。内周翼33は、超音波発振部4に内周側から近接配置される。この結果、超音波発振部4は、外周側の撹拌翼3の本体および内周側の内周翼33によって径方向の両側から挟み込まれる。
【0038】
回転する撹拌翼3(内周翼33を含む)が径方向に超音波発振部4に最も接近した図6の状態において、超音波発振部4の径方向の両側には撹拌翼3との間に微小な隙間Gが形成される。前述の他の例と同様に、撹拌翼3と超音波発振部4の径方向の最接近距離である隙間Gは、撹拌翼3と超音波発振部4の間の強いせん断力の生成と、隣接する超音波発振部4による超音波の集中的または局所的な印加の主に二つの観点から、可能な限り小さくするのが好ましい。具体的には、カーボンブラック等を含む粘度が100cP以上の高粘度流体について、撹拌翼3と超音波発振部4の最接近距離(隙間G)を撹拌槽2の槽径Dの3%以下(G≦0.03×D)とするのが好ましい。
【0039】
図6の例では、軸方向に沿って延在する超音波発振部4が、撹拌翼3の回転軸31に近い内周側において撹拌翼3の内周翼33と近接しており、撹拌翼3の回転軸31から遠い外周側において撹拌翼3の本体と近接している。換言すれば、回転する撹拌翼3が径方向に超音波発振部4に最も接近した図6の状態において、超音波発振部4の内周側の軸方向の縁と撹拌翼3の内周翼33の外周側の軸方向の縁が、互いに略平行になって径方向の隙間Gを介して対向していると共に、超音波発振部4の外周側の軸方向の縁と撹拌翼3の本体の内周側の軸方向の縁が、互いに略平行になって径方向の隙間Gを介して対向している。このように、強いせん断力と超音波発振部4による超音波が集中的に加えられる微小な隙間Gが超音波発振部4の径方向の両側に形成されるため、極めて効果的に流体や流体中の粒子を撹拌および/または微細化できる。
【0040】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0041】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 撹拌装置、2 撹拌槽、3 撹拌翼、4 超音波発振部、5 バッフル、21 直胴部、22 底部、31 回転軸、32 外周翼、33 内周翼、41 取付部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6