(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175173
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】伝送回路
(51)【国際特許分類】
H01P 5/08 20060101AFI20231205BHJP
H01P 5/02 20060101ALI20231205BHJP
H03F 3/60 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01P5/08 Z
H01P5/02 603K
H03F3/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087487
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森山 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山口 敦司
【テーマコード(参考)】
5J067
【Fターム(参考)】
5J067AA04
5J067CA75
5J067FA12
5J067FA16
5J067HA29
5J067KA29
5J067KA68
5J067KS15
5J067LS12
5J067QA04
5J067QS03
5J067SA13
5J067TA01
5J067TA03
(57)【要約】
【課題】所定の周波数を含む帯域における伝送特性を向上すること。
【解決手段】伝送回路10は、特定素子であるアンプ30と、アンプ30の入力に接続された入力伝送線路41~43と、アンプ30の出力に接続された出力伝送線路61~63と、を含む。さらに、伝送回路10は、入力伝送線路41~43に対して並列に接続され、インピーダンス整合に用いられる入力コンデンサ51~53と、出力伝送線路61~63に対して並列に接続され、インピーダンス整合に用いられる出力コンデンサ71~73と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数を含む帯域の信号が伝送される伝送回路であって、
特定素子と、
前記特定素子の入力に接続された1または複数の入力伝送線路と、
前記特定素子の出力に接続された1または複数の出力伝送線路と、
前記入力伝送線路に対して並列に接続され、インピーダンス整合に用いられる入力コンデンサと、
前記出力伝送線路に対して並列に接続され、インピーダンス整合に用いられる出力コンデンサと、
を含む、
伝送回路。
【請求項2】
前記特定素子は、実数成分と虚数成分とを含む特性インピーダンスを有する素子である、請求項1に記載の伝送回路。
【請求項3】
前記特定素子は、アンプである、請求項1に記載の伝送回路。
【請求項4】
前記所定の周波数は、1GHz以上である、請求項1に記載の伝送回路。
【請求項5】
前記入力伝送線路を複数含み、前記複数の入力伝送線路と同数の前記入力コンデンサは複数を含み、前記複数の入力伝送線路は前記特定素子の入力に対して直列に接続され、前記複数の入力コンデンサは前記複数の入力伝送線路にそれぞれ並列に接続されている、請求項1に記載の伝送回路。
【請求項6】
前記複数の入力伝送線路は、インピーダンス整合するように設定された線路幅および線路長の少なくとも一方を有する、請求項5に記載の伝送回路。
【請求項7】
前記複数の入力コンデンサは、インピーダンス整合するように設定された容量値を有する、請求項5に記載の伝送回路。
【請求項8】
前記出力伝送線路を含み、前記複数の出力伝送線路と同数の前記出力コンデンサを含み、前記複数の出力伝送線路は前記特定素子の出力に対して直列に接続され、前記複数の出力コンデンサは前記複数の出力伝送線路にそれぞれ並列に接続されている、請求項1に記載の伝送回路。
【請求項9】
複数の出力伝送線路は、インピーダンス整合するように設定された線路幅および線路長の少なくとも一方を有する、請求項8に記載の伝送回路。
【請求項10】
複数の出力コンデンサは、インピーダンス整合するように設定された容量値を有する、請求項8に記載の伝送回路。
【請求項11】
前記入力伝送線路の線路長は、前記入力コンデンサの長さよりも長い、請求項1に記載の伝送回路。
【請求項12】
前記出力伝送線路の線路長は、前記出力コンデンサの長さよりも長い、請求項1に記載の伝送回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伝送回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
信号を伝達する伝達線路を含む伝送回路では、伝送線路におけるインピーダンスマッチングを行う必要がある。伝送線路により伝達する信号の周波数において、伝送線路とグランドとの間に容量素子を設けることにより、伝送線路におけるインピーダンスマッチングを行うものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、伝送線路の途中にアンプ等の素子を設ける場合がある。アンプ等の素子を設けた伝送回路では、所望の周波数の一点でしかインピーダンスマッチングを行うことができない場合がある。したがって、この伝送回路では、伝送特性において、所望の周波数でのみ低損失となる。このため、所定の周波数を含む帯域における伝送特性について改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様である伝送回路は、所定の周波数を含む帯域の信号が伝送される伝送回路であって、特定素子と、前記特定素子の入力に接続された1または複数の入力伝送線路と、前記特定素子の出力に接続された1または複数の出力伝送線路と、前記入力伝送線路に対して並列に接続され、インピーダンス整合に用いられる入力コンデンサと、前記出力伝送線路に対して並列に接続され、インピーダンス整合に用いられる出力コンデンサと、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、特定素子を含む伝送回路において、所定の周波数を含む帯域における伝送特性を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態の伝送回路を示す回路図である。
【
図2】
図2は、
図1の伝送回路のレイアウト例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、
図1の伝送回路の周波数-伝送特性を示す説明図である。
【
図4】
図4は、伝送線路におけるインピーダンス整合の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、
図1の伝送回路におけるインピーダンス整合を示す説明図である。
【
図6】
図6は、アンプを含む伝送回路における周波数-インピーダンス特性を示す波形図である。
【
図7】
図7は、
図5の伝送回路における周波数-インピーダンス特性を示す波形図である。
【
図8】
図8は、比較例の伝送回路を示す回路図である。
【
図9】
図9は、
図8の比較例の伝送回路における周波数-伝送特性を示す説明図である。
【
図11】
図11は、伝送線路の形状に対する周波数-伝送特性を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本開示の伝送回路の実施形態を説明する。なお、説明を簡単かつ明確にするために、図面に示される構成要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。添付の図面は、本開示の実施形態を例示するに過ぎず、本開示を制限するものとみなされるべきではない。
【0009】
以下の詳細な記載は、本開示の例示的な実施形態を具体化する装置、システム、および方法を含む。この詳細な記載は本来説明のためのものに過ぎず、本開示の実施形態またはこのような実施形態の適用および使用を限定することを意図しない。
【0010】
図1は、一実施形態の伝送回路を示す回路図である。
図2は、
図1の伝送回路のレイアウト例を示す説明図である。
図3は、
図1の伝送回路の周波数-伝送特性を示す説明図である。
図4は、伝送線路におけるインピーダンス整合の一例を示す説明図である。
図5は、
図1の伝送回路におけるインピーダンス整合を示す説明図である。
図6は、アンプを含む伝送回路における周波数-インピーダンス特性を示す波形図である。
図7は、
図5の伝送回路における周波数-インピーダンス特性を示す波形図である。
図8は、比較例の伝送回路を示す回路図である。
図9は、
図8の比較例の伝送回路における周波数-伝送特性を示す説明図である。
図10は、伝送線路の形状に係る説明図である。
図11は、伝送線路の形状に対する周波数-伝送特性を示す説明図である。
【0011】
(伝送回路の構成)
図1に示すように、伝送回路10は、入力端子21,22、出力端子23,24を含む。伝送回路10は、所定の周波数を含む帯域の信号が伝送される回路である。所定の周波数は、1GHz以上である。所定の周波数は、たとえば5GHzである。
【0012】
入力端子21,22は、たとえば携帯電話等の電波を受信するアンテナに接続される。伝送回路10は、アンプ30を含む。伝送回路10は、受信した信号を増幅する。伝送回路10の出力端子23,24は、受信回路等に接続される。アンプ30は、実数成分と虚数成分とを含む特性インピーダンスを持つ特定素子の一例である。また、伝送回路10は、アンプ30と他の特定素子とを含む構成としてもよい。なお、伝送回路10は、送信回路に用いられてもよい。この場合、入力端子21,22は、送信回路等に接続され、出力端子23,24は電波を送信するアンテナに接続される。入力端子21,22は、一例では、アンプ30が実装される基板に設けられたパッドである。出力端子23,24は、一例では、アンプ30が実装される基板に設けられたパッドである。
【0013】
アンプ30は、信号を入力する入力端子31と、信号を出力する出力端子32とを有している。アンプ30は、入力信号を増幅して出力する。伝送回路10は、アンプ30の入力端子31に接続された伝送線路40と、アンプ30の出力端子32に接続された伝送線路60とを含む。つまり、伝送回路10は、2つの伝送線路40,60と、2つの伝送線路40,60の間に設けられたアンプ30と、を含む。
【0014】
本実施形態の伝送線路40は、3つの入力伝送線路41,42,43と、3つの入力コンデンサ51,52,53を含む。入力コンデンサは、入力伝送線路と同数設けられる。入力伝送線路41~43は、アンプ30の入力端子31に対して直列に接続されている。入力コンデンサ51~53は、入力伝送線路41~43に対してそれぞれ並列に接続されている。
【0015】
本実施形態の伝送線路60は、3つの出力伝送線路61,62,63と、3つの出力コンデンサ71,72,73を含む。出力コンデンサは、入力伝送線路と同数設けられる。出力伝送線路61~63は、アンプ30の出力端子32に対して直列に接続されている。出力コンデンサ71~73は、出力伝送線路61~63に対してそれぞれ並列に接続されている。
【0016】
入力伝送線路41~43はそれぞれ、線路幅および線路長を有している。入力伝送線路41~43の線路幅および線路長は、伝送回路10において、インピーダンス整合するように設定されている。言い換えると、入力伝送線路41~43は、伝送回路10において、インピーダンス整合するように設定された線路幅および線路長を有する。
【0017】
入力コンデンサ51~53はそれぞれ、容量値を有している。入力コンデンサ51~53の容量値は、インピーダンス整合するように設定されている。言い換えると、入力コンデンサ51~53は、インピーダンス整合するように設定された容量値を有する。
【0018】
出力伝送線路61~63はそれぞれ、線路幅および線路長を有している。出力伝送線路61~63の線路幅および線路長の少なくとも一方は、伝送回路10において、インピーダンス整合するように設定されている。言い換えると、出力伝送線路61~63は、伝送回路10において、インピーダンス整合するように設定された線路幅および線路長の少なくとも一方を有する。
【0019】
出力コンデンサ71~73はそれぞれ、容量値を有している。出力コンデンサ71~73の容量値は、インピーダンス整合するように設定されている。言い換えると、出力コンデンサ71~73は、インピーダンス整合するように設定された容量値を有する。
【0020】
入力伝送線路41~43の線路幅,線路長と、入力コンデンサ51~53の容量値は、アンプ30の入力端子31から入力端子21,22の側を視たときのインピーダンスと、アンプ30の入力端子31から出力端子23,24の側を視たときのインピーダンスとを等しくするように設定される。つまり、入力伝送線路41~43の線路幅,線路長と、入力コンデンサ51~53の容量値は、入力伝送線路41~43と入力コンデンサ51~53とを含むインピーダンスと、アンプ30と出力伝送線路61~63と出力コンデンサ71~73とを含むインピーダンスとを等しくするように設定される。
【0021】
出力伝送線路61~63の線路幅,線路長と、出力コンデンサ71~73の容量値は、アンプ30の出力端子32から入力端子21,22の側を視たときのインピーダンスと、アンプ30の出力端子32から出力端子23,24の側を視たときのインピーダンスとを等しくするように設定される。つまり、出力伝送線路61~63の線路幅,線路長と、出力コンデンサ71~73の容量値は、入力伝送線路41~43と入力コンデンサ51~53とアンプ30とを含むインピーダンスと、出力伝送線路61~63と出力コンデンサ71~73とを含むインピーダンスとを等しくするように設定される。
【0022】
(伝送回路のパターン例)
図2に示すように、基板80の表面81には、入力伝送線路41~43、出力伝送線路61~63が形成されている。また、基板80の表面81には、入力端子21、出力端子23、アンプ30が接続されるパッド83,84が形成されている。基板80は、たとえばエポキシ樹脂、アルミナ、等により構成された絶縁基板、金属板の表面を絶縁膜で被覆したメタルコア基板、等を用いることができる。パッド83は、
図1に示すアンプ30の入力端子31が接続され、パッド84は、アンプ30の出力端子32が接続される。
【0023】
図2において、入力伝送線路41~43は、互いに異なる線路幅を有している。また、入力伝送線路41~43は、互いに異なる線路長を有している。入力コンデンサ51~53は、同じチップ長さを有している。チップ長さは、入力コンデンサ51~53が有する接続端子に沿った長さである。
【0024】
入力伝送線路41は、第1端411と第2端412とを有している。入力コンデンサ51は、入力伝送線路41の第1端411と第2端412とに接続されている。同様に、入力伝送線路42,43は、第1端421,431と第2端422,432とを有している。入力コンデンサ52,53は、入力伝送線路42,43の第1端421,431と第2端422,432とに接続されている。
図2では、入力コンデンサ51~53は、一列に配置されている。また、
図2では、入力コンデンサ51~53は、パッド83と入力端子21とを結ぶ直線上に配置されている。
【0025】
図2において、出力伝送線路61~63は、互いに異なる線路幅を有している。また、出力伝送線路61~63は、互いに異なる線路長を有している。出力コンデンサ71~73は、同じチップ長さを有している。チップ長さは、出力コンデンサ71~73が有する接続端子に沿った長さである。
【0026】
出力伝送線路61は、第1端611と第2端612とを有している。出力コンデンサ71は、出力伝送線路61の第1端611と第2端612とに接続されている。同様に、出力伝送線路62,63は、第1端621,631と第2端622,632とを有している。出力コンデンサ72,73は、出力伝送線路62,63の第1端621,631と第2端622,632とに接続されている。
図2では、出力コンデンサ71~73は、一列に配置されている。また、
図2では、出力コンデンサ71~73は、パッド84と出力端子23とを結ぶ直線上に配置されている。
【0027】
(周波数-伝送特性)
図3は、本実施形態の伝送回路10における周波数と伝送特性(S21)との関係を示す。
図3において、横軸は周波数、縦軸は伝送特性である。実線91Aは、本実施形態の伝送回路10の特性を示している。破線91Bは、
図8に示す比較例の伝送回路10Xの特性を示している。伝送特性(S21)は、
図1の入力端子21における信号振幅に対する出力端子23における信号振幅の割合である。
【0028】
図8に示す比較例の伝送回路10Xは、
図1に示す本実施形態の伝送回路10に対して、入力コンデンサ51~53と出力コンデンサ71~73とを有していない。比較例の伝送回路10Xは、入力伝送線路41~43と出力伝送線路61~63のみによってインピーダンス整合したものである。
【0029】
図9は、
図8の比較例の伝送回路10Xにおける周波数と伝送特性(S21)との関係を示す。
図9において、横軸は周波数、縦軸は伝送特性である。実線94Aはインピーダンス整合を行った場合を示している。破線94Bは、インピーダンス整合を行っていない場合を示している。インピーダンス整合することにより、所望の周波数f0において、伝送特性(S21)を向上させることができる。
【0030】
図8に示す比較例の伝送回路10Xは、所望の周波数f0において良好な伝送特性(S21)を有している。これに対して、本実施形態の伝送回路10は、所望の周波数f0を含む所定の帯域である周波数f1から周波数f2までの間において、良好な伝送特性(S21)を有している。
【0031】
(インピーダンス整合)
本実施形態の伝送回路10のインピーダンス整合について説明する。
図4は、伝送線路におけるインピーダンス整合の一例を示す。
【0032】
伝送線路102の特性インピーダンスZ0と、出力負荷103のインピーダンスZLoutによって決まるインピーダンスZinと、入力負荷101のインピーダンスZLinとが複素共役の関係になるとき、インピーダンス整合がとられ、最も伝送特性が良好となる。これは、たとえば、入力負荷101のインピーダンスZLinと伝送線路102の特性インピーダンスZ0と出力負荷103のインピーダンスZLoutとを互いに等しくすることにより得られる。
【0033】
上述したように、入力インピーダンスZ
inは、伝送線路102の特性インピーダンスZ
0と、出力負荷103のインピーダンスZ
Loutによって決まる。
図1に示すアンプ30は、実数成分と虚数成分とを含むインピーダンスを有する。出力負荷103として
図1に示すアンプ30を含む場合、入力インピーダンスZ
inは、実数成分と虚数成分とを含む。この入力インピーダンスZ
inは、伝送する信号の周波数に応じて、
図6に示すように変化する。
図6において、実線92Aは実数成分を示し、破線92Bは虚数成分を示す。このように、実数成分と虚数成分とが周波数に応じて変化するため、所望の周波数において、マッチングをとることができる。しかしながら、所望の周波数を含む帯域においてインピーダンスマッチングを取ることは困難である。
【0034】
これに対し、
図5に示すように、伝送線路102に対してコンデンサ104を並列に接続する。
図7は、この
図5に示す伝送回路における入力インピーダンスZ
inを示す。
図7において、実線93Aは実数成分を示し、破線93Bは虚数成分を示す。このように、伝送線路102に対してコンデンサ104を並列に接続することにより、入力インピーダンスZ
inの虚数成分の変化が緩やかになる。つまり、周波数に対する虚数成分の変化は、
図6に示す特性に比べて少なくなる。このため、所望の周波数f0を含む帯域において、インピーダンスマッチングをとり易くなる。したがって、所望の周波数f0を含む帯域において、インピーダンスマッチングをとることができるため、帯域における伝送特性を向上することができる。
【0035】
ここで、伝送線路とコンデンサとの関係について検討する。コンデンサは、伝送線路に対して並列に接続される。詳しくは、コンデンサは、伝送線路の両端の間に取り付けられる。このため、伝送線路の線路長と等しい長さのコンデンサが必要となる。しかし、コンデンサが長くなると、コンデンサに対する寄生インダクタンスが大きくなる。この寄生インダクタンスは、インピーダンス整合に対する誤差を大きくする要因となる。
【0036】
図10に示すように、円弧状の伝送線路112は、直線状の伝送線路111の線路長L1、線路幅W1と同じ線路長L2、線路幅W2を有している。これらの伝送線路111,112における伝送特性(S21)を
図11に示す。
図11において、横軸は周波数、縦軸は伝送特性(S21)である。実線95Aは、円弧状の伝送線路112の特性を示している。破線95Bは、直線状の伝送線路111の特性を示している。このように、線路長、線路幅が互いに同じ伝送線路111,112では、同じ特性が得られる。
【0037】
したがって、
図3に示すように、入力伝送線路41~43を湾曲した形状とすることにより、入力コンデンサ51~53を長くすることなく、入力伝送線路41~43に対して並列に接続することができる。これにより、入力コンデンサ51~53における寄生インダクタンスの増加を抑制し、インピーダンス整合における誤差の増加を抑制することができる。
【0038】
同様に、出力伝送線路61~63を湾曲した形状とすることにより、出力コンデンサ71~73を長くすることなく、出力伝送線路61~63に対して並列に接続することができる。これにより、出力コンデンサ71~73における寄生インダクタンスの増加を抑制し、インピーダンス整合における誤差の増加を抑制することができる。
【0039】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)伝送回路10は、特定素子であるアンプ30と、アンプ30の入力に接続された入力伝送線路41~43と、アンプ30の出力に接続された出力伝送線路61~63と、を含む。さらに、伝送回路10は、入力伝送線路41~43に対して並列に接続され、インピーダンス整合に用いられる入力コンデンサ51~53と、出力伝送線路61~63に対して並列に接続され、インピーダンス整合に用いられる出力コンデンサ71~73と、を含む。
【0040】
アンプ30は、実数成分と虚数成分とを含む特性インピーダンスを持つ。入力伝送線路41~43と出力伝送線路61~63に対して入力コンデンサ51~53と出力コンデンサ71~73を並列に接続することにより、入力インピーダンスZinの虚数成分の変化が緩やかになる。つまり、周波数に対する虚数成分の変化は、少なくなる。このため、所望の周波数f0を含む帯域において、インピーダンスマッチングをとり易くなる。したがって、所望の周波数f0を含む帯域において、インピーダンスマッチングをとることができるため、帯域における伝送特性を向上することができる。
【0041】
(2)入力伝送線路41~43を湾曲した形状とすることにより、入力コンデンサ51~53を長くすることなく、入力伝送線路41~43に対して並列に接続することができる。これにより、入力コンデンサ51~53における寄生インダクタンスの増加を抑制し、インピーダンス整合における誤差の増加を抑制することができる。
【0042】
(3)出力伝送線路61~63を湾曲した形状とすることにより、出力コンデンサ71~73を長くすることなく、出力伝送線路61~63に対して並列に接続することができる。これにより、出力コンデンサ71~73における寄生インダクタンスの増加を抑制し、インピーダンス整合における誤差の増加を抑制することができる。
【0043】
(変更例)
上記実施形態は例えば以下のように変更できる。上記実施形態と以下の各変更例は、技術的な矛盾が生じない限り、互いに組み合せることができる。なお、以下の変更例において、上記実施形態と共通する部分については、上記実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
・伝送回路10は、アンプ30以外の特定素子を含む構成としてもよい。
・入力端子21,22は、高周波信号に適応したコネクタ等であってもよい。
・出力端子23,24は、高周波信号に適応したコネクタ等であってもよい。
【0045】
・入力伝送線路の数は、1つ、2つ、または4つ以上であってもよい。
・出力伝送線路の数は、1つ、2つ、または4つ以上であってもよい。
・入力伝送線路41~43のそれぞれについて、線路幅および線路長の少なくとも一方は、インピーダンス整合するように設定されていてもよい。たとえば、入力伝送線路41はインピーダンス整合するように設定された線路幅を有し、入力伝送線路42,43はインピーダンス整合するように設定された線路長を有する。この場合、入力伝送線路42,43の線路幅は、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。また、入力伝送線路41の線路長は、他の入力伝送線路42,43の線路長と等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0046】
・出力伝送線路61~63のそれぞれについて、線路幅および線路長の少なくとも一方は、インピーダンス整合するように設定されていてもよい。たとえば、出力伝送線路61はインピーダンス整合するように設定された線路幅を有し、出力伝送線路62,63はインピーダンス整合するように設定された線路長を有する。この場合、出力伝送線路62,63の線路幅は、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。また、出力伝送線路61の線路長は、他の出力伝送線路62,63の線路長と等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0047】
・入力コンデンサ51~53のチップ長さは、互いに同じ長さであってもよく、互いに異なる長さであってもよい。また、入力コンデンサ51~53のうちの少なくとも1つのチップ長さが他のチップ長さと異なっていてもよい。
【0048】
・出力コンデンサ71~73のチップ長さは、互いに同じ長さであってもよく、互いに異なる長さであってもよい。また、出力コンデンサ71~73のうちの少なくとも1つのチップ長さが他のチップ長さと異なっていてもよい。
【0049】
(付記)
本開示から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、限定する意図ではなく理解の補助のために、付記に記載される構成要素には、実施形態中の対応する構成要素の参照符号が付されている。参照符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、参照符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0050】
(付記1)
所定の周波数(f0)を含む帯域の信号が伝送される伝送回路であって、
特定素子(30)と、
前記特定素子(30)の入力に接続された1または複数の入力伝送線路(41~43)と、
前記特定素子(30)の出力に接続された1または複数の出力伝送線路(61~63)と、
前記入力伝送線路(41~43)に対して並列に接続され、インピーダンス整合に用いられる入力コンデンサ(51~53)と、
前記出力伝送線路(61~63)に対して並列に接続され、インピーダンス整合に用いられる出力コンデンサ(71~73)と、
を含む、
伝送回路。
【0051】
(付記2)
前記特定素子(30)は、実数成分と虚数成分とを含む特性インピーダンスを有する素子である、付記1に記載の伝送回路。
【0052】
(付記3)
前記特定素子(30)は、アンプである、付記1または付記2に記載の伝送回路。
(付記4)
前記所定の周波数(f0)は、1GHz以上である、付記1から付記3のいずれか一つに記載の伝送回路。
【0053】
(付記5)
前記入力伝送線路(41~43)を複数含み、前記複数の入力伝送線路(41~43)と同数の前記入力コンデンサ(51~53)は複数を含み、前記複数の入力伝送線路(41~43)は前記特定素子(30)の入力に対して直列に接続され、前記複数の入力コンデンサ(51~53)は前記複数の入力伝送線路(41~43)にそれぞれ並列に接続されている、付記1から付記4のいずれか一つに記載の伝送回路。
【0054】
(付記6)
前記複数の入力伝送線路(41~43)は、インピーダンス整合するように設定された線路幅および線路長の少なくとも一方を有する、付記5に記載の伝送回路。
【0055】
(付記7)
前記複数の入力コンデンサ(51~53)は、インピーダンス整合するように設定された容量値を有する、付記5または付記6に記載の伝送回路。
【0056】
(付記8)
前記出力伝送線路(61~63)を含み、前記複数の出力伝送線路(61~63)と同数の前記出力コンデンサ(71~73)を含み、前記複数の出力伝送線路(61~63)は前記特定素子(30)の出力に対して直列に接続され、前記複数の出力コンデンサ(71~73)は前記複数の出力伝送線路(61~63)にそれぞれ並列に接続されている、付記1から付記7のいずれか一つに記載の伝送回路。
【0057】
(付記9)
複数の出力伝送線路(61~63)は、インピーダンス整合するように設定された線路幅および線路長の少なくとも一方を有する、付記8に記載の伝送回路。
【0058】
(付記10)
複数の出力コンデンサ(71~73)は、インピーダンス整合するように設定された容量値を有する、付記8または付記9に記載の伝送回路。
【0059】
(付記11)
前記入力伝送線路(41~43)の線路長は、前記入力コンデンサ(51~53)の長さよりも長い、付記1から付記10のいずれか一つに記載の伝送回路。
【0060】
(付記12)
前記出力伝送線路(61~63)の線路長は、前記出力コンデンサ(71~73)の長さよりも長い、付記1から付記11のいずれか一つに記載の伝送回路。
【0061】
以上の説明は単に例示である。本開示の技術を説明する目的のために列挙された構成要素および方法(製造プロセス)以外に、より多くの考えられる組み合わせおよび置換が可能であることを当業者は認識し得る。本開示は、特許請求の範囲を含む本開示の範囲内に含まれるすべての代替、変形、および変更を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0062】
10,10X 伝送回路
21,22 入力端子
23,24 出力端子
30 アンプ
31 入力端子
32 出力端子
40 伝送線路
41~43 入力伝送線路
51~53 入力コンデンサ
60 伝送線路
61~63 出力伝送線路
71~73 出力コンデンサ
80 基板
81 表面
83 パッド
84 パッド
95A 実線
95B 破線
101 入力負荷
102 伝送線路
103 出力負荷
104 コンデンサ
111 伝送線路
112 伝送線路
f0,f1,f2 周波数
L1,L2 線路長
W1,W2 線路幅
Z,Z0,Zin,ZLin,ZLout インピーダンス