(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175180
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】車両の燃料タンク構造
(51)【国際特許分類】
B60K 15/067 20060101AFI20231205BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B60K15/067
F02M37/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087500
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】古野 堅
(72)【発明者】
【氏名】赤崎 祐介
(72)【発明者】
【氏名】上田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 拓也
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CA01
3D038CA12
3D038CD02
3D038CD11
(57)【要約】
【課題】ラバーマウントに依存することなく、燃料ポンプユニットの振動が車体へ伝達されることを抑制できる車両の燃料タンク構造の提供を目的とする。
【解決手段】フロアパネル1,2の下方に設けられる燃料タンク20と、燃料タンク20内に設けられるとともに、燃料タンク20のタンク底面部21aに押付けられて固定される燃料ポンプユニット40と、燃料タンク20の燃料ポンプユニット40が押付けられるタンク底面部21aの車外側に固定される補強部材50と、を備え、補強部材50は、平面視で燃料ポンプユニット40が押付けられる部位と重複する位置において、燃料タンク20と固定される第1固定部51と、平面視で燃料ポンプユニット40が押付けられる部位と重複しない位置において、燃料タンク20と固定される第2固定部52LE,52RI,52Rと、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの下方に設けられる燃料タンクと、
上記燃料タンク内に設けられるとともに、当該燃料タンクのタンク底面部に押付けられて固定される燃料ポンプユニットと、
上記燃料タンクの上記燃料ポンプユニットが押付けられるタンク底面部の車外側に固定される補強部材と、を備え、
上記補強部材は、平面視で上記燃料ポンプユニットが押付けられる部位と重複する位置において、上記燃料タンクと固定される第1固定部と、
平面視で上記燃料ポンプユニットが押付けられる部位と重複しない位置において、上記燃料タンクと固定される第2固定部と、を備えることを特徴とする
車両の燃料タンク構造。
【請求項2】
上記第2固定部は、複数の固定部を備え、
上記複数の第2固定部同士を結ぶ仮想線上に上記第1固定部が配置された
請求項1に記載の車両の燃料タンク構造。
【請求項3】
上記第1固定部と上記後側の第2固定部との間に上記燃料タンクを支持するタンクバンドが配置された
請求項2に記載の車両の燃料タンク構造。
【請求項4】
上記補強部材は上記タンクバンドを収容する上方に突出した凸条部を有する
請求項3に記載の車両の燃料タンク構造。
【請求項5】
上記燃料タンクのタンク底面部と上記補強部材とは、上下方向に離間して配置された
請求項1に記載の車両の燃料タンク構造。
【請求項6】
上記燃料タンクのタンク底面部には、当該タンク底面部からタンク内方に突出して上記燃料ポンプユニットの周囲を覆う縦壁部を有し、
上記補強部材は上記縦壁部の内側領域と対向する位置に配置された
請求項1に記載の車両の燃料タンク構造。
【請求項7】
上記燃料ポンプユニットが押付けられる上記タンク底面部は平面に構成された
請求項1に記載の車両の燃料タンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の燃料タンク構造に関し、詳しくは、フロアパネルの下方に設けられる燃料タンクと、上記燃料タンク内に設けられるとともに、当該燃料タンクのタンク底面部に押付けられて固定される燃料ポンプユニットと、を備えた車両の燃料タンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両に搭載される燃料タンクの内部には燃料ポンプユニットが設けられる。燃料ポンプユニットが押付けられる燃料タンクのタンク底面部は平面形状となるため、燃料ポンプユニットの振動特性によっては、上記タンク底面部の振動が車体に伝達されるという問題点があった。
【0003】
上記振動が車体に伝達されることを抑制する手段としては、特許文献1に開示された構造が知られている。
すなわち、上記特許文献1に開示された構造は、燃料タンクの外周に外方へ張り出すフランジ部を設け、このフランジ部と車体との間に防振ゴムを介して、燃料タンクを車体に固定する構造であって、いわゆるラバーマウント構造が採用されている。
【0004】
しかしながら、バッテリユニットを車体後方に搭載し、該バッテリユニットの前方において燃料タンクを車幅方向中央に搭載するセンタタンクレイアウトを採用した場合、後席乗員の足元位置に燃料タンクが固定され、当該燃料タンクからの振動が車体に伝達され、後席乗員が感覚する振動が顕著となるため、燃料タンクの振動が車体に伝達されることを抑制する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、ラバーマウントに依存することなく、燃料ポンプユニットの振動が車体へ伝達されることを抑制できる車両の燃料タンク構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、フロアパネルの下方に設けられる燃料タンクと、上記燃料タンク内に設けられるとともに、当該燃料タンクのタンク底面部に押付けられて固定される燃料ポンプユニットと、上記燃料タンクの上記燃料ポンプユニットが押付けられるタンク底面部の車外側に固定される補強部材と、を備え、上記補強部材は、平面視で上記燃料ポンプユニットが押付けられる部位と重複する位置において、上記燃料タンクと固定される第1固定部と、平面視で上記燃料ポンプユニットが押付けられる部位と重複しない位置において、上記燃料タンクと固定される第2固定部と、を備えることを特徴とする車両の燃料タンク構造である。
【0008】
この発明により、タンク底面部には燃料ポンプユニットの燃料ポンプからの振動が伝達されるが、補強部材が振動発生位置となる第1固定部と、振動発生位置から離間した位置の第2固定部と、によって固定されるため、起振源周辺のタンク底面部の剛性が向上し、燃料タンクの振動を抑制することができる。
したがって、ラバーマウントに依存することなく、燃料ポンプユニットの振動が車体へ伝達されることを抑制することができる。
【0009】
この発明の態様として、上記第2固定部は、複数の固定部を備え、上記複数の第2固定部同士を結ぶ仮想線上に上記第1固定部が配置されてもよい。
この発明により、仮想線上に位置する第2固定部で補強部材を介して第1固定部が押付けられるので、振動発生位置となる第1固定部の振動を効率よく抑制することができる。
【0010】
また、この発明の態様として、上記第1固定部と上記後側の第2固定部との間に上記燃料タンクを支持するタンクバンドが配置されてもよい。
この発明により、補強部材がタンクバンドを含んでタンク底面部を押付けることで、当該タンク底面部の振動をさらに抑制することができる。
【0011】
さらに、この発明の態様として、上記補強部材は上記タンクバンドを収容する上方に突出した凸条部を有していてもよい。
この発明により、上下方向の振動入力による補強部材の曲げ変形を、上記凸条部と、該凸条部に収容されるタンクバンドにて抑制し、タンク底面部の振動抑制を図ることができる。
【0012】
さらにまた、この発明の態様として、上記燃料タンクのタンク底面部と上記補強部材とは、上下方向に離間して配置されてもよい。
この発明により、上記補強部材がタンク底面部と上下方向に離間していることで、補強部材を、断面二次モーメントがかせげる構造とすることが可能で、これにより剛性向上を図ることができる。
【0013】
加えて、この発明の態様として、上記燃料タンクのタンク底面部には、当該タンク底面部からタンク内方に突出して上記燃料ポンプユニットの周囲を覆う縦壁部を有し、上記補強部材は上記縦壁部の内側領域と対向する位置に配置されてもよい。
この発明により、上記縦壁部にて車両横揺れ時に燃料ポンプの燃料吸入不足を解消しつつ、補強部材にて剛性が低い縦壁部の内側領域を効率よく補強することができる。
【0014】
さらに、この発明の態様として、上記燃料ポンプユニットが押付けられる上記タンク底面部は平面に構成されてもよい。
この発明により、上記平面で構成されたタンク底面部は変形しやすいが、このタンク底面部を第1固定部と第2固定部とで固定された補強部材にて確実に補強することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、ラバーマウントに依存することなく、燃料ポンプユニットの振動が車体へ伝達されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】車両の燃料タンク構造を備えた車両の要部底面図。
【
図3】
図2からタンクバンドを取外した状態で示す燃料タンク構造の底面図。
【
図4】
図3から補強部材を取外した状態で示す燃料タンク構造の底面図。
【
図7】燃料タンクロアの内部構造を部分的に示す上面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ラバーマウントに依存することなく、燃料ポンプユニットの振動が車体へ伝達されることを抑制するという目的を、フロアパネルの下方に設けられる燃料タンクと、上記燃料タンク内に設けられるとともに、当該燃料タンクのタンク底面部に押付けられて固定される燃料ポンプユニットと、上記燃料タンクの上記燃料ポンプユニットが押付けられるタンク底面部の車外側に固定される補強部材と、を備え、上記補強部材は、平面視で上記燃料ポンプユニットが押付けられる部位と重複する位置において、上記燃料タンクと固定される第1固定部と、平面視で上記燃料ポンプユニットが押付けられる部位と重複しない位置において、上記燃料タンクと固定される第2固定部と、を備えるという構成にて実現した。
【実施例0018】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の燃料タンク構造を示し、
図1は当該車両の燃料タンク構造を備えた車両の要部底面図、
図2は
図1の要部拡大図、
図3は
図2からタンクバンドを取外した状態で示す燃料タンク構造の底面図である。
【0019】
また、
図4は
図3から補強部材を取外した状態で示す燃料タンク構造の底面図、
図5は
図2のA-A線に沿う要部の矢視断面図、
図6は
図2のB-B線に沿う要部の矢視断面図、
図7は燃料タンクロアの内部構造を部分的に示す上面斜視図、
図8は燃料ポンプユニットの概略斜視図である。
【0020】
車両の燃料タンク構造の説明に先立って、まず、
図1を参照して車両の下部車体構造について説明する。
図1に示すように、車室の床面を形成するフロアパネルとしてのフロントフロアパネル1を設け、このフロントフロアパネル1の後端部には、上方に立上がった後に後方に延びるキックアップ部(図示せず)を介して、フロアパネルとしてのリヤシートパン2を連結している。該リヤシートパン2の上方部には、後席乗員が着座するリヤシートが搭載され、リヤシートに着座した後席乗員の足はフロントフロアパネル1後部(後述する燃料タンク20の上方)に位置することになる。
【0021】
また、上述のリヤシートパン2のさらに後方には、荷室の床面を形成するフロアパネルとしての荷室フロア3を連結している。上述の荷室フロア3の車幅方向中間部には下方に段下げ形成される荷室凹部(図示せず)が設けられる。
【0022】
図1に示すように、上述のフロントフロアパネル1の後端部とリヤシートパン2の前端部との間には、車幅方向に延びる第1クロスメンバ4(いわゆるNo.3クロスメンバ)を設けている。この第1クロスメンバ4は、上述のキックアップ部を形成するクロスメンバアッパ(図示せず)と、クロスメンバロア5と、を備えており、クロスメンバアッパとクロスメンバロア5との間には、車幅方向に延びるクロスメンバ閉断面6が形成されており、これにより、下部車体構造の剛性向上を図っている。
【0023】
また、
図1に示すように、上述のリヤシートパン2の後端部と荷室フロア3の前端部との間には、車幅方向に延びる第2クロスメンバ7(いわゆるNo.4クロスメンバ)を設けている。この第2クロスメンバ7はクロスメンバアッパ(図示せず)と、クロスメンバロア8と、を備えており、クロスメンバアッパとクロスメンバロア8との間には、車幅方向に延びるクロスメンバ閉断面9が形成されており、これにより、下部車体構造の剛性向上を図っている。
【0024】
上述のクロスメンバロア8は、車幅方向に延びる中間部材8Aと、この中間部材8Aの左右両端部に位置する左側部材8Bおよび右側部材8Cとの3部材に分割形成されたものを、車幅方向に延びるように一体化したものである。
【0025】
図1に示すように、上述のフロントフロアパネル1およびリヤシートパン2の車幅方向左右両サイドには、車両の前後方向に延びるサイドシル10を設けている。このサイドシル10はサイドシルアウタ(図示せず)と、サイドシルインナ11と、を備えており、サイドシルアウタとサイドシルインナ11との間には、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面12が形成されており、これにより、下部車体構造の剛性向上を図っている。上述のサイドシル10はリヤホイールハウス前部から車両前方部におけるヒンジピラー(図示せず)の下部まで車両前方に延びている。
【0026】
また、
図1に示すように、上述のリヤシートパン2および荷室フロア3の車幅方向左右両サイドには、車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム13を設けている。このリヤサイドフレーム13はリヤサイドフレームアッパ(図示せず)と、リヤサイドフレームロア14と、を備えており、リヤサイドフレームアッパとリヤサイドフレームロア14との間には、車両の前後方向に延びるリヤサイド閉断面15が形成されており、これにより、下部車体構造の剛性向上を図っている。
【0027】
ここで、上述のリヤサイドフレームロア14の前部はサイドシルインナ11の後部に対して車幅方向の内側に位置すると共に、リヤサイドフレームロア14の前部とサイドシルインナ11の後部とは、リヤシートパン2の車両前後方向の長さ範囲においてオーバラップするように設けられている。
【0028】
さらに、
図1に示すように、左右のサイドシルインナ11の車幅方向内側近傍におけるフロントフロアパネル1の下部には、床下フロアフレーム16を設け、フロントフロアパネル1の下部と床下フロアフレーム16との間には、車両の前後方向に延びるフロアフレーム閉断面17を設け、これにより、下部車体構造の剛性向上を図っている。
【0029】
さらにまた、
図1に示すように、車両の車幅方向中央位置に対して車幅方向左側にオフセットした位置には、左側の連結ブラケット18を設け、この連結ブラケット18により、リヤシートパン2下部と、第2クロスメンバ7のクロスメンバロア8とを連結している。
【0030】
同様に、
図1に示すように、車両の車幅方向中央位置に対して車幅方向右側にオフセットした位置には、右側の連結ブラケット19を設け、この連結ブラケット19により、リヤシートパン2下部と、第2クロスメンバ7のクロスメンバロア8とを連結している。上述の左側の連結ブラケット18と、右側の連結ブラケット19とは、車幅方向の中央部に対して左右略対称に設けられている。
【0031】
図1に示すように、上述の第1クロスメンバ4のクロスメンバロア5は、左右一対のサイドシルインナ11,11間を車幅方向に連結しており、また、上述の第2クロスメンバ7のクロスメンバロア8は、左右一対のリヤサイドフレームロア14,14間を車幅方向に連結している。
【0032】
次に、
図1~
図8を参照して車両の燃料タンク構造について説明する。
図1に示すように、フロアパネルの下方には燃料タンク20が設けられている。詳しくは、
図1に示すように、フロントフロアパネル1の下方とリヤシートパン2の下方とに跨がって燃料タンク20が設けられている。この実施例においては、
図1に示すように、上述の燃料タンク20のレイアウトとして、センタタンクレイアウトを採用している。
【0033】
この燃料タンク20は、合成樹脂製の燃料タンクアッパ(図示せず)と、合成樹脂製の燃料タンクロア21とに上下2分割したものを一体化して内部に燃料を貯溜すべく構成されている。
上述の燃料タンクロア21の下面は、図示しないインシュレータおよびプロテクタにより当該燃料タンクロア21の下方から覆われている。
【0034】
図1、
図2に示すように、燃料タンク20の周縁部において、前部右側と後部右側と後部左側との各部位には、当該燃料タンク20を車体に固定するためのフランジ形状のタンク固定部22,23,24が一体形成されている。
複数のタンク固定部22,23,24のうち後部右側のタンク固定部23から車両前方かつ車幅方向左側外方に車両底面視で直線状に延びるタンクバンド25を設けている。
【0035】
このタンクバンド25は帯状のタンクバンド本体26と、当該タンクバンド本体26の長手方向の略全長にわたって延びて該タンクバンド本体26を保持するタンクバンドホルダ27と、タンクバンドホルダ27の右側後部から導出したタンクバンド本体26の後端部に一体的に設けられた後側のタンクバンド固定部28と、タンクバンドホルダ27の左側前部から導出したタンクバンド本体26の前端部に一体的に設けられた前側のタンクバンド固定部29と、を備えている。
【0036】
図1に示すように、複数のタンク固定部22,23,24のうち前部右側のタンク固定部22と対向して、上述のフロントフロアパネル1には燃料タンク固定ブラケット30が設けられている。この燃料タンク固定ブラケット30はフロントフロアパネル1の下面から下方に突出するように形成されている。
【0037】
そして、
図1に示すように、前部右側のタンク固定部22は、ボルト等の締結部材31を用いて、上述の燃料タンク固定ブラケット30の下部に固定されている。また、
図1に示すように、後部右側のタンク固定部23と、右側後部のタンクバンド固定部28と、の両者は、ボルト等の締結部材32を用いて、クロスメンバロア5の車幅方向右側下部に共締め固定されている。
【0038】
さらに、
図1に示すように、左側前部のタンクバンド固定部29は、ボルト等の締結部材33を用いて、左右一対の床下フロアフレーム16,16のうち車幅方向左側の床下フロアフレーム16の下部に固定されている。さらにまた、同図に示すように、後部左側のタンク固定部24は、ボルト等の締結部材34を用いて、クロスメンバロア5の車幅方向左側下部に固定されている。
【0039】
つまり、上記燃料タンク20は単一のタンクバンド25と、複数の締結部材31,32,33,34とを用いて、車両前後方向および車幅方向に離間した合計4つの締結点にて、車体に固定されたものである。
【0040】
これにより、燃料タンク20がタンクバンド25を介してフロアパネルの下方に配置されたものである。また、タンクバンド25の一部は燃料タンクロア21の車幅方向左部に形成された上方に突出する凸部35に収容されている。
図1、
図2に示すように、上述の凸部35はタンクバンド25の沿設方向に沿うように形成されている。
【0041】
図4、
図8に示すように、燃料タンク20内の前後方向中間部には、燃料ポンプユニット40が設けられている。この燃料ポンプユニット40は、燃料ポンプを備えた燃料ポンプユニット上部41と、燃料ポンプユニット下部42と、を有しており、燃料ポンプユニット上部41は、ばね付勢力にて燃料ポンプユニット下部42に押付けられている。すなわち、燃料ポンプユニット40が、
図5、
図6に示すように、上記燃料タンク20のタンク底面部としての燃料タンクロア21のタンク底面部21aに押付けられて固定される。
【0042】
上述の燃料ポンプユニット上部41に設けられた燃料ポンプは、燃料タンク20内の燃料を吸入、吐出して、内燃機関に燃料を供給する燃料供給装置であり、燃料の供給不足を解消する目的で、上述の燃料ポンプユニット上部41が燃料ポンプユニット下部42に対してばね付勢力により押付けられている。
【0043】
図2、
図3、
図4に示すように、上述の燃料タンク20内には、燃料ポンプユニット40を隔てた前後両位置に、バッフルプレート43,44が設けられている。これらの各バッフルプレート43,44は、燃料タンク20内を仕切って、車体のピッチング(車首の上下運動)やローリング(横揺れ)等の揺れ、急発進、急ブレーキ等で燃料タンク20内の燃料が大きく波立つのを抑制するものである。
【0044】
図3、
図5、
図6に示すように、上述の燃料タンク20において、燃料ポンプユニット40が押付けられるタンク底面部21aの車外側に固定される補強部材としての補強プレート50を設けている。
【0045】
上述の補強プレート50は、
図3に示すように、単一の第1固定部51と、複数の第2固定部52LE,52RI,52Rとを備えている。すなわち、該補強プレート50は、第1固定部51と複数の第2固定部52LE,52RI,52Rとを介して燃料タンクロア21のタンク底面部21aの車外側に固定されている。
【0046】
複数の第2固定部52LE,52RI,52Rのうち第2固定部52LE(左側第2固定部)は、第1固定部51に対して車幅方向の左側に位置しており、第2固定部52RI(右側第2固定部)は第1固定部51に対して車幅方向の右側に位置しており、第2固定部52R(後側第2固定部)は第1固定部51に対して車両前後方向の後側に位置している。
【0047】
上述の第1固定部51は、平面視で燃料ポンプユニット40が押付けられる部位、すなわち、燃料ポンプユニット下部42と重複する位置において、燃料タンクロア21のタンク底面部21aに固定される。
【0048】
また、上述の各第2固定部52LE,52RI,52Rは、平面視で燃料ポンプユニット40が押付けられる部位、すなわち、燃料ポンプユニット下部42と重複しない位置において、燃料タンクロア21のタンク底面部21aに固定される。
【0049】
要するに、上述の第1固定部51は燃料ポンプユニット40の燃料ポンプからの振動が伝達される振動伝達部位に設けられており、複数の第2固定部52LE,52RI,52Rは振動発生位置から離間した周辺位置に設けられている。
【0050】
図5、
図6に示すように、上述の第1固定部51は、タンク底面部21aに設けられたリテーナ53と、補強プレート50を上記リテーナ53を介してタンク底面部21aに固定するリベット54と、を備えている。
【0051】
図5に示すように、上述の第2固定部52LEは、タンク底面部21aに設けられたリテーナ55と、補強プレート50を上記リテーナ55を介してタンク底面部21aに固定するリベット56と、を備えている。
【0052】
同様に、上述の第2固定部52RIは、タンク底面部21aに設けられたリテーナ57と、補強プレート50を上記リテーナ57を介してタンク底面部21aに固定するリベット58と、を備えている。
また、上述の第2固定部52Rも、タンク底面部21aに設けられたリテーナと、補強プレート50を上記リテーナを介してタンク底面部21aに固定するリベットと、を備えている。
【0053】
ここで、上述の各リテーナ53,55,57は燃料タンク20と同一の合成樹脂により形成されており、上述の各リベット54,56,58は、例えば、ポリアミド66(いわゆる、66ナイロン)により形成されている。
なお、第1固定部51、第2固定部52LE,52RI,52Rはリベット固定に限定されず、ボルトとナットを用いた締結であってもよい。
【0054】
上述のように、補強プレート50は、平面視で燃料ポンプユニット40が押付けられる部位と重複する位置において、燃料タンクロア21のタンク底面部21aと固定される第1固定部51と、平面視で燃料ポンプユニット40が押付けられる部位と重複しない位置において、燃料タンクロア21のタンク底面部21aと固定される複数の第2固定部52LE,52RI,52Rと、を備えている。
【0055】
上述のタンク底面部21aには燃料ポンプユニット40の燃料ポンプからの振動が伝達されるが、補強プレート50が振動発生位置となる第1固定部51と、振動発生位置から離間した位置の第2固定部52LE,52RI,52Rと、によって固定されるため、起振源周辺のタンク底面部21aの剛性が向上し、燃料タンク20の振動を抑制するものである。
これにより、ラバーマウントに依存することなく、燃料ポンプユニット40の振動が車体へ伝達されることを抑制すべく構成したものである。
【0056】
上記第2固定部52LE,52RI,52Rは、複数の固定部を備え、上記複数の第2固定部同士を結ぶ仮想線α(
図4参照)上に上記第1固定部51が配置されている。
詳しくは、
図4に示すように、上述の第1固定部51は、左側の第2固定部52LEと右側の第2固定部52RIとを結ぶ仮想線α上に配置されている。
【0057】
これにより、上記仮想線α上に位置する第2固定部52LE,52RIで補強プレート50を介して第1固定部51が押付けられることになり、この結果、振動発生位置となる第1固定部51の振動を効率よく抑制するように構成している。
【0058】
図2に示すように、上述の第1固定部51と上記後側の第2固定部52Rとの間における補強プレート50の下部には、燃料タンク20を支持するタンクバンド25が配置されている。
これにより、補強プレート50がタンクバンド25を含んでタンク底面部21aを押付けることになり、当該タンク底面部21aの振動をさらに抑制するように構成している。
【0059】
図2、
図6に示すように、上述の補強プレート50は、第1固定部51と後側の第2固定部52Rとの間において、タンクバンド25を収容する上方に突出し、かつ、タンクバンド25に沿設する凸条部59を備えている。
これにより、上下方向の振動入力による補強プレート50の曲げ変形を、上記凸条部59と、該凸条部59に収容されるタンクバンド25にて抑制し、タンク底面部21aの振動抑制を図ることができる。
【0060】
詳しくは、上述の凸条部59の形成により上記補強プレート50には、
図6に示すように、前側下部の稜線X1と、前側上部の稜線X2と、後側上部の稜線X3と、後側下部の稜線X4とが形成され、これら複数の稜線X1~X4により補強プレート50の剛性向上を図るものである。
【0061】
図5に示すように、上述の燃料タンク20における燃料タンクロア21のタンク底面部21aと、上述の補強プレート50とは、上下方向に離間して配置されている。すなわち、燃料タンクロア21のタンク底面部21aと、補強プレート50の主面部50a(上記凸条部59および外側フランジ部50b,50cが形成されていない部分)と、の間には上下方向の間隔gが形成されている。
【0062】
このように、上記補強プレート50がタンク底面部21aと上下方向に離間していることで、補強プレート50を、断面二次モーメントがかせげる構造とすることが可能で、これにより当該補強プレート50の剛性向上を図るように構成している。
【0063】
図6、
図7に示すように、燃料タンク20における燃料タンクロア21のタンク底面部21aには、当該タンク底面部21aからタンク内方に突出して燃料ポンプユニット40の燃料ポンプユニット下部42の周囲を覆う外郭(外囲い)形状の縦壁部60が形成されている。
【0064】
そして、上述の補強プレート50は上述の縦壁部60の内側領域と対向する位置に配置されている。この実施例においては、上記縦壁部60をタンク底面部21aと一体形成したが、燃料タンク20と別体の縦壁部を設ける構造を採用してもよい。
【0065】
上述のように燃料ポンプユニット下部42の周囲を覆う縦壁部60を設けることで、当該縦壁部60にて車両横揺れ時等において燃料ポンプの燃料吸入不足を解消しつつ、補強プレート50にて剛性が低い縦壁部60の内側領域を効率よく補強することができる。
【0066】
上述の縦壁部60は、
図7に示すように、燃料ポンプユニット下部42の前方を覆う前壁部61と、燃料ポンプユニット下部42の車幅方向左方を覆う左壁部62と、燃料ポンプユニット下部42の後方を覆う後壁部63と、燃料ポンプユニット下部42の車幅方向右方かつ後方を覆う右後壁部64と、燃料ポンプユニット下部42の前方かつ車幅方向右方を覆う前右壁部65と、を備えている。
【0067】
上述の前右壁部65は前端部から後端部にかけて壁部高さが漸減しており、前右壁部65の後端の高さは、タンク底面部21aの高さと一致している。
さらに、
図6に示すように、燃料ポンプユニット40における燃料ポンプユニット下部42が押付けられる上述のタンク底面部21aは平面に構成されている。
【0068】
このように、平面で構成されたタンク底面部21aは変形しやすいが、このタンク底面部21aを第1固定部51と第2固定部52LE,52RI,52Rとで固定された補強プレート50にて確実に補強するように構成したものである。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印LEは車幅方向の左外方を示し、矢印RIは車幅方向の右外方を示す。
【0069】
以上のように、本実施例に係る車両の燃料タンク構造は、フロアパネル(フロントフロアパネル1、リヤシートパン2参照)の下方に設けられる燃料タンク20と、上記燃料タンク20内に設けられるとともに、当該燃料タンク20のタンク底面部21aに押付けられて固定される燃料ポンプユニット40と、上記燃料タンク20の上記燃料ポンプユニット40が押付けられるタンク底面部21aの車外側に固定される補強部材(補強プレート50)と、を備え、上記補強部材(補強プレート50)は、平面視で上記燃料ポンプユニット40が押付けられる部位と重複する位置において、上記燃料タンク20と固定される第1固定部51と、平面視で上記燃料ポンプユニット40が押付けられる部位と重複しない位置において、上記燃料タンク20と固定される第2固定部52LE,52RI,52Rと、を備えることを特徴としている(
図1~
図3、
図8参照)。
【0070】
このような車両の燃料タンク構造によれば、タンク底面部21aには燃料ポンプユニット40の燃料ポンプからの振動が伝達されるが、補強部材(補強プレート50)が振動発生位置となる第1固定部51と、振動発生位置から離間した位置の第2固定部52LE,52RI,52Rと、によって固定されるため、起振源周辺のタンク底面部21aの剛性が向上し、燃料タンク20の振動を抑制することができる。
したがって、ラバーマウントに依存することなく、燃料ポンプユニット40の振動が車体へ伝達されることを抑制することができる。
【0071】
また、かかる車両の燃料タンク構造においては、上記第2固定部52LE,52RI,52Rは、複数の固定部を備え、複数の第2固定部同士(第2固定部52LE,52RI同士)を結ぶ仮想線α上に上記第1固定部51が配置されている(
図4参照)。
【0072】
このような車両の燃料タンク構造によれば、仮想線α上に位置する第2固定部52LE,52RIで補強部材(補強プレート50)を介して第1固定部51が押付けられるので、振動発生位置となる第1固定部51の振動を効率よく抑制することができる。
【0073】
さらに、かかる車両の燃料タンク構造においては、上記第1固定部51と上記後側の第2固定部52Rとの間に上記燃料タンク20を支持するタンクバンド25が配置されている(
図2参照)。
このような車両の燃料タンク構造によれば、補強部材(補強プレート50)がタンクバンド25を含んでタンク底面部21aを押付けることで、当該タンク底面部21aの振動をさらに抑制することができる。
【0074】
さらにまた、かかる車両の燃料タンク構造においては、上記補強部材(補強プレート50)は上記タンクバンド25を収容する上方に突出した凸条部59を有している(
図4、
図6参照)。
このような車両の燃料タンク構造によれば、上下方向の振動入力による補強部材(補強プレート50)の曲げ変形を、上記凸条部59と、該凸条部59に収容されるタンクバンド25にて抑制し、タンク底面部21aの振動抑制を図ることができる。
【0075】
加えて、かかる車両の燃料タンク構造においては、上記燃料タンク20のタンク底面部21aと上記補強部材(補強プレート50)とは、上下方向に離間して配置される(
図5参照)。
このような車両の燃料タンク構造によれば、上記補強部材(補強プレート50)がタンク底面部21aと上下方向に離間していることで、補強部材(補強プレート50)を、断面二次モーメントがかせげる構造とすることが可能で、これにより、当該補強部材(補強プレート50)の剛性向上を図ることができる。
【0076】
また、かかる車両の燃料タンク構造においては、上記燃料タンク20のタンク底面部21aには、当該タンク底面部21aからタンク内方に突出して上記燃料ポンプユニット40(詳しくは、燃料ポンプユニット下部42参照)の周囲を覆う縦壁部60を有し、上記補強部材(補強プレート50)は上記縦壁部60の内側領域と対向する位置に配置される(
図6、
図7参照)。
【0077】
このような車両の燃料タンク構造によれば、上記縦壁部60にて車両横揺れ時等において燃料ポンプの燃料吸入不足を解消しつつ、補強部材(補強プレート50)にて剛性が低い縦壁部60の内側領域を効率よく補強することができる。
【0078】
さらに、かかる車両の燃料タンク構造においては、上記燃料ポンプユニット40が押付けられる上記タンク底面部21aは平面に構成される(
図5参照)。
このような車両の燃料タンク構造によれば、上記平面で構成されたタンク底面部21aは変形しやすいが、このタンク底面部21aを第1固定部51と第2固定部52LE,52RI,52Rとで固定された補強部材(補強プレート50)にて確実に補強することができる。
【0079】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のフロアパネルは、実施例のフロントフロアパネル1、リヤシートパン2に対応し、
以下同様に、
燃料タンクは、燃料タンク20に対応し、
タンク底面部は、タンク底面部21aに対応し、
タンクバンドは、タンクバンド25に対応し、
燃料ポンプユニットは、燃料ポンプユニット40に対応し、
補強部材は、補強プレート50に対応し、
第1固定部は、第1固定部51に対応し、
第2固定部は、第2固定部52LE,52RI,52Rに対応し、
凸条部は、凸条部59に対応し、
縦壁部は、縦壁部60に対応し、
左側の第2固定部と右側の第2固定部とを結ぶ仮想線は、仮想線αに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
以上説明したように、本発明は、フロアパネルの下方に設けられる燃料タンクと、上記燃料タンク内に設けられるとともに、当該燃料タンクのタンク底面部に押付けられて固定される燃料ポンプユニットと、を備えた車両の燃料タンク構造について有用である。