(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175182
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】シート取付構造及びヘルメット
(51)【国際特許分類】
A42B 3/24 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A42B3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087502
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】390005429
【氏名又は名称】株式会社SHOEI
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】榎並 国男
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107AA03
3B107BA05
3B107DA03
3B107DA08
3B107DA13
3B107EA09
3B107EA19
(57)【要約】
【課題】シールドに取り付けられたシート部材に電力を供給するための配線の簡素化を可能としたシート取付構造、及びヘルメットを提供する。
【解決手段】貫通孔22を備えるシールド20と、シールド20の内面20S2を覆うシート部材30と、シート部材30をシールド20に取り付けるための第2保持部60と、を備え、シート部材30は、第2保持部60と係合する第2凹部31Bと、シート部材30の厚さ方向に並ぶ第1電極33及び第2電極34と、を備え、第2保持部60は、貫通孔22と嵌合する第1軸部61Bと、第1電極33と接する第1端子62Bと、第2電極34と接する第2端子64Bと、第2凹部31Bと係合する第2軸部63Bと、を備え、第1端子62Bは、貫通孔22を介して第1外部配線201に電気的に接続され、第2端子64Bは、貫通孔22を介して第2外部配線202に電気的に接続される。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帽体に取り付けられるシールドと、前記シールドの内面を覆うシート部材と、前記シート部材を前記シールドに取り付けるための保持部と、を備え、
前記シールドは、前記保持部が取り付けられる貫通孔を備え、
前記シート部材は、前記保持部と係合する凹部と、前記凹部の周囲において、前記シート部材の厚さ方向に並ぶ第1電極及び第2電極と、を備え、前記第1電極が備える第1電極面と前記第2電極が備える第2電極面とが互いに相反する方向に面し、
前記保持部は、前記貫通孔と嵌合する第1軸部と、前記第1電極面と接する第1端子と、前記第1端子と対向し、前記第2電極面と接する第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に位置し、前記凹部と係合する第2軸部と、を備え、
前記第1端子は、前記シールドの外側に位置する第1外部配線に対して前記貫通孔を介して電気的に接続され、
前記第2端子は、前記シールドの外側に位置する第2外部配線に対して前記貫通孔を介して電気的に接続される
シート取付構造。
【請求項2】
前記第1軸部は、前記貫通孔に対して回転自在に嵌め込まれ、
前記第2軸部は、前記第1軸部に対して偏心して位置し、
前記保持部は、前記第1軸部と、前記第1端子と、前記第2端子と、前記第2軸部と、が一体に回転する
請求項1に記載のシート取付構造。
【請求項3】
前記第1端子は、前記第1電極面と接する第1端子面を備え、
前記第2端子は、前記第1端子面と対向し、前記第2電極面と接する第2端子面を備え、
前記第1端子面と前記第2端子面との距離は、前記第1電極面から前記第2電極面までの距離以下であり、
前記第1端子は、前記第1電極面に対して弾性変形しながら接触する弾性部を備える
請求項1または2に記載のシート取付構造。
【請求項4】
前記第2軸部は、前記第1端子面と前記第2端子面とによって、前記保持部の中心軸に沿う方向に挟み込まれる
請求項3に記載のシート取付構造。
【請求項5】
前記保持部は、前記第2端子のなかで前記第2軸部と反対側の面に接する絶縁性の裏打ち部を備える
請求項1または2に記載のシート取付構造。
【請求項6】
帽体と、前記帽体に取り付けられるシールドと、前記シールドの内面を覆うシート部材と、前記シート部材を前記シールドに取り付けるための保持部と、前記シート部材に電力を供給するための第1外部配線及び第2外部配線と、を備え、
前記シールドは、前記保持部が取り付けられる貫通孔を備え、
前記シート部材は、前記保持部と係合する凹部と、前記凹部の周囲において、前記シート部材の厚さ方向に並ぶ第1電極及び第2電極と、を備え、前記第1電極が備える第1電極面と前記第2電極が備える第2電極面とが互いに相反する方向に面し、
前記保持部は、前記貫通孔と嵌合する第1軸部と、前記第1電極面と接する第1端子と、前記第1端子と対向し、前記第2電極面と接する第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に位置し、前記凹部と係合する第2軸部と、を備え、
前記第1外部配線及び前記第2外部配線は、前記シールドの外側に位置し、
前記第1端子は、前記第1外部配線に対して前記貫通孔を介して電気的に接続され、
前記第2端子は、前記第2外部配線に対して前記貫通孔を介して電気的に接続される
ヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドにシート部材を取り付けるシート取付構造、及び当該シート取付構造を備えるヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車用ヘルメットは、半球面状の帽体と、帽体に取り付けられるシールドとを備える。シールドには、電力が供給されて電気制御される曇り止めシートや調光シートなどのシート部材が取り付けられることがある。例えば、特許文献1には、2つの電極を備えた加熱装置が、複数の固定手段を介してシールドの内面に取り付けられる構成が記載されている。加熱装置が備える各電極には、固定手段を介してシールドの外面側(帽体など)に配置された外部電源から電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの固定手段から他の固定手段に電流を流す上述した構成は、1つの固定手段に1つの極用の配線を接続するとともに、他の固定手段に他の極用の配線を接続する。この際、1つの固定手段がシールドの一端に配置されるとともに、他の固定手段がシールドの他端に配置される。結果として、1つの外部電源からシールドの両端に向けて配線が広範囲に引き回されるため、シート部材に電力を供給するための配線引き回しに簡素化が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのシート取付構造は、帽体に取り付けられるシールドと、前記シールドの内面を覆うシート部材と、前記シート部材を前記シールドに取り付けるための保持部と、を備え、前記シールドは、前記保持部が取り付けられる貫通孔を備え、前記シート部材は、前記保持部と係合する凹部と、前記凹部の周囲において、前記シート部材の厚さ方向に並ぶ第1電極及び第2電極と、を備え、前記第1電極が備える第1電極面と前記第2電極が備える第2電極面とが互いに相反する方向に面し、前記保持部は、前記貫通孔と嵌合する第1軸部と、前記第1電極面と接する第1端子と、前記第1端子と対向し、前記第2電極面と接する第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に位置し、前記凹部と係合する第2軸部と、を備え、前記第1端子は、前記シールドの外側に位置する第1外部配線に対して前記貫通孔を介して電気的に接続され、前記第2端子は、前記シールドの外側に位置する第2外部配線に対して前記貫通孔を介して電気的に接続される。
【0006】
上記課題を解決するためのヘルメットは、帽体と、前記帽体に取り付けられるシールドと、前記シールドの内面を覆うシート部材と、前記シート部材を前記シールドに取り付けるための保持部と、前記シート部材に電力を供給するための第1外部配線及び第2外部配線と、を備え、前記シールドは、前記保持部が取り付けられる貫通孔を備え、前記シート部材は、前記保持部と係合する凹部と、前記凹部の周囲において、前記シート部材の厚さ方向に並ぶ第1電極及び第2電極と、を備え、前記第1電極が備える第1電極面と前記第2電極が備える第2電極面とが互いに相反する方向に面し、前記保持部は、前記貫通孔と嵌合する第1軸部と、前記第1電極面と接する第1端子と、前記第1端子と対向し、前記第2電極面と接する第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に位置し、前記凹部と係合する第2軸部と、を備え、前記第1外部配線及び前記第2外部配線は、前記シールドの外側に位置し、前記第1端子は、前記第1外部配線に対して前記貫通孔を介して電気的に接続され、前記第2端子は、前記第2外部配線に対して前記貫通孔を介して電気的に接続される。
【0007】
上記各構成によれば、保持部に第1端子及び第2端子を設けることで、シート部材をシールドに取り付けるための保持部を用いて、シールドの内外を貫通するような配線経路を構成できる。そして、シート部材が備える2つの電極の各々において、シールドの内外を貫通するような配線経路を1つの保持部によって実現できる。したがって、シールドに取り付けられたシート部材に電力を供給するための配線を簡素化できる。
【0008】
上記シート取付構造において、前記第1軸部は、前記貫通孔に対して回転自在に嵌め込まれ、前記第2軸部は、前記第1軸部に対して偏心して位置し、前記保持部は、前記第1軸部と、前記第1端子と、前記第2端子と、前記第2軸部と、が一体に回転してもよい。上記構成によれば、第1軸部が貫通孔に対して回転すると、第2軸部の中心である偏心軸が第1軸部の中心軸の周囲を回転するように、第2軸部が回転する。したがって、保持部を回転させることで、保持部に取り付けられたシート部材を第2軸部が回転する範囲で移動させることができる。これにより、シート部材とシールドとを十分に密着させることができる。また、第1電極面と第1端子とが接触するとともに、第2電極面と第2端子とが接触する構成であることから、保持部が貫通孔に対して回転した場合でも、第1電極と第1端子との電気的な接続、及び、第2電極と第2端子との電気的な接続を維持できる。
【0009】
上記シート取付構造において、前記第1端子は、前記第1電極面と接する第1端子面を備え、前記第2端子は、前記第1端子面と対向し、前記第2電極面と接する第2端子面を備え、前記第1端子面と前記第2端子面との距離は、前記第1電極面から前記第2電極面までの距離以下であり、前記第1端子は、前記第1電極面に対して弾性変形しながら接触する弾性部を備えてもよい。上記構成によれば、第1端子面と第2端子面との距離を第1電極面から第2電極面までの距離以下とすることで、第1電極面と第1端子面とを確実に接触させるとともに、第2電極面と第2端子面とを確実に接触させることができる。また、第1端子が弾性部を備えることで、シート部材の凹部と第2軸部とを係合し易くすることができる。さらに、第1電極面と第1端子面とが接触する圧力を高めることで、第1電極及び第1端子、並びに第2電極及び第2端子の電気的な接触信頼性を高めることができる。
【0010】
上記シート取付構造において、前記第2軸部は、前記第1端子面と前記第2端子面とによって、前記保持部の中心軸に沿う方向に挟み込まれてもよい。上記構成によれば、第1端子面と第2端子面とが第2軸部を挟み込むことで、第2軸部が第1端子面と第2端子面との距離が小さくなるような変形を抑制するスペーサとして機能する。したがって、第1端子面と第2端子面との距離を適切に保つことができる。
【0011】
上記シート取付構造において、前記保持部は、前記第2端子のなかで前記第2軸部と反対側の面に接する絶縁性の裏打ち部を備えてもよい。上記構成によれば、裏打ち部によって第2端子を支持することで、第2端子の過剰な変形を防ぐことができる。さらに、第2端子のなかで第2電極との接触に寄与しない部分を絶縁性の部材によって覆うことで短絡を防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シールドに取り付けられたシート部材に電力を供給するための配線を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】
図5は、シート部材の第2凹部を拡大して示す平面図である。
【
図7】
図7は、第1保持部を介してシールドにシート部材が取り付けられた状態の断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す状態から第1保持部を180度回転させた状態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図8のIX-IX線から見た断面構造の模式図である。
【
図10】
図10は、第2保持部を構成する各部を分解して示す側面図である。
【
図11】
図11は、第2保持部を介してシールドにシート部材が取り付けられた状態の断面図である。
【
図13】
図13は、
図12に示す状態から第2保持部を180度回転させた状態を示す模式図である。
【
図16】
図16は、第1電極部材を模式的に示す斜視図である。
【
図17】
図17は、第2電極部材を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、シート取付構造を備えるヘルメットの一実施形態について
図1~
図19を参照して説明する。なお、
図1~
図19では、ヘルメット装着者から見た方向である、前、後、左、右、上、下を、ヘルメットに対する前、後、左、右、上、下として示す。
【0015】
[ヘルメット]
図1に示すように、ヘルメット1は、一例として、フルフェイス型のヘルメットである。ヘルメット1は、帽体10と、シールド20とを備える。なお、ヘルメット1は、帽体10の内側に、発泡樹脂からなる衝撃吸収材であるライナと、装着者の頭部との密着性を高めるクッション性の内装パッドとを収容してもよい。
【0016】
帽体10は、ヘルメット1の外殻を構成する。帽体10は、半球面状を有する樹脂部材である。帽体10を構成する材料は、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、及び、繊維強化プラスチック(FRP)などから選択される。帽体10は、装着者の頭部を挿入するための下方に向けて開口する挿入口を備える。帽体10は、装着者の視野を確保するための前方にむけて開口する視野開口部を備える。
【0017】
シールド20は、光透過性を有した板状の部材である。シールド20は、帽体10の外表面が有する曲面形状に追従するように湾曲している。シールド20は、左右方向の各端に被取付部21を備える。シールド20は、視野開口部を塞ぐ状態から帽体10の外表面に沿って上方に回動可能な状態となるように、被取付部21が帽体10に取り付けられる。シールド20は、前方から飛来する異物、雨、及び、風等がヘルメット1内に入ることを妨げて装着者の視認性を向上させる。
【0018】
シールド20には、複数の保持部40を介してシート部材30が取り付けられる。シート部材30は、シールド20に対してヘルメット1の内側に位置する。シールド20、シート部材30、及び複数の保持部40は、シート取付構造を構成する。
【0019】
シート部材30は、一例として、電圧の印加の有無によって可視光線の光透過率を変える調光シートである。調光シートは、日光やその反射光による眩しさを低減する。なお、シート部材30は、電圧の印加に伴う発熱によってシールド20の曇りを防止する曇り止めシートであってもよい。シート部材30は、電気信号に応じて文字、記号、図等を表示する液晶表示デバイスであってもよい。
【0020】
[シート取付構造]
図2に示すように、シールド20は、外方に面する外面20S1と帽体10の内側に面する内面20S2とを備える。各被取付部21は、内面20S2から帽体10の内側に向かって突き出る複数の取付片21Aを備える。取付片21Aは、帽体10に対してシールド20を回動可能に取り付けるための機構であって、帽体10に設けられた回動機構と係合する。
【0021】
シールド20は、左右方向の各端において、被取付部21よりも前方の位置に貫通孔22を備える。貫通孔22は、シールド20の厚さ方向に貫通している。貫通孔22は、一例として、円形の孔部である。各貫通孔22には、1つの保持部40が取り付けられる。
【0022】
シールド20の内面20S2には、シート部材30が取り付けられる。シート部材30は、シールド20の内面20S2が有する曲面形状に追従するように湾曲している。シート部材30の外形は、シールド20の外形よりも小さい。シート部材30は、左右方向の各端において、U字に切り欠かれた凹部31を備える。各凹部31は、貫通孔22に取り付けられた保持部40と係合する。これにより、シート部材30は、シールド20の内面20S2に取り付けられる。シート部材30は、シールド20の内面20S2のなかで貫通孔22よりも前方の部分を覆う。
【0023】
シールド20には、2つの保持部40が取り付けられる。2つの保持部40のうちの一方は、第1保持部50である。第1保持部50は、一例として、一体に成形された絶縁性の樹脂部材である。2つの保持部40のうちの他方は、第2保持部60である。第2保持部60は、シート部材30が備える正負の電極に対して電気的に接続される2つの端子を備える。第2保持部60は、各端子を構成する金属部分と、各端子を絶縁する樹脂部分とを備える。
【0024】
[シート部材]
以下、
図3~
図5を参照してシート部材30について説明する。
図3及び
図5では、シート部材30のなかでシールド20の内面20S2と対向する第1面30S1が紙面手前側に面する。
【0025】
図3に示すように、シート部材30において、2つの凹部31のうちの一方は、第1凹部31Aである。第1凹部31Aは、第1保持部50と係合する。2つの凹部31のうちの他方は、第2凹部31Bである。第2凹部31Bは、第2保持部60と係合する。
【0026】
シート部材30は、シール部32を備える。シール部32は、シート部材30の第1面30S1において、その周縁に沿って無端状に延びる。なお、2つの凹部31は、シール部32よりも左右方向の外側に位置する。シール部32は、シート部材30がシールド20に取り付けられた状態で、シールド20の内面20S2に密着する。シート部材30は、内面20S2との間に密閉された空間を区画することで、シールド20の内外面の温度差を低減して曇り止めを図ることができる。
【0027】
図4に示すように、シート部材30が調光シートである場合、シート部材30は、例えば、2つの電極シート30Aと、調光層30Dとを備える。各電極シート30Aは、絶縁性の基材層30Bと、導電性の電極層30Cとを備える。基材層30Bは、例えば、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどの透明な樹脂材料によって構成される。電極層30Cは、インジウムスズ酸化物や導電性ポリマーなどの透明な導体によって構成される。調光層30Dは、2つの電極層30Cの間に位置する。調光層30Dは、液晶成分と、液晶成分を保持する高分子成分とを備える。高分子成分に保持される液晶成分は、2つの電極層30Cの間に電圧が印加された状態と、電圧が印加されていない状態とで配向を変えることで光透過率を変える。
【0028】
シート部材30は、左右方向の一端において、厚さ方向に並ぶ第1電極33と、第2電極34と、電極支持部35とを備える。第1電極33、第2電極34、及び電極支持部35は、第2凹部31Bを構成する。第1電極33は、シート部材30が備える正負の電極のうちの一方である。第2電極34は、シート部材30が備える正負の電極のうちの他方である。第1電極33及び第2電極34は、それぞれ第2保持部60が備える端子に電気的に接続される。
【0029】
第1電極33は、例えば、2つの電極層30Cの一方と、当該電極層30Cに設けられた第1めっき層33Aとによって構成される。第2電極34は、例えば、2つの電極層30Cの他方と、当該電極層30Cに設けられた第2めっき層34Aとによって構成される。第1めっき層33A及び第2めっき層34Aは、例えば、金、銀、銅、または錫を含む。なお、第1電極33は、電極層30Cとは別体であって、当該電極層30Cに対して電気的に接続された導体であってもよい。同様に、第2電極34は、電極層30Cとは別体であって、当該電極層30Cに対して電気的に接続された導体であってもよい。また、第1めっき層33A及び第2めっき層34Aは、省略されてもよい。
【0030】
第1電極33は、電極支持部35に対してシールド20の内面20S2側に設けられる。第2電極34は、電極支持部35に対してシールド20と反対側に設けられる。電極支持部35は、シート部材30の厚さ方向において、第1電極33と第2電極34との間に位置する。電極支持部35は、第1電極33と第2電極34との距離を保つように第1電極33と第2電極34とを支持する。電極支持部35は、一例として、調光層30Dよりも高い機械的強度を有した絶縁性の樹脂である。
【0031】
第1電極33は、シールド20の内面20S2と対向する第1面30S1と同じ方向に面する第1電極面33Sを備える。第2電極34は、シート部材30のなかで第1面30S1と反対の第2面30S2と同じ方向に面する第2電極面34Sを備える。第1電極面33S及び第2電極面34Sは、互いに相反する方向に面する。シート部材30のなかで第2凹部31Bを構成する部分は、所定の厚さTを有する。厚さTは、第1電極面33Sと第2電極面34Sとの距離に相当する。
【0032】
なお、シート部材30は、第1面30S1及び第2面30S2のうち少なくとも一方に曇り止め加工がされていてもよい。例えば、
図4では、シート部材30の第1面30S1側に曇り止め層36を設けた構成を図示している。曇り止め層36は、例えば、シート状であってもよいし、第1面30S1に対して塗工またはスプレーされることによって形成されてもよい。
【0033】
図5に示すように、第1電極面33Sは、それぞれ第2凹部31Bの端面に沿って、所定の幅を有するように設けられる。第1電極面33Sは、一例として、馬蹄状に構成される。なお、
図5では、シート部材30のなかで、第1電極面33S及び第2電極面34Sが設けられる位置にドットを付す。また、第2電極面34Sは、第1電極面33Sと同一の形状を有する。
【0034】
[第1保持部]
図6に示すように、第1保持部50は、中心軸L1に沿って延びる略円柱状を有する。第1保持部50は、頭部51と、第1軸部52と、第2軸部53と、被係合頭部54とを備える。第1保持部50では、頭部51と、第1軸部52と、第2軸部53と、被係合頭部54とが、中心軸L1に沿ってこの順に並ぶ。
【0035】
頭部51は、中心軸L1に沿う方向の一端に位置する。頭部51は、第1保持部50がシールド20に取り付けられた状態で、シールド20の外面20S1よりも外方に位置する部分である。頭部51は、中心軸L1を中心としてシールド20が備える貫通孔22よりも大径の略円盤形状を有する。頭部51は、その円盤形状の一部が中心軸L1の外周方向に突き出る目印部51Aを備える。
【0036】
第1軸部52は、第1保持部50がシールド20に取り付けられた状態で、シールド20の貫通孔22と嵌合する部分である。第1軸部52は、貫通孔22に対して回転自在に嵌め込まれる。第1軸部52は、中心軸L1を中心として、全体として貫通孔22と同じか貫通孔22よりも小径の略円柱状を有する。第1軸部52は、スリット52Aを備える。スリット52Aは、中心軸L1から目印部51A側に偏倚した位置において、第1軸部52を主軸部52Bと弾性片52Dとに区画する。
【0037】
主軸部52Bは、弾性片52Dよりも大きい。主軸部52Bには、第2軸部53が連設される。主軸部52Bにおいて、頭部51側の部分は、第2軸部53側の部分よりも径が小さい縮径部である。これにより、第1保持部50を貫通孔22に嵌め込む際に、主軸部52Bを中心軸L1に沿う方向に撓ませながら貫通孔22に挿入できる。主軸部52Bは、中心軸L1の外周方向に突き出る第1係止爪52Cを備える。中心軸L1に沿う方向において、頭部51と第1係止爪52Cとの距離は、シールド20の厚さ以上である。
【0038】
弾性片52Dは、自由端を有するとともに、スリット52Aを狭めたり広げたりするように弾性変形可能である。弾性片52Dは、自由端の外周縁から中心軸L1の外周方向に突き出る第2係止爪52Eを備える。中心軸L1に沿う方向において、頭部51と第2係止爪52Eとの距離は、シールド20の厚さ以上である。
【0039】
第2軸部53は、第1保持部50がシールド20に取り付けられた状態で、シールド20の内面20S2よりも帽体10の内側に突き出る部分である。第2軸部53は、第1軸部52よりも小径の円柱形状を有する。第2軸部53の中心は、中心軸L1と平行であって、中心軸L1から目印部51Aと反対側に偏倚して位置する偏心軸L2である。すなわち、第2軸部53は、第1軸部52に対して偏心して位置する。第2軸部53は、第1保持部50にシート部材30が取り付けられた状態で第1凹部31Aと係合する。
【0040】
被係合頭部54は、第2軸部53よりも太く、かつ貫通孔22を挿通可能な大きさの角柱形状を有する。被係合頭部54は、一例として、第1軸部52と略同じ太さを有する。第1軸部52、第2軸部53、及び被係合頭部54は、第2軸部53の周囲に環状溝55を構成する。被係合頭部54は、非円形の外周面を有する。被係合頭部54は、例えば、中心軸L1を中心とした六角柱形状を有する。
【0041】
図7に示すように、第1保持部50は、被係合頭部54の側から貫通孔22に挿入される。第1保持部50は、第1軸部52が貫通孔22に嵌め込まれた状態において、頭部51と第1係止爪52C及び第2係止爪52Eとによってシールド20を挟み込む。これにより、第1保持部50がシールド20に取り付けられる。また、弾性片52Dを弾性変形させることで、第1保持部50をシールド20に対して容易に取り付けることができる。
【0042】
第2軸部53及び被係合頭部54は、第1保持部50がシールド20に取り付けられた状態で、内面20S2よりも帽体10の内側に向かって突き出る突出部の一例である。第1保持部50の環状溝55には、第2軸部53と係合するように、シート部材30の第1凹部31Aが嵌め込まれる。このとき、第1保持部50は、目印部51Aが前方に向かうように、かつ第2軸部53の偏心軸L2が中心軸L1に対して後方に位置するように配置される。また、シート部材30は、シール部32がシールド20の内面20S2と対向するように配置される。
【0043】
図8に示すように、シールド20に取り付けられた第1保持部50は、工具100などを被係合頭部54に係合することで、中心軸L1を回転軸として貫通孔22に対して回転させることができる。工具100は、例えば、レンチやスパナである。なお、被係合頭部54を指で摘まんで第1保持部50を回転させてもよい。第1保持部50が貫通孔22に対して回転すると、第2軸部53が中心軸L1を回転軸として回転する。したがって、第1保持部50を回転させることで、第2軸部53が回転する範囲で第1保持部50に取り付けられたシールド20を移動させることができる。なお、
図8では、第1保持部50を
図7に示す状態から180度回転させた状態を図示している。
【0044】
図9では、
図7に示す状態のシート部材30及び第1保持部50を二点鎖線で示すとともに、
図8に示す状態のシート部材30及び第1保持部50を実線で示す。
図9に示すように、第2軸部53が中心軸L1に対して後方側に位置する状態(二点鎖線)から前方側に位置する状態(実線)になるように第1保持部50を回転させることで、シート部材30を前方に向けて移動させることができる。したがって、シート部材30をシールド20の内面20S2に向かって十分に押し当てることができる。結果として、シールド20の内面20S2とシート部材30が備えるシール部32との密着性を高めることができる。また、シールド20の湾曲の程度に応じて、シールド20に対するシート部材30の押圧の程度を変えることも可能となる。このとき、シールド20の外面20S1側からであっても、目印部51Aの向きによって第2軸部53の位置を確認できる。
【0045】
[第2保持部]
図10に示すように、第2保持部60は、軸部材61と、第1端子部材62と、絶縁部材63と、第2端子部材64とを備える。軸部材61及び絶縁部材63は、絶縁性の部材であって、一例として、熱可塑性樹脂によって構成される。第1端子部材62及び第2端子部材64は、導電性の部材であって、一例として、銅、ニッケル、及びアルミニウムなどの金属、もしくはその合金などによって構成される。第2保持部60は、全体として、中心軸L3に沿って延びる略円柱状を有する。第2保持部60は、軸部材61、第1端子部材62、絶縁部材63、及び第2端子部材64が相対的に移動しないように、各部材が一体となるように互いに固定されている。第2保持部60は、例えば、各部材が接着剤によって接着されてもよいし、インサート成形によって一体に構成されてもよいし、各部材に設けられた凹凸形状の係合によって一体に構成されてもよい。
【0046】
軸部材61は、頭部61Aと、第1軸部61Bと、鍔部61Cとを備える。軸部材61では、頭部61Aと、第1軸部61Bと、鍔部61Cとが、中心軸L3に沿ってこの順に並ぶ。頭部61Aは、第2保持部60がシールド20に取り付けられた状態で、シールド20の外面20S1よりも外方に位置する部分である。頭部61Aは、中心軸L3を中心としてシールド20が備える貫通孔22よりも大径の略円盤状を有する。頭部61Aは、その円盤形状の一部が中心軸L3の外周方向に突き出る目印部61A1を備える。
【0047】
第1軸部61Bは、第2保持部60がシールド20に取り付けられた状態で貫通孔22と嵌合する部分である。第1軸部61Bは、貫通孔22に対して回転自在に嵌め込まれる。第1軸部61Bは、中心軸L3を中心として貫通孔22と同じか貫通孔22よりも小径の略円柱状を有する。
【0048】
鍔部61Cは、貫通孔22よりも大径の略円盤状を有する。鍔部61Cは、第2保持部60がシールド20に取り付けられた状態で、シールド20の内面20S2よりも帽体10の内側に位置する。したがって、軸部材61は、頭部61Aと、第1軸部61Bと、鍔部61Cとによって環状溝61Dを構成する。第2保持部60は、環状溝61Dと貫通孔22とが係合することによってシールド20に対して取り付けられる。
【0049】
軸部材61は、頭部61A、第1軸部61B、及び鍔部61Cを貫通する第1挿通孔61Eを備える。第1挿通孔61Eは、中心軸L3に沿って延びる。第1挿通孔61Eは、一例として、中心軸L3を中心とした円形の孔部であるが、任意の形状であってよい。
【0050】
第2保持部60は、第1弾性支持部65を備える。第1弾性支持部65は、中心軸L3に沿う方向において、軸部材61における鍔部61C側の端部に位置する。第1弾性支持部65は、軸部材61よりもヤング率が低く弾性変形し易い材料で構成される。第1弾性支持部65は、第1端子部材62が備える第1端子62Bに当接する。第1弾性支持部65は、例えば、シリコーンゴムなどによって構成される。なお、第1弾性支持部65を省略してもよい。
【0051】
第1端子部材62は、第1導体軸62Aと、第1端子62Bとを備える。第1導体軸62Aは、一例として、中心軸L3を中心とした円柱形状を有する。第1導体軸62Aは、軸部材61の第1挿通孔61Eに挿入される。第1端子62Bは、第1導体軸62Aの一端に連接される。第1端子62Bは、中心軸L3を中心とした偏平な略円盤形状を有する。第1端子62Bは、貫通孔22を挿通可能な大きさであって、第1導体軸62Aよりも大径である。
【0052】
第1端子62Bは、第1端子面62S1と、第1被支持面62S2とを備える。第1端子面62S1は、第1端子62Bのなかで第1導体軸62Aと反対側の面である。第1被支持面62S2は、第1端子62Bのなかで第1導体軸62A側の面であって、第1端子面62S1と反対側の面である。第1被支持面62S2は、第1導体軸62Aが第1挿通孔61Eに挿入された状態で、第1弾性支持部65に接する。第1端子面62S1には、第1めっき層33Aと同種のめっきが設けられてもよい。
【0053】
第1端子部材62は、第1導体軸62Aと第1端子62Bとを貫通する第2挿通孔62Cを備える。第2挿通孔62Cは、中心軸L3に沿って延びる。第2挿通孔62Cは、一例として、中心軸L3を中心とした円形の孔部であるが、任意の形状であってよい。
【0054】
絶縁部材63は、絶縁軸63Aと、第2軸部63Bとを備える。絶縁軸63Aは、一例として、中心軸L3を中心とした円柱形状を有する。絶縁軸63Aは、第1端子部材62の第2挿通孔62Cに挿入される。第2軸部63Bは、絶縁軸63Aよりも大径であって、第1軸部61B及び第1端子62Bよりも小径の円柱形状を有する。第2軸部63Bは、絶縁軸63Aの一端に連接される。第2軸部63Bの中心は、中心軸L3と平行であって、中心軸L3から目印部61A1と反対側に偏倚して位置する偏心軸L4である。すなわち、第2軸部63Bは、第1軸部61Bに対して偏心して位置する。第2軸部63Bは、第1端子面62S1に接する。第2軸部63Bは、第2保持部60にシート部材30が取り付けられた状態で第2凹部31Bと係合する。
【0055】
絶縁部材63は、絶縁軸63Aと第2軸部63Bとを貫通する第3挿通孔63Cを備える。第3挿通孔63Cは、中心軸L3に沿って延びる。第3挿通孔63Cは、一例として、中心軸L3を中心とした円形の孔部であるが、任意の形状であってよい。
【0056】
第2端子部材64は、第2導体軸64Aと、第2端子64Bとを備える。第2導体軸64Aは、一例として、中心軸L3を中心とした円柱形状を有する。第2導体軸64Aは、絶縁部材63の第3挿通孔63Cに挿入される。第2端子64Bは、第2導体軸64Aの一端に連接される。第2端子64Bは、中心軸L3を中心とした偏平な角柱形状を有する。第2端子64Bは、第2導体軸64A及び第2軸部63Bよりも太く、かつ、貫通孔22を挿通可能な大きさを有する。第2端子64Bの太さは、一例として、第1端子62Bの太さと等しい。第2端子64Bは、非円形の外周面を有する。第2端子64Bは、一例として、六角柱状である。
【0057】
第2端子64Bは、第2端子面64S1と、第2被支持面64S2とを備える。第2端子面64S1は、第2端子64Bのなかで第2導体軸64A側の面である。第2被支持面64S2は、第1端子62Bのなかで第2端子面64S1と反対側の面である。第2端子面64S1は、第2導体軸64Aが第3挿通孔63Cに挿入された状態で、絶縁部材63の第2軸部63Bに接する。第2端子面64S1には、第2めっき層34Aと同種のめっきが設けられてもよい。
【0058】
第2保持部60は、裏打ち部66を備える。裏打ち部66は、第2端子64Bに対して第2被支持面64S2側に設けられる。裏打ち部66は、例えば、絶縁性の樹脂などによって構成される。裏打ち部66は、一例として、軸部材61と同種の樹脂材料によって構成される。裏打ち部66は、一例として、第2端子64Bよりも厚さが大きくなるように構成される。裏打ち部66は、第2端子64Bを支持することによって、第2端子64Bの過剰な変形を防ぐ。なお、裏打ち部66を省略してもよい。
【0059】
第2保持部60は、第2弾性支持部67を備える。第2弾性支持部67は、第2端子64Bと裏打ち部66との間に設けられる。第2弾性支持部67は、裏打ち部66よりもヤング率が低く弾性変形し易い材料で構成される。第2弾性支持部67は、第2端子64Bの第2被支持面64S2に当接する。第2弾性支持部67は、例えば、シリコーンゴムなどで構成される。なお、裏打ち部66及び第2弾性支持部67は、例えば、第2端子64Bと同様に六角柱状に構成される。なお、第2弾性支持部67を省略してもよい。
【0060】
図11に示すように、第2保持部60は、頭部61A、第1軸部61B、及び鍔部61Cによって構成される環状溝61Dを貫通孔22に対して嵌め込むことで、シールド20に取り付けられる。なお、第2保持部60は、シールド20に対して着脱可能に構成される。例えば、第2保持部60は、シールド20に対して着脱し易いように、第1保持部50と同様に軸部材61に縮径部を設けてもよい。
【0061】
第1導体軸62A、絶縁軸63A、及び第2導体軸64Aは、軸部材61の第1挿通孔61Eを通じてシールド20の内面20S2側から外面20S1側に向かって延びる。第1導体軸62A及び第2導体軸64Aは、第1挿通孔61Eにおいて、絶縁軸63Aによって絶縁される。
【0062】
第1導体軸62Aは、第1外部配線201を介して外部電源200に接続される。第2導体軸64Aは、第2外部配線202を介して外部電源200に接続される。外部電源200は、例えば、帽体10に装着されたリチウムイオン二次電池などの二次電池であるが、一次電池であってもよい。外部電源200は、例えば、電力を出力する状態と電力を出力しない状態とを切り換えるスイッチを有する。外部電源200は、装着者がヘルメットを装着した状態でスイッチを操作できるように、例えば、シールド20の外面20S1上で視界の妨げにならない被取付部21の近傍に位置する。シールド20の外面20S1上に外部電源200を配置することで、シールド20を回動した際に第1外部配線201及び第2外部配線202に無理な外力(張力)が加わることを防ぐ。
【0063】
第1外部配線201及び第2外部配線202は、シート部材30に電力を供給するための配線であって、例えば、電線である。第1外部配線201及び第2外部配線202は、帽体10及びシールド20の外側に位置する。なお、第1外部配線201及び第2外部配線202は、直接外部電源200に接続されるのではなく、例えば、帽体10の外側やシールド20の外面20S1上に装着されたコントローラなどに接続されてもよい。この場合、例えば、コントローラが外部電源200に接続される。
【0064】
第1端子62B、第2軸部63B、及び第2端子64Bは、第2保持部60のなかで、シールド20の内面20S2から帽体10の内側に向かって突き出る突出部の一例である。第2軸部63Bは、第1端子面62S1と第2端子面64S1とによって、中心軸L3に沿う方向に挟み込まれる。第1端子62B及び第2端子64Bは、第2軸部63Bによって絶縁される。第1端子62B、第2軸部63B、及び第2端子64Bは、第2軸部63Bの周囲に環状溝68を構成する。
【0065】
第1端子面62S1及び第2端子面64S1は、互いに対向して位置する。第1端子面62S1と第2端子面64S1との距離Dは、第2軸部63Bの偏心軸L4方向の厚さに相当する。すなわち、第2軸部63Bは、距離Dを規定するためのスペーサとして機能する。距離Dは、シート部材30の第2凹部31Bを構成する部分の厚さT以下である。距離Dは、環状溝68の幅に相当する。
【0066】
環状溝68には、第2凹部31Bが嵌め込まれる。第2凹部31Bは、第2軸部63Bと係合する。第1端子面62S1は、第1電極面33Sに当接する。これにより、第1端子部材62と第1電極33とが電気的に接続される。第2端子面64S1は、第2電極面34Sに当接する。これにより、第2端子部材64と第2電極34とが電気的に接続される。
【0067】
第1端子62Bと第1電極33とが接触する際に第1弾性支持部65が撓むことで、第1端子62Bが弾性変形し易くなる。これにより、環状溝68に第2凹部31Bを嵌め込み易くなる。さらに、第1端子面62S1と第1電極面33Sとが接触する圧力を高めることで、第1端子62Bと第1電極33との電気的な接触信頼性を高めることができる。同様に、第2端子64Bと第2電極34とが接触する際に第2弾性支持部67が撓むことで、環状溝68に第2凹部31Bを嵌め込み易くなるとともに、第2端子64Bと第2電極34との電気的な接触信頼性を高めることができる。換言すると、第1端子62Bのなかで第1弾性支持部65に支持される部分は、第1電極面33Sに対して弾性変形しながら接触する弾性部の一例である。また、第2端子64Bのなかで第2弾性支持部67に支持される部分は、第2電極面34Sに対して弾性変形しながら接触する弾性部の一例である。
【0068】
また、第2保持部60は、第1保持部50と同様に、裏打ち部66に工具100などを係合することで、中心軸L1を回転軸として第2保持部60の全体を貫通孔22に対して回転させることができる。すなわち、裏打ち部66を回転させることで、軸部材61、第1端子部材62、絶縁部材63、及び第2端子部材64が一体に回転する。これにより、第2軸部63Bが回転する範囲で第2保持部60に取り付けられたシールド20を移動させることができる。したがって、シート部材30をシールド20の内面20S2に向かって十分に押し当てることで、内面20S2とシール部32との密着性を高めることができる。また、シールド20の湾曲の程度に応じて、シールド20に対するシート部材30の押圧の程度を変えることも可能となる。なお、第1外部配線201及び第2外部配線202を電線で構成することで、第2保持部60の回転を妨げないようにすることができる。
【0069】
図12及び
図13では、第2軸部63B及びシート部材30の位置と、第1電極33と第1端子62Bとが接触する面積との関係について説明する。なお、第2電極34と第2端子64Bとの接触形態については、第1電極33と第1端子62Bとの接触形態と同様である。また、
図12及び
図13では、第1端子62Bに薄いドットを付し、第1電極33に中程度の濃さのドットを付し、第1端子62Bと第1電極33とが重なる部分に濃いドットを付して示す。
【0070】
図12に示すように、第2軸部63Bが前方に位置する場合では、第1端子62Bと第1電極33とが重なる部分が相対的に小さくなる。一方、
図13に示すように、第2軸部63Bが後方に位置する場合では、第1端子62Bと第1電極33とが重なる部分が相対的に大きくなる。すなわち、第2保持部60が回転すると、第1端子62Bと第1電極33とが重なる面積が変化する。したがって、第2保持部60が回転した何れの状態においても、第1端子62Bと第1電極33との電気的な接続に必要な最低限の面積が確保できるように、第1電極33及び第1端子62Bの大きさを決定すればよい。
【0071】
シート部材30のシールド20への取り付け方法は、まず、シールド20を帽体10に取り付ける前に、2つの保持部40をシールド20に取り付ける。このとき、目印部51A,61A1がシールド20の左右方向の中央に向かうように、各保持部40を取り付ける。そして、一方の保持部40にシート部材30を取り付ける。この状態で、シールド20の湾曲形状を広げた状態で、他方の保持部40にシート部材30を取り付ける。その後、シールド20に対するシート部材30の密着の程度に応じて各保持部40を回転させることで、シールド20とシート部材30とを確実に密着させる。以上の手順によって、シート部材30がシールド20に取り付けられる。
【0072】
なお、シールド20には、正負の電極を有したシート部材30に代えて、電極を備えないシート(例えば、表面に曇り止め加工がされた防曇シート)を取り付けることもできる。この場合、第2保持部60に代えて、2つの保持部40の両方を第1保持部50としてもよい。
【0073】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)第2保持部60が第1端子62B及び第2端子64Bを備えることで、第1電極33及び第2電極34の各々において、シールド20の内外を貫通するような配線経路を1つの第2保持部60によって実現できる。そのため、シート部材30に電力を供給するための第1外部配線201及び第2外部配線202を簡素化できる。例えば、仮にシート部材30が備える正負の電極を2つの保持部40に対して各別に接続した場合よりも、第1外部配線201または第2外部配線202の配線経路を短くすることができる。
【0074】
(2)第2軸部63Bが第1軸部61Bに対して偏心して位置することで、第2保持部60を回転させることで、シート部材30を第2軸部63Bが回転する範囲で移動させることができる。これにより、シールド20とシート部材30とを十分に密着させることができる。また、第2保持部60が貫通孔22に対して回転した場合でも、第1電極33と第1端子62Bとの電気的な接続、及び、第2電極34と第2端子64Bとの電気的な接続を維持できる。
【0075】
(3)第2保持部60が第1弾性支持部65を備えることで、シート部材30の第2凹部31Bと第2軸部63Bとを係合し易くすることができる。さらに、第1電極面33Sと第1端子面62S1とが接触する圧力を高めることで、第1電極33と第1端子62Bとの電気的な接触信頼性を高めることができる。また、第1電極面33Sと第1端子面62S1とが接触する圧力を高めることで、反力によって第2電極面34Sと第2端子面64S1とが接触する圧力も高まることから、第2電極34と第2端子64Bとの電気的な接触信頼性を高めることができる。なお、第2保持部60が第2弾性支持部67を備えることで、第2電極34と第2端子64Bとの接触においても、同様の効果を得ることができる。また、第2保持部60が第1弾性支持部65と第2弾性支持部67との両方を備えることで、上記の効果をさらに高めることができる。
【0076】
(4)第1端子面62S1と第2端子面64S1とが第2軸部63Bを挟み込むことで、第2軸部63Bが第1端子面62S1と第2端子面64S1との距離Dが小さくなるような変形を抑制するスペーサとして機能する。したがって、距離Dを適切に保つことができる。
【0077】
(5)第2保持部60に裏打ち部66を設けることで、第2端子64Bの過剰な変形を防ぐ。さらに、第2端子64Bのなかで第2電極34との接触に寄与しない部分を絶縁性の部材によって覆うことで短絡を防止できる。
【0078】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0079】
・第2端子64Bの厚さが大きい場合など、第2端子64Bの強度が十分であることで、第2端子64Bが過剰に変形しない場合には、裏打ち部66を設けなくてもよい。この場合、第2弾性支持部67も同様に省略される。この場合、第2被支持面64S2が帽体10の内側に露出しないように、絶縁性を有した層で第2被支持面64S2を覆ってもよい。
【0080】
・第1端子面62S1と第2端子面64S1とが第2軸部63Bを挟み込む構成を例示した。これに限定されず、
図14に示すように、例えば、第1端子部材62において、第1端子62Bを第2軸部63Bの外周面と隣接するように配置し、そして、第1導体軸62Aと第1端子62Bとを繋ぐ段差62Dを設けてもよい。この場合、第2軸部63Bは、第1端子部材62が備える段差62Dと第2端子面64S1とによって挟み込まれる。この場合でも、第1端子面62S1と第2端子面64S1との距離Dを適切に保つことができる。なお、上記の構成と比較して、第1端子面62S1と第2端子面64S1とが第2軸部63Bを挟み込む構成では、第1端子部材62が段差62Dを備えない分だけ、第1端子部材62の構成を簡素化できる。また、第2端子部材64においても、段差62Dに相当する構成を設けてもよい。
【0081】
・第2保持部60は、第1弾性支持部65及び第2弾性支持部67のうち一方のみを備える構成であってもよい。この場合でも、シート部材30の第2凹部31Bと第2軸部63Bとを係合し易くするとともに、第1電極33及び第1端子62B、並びに、第2電極34及び第2端子64Bの電気的な接触信頼性を高めることができる。
【0082】
・第1端子62Bは、第1電極面33Sに向かって突き出るように、厚さ方向に部分的に湾曲する凸部を有してもよい。凸部は、例えば、エンボス加工によって形成される。この場合、第1端子62Bの凸部分では、第1電極面33Sと接触する圧力を部分的に高めることができる。これにより、電気的な接触信頼性を高めることができる。また、第1端子62Bと第1電極33とが接触する際に凸部が撓むことで、環状溝68に第2凹部31Bを嵌め込み易くなる。第1端子62Bが備える凸部は、第1電極面33Sに対して弾性変形しながら接触する弾性部の一例である。なお、凸部は、点状でもよいし、線状でもよいし、第1導体軸62Aを囲むような環状でもよく、また、1つでもよいし複数でもよい。この場合、第2保持部60は、第1弾性支持部65を備えなくてもよい。同様に、第2端子64Bが凸部を備えてもよい。第2端子64Bが備える凸部も弾性部の一例である。この場合、第2保持部60は、第2弾性支持部67を備えなくてもよい。
【0083】
・第1端子62Bは、第1導体軸62Aとの接続部分から外周方向に向かって、第1電極面33Sに近づくように傾斜する傾斜部を備えてもよい。この場合、傾斜部の先端では、第1電極面33Sと接触する圧力を部分的に高めることができる。これにより、電気的な接触信頼性を高めることができる。また、第1端子62Bと第1電極33とが接触する際に傾斜部が撓むことで、環状溝68に第2凹部31Bを嵌め込み易くなる。第1端子62Bが備える傾斜部は、第1電極面33Sに対して弾性変形しながら接触する弾性部の一例である。この場合、第2保持部60は、第1弾性支持部65を備えなくてもよい。同様に、第2端子64Bが傾斜部を備えてもよい。第2端子64Bが備える傾斜部も弾性部の一例である。この場合、第2保持部60は、第2弾性支持部67を備えなくてもよい。
【0084】
・第2保持部60は、第1弾性支持部65及び第2弾性支持部67を備えなくてもよい。この場合、第2凹部31Bは、環状溝68に圧入される。このような構成の場合、第1端子62B及び第2端子64Bは、部分的に厚さが増加するような突起を有してもよい。この場合、第1端子62Bが備える突起において、第1電極33と接触する圧力を部分的に高めるとともに、環状溝68に第2凹部31Bを嵌め込むために必要な力が過剰に高まることを抑制できる。同様に、第2端子64Bが備える突起において、第2電極34と接触する圧力を部分的に高めることができる。突起は、点状であってもよいし、線状であってもよい。突起は、1つでもよいし複数であってもよい。
【0085】
・第2軸部63Bは、第1軸部61Bに対して偏心して位置するのではなく、第2軸部63Bの中心が中心軸L3であってもよい。この場合、貫通孔22に対して第2保持部60を取り付ける向きによらず、第1電極33と第1端子62Bとの接触面積、及び第2電極34と第2端子64Bとの接触面積を一定にすることができる。なお、この場合であっても、第1保持部50の回転によって、シールド20とシート部材30との密着性を高めることができる。
【0086】
・2つの保持部40のうち少なくとも一方が第2保持部60であればよく、例えば、2つの保持部40の両方が第2保持部60であってもよい。この場合、第1凹部31Aには、第1電極33及び第2電極34とは別の電気回路を構成するための電極を設けてもよいし、電極を設けなくてもよい。また、2つの保持部40のうち第1保持部50を用いずに、他の手段によってシート部材30の第1凹部31A側の端部をシールド20に取り付けてもよい。例えば、第1凹部31Aと係合する保持ピンをシールド20と一体に構成してもよい。また、接着剤によって、シート部材30の第1凹部31A側の端部をシールド20に取り付けてもよい。この場合、シールド20が第1保持部50側の貫通孔22を備えなくてもよく、また、シート部材30が第1凹部31Aを備えなくてもよい。
【0087】
・第1端子62Bは、第1電極33との十分な接触面積を確保できるのであれば、その形状は限定されない。例えば、第1端子62Bは、円盤形状の一部が切り欠かれた形状であってもよい。同様に、第2端子64Bは、第2電極34との十分な接触面積を確保できるのであれば、その形状は限定されない。
【0088】
・第1導体軸62Aは、第1端子62Bを第1外部配線201に接続できる構成であれば、その形状は限定されない。例えば、第1導体軸62Aは、円柱状ではなく、角柱状でもよいし、シート状でもよい。また、第1端子部材62は、第1端子62Bを第1外部配線201に接続できるのであれば、第1導体軸62Aを備えなくてもよい。例えば、第1端子62Bと第1外部配線201とが、第1挿通孔61Eの内部で電気的に接続される構成でもよい。すなわち、第1端子62Bが第1外部配線201に対して貫通孔22を介して電気的に接続される構成であればよい。同様に、第2導体軸64Aの形状は限定されず、第2端子部材64が第2導体軸64Aを備えなくてもよい。
【0089】
・第1電極33及び第2電極34は、
図4に示す構成に限定されない。以下、
図15~
図19を参照して、シート部材30の別例について説明する。
図15に示すように、シート部材30は、第1電極33を構成する第1電極部材70と、第2電極34を構成する第2電極部材80とを備える。第1電極部材70及び第2電極部材80は、シート部材30が備える電極層30Cとは別体である。第1電極部材70は、2つの電極層30Cの一方と電気的に接続される。第2電極部材80は、2つの電極層30Cの他方と電気的に接続される。
【0090】
図16に示すように、第1電極部材70は、導電性を有した第1導体層70Aと、樹脂製の第1絶縁層70Bとが積層されて構成される。第1導体層70Aは、例えば、第1絶縁層70Bに張り合わされた金属箔などでもよいし、第1絶縁層70Bにめっきされた金属でもよいし、第1絶縁層70Bにスパッタなどで蒸着された金属でもよい。
【0091】
第1電極部材70は、第1電極部71と、第1折曲部72と、第1接続部73とを備える。第1電極部71は、シート部材30の第1面30S1側に露出する部分である。第1電極部71は、一例として、馬蹄状に構成される。第1折曲部72及び第1接続部73は、第1電極部71の一端から延出する部分である。第1電極部71と第1折曲部72との境界、及び第1折曲部72と第1接続部73との境界は、それぞれ第1導体層70Aが山部、第1絶縁層70Bが谷部となるように略直角に折れ曲がる。
【0092】
図17に示すように、第2電極部材80は、第2導体層80Aと第2絶縁層80Bとが積層されて構成される。第2電極部材80の層構成は、第1電極部材70の層構成と同様である。第2電極部材80は、第2電極部81と、第2折曲部82と、第2接続部83とを備える。第2電極部81は、シート部材30の第2面30S2側に露出する部分である。第2電極部81は、第1電極部71と同一形状であって、一例として、馬蹄状に構成される。第2折曲部82及び第2接続部83は、第2電極部81の一端から延出する部分である。第2電極部81と第2折曲部82との境界、及び第2折曲部82と第2接続部83との境界は、それぞれ第2導体層80Aが山部、第2絶縁層80Bが谷部となるように略直角に折れ曲がる。
【0093】
図18に示すように、シート部材30は、2つの電極層30Cの間に封止層30Eと接着層30Fとを備える。封止層30Eは、一例として、絶縁性の樹脂である。封止層30Eは、調光層30Dの端面の全周に亘って設けられる。封止層30Eは、調光層30Dの端面を覆うことで、調光層30Dの液晶成分が外部に露出することを防ぐとともに、液晶成分が水分などによって劣化することを防ぐ。接着層30Fは、絶縁性の接着剤である。接着層30Fは、2つの電極シート30Aの接合強度を高める。
【0094】
第1電極部材70は、第1面30S1側の電極シート30Aの端部に対して、第1絶縁層70Bと当該電極シート30Aとが接するように接着剤などによって張り合わされる。第1電極部71は、第1面30S1と同じ側に位置する。第1電極部71の第1導体層70Aは、第1電極面33Sを構成する。第1折曲部72は、シート部材30の端面に位置して第2凹部31Bを構成する。第1接続部73は、2つの電極層30Cの間に配置される。第1接続部73の第1導体層70Aは、第2面30S2側の電極シート30Aが備える電極層30Cに対して、例えば、導電性の接着剤などによって電気的かつ機械的に接続される。
【0095】
図19に示すように、第2電極部材80は、第2面30S2側の電極シート30Aの端部に対して、第2絶縁層80Bと当該電極シート30Aとが接するように接着剤などによって張り合わされる。第2電極部81は、第2面30S2と同じ側に位置する。第2電極部81の第2導体層80Aは、第2電極面34Sを構成する。第2折曲部82は、シート部材30の端面に位置して第2凹部31Bを構成する。第2接続部83は、2つの電極層30Cの間に配置される。第2接続部83の第2導体層80Aは、第1面30S1側の電極シート30Aが備える電極層30Cに対して、例えば、導電性の接着剤などによって電気的かつ機械的に接続される。以上より、シート部材30が備える電極層30Cとは別体の第1電極部材70及び第2電極部材80を用いた場合であっても、シート部材30の第1電極33及び第2電極34を構成することができる。
【0096】
・ヘルメット1は、シールド20を備えるものであればよい。例えば、顎部が上昇可能なフリップアップ型ヘルメット、オープンフェイス型ヘルメット、着脱式の顎部を持つヘルメット、または顎部を転回させて後頭部に固定可能なコンバーチブル型ヘルメットでもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…ヘルメット
10…帽体
20…シールド
20S2…内面
22…貫通孔
30…シート部材
31A…第1凹部
31B…第2凹部
33…第1電極
33S…第1電極面
34…第2電極
34S…第2電極面
40…保持部
50…第1保持部
60…第2保持部
61…頭部
52,61B…第1軸部
62B…第1端子
53,63B…第2軸部
64B…第2端子
201…第1外部配線
202…第2外部配線