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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175204
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】車両用温調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20231205BHJP
   B60H 1/03 20060101ALI20231205BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/22 651C
B60H1/03 Z
F25B1/00 304W
F25B1/00 399Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087536
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】内野 諒平
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA02
3L211BA34
3L211CA18
3L211CA19
3L211DA26
3L211DA28
3L211DA29
3L211EA50
3L211FB05
3L211GA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圧縮機における仕事量の減少を抑制できる車両用温調装置を提供する。
【解決手段】第1熱媒体が循環する第1回路と、第2熱媒体が循環する第2回路と、第1回路と第2回路との間で熱交換を行う第1熱交換器と、を備える。第1回路には、圧縮機と、第1熱媒体と空気との間で熱交換を行う第2熱交換器と、が設けられている。第1回路は運転モードを切り替えるためのバルブ群を有する。バルブ群は、第1熱交換器及び圧縮機の順で第1熱媒体を通過させる第1モードと、圧縮機及び第1熱交換器の順で第1熱媒体を通過させる第2モードと、に運転モードを切り替え可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱媒体が循環する第1回路と、
第2熱媒体が循環する第2回路と、
前記第1回路と前記第2回路との間で熱交換を行う第1熱交換器と、
を備え、
前記第1回路には、圧縮機と、前記第1熱媒体と空気との間で熱交換を行う第2熱交換器と、が設けられ、
前記第1回路は運転モードを切り替えるためのバルブ群を有し、
前記バルブ群は、少なくとも前記第1熱交換器及び前記圧縮機の順で前記第1熱媒体を通過させる第1モードと、前記圧縮機及び前記第1熱交換器の順で前記第1熱媒体を通過させる第2モードと、に前記運転モードを切り替え可能である、車両用温調装置。
【請求項2】
前記バルブ群は、少なくとも前記第2熱交換器の下流側の流路を分岐する第1バルブと、前記第1熱交換器の下流側の流路を分岐する第2バルブと、前記圧縮機の下流側の流路を分岐する第3バルブと、を有し、
前記第1バルブには、前記第1熱交換器の上流側と接続した第1分岐流路と、前記圧縮機の上流側と接続した第2分岐流路と、が接続され、
前記第2バルブには、前記圧縮機の上流側と接続した第3分岐流路と、前記第2熱交換器の上流側と接続した第4分岐流路と、が接続され、
前記第3バルブには、前記第2熱交換器の上流側と接続した第5分岐流路と、前記第1熱交換器の上流側と接続した第6分岐流路と、が接続されている、請求項1に記載の車両用温調装置。
【請求項3】
前記第2熱交換器は、空調用熱交換器、および室外熱交換器を有する、請求項1又は2に記載の車両用温調装置。
【請求項4】
前記第2回路は、モータ及びバッテリのうちの少なくとも一方を有するとともに、ヒータ及びラジエータのうちの少なくとも一方を有する、請求項1又は2に記載の車両用温調装置。
【請求項5】
前記第2回路の所定部材の検出温度が第1基準温度以上の状態で、前記第1熱交換器に供給される前記第2熱媒体の温度が前記第1熱交換器に供給される前記第1熱媒体の温度以上のとき、前記バルブ群は前記運転モードを前記第1モードに切り替える、請求項1又は2に記載の車両用温調装置。
【請求項6】
前記空気の検出温度が第2基準温度以上であるとともに、前記第2回路の所定部材の検出温度が第1基準温度より低い状態で、前記第1熱交換器に供給される前記第2熱媒体の温度が前記第1熱交換器に供給される前記第1熱媒体の温度より低いとき、前記バルブ群は前記運転モードを前記第2モードに切り替える、請求項1又は2に記載の車両用温調装置。
【請求項7】
前記バルブ群は、前記第1熱交換器に繋がる流路を遮断して前記圧縮機に前記第1熱媒体を通過させる第3モードに前記運転モードを切り替え可能であり、
前記第2回路の所定部材の検出温度が第1基準温度未満の状態で、前記第1熱交換器に供給される前記第2熱媒体の温度が前記第1熱交換器に供給される前記第1熱媒体の温度以上のとき、
又は、前記第2回路の所定部材の検出温度が前記第1基準温度以上の状態で、前記第1熱交換器に供給される前記第2熱媒体の温度が前記第1熱交換器に供給される前記第1熱媒体の温度未満のとき、
前記バルブ群は前記運転モードを前記第3モードに切り替える、請求項1又は2に記載の車両用温調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用温調装置として、車室空気の加熱、外気との吸熱又は放熱等を行う第1回路と、駆動部等の冷却を行う第2回路と、の間で熱交換を行う装置が知られている。
例えば特許文献1には、駆動源の熱を用いて車室内に導かれる空気を加熱可能な車両用のヒートポンプシステムが記載されている。特許文献1のヒートポンプシステムは、駆動源冷却水流路と、冷媒流路と、駆動源冷却水流路の冷却水と冷媒流路の冷媒との間で熱交換を行う水冷媒熱交換器と、を備える。冷媒流路には、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に導かれる空気を加熱するインナーコンデンサ等を有する。駆動源は燃焼により発熱するエンジン等である。特許文献1では、エンジン等で生じた熱が駆動源冷却水流路の冷却水から冷媒回路の冷媒に移動し、車室内の暖房に利用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-13561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用温調装置では、熱交換器により第1回路の第1熱媒体と第2回路の第2熱媒体との間で熱交換が行われる。第1回路の第1熱媒体の熱が第2回路の熱媒体に移動したり、第2回路の熱媒体の熱が第1回路の熱媒体に移動したりする。
ところが熱交換器において第1回路の第1熱媒体が第2回路の第2熱媒体に放熱した場合、熱交換器から圧縮機に送られる第1回路の温度が低下する。すると圧縮機の吸込側における第1熱媒体の圧力が低下して圧縮機の仕事量が減少するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、第1熱媒体と第2熱媒体との間で熱交換を行っても、圧縮機における仕事量の減少を抑制できる車両用温調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用温調装置は、第1熱媒体が循環する第1回路と、第2熱媒体が循環する第2回路と、前記第1回路と前記第2回路との間で熱交換を行う第1熱交換器と、を備える。前記第1回路には、圧縮機と、前記第1熱媒体と空気との間で熱交換を行う第2熱交換器と、が設けられる。前記第1回路は運転モードを切り替えるためのバルブ群を有する。前記バルブ群は、少なくとも前記第1熱交換器及び前記圧縮機の順で前記第1熱媒体を通過させる第1モードと、前記圧縮機及び前記第1熱交換器の順で前記第1熱媒体を通過させる第2モードと、に前記運転モードを切り替え可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用温調装置によれば、第1熱媒体と第2熱媒体との間で熱交換を行っても、圧縮機における仕事量の減少を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の車両用温調装置を示すブロック図である。
図2】実施形態のバルブ群を説明するためのブロック図であり、第1モードを示す。
図3】実施形態の第1モードの説明図である。
図4】実施形態のバルブ群を説明するためのブロック図であり、第2モードを示す。
図5】実施形態の第2モードの説明図である。
図6】実施形態のバルブ群を説明するためのブロック図であり、第3モードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る温調装置について説明する。
図1は、一実施形態の車両用温調装置を示すブロック図である。
本実施形態の車両用温調装置10は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、等、モータを動力源とする車両に搭載されるものである。
【0010】
車両用温調装置10は、第1熱媒体R1が循環する第1回路C1と、第2熱媒体R2が循環する第2回路C2と、第1回路C1と第2回路C2との間で熱交換を行う第1熱交換器11と、を備える。第1熱交換器11は、例えばチラーである。
【0011】
(第1回路C1)
第1回路C1には、圧縮機15と、第1熱媒体R1と空気との間で熱交換を行う第2熱交換器12と、車両用温調装置10の運転モードを切り替えるためのバルブ群13と、分岐流路群14と、膨張弁16と、を有する。圧縮機15は、通過する第1熱媒体R1を圧縮して温度を上昇させる。圧縮機15は、下流側に高圧かつ気相の第1熱媒体R1を吐出する。
【0012】
第2熱交換器12は、空調用熱交換器12aと、室外熱交換器12bと、を有する。
空調用熱交換器12aは、暖房時において圧縮機15を通過して温度が高められた第1熱媒体R1と車室内の空気との間で熱交換を行う。空調用熱交換器12aは、暖房時以外において第1熱媒体R1を膨張させて冷却及び除湿を行うことも可能である。
室外熱交換器12bは、例えばラジエータを有している。室外熱交換器12bは、膨張弁16により膨張させた第1熱媒体R1を外気と熱交換することで吸熱する。
【0013】
バルブ群13は、少なくとも第1バルブ13aと、第2バルブ13bと、第3バルブ13cと、を有する。第1バルブ13a、第2バルブ13b、および第3バルブ13cは、例えば三方弁である。第1バルブ13a、第2バルブ13b、および第3バルブ13cは図示しない制御部により制御される。
【0014】
第1バルブ13aは、室外熱交換器12bの下流側の流路を分岐する。第1バルブ13aの下流側には、第1熱交換器11の上流側と接続する第1分岐流路14aと、圧縮機15の上流側と接続する第2分岐流路14bと、が接続されている。第1バルブ13aは、室外熱交換器12bを通過した第1熱媒体R1を第1分岐流路14aまたは第2分岐流路14bの何れか一方に流す。
【0015】
第2バルブ13bは、第1熱交換器11の下流側の流路を分岐する。第2バルブ13bの下流側には、圧縮機15の上流側と接続する第3分岐流路14cと、空調用熱交換器12aの上流側と接続する第4分岐流路14dと、が接続されている。第2バルブ13bは、第1熱交換器11を通過した第1熱媒体R1を第3分岐流路14cまたは第4分岐流路14dの何れか一方に流す。
【0016】
第3バルブ13cは、圧縮機15の下流側の流路を分岐する。第3バルブ13cの下流側には、空調用熱交換器12aの上流側と接続する第5分岐流路14eと、第1熱交換器11の上流側と接続する第6分岐流路14fと、が接続されている。第3バルブ13cは、圧縮機15を通過した第1熱媒体R1を第5分岐流路14eまたは第6分岐流路14fの何れか一方に流す。
【0017】
第1回路C1には、車室の空調を実現するための各種の流体機器等を有していてもよい。本実施形態では、例えば図示しないアキュムレータ、チャッキバルブ、ファン、などを有する。また冷房又は除湿に使用するための空調用熱交換器、膨張弁、分岐流路などが設けられていてもよい。
【0018】
第1回路C1には、所定位置に第1温度センサT1が配置されている。第1温度センサT1は、第1熱媒体R1の温度を検出する。第1温度センサT1は、第1回路C1の第1熱媒体R1の温度状態により、車両用温調装置10の運転モードを切り替えるために設けられている。本実施形態では、第2熱交換器12とバルブ群13との間の位置、具体的には室外熱交換器12bと第1バルブ13aとの間の位置に第1温度センサT1が配置されている。また、外気の温度を検出可能な位置に外気温度センサ(不図示)が配置されている。
【0019】
(第2回路C2)
第2回路C2は車両駆動用のモータ17及びバッテリ18を有する。モータ17及びバッテリ18は、第2熱媒体R2と熱交換可能に第2回路C2上に設けられている。第2回路C2には、車両の駆動時等に使用される他の部材であって、温度調整が必要な部材などを有していてもよい。本実施形態では、例えば図示省略のインバータ、電力制御装置等が第2熱媒体R2と熱交換可能に設けられているが、詳細な図示は省略する。
【0020】
第2回路C2は、第2熱媒体R2を加熱又は冷却するためのヒータ21及びラジエータ22を有する。ヒータ21及びラジエータ22は、モータ17及びバッテリ18等の第2回路C2に設けられた各部材等の加熱又は冷却が必要な場合に、第2熱媒体R2を加熱又は冷却するために使用される。第2回路C2は、例えばアキュムレータ、チャッキバルブ、ファンなどの流体機器や配管部材等を有していてもよい。
【0021】
第2回路C2には、所定位置に温度センサが配置されている。第2回路C2の第2熱媒体R2の温度を検出するために、例えば第1熱交換器11の上流側の位置に第2温度センサT2が配置されている。また、本実施形態では、モータ17及びバッテリ18等の第2回路C2の構成部材に温度センサ(不図示)が配置されている。
【0022】
例えば、モータ17は駆動時に発熱するため第2熱媒体R2により冷却が必要な場合がある。バッテリ18は、温度が低すぎる状態、または温度が高すぎる状態では性能が低下する。モータ17およびバッテリ18の温度を適正な温度に保持することで、性能が低下するのを抑制することができる。
【0023】
(運転モード)
本実施形態の車両用温調装置10は、第1回路C1の第1熱媒体R1の温度状態と、第2回路C2の第2熱媒体R2の温度状態と、に基づいて運転モードを切り替えることが可能である。
【0024】
車両用温調装置10の運転モードは、第1モード、第2モード、および第3モードに切り替え可能である。図2に示すように、第1モードは、第1熱交換器11及び圧縮機15の順で第1熱媒体R1を通過させるモードである。図4に示すように、第2モードは、圧縮機15及び第1熱交換器11の順で第1熱媒体R1を通過させるモードである。図6に示すように、第3モードは、第1熱交換器11に繋がる流路を遮断して圧縮機15に第1熱媒体R1を通過させるモードである。
【0025】
運転モードの切替は、空気の検出温度T10、第1回路C1の第1温度センサT1で検出される第1熱媒体R1の検出温度T11、第2回路C2の第2温度センサT2で検出される第2熱媒体R2の検出温度T21、および第2回路C2の所定部材の温度T22に基づいて行われる。
【0026】
空気の検出温度T10は、第2熱交換器12において第1熱媒体R1との間で熱交換される空気の検出温度である。本実施形態では、外気温度である。
【0027】
(第1モード)
第1回路C1の第1温度センサT1で検出される第1熱媒体R1の検出温度T11は、第2熱交換器12からバルブ群13側へ供給される第1熱媒体R1の温度である。本実施形態では、室外熱交換器12bと第1バルブ13aとの間の位置で検出される第1熱媒体R1の温度を用いる。
【0028】
第2回路C2の第2温度センサT2で検出される第2熱媒体R2の検出温度T21は、第1熱交換器11に送られる第2熱媒体R2の温度である。
第2回路C2の所定部材の温度T22は、第2回路C2の構成部材のうちの温度管理が必要な部材の温度である。本実施形態では、バッテリ18の温度である。なお、温度T22は、モータ17の温度を採用してもよい。
【0029】
車両用温調装置10の運転モードは、各検出温度を用いて以下のように切り替えることができる。
まず第2回路C2の所定部材の温度T22が第1基準温度以上の状態で、第1熱交換器11に供給される第2熱媒体R2の温度T21が、第2熱交換器12からバルブ群13側へ供給される第1熱媒体R1の温度T11以上のとき、バルブ群13は運転モードを第1モードに切り替える。つまり、温度T22としてバッテリ18の温度を採用する場合、バッテリ18を冷却したいときに第1モードにする。なお、バッテリ18は、何度以上になると冷却が必要になるかは製品ごとに異なる。そのため、温度T22としてバッテリ18の温度を採用する際、第1基準温度は製品ごとに設定すればよい。
【0030】
図2図3に示すように、第1モードでは、第1回路C1の第1熱媒体R1は、第1バルブ13aを通過した後、第1分岐流路14aに流れ、第1熱交換器11に案内される。第1熱媒体R1は、第1熱交換器11で第2回路C2の第2熱媒体R2と熱交換された後、第2バルブ13bを通過した後、第3分岐流路14cに流れ、圧縮機15に案内される。第1熱交換器11では第2熱媒体R2の熱が第1熱媒体R1に移動し、第2熱媒体R2の熱を利用して第1熱媒体R1が加熱されて昇温する。第1熱媒体R1が昇温されてから圧縮機15に供給されることで、圧縮機15の吸込み圧を増加して圧縮機15の仕事量を増加することができる。圧縮機15を通過した第1熱媒体R1は、第3バルブ13cを通過した後、第5分岐流路14eに案内され、その後、第1回路C1の空調用熱交換器12aへと流れる。
【0031】
(第2モード)
次に、空気の検出温度T10が第2基準温度以上であるとともに、第2回路C2の所定部材の温度T22が第1基準温度より低い状態で、第1熱交換器11に供給される第2熱媒体R2の温度T21が、第1熱交換器11に供給される第1熱媒体R1の温度T11より低いとき、バルブ群13は運転モードを第2モードに切り替える。
【0032】
第2モードでは、空気の検出温度T10は、空気と第1熱媒体R1との間で熱交換することで、第1回路C1に要求される熱量を吸熱可能な第2基準温度以上であることが必要である。第2基準温度は、例えば第2熱交換器12において所望の暖房能力が得られる程度に、室外熱交換器12bで第1熱媒体R1が吸熱可能な温度である。本実施形態では、第2基準温度は-5℃としている。
【0033】
図4図5に示すように、第2モードでは、第1回路C1の第1熱媒体R1は、第1バルブ13aを通過した後、第2分岐流路14bに流れ、圧縮機15に案内される。第1熱媒体R1は、圧縮機15で圧縮されて昇温する。昇温した第1熱媒体R1は、第3バルブ13cを通過した後、第6分岐流路14fに流れ、第1熱交換器11に案内される。第1熱交換器11では、第1熱媒体R1の熱が第2熱媒体R2に移動し、第1熱媒体R1の熱を利用して第2熱媒体R2が加熱されて昇温する。加熱された第2熱媒体R2を第2回路C2に流すことで、第2回路C2の構成要素を加熱でき、例えばバッテリ18を使用に適した温度に効率よく加熱することができる。第1熱交換器11を通過した第1熱媒体R1は、第2バルブ13bを通過した後、第4分岐流路14dに流れ、その後第1回路C1の空調用熱交換器12aへと流れる。
【0034】
第2モードでは、第1回路C1の第1熱媒体R1が、低温の第2熱媒体R2と熱交換する前に圧縮機15に供給される。これにより、第1熱媒体R1の温度を高い状態で圧縮機15に供給することができ、圧縮機15の吸込み圧を増加して仕事量を増加することが可能である。
【0035】
(第3モード)
次に、第2回路C2の所定部材の温度T22が第1基準温度未満の状態で、第1熱交換器11に供給される第2熱媒体R2の温度T21が、第1熱交換器11に供給される第1熱媒体R1の温度T11以上のとき、バルブ群13は運転モードを第3モードに切り替える。
あるいは、第2回路C2の所定部材の温度T22が第1基準温度以上の状態で、第1熱交換器11に供給される第2熱媒体R2の温度T21が、第1熱交換器11に供給される第1熱媒体R1の温度T11未満のときも、バルブ群13は運転モードを第3モードに切り替える。
【0036】
図6に示すように、第3モードでは、第1回路C1の第1熱媒体R1と、第2回路C2の第2熱媒体R2と、の間の熱交換を行わず、それぞれ独立して温度調整を行う。第1回路C1の第1熱媒体R1の熱により第2回路C2の構成要素が過剰に高温になったり、過剰に低温になったりすることを抑制できる。具体的には、室外熱交換器12bを通過した第1熱媒体R1は、第1バルブ13aを通過した後、第2分岐流路14bに流れ、圧縮機15に案内される。圧縮機15で処理された第1熱媒体R1は、第3バルブ13cを通過した後、第5分岐流路14eに流れ、その後第1回路C1の空調用熱交換器12aへと流れる。
【0037】
本実施形態の車両用温調装置によれば、バルブ群13により、第1熱交換器11及び圧縮機15の順で第1熱媒体R1を通過させる第1モードと、圧縮機15及び第1熱交換器11の順で第1熱媒体R1を通過させる第2モードと、に運転モードが切り替え可能である。このように構成することで、第1回路C1の第1熱媒体R1から第2回路C2の第2熱媒体R2へ熱を移動させる場合と、第2回路C2の第2熱媒体R2から第1回路C1の第1熱媒体R1へ熱を移動させる場合とで、第1熱交換器11と圧縮機15とに第1熱媒体R1を流す順序を容易に切り替えることができる。
【0038】
これにより、第1熱交換器11で第2回路C2の第2熱媒体R2に放熱して温度が低下した第1熱媒体R1を圧縮機15に供給することを抑制し、温度が高い状態で第1熱媒体R1を圧縮機15に供給することができる。したがって、圧縮機15において、吸い込み圧が低下することを抑制でき、第1熱媒体R1と第2熱媒体R2との間で熱交換を行っても、圧縮機15における仕事量の減少を抑制できる。
【0039】
本実施形態の車両用温調装置10によれば、バルブ群13として少なくとも第1バルブ13a、第2バルブ13b、および第3バルブ13cを有する。第1バルブ13aの下流には第1分岐流路14aと第2分岐流路14bとを有する。第2バルブ13bの下流には第3分岐流路14cと第4分岐流路14dとを有する。第3バルブ13cの下流には第5分岐流路14eと第6分岐流路14fとを有する。
そのため、第1バルブ13a、第2バルブ13b、および第3バルブ13cの切替により運転モードを第1モード~第3モードに切り替えることができる。すなわち、第1熱媒体R1が第1分岐流路14a、第3分岐流路14c、第5分岐流路14eの順で流れる第1モードと、第1熱媒体R1が第2分岐流路14b、第4分岐流路14d、第6分岐流路14fの順で流れる第2モードとに、簡易な構成で確実に切り替えることができる。
【0040】
本実施形態の車両用温調装置10によれば、第2熱交換器12が空調用熱交換器12aおよび室外熱交換器12bを有する。そのため、室外熱交換器12bで外気と熱交換された後の第1熱媒体R1の温度状態に応じて、運転モードを適切に切り替えることができる。例えば、外気との間で第1熱媒体R1に必要な熱量が得られるか否かで運転モードを切り替えることが可能である。
【0041】
本実施形態の車両用温調装置10によれば、第2回路C2が、モータ17及びバッテリ18を有するとともに、ヒータ21及びラジエータ22を有する。そのため、第2回路C2のモータ17又はバッテリ18と第2熱媒体R2とを、第2回路C2において熱交換して、加熱又は冷却を確実に行うことができる。
その際、バルブ群13により運転モードを切り替えることで、第1熱交換器11により第1回路C1の第1熱媒体R1の熱を利用して第2熱媒体R2の加熱冷却を行えるため、ヒータ21及びラジエータ22の稼働率を減少させることができ、省エネ化を図ることができる。
【0042】
なお上記実施形態は、本発明の範囲内において適宜変更可能である。
例えば上記実施形態では、車両用温調装置10を暖房運転する場合について説明したが、特に限定されるものではなく、冷房運転や除湿運転する際に使用することも可能である。
【0043】
また上記実施形態では、第1バルブ13a、第2バルブ13b、第3バルブ13cが三方弁からなる例について説明したが特に限定されない。四方弁などの多方弁により構成することも可能である。
【0044】
上記実施形態では、第2回路C2にモータ17、バッテリ18、ヒータ21、ラジエータ22を設けた場合の説明をしたが、全ての構成要素が必要な訳ではなく、一部の構成要素が配置されていなくてもよい。
【0045】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1)第1熱媒体が循環する第1回路と、第2熱媒体が循環する第2回路と、前記第1回路と前記第2回路との間で熱交換を行う第1熱交換器と、を備え、前記第1回路には、圧縮機と、前記第1熱媒体と空気との間で熱交換を行う第2熱交換器と、が設けられ、前記第1回路は運転モードを切り替えるためのバルブ群を有し、前記バルブ群は、少なくとも前記第1熱交換器及び前記圧縮機の順で前記第1熱媒体を通過させる第1モードと、前記圧縮機及び前記第1熱交換器の順で前記第1熱媒体を通過させる第2モードと、に前記運転モードを切り替え可能である、車両用温調装置。
(2)前記バルブ群は、少なくとも前記第2熱交換器の下流側の流路を分岐する第1バルブと、前記第1熱交換器の下流側の流路を分岐する第2バルブと、前記圧縮機の下流側の流路を分岐する第3バルブと、を有し、前記第1バルブには、前記第1熱交換器の上流側と接続した第1分岐流路と、前記圧縮機の上流側と接続した第2分岐流路と、が接続され、前記第2バルブには、前記圧縮機の上流側と接続した第3分岐流路と、前記第2熱交換器の上流側と接続した第4分岐流路と、が接続され、前記第3バルブには、前記第2熱交換器の上流側と接続した第5分岐流路と、前記第1熱交換器の上流側と接続した第6分岐流路と、が接続されている、(1)に記載の車両用温調装置。
(3)前記第2熱交換器は、空調用熱交換器、および室外熱交換器を有する、(1)または(2)に記載の車両用温調装置。
(4)前記第2回路は、モータ及びバッテリのうちの少なくとも一方を有するとともに、ヒータ及びラジエータのうちの少なくとも一方を有する、(1)から(3)の何れか一項に記載の車両用温調装置。
(5)前記第2回路の所定部材の検出温度が第1基準温度以上の状態で、前記第1熱交換器に供給される前記第2熱媒体の温度が前記第1熱交換器に供給される前記第1熱媒体の温度以上のとき、前記バルブ群は前記運転モードを前記第1モードに切り替える、(1)から(4)の何れか一項に記載の車両用温調装置。
(6)前記空気の検出温度が第2基準温度以上であるとともに、前記第2回路の所定部材の検出温度が第1基準温度より低い状態で、前記第1熱交換器に供給される前記第2熱媒体の温度が前記第1熱交換器に供給される前記第1熱媒体の温度より低いとき、前記バルブ群は前記運転モードを前記第2モードに切り替える、(1)から(5)の何れか一項に記載の車両用温調装置。
(7)前記バルブ群は、前記第1熱交換器に繋がる流路を遮断して前記圧縮機に前記第1熱媒体を通過させる第3モードに前記運転モードを切り替え可能であり、前記第2回路の所定部材の検出温度が第1基準温度未満の状態で、前記第1熱交換器に供給される前記第2熱媒体の温度が前記第1熱交換器に供給される前記第1熱媒体の温度以上のとき、または、前記第2回路の所定部材の検出温度が前記第1基準温度以上の状態で、前記第1熱交換器に供給される前記第2熱媒体の温度が前記第1熱交換器に供給される前記第1熱媒体の温度未満のとき、前記バルブ群は前記運転モードを前記第3モードに切り替える、(1)から(6)の何れか一項に記載の車両用温調装置。
【符号の説明】
【0046】
10…車両用温調装置、11…第1熱交換器、12…第2熱交換器、12a…空調用熱交換器、12b…室外熱交換器、13a…第1バルブ、13b…第2バルブ、13c…第3バルブ、14a…第1分岐流路、14b…第2分岐流路、14c…第3分岐流路、14d…第4分岐流路、14e…第5分岐流路、14f…第6分岐流路、15…圧縮機、16…膨張弁、17…モータ、18…バッテリ、21…ヒータ、22…ラジエータ、C1…第1回路、C2…第2回路、C3…第3回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6