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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175208
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】アクセルペダルシステム
(51)【国際特許分類】
   B60K 26/02 20060101AFI20231205BHJP
   G05G 1/30 20080401ALI20231205BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20231205BHJP
   F02D 11/10 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B60K26/02
G05G1/30 E
G05G5/03 A
F02D11/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087541
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 新始
(72)【発明者】
【氏名】石脇 誠也
(72)【発明者】
【氏名】木野内 惣一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優介
【テーマコード(参考)】
3D037
3G065
3J070
【Fターム(参考)】
3D037EA08
3D037EB02
3D037EB03
3D037EB07
3G065CA21
3G065DA04
3G065GA46
3G065KA33
3J070AA32
3J070BA19
3J070BA41
3J070CB37
3J070CD06
3J070DA01
3J070EA01
(57)【要約】
【課題】ロック解除時のペダルレバーを適切に制御可能なアクセルペダルシステムを提供する。
【解決手段】アクセルペダルシステム1は、ペダルレバー20と、アクチュエータ40と、ロック機構50と、制御部60と、を備える。ペダルレバー20は、運転者の踏込操作に応じて動作する。アクチュエータ40は、駆動源の駆動力により、ペダルレバー20に戻し方向の力である反力を付与可能である。ロック機構50は、ペダルレバー20の動作を規制可能である。制御部60は、アクチュエータ40の駆動を制御するアクチュエータ制御部65を有する。アクチュエータ制御部65は、ペダルレバー20のロック状態が解除された場合、ロック解除から反力付与時間Xaが経過するまでの間、時間関数として演算される反力がペダルレバー20に付与されるようにアクチュエータ40の駆動を制御するロック解除時反力制御を行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の踏込操作に応じて動作するペダルレバー(20)と、
駆動源の駆動力により、前記ペダルレバーに戻し方向の力である反力を付与可能なアクチュエータ(40)と、
前記ペダルレバーの動作を規制可能であるロック機構(50)と、
前記アクチュエータの駆動を制御するアクチュエータ制御部(65)を有する制御部(60)と、
を備え、
前記アクチュエータ制御部は、前記ペダルレバーのロック状態が解除された場合、ロック解除から反力付与時間が経過するまでの間、時間関数として演算される反力が前記ペダルレバーに付与されるように前記アクチュエータの駆動を制御するロック解除時反力制御を行うアクセルペダルシステム。
【請求項2】
前記制御部は、運転者が能動的に前記ペダルレバーを踏み増したことを判定する意思判定部(64)を備え、
前記アクチュエータ制御部は、運転者の踏み増し意思の有無に応じ、前記ロック解除時反力制御における前記アクチュエータの駆動を変更する請求項1に記載のアクセルペダルシステム。
【請求項3】
前記アクチュエータ制御部は、前記ロック解除時反力制御における前記アクチュエータの駆動を、運転者の特性に応じて変更する請求項1または2に記載のアクセルペダルシステム。
【請求項4】
前記アクチュエータ制御部は、前記ロック解除時反力制御の実施可否を切替可能である請求項1に記載のアクセルペダルシステム。
【請求項5】
前記アクチュエータ制御部は、後方車両の接近が検出された場合、前記ロック解除時反力制御をキャンセルする請求項4に記載のアクセルペダルシステム。
【請求項6】
前記アクチュエータ制御部は、運転者からの入力情報に応じ、前記ロック解除時反力制御をキャンセル可能である請求項4に記載のアクセルペダルシステム。
【請求項7】
前記アクチュエータ制御部は、前方障害物が接近している場合、前記入力情報によらず前記ロック解除時反力制御を実施する請求項6に記載のアクセルペダルシステム。
【請求項8】
前記ロック機構は、前記アクチュエータによりロック状態と非ロック状態とを切替可能であって、前記アクチュエータへの通電をオフにした状態にてロック状態を保持可能であって、
前記アクチュエータ制御部は、前記アクチュエータの位置を検出する位置センサ(49)の検出値に基づいてロック状態が解除されたと判定された場合、前記アクチュエータへの通電を開始する請求項1に記載のアクセルペダルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルペダルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転モードを手動運転モードと自動運転モードとの間で切替可能な支援装置が知られている。例えば特許文献1では、自動運転モードから手動運転モードへ切り替えるとき、車速に応じた踏み込み位置にてアクセルペダルを保持し、足載せが検知されると、車速に対応する位置で踏まれているアクセルペダルを、運転者が追従可能な程度に、徐々にアクチュエータの駆動力から開放する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-149932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、運転者が自分の意思でアクセルペダルの保持状態を解除してアクセル操作を引き継ぐオーバーライドや外乱により保持状態が解除された場合を想定したアクチュエータの制御の詳細は記載されていない。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロック解除時のペダルレバーを適切に制御可能なアクセルペダルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアクセルペダルシステムは、ペダルレバー(20)と、アクチュエータ(40)と、ロック機構(50)と、制御部(60)と、を備える。ペダルレバーは、運転者の踏込操作に応じて動作する。アクチュエータは、駆動源の駆動力により、ペダルレバーに戻し方向の力である反力を付与可能である。ロック機構は、ペダルレバーの動作を規制可能である。
【0007】
制御部は、アクチュエータの駆動を制御するアクチュエータ制御部(65)を有する。アクチュエータ制御部は、ペダルレバーのロック状態が解除された場合、ロック解除から反力付与時間が経過するまでの間、時間関数として演算される反力がペダルレバーに付与されるようにアクチュエータの駆動を制御する。これにより、ロック解除時のペダルレバーを適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態によるアクセルペダルシステムを示す模式図である。
図2】第1実施形態によるアクセルペダルシステムにおいて、ロック状態を示す模式図である。
図3】第1実施形態によるロック解除時反力制御を説明するフローチャートである。
図4】第1実施形態によるロック解除時反力制御を説明するタイムチャートである。
図5】第2実施形態によるロック解除時反力制御を説明するフローチャートである。
図6】第2実施形態によるロック解除時反力制御を説明するタイムチャートである。
図7】第3実施形態によるロック解除時反力制御を説明するフローチャートである。
図8】第4実施形態によるロック解除時反力制御を説明するフローチャートである。
図9】第5実施形態によるロック解除時反力制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明によるアクセルペダルシステムを図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。第1実施形態を図1図4に示す。図1に示すように、アクセルペダルシステム1は、ペダルレバー20、アクチュエータ40、ロック機構50、および、制御部60等を備える。
【0010】
ペダルレバー20は、パッド21、アーム31、および、ペダル35を有し、運転者の踏込操作等により、一体に駆動される。パッド21は、運転者により踏込操作可能に設けられる。パッド21は、ハウジングHに設けられる支点部材23により、回転可能に支持される。図1では、パッド21がハウジングHの一面に沿う方向に延びて設けられる、いわゆる床置き型(オルガン型)を示しているが、吊り下げ型(ペンダント型)であってもよい。また、本実施形態では、ペダルハウジングやモータハウジング等、アクチュエータ40の駆動およびペダルレバー20の踏込操作等により駆動されない筐体部分を、まとめて「ハウジングH」とする。
【0011】
アーム31は、パッド21とペダル35とを連結する。ペダル35は、一端がハウジングHに回転可能に支持され、他端がアーム31と連結される。これにより、運転者によるパッド21の操作により、パッド21、アーム31およびペダル35が一体となって駆動される。ペダル35の一端側には、ペダル開度θを検出するペダルセンサ39が設けられている。
【0012】
ペダル付勢部材37は、圧縮コイルばねであって、一端がペダル35に固定され、他端がハウジングHに固定され、ペダル35をアクセル閉方向に付勢する。図1および図2では、アクセル全開時のペダル35の位置を破線で示した。
【0013】
アクチュエータ40は、モータ、減速機構および動力伝達部材45等から構成され、制御部60により駆動が制御される。動力伝達部材45は、一端が減速機構を構成するギアと接続され、他端がペダルレバー20と当接する。これにより、駆動源であるモータの駆動力は、減速機構および動力伝達部材45を経由してペダルレバー20に伝達される。図1では、動力伝達部材45の他端はパッド21と当接しているが、アーム31またはペダル35と当接するように構成してもよい。
【0014】
アクチュエータ40には、回転位置を検出する位置センサ49が設けられている。以下、アクチュエータ40を紙面反時計方向に回転させるときの回転方向を正、時計方向に回転させるときの回転方向を負とする。動力伝達部材45とペダルレバー20とが当接している状態にて、アクチュエータ40を正方向に回転させることで、ペダルレバー20に戻し方向の反力を与えることができる。
【0015】
アクチュエータ40によりペダルレバー20に能動的に戻し方向の反力を与えることで、例えば運転状況を基に、燃費悪化ポイントで反力を与えることで壁感を出し、運転者によるパッド21の踏み込みを抑制する。これにより、燃費を向上させることができる。また例えば、ペダルレバー20にパルス状の反力を付与することで、情報伝達に活用することもできる。
【0016】
ロック機構50は、ロック部材51、被ロック部52、および、弾性部材55等を有する。ロック部材51は、一端側に形成されるテーパ面にて被ロック部52と当接可能に設けられている。ロック部材51の他端側は、ハウジングHに形成される収容室56に収容され、軸方向に往復移動可能に設けられている。被ロック部52は、アクチュエータ40を構成する部材(例えばギア)に設けられる。被ロック部52は、テーパ面にてロック部材51と当接可能に形成されている。
【0017】
弾性部材55は、ハウジングHに設けられる収容室56に収容されている。弾性部材55の一端はロック部材51と当接し、他端はハウジングHに係止されている。弾性部材55は、ロック部材51を被ロック部52に向かう側に付勢している。
【0018】
図1は、ロック仕掛かり開始状態を示している。被ロック部52とロック部材51とが当接した状態にて、アクチュエータ40を正方向に回転させると、被ロック部52がロック部材51を押し込むことで弾性部材55が押し縮められる。
【0019】
図2に示すように、さらにアクチュエータ40を正方向に回転させ、被ロック部52がロック部材51を乗り越えて紙面上側に回り込むと、弾性部材55の付勢力により、ロック部材51が初期位置に戻る。ロック状態において、弾性部材55の付勢力により、ロック部材51が被ロック部52を係止することで、アクチュエータ40の回転を規制する。また、動力伝達部材45がロック伝達部として機能することで、ペダルレバー20の動作が規制される。これにより、アクチュエータ40への通電をオフにした無通電状態にて、ペダルレバー20の動作を規制することができる。
【0020】
以下、ペダルレバー20の動作を規制することを、単に「ロックする」という。例えば自動運転時等において、ペダルレバー20をロックし、パッド21をフットレスト化することで、快適性を確保することができる。本実施形態では、ペダルレバー20は、全閉位置にてロックされるものとして説明する。
【0021】
図2に示すロック状態より、アクチュエータ40を負方向に回転させると、被ロック部52がロック部材51を押し込むことで弾性部材55が押し縮められる。被ロック部52がロック部材51を乗り越えて紙面下側に回り込むと、ロック状態が解除され、弾性部材55の付勢力によりロック部材51が初期位置に戻る。また、ペダルレバー20に所定以上の踏力が加わった場合も同様にロック状態を解除可能である。
【0022】
ペダルレバー20をロックしない場合、図1に示す状態から、アクチュエータ40を反時計方向に回転させることで、ロック部材51と被ロック部52とが当接しないように退避させておくことが望ましい。
【0023】
制御部60は、マイコン等を主体として構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部60における各処理は、ROM等の実体的なメモリ装置(すなわち、読み出し可能非一時的有形記録媒体)に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。
【0024】
制御部60は、機能ブロックとして、信号取得部61、特性学習部62、外乱判定部63、意思判定部64、および、アクチュエータ制御部65等を有する。信号取得部61は、ペダルセンサ39および位置センサ49からの信号を取得する。制御部60は、ペダルセンサ39の検出値に基づき、ペダル開度θ、および、ペダルレバー20に印加される踏力を取得可能である。また、制御部60は、位置センサ49の検出値に基づき、ロック状態を判定可能である。特性学習部62は、ペダルレバー20または図示しないブレーキペダルに印加される踏力に基づき、運転者の踏力特性を学習する。ブレーキペダルに印加される踏力は、図示しないブレーキECUから取得可能である。
【0025】
外乱判定部63は、各種センサ情報や踏力情報等に基づき、踏力変動の要因となる外乱を判定する。外乱判定部63は、車両振動、車両の減速や旋回、または、足の置き直しが検出された場合、外乱ありと判定する。意思判定部64は、ペダルセンサ39の検出値および外乱判定部63の判定結果等に応じ、ペダルレバー20への踏力印加が運転者の意思によるものか否かの判定を行う。踏力特性や踏み増し意思に応じた制御については、第2実施形態以降にて説明する。アクチュエータ制御部65は、アクチュエータ40の駆動を制御することで、ペダルレバー20への反力付与、および、ペダルレバー20のロック状態の切り替えを制御する。
【0026】
ところで、運転者の踏み込みによりペダルレバー20のロック状態を解除し、運転者の意思でアクセル操作を引き継ぐオーバーライド時において、被ロック部52がロック部材51を乗り越えたとき、運転者がペダルレバー20を踏み込み過ぎる虞がある。そこで本実施形態では、ロック解除時からの所定期間、ペダルレバー20の踏み込み過ぎを防ぐようにペダルレバー20を下支えすべく、ペダルレバー20に反力を付与するロック解除時反力制御を行う。本実施形態におけるロック解除時反力制御は、ペダルレバー20の下支え制御と捉えることもできる。ロック解除時反力制御では、自動運転から手動運転への移行期間完了のタイミングで通常のペダル特性に戻すべく、付加反力を時間関数にて演算し、アクチュエータの駆動を制御する。
【0027】
本実施形態のロック解除時反力制御を図3のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)走行等、ペダルレバー20がロックされた状態での自動運転制御中に制御部60にて実行される。以下、ステップS101等の「ステップ」を省略し、単に記号「S」と記す。
【0028】
S101では、制御部60は、位置センサ49の検出値に基づき、ペダルロックが解除されたか否か判断する。ペダルロックが解除されていないと判断された場合(S101:NO)、この判断処理を繰り返す。ペダルロックが解除されたと判断された場合(S101:YES)、S102へ移行し、ペダルロック解除からの経過時間X=0をセットする。
【0029】
S103では、アクチュエータ制御部65は、ペダルレバー20に付与される反力が、経過時間Xに応じた時間関数である目標反力算出式に基づいて演算される値となるように、反力付与制御を行う。
【0030】
S104では、制御部60は、ペダルロック解除から反力付与時間Xaが経過したか否か判断する。反力付与時間Xaは、ロック解除時反力制御を行う時間に応じて設定される。ペダルロック解除から反力付与時間Xaが経過していないと判断された場合(S104:NO)、S105へ移行し、経過時間Xに演算周期Δxを加算し、S103に戻る。ペダルロック解除から反力付与時間Xaが経過したと判断された場合(S104:YES)、アクチュエータ40への通電をオフにしてロック解除時反力制御を終了する。ロック解除時反力制御が終了することで、ペダウレバー20は通常のペダル特性に戻る。
【0031】
本実施形態のロック解除時反力制御を図4のタイムチャートに基づいて説明する。図4では、共通時間軸を横軸とし、上段から、アクチュエータ反力、ペダル開度、踏力を示す。アクチュエータ反力は、ペダルレバー20の戻し方向を正、踏込方向を負とした。また、ペダル開度および踏力について、ロック解除時反力制御を行った場合を実線、行わなかった場合を一点鎖線で示した。
【0032】
時刻x10以前は、ペダルレバー20をロックしてフットレスト化した状態にて、ACC走行等、自動運転制御が行われている。このとき、アクチュエータ40への通電は行われておらず、無通電にてロック状態が保持されている。時刻x10にて、運転者によるペダルレバー20の踏み増しが検出されると、アクチュエータ40を負方向に駆動し、ロック解除アシストを行う。ロック解除アシスト制御は、図3にて説明した反力付与とは別途の処理にて行われるものであり、省略してもよい。
【0033】
時刻x11にて、被ロック部52がロック部材51を乗り越えてペダルロックが解除されたとき、ロック解除時反力制御を行っていない場合、ペダルレバー20が急に軽くなることで、一点鎖線で示すように、全開位置まで踏み込まれる虞がある。そこで本実施形態では、ロック解除時反力制御にてロック解除時に初期反力Faを付与することで、ペダルレバー20の踏み込み過ぎを防止する。
【0034】
また、手動運転への移行を完了させる時刻x12にて通常のペダル特性に戻せるよう、ロック解除時反力制御を行う時刻x11~時刻x12において、時間関数にて反力制御を行う。具体的には、手動運転への移行タイミングである時刻x12にて反力が0となるように、ロック解除時反力制御開始からの経過時間Xに応じて反力を減少させる。図4では線形的に反力を低減させていくものとして記載しているが、非線形にて反力を低減させるように目標反力算出式を設定してもよい。
【0035】
時刻x12にて、アクチュエータ40への通電をオフにすると、アクチュエータ反力が0となり、通常のペダル特性に戻る。これにより、ロック解除時の踏み込み過ぎを防ぎつつ、適切に手動運転に移行することができる。
【0036】
以上説明したように、アクセルペダルシステム1は、ペダルレバー20と、アクチュエータ40と、ロック機構50と、制御部60と、を備える。ペダルレバー20は、運転者の踏込操作に応じて動作する。アクチュエータ40は、駆動源であるモータの駆動力により、ペダルレバー20に戻し方向の力である反力を付与可能である。ロック機構50は、ペダルレバー20の動作を規制可能である。ここで、「ペダルレバーの動作を規制可能」とは、ペダルレバー20を完全に固定することで移動量を0にすることに限らず、非ロック時よりも移動量が小さくなるようにすることを含む概念である。
【0037】
制御部60は、アクチュエータ40の駆動を制御するアクチュエータ制御部65を有する。アクチュエータ制御部65は、ペダルレバー20のロック状態が解除された場合、ロック解除から反力付与時間Xaが経過するまでの間、時間関数として演算される反力がペダルレバー20に付与されるようにアクチュエータ40の駆動を制御するロック解除時反力制御を行う。詳細には、ロック解除からの経過時間に応じて反力が減少する減少関数の目標反力算出式にて演算される反力が付与されるように制御する。
【0038】
これにより、ロック解除時に運転者がペダルレバー20を踏み込みすぎるのを防ぐことができる。また、オーバーライドの意思に対して適切に通常の踏力特性に復帰させて、手動運転に移行させることができる。
【0039】
ロック機構50は、アクチュエータ40によりロック状態と非ロック状態とを切替可能であって、アクチュエータ40への通電をオフにした状態にてロック状態を保持可能である。アクチュエータ制御部65は、アクチュエータ40の位置を検出する位置センサ49の検出値に基づいてロック状態が解除されたと判定された場合、アクチュエータ40への通電を開始する。詳細には、ロック解除アシストを行わない場合、ロック解除判定により無通電状態からアクチュエータ40への通電が開始される。これにより、ペダルレバー20のロック状態を無通電にて保持している場合であっても、ロック解除時に適切にロック解除時反力制御を実施することができる。
【0040】
(第2実施形態)
第2実施形態を図5および図6に示す。第2実施形態~第5実施形態では、主にロック解除時反力制御が上記実施形態と異なっているので、この点を中心に説明する。上記実施形態にて説明したように、ロック機構50は、無通電にてペダルレバー20のロック状態を保持可能であるため、例えば車両振動等の外乱により、意図せずペダルロックが解除される可能性がある。そこで本実施形態では、運転者の踏み増し意思に応じ、ロック解除時反力制御を切り替える。
【0041】
本実施形態のロック解除時反力制御を図5のフローチャートに基づいて説明する。S201では、制御部60は、運転者の踏み増し意思があるか否か判断する。ここでは、ペダルレバー20の踏み込みが検出され、かつ、踏み込みが外乱によるものではない場合、「踏み増し意思あり」と判定する。すなわち、ペダルレバー20の踏み込みが検出された場合であっても、外乱によるものであると推定される場合には、「踏み増し意思なし」と判定する。踏み増し意思がないと判断された場合(S201:NO)、S208へ移行する。踏み増し意思があると判断された場合(S201:YES)、S202へ移行する。
【0042】
S202では、制御部60は、アクチュエータ40を負方向に駆動し、ロック解除アシスト制御を行う。S203では、制御部60は、図3中のS101と同様、ペダルロックが解除されたか否か判断する。ペダルロックが解除されていないと判断された場合(S203:NO)、S202へ戻り、ロック解除アシスト制御を継続する。ペダルロックが解除されたと判断された場合(S203:YES)、S204へ移行する。S204~S207の処理は、図3中のS102~S105の処理と同様である。
【0043】
踏み増し意思がないと判断された場合(S201:NO)に移行するS208では、S203と同様、制御部60は、ペダルロックが解除されたか否か判断する。ペダルロックが解除されていないと判断された場合(S208:NO)、S201へ戻る。ペダルロックが解除されたと判断された場合(S208:YES)、S209へ移行する。S209~S212の処理は、時間関数が異なっている点を除き、S204~S207の処理と同様である。
【0044】
踏み増し意思の有無によるロック解除時反力制御の違いを図6のタイムチャートに基づいて説明する。図6では、横軸を時間、縦軸をアクチュエータ反力とし、踏み増し意思がある場合を実線、踏み増し意思がなく外乱等にて踏力印加された場合を二点鎖線で示した。踏み増し意思がある場合の挙動は、図4と同様である。
【0045】
無通電にてロック状態を保持しているとき、ロック機構50のメカ的な保持力を超えるような力が外乱により加わった場合、意図せずロック解除される場合がある。そこで本実施形態では、踏み増し意思がない状態にてロック解除された場合は、踏み増し意思がある場合より大きな初期反力Fbを与える。すなわち、Fb>Faである。また、反力付与時間Xbを踏み増し意思がある場合よりも長くし、時刻x13にて反力が0となるように、時間関数による反力制御を行う。すなわち、Xb>Xaである。本実施形態では、運転者の踏み増し意思をアクチュエータ40の駆動に反映させることで、意図せずロック解除された際の運転者の不安を低減可能である。
【0046】
制御部60は、運転者が能動的にペダルレバー20を踏み増したことを判定する意思判定部64を備える。アクチュエータ制御部65は、運転者の踏み増し意思の有無に応じ、ロック解除時反力制御におけるアクチュエータ40の駆動を変更する。詳細には、運転者の踏み増し意思がない場合、踏み増し意思がある場合よりも大きな反力が付与されるように、目標反力算出式を変更することで、アクチュエータ40の駆動を変更する。これにより、踏み増し意思がない状態にて、外乱等によりロック解除されたときの運転者の不安を低減することができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0047】
(第3実施形態)
第3実施形態のロック解除時反力制御を図7のフローチャートに基づいて説明する。S301では、特性学習部62は、運転者によるペダルレバー20や図示しないブレーキペダルの操作に応じ、運転者の踏力特性を検出する。S302では、制御部60は、運転者の踏力特性に応じ、ロック解除時反力制御における目標反力算出式を決定する。例えば、踏力が小さい運転者の場合、ロック解除時反力制御における反力が大きいと、ペダルレバー20の踏み込みを阻害する虞があるため、付与する反力を小さく設定する、といった具合である。
【0048】
S303~S307の処理は、図3中のS101~S105の処理と同様であって、S305では、S302にて決定された目標反力算出式に基づき、ペダルレバー20に付与する反力を決定する。
【0049】
本実施形態では、アクチュエータ制御部65は、ロック解除時反力制御におけるアクチュエータ40の駆動を、運転者の特性に応じて変更する。詳細には、運転者の踏力特性に応じてロック解除時反力制御における目標反力算出式を設定する。これにより、運転者の踏力特性に応じてアクチュエータの駆動を変更することで、運転者の特性に応じた適切なロック解除時反力制御を行うことができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0050】
(第4実施形態)
第4実施形態のロック解除時反力制御を図8のフローチャートに基づいて説明する。図8では、S101とS102との間にS141が追加されている点が図3と異なっている。S101にて肯定判断されて移行するS141では、制御部60は、ロック解除時反力制御を実施可能かのシーン判定を行い、ロック解除時反力制御を許可するか否か判断する。ロック解除時反力制御を許可すると判断された場合(S141:YES)、S102へ移行する。ロック解除時反力制御を許可しないと判断された場合(S141:NO)、以降の処理をスキップする。例えば、あおり運転等により後続車両が接近している場合、ロック解除時反力制御を行わないようにし、加速を優先する。
【0051】
アクチュエータ制御部65は、ロック解除時反力制御の実施可否を切替可能である。本実施形態では、アクチュエータ制御部65は、後方車両の接近が検出された場合、ロック解除時反力制御をキャンセルする。これにより、例えば後方車接近等、反力付与よりも加速が優先される状況において、車両を適切に加速させることができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0052】
(第5実施形態)
第5実施形態のロック解除時反力制御を図9のフローチャートに基づいて説明する。図9では、S101とS102との間にS151、S152が追加されている点が図3と異なっている。S101にて肯定判断されて移行するS151では、制御部60は、例えばスイッチ等の操作による運転者からのロック解除時反力制御をOFFする旨の入力があるか否か判断する。運転者からの入力情報の取得は、スイッチ操作に限らず、音声認識等でもよい。ロック解除時反力制御のOFF入力がないと判断された場合(S151:NO)、S102へ移行し、ロック解除時反力制御を行う。ロック解除時反力制御のOFF入力があると判断された場合(S151:YES)、S152へ移行する。
【0053】
S152では、制御部60は、先行車等である前方障害物が接近しているか否か判断する。前方障害物が接近していないと判断された場合(S152:NO)、S102以降の処理をスキップする。前方障害物が接近していると判断された場合(S152:YES)、S102へ移行し、ロック解除時反力制御を行う。
【0054】
本実施形態では、ロック解除後、速やかに通常のペダル特性に移行することを好む運転者には、運転者からの入力によりロック解除時反力制御をキャンセルできるように構成している。ただし、先行車や障害物が近接している場合、ロック解除時反力制御にてペダルレバー20に反力を付与することで踏み込み過ぎを防ぎ、安全性を確保する。
【0055】
アクチュエータ制御部65は、運転者からの入力情報に応じ、ロック解除時反力制御をキャンセル可能である。これにより、運転者の好みに応じてロック解除時反力制御の実施可否を適切に切り替えることができる。
【0056】
また、アクチュエータ制御部65は、前方障害物が接近している場合、運転者からの入力情報によらず、ロック解除時反力制御を実施する。前方に先行車等の障害物が接近している場合は、ロック解除時反力制御を優先し、加速を抑制することで衝突リスクを低減することができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0057】
(他の実施形態)
第2実施形態では踏み増し意思の有無によりロック解除時反力制御を切り替え、第3実施形態では運転者の踏力特性応じて目標反力算出式を決定し、第4実施形態ではシーン判定によりロック解除時反力制御をキャンセル可能であり、第5実施形態では運転者からの入力によりロック解除時反力制御をキャンセル可能である。他の実施形態では、これらの処理の一部または全部を組み合わせて実施してもよい。
【0058】
上記実施形態では、ロック解除時反力制御において、反力付与時間経過後に反力が0となるように、ロック解除からの経過時間に応じて反力が減少するように制御する。他の実施形態では、反力付与時間経過後の反力は0でなくてもよい。また、例えば反力付与開始時の反力と反力付与時間経過後の反力とが等しく、一定の反力を出力する場合も、広義では「時間関数として演算される反力」の概念に含まれるものとする。なお、反力の推移が時間関数となっていれば、演算手法についてはマップ演算等であってもよい。
【0059】
第2実施形態において、踏み増し意思がない場合、初期反力および反力付与時間を共に踏み増し意思がある場合よりも大きくする。他の実施形態では、踏み増し意思がない場合、初期反力または反力付与時間の一方は、踏み増し意思がある場合と同じであってもよい。
【0060】
上記実施形態では、ロック部材51が固定側、被ロック部52が可動側に設けられている。他の実施形態では、ロック部材を可動側、被ロック部を固定側に設けてもよい。上記実施形態では、被ロック部は凸部により構成されている。他の実施形態では、被ロック部を凹部により構成してもよい。
【0061】
上記実施形態では、ロック部材は、圧縮コイルばねである弾性部材の軸方向に沿って直線方向に移動可能に設けられている。他の実施形態では、ロック部材が回転することでロック状態と非ロック状態とが切り替わるように構成してもよい。ロック部材の回転によりロック状態を切り替えることで、当接部の偏摩耗を抑制することができる。また、他の実施形態では、弾性部材は圧縮コイルばねに限らず、例えばトーションスプリングであってもよい。さらにまた、ロック部材そのものをゴム等の弾性部材により形成し、弾性変形させることでロック状態が切り替わるように構成してもよい。その他、アクチュエータやロック機構の構成は、上記実施形態と異なっていてもよい。また、ロック部材や非ロック部材の形状は、部品配置等に応じ、上記実施形態とは異なっていてもよい。
【0062】
上記実施形態では、ロック機構は、モータへの通電をオフにした無通電状態にてロック状態を保持可能である。他の実施形態では、ロック機構は、モータへの通電を継続することでロック状態を保持するように構成してもよい。上記実施形態では、ペダルレバーは、ロック機構により全閉位置にてロックされる。他の実施形態では、ペダルレバーのロック位置は全閉位置に限らず、例えば全閉位置と全開位置との中間位置であってもよい。また、複数段階でロック可能に構成してもよい。
【0063】
上記実施形態では、ロック機構の作動とペダルレバーへの反力付与にアクチュエータを共用している。他の実施形態では、ロック機構の作動とペダルレバーへの反力付与を別々のアクチュエータにより行うように構成してもよい。
【0064】
本発明の特徴は、例えば以下の通りとしてもよい。「前記アクチュエータ制御部は、前記ロック解除時反力制御の実施可否を切替可能である請求項1~3のいずれか一項に記載のアクセルペダルシステム。」、「前記ロック機構は、前記アクチュエータによりロック状態と非ロック状態とを切替可能であって、前記アクチュエータへの通電をオフにした状態にてロック状態を保持可能であって、前記アクチュエータ制御部は、前記アクチュエータの位置を検出する位置センサ(49)の検出値に基づいてロック状態が解除されたと判定された場合、前記アクチュエータへの通電を開始する請求項1~7のいずれか一項に記載のアクセルペダルシステム。」である。
【0065】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0066】
1・・・アクセルペダルシステム
20・・・ペダルレバー
40・・・アクチュエータ
50・・・ロック機構
60・・・制御部
64・・・意思判定部
65・・・アクチュエータ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9