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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175213
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
B41J2/17 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087551
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 隆弘
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB42
2C056FA13
2C056HA44
2C056HA60
2C056JC17
(57)【要約】
【課題】サイクロンによるインクミストの捕集効率を高める。
【解決手段】ミスト捕集器は、吸引口33から空気を吸引して排出口34から空気を排出するノズル31と、外筒41及び内筒42を有するサイクロン32とを備える。内筒42は、取り込み孔57を有し、この取り込み孔57を通して取り込まれた空気によって内筒42の内部に気流を形成することにより、空気からインクミストを分離する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクミストを捕集するミスト捕集器を備えるインクジェット記録装置であって、
前記ミスト捕集器は、
前記インクミストを含む空気を吸引口から吸引して排出口から排出するノズルと、
前記ノズルの前記排出口が接続される外筒と該外筒の内部に配置される内筒とを有し、前記排出口を通して前記外筒の内部に取り込まれた空気によって前記外筒と前記内筒との間に第1の気流を形成することにより、前記空気から前記インクミストを分離するサイクロンと、
を備え、
前記内筒は、前記内筒の内部に空気を取り込むための取り込み孔を有し、前記取り込み孔を通して取り込まれた空気によって前記内筒の内部に第2の気流を形成することにより、前記空気から前記インクミストを分離する
インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記取り込み孔は、前記第1の気流の向きに交差するようにスリット状に形成されている
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記内筒は、前記取り込み孔における前記第1の気流の上流側に突起部を有する
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記突起部は、前記第1の気流を形成する空気の一部をUターンさせて前記取り込み孔に導く
請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記突起部は、前記内筒の外周部から径方向外側に張り出す羽根形状に形成されている
請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記突起部の張り出し寸法は、前記第1の気流の上流側から下流側に向かって徐々に大きくなっている
請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記羽根形状の前記突起部は、上辺及び下辺を有し、前記上辺及び前記下辺のうち、前記排出口に近い方の辺の長さが、前記排出口から遠い方の辺の長さよりも短い
請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記羽根形状の前記突起部は、上辺及び下辺を有し、前記上辺及び前記下辺のうち、前記排出口に近い方の辺が、前記排出口から遠い方の辺に比べて、前記第1の気流に対する傾き角度が小さい
請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記排出口に近い方の辺は、前記第1の気流の向きと平行になるように配置されている
請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記排出口から遠い方の辺は、前記第1の気流の向きと垂直になるように配置されている
請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記外筒の中心軸方向において、前記取り込み孔の位置と前記排出口の位置は、互いに重ならないようにずれている
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記内筒は、複数の前記取り込み孔を有する
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記複数の前記取り込み孔は、前記内筒の円周方向に位置をずらして配置されている
請求項12に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記複数の前記取り込み孔は、前記内筒の中心軸方向に位置をずらして配置されている
請求項12に記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
前記ミスト捕集器は、記録媒体の搬送方向と直交する方向に並ぶ複数の前記ノズル及び複数の前記サイクロンを有する
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドが吐出するインクを記録媒体に付着させることにより、記録媒体に画像を形成する装置である。インクジェットヘッドが吐出するインクは、すべてが画像の形成に寄与するわけではなく、一部はインクミストとなって浮遊する。
【0003】
インクミストは、微小なインクの液滴であるため、周囲の気流に流されやすい。気流に流されたインクミストが所定の軌道を外れて記録媒体に付着すると、画質の低下を招く。また、インクミストが記録媒体以外の部分に付着すると、インクジェット記録装置にインク汚れが発生する。このため、インクジェット記録装置は、インクミストを捕集するミスト捕集器を備えている。
【0004】
特許文献1には、気流に乗って移動するインクミストを遠心力によって空気から分離して捕集する技術が記載されている。特許文献1に記載された技術では、サイクロンハウジングの内部に螺旋状の気流を発生させ、この気流に乗って旋回するときに発生する遠心力によってインクミストをサイクロンハウジングの内壁に付着させることにより、空気からインクミストを分離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-151642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクミストは、インクジェットヘッドからインクを吐出するときに発生するが、発生するインクミストの粒径にはバラツキがある。特許文献1に記載された技術では、遠心分離方式のサイクロンで除去しきれなかったインクミストをフィルタによって捕捉している。その場合、フィルタの交換頻度を下げるには、インクミストがフィルタに到達する前に、より粒径の小さなインクミストを空気から分離することが求められる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、サイクロンによるインクミストの捕集効率を高めることができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、インクミストを捕集するミスト捕集器を備えるインクジェット記録装置であって、ミスト捕集器は、インクミストを含む空気を吸引口から吸引して排出口から排出するノズルと、ノズルの排出口が接続される外筒と該外筒の内部に配置される内筒とを有し、排出口を通して外筒の内部に取り込まれた空気によって外筒と内筒との間に第1の気流を形成することにより、空気からインクミストを分離するサイクロンと、を備える。内筒は、内筒の内部に空気を取り込むための取り込み孔を有し、取り込み孔を通して取り込まれた空気によって内筒の内部に第2の気流を形成することにより、空気からインクミストを分離する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サイクロンによるインクミストの捕集効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略斜視図である。
図2図1に示すインクジェット記録装置の内部構造を示す模式図である。
図3】本実施形態に係るミスト捕集器を用紙の搬送方向の上流側から見た斜視図である。
図4】本実施形態に係るミスト捕集器を用紙の搬送方向の下流側から見た斜視図である。
図5】本実施形態に係るミスト捕集器の縦断面図(その1)である。
図6】本実施形態に係るミスト捕集器が備えるサイクロンとフィルタユニットの構成を示す斜視図である。
図7】本実施形態に係るサイクロンの横断面図である。
図8】本実施形態に係るミスト捕集器の縦断面図(その2)である。
図9】サイクロンの内筒が見えるようにサイクロンの外筒を取り外した状態を示す側面図である。
図10】内筒の第2筒部を水平面と平行に断面した場合の斜視図である。
図11】インナーシートとアウターシートを内筒の第2筒部に取り付ける前のサイクロンの構造を示す側面図である。
図12】インナーシートを内筒の第2筒部に取り付けた後のサイクロンの構造を示す側面図である。
図13】サイクロンにおける空気の流れをシミュレーションした結果を示す図である。
図14】粒径の異なるインクミストの移動軌跡の一例を示す横断面図である。
図15】本実施形態に係るミスト捕集器における粒子追跡のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
<インクジェット記録装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略斜視図である。
図1に示すように、インクジェット記録装置10は、給紙部11と、画像形成部12と、排紙部13と、インク供給タンク14と、を備えている。給紙部11は、記録媒体としての用紙を供給する部分である。記録媒体は、用紙に限定されず、インクを用いて画像を形成することが可能なシート状の媒体であればよい。また、記録媒体として用紙を用いる場合、用紙はカット紙でも連続用紙でもよい。連続用紙にはロール紙が含まれる。本実施形態では、記録媒体の一例としてカット紙を使用する。
【0013】
画像形成部12は、インクを用いて用紙に画像を形成する部分である。排紙部13は、画像の形成を終えた用紙を排出する部分である。インク供給タンク14は、所定量のインクを貯留し、このインクを画像形成部12に供給するためのタンクである。
【0014】
図2は、図1に示すインクジェット記録装置の内部構造を示す模式図である。
図2に示すように、給紙部11には給紙トレイ11aが設けられている。給紙トレイ11aには、画像を形成する前の用紙15が積載される。給紙部11は、給紙トレイ11aに積載された用紙15を、最上位から順に一枚ずつ分離して供給する。
【0015】
画像形成部12には、搬送ドラム20と、複数のインクジェットヘッド21Y,21M,21C,21Kと、ミスト捕集器22と、紫外線照射部23と、インラインセンサ24と、反転部25と、大小2つの搬送ローラ26a,26bとが設けられている。
【0016】
搬送ドラム20は、A方向に回転可能に設けられている。搬送ドラム20は、給紙部11から供給される用紙15を搬送ドラム20の外周面に巻き付けながら回転することにより、用紙15を搬送する。搬送ドラム20は、例えば、エアーの吸引によって用紙15を搬送ドラム20の外周面に吸着させ、この状態で回転することにより、用紙15をA方向に搬送する。図2に矢印で示すA方向は、搬送ドラム20の回転方向であり、用紙15の搬送方向でもある。以降の説明では、搬送ドラム20の回転方向Aと記載する場合と、用紙15の搬送方向Aと記載する場合がある。
【0017】
複数のインクジェットヘッド21Y,21M,21C,21Kは、それぞれに対応する色のインクを用いて用紙15に画像を形成する。具体的には、インクジェットヘッド21Yは、イエロー(Y)のインクを用いて画像を形成し、インクジェットヘッド21Mは、マゼンタ(M)のインクを用いて画像を形成する。また、インクジェットヘッド21Cは、シアン(C)のインクを用いて画像を形成し、インクジェットヘッド21Kは、ブラック(K)のインクを用いて画像を形成する。本実施形態においては、紫外線硬化型のインクを用いるものとする。
【0018】
各々のインクジェットヘッド21Y,21M,21C,21Kは、搬送ドラム20の上側の外周面に対向する状態で配置されている。また、各々のインクジェットヘッド21Y,21M,21C,21Kは、搬送ドラム20の円周方向に位置をずらして配置されている。なお、本実施形態においては、4色のインクを用いてカラー画像を形成できるように4つのインクジェットヘッド21Y,21M,21C,21Kが画像形成部12に設けられているが、インクジェットヘッドの個数は4つ以外であってもよい。
【0019】
ミスト捕集器22は、各々のインクジェットヘッド21Y,21M,21C,21Kがインクを吐出したときに発生するインクミストを捕集する機器である。インクミストの多くは、搬送ドラム20が回転したときに発生する気流によってA方向に流される。このため、ミスト捕集器22は、搬送ドラム20の回転方向Aにおいて、インクジェットヘッド21Kの下流側に配置されている。
【0020】
紫外線照射部23は、搬送ドラム20の回転方向Aにおいて、ミスト捕集器22の下流側に配置されている。紫外線照射部23は、搬送ドラム20の回転によって搬送されてくる用紙15に紫外線を照射することにより、用紙15上のインクを硬化させる。
【0021】
インラインセンサ24は、搬送ドラム20の回転方向Aにおいて、紫外線照射部23の下流側に配置されている。インラインセンサ24は、搬送ドラム20による搬送中に用紙15に形成された画像の色濃度、傾きなどを検査するためのセンサである。反転部25は、用紙15の両面に画像を形成するために、用紙15の表裏を反転する部分である。搬送ローラ26a,26bは、画像の形成を終えた用紙15を排紙部13に向けて搬送するローラである。
【0022】
排紙部13には排紙トレイ13aが設けられている。排紙トレイ13aには、画像の形成を終えた用紙15が順に積載される。
【0023】
<インクジェット記録装置の動作>
続いて、本実施形態に係るインクジェット記録装置10の動作について説明する。
まず、給紙部11の給紙トレイ11aに積載された用紙15は、最上位から順に一枚ずつ分離されて画像形成部12に供給される。画像形成部12に供給された用紙15は、図示しない搬送爪により用紙15の先端が把持される。搬送爪は、所定のタイミングで用紙15を搬送ドラム20に送り込む。これにより、搬送ドラム20の外周面に用紙15が吸着されるとともに、搬送ドラム20の回転によって用紙15が搬送される。
【0024】
一方、各々のインクジェットヘッド21Y,21M,21C,21Kは、搬送ドラム20の回転によって搬送される用紙15に対して、それぞれ所定のタイミングでインクを吐出することにより、用紙15にインクを付着させる。これにより、用紙15に画像が形成される。その後、用紙15には紫外線照射部23によって紫外線が照射される。これにより、用紙15上で画像を形成しているインクが硬化する。
【0025】
画像の形成を終えた用紙15は、その後、搬送ローラ26a,26bによって搬送されることにより、排紙部13へと送り込まれる。排紙部13に送り込まれた用紙15は、排紙トレイ13a上に順に重ねて排出される。以上の動作により、画像形成済みの用紙15が得られる。
【0026】
<ミスト捕集器の構成>
続いて、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置が備えるミスト捕集器の構成について詳しく説明する。
図3は、本実施形態に係るミスト捕集器を用紙の搬送方向の上流側から見た斜視図であり、図4は、本実施形態に係るミスト捕集器を用紙の搬送方向の下流側から見た斜視図である。
図3及び図4に示すように、ミスト捕集器22は、用紙の搬送方向A(図2参照)と直交する方向(以下、「用紙幅方向」ともいう。)Xに並ぶ複数のノズル31及び複数のサイクロン32を備えている。本実施形態においては、一例として、ノズル31とサイクロン32が4つずつ設けられている。
【0027】
4つのノズル31は、用紙幅方向Xに並んでいる。ノズル31は、中空の部材である。ノズル31は、水平面に対して斜めに傾いた状態で配置されている。ノズル31は、吸引口33を有している。吸引口33は、インクミストを含む空気を吸引するための開口である。吸引口33は、用紙幅方向Xに長い長方形、すなわち横長に開口している。4つのノズル31の吸引口33は、用紙幅方向Xで互いに隣接している。
【0028】
ここで、ノズル31の長さ方向において、吸引口33が設けられている側のノズル端をノズル31の先端部とし、吸引口33と反対側のノズル端をノズル31の後端部とする。そうした場合、ノズル31の先端部は、ノズル31の後端部よりも低い位置に配置され、吸引口33は、斜め下向きに開口している。また、ノズル31の形状は、ノズル31の先端部では横長の形状になっており、ノズル31の後端部では縦長の形状になっている。つまり、ノズル31の縦断面形状は、ノズル31の先端部から後端部に向かって、横長の形状から縦長の形状に徐々に変化している。ノズル31の後端部には、排出口34が設けられている。排出口34は、吸引口33から吸引した空気を排出するための開口である。排出口34は、縦長に開口している。
【0029】
4つのサイクロン32は、ノズル31と同様に、用紙幅方向Xに並んでいる。サイクロン32は、鉛直に起立した状態で配置されている。サイクロン32の上部には、ノズル31の排出口34が接続されている。サイクロン32は、ノズル31を通して取り込まれる空気からインクミストを遠心分離する。
【0030】
さらに、ミスト捕集器22は、4つのフィルタ収納部35と、ファンカバー36とを備えている。フィルタ収納部35は、サイクロン32よりも上側に配置されている。フィルタ収納部35には、図示しないフィルタが着脱可能に取り付けられる。ファンカバー36は、図示しない4つの排気ファンを覆うカバーである。4つのフィルタ収納部35と4つの排気ファンは、それぞれ4つのサイクロン32に対応して設けられている。また、排気ファンは、気流生成部の一例として設けられる。気流生成部は、ノズル31からサイクロン32を経由してフィルタへと至る経路上に気流を発生させる。また、ファンカバー36には、4つの排気ファンに対応して4つの排気口37が設けられている。排気口37は、排気ファンの回転駆動によって空気を機外に排出するための開口である。
【0031】
以下に、ノズル31と、サイクロン32と、フィルタ収納部35と、排気ファンの構成について、さらに詳しく説明する。
図5は、本実施形態に係るミスト捕集器の縦断面図である。図6は、本実施形態に係るミスト捕集器が備えるサイクロンとフィルタユニットの構成を示す斜視図である。
図5に示すように、ノズル31の排出口34は、サイクロン32の空気導入口38に接続されている。空気導入口38は、ノズル31の吸引口33から吸引されて排出口34から排出される空気をサイクロン32の内部に導入するための開口である。空気導入口38は、ノズル31の排出口34と同様に、縦長の長方形に形成されている(図6)。
【0032】
サイクロン32は、外筒41と、内筒42とを備えている。外筒41は、好ましくは樹脂によって形成される。外筒41は、円筒形に形成されている。外筒41の上端部41aは開口し、外筒41の下端部41bは閉塞している。つまり、外筒41は、有底円筒形に形成されている。外筒41の上端部41aは、フィルタ収納部35の下端部に接続されている。フィルタ収納部35の下端部は、サイクロン32の上端部からフィルタ収納部35の内部に空気を取り込めるように開口している。フィルタ収納部35には、フィルタ40が収納されている。フィルタ40は、サイクロン32からフィルタ収納部35内に取り込まれる空気にインクミストが含まれている場合に、このインクミストを捕捉する。
【0033】
フィルタ収納部35の上方には、図5に示すように排気ファン47が配置されている。排気ファン47は、前述したように気流生成部として機能する。具体的には、排気ファン47が回転駆動すると、排気ファン47の一次側が負圧となり、この負圧に引き寄せられてノズル31の吸引口33から空気が吸い込まれる。その際、排気ファン47は、ノズル31の吸引口33から吸引した空気を、ノズル31の内部、サイクロン32の内部、及び、フィルタ収納部35の内部を順に経由するように吸い込んで、排気口37から機外に排出する。これにより、第1の空間45には第1の気流が形成され、内筒42の内部には第2の気流が形成される。第1の気流及び第2の気流については、後段で詳しく説明する。
【0034】
外筒41には、ノズル31の排出口34が接続されている。さらに詳述すると、外筒41の上部には空気導入部43が形成されている。空気導入部43は、外筒41と一体に形成されている。空気導入部43は、ノズル31の排出口34から排出される空気を、外筒41と内筒42との間の空間(以下、「第1の空間」ともいう。)45に導く部分である。空気導入部43は、図7の横断面図に示すように、空気導入口38と空気導出口39とを有する。空気導出口39は、空気導入口38から導入した空気を第1の空間45に向けて導出するための開口である。空気導入部43は、図7に示す横断面図において、外筒41の周壁部44に沿う方向(接線方向)に空気を送り出す。空気導入部43の空気導入口38には、ノズル31の排出口34が接続される。これにより、外筒41の上部にノズル31の排出口34が接続されている。
【0035】
内筒42は、好ましくは樹脂によって形成される。内筒42は、円筒形に形成されている。内筒42は、外筒41と同心状に配置されている。つまり、内筒42の中心軸と外筒41の中心軸は、同じ軸線上に位置している。内筒42の内部は、空間(以下、「第2の空間」ともいう。)46になっている。第2の空間46は、内筒42の周壁部48によって囲まれている。内筒42の上端部42aは開口し、内筒42の下端部42bは閉塞している。内筒42は、例えば樹脂の一体成形によってフィルタ収納部35と一体に形成されている。ただし、内筒42は、フィルタ収納部35と別体に構成することも可能である。内筒42の上端部42aは上向きに開口し、この開口部を介して内筒42の内部とフィルタ収納部35の内部とが連通している。連通とは、空間的につながっている状態をいう。
【0036】
図8に示すように、内筒42の上端部42aは、外筒41の上端部41aとほぼ同じ高さ位置に配置されている。一方、内筒42の下端部42bは、外筒41の下端部41bよりも高い位置に配置されている。言い換えると、内筒42の中心軸方向の長さは、外筒41の中心軸方向の長さよりも短い。また、内筒42の下端部42bは、下向きの半球状に形成されている。これにより、後述する第1の気流61を形成する空気の流れをスムーズにして風速の低下を抑えることができる。
【0037】
図9は、サイクロンの内筒が見えるようにサイクロンの外筒を取り外した状態を示す側面図である。
図9に示すように、サイクロン32の内筒42は、内筒42の中心軸方向で第1筒部51と第2筒部52とに区分されている。第1筒部51は、内筒42の上端部42aを含む部分である。第2筒部52は、第1筒部51と内筒42の下端部42bとの間に位置する部分である。第1筒部51と第2筒部52は、いずれも内筒42の周壁部44によって形成されている。
【0038】
図10は、内筒の第2筒部を水平面と平行に断面した場合の斜視図である。
図10において、第2筒部52を形成する周壁部44の外周面には、インナーシート56とアウターシート58が順に積層されている。インナーシート56及びアウターシート58は、いずれも内筒42を構成する要素である。
【0039】
インナーシート56は、内筒42の径方向において、周壁部44の外周面とアウターシート58との間に位置している。なお、図10においては、内筒42の第2筒部52の構造を理解しやすいように、図の左側でアウターシート58の表示を省略しているが、インナーシート56とアウターシート58は、いずれも周壁部44の全周にわたって配置される。
【0040】
図11は、インナーシートとアウターシートを内筒の第2筒部に取り付ける前のサイクロンの構造を示す側面図である。
図11に示すように、第2筒部52には、複数の貫通孔55が形成されている。複数の貫通孔55は、内筒42の円周方向に所定の間隔で設けられている。また、複数の貫通孔55は、内筒42の中心軸方向に位置をずらして上下二段に設けられている。各々の貫通孔55は、内筒42の中心軸方向に長い長方形に形成されている。また、各々の貫通孔55は、第2筒部52を形成する周壁部48を貫通する状態で設けられている。これに対して、第1筒部51を形成する周壁部48には、貫通孔55が設けられていない。つまり、第1筒部51は孔無し構造であり、第2筒部52は孔有り構造である。
【0041】
図12は、インナーシートを内筒の第2筒部に取り付けた状態のサイクロンの構造を示す側面図である。
図12において、第2筒部52の外周面には、インナーシート56が貼り付けられている。インナーシート56は、内筒42の周壁部48の厚み寸法に比べて、十分に薄いシートである。インナーシート56の厚み寸法は、好ましくは、周壁部48の厚み寸法の1/3以下(ただし、ゼロを含まず)である。インナーシート56には、複数の取り込み孔57が形成されている。複数の取り込み孔57は、上述した複数の貫通孔55に対応してインナーシート56に設けられている。複数の取り込み孔57は、前述した複数の貫通孔55と同様に、内筒42の円周方向に位置をずらして配置されている。また、複数の取り込み孔57は、前述した複数の貫通孔55と同様に、内筒42の中心軸方向に位置をずらして配置されている。
【0042】
各々の取り込み孔57は、内筒42の中心軸方向に長いスリット状の長孔である。取り込み孔57は、内筒42の内部に空気を取り込むための孔である。また、取り込み孔57は、第1の空間45から第2の空間46へと空気を取り込むための孔でもある。取り込み孔57は、図13に示すように回転(旋回)する第1の気流61の向きや第2の気流62の向きに交差するようにスリット状に形成されている。取り込み孔57の長手寸法は、貫通孔55の長手寸法よりも短く、取り込み孔57の短手寸法は、貫通孔55の短手寸法よりも短い。つまり、取り込み孔57の開口寸法は、貫通孔55の開口寸法よりも小さい。取り込み孔57は、周壁部48の外面側に配置されている。また、取り込み孔57は、図10から分かるように、貫通孔55の開口縁の内側に配置されている。これにより、インナーシート56を内筒42に取り付けた状態では、内筒42の内部の空間と内筒42の外部の空間とが、貫通孔55よりも開口寸法が小さい取り込み孔57を介して連通した状態となる。図8に示すように、外筒41の中心軸方向において、取り込み孔57の位置と排出口34の位置は、互いに重ならないようにずれている。
【0043】
上記図9は、インナーシートとアウターシートの両方を内筒の第2筒部に取り付けた状態のサイクロンの構造を示している。
図9において、第2筒部52の外周面には、アウターシート58が貼り付けられている。アウターシート58は、インナーシート56を覆うように貼り付けられている。つまり、第2筒部52の外周面には、インナーシート56とアウターシート58が、この順に重ねて貼り付けられている。アウターシート58には、複数の突起部59が形成されている。複数の突起部59は、上述した複数の貫通孔55及び複数の取り込み孔57に対応してアウターシート58に設けられている。
【0044】
突起部59は、図7にも示すように、内筒42の外周部から径方向外側に張り出して配置されている。また、突起部59は、図9に示すように、上辺59a、下辺59b、縦辺59c及び斜辺59dを有する羽根形状に形成されている。羽根形状の突起部59の張り出し寸法は、後述する第1の気流61の上流側から下流側に向かって徐々に大きくなっている。
【0045】
上辺59aは、下辺59bよりもノズル31の排出口34の近くに配置される。上辺59aの長さは、下辺59bの長さよりも短い。上辺59aは、第1の空間45に形成される第1の気流の向きと平行になるように配置されている。下辺59bは、第1の気流の向きと垂直になるように配置されている。縦辺59cは、内筒42の中心軸方向に沿って配置されている。斜辺59dは、内筒42の中心軸方向に対して傾斜している。突起部59は、斜辺59dの部分でアウターシート58の他の部分とつながっている。突起部59は、斜辺59dの部分を境に外側に折れ曲がっており、この折り曲げによって突起部59が径方向外側に張り出している。
【0046】
突起部59の周囲には隙間60が形成されている。隙間60は、突起部59の3つの辺(59a,59b,59c)に沿って形成されている。また、隙間60は、インナーシート56の取り込み孔57につながっている。上辺59aに沿って形成される隙間60の寸法は、突起部59の折り曲げ角度に応じて、斜辺59dから縦辺59cに向かって徐々に大きくなっている。下辺59bに沿って形成される隙間60の寸法も、突起部59の折り曲げ角度に応じて、斜辺59dから縦辺59cに向かって徐々に大きくなっている。縦辺59cに沿って形成される隙間60の寸法は、上辺59aから下辺59bに向かって僅かずつ大きくなっている。
【0047】
<ミスト捕集器の動作>
続いて、上記構成からなるミスト捕集器の動作について説明する。
ミスト捕集器22は、搬送ドラム20によって搬送される用紙15に対し、インクジェットヘッド21Y,21M,21C,21Kからインクを吐出して画像を形成する際に、排気ファン47が回転することによって作動する。
【0048】
排気ファン47が回転すると、インクミストを含む空気が、ノズル31の吸引口33からノズル31内に吸引される。ノズル31内に吸引された空気は、ノズル31の下端部から上端部に向かって流れた後、排出口34から排出される。排出口34から排出された空気は、サイクロン32の空気導入部43を通して外筒41の内部に取り込まれる。
【0049】
図13は、サイクロンにおける空気の流れをシミュレーションした結果を示す図である。
図13に示すように、空気導入部43を通して外筒41の内部に取り込まれた空気は、第1の空間45に第1の気流61を形成する。第1の気流61は、図13において、時計回り方向に回転(旋回)する空気の流れになる。第1の気流61を形成している空気の一部は、上述したインナーシート56の取り込み孔57(図12)を通して、内筒42の内部に取り込まれる。また、取り込み孔57を通して取り込まれた空気は、内筒42の内部に第2の気流62を形成する。第2の気流62は、図13において、反時計回り方向に回転(旋回)する空気の流れになる。言い換えると、第1の気流61と第2の気流62は、互いに逆向きに回転する。また、第1の気流61と第2の気流62は、いずれも螺旋状に回転する気流となる。
【0050】
本実施形態においては、第1の気流61と第2の気流62を逆回転させるために、取り込み孔57における第1の気流61の上流側に突起部59を配置している。第1の気流61を形成している内周側(内筒42近傍)の空気は、突起部59の存在によって流れが阻害される。また、突起部59によって流れが阻害された空気は、突起部59を回り込むようにUターンして取り込み孔57に導かれ、この取り込み孔57を通して内筒42の内部に取り込まれる。こうして内筒42の内部に取り込まれる空気の向きは、上記のUターンによって反転している。このため、内筒42の内部には、第1の気流61と逆向きに回転する第2の気流62が形成される。
【0051】
このように、サイクロン32の内部に第1の気流61と第2の気流62を形成することにより、ノズル31からサイクロン32の内部に取り込まれた空気からインクミストが分離される。具体的には、第1の空間45を流れる空気に含まれるインクミストのうち、一部のインクミストは、第1の気流61による遠心力を受けて外筒41の周壁部44に衝突することにより、空気から分離(遠心分離)される。こうして分離されたインクミストは、その後、下方に移動して外筒41の下端部41bに溜まる。
【0052】
一方、第1の空間45から第2の空間46に向かって流れる空気に含まれるインクミストのうち、一部のインクミストは、突起部59を回り込むようにUターンするときに内筒42の周壁部48や取り込み孔57の縁に衝突することにより、空気から分離される。こうして分離されたインクミストは、その後、下方に移動して内筒42の下端部42bに溜まる。
【0053】
また、内筒42の内部に取り込まれた空気に含まれるインクミストのうち、一部のインクミストは、第2の気流62に乗って上方に移動し、フィルタ40によって捕捉される。また、他のインクミストは、第2の気流62による遠心力を受けて内筒42の周壁部48に衝突することにより、空気から分離(遠心分離)される。
【0054】
ここで、空気導入部43を通して外筒41の内部に取り込まれる空気に含まれるインクミストを、粒径の大きさに応じて、大粒のインクミストと、中粒のインクミストと、小粒のインクミストとに大別する。インクミストに働く遠心力は、気流の速度が一定であると仮定すると、インクミストの質量に比例し、気流の回転半径に反比例する。このため、粒径が大きいインクミストには、より強い遠心力が働く。
【0055】
図14は、粒径の異なるインクミストの移動軌跡の一例を示す横断面図である。
図14に示すように、大粒のインクミストM1は、インクミストM1自身の質量に応じた遠心力を受けて外側に寄せられ、外筒41の周壁部44に衝突する。このため、第1の気流61を形成する空気から大粒のインクミストM1を分離することができる。ただし、中粒のインクミストM2や小粒のインクミストM3を分離することはできない。
【0056】
本実施形態において、中粒のインクミストM2や小粒のインクミストM3は、第1の空間45から突起部59を回り込んで第2の空間46に流れ込もうとする空気の流れに乗って移動する。このとき、突起部59を回り込む気流の回転半径は、第1の気流61の回転半径に比べてきわめて小さくなる。例えば、第1の気流61の回転半径が約30mmである場合に、突起部59を回り込む気流の回転半径は、その1/10程度、すなわち約3mmになる。
【0057】
このため、中粒のインクミストM2や小粒のインクミストM3には、突起部59を回り込むときに、非常に強い遠心力が働く。また、中粒のインクミストM2には、小粒のインクミストM3よりも強い遠心力が働く。これにより、中粒のインクミストM2は、突起部59を回り込むときに内筒42(あるいは取り込み孔57の縁)に衝突する。このため、第1の空間45から第2の空間46に取り込まれる空気から中粒のインクミストM2を分離することができる。また、小粒のインクミストM3は、第2の気流62と共にフィルタ40に突入することで、フィルタ40に捕捉される。このため、排気口37から排気される空気は、サイクロン32及びフィルタ40によってインクミストが取り除かれた後の清浄な空気になる。また、フィルタ40に突入する空気は、大粒のインクミストM1だけでなく、中粒のインクミストM2も取り除かれた空気になる。
【0058】
図15は、本実施形態に係るミスト捕集器における粒子追跡のシミュレーション結果を示す図である。
図15に示すように、粒子は、上述したノズル31の傾斜に沿って移動した後、内筒42の周囲を螺旋状に回転(旋回)しながら下方に移動する。また、一部の粒子は、上述した突起部59を回り込んで内筒42に衝突するか、取り込み孔57を通過して内筒42の内部に取り込まれる。そして、内筒42の内部に取り込まれた粒子は、上述した第2の気流62に乗って上方に移動する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係るインクジェット記録装置10は、第1の空間45に形成される第1の気流61によって空気からインクミストを分離するとともに、取り込み孔57から内筒42の内部に取り込まれる空気によって第2の空間46に第2の気流62を形成することにより、空気からインクミストを分離する。これにより、サイクロン32の内部では、第1の気流61だけでは分離できない、粒径の小さなインクミストについても、空気から分離することができる。このため、第1の気流61の気流によってのみインクミストを遠心分離する場合に比べて、サイクロン32によるインクミストの捕集効率を高めることができる。その結果、フィルタ40によって捕捉される単位時間あたりのミスト量を低減し、フィルタ40の交換頻度を下げることができる。
【0060】
また、本実施形態において、取り込み孔57は、第1の気流61の向きに交差するようにスリット状に形成されている。これにより、第1の空間45から第2の空間46に侵入する気流の回転半径を小さく維持しつつ、取り込み孔57の開口面積を広く確保することができる。このため、粒径の小さなインクミストに強い遠心力を働かせて、そのインクミストを空気から分離することができる。また、空気が取り込み孔57を通過する際の流路抵抗を小さく抑えることができる。
【0061】
また、本実施形態において、突起部59は、羽根形状に形成されている。これにより、第1の空間45から第2の空間46に空気を取り込むときに、突起部59の脇(上辺59a及び下辺59b)からの空気の流入を抑制することができる。このため、内筒42の周壁部48や取り込み孔57の縁にインクミストをより多く衝突させて、遠心分離の効果を高めることができる。
【0062】
また、本実施形態においては、突起部59の上辺59a及び下辺59bのうち、排出口34に近い上辺59aの長さが、排出口34から遠い下辺59bの長さよりも短くなっている。これにより、上辺59aの隙間60から内筒42内への空気の流入を抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態においては、突起部59の上辺59a及び下辺59bのうち、排出口34に近い上辺59aが、排出口34から遠い下辺59bに比べて、第1の気流61に対する傾き角度が小さくなっている。これにより、上辺59aの隙間60から内筒42内への空気の流入を抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態においては、排出口34に近い上辺59aが、第1の気流61の向きと平行になるように配置されている(図15参照)。これにより、上辺59aの隙間60から内筒42内への空気の流入を、より効果的に抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態においては、排出口34から遠い下辺59bが、第1の気流61の向きと垂直になるように配置されている(図15参照)。これにより、下辺59bの隙間60から内筒42内への空気の流入を、より効果的に抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態においては、外筒41の中心軸方向において、取り込み孔57の位置と排出口34の位置が、互いに重ならないようにずれている。これにより、第1の空間45に形成される第1の気流61によってインクミストを遠心分離する領域を確保することができる。
【0067】
また、本実施形態においては、内筒42に複数の取り込み孔57が設けられている。これにより、内筒42に1つの取り込み孔57を設ける場合に比べて、流路抵抗を小さく抑えることができる。
【0068】
また、本実施形態においては、用紙幅方向Xに複数のノズル31及び複数のサイクロン32を並べた構成を採用している。これにより、用紙幅方向Xで空気の吸引力を均一にすることができる。
【0069】
なお、本実施形態においては、内筒42の第2筒部52にインナーシート56とアウターシート58を設けているが、インナーシート56及びアウターシート58のうち少なくともいずれか一方のシートが設けられていない構成を採用してもよい。
【0070】
例えば、インナーシート56及びアウターシート58が第2筒部52に設けられていない構成としては、第2筒部52を形成する周壁部48に直接、取り込み孔57を形成した構成が考えられる。この構成を採用した場合は、第1の空間45に形成される第1の気流61と第2の空間46に形成される第2の気流62とが、互いに同じ方向に回転する気流になる。そして、第1の空間45から第2の空間46に流れ込もうとする空気に含まれるインクミストのうち、一部のインクミストは、周壁部48の取り込み孔57の縁に衝突することにより、空気から分離される。この点は、内筒42の第2筒部52にインナーシート56のみを配置した場合も同様である。
【0071】
また、第2筒部52にインナーシート56を設けた構成を採用した場合は、周壁部48に比べてインナーシート56が非常に薄いため、取り込み孔57の縁にインクミストが衝突した場合に、取り込み孔57の縁にインクミストが溜まりにくくなり、仮に溜まったとしても取り込み孔57を通過する空気の力(風圧など)を利用してインクミストの固まりを剥がすことができる。
【0072】
また、第2筒部52にインナーシート56とアウターシート58を設けた構成を採用した場合は、突起部59によって空気をUターンさせることで、気流の回転半径を小さくし、より強い遠心力をインクミストに作用させることができる。このため、第1の気流61だけでは分離できない粒径の小さいインクミストを、より確実に分離することができる。
【0073】
また、上記実施形態においては、搬送ドラム20に巻き付けて搬送される用紙15に対し、各々のインクジェットヘッド21Y,21M,21C,21Kからインクを吐出させて画像を形成するインクジェット記録装置10を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、本発明は、図示しないプラテンに沿って水平に搬送される用紙に対して、各々のインクジェットヘッドからインクを吐出させて画像を形成するインクジェット記録装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
10…インクジェット記録装置
22…ミスト捕集器
31…ノズル
32…サイクロン
33…吸引口
34…排出口
41…外筒
42…内筒
57…取り込み孔
59…突起部
59a…上辺
59b…下辺
61…第1の気流
62…第2の気流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15