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特開2023-175257キャリアテープ及びキャリアテープの成形方法
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  • 特開-キャリアテープ及びキャリアテープの成形方法 図1A
  • 特開-キャリアテープ及びキャリアテープの成形方法 図1B
  • 特開-キャリアテープ及びキャリアテープの成形方法 図1C
  • 特開-キャリアテープ及びキャリアテープの成形方法 図2A
  • 特開-キャリアテープ及びキャリアテープの成形方法 図2B
  • 特開-キャリアテープ及びキャリアテープの成形方法 図3
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  • 特開-キャリアテープ及びキャリアテープの成形方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175257
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】キャリアテープ及びキャリアテープの成形方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 47/04 20060101AFI20231205BHJP
   B65B 47/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B65B47/04
B65B47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087611
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 裕輝
【テーマコード(参考)】
3E050
【Fターム(参考)】
3E050AA05
3E050AB02
3E050BA04
3E050CB03
3E050DA01
3E050DH10
(57)【要約】
【課題】底孔のバリ発生を抑制したキャリアテープの成形方法及びキャリアテープを提供する。
【解決手段】部品を収納可能な収納凹部を有するキャリアテープの成形方法であって、樹脂シートに収納凹部を成形する前に、樹脂シートにおける収納凹部の底面成形予定位置に底孔を打抜く底孔打抜工程S1と、樹脂シートに収納凹部をプレス成形する収納凹部成形工程S3と、を含むものである。また、部品を収納可能な収納凹部を有するキャリアテープであって、収納凹部の底面に底孔を有し、底孔は、収納凹部のプレス成形前に打抜かれたものである。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を収納可能な収納凹部を有するキャリアテープの成形方法であって、
樹脂シートに前記収納凹部を成形する前に、前記樹脂シートにおける前記収納凹部の底面成形予定位置に底孔を打抜く底孔打抜工程と、
前記樹脂シートに前記収納凹部をプレス成形する収納凹部成形工程と、を含む、
ことを特徴とするキャリアテープの成形方法。
【請求項2】
前記底孔打抜工程は、前記収納凹部成形工程後の底孔の変化を見込んだ大きさで底孔を打抜く、
ことを特徴とする請求項1に記載のキャリアテープの成形方法。
【請求項3】
前記底孔打抜工程における前記底孔の直径は、前記収納凹部成形工程後の前記底孔の直径よりも大きい、
ことを特徴とする請求項2に記載のキャリアテープの成形方法。
【請求項4】
前記収納凹部成形工程後の底孔の直径は、前記底孔打抜工程における前記底孔の直径の73%以上84%未満である、
ことを特徴とする請求項2に記載のキャリアテープの成形方法。
【請求項5】
前記収納凹部成形工程は、前記樹脂シートの加熱を行いながら、前記樹脂シートに前記収納凹部をプレス成形する、
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のキャリアテープの成形方法。
【請求項6】
部品を収納可能な収納凹部を有するキャリアテープであって、
前記収納凹部の底面に底孔を有し、
前記底孔は、前記収納凹部のプレス成形前に打抜かれたものである、
ことを特徴とするキャリアテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を収納可能な収納凹部を有するキャリアテープ及びキャリアテープの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品を収納する収納凹部を有するキャリアテープに対して、カバーテープで収納凹部の開口を封止し、巻取リールに巻取って包装体としたものが知られている。また、このキャリアテープは、収納凹部の底面に、位置決めや検査のために底孔が設けられている(図1A~1C参照)。
【0003】
キャリアテープの収納凹部は、例えば、表面に凹型及び凸部が形成された一対のプレス金型を用いてテープ基材をプレス成形することで形成されている。そのため、収納凹部の底面に底孔を打抜く場合には、収納凹部を成形する収納凹部成形工程S11の後に、底孔を打抜く底孔打抜工程S13を行うことになる(図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-038696号公報
【特許文献2】特開2003-136545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このとき、底孔は収納凹部の内面側から外面側への打抜き方向で打抜かれるが、その際、収納凹部の外側にバリが発生することがある(図6参照)。このバリを除去するために、超音波を照射したり、高電圧を放電させたりすることも知られている(特許文献1及び2参照)。
【0006】
上述したとおり、従来のキャリアテープの成形方法では、バリを除去する工程及び装置が必要なため、キャリテープの生産性を向上させることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、底孔のバリ発生を抑制したキャリアテープの成形方法及びキャリテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る一つの態様は、部品を収納可能な収納凹部を有するキャリアテープの成形方法であって、樹脂シートに前記収納凹部を成形する前に、前記樹脂シートにおける前記収納凹部の底面成形予定位置に底孔を打抜く底孔打抜工程と、前記樹脂シートに前記収納凹部をプレス成形する収納凹部成形工程と、を含むものである。
(2)上記(1)の態様において、前記底孔打抜工程は、前記収納凹部成形工程後の底孔の変化を見込んだ大きさで底孔を打抜いてもよい。
(3)上記(1)又は(2)の態様において、前記底孔打抜工程における前記底孔の直径は、前記収納凹部成形工程後の前記底孔の直径よりも大きくてもよい。
(4)上記(1)又は(2)の態様において、前記収納凹部成形工程後の底孔の直径は、前記底孔打抜工程における前記底孔の直径の73%以上84%未満であってもよい。
(5)上記(1)から(4)までのいずれか1つの態様において、前記収納凹部成形工程は、前記樹脂シートの加熱を行いながら、前記樹脂シートに前記収納凹部をプレス成形してもよい。
(6)本発明に係る別の一つの態様は、部品を収納可能な収納凹部を有するキャリアテープであって、前記収納凹部の底面に底孔を有し、前記底孔は、前記収納凹部のプレス成形前に打抜かれたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、底孔のバリ発生を抑制したキャリアテープの成形方法及びキャリテープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】キャリアテープを示す平面図である。
図1B】キャリアテープを示す断面図である。
図1C】キャリアテープの収納凹部を示す上面図である。
図2A】本発明に係る実施形態のキャリアテープの成形方法に使用される成形装置を示す概略図である。
図2B】本発明に係る実施形態のキャリアテープの成形方法の要部を示すフロー図である。
図3】収納凹部成形工程における収納凹部の底面の変形状態を示す概略図である。
図4】予備加熱工程及び/又は収納凹部成形工程における収納凹部の底面の加熱範囲を示す概略図である。
図5】従来のキャリアテープの成形方法の要部を示すフロー図である。
図6】底孔に発生したバリを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書の実施形態においては、全体を通じて、同一の部材には同一の符号を付している。
【0012】
図1Aは、キャリアテープ1を示す平面図であり、図1Bは、キャリアテープ1を示す断面図であり、図1Cは、キャリアテープ1の収納凹部3を示す上面図である。なお、図1A及び図1Cでは、収納凹部3に収納された部品EPを省略している。
【0013】
キャリアテープ1は、部品EPを複数収納して、保管したり、搬送したり、基板に部品EPを実装する実装機に部品EPを円滑に供給したりするものである。例えば、部品EPとして、電子部品や精密部品などが挙げられる。
【0014】
このキャリアテープ1は、テープの長手方向(搬送方向)に沿って、送り孔2と、部品Pを収納する収納凹部3とを、それぞれ所定の間隔で複数有している。なお、送り孔2と収納凹部3との間の連結部(あるいは、「スプロケットフランジ」と称される。)6は、後述するカバーテープ10が接着されるため、連結部6は、被シール部ともいえる。また、収納凹部3を挟んで送り孔2と反対側の被シール部は、フリーフランジと称される。
【0015】
送り孔2は、平面視において円形状であるが、送り孔2の形状・寸法や間隔は、実装機などの送り機構に合わせて形成される。なお、送り孔2は、テープの長手方向の二辺に沿って、収納凹部3の幅方向の左右両側に形成されることもある。
【0016】
一方、収納凹部3は、略矩形状であるが、部品Pの形状に合わせて形成されるため、形状・寸法や間隔は適宜設計されるが、例えば、収納凹部3の開口が□10mm以上、深さが10mm以上18mm未満のものが好ましい。また、収納凹部3は、テープの長手方向に沿って間隔(mm)で形成されており、この間隔は、収納凹部3の開口寸法にもよるが、例えば、15mm~50mm程度である。
【0017】
また、本実施形態のキャリアテープ1では、収納凹部3の底面3aに、検査用の底孔5が形成されている。この底孔5は、0.2mmから2.5mm程度の直径を有している。なお、収納凹部3の底面3aが突出した台座として形成され、その座面に底孔5が形成されることもある。
【0018】
このキャリアテープ1は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アモルファスポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどの合成樹脂、これらの樹脂にカーボンを練り込んで導電性を付与したもの、表面に導電コーティングを施したものなどで形成されている。また、キャリアテープ1の幅は、特に限られず、4mm、8mm、12mm、16mm、24mm、32mm、44mm、56mmなどであってもよい。
【0019】
一方、カバーテープ10は、キャリアテープ1の収納凹部3(の開口)を封止するものであり、カバーテープ10の本体である基材層と粘着層11と、を少なくとも有している。なお、本実施形態では、基材層と粘着層11との間に中間層(図示なし)を有している。
【0020】
基材層は、カバーテープ10のベース素材となるもので、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などの二軸延伸フィルムや、これらの樹脂フィルムに、帯電防止処理、あるいは導電処理を施したものなどである。なお、基材層の厚みは、カバーテープ10の総厚みに対する基材層割合(基材層厚み/総厚み)が20%以上40%以下の範囲であるとよい。
【0021】
つぎに、中間層は、接着剤で基材層と接着されている。この中間層は、熱可塑性樹脂を材料として形成されている。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)が挙げられる。なお、中間層は、粘着層11との密着性を向上させるために、基材層とは反対側の表面にコロナ放電処理などの改質処理が行われているとよい。
【0022】
粘着層11は、キャリアテープ1の収納凹部3を封止するもので、中間層の上に形成されている。この粘着層11は、アクリル系、ポリスチレン系などの粘着性(又は接着性)を有する樹脂を材料として形成されている。
【0023】
また、粘着層11は、収納凹部3の幅方向左右両外側に対応する位置に、長手方向に沿って形成されており、その厚みは、1μm以上15μm以下であるとよい。
【0024】
そして、上述したキャリアテープ1は、部品Pを収納凹部3に収納した後、キャリアテープ1とカバーテープ10の粘着層11とが、必要に応じて加熱されながら、長手方向に沿って収納凹部3の幅方向における左右両外側(一方は収納凹部3と送り孔2との間の連結部6に相当し、他方は側縁部に相当する。)に接着され、収納凹部3の開口が封止(シール)されて、包装体20として形成される。なお、加熱する場合の加熱温度は、例えば、150℃から200℃程度の範囲で行うとよい。その後、包装体20は、巻取リールなどに巻取られる。
【0025】
更にその後、包装体20は実装機に装着され、回路基板などへの部品Pの実装の際に、キャリアテープ1からカバーテープ10が引き剥がされる。なお、キャリアテープ1の搬送速度は、10m/minから20m/min程度であるから、カバーテープ10の引き剥がしは、10m/minから20m/minの引き剥がし速度で剥離されることになる。
【0026】
ここで、本発明に係る実施形態のキャリアテープ1の成形方法及び成形装置100について説明する。
図2Aは、本発明に係る実施形態のキャリアテープ1の成形方法に使用される成形装置100を示す概略図である。
【0027】
成形装置100は、図2Aに示すように、供給部(図示なし)と、打抜部110、予備加熱部120、成形部130、穿孔部140と、位置決め部(図示なし)、間欠搬送部150、巻取部(図示なし)と、を備えている。
【0028】
供給部は、樹脂シート1aを打抜部110や成形部130などに供給するもので、原料樹脂から樹脂シート1aを押出す押出成形部を含んでいる。なお、押出成形部から樹脂シート1aを直接供給することなく、樹脂シート1aをロール状に巻取った巻出リールから供給するようにしてもよい。
【0029】
打抜部110は、後述する成形部130で樹脂シート1aに収納凹部3が形成された際に、収納凹部3の底面3aに相当する位置(底面成形予定位置)の中央部に底孔5を打抜くものである。この打抜部110は、上型に設けられた第1パンチと、下型に設けられた第1パンチ受けとで構成され、上型を下型に相対的に接近させることで、底孔5を収納凹部3の内側となる方向から打抜くようになっている。
【0030】
第1パンチは、同時に複数の底孔5を打抜くために、複数本(例えば、4本や8本)が、樹脂シート1aの搬送方向に沿って並べられ、共通のストリッパープレートに挿通されている。なお、打抜部110は、底孔5を収納凹部3の外側となる方向から打抜くように構成されてもよい。
【0031】
予備加熱部120は、例えば、ステンレスや金型鋼(工具鋼)などの金属で形成された下方加熱部及び上方加熱部で構成されている。これら下方加熱部及び上方加熱部は、昇降動作可能な昇降機構に固定されており、樹脂シート1aを下方加熱部及び上方加熱部で挟持可能としている。
【0032】
また、下方加熱部及び上方加熱部は、電気ヒータや熱媒体などの加熱源(図示なし)がブロック体の内部に、あるいは、ブロック体に接するように設けられており、200℃~300℃程度の高温で樹脂シート1aを加熱できるようになっている。
【0033】
成形部130は、底孔5が打抜かれた樹脂シート1aに収納凹部3とダミーエンボス4とを成形するもので、収納凹部3を形成する第1凸部及びダミーエンボス4を形成する第2凸部を有するオス型と、オス型を受けるメス型とを上型及び下型として含むプレス金型で構成されている。
【0034】
オス型において、第1凸部及び第2凸部は、樹脂シート1aの搬送方向に直交する幅方向に並んでおり、また、複数の収納凹部3及びダミーエンボス4を形成するために、複数の第1凸部及び第2凸部は、樹脂シート1aの搬送方向に沿って並んでいる。なお、成形部130で収納凹部3を同時成形する個数としては、例えば、4個や8個を採用することができる。また、成形部130においても、収納凹部3に対応する樹脂シート1aの領域を加熱するようにしてもよい。
【0035】
穿孔部140は、収納凹部3の側方、つまりダミーエンボス4が形成された位置に送り孔2を穿孔する(打抜く又は穿設する)ものである。この穿孔部140は、上型に設けられた第2パンチと、下型に設けられた第2パンチ受けとで構成され、上型を下型に相対的に接近させることで、送り孔2を打抜くようになっている。
【0036】
第2パンチは、同時に複数の送り孔2を打抜くために、複数本(例えば、4本や8本)が、樹脂シート1aの搬送方向に沿って並べられ、共通のストリッパープレートに挿通されている。なお、第2パンチの直径は、ダミーエンボス4の外形よりも大きいもので、送り孔2を打抜くことで、ダミーエンボス4も除去されるようになっている(図1A参照)。
【0037】
位置決め部(図示なし)は、ダミーエンボス4を用いて位置決めを行うものであり、例えば、ダミーエンボス4にピンを挿入し、樹脂シート1aを適切に位置決め又は案内するものである。この位置決め部は、穿孔部140で送り孔2を穿孔する際に利用され、送り孔2を収納凹部3に対して設計寸法どおりに配置する。
【0038】
間欠搬送部150は、樹脂シート1aを打抜部110や成形部130や穿孔部140に搬送するもので、収納凹部3及びダミーエンボス4の成形中や、送り孔2や底孔5の打抜・穿孔中は、搬送を停止し、成形後や打抜・穿孔後に、次の打抜位置や成形位置や穿孔位置まで所定の長さ(間欠搬送ピッチ)だけ搬送方向に移動させるようになっている。この間欠搬送ピッチは、成形部130で収納凹部3を同時成形する個数に応じて設定するとよい。
【0039】
そして、巻取部(図示なし)は、打抜部110や成形部130や穿孔部140で底孔5や収納凹部3や送り孔2が成形されたキャリアテープ1を巻取リールに巻取る。
【0040】
つづいて、キャリアテープ1の成形方法について説明する。
図2Bは、本発明に係る実施形態のキャリアテープ1の成形方法の要部を示すフロー図である。
【0041】
キャリアテープ1の成形方法は、上述した打抜部110による底孔打抜工程S1と、予備加熱部120による予備加熱工程S2と、成形部130による収納凹部成形工程S3と、穿孔部140による送り孔穿孔工程S4と、位置決め部による位置決め工程S5と、間欠搬送部150による間欠搬送工程S6と、を含んでいる。
【0042】
底孔打抜工程S1では、樹脂シート1aにおける収納凹部3の底面3aの形成予定位置に底孔5を打抜く。
【0043】
予備加熱工程S2では、底孔5が打抜かれた樹脂シート1aを予備加熱部120により予備加熱し、軟化させた状態で、次の収納凹部成形工程S3に樹脂シート1aを案内する。
【0044】
収納凹部成形工程S3では、樹脂シート1aに収納凹部3とダミーエンボス4とを、成形部130を用いて成形する。このとき、底孔5が収納凹部3の底面3aの中心に位置するように、後述の位置決め工程S5で位置決めされる。なお、収納凹部成形工程S3においても、樹脂シート1aを加熱するようにしてもよく、予備加熱工程S2を省略して、収納凹部成形工程S3においてのみ、樹脂シート1aを加熱してもよい。
【0045】
送り孔穿孔工程S4では、樹脂シート1aに送り孔2を穿孔する。なお、本実施形態では、成形部130と穿孔部140とは別装置であるため、収納凹部成形工程S3と送り孔穿孔工程S4とは、異なるタイミングで行われることになるが、成形部130と穿孔部140とが同一装置で構成されている場合には、ほぼ同時のタイミングで行われることになる。
【0046】
位置決め工程S5は、送り孔穿孔工程S4において、送り孔2の成形予定位置に設けられたダミーエンボス4を用いて位置決めを行う。
【0047】
間欠搬送工程S6は、樹脂シート1aを搬送方向に沿って、打抜部110から、予備加熱部120、成形部130、穿孔部140へと順次間欠搬送ピッチで搬送する。
【0048】
そして、このような各工程S1~S6を経て、キャリアテープ1が形成される。ただし、位置決め工程S5及び間欠搬送工程S6は、後半の工程となっているが、説明の便宜上のことであり、現実には、間欠搬送工程S6によって、樹脂シート1aは搬送方向に間欠搬送されて、底孔打抜工程S1や収納凹部成形工程S3が行われる。
【0049】
ところで、本実施形態においても、底孔5は、従来のキャリアテープ1“の成形方法と同様に、第1パンチ及び第1パンチ受けとで打抜かれるため、底孔5内周縁にバリが発生することがある(図6参照)。
【0050】
しかしながら、本実施形態では、樹脂シート1aを加熱しながら収納凹部3をプレス成形する収納凹部成形工程S3の前に、底孔打抜工程S1を行うために、加熱によって軟化した(流動性が向上した)樹脂シート1aではなく、すなわち加熱されていない状態(冷間状態)の樹脂シート1aに対して、第1パンチ及び第1パンチ受けとで打抜くことになる。そのため、樹脂シート1aが伸び難く、発生するバリも従来の成形方法のような大きさまでには至らず、ある程度バリの大きさや発生頻度を抑制することができている。
【0051】
そして、本実施形態のように、底孔5の底孔打抜工程S1後に、収納凹部3の収納凹部成形工程S3を行うと、あらかじめ打抜かれた底孔5は、プレス成形によって、直径d1が小さくなるように変化する。そのため、底孔打抜工程S1において第1パンチで打抜く底孔5の直径d1は、収納凹部成形工程S3による底孔5の変形を見込んだ大きさで打抜く必要がある。
【0052】
図3は、収納凹部成形工程S3における収納凹部3の底面3aの変形状態を示す概略図である。
【0053】
上述したように、収納凹部成形工程S3において、底孔5が形成された樹脂シート1aは、プレス金型の凸型及び凹型により、底孔5の周囲が引き伸ばされて、所定の形状(幅、長さ、深さ)の収納凹部3(及び底面3a)がプレス成形される。このとき、底面3aに該当する樹脂シート1aは、図3に示すように、底孔5の中心に向かう方向に変形(延伸)されるため、収納凹部3の成形後には、底孔5が小さくなる。
【0054】
そこで、底孔打抜工程S1における底孔5の直径d1は、製品としてのキャリアテープ1に必要とされる底孔5の直径d2、つまり、収納凹部成形工程S3後の直径d2よりも大きく、例えば、直径d2の1.19倍を超え1.37倍以下であるとよい。言い換えると、収納凹部成形工程S3後における底孔5の直径d2は、底孔打抜工程S1における底孔5の直径d1の73%以上84%未満であるとよい。
【0055】
例えば、底孔5の直径d2が直径d1の73%未満であると、樹脂シート1aが十分延伸されておらず、底孔5が円形でなく、楕円や長円などの歪な形状になり、また、収納凹部3の寸法精度も良好とはいえない。一方、底孔5の直径d2が直径d1の84%以上であると、樹脂シート1aが延伸され過ぎており、前述の場合と同様に、底孔5が円形でなく、楕円や長円などの歪な形状になり、また、収納凹部3の底面3aや側壁の厚みが薄くなり過ぎることがある。
【0056】
この底孔5の変形率は、収納凹部成形工程S3における樹脂シート1aの加熱温度を調整することで、ある程度コントロールすることができる。
【0057】
図4は、予備加熱工程S2及び/又は収納凹部成形工程S3における収納凹部3の底面3aの加熱範囲を示す概略図である。なお、格子斜線部が、加熱範囲を示す。
予備加熱工程S2及び/又は収納凹部成形工程S3で樹脂シート1aを加熱する加熱領域は、図4に示すように、収納凹部3の底面3aに対応するほぼ領域全体を含むように設定されるとよい。そして、収納凹部3の成形時に、樹脂シート1aが加熱されていることで、底孔5にバリが存在していたとしても、微少なバリにも熱が加えられ、さらに、プレス成形による荷重も加わることで、千切れて離脱(除去)されることになる。
【0058】
よって、プレス金型の下型にバリが対面するように、底孔5を収納凹部3の内側となる方向から打抜き、バリが収納凹部3の外側に発生するように構成することが好ましい。
【0059】
このようにして成形されたキャリアテープ1は、収納凹部3に底孔5を有するものの、バリの発生が抑制されたものであり、バリの除去工程及びその装置を省略することができ、生産性を向上させることができる。
【0060】
ここで、本実施形態のように、樹脂シート1aに底孔5を打抜く底孔打抜工程S1後に、収納凹部3をプレス成形する収納凹部成形工程S3を行ったキャリアテープ1であるのか、図5に示す従来のように、収納凹部3の収納凹部成形工程S11後に、底面3aに底孔5を打抜く底孔打抜工程S13を行ったキャリアテープ1“であるのかは、底孔5を以下のように分析することで、明確に区別することができる。
【0061】
従来のように、収納凹部3のプレス成形後に打抜かれた底孔5では、底面3aの厚み方向にせん断された内周縁のせん断面は、せん断面がそのままの状態で残されることなる。
【0062】
一方、本実施形態のように、収納凹部3のプレス成形前に打抜かれた底孔5では、底面3aの厚み方向にせん断された内周縁のせん断面は、プレス成形によって圧縮されるため、このせん断面が厚み方向に押し潰されるため、せん断面の状態を綺麗に保ったまま残るようなことがない。
【0063】
したがって、キャリアテープ1の構成を特定する「底孔5は、収納凹部3のプレス成形前に打抜かれたものである」や「収納凹部3をプレス成形するプレス成形前に、樹脂シート1aにおける収納凹部3の底面成形予定位置に底孔5が打抜かれている」という記載が形式的にプロダクト・バイ・プロセスに該当するとしても、上述のとおり、それは「単に状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎない場合」に該当するものである。
【0064】
以上説明したとおり、本発明に係る実施形態のキャリアテープ1の成形方法は、樹脂シート1aに収納凹部3を成形する前に、樹脂シート1aにおける収納凹部3の底面3a成形予定位置に底孔5を打抜く底孔打抜工程S1と、樹脂シート1aに収納凹部3をプレス成形する収納凹部成形工程S3と、を含むものである。これにより、より真円に近い底孔5を有するキャリアテープ1を成形することができる。
【0065】
実施形態の底孔打抜工程S1は、収納凹部成形工程S3後の底孔5の変化を見込んだ大きさ(直径)で底孔5を打抜く。また、実施形態の底孔打抜工程S1における底孔5の直径d1は、収納凹部成形工程S3後の直径d2よりも大きい。これにより、所定の直径d2を有する底孔5が形成されたキャリアテープ1を成形することができる。
【0066】
実施形態の収納凹部成形工程S3後の底孔5の直径d2は、底孔打抜工程S1における底孔5の直径d1の73%以上84%未満である。これにより、より真円に近い底孔5を有するキャリアテープ1を成形することができる。
【0067】
実施形態の収納凹部成形工程S3は、樹脂シート1aの加熱を行いながら、樹脂シート1aに収納凹部3をプレス成形する。これにより、底孔打抜工程S1において底孔5にバリが発生したとしても、加熱により微少なバリが軟化するとともに、プレス成形による押圧によりバリが底孔5の周縁から切り離されるから、バリを除去することができる。
【0068】
実施形態のキャリアテープ1は、部品Pを収納可能な収納凹部3を有するキャリアテープ1であって、収納凹部3の底面3aに底孔5を有し、底孔5は、収納凹部3のプレス成形前に打抜かれたものである。これにより、底孔5にバリを有さないか、バリ発生が抑制されたキャリアテープ1を効率よく得ることができる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0070】
(変形例)
上記実施形態では、底孔打抜工程S1と収納凹部成形工程S3とが一連の連続工程であったが、例えば、成形部130を備える成形装置100から、打抜部110を別装置として独立して構成し、樹脂シート1aに底孔5の底孔打抜工程S1のみを行い、底孔5のみが形成された樹脂シート1aを巻取リールに巻取り、その後別の装置において、巻取リールから樹脂シート1aを巻き戻して、収納凹部3の収納凹部成形工程S3及び送り孔2の送り孔穿孔工程S4を行うように、分離してもよい。つまり、先に底孔5の底孔打抜工程S1を行えば、収納凹部3の収納凹部成形工程S3は、直後でなくてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 キャリアテープ、1a 樹脂シート、2 送り孔、3 収納凹部、3a 底面、4 ダミーエンボス、5 底孔、6 連結部
10 カバーテープ、11 粘着層
20 包装体
100 成形装置、110 打抜部、120 予備加熱部、130 成形部、140 穿孔部、150 間欠搬送部
EP 部品
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6