(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175266
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】燃料加圧装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
F02M37/00 R
F02M37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087625
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 浩一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄士
(72)【発明者】
【氏名】根本 俊久
(57)【要約】
【課題】始動に必要な燃料をエンジンに圧送し、エンジンの始動性を高める。
【解決手段】燃料加圧装置1は、プライミングポンプ3から供給された始動用の燃料を電磁弁4を介してエンジン2に圧送する。燃料加圧装置1は、プライミングポンプ3から燃料が供給されると共に室内の容積を可変可能な燃料室Rと、燃料室Rの容積が小さくなるように弾性体20を付勢するバネ30とを備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ(3)、弁(4)、及びエンジン(2)を備えるエンジンユニット(100)に設けられ、前記ポンプ(3)から供給された始動用の燃料を前記弁(4)を介して前記エンジン(2)に圧送する燃料加圧装置(1)であって、
前記ポンプ(3)から前記燃料が供給されると共に室内の容積を可変可能な燃料室(R)を備える燃料室形成部(12,20)と、
前記燃料室(R)の容積が小さくなるように前記燃料室形成部(12,20)を付勢するバネ(30)と、を備える燃料加圧装置(1)。
【請求項2】
前記燃料室形成部(12,20)は、弾性変形可能な弾性体(20)を少なくとも一部に含み、
前記燃料室(R)は、前記弾性体(20)が変形することによって容積が変化し、
前記バネ(30)は、前記弾性体(20)を付勢する、請求項1に記載の燃料加圧装置(1)。
【請求項3】
前記燃料室(R)から送り出された前記燃料が通る吐出路(L12)には、前記吐出路(L12)から分岐するオーバーフロー流路(L13)が接続されており、
前記オーバーフロー流路(L13)内における前記燃料の流通の有無を切り替えるオーバーフロー弁(40)が更に設けられている、請求項1又は2に記載の燃料加圧装置(1)。
【請求項4】
前記オーバーフロー弁(40)は、弁体(41)と、前記オーバーフロー流路(L13)内における前記燃料の流通が遮断されるように前記弁体(41)を付勢する弁体バネ(42)と、を備えている、請求項3に記載の燃料加圧装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに始動用の燃料を圧送する燃料加圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、刈払機等に搭載されたエンジンユニットでは、プライミングポンプによって、エンジンの始動用の燃料をキャブレターに送り、キャブレター内に燃料を溜めている。そして、リコイルスターターを作動させ、エンジンの負圧によってキャブレターに溜めた燃料をエンジン内に送っている。このような構成を備えるエンジンユニットが、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したエンジンユニットでは、プライミングポンプによってキャブレター内に燃料を送り、エンジンの負圧によってエンジン内に燃料を送り込んでいるだけである。このようなエンジンユニットでは、エンジンの始動性能の向上のため、エンジンの始動に必要な燃料を加圧した状態で供給することが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、始動に必要な燃料をエンジンに圧送し、エンジンの始動性を高めることが可能な燃料加圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、[1]「ポンプ(3)、弁(4)、及びエンジン(2)を備えるエンジンユニット(100)に設けられ、前記ポンプ(3)から供給された始動用の燃料を前記弁(4)を介して前記エンジン(2)に圧送する燃料加圧装置(1)であって、前記ポンプ(3)から前記燃料が供給されると共に室内の容積を可変可能な燃料室(R)を備える燃料室形成部(12,20)と、前記燃料室(R)の容積が小さくなるように前記燃料室形成部(12,20)を付勢するバネ(30)と、を備える燃料加圧装置(1)。」である。
【0007】
この燃料加圧装置(1)では、バネ(30)によって燃料室形成部(12,20)が付勢されているため、ポンプ(3)によって供給された燃料は燃料室(R)内において加圧された状態となる。なお、燃料を加圧する必要があるため、ポンプ(3)によって燃料室(R)内に燃料が供給されている時には、エンジンユニット(100)に設けられた弁(4)は閉じた状態とする。この状態で、エンジン(2)の始動のためにエンジンユニット(100)に設けられた弁(4)が開けられると、加圧された燃料がエンジン(2)に供給される。このように、燃料加圧装置(1)は、始動に必要な燃料をエンジン(2)に圧送し、エンジン(2)の始動性を高めることができる。
【0008】
本発明の燃料加圧装置(1)は、[2]「前記燃料室形成部(12,20)は、弾性変形可能な弾性体(20)を少なくとも一部に含み、前記燃料室(R)は、前記弾性体(20)が変形することによって容積が変化し、前記バネ(30)は、前記弾性体(20)を付勢する、上記[1]に記載の燃料加圧装置(1)。」であってもよい。この場合、燃料加圧装置(1)は、弾性体(20)を用いることによって、燃料室(R)の容積を容易に変化させることができる。
【0009】
本発明の燃料加圧装置(1)は、[3]「前記燃料室(R)から送り出された前記燃料が通る吐出路(L12)には、前記吐出路(L12)から分岐するオーバーフロー流路(L13)が接続されており、前記オーバーフロー流路(L13)内における前記燃料の流通の有無を切り替えるオーバーフロー弁(40)が更に設けられている、上記[1]又は[2]に記載の燃料加圧装置(1)。」であってもよい。この場合、燃料加圧装置(1)は、ポンプ(3)によって燃料室(R)内に供給された余剰な燃料を、オーバーフロー弁(40)及びオーバーフロー流路(L13)を介して排出することができる。
【0010】
本発明の燃料加圧装置(1)は、[4]「前記オーバーフロー弁(40)は、弁体(41)と、前記オーバーフロー流路(L13)内における前記燃料の流通が遮断されるように前記弁体(41)を付勢する弁体バネ(42)と、を備えている、上記[3]に記載の燃料加圧装置(1)。」であってもよい。この場合、燃料加圧装置(1)は、燃料室形成部(12,20)を付勢するバネ(30)とオーバーフロー弁(40)の弁体バネ(42)との付勢力のバランスを調整することにより、燃料室(R)の容積を所望の容積に設定することができる。つまり、燃料加圧装置(1)では、燃料室形成部(12,20)について変更を加えることなく、バネ(30,42)の付勢力のバランスを変更するだけで、燃料室(R)を所望の容積に容易に設定することができる。これにより、燃料加圧装置(1)は、エンジン(2)の種類等によって圧送する始動用の燃料の量が異なる場合であっても、これらのエンジン(2)への適用が容易となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、始動に必要な燃料をエンジンに圧送し、エンジンの始動性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係る燃料加圧装置が設けられたエンジンユニットを示すブロック図である。
【
図3】
図3は、燃料加圧装置を取込口側から見た側面図である。
【
図4】
図4は、
図2のA-B-C-A線に沿った断面図である。
【
図5】
図5は、
図2のA-D-E-F線に沿った断面図である。
【
図6】
図6は、燃料室内に燃料が供給される様子を示す、
図2のA-B-C-A線に沿った断面図である。
【
図7】
図7は、燃料室に供給された燃料がオーバーフロー流路から排出される様子を示す、
図2のA-D-E-F線に沿った断面図である。
【
図8】
図8は、燃料室内の燃料が吐出路を介してエンジンに供給される様子を示す、
図2のA-D-E-F線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1に示されるように、本実施形態に係る燃料加圧装置1は、エンジンユニット100に設けられる。エンジンユニット100は、一例として、刈払い機等に搭載されていてもよい。エンジンユニット100は、エンジン2、及びプライミングポンプ(ポンプ)3、及び電磁弁(弁)4を備えている。エンジン2は、一例として、2サイクルエンジンであってもよい。また、エンジンユニット100は、図示は省略するが、エンジン2に燃料を供給する燃料ポンプ又はキャブレター、リコイルスターター等を適宜備えている。
【0015】
燃料加圧装置1は、エンジン2の始動時に、プライミングポンプ3から供給された始動用の燃料を電磁弁4を介してエンジン2(例えばクランクケース内又は燃焼室内)に圧送する。以下、始動用の燃料を燃料加圧装置1が圧送する構成を中心に説明する。
【0016】
プライミングポンプ3は、エンジンユニット100の使用者によって操作されることにより、燃料タンク5から燃料加圧装置1へ燃料を供給する。ここでは、プライミングポンプ3は、燃料タンク5から配管L4を介して燃料を取り込み、配管L3を介して燃料加圧装置1に燃料を供給する。
【0017】
電磁弁4は、燃料加圧装置1からエンジン2への始動用の燃料の供給の有無を切り替える。ここでは、電磁弁4は、燃料加圧装置1からエンジン2へ始動用の燃料を供給するための配管L1に設けられている。電磁弁4は、配管L1内を燃料が流通可能な開状態と、配管L1内の燃料の流通を遮断する閉状態とに切り替えられる。電磁弁4は、エンジン2の始動時に閉状態から開状態に切り替えられる。例えば、電磁弁4は、エンジン2の始動時に操作されるリコイルスターターの動作と連動して、閉状態から開状態に切り替えられてもよい。
【0018】
図2及び
図3に示されるように、燃料加圧装置1は、プライミングポンプ3から供給された燃料を取込口S1から内部に取り込む。そして、燃料加圧装置1は、取り込んだ燃料を吐出口S2から吐出し、エンジン2に圧送する。また、燃料加圧装置1は、オーバーフロー出口S3を備えている。オーバーフロー出口S3は、内部に取り込まれた燃料の余剰分を外部に排出する。取込口S1、吐出口S2、及びオーバーフロー出口S3には、ニップルN1、ニップルN2、及びニップルN3がそれぞれ取り付けられている。ニップルN1には、配管L3(
図1参照)が接続される。ニップルN2には、配管L1(
図1参照)が接続される。ニップルN3には、配管L2(
図1参照)が接続される。配管L2は、燃料加圧装置1から排出された余剰な燃料を燃料タンク5に戻すための流路となる。
【0019】
より詳細には、燃料加圧装置1は、
図4及び
図5に示されるように、本体部10、弾性体20、バネ30、及びオーバーフロー弁40(
図5参照)を備えている。本実施形態において、本体部10は、第1本体部11、及び第2本体部12を備えている。第1本体部11及び第2本体部12は、それぞれ、略板状を呈している。第1本体部11と第2本体部12とは、ガスケットGを挟んで互いに重ねられ、ネジB1によって互いに固定されている。
【0020】
第1本体部11には、第1本体部11と第2本体部12との重ね方向に貫通する孔11aが設けられている。第2本体部12には、第1本体部11の孔11aと対向する部分に凹部12aが設けられている。
【0021】
弾性体20は、第2本体部12の凹部12aを覆うように配置されている。本実施形態において弾性体20は、弾性体20の縁部が、ガスケットGと共に第1本体部11と第2本体部12とに挟み込まれることによって固定されている。弾性体20は、弾性変形可能な部材である。例えば、弾性体20は、ゴム等によって構成されている。
【0022】
ここで、第2本体部12と弾性体20の間には、プライミングポンプ3から燃料が供給される。つまり、第2本体部12の凹部12aの壁面と弾性体20との間の空間は、燃料が供給される燃料室Rとなる。また、上述したように、弾性体20は弾性変形可能である。このため、燃料室Rは、弾性体20が変形することによって、容積が変化する(
図4及び
図5における燃料室Rの違いを参照)。
【0023】
なお、
図4は、燃料室R内に燃料が供給されていない状態が示されている。また、
図5は、燃料室R内に燃料が供給されてバネ30が圧縮され、燃料室Rの容積が
図4に示される状態よりも大きくなった状態が示されている。このように、第2本体部12及び弾性体20は、プライミングポンプ3から燃料が供給されると共に室内の容積を可変可能な燃料室Rを備える燃料室形成部を構成している。
【0024】
図4に示されるように、バネ30は、第1本体部11の孔11a内に配置されている。バネ30は、圧縮バネである。第1本体部11の外面には略板状のバネ押さえ31がネジB2によって取り付けられている。バネ押さえ31は、第1本体部11の孔11aを覆っている。バネ30の一方の端部は弾性体20に当接し、バネ30の他方の端部はバネ押さえ31に当接している。つまり、バネ30は、燃料室Rの容積が小さくなるように、弾性体20を第2本体部12側に向けて付勢している。このように、バネ30は、
図5に示されるように燃料室R内に燃料が供給されている状態においては、燃料室R内の燃料に対して圧力を加えている。なお、弾性体20とバネ30との間には、弾性体20に取り付けられたバネ当て21が設けられていてもよい。
【0025】
また、
図4及び
図5に示されるように、本体部10には、流入路L11、吐出路L12、及びオーバーフロー流路L13が設けられている。
図4に示されるように、流入路L11は、取込口S1と燃料室Rとを接続している。流入路L11は、本実施形態においては、第1本体部11に設けられた溝及び孔によって構成されている。流入路L11は、プライミングポンプ3から配管L3を介して取込口S1に供給された燃料を、燃料室Rに導く。
【0026】
図5に示されるように、吐出路L12は、燃料室Rと吐出口S2とを接続している。吐出路L12は、本実施形態においては、第1本体部11に設けられた溝及び第2本体部12に設けられた孔によって構成されている。吐出路L12は、燃料室Rから送り出された燃料を吐出口S2に導く。つまり、吐出路L12には、燃料室Rから送り出された燃料が通る。
【0027】
オーバーフロー流路L13は、吐出路L12とオーバーフロー出口S3とを接続する。つまり、オーバーフロー流路L13は、吐出路L12から分岐するように一方の端部が吐出路L12に接続され、他方の端部がオーバーフロー出口S3に接続されている。オーバーフロー流路L13は、本実施形態においては、第1本体部11に設けられた孔及び第2本体部12に設けられた孔によって構成されている。
【0028】
オーバーフロー弁40は、本実施形態ではオーバーフロー流路L13に設けられ、オーバーフロー流路L13内における燃料の流通の有無を切り替える。ここでは、オーバーフロー弁40は、燃料室R内の燃料の圧力によって、オーバーフロー流路L13内を燃料が流通可能な開状態と、オーバーフロー流路L13内の燃料の流通を遮断する閉状態とに切り替えられる。
【0029】
ここで、オーバーフロー流路L13は、吐出路L12に接続される小径流路部L13aと、小径流路部L13aに接続された大径流路部L13bとを含んでいる。大径流路部L13bは、小径流路部L13aよりも流路断面積が大きい。また、小径流路部L13aは、大径流路部L13bよりも吐出路L12側に位置している。本実施形態においては、小径流路部L13aは第1本体部11に設けられ、大径流路部L13bは第2本体部12に設けられている。本実施形態においては、オーバーフロー弁40は、小径流路部L13aと大径流路部L13bとの接続部分において小径流路部L13aの開口部L13cを開閉することで、オーバーフロー流路L13内における燃料の流通の有無を切り替える。
【0030】
より詳細には、オーバーフロー弁40は、弁体41、及びバネ(弁体バネ)42を備えている。弁体41は、大径流路部L13b内に設けられ、小径流路部L13aの開口部L13cを開閉する。バネ42は、圧縮バネである。バネ42は、オーバーフロー流路L13内における燃料の流通が遮断されるように、弁体41を付勢する。ここでは、バネ42は、小径流路部L13aの開口部L13cが弁体41によって塞がれるように弁体41を付勢する。なお、バネ42は、一方の端部が弁体41に当接し、他方の端部が第2本体部12に設けられたバネ押さえ13に当接している。バネ押さえ13は、Oリングを挟んで第2本体部12に取り付けられている。ここでは、一例として、バネ押さえ13の外周面には雄ネジ部13aが設けられている。第2本体部12においてバネ押さえ13が嵌め込まれる孔部の内周面には、雌ネジ部12bが設けられている。バネ押さえ13は、第2本体部12の雌ネジ部12bに雄ネジ部13aが係合させられることによって、第2本体部12に取り付けられる。
【0031】
オーバーフロー弁40は、燃料室R内の燃料が所定圧力以上となった場合にバネ42が圧縮され、弁体41が小径流路部L13aの開口部L13cから離反する。これにより、開口部L13cが開放され、オーバーフロー流路L13内を燃料が流通可能となる。ここでは、オーバーフロー流路L13が流通可能となることにより、燃料室R内の燃料(余剰な燃料)が燃料加圧装置1から配管L2を介して燃料タンク5に戻される。
【0032】
次に、エンジン2の始動時に、燃料加圧装置1がエンジン2に対して始動用の燃料を圧送する動作について説明する。なお、エンジン2の始動前の状態において、電磁弁4は閉じられた状態とする。まず、エンジン2を始動させるため、エンジンユニット100の使用者は、プライミングポンプ3を操作(押す)する。これにより、燃料タンク5の燃料が、配管L4、プライミングポンプ3、及び配管L3を介して燃料加圧装置1の取込口S1に送られ、取込口S1から流入路L11を介して燃料室R内に燃料が送られる。
【0033】
そして、さらに使用者がプライミングポンプ3を操作して燃料を燃料加圧装置1に送ることにより、
図6に示されるように、燃料室R内に送られた燃料がバネ30の付勢力に抗して弾性体20を押し上げる(バネ30が圧縮される方向に弾性体20を移動させる)。これにより、燃料室Rの容積が大きくなり、燃料室R内が燃料で満たされる。なお、この状態においては電磁弁4が閉じられているため、燃料室R内の燃料はエンジン2へは送られない。つまり、燃料加圧装置1は、燃料室R内に燃料を溜めることができる。また、燃料室R内に溜められた燃料は、弾性体20を介してバネ30によって付勢され、加圧された状態となっている。
【0034】
さらに使用者がプライミングポンプ3を操作して燃料を燃料加圧装置1に送ることにより、
図7に示されるように、燃料室Rに送られた燃料が吐出路L12及びオーバーフロー流路L13(小径流路部L13a)を介してオーバーフロー弁40の弁体41を付勢する。バネ42は、バネ30によって蓄圧された燃料室R内の燃料の圧力よりも所定値高い圧力によって縮み始めるように設定されている。つまり、バネ42は、バネ30が縮んだ後に縮み始める。燃料によって弁体41が付勢されてバネ42が圧縮されることにより、弁体41が小径流路部L13aの開口部L13cから離反する。これにより、開口部L13cが開いた状態となり、オーバーフロー流路L13内を燃料が流通可能な状態となる。この状態で、オーバーフロー流路L13から、オーバーフロー出口S3、及び配管L2を介して燃料が燃料タンク5に戻される。つまり、燃料室R内の余剰な燃料がオーバーフロー流路L13を介して燃料タンク5に戻され、燃料室R内の燃料を所定の圧力で維持することができる。
【0035】
燃料室R内に燃料が溜められた後、使用者は、例えばリコイルスターターを操作することによりエンジン2を始動させる。このエンジン2の始動の動作と連動して、電磁弁4が閉状態から開状態となる。これにより、
図8に示されるように、バネ30によって加圧された燃料室R内の始動用の燃料が、吐出路L12、及び配管L1を介してエンジン2に勢いよく一気に送られる(圧送される)。このように、エンジン2の始動時に始動用の燃料が一気に供給されるため、エンジン2の始動性が向上する。
【0036】
以上のように、燃料加圧装置1では、バネ30によって弾性体20が付勢されているため、プライミングポンプ3によって供給された燃料は燃料室R内において加圧された状態となる。なお、燃料を加圧する必要があるため、プライミングポンプ3によって燃料室R内に燃料が供給されている時には、エンジンユニット100に設けられた電磁弁4は閉じた状態とする。この状態で、エンジン2の始動のためにエンジンユニット100に設けられた電磁弁4が開けられると、加圧された燃料がエンジン2に勢いよく一気に供給される。このように、燃料加圧装置1は、始動に必要な燃料をエンジン2に圧送することができ、エンジン2の始動性を高めることができる。
【0037】
燃料室Rは、弾性変形可能な弾性体20を一部に含んで構成されている。この場合、燃料加圧装置1は、弾性体20を用いることによって、燃料室Rの容積を容易に変化させることができる。
【0038】
燃料加圧装置1は、吐出路L12から分岐するオーバーフロー流路L13と、オーバーフロー流路L13内における燃料の流通の有無を切り替えるオーバーフロー弁40とを備えている。この場合、燃料加圧装置1は、プライミングポンプ3によって燃料室R内に供給された余剰な燃料を、オーバーフロー弁40及びオーバーフロー流路L13を介して排出することができる。
【0039】
オーバーフロー弁40は、弁体41と、弁体41を付勢するバネ42とを備えている。この場合、燃料加圧装置1は、弾性体20を付勢するバネ30とオーバーフロー弁40の40のバネ42との付勢力のバランスを調整することにより、燃料室Rの容積を所望の容積に設定することができる。つまり、燃料加圧装置1では、第2本体部12(凹部12a)及び弾性体20について変更を加えることなく、バネ30,42の付勢力のバランスを変更するだけで、燃料室Rを所望の容積に容易に設定することができる。これにより、燃料加圧装置1は、エンジン2の種類等によって圧送する始動用の燃料の量が異なる場合であっても、これらのエンジン2への適用が容易となる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、燃料室Rに燃料を送るポンプとしては、プライミングポンプ3に限定されない。燃料加圧装置1の燃料室Rに燃料を送ることができれば、プライミングポンプ3に代えて他の形式のポンプが用いられてもよい。また、電磁弁4についても、電磁式の弁に限らず、他の形式の弁が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…燃料加圧装置、2…エンジン、3…プライミングポンプ(ポンプ)、4…電磁弁(弁)、12…第2本体部(燃料室形成部)、20…弾性体(燃料室形成部)、30…バネ、40…オーバーフロー弁、41…弁体、42…バネ(弁体バネ)、100…エンジンユニット、L12…吐出路、L13…オーバーフロー流路、R…燃料室。