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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175281
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】部品実装装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20231205BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H05K13/04 B
B25J15/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087648
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 実可子
(72)【発明者】
【氏名】森 亮輔
【テーマコード(参考)】
3C707
5E353
【Fターム(参考)】
3C707AS08
3C707BS04
3C707CT03
3C707DS01
3C707FS01
3C707FT01
3C707FU01
3C707KS03
3C707KS13
3C707KS33
3C707KT01
3C707KT05
3C707KT18
3C707KV15
3C707LV22
3C707MT06
3C707NS17
5E353EE02
5E353GG01
5E353HH26
5E353HH30
5E353JJ21
5E353JJ48
5E353JJ52
5E353JJ54
5E353KK02
5E353KK03
5E353QQ07
5E353QQ21
(57)【要約】
【課題】装置の大型化を防止しつつ部品の吸着とノズルの吸着とを適切に行う。
【解決手段】負圧により部品を吸着するノズルを、負圧によりヘッドの保持部に吸着する部品実装装置は、真空ポンプの作動により発生した負圧をノズルに供給可能なノズル用流路と、正圧を供給する正圧流路と、正圧流路の正圧を利用して負圧を発生させるエジェクタと、エジェクタの作動により発生した負圧を保持部に供給可能な保持部用流路と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧により部品を吸着するノズルを、負圧によりヘッドの保持部に吸着する部品実装装置であって、
真空ポンプの作動により発生した負圧を前記ノズルに供給可能なノズル用流路と、
正圧を供給する正圧流路と、
前記正圧流路の正圧を利用して負圧を発生させるエジェクタと、
前記エジェクタの作動により発生した負圧を前記保持部に供給可能な保持部用流路と、
を備える部品実装装置。
【請求項2】
前記真空ポンプと前記ノズル用流路とを連通し前記正圧流路と前記ノズル用流路との連通を遮断する状態と、前記真空ポンプと前記ノズル用流路との連通を遮断し前記正圧流路と前記ノズル用流路とを連通する状態とを切り替える第1切替部と、
前記正圧流路と前記エジェクタとを連通し前記正圧流路と前記保持部用流路との連通を遮断する状態と、前記正圧流路と前記エジェクタとの連通を遮断し前記正圧流路と前記保持部用流路とを連通する状態とを切り替える第2切替部と、
を備える、請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項3】
前記ノズル用流路および前記正圧流路の少なくとも一部と、前記エジェクタと、前記保持部用流路とが前記ヘッドに設けられ、
前記ヘッドを水平方向に移動させる移動部を備え、
前記ノズルで吸着した部品を基板に実装する、
請求項1または2に記載の部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品実装装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品実装装置としては、ノズルで部品を基板に実装する装置において、ヘッドにノズルを吸着して保持させるための負圧の供給と、ノズルに部品を吸着させるための負圧の供給とを行うものが提案されている。例えば、特許文献1の装置では、ノズルを保持するノズル保持機構に対して圧力調整装置からの負圧が供給され、ノズルに対してノズル圧調整装置からの負圧が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/203626号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1において、圧力調整装置とノズル圧調整装置とに別々の負圧源として負圧ポンプをそれぞれ設ける構成とした場合、コストが増加するだけでなく、比較的大きなスペースを要するため装置が大型化してしまう。そのため、圧力調整装置とノズル圧調整装置とに1の負圧ポンプを共用する構成も考えられる。しかし、そのような構成とすると、リークしやすい部品を吸着した際に、そのリークの影響がノズルの保持に及ぶため、ノズルが落下するおそれがあり好ましくない。
【0005】
本開示は、装置の大型化を防止しつつ部品の吸着とノズルの吸着とを適切に行うことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の部品実装装置は、
負圧により部品を吸着するノズルを、負圧によりヘッドの保持部に吸着する部品実装装置であって、
真空ポンプの作動により発生した負圧を前記ノズルに供給可能なノズル用流路と、
正圧を供給する正圧流路と、
前記正圧流路の正圧を利用して負圧を発生させるエジェクタと、
前記エジェクタの作動により発生した負圧を前記保持部に供給可能な保持部用流路と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本開示の部品実装装置は、真空ポンプの作動により発生した負圧をノズルに供給可能なノズル用流路と、エジェクタの作動により発生した負圧を保持部に供給可能な保持部用流路とを備える。これにより、別々の負圧源からの負圧を、部品の吸着とノズルの吸着とに供給するから、部品の吸着でリークが生じてもノズルの吸着に影響が及ぶことがない。また、負圧源の一方をエジェクタとすることで、負圧源の両方を真空ポンプとする場合に比して、コンパクト且つ安価な構成とすることができる。さらに、エジェクタよりも安定供給が可能な真空ポンプからの負圧を部品の吸着に用いるため、部品の吸着を安定させて、リークが生じやすい部品の落下などを防止することができる。これらのことから、装置の大型化を防止しつつ部品の吸着とノズルの吸着とを適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】部品実装装置10の構成の概略を示す斜視図。
図2】部品実装装置10の電気的な接続関係を示すブロック図。
図3】圧力を供給する主要な構成を示すブロック図。
図4】圧力供給装置70の構成の概略を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、部品実装装置10の構成の概略を示す斜視図である。図2は、部品実装装置10の電気的な接続関係を示すブロック図である。なお、本実施形態において、図1の左右方向がX軸方向であり、前後方向がY軸方向であり、上下方向がZ軸方向である。
【0011】
部品実装装置10は、図1に示すように、部品供給装置20と、基板搬送装置30と、移動装置40と、ヘッドユニット50と、パーツカメラ62と、マークカメラ64と、ノズルストッカ66と、圧力供給装置70(図2参照)と、制御装置90(図2参照)とを備える。部品供給装置20は、部品実装装置10の基台12の前部に設けられ、例えばテープに部品を所定間隔で収容したリール22を備えたテープフィーダであり、図示しないモータの駆動によりリール22からテープを引き出して部品を供給位置に供給する。基板搬送装置30は、例えば前後方向(Y軸方向)に間隔を空けて基台12上に設けられ左右方向に架け渡された1対のコンベアベルト32を備え、図示しないモータの駆動によりコンベアベルト32を駆動することにより基板Sを図1の左から右へと搬送する。移動装置40は、Y軸方向に沿って設けられたガイドレール46と、ガイドレール46に沿って移動するY軸スライダ48と、Y軸スライダ48にX軸方向に沿って設けられたガイドレール42と、ガイドレール42に沿って移動するX軸スライダ44とを備える。X軸スライダ44には、ヘッドユニット50が取り付けられている。移動装置40は、X軸スライダ44とY軸スライダ48とを移動させることによりヘッドユニット50をXY方向に移動させる。
【0012】
ヘッドユニット50は、例えば、軸心線上に1個のノズル52が取り付けられるシングルノズルヘッドとして構成されており、R軸アクチュエータ54とZ軸アクチュエータ56とを備える(図2参照)。ヘッドユニット50は、R軸アクチュエータ54の駆動により、ヘッドユニット50の軸心線回りにノズル52を回転させる。また、ヘッドユニット50は、Z軸アクチュエータ56の駆動によりZ軸スライダ57(図2参照)をZ軸方向に昇降させる。Z軸スライダ57は、その下端にノズル52を保持するノズル保持部51(図2参照)が設けられており、Z軸アクチュエータ56の駆動によりノズル52をZ軸方向に昇降させる。ノズル52は、負圧によってノズル先端に部品を吸着したり、正圧によって部品の吸着を解除したりする。ノズル52は、ノズル保持部51に負圧によって保持されている。圧力供給装置70は、ノズル保持部51やノズル52に負圧や正圧を供給するものであり、その詳細は後述する。
【0013】
パーツカメラ62は、部品供給装置20と基板搬送装置30との間に設けられている。パーツカメラ62は、その上方が撮像範囲であり、ノズル52に吸着された部品などの対象物を下方から撮像して撮像画像を生成する。
【0014】
マークカメラ64は、X軸スライダ44の下面に設けられている。マークカメラ64は、対象物を上方から撮像して撮像画像を生成する。マークカメラ64の対象物としては、部品供給装置20のテープフィーダから供給された部品、基板Sに付されたマーク、ノズルストッカ66内のノズル52のマークなどが挙げられる。
【0015】
ノズルストッカ66は、サイズや形状の異なる複数種のノズル52を各収容部に収容可能に構成されている。ノズルストッカ66にストックされているノズル52は、ヘッドユニット50に自動で交換可能である。また、作業者は、部品実装装置10の作動停止中に、ノズルストッカ66内にストックされているノズル52のうち、実装処理に不要な種類のノズル52を取り出し、実装処理に必要な種類のノズル52を収容することができる。
【0016】
制御装置90は、図2に示すように、CPU91を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU91の他に、ROM92、HDD93、RAM94、入出力インタフェース(I/F)95などを備える。これらは、バス96を介して接続されている。制御装置90は、図示しない管理装置などから取得した基板Sの生産ジョブに基づいて、部品の実装処理を行うように部品実装装置10を制御する。生産ジョブは、部品実装装置10においてどの部品をどの順番で基板Sへ実装するか、また、そのように部品を実装した基板Sを何枚作製するかなどを定めたデータである。
【0017】
また、制御装置90は、パーツカメラ62やマークカメラ64からの画像信号などを入出力インタフェース95を介して入力する。なお、X軸スライダ44,Y軸スライダ48,Z軸スライダ57には、それぞれ図示しない位置センサが設けられおり、制御装置90はそれらの位置センサからの位置情報も入力する。また、制御装置90は、部品供給装置20や基板搬送装置30、X軸スライダ44を移動させるX軸アクチュエータ45、Y軸スライダ48を移動させるY軸アクチュエータ49、Z軸スライダ57を移動させるZ軸アクチュエータ56、圧力供給装置70への駆動信号などを入出力インタフェース95を介して出力する。
【0018】
以下は、ノズル保持部51やノズル52に負圧や正圧を供給するための圧力供給装置70の説明である。図3は、圧力を供給する主要な構成を示すブロック図である。図4は、圧力供給装置70の構成の概略を示す構成図である。本実施形態では、図3に示すように、負圧源71Aとしての真空ポンプからの負圧が切替バルブ81(83)を介してノズル52に供給されることにより、ノズル52が部品を吸着するように構成されている。なお、負圧源71Aとしての真空ポンプは、部品実装装置10が備えるものである。また、正圧源71Bとしての工場エアからの正圧が切替バルブ84を介してエジェクタ88に供給され、その正圧を利用してエジェクタ88で生成された負圧がノズル保持部51に供給されることにより、ノズル保持部51がノズル52を吸着するように構成されている。
【0019】
ここで、図4に示すように、ノズル52は、筒状の軸部の先端(下端)の吸着口52aで部品を吸着するものであり、軸部の上端から径方向に突出するようにフランジ部52bが形成されている。また、ノズル保持部51は、Z軸スライダ57の下端に設けられ、中心部を上下に貫通する中心孔51aと、ノズル52が保持される下面(保持面)に設けられた環状の凹部51bと、上面から凹部51bの底面まで連通するように上下に貫通する連通孔51cとが形成されている。ノズル保持部51の凹部51bは、取り付けられたノズル52のフランジ部52bの上面に覆われることで、負圧室を形成する。ノズル保持部51は、その負圧室(凹部51b内)に連通孔51cを介して負圧が供給されることで、ノズル52を吸着して保持可能となる。また、ノズル52は、ノズル保持部51の中心孔51aと軸部の中心孔とを介して負圧が吸着口52aに供給されることで、吸着口52aで部品を吸着して保持可能となる。なお、図示は省略するが、凹部51bの底面の一部には永久磁石が埋設されている。また、ノズル52のフランジ部52bの上面(被保持面)のうち凹部51bの永久磁石と対向する位置に金属板が埋設されている。このため、ノズル52は、負圧による吸引力と磁石の吸引力とによってノズル保持部51に保持される。
【0020】
圧力供給装置70は、正圧または負圧のエアが流れる複数の流路と、各流路の連通状態を切り替える複数の切替バルブ81~87と、エジェクタ88と、減圧バルブ89とを備える。圧力供給装置70は、主な流路として、負圧流路72と、正圧流路73と、大流量流路74と、小流量流路75と、連絡流路76と、エジェクタ流路77と、ノズル保持流路78と、減圧流路79とを備える。また、圧力供給装置70は、この他に、大流量流路74および小流量流路75の圧力(負圧)を検出する圧力センサ74aと、ノズル保持流路78の圧力(負圧)を検出する圧力センサ78aとを備え、検出された圧力を制御装置90に出力する。本実施形態では、圧力供給装置70(複数の切替バルブ81~87とエジェクタ88と減圧バルブ89)は、ヘッドユニット50のヘッド本体50a内に設けられており、それぞれ制御装置90からの駆動信号に基づいて作動する。また、流路の一部、例えば大流量流路74と小流量流路75とノズル保持流路78の一部は、Z軸スライダ57を通ってノズル保持部51やノズル52に圧力を供給するように構成されている。
【0021】
負圧流路72は、負圧源71Aに連通する流路である。正圧流路73は正圧源71Bに連通する流路である。大流量流路74は、ノズル保持部51の中心孔51aに連通し、中心孔51aを介してノズル52の吸着口52aに大流量の負圧を供給する流路である。小流量流路75は、大流量流路74(ノズル保持部51の中心孔51a)に連通し、大流量流路74よりも小流量の負圧をノズル52の吸着口52aに供給する流路である。大流量流路74と小流量流路75は、ノズル52が部品を吸着するための負圧を供給する部品吸着用の負圧供給流路として機能する。小流量流路75は、大流量流路74よりも小径の流路として構成され、例えば大流量流路74の1/3~1/2程度の内径となっている。エジェクタ流路77は、エジェクタ88に流通させる正圧を供給する流路である。ノズル保持流路78は、ノズル保持部51の連通孔51cに連通し、エジェクタ88により生成された負圧を、連通孔51cを介して凹部51b内に供給する流路である。即ち、ノズル保持部51がノズル52を保持(吸着)するための負圧を供給するノズル保持用の負圧供給流路として機能する。減圧流路79は、正圧流路73の正圧を減圧バルブ89により減圧したエアが流れる流路である。
【0022】
切替バルブ81は、負圧流路72と大流量流路74とを連通して大流量流路74と連絡流路76とを遮断する状態と、負圧流路72と大流量流路74とを遮断して大流量流路74と連絡流路76とを連通する状態とを切り替える。切替バルブ81が負圧流路72と大流量流路74とを連通する状態とすることにより、大流量流路74に負圧源71Aからの負圧を供給して、ノズル52の吸着口52aに負圧を供給することができる。切替バルブ82は、連絡流路76を大気に開放する状態と、連絡流路76を大気と遮断する状態とを切り替える。切替バルブ81が大流量流路74と連絡流路76とを連通する状態とし、切替バルブ82が連絡流路76を大気に開放する状態とすることにより、大流量流路74に大気圧を供給して、ノズル52の吸着口52aに大気圧を供給することができる。
【0023】
切替バルブ83は、負圧流路72と小流量流路75とを連通する状態と、負圧流路72と小流量流路75とを遮断する状態とを切り替える。切替バルブ83が負圧流路72と小流量流路75とを連通する状態とすることにより、小流量流路75に負圧源71Aからの負圧を供給して、ノズル52の吸着口52aに負圧を供給することができる。なお、後述するように、小流量流路75は、切替バルブ85,86に接続されている。このため、小流量流路75によってノズル52に負圧を供給するためには、切替バルブ85,86が小流量流路75と他の流路との接続を遮断する状態とする必要がある。
【0024】
切替バルブ84は、エジェクタ流路77を正圧流路73に連通する状態と、エジェクタ流路77を大気に開放する状態とを切り替える。エジェクタ88は、エジェクタ流路77から供給される正圧のエアが高速で流通するように作動することで、ノズル保持流路78内のエアを吸引する。これにより、ノズル保持流路78に負圧を供給して、ノズル保持部51の連通孔51cを介して凹部51b内に負圧を供給することができる。
【0025】
切替バルブ85は、減圧流路79と小流量流路75とを連通する状態と、減圧流路79と小流量流路75とを遮断する状態とを切り替える。切替バルブ86は、正圧流路73と小流量流路75とを連通する状態と、正圧流路73と小流量流路75とを遮断する状態とを切り替える。なお、上述したように、切替バルブ83が負圧流路72と小流量流路75とを連通する状態とする場合、切替バルブ85は、減圧流路79と小流量流路75とを遮断する状態とされ、切替バルブ86は、正圧流路73と小流量流路75とを遮断する状態とされる。切替バルブ83が負圧流路72と小流量流路75とを遮断する状態とし、切替バルブ85が減圧流路79と小流量流路75とを連通する状態とし、切替バルブ86が正圧流路73と小流量流路75とを遮断する状態とすることで、小流量流路75からノズル52の吸着口52aに減圧された正圧を供給する。これにより、ノズル52が吸着していた部品の吸着を解除して、部品を基板Sに実装させることができる。また、切替バルブ83が負圧流路72と小流量流路75とを遮断する状態とし、切替バルブ85が減圧流路79と小流量流路75とを遮断する状態とし、切替バルブ86が正圧流路73と小流量流路75とを連通する状態とすることで、小流量流路75からノズル52の吸着口52aに正圧源71Bの正圧を供給することができる。これにより、ノズル52に比較的高圧の正圧を供給して、ノズル52の詰まりなどを解消させることができる。
【0026】
切替バルブ87は、正圧流路73とノズル保持流路78とを連通する状態と、正圧流路73とノズル保持流路78とを遮断する状態とを切り替える。切替バルブ87が正圧流路73とノズル保持流路78とを連通する状態とすることで、ノズル保持流路78に正圧を供給して、ノズル保持部51の連通孔51cを介して凹部51b内に正圧を供給することができる。これにより、ノズル保持部51が吸着していたノズル52の吸着を解除させることができる。
【0027】
こうして構成された本実施形態の圧力供給装置70では、正圧源71Bから正圧流路73を経た正圧を利用してエジェクタ88により発生させた負圧をノズル保持流路78からノズル保持部51に供給してノズル52を保持する。また、圧力供給装置70は、負圧源71A(負圧ポンプ)で発生させた負圧を負圧流路72を経て大流量流路74および小流量流路75の少なくとも一方からノズル52に供給して部品を保持する。ここで、ノズル52で部品を吸着した場合、吸着口52aと部品とが密着していれば、エアのリークが問題となることはない。しかし、実際には、部品の形状や上面の状態によって、吸着口52aが密着しにくい場合にはエアのリークが生じやすくなる。例えば、LED部品など、上面の形状が半球状の部品では、吸着位置によって球面との隙間が大きくなるためリークしやすくなる。また、スイッチ部品など、上面に操作部が設けられる部品では、操作部とその周囲との段差に吸着口52aがかかるとリークしやすくなる。そして、ノズル52の吸着と部品の吸着とに用いる負圧の発生源と供給流路とを共用する構成の場合、部品吸着によるエアのリークの影響がノズル52の吸着に及んで吸着力(保持力)が低下し、ノズル52が落下するおそれがある。本実施形態の圧力供給装置70では、ノズル52の吸着と部品の吸着とに用いる負圧の発生源および供給流路を別々に分けて構成するから、リークの影響がノズル52の吸着に及ぶのを防止することができる。
【0028】
また、上述したように、部品の吸着(保持)では、部品種によってエアがリークする可能性があり、リークを許容しつつ部品を適切に保持するためには負圧の安定供給が必要となる。ここで、エジェクタ88は、一般的に真空ポンプよりもコンパクトな構成で安価であるものの、発生させる負圧の安定度は真空ポンプの方が高いものである。このため、必要な負圧流量をエジェクタ88が真空ポンプと同等に供給するためには、体格の大きなエジェクタ88が必要になり、ヘッドユニット50(ヘッド本体50a)への搭載が困難となる。また、エジェクタ88に供給する正圧流量が増加するため、部品実装装置10の消費流量が増加してしまう。また、部品実装装置10内に正圧を使用して動作するユニットがあった場合にはユニットが動作をするたびに正圧流量が変動して、エジェクタ88に供給される正圧が安定しないため、エジェクタ88によって発生する負圧も安定しない。そこで、本実施形態の圧力供給装置70では、部品の吸着に真空ポンプからの負圧を用いることで、それらの問題が生じるのを防止しつつ部品の吸着を安定して行うことができる。このため、リークが生じやすい部品であっても、吸着中の部品の姿勢を安定させて、部品を適切に実装させることができる。
【0029】
一方、部品の保持に対しノズル52の保持では、ヘッドユニット50のノズル保持部51(凹部51b)とノズル52のフランジ部52bの上面とで形成される負圧室が密閉状態となるからリークすることが殆どない。このため、小流量でノズル52の保持が可能であり、エジェクタ88を部品の保持に使用する場合に比べて小さいものを選択することが可能となる。本実施形態の圧力供給装置70では、ノズル52の吸着(保持)にエジェクタ88で発生させた負圧を用いるから、部品の吸着とノズル52の吸着とにそれぞれ真空ポンプを設けるものに比して、装置のコンパクト化とコスト低減を図ることができる。さらに、エジェクタ88は、ヘッドユニット50のヘッド本体50aに設けられるから、例えば部品実装装置10の基台12など、ヘッド本体50a以外に設けられる構成に比して、ノズル保持流路78が長くなるのを防止することができる。このため、エジェクタ88からノズル保持流路78を介してノズル保持部51に負圧を適切に作用させることができるから、ノズル52の吸着を安定させることができる。なお、ノズル52(フランジ部52b)の吸着には磁石の吸引力も用いられる。これらのことから、エジェクタ88で発生させた負圧でもノズル52の吸着に問題が生じることはない。
【0030】
さらに、圧力供給装置70は、部品吸着用の負圧の供給流路として、大流量流路74と小流量流路75との2つを有する。本実施形態では、比較的大径のノズル52で部品を吸着する場合には、切替バルブ81が負圧流路72と大流量流路74とを連通する状態とすると共に切替バルブ83が負圧流路72と小流量流路75とを連通する状態とする。これにより、大流量流路74と小流量流路75との2つの供給流路から負圧を大径のノズル52に供給することができる。このため、大流量流路74のみから負圧を供給する場合に比して、より大流量(最大流量)の負圧を大径のノズル52に供給することができる。また、比較的小径のノズル52で部品を吸着する場合には、切替バルブ81が負圧流路72と大流量流路74とを遮断して大流量流路74を連絡流路76と連通する状態とすると共に切替バルブ83が負圧流路72と小流量流路75とを連通する状態とする。なお、切替バルブ82は、連絡流路76を大気と遮断する状態とする。これにより、小流量流路75から小流量の負圧を小径のノズル52に供給することができる。
【0031】
ここで、大径のノズル52を用いる場合、大流量であってもリーク発生時の圧力低下が比較的大きいから、制御装置90は、圧力センサ74aの検出値に基づいて、ノズル52で吸着している部品の有無を検出することができる。一方で、小径のノズル52を用いる場合、大流量の負圧が供給されているとリーク発生時の圧力低下が小さいから、制御装置90は、圧力センサ74aの検出値に基づいて部品の有無を適切に検出できないおそれがある。そこで、本実施形態では、小径のノズル52を用いる場合に小流量流路75のみから小流量の負圧を供給することで、リーク発生時の圧力低下を検出し易くするのである。これにより、小径のノズル52を用いる場合でも、制御装置90が圧力センサ74aの検出値に基づいて部品の有無を適切に検出することができる。また、大径のノズル52を用いる場合、大流量流路74と小流量流路75との2つの供給流路から負圧を供給することで、必要な負圧に到達するのを早くして、部品の吸着を確実且つ速やかに行わせることができる。
【0032】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の大流量流路74と小流量流路75が本開示のノズル用流路に相当し、エジェクタ流路77(正圧流路73)が正圧流路に相当し、エジェクタ88がエジェクタに相当し、ノズル保持流路78が保持部用流路に相当する。切替バルブ81,83が第1切替部に相当し、切替バルブ84が第2切替部に相当する。ヘッドユニット50がヘッドに相当し、移動装置40が移動部に相当する。
【0033】
以上説明した実施形態の部品実装装置10は、真空ポンプの作動により発生した負圧をノズル52に供給可能な大流量流路74および小流量流路75と、エジェクタ88の作動により発生した負圧をノズル保持部51に供給可能なノズル保持流路78とを備える。これにより、部品の吸着でリークが生じてもノズル52の吸着に影響が及ぶのを防止することができる。また、負圧源の両方を真空ポンプとするものに比してコンパクト且つ安価な構成とすることができる。さらに、真空ポンプからの負圧を部品の吸着に用いるため、部品の吸着を安定させて、リークが生じやすい部品の落下などを防止することができる。これらのことから、装置の大型化を防止しつつ部品の吸着とノズル52の吸着とを適切に行うことができる。
【0034】
また、部品の吸着解除やノズル52の吸着解除に用いられる正圧の供給路と、エジェクタ88が負圧を発生させるための正圧の供給路とに、正圧流路73を共用するから、エジェクタ88専用の正圧流路を設けるものに比してコンパクトな構成とすることができる。
【0035】
また、ヘッドユニット50(ヘッド本体50a)に圧力供給装置70を備えることで、ノズル保持流路78が長くなるのを抑えることができるから、エジェクタ88からノズル保持部51への負圧の供給を安定させることができる。
【0036】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、ヘッドユニット50が圧力供給装置70を備える(収容する)ものとしたが、これに限られず、圧力供給装置70の構成の一部(切替バルブ81~87、エジェクタ88、減圧バルブ89の一部)が、X軸スライダ44やY軸スライダ48、部品実装装置10の基台12内などに収容されていてもよい。ただし、エジェクタ88が負圧をより確実に作用させるために、実施形態のようにするものが好ましい。
【0038】
実施形態では、正圧流路73からの正圧を、部品の吸着解除およびノズル52の吸着解除と、エジェクタ88による負圧の発生とに共用したが、これに限られない。部品の吸着解除やノズル52の吸着解除に用いられる正圧と、エジェクタ88による負圧の発生に用いられる正圧とを、それぞれ別々に供給する流路を設けてもよい。
【0039】
実施形態では、部品吸着用の負圧供給流路として、大流量流路74および小流量流路75を備えたが、これに限られず、1の流路(例えば大流量流路74)のみを備えるものでもよい。
【0040】
実施形態では、所定サイズ以上のノズル52で部品を吸着する場合に大流量流路74と小流量流路75との両方の流路から負圧を供給したが、これに限られず、大流量流路74のみから負圧を供給してもよい。
【0041】
実施形態では、部品実装装置10が負圧源71Aとしての真空ポンプを1台備えたが、これに限られず、真空ポンプを2台備えてもよい。例えば、負圧源71Aとして、切替バルブ81への負圧流路72に接続された負圧ポンプと、切替バルブ83への負圧流路に接続された負圧ポンプとの2台を備えてもよい。そのようにする場合、切替バルブ81への負圧流路72と切替バルブ83への負圧流路とが、互いに接続されていてもよいし、互いに独立していてもよい。
【0042】
ここで、本開示の部品実装装置は、以下のように構成してもよい。例えば、本開示の部品実装装置において、前記真空ポンプと前記ノズル用流路とを連通し前記正圧流路と前記ノズル用流路との連通を遮断する状態と、前記真空ポンプと前記ノズル用流路との連通を遮断し前記正圧流路と前記ノズル用流路とを連通する状態とを切り替える第1切替部と、前記正圧流路と前記エジェクタとを連通し前記正圧流路と前記保持部用流路との連通を遮断する状態と、前記正圧流路と前記エジェクタとの連通を遮断し前記正圧流路と前記保持部用流路とを連通する状態とを切り替える第2切替部と、を備えるものとしてもよい。こうすれば、部品の吸着解除やノズルの吸着解除に用いられる正圧の供給路と、エジェクタが負圧を発生させるための正圧の供給路とを共用することができるから、エジェクタ専用に正圧流路を設けるものに比してコンパクトな構成とすることができる。
【0043】
本開示の部品実装装置において、前記ノズル用流路および前記正圧流路の少なくとも一部と、前記エジェクタと、前記保持部用流路とが前記ヘッドに設けられ、前記ヘッドを水平方向に移動させる移動部を備え、前記ノズルで吸着した部品を基板に実装するものとしてもよい。ヘッドにエジェクタや保持部用流路が設けられることで、保持部用流路が長くなるのを抑えて、エジェクタから保持部への負圧の供給を安定させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示は、部品実装装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 部品実装装置、12 基台、20 部品供給装置、22 リール、30 基板搬送装置、32 コンベアベルト、40 移動装置、42,46 ガイドレール、44 X軸スライダ、45 X軸アクチュエータ、48 Y軸スライダ、49 Y軸アクチュエータ、50 ヘッドユニット、50a ヘッド本体、51 ノズル保持部、51a 中心孔、51b 凹部、51c 連通孔、52 ノズル、52a 吸着口、52b フランジ部、54 R軸アクチュエータ、56 Z軸アクチュエータ、57 Z軸スライダ、62 パーツカメラ、64 マークカメラ、66 ノズルストッカ、70 圧力供給装置、71A 負圧源、71B 正圧源、72 負圧流路、73 正圧流路、74 大流量流路、74a,78a 圧力センサ、75 小流量流路、76 連絡流路、77 エジェクタ流路、78 ノズル保持流路、79 減圧流路、81~87 切替バルブ、88 エジェクタ、89 減圧バルブ、90 制御装置、91 CPU、92 ROM、93 HDD、94 RAM、95 入出力インタフェース、96 バス、S 基板。
図1
図2
図3
図4