IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーウェーブの特許一覧

<>
  • 特開-駆動アクチュエータ及びロボット 図1
  • 特開-駆動アクチュエータ及びロボット 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175294
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】駆動アクチュエータ及びロボット
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/24 20160101AFI20231205BHJP
   H02K 11/22 20160101ALI20231205BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20231205BHJP
   H02K 7/102 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H02K11/24
H02K11/22
H02K7/116
H02K7/102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087668
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】棚田 瑞樹
【テーマコード(参考)】
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
5H607AA00
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC01
5H607DD03
5H607DD08
5H607DD19
5H607EE07
5H607EE10
5H607EE35
5H607FF01
5H607GG01
5H607GG08
5H607HH01
5H607HH02
5H607JJ05
5H607JJ06
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB06
5H611QQ03
5H611QQ08
5H611RR00
5H611RR04
(57)【要約】
【課題】小型化を図りながら、減速機に取り付けられたセンサに対する磁気の影響を低減させることができる駆動アクチュエータ及びロボットを提供する。
【解決手段】駆動アクチュエータ20は、ロータ32及びステータ33を有し、ロータ32及びステータ33が発生する磁界により回転軸31を回転させるモータ21と、回転軸31の回転を減速させる減速機23と、回転軸31の回転を停止させるブレーキ装置22と、回転軸31の回転位置を検出するエンコーダ24と、を備える。また、減速機23には、歪みセンサ68が取り付けられている。モータ21のロータ32及びステータ33と、減速機23と、ブレーキ装置22と、エンコーダ24とは、回転軸31の軸方向に並んでいるとともに、ロータ32及びステータ33と減速機23との間にブレーキ装置22が位置するように配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ及びステータを有し、前記ロータ及び前記ステータが発生する磁界により回転軸を回転させるモータと、
前記回転軸の回転を減速させる減速機と、
前記回転軸の回転を停止させるブレーキ装置と、
前記回転軸の回転位置を検出するエンコーダと、を備え、
前記減速機にはセンサが取り付けられている駆動アクチュエータであって、
前記ロータ及び前記ステータと、前記減速機と、前記ブレーキ装置と、前記エンコーダとは、前記回転軸の軸方向に並んでいるとともに、前記ロータ及び前記ステータと前記減速機との間に前記ブレーキ装置及び前記エンコーダの少なくともいずれかが位置するように配置されている、駆動アクチュエータ。
【請求項2】
前記ブレーキ装置は電磁式であり、磁性材料により形成されブレーキコイルが内部に収容されたハウジングを有しており、
前記ロータ及び前記ステータと前記減速機との間には、前記ブレーキ装置が配置されている、請求項1に記載の駆動アクチュエータ。
【請求項3】
前記減速機は、前記回転軸を中心とする円環状に形成され、
前記ハウジングは、前記回転軸を囲む円環状に形成され、前記軸方向から見て前記センサと重複している、請求項2に記載の駆動アクチュエータ。
【請求項4】
関節部を回転駆動する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の駆動アクチュエータを備える、ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動アクチュエータ及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
多関節型のロボットには、各関節ごとに、関節を回転駆動する駆動アクチュエータが設けられている。駆動アクチュエータは、回転軸を回転させるモータを備える。モータは、回転軸の外周側に固定されたロータと、ロータの外周側に設けられたステータとを有している。ロータは、例えば永久磁石を含んで構成され、ステータは、例えば電磁石を含んで構成されている。ステータに通電が行われると回転磁界が発生し、その回転磁界によりロータが回転し、ひいては回転軸が回転する。
【0003】
駆動アクチュエータは、モータに加えて、回転軸の回転速度を減速させる減速機と、回転軸の回転を停止させるブレーキ装置と、回転軸の回転位置を検出するエンコーダとをさらに備えている。特許文献1の駆動アクチュエータでは、モータのロータ及びステータと、減速機と、ブレーキ装置と、エンコーダとが回転軸の軸方向に並んで配置されている。詳しくは、回転軸の軸方向に沿って出力側から反出力側に向けて、減速機、ロータ及びステータ、ブレーキ装置、エンコーダの順に並んでいる。
【0004】
また、駆動アクチュエータの減速機には、歪みセンサ等のセンサが取り付けられる場合がある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-035372号公報
【特許文献2】特開2004-198400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ロボットの省スペース化等のために、駆動アクチュエータを小型化することが求められている。ここで、上記特許文献1の駆動アクチュエータでは、モータのロータ及びステータと減速機とが隣接配置されているため、駆動アクチュエータを小型化しようとすると、ロータ及びステータと減速機とが近接して配置されることになる。しかしながら、それらが近接配置されると、減速機にセンサが取り付けられている場合、センサがロータ及びステータから発生する磁気の影響を受けてしまうおそれがある。例えば、磁気の影響により電磁誘導が生じて、センサの出力値にノイズが発生したりするおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、小型化を図りながら、減速機に取り付けられたセンサに対する磁気の影響を低減させることができる駆動アクチュエータ及び、その駆動アクチュエータを備えるロボットを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明の駆動アクチュエータは、ロータ及びステータを有し、前記ロータ及び前記ステータが発生する磁界により回転軸を回転させるモータと、前記回転軸の回転を減速させる減速機と、前記回転軸の回転を停止させるブレーキ装置と、前記回転軸の回転位置を検出するエンコーダと、を備え、前記減速機にはセンサが取り付けられている駆動アクチュエータであって、前記ロータ及び前記ステータと、前記減速機と、前記ブレーキ装置と、前記エンコーダとは、前記回転軸の軸方向に並んでいるとともに、前記ロータ及び前記ステータと前記減速機との間に前記ブレーキ装置及び前記エンコーダの少なくともいずれかが位置するように配置されている。
【0009】
第1の発明によれば、モータのロータ及びステータと、減速機との間にブレーキ装置及びエンコーダの少なくともいずれかが配置されている。この場合、磁気の発生源であるロータ及びステータと減速機とを遠ざけることができるため、減速機に取り付けられたセンサに対する磁気の影響を低減させることができる。
【0010】
また、ロータ及びステータと、減速機と、ブレーキ装置と、エンコーダとについて、互いに隣り合うもの同士を近接させても、ロータ及びステータと減速機とについては互いに遠ざけることができる。そのため、駆動アクチュエータの小型化を図りながら、センサに対する磁気の影響を低減させることができる。
【0011】
第2の発明の駆動アクチュエータは、前記ブレーキ装置は電磁式であり、磁性材料により形成されブレーキコイルが内部に収容されたハウジングを有しており、前記ロータ及び前記ステータと前記減速機との間には、前記ブレーキ装置が配置されている。
【0012】
電磁式のブレーキ装置では、ブレーキコイルへの通電時に発生する磁束がブレーキ装置の外部に漏れるのを防止するため、ブレーキコイルを収容するハウジングが鉄、鋼等の磁性材料により形成されている。そこで、第2の発明では、かかる点に着目し、ロータ及びステータと減速機との間に電磁式のブレーキ装置を配置している。この場合、ロータ及びステータから発生する磁気をブレーキ装置のハウジングにより遮断する効果(つまり、磁気シールド効果)を得ることができる。そのため、減速機に取り付けられたセンサに対する磁気の影響をより低減させることができる。
【0013】
ところで、ロータ及びステータと減速機との間に磁気シールド部材を別途配置しても、上記の効果を得ることは可能である。ただし、その場合、磁気シールド部材を追加することにより、コストの増大を招いたり、駆動アクチュエータの小型化が妨げられたりするおそれがある。その点、上述の構成によれば、こうした不都合を招くことなく、上記の効果を得ることが可能となる。
【0014】
第3の発明の駆動アクチュエータは、前記減速機は、前記回転軸を中心とする円環状に形成され、前記ハウジングは、前記回転軸を囲む円環状に形成され、前記センサと前記軸方向から見て重複している。
【0015】
第3の発明によれば、ブレーキ装置のハウジングが回転軸を囲む円環状に形成されている。また、ハウジングは、回転軸の軸方向から見て、円環状の減速機に取り付けられたセンサと重複している。この場合、ハウジングによる磁気シールド効果を好適に得ることができる。
【0016】
また、減速機が回転軸の周方向に回転すると、センサも同方向に回転移動することになる。その点、上記の構成では、センサが回転方向のいずれの位置にある場合にも、センサとハウジングとが回転軸の軸方向に重複することになる。そのため、ハウジングによる磁気シールド効果を安定して得ることができる。
【0017】
第4の発明のロボットは、関節部を回転駆動する第1乃至第3のいずれかの発明の駆動アクチュエータを備える。
【0018】
第4の発明によれば、ロボットの関節部を回転駆動する駆動アクチュエータにおいて、上記第1の発明の効果を得ることができる。また、駆動アクチュエータの小型化を図ることで、ロボットの省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ロボットの概要を示す側面図。
図2】駆動アクチュエータの内部構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1に示すように、ロボット10は、6つの関節K1~K6を有する6軸の垂直多関節型ロボットである。ロボット10は、所定の設置面(床面等)に設置されるベース11と、ベース11により支持される複数(6つ)のアーム12~17とを備える。複数のアーム12~17には、ショルダ部12、下アーム13、第1上アーム14、第2上アーム15、手首部16、及びフランジ17が含まれている。
【0022】
ショルダ部12は、ベース11により水平方向に回転可能に支持されている(J1軸)。下アーム13は、ショルダ部12により上下方向に回転可能に支持されている(J2軸)。第1上アーム14は、下アーム13により上下方向に回転可能に支持されている(J3軸)。第2上アーム15は、第1上アーム14により捻り回転可能に支持されている(J4軸)。手首部16は、第2上アーム15により上下方向に回転可能に支持されている(J5軸)。フランジ17は、手首部16により捻り回転可能に支持されている(J6軸)。図示は省略するが、フランジ17には、エンドエフェクタが取り付けられる。
【0023】
ロボット10の各関節K1~K6には、関節K1~K6を回転駆動する駆動アクチュエータ20が設けられている。この駆動アクチュエータ20により関節K1~K6が回転駆動されることにより、アーム12~17が回転動作するようになっている。
【0024】
続いて、駆動アクチュエータ20の構成について図2に基づき説明する。なお、各関節K1~K6の駆動アクチュエータ20は基本的に同じ構造を有している。
【0025】
図2に示すように、駆動アクチュエータ20は、モータ21と、ブレーキ装置22と、減速機23と、エンコーダ24とを備えている。モータ21は、回転軸31と、ロータ32及びステータ33とを有している。なお、回転軸31の軸方向における一方側は、回転軸31の回転が出力される出力側となっており、図2では、その出力側が上側となっている。
【0026】
ロータ32は、永久磁石により円環状に形成され、回転軸31の外周側に固定されている。詳しくは、回転軸31は、他の部分よりも外径が大きい大径部分31aを有し、その大径部分31aにロータ32が固定されている。ステータ33は、コイル及びコア等により構成される電磁石を含み、円環状に形成されている。ステータ33は、ロータ32の外周側においてロータ32を囲んだ状態で配置されている。この場合、ロータ32とステータ33とは、回転軸31と同軸に配置されている。
【0027】
ステータ33は、ロータ32とともにケーシング25の内部に収容されている。ケーシング25は、円筒状をなすケーシング本体26と、ケーシング本体26の両端の開口をそれぞれ塞ぐように設けられた略円板状の一対のカバー27,28とを有する。ケーシング本体26(筒状部に相当)は、回転軸31と同軸に配置され、そのケーシング本体26に各カバー27,28が固定されている。また、各カバー27,28の中央部には、回転軸31が貫通している。なお、各カバー27,28のうち、カバー27が回転軸31の軸方向における出力側に配置され、カバー28が出力側とは反対側である反出力側(図2では下側)に配置されている。
【0028】
ステータ33は、ケーシング本体26の内側に圧入されており、その圧入によりケーシング本体26に固定されている。ステータ33のコイルに対して通電が行われると回転磁界が発生し、その回転磁界によりロータ32が回転し、ひいては回転軸31が回転する。つまり、回転軸31は、ロータ32及びステータ33が発生する磁界により回転する。
【0029】
回転軸31は、その軸方向に離間して配置された複数のベアリング36,37により回転可能に支持されている。各ベアリング36,37のうち、上記軸方向の出力側に配置されたベアリング36はケーシング25のカバー27により支持されている。また、上記軸方向の反出力側に配置されたベアリング37はケーシング25のカバー28により支持されている。
【0030】
ブレーキ装置22は、回転軸31の回転を停止させるものであり、電磁式のブレーキ装置からなる。ブレーキ装置22は、全体として円環状に形成され、その内側に回転軸31を挿通した状態で設けられている。また、ブレーキ装置22は、回転軸31の軸方向においてモータ21のロータ32及びステータ33よりも出力側に配置されている。
【0031】
ブレーキ装置22は、ロータ32及びステータ33とともにケーシング25内に収容されている。ブレーキ装置22は、例えばケーシング25のカバー27にボルトにより固定されている。
【0032】
ブレーキ装置22は、ブレーキコイル51と、ブレーキコイル51を収容するハウジング52と、可動板53と、摩擦板54と、固定板55とを有している。ハウジング52は、円環状に形成され、その内側に回転軸31が挿通されている。この場合、ハウジング52は、回転軸31と同軸に配置されている。また、ハウジング52は、鉄、鋼等の磁性材料により形成され、例えば低炭素鋼により形成されている。ブレーキコイル51は、ハウジング52の周方向に巻回され、その全体がハウジング52により覆われた状態となっている。これにより、ブレーキコイル51への通電時に発生する磁束の通り道をハウジング52が形成するとともに、磁束がハウジング52の外部へ漏れることが防止されている。
【0033】
可動板53と摩擦板54と固定板55とは、円板状に形成され、ハウジング52に対して反出力側(つまり、ロータ32及びステータ33の側)に配置されている。可動板53と摩擦板54と固定板55とは、その板厚方向を回転軸31の軸線方向に向けて、上記の順でハウジング52側(出力側)から反出力側に向けて回転軸31の軸方向に並んでいる。また、これら各板53~55の中央部には回転軸31が貫通している。
【0034】
可動板53は、回転軸31の軸方向に変位可能に設けられている。可動板53は、摩擦板54に向けてばね材(図示略)により常時付勢されている。また、可動板53は、鉄、鋼等の磁性材料により形成されている。摩擦板54は、その内周部において回転軸31に固定されている。また、固定板55は、その外周部においてハウジング52にスペーサ(図示略)を介して固定されている。
【0035】
上記構成のブレーキ装置22では、ブレーキコイル51に通電が行われると、磁界が発生し、それにより可動板53がばね材の付勢力に抗してハウジング52側に引き寄せられる。この場合、可動板53と摩擦板54とは互いに離間する状態となる。これにより、摩擦板54が回転可能となり、ひいては回転軸31が回転可能となる。したがって、この状態がブレーキオフの状態(図2の状態)である。
【0036】
それに対して、ブレーキコイル51への通電が行われていない場合には、磁界が発生しないため、可動板53がばね材の付勢力により摩擦板54に押し付けられ、摩擦板54が可動板53と固定板55との間に挟まれた状態となる。この場合、摩擦板54に対する摩擦力が発生し、その摩擦力により摩擦板54に制動力が付与される。これにより、摩擦板54の回転が禁止され、ひいては回転軸31の回転が禁止される。したがって、この状態がブレーキオンの状態である。
【0037】
減速機23は、回転軸31の回転を所定の減速比で減速し出力するものである。減速機23は、円環状(円筒状)に形成され、回転軸31と同軸に配置されている。減速機23は、回転軸31の軸方向においてブレーキ装置22よりも出力側に配置され、ケーシング25のカバー27を挟んでブレーキ装置22と隣接している。
【0038】
減速機23は、波動歯車減速機であり、例えばハーモニックドライブ(登録商標)構造を有している。具体的には、減速機23は、ウェーブジェネレータ61と、フレクスプライン62と、サーキュラスプライン63とを有している。ウェーブジェネレータ61は、楕円状のカムの外周にボールベアリングが組み付けられることにより構成されている。また、ウェーブジェネレータ61は、回転軸31の出力側の端部に固定されている。
【0039】
フレクスプライン62は、弾性体により薄肉に形成されている。フレクスプライン62は、円筒状をなす胴部62aと、胴部62aの軸線方向の一端部から胴部62aの外方に延びる円環状のフランジ部62bとを有する。胴部62aはウェーブジェネレータ61の外周側に配置され、その配置状態においてフランジ部62bが胴部62aに対して反出力側(換言するとブレーキ装置22側)に位置している。また、胴部62aは、ウェーブジェネレータ61により楕円状に撓められている。
【0040】
サーキュラスプライン63は、剛体により円環状に形成され、フレクスプライン62の胴部62aの外周側に配置されている。胴部62aの外周部には多数の外歯(図示略)が形成され、サーキュラスプライン63の内周部には多数の内歯(図示略)が形成されている。内歯は外歯よりも所定数(例えば2つ)だけ数が多くなっている。サーキュラスプライン63の内歯と胴部62aの外歯とは、胴部62aが楕円状に撓められていることにより、楕円の長軸の部分でのみ噛み合うようになっている。
【0041】
サーキュラスプライン63の外周側には、軸受65が設けられている。軸受65は、クロスローラベアリングからなり、ケーシング25のカバー27に固定されている。
【0042】
上記構成の減速機23では、回転軸31が回転すると、回転軸31と一体でウェーブジェネレータ61が回転する。そして、その回転がフレクスプライン62を介してサーキュラスプライン63に伝達される。これにより、回転軸31の回転に対してサーキュラスプライン63が所定の減速比で減速されて回転する。そして、その減速された回転が出力先に出力される。
【0043】
減速機23のフレクスプライン62には、歪みセンサ68(歪みゲージ)が取り付けられている。フレクスプライン62には、ウェーブジェネレータ61からサーキュラスプライン63に伝達される伝達トルクによりねじり変形が生じる。歪みセンサ68(センサに相当)は、そのねじり変形によりフレクスプライン62に生じる歪みを検出するものとなっている。
【0044】
歪みセンサ68は、フレクスプライン62のフランジ部62bに取り付けられている。この場合、歪みセンサ68は、減速機23の外周部であって、かつ減速機23のブレーキ装置22側の端部となる位置に取り付けられている。歪みセンサ68は、フランジ部62bの周方向に所定の間隔(例えば等間隔)で複数配置されている。各歪みセンサ68は、ロボット10に内蔵された制御装置(図示略)と接続されている。歪みセンサ68による検出結果は制御装置に出力され、制御装置では、その出力された検出結果(歪み量)に基づき、上記伝達トルクひいては出力トルクが検出されるようになっている。
【0045】
エンコーダ24は、回転軸31の回転位置を検出するものであり、例えば光学式のロータリエンコーダからなる。エンコーダ24は、回転軸31の軸方向においてロータ32及びステータ33よりも反出力側に配置されている。エンコーダ24は、回転軸31の反出力側の端部に取り付けられたエンコーダディスク71と、エンコーダディスク71を囲って設けられるカバー部72とを有している。エンコーダディスク71は、円盤状に形成され、回転軸31と同軸に配置されている。
【0046】
上述した構成によれば、減速機23と、ブレーキ装置22と、モータ21のロータ32及びステータ33と、エンコーダ24とが、回転軸31の軸方向に沿って出力側から反出力側に向けてこの順で並んでいる。この場合、減速機23と、ロータ32及びステータ33との間にブレーキ装置22が配置されている。そのため、減速機23と、ロータ32及びステータ33とは、ブレーキ装置22を挟んで互いに離間している。
【0047】
ブレーキ装置22のハウジング52は、ロータ32及びステータ33と、減速機23(フレクスプライン62)に取り付けられた各歪みセンサ68との間に介在された状態となっている。ハウジング52は、その外周面が各歪みセンサ68よりも径方向の外側に位置し、その内周面が各歪みセンサ68よりも径方向の内側に位置している。そのため、各歪みセンサ68は、回転軸31の軸方向から見てハウジング52と重複している。
【0048】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0049】
モータ21のロータ32及びステータ33と減速機23との間にブレーキ装置22が配置されている。この場合、磁気の発生源であるロータ32及びステータ33と減速機23とを遠ざけることができる。そのため、減速機23に取り付けられた歪みセンサ68に対する磁気の影響を低減させることができる。
【0050】
また、ロータ32及びステータ33と、減速機23と、ブレーキ装置22と、エンコーダ24とについて、互いに隣り合うもの同士を近接させても、ロータ32及びステータ33と減速機23とについては互いに遠ざけることができる。そのため、駆動アクチュエータ20の小型化を図りながら、歪みセンサ68に対する磁気の影響を低減させることができる。
【0051】
ところで、ロータ32及びステータ33と減速機23との間にエンコーダ24を配置することによっても、ロータ32及びステータ33と減速機23とを遠ざけることができるため、上記の効果を得ることは可能である。しかしながら、ロータ32、ステータ33及び減速機23はいずれも熱を発生する発熱源であるため、ロータ32及びステータ33と減速機23との間にエンコーダ24を配置する構成では、エンコーダ24が熱の影響を受け、誤検出を招く等の問題が発生するおそれがある。その点、ロータ32及びステータ33と減速機23との間にブレーキ装置22を配置した上記の構成では、こうした問題が発生するのを回避しながら、上記の効果を得ることが可能となる。
【0052】
また、駆動アクチュエータ20の小型化を図ることにより、ロボット10の省スペース化を図る等の利点を得ることもできる。
【0053】
電磁式のブレーキ装置22では、ブレーキコイル51への通電時に発生する磁束がブレーキ装置22の外部に漏れるのを防止するため、ブレーキコイル51を収容するハウジング52が鉄、鋼等の磁性材料により形成されている。そこで、上記の実施形態では、このような点に着目し、ロータ32及びステータ33と減速機23との間に電磁式のブレーキ装置22を配置している。この場合、ロータ32及びステータ33から発生する磁気をブレーキ装置22のハウジング52により遮断する効果(つまり、磁気シールド効果)を得ることができる。そのため、減速機23に取り付けられた歪みセンサ68に対する磁気の影響をより低減させることができる。また、磁気シールド部材を別途追加しなくても、かかる効果を得ることができるため、磁気シールド部材を別途追加する場合と比べ、コストの低減等を図ることができる利点もある。
【0054】
ブレーキ装置22のハウジング52は、回転軸31を囲む円環状に形成されている。また、ハウジング52は、回転軸31の軸方向から見て、円環状の減速機23に取り付けられた歪みセンサ68と重複している。この場合、ハウジング52による磁気シールド効果を好適に得ることができる。
【0055】
また、減速機23が回転軸31の周方向に回転すると、歪みセンサ68も同方向に回転移動することになる。その点、上記の構成では、歪みセンサ68が回転方向のいずれの位置にある場合にも、歪みセンサ68とハウジング52とが回転軸31の軸方向に重複することになる。そのため、ハウジング52による磁気シールド効果を安定して得ることができる。
【0056】
減速機23において、ウェーブジェネレータ61からサーキュラスプライン63へのトルクの伝達を行うフレクスプライン62は、その伝達する伝達トルクによりねじれ変形が生じる。そのため、フレクスプライン62には、そのねじれに伴い生じた歪みを検出する歪みセンサ68が取り付けられることが多い。具体的には、フレクスプライン62は、回転軸31と同軸となる円筒状をなす胴部62aと、胴部62aにおける(回転軸31の軸方向の)ブレーキ装置22側(換言するとロータ32及びステータ33の側)の端部から側方に延びるフランジ部62bとを有し、そのフランジ部62bに歪みセンサ68が取り付けられることが多い。
【0057】
しかしながら、上記のような歪みセンサ68の取付構成では、ロータ32及びステータ33と減速機23とが隣接配置される従来の構成(上述した特許文献1の構成)の場合、歪みセンサ68がロータ32及びステータ33と極めて近接配置されることになる。そのため、歪みセンサ68がロータ32及びステータ33から磁気の影響を大きく受けてしまうおそれがある。その点、上記の実施形態では、こうした歪みセンサ68の取付構成において、ロータ32及びステータ33と減速機23との間にブレーキ装置22を配置し、ロータ32及びステータ33と減速機23とを遠ざけている。そのため、かかる歪みセンサ68の取付構成においても、歪みセンサ68に対する磁気の影響を好適に低減させることが可能となる。
【0058】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、モータ21のロータ32及びステータ33と減速機23との間にブレーキ装置22を配置したが、これを変更して、ロータ32及びステータ33と減速機23との間にエンコーダ24を配置してもよい。この場合にも、磁気発生源であるロータ32及びステータ33と減速機23とを遠ざけることができるため、減速機23に取り付けられた歪みセンサ68に対する磁気の影響を低減させることができる。
【0060】
また、この場合、エンコーダ24のエンコーダディスク71を鉄等の磁性材料により形成してもよい。その場合、エンコーダディスク71による磁気シールド効果を得ることができるため、歪みセンサ68に対する磁気の影響をより低減させることができる。
【0061】
・ロータ32及びステータ33と減速機23との間にブレーキ装置22とエンコーダ24とをそれぞれ配置してもよい。その場合、ロータ32及びステータ33と減速機23とをより遠ざけることができる。
【0062】
・減速機23には、加速度センサ、温度センサ等、歪みセンサ68以外のセンサが取り付けられる場合がある。そのような場合にも本発明を適用することにより、センサに対する磁気の影響を低減させることができる。なお、センサは、減速機23において、ウェーブジェネレータ61やサーキュラスプライン63等、フレクスプライン62以外の部材に取り付けられてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、ロボット10の関節K1~K6を回転駆動する駆動アクチュエータ20に本発明を適用したが、例えば回転ステージを回転駆動する駆動アクチュエータ等、ロボット10以外で用いられる駆動アクチュエータに本発明を適用してもよい。
【0064】
・上記実施形態では、6つの関節K1~K6を有する6軸ロボットに本発明を適用したが、5軸以下又は7軸以上の軸数のロボットに本発明を適用してもよい。また、関節を1つだけ有する1軸ロボットに本発明を適用してもよい。また、垂直多関節型のロボットに限らず、水平多関節型のロボットに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…ロボット、20…駆動アクチュエータ、21…モータ、22…ブレーキ装置、23…減速機、24…エンコーダ、31…回転軸、32…ロータ、33…ステータ、51…ブレーキコイル、52…ハウジング、68…歪みセンサ(センサ)、K1~K6…関節(関節部)。
図1
図2