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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175303
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/04 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
B25J15/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087682
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】山中 晶貴
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CY12
3C707CY13
3C707CY36
3C707DS01
3C707GS01
3C707KT01
3C707KT05
3C707MT01
(57)【要約】
【課題】ロボットアームの手先部材の大型化を抑制しつつ、手先部材に対してカメラやセンサ等の追加装置の着脱を簡単に行うことができるロボットを提供する。
【解決手段】ロボットは、ロボットアームの手先を構成する手先部材と、追加装置を取り付け可能な取付部を有するとともに、手先部材に着脱可能で手先部材に装着された状態で手先部材の外周を囲む環状に構成される環状部材と、を備える。環状部材は、環状部材の環状の一部を形成する少なくとも2つの構成部を有し、構成部の内側に手先部材を配置した状態で隣接する構成部の端部を相互に接続することで構成部を閉じて手先部材を挟み込んで手先部材に装着可能に構成され、かつ、端部の接続を解除して当該端部を相互に離すことで構成部を開いて手先部材から取り外し可能に構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの手先を構成する手先部材と、
追加装置を取り付け可能な取付部を有するとともに、前記手先部材に着脱可能で前記手先部材に装着された状態で前記手先部材の外周を囲む環状に構成される環状部材と、を備え、
前記環状部材は、
前記環状部材の環状の一部を形成する少なくとも2つの構成部を有し、
前記構成部の内側に前記手先部材を配置した状態で隣接する前記構成部の端部を相互に接続することで前記構成部を閉じて前記手先部材を挟み込んで前記手先部材に装着可能に構成され、かつ、前記端部の接続を解除して当該端部を相互に離すことで前記構成部を開いて前記手先部材から取り外し可能に構成されている、
ロボット。
【請求項2】
前記構成部は、相互に分離可能に構成されている、
請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記環状部材は、2つの前記構成部の前記端部を相互に接続することで前記手先部材に装着可能に構成され、
2つの前記構成部は、それぞれ、各構成部の両端部のうち一方の前記端部に雌ねじ部を有し、他方の前記端部に雄ねじを通すことが可能な貫通穴を有して、同一形状に構成されている、
請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記構成部は、当該構成部の両端部のうち一方の前記端部を支点に回動することで他方の前記端部が離れる方向及び接近する方向へ開閉可能に構成されている、
請求項1に記載のロボット。
【請求項5】
前記環状部材は、前記手先部材に装着された状態において2つの前記構成部の前記端部の間に隙間が形成されるよう構成されている、
請求項1に記載のロボット。
【請求項6】
前記手先部材は、前記環状部材を固定するための構造を有していない、
請求項3から5のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項7】
前記環状部材は、前記環状部材の内周面から内側へ向かって突出した突起部を更に有し、
前記手先部材は、前記手先部材の外周面に設けられ前記突起部の挿入を受ける受け部を更に有し、
前記環状部材は、前記突起部が前記受け部に挿入さることで前記手先部材に対する位置が規制される、
請求項1に記載のロボット。
【請求項8】
前記手先部材は、前記手先部材の外周面から外側へ向かって突出した突起部を更に有し、
前記環状部材は、前記環状部材の内周面に設けられ前記突起部の挿入を受ける受け部を更に有するとともに、前記突起部が前記受け部に挿入さることで前記手先部材に対する位置が規制される、
請求項1に記載のロボット。
【請求項9】
少なくとも1つの前記突起部と、前記手先部材及び前記環状部材の周方向に沿って配置された2つ以上の前記受け部と、を備えている、
請求項7又は8に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばカメラやセンサ等のような追加装置を、ロボットアームの先端を構成する手先部材に取り付けて利用する利用場面が増えている。従来構成では、これらの追加装置をロボットアームのフランジ等の手先部材に取り付けるために、例えば手先部材と追加装置とを一体構造にしたり、例えばステー等のように手先部材とは別部品を用いたりしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-131761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば手先部材と追加装置とを一体構造にした場合、追加装置を変更するためには、手先部材自体を交換する必要があるため、非常に煩雑で手間のかかる作業が必要であった。また、ステー等の別部品を用いる場合、従来構成のステーは、手先部材の外側へ大きく迫り出した形状のものが一般的であり、その結果、ロボットアームの手先部分が大型化してしまうおそれがあった。そのため、従来構成では、着脱の作業性や手先部分の大型化の抑制等といった点において改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロボットアームの手先部材の大型化を抑制しつつ、手先部材に対してカメラやセンサ等の追加装置の着脱を簡単に行うことができるロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によるロボットは、ロボットアームの手先を構成する手先部材と、追加装置を取り付け可能な取付部を有するとともに、前記手先部材に着脱可能で前記手先部材に装着された状態で前記手先部材の外周を囲む環状に構成される環状部材と、を備える。前記環状部材は、前記環状部材の環状の一部を形成する少なくとも2つの構成部を有し、前記構成部の内側に前記手先部材を配置した状態で隣接する前記構成部の端部を相互に接続することで前記構成部を閉じて前記手先部材を挟み込んで前記手先部材に装着可能に構成され、かつ、前記端部の接続を解除して当該端部を相互に離すことで前記構成部を開いて前記手先部材から取り外し可能に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態によるロボットの一例を概略的に示す図
図2】第1実施形態によるロボットの一例について手先部材に環状部材が装着された状態を示す斜視図
図3】第1実施形態によるロボットの一例について手先部材から環状部材が取り外された状態を示す斜視図
図4】第1実施形態によるロボットの一例について手先部材に環状部材が装着された状態を示す縦断面図
図5】第1実施形態によるロボットの一例について図4のX5-X5線に沿って示す断面図
図6】第1実施形態によるロボットの一例について図5のX6部分を拡大して示す断面図
図7】第1実施形態によるロボットの一例について手先部材から環状部材が取り外れている状態を示すもので、図5と同位置で切断した断面図
図8】第1実施形態によるロボットの一例について図4のX8-X8線に沿って示す断面図
図9】第1実施形態によるロボットの一例について図8のX9部分を拡大して示す断面図
図10】第1実施形態によるロボットの一例について図4のX10部分を拡大して示す断面図
図11】第2実施形態によるロボットの一例について、手先部材に環状部材が装着された状態を示すもので、図5に相当する箇所を示す断面図
図12】第2実施形態によるロボットの一例について手先部材から環状部材が取り外れている状態を示すもので、図11と同位置で切断した断面図
図13】第3実施形態によるロボットの一例について手先部材に環状部材が装着された状態を示す縦断面図
図14】第3実施形態によるロボットの一例について図13のX14-X14線に沿って示す断面図
図15】第4実施形態によるロボットの一例について手先部材に環状部材が装着された状態を示す縦断面図
図16】第4実施形態によるロボットの一例について図15のX16-X16線に沿って示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態によるロボットについて図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態で実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。また、各実施形態で説明するロボットは、特に利用分野が限定されるものではないが、産業用のロボットにより好適である。
【0009】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態によるロボットについて、図1から図10を参照して説明する。図1に示すロボット10は、例えば多関節のロボットアーム20を有する垂直多関節のロボットで構成することができる。ロボット10は、例えば人との協働を前提とし、その動作環境に安全柵が不要となるように、動作速度や重量等が設計された、いわゆる人協働ロボットで構成することができる。なお、ロボット10は、例えば水平多関節型のロボットやパラレルリンク側のロボット、直交型のロボット等であっても良い。また、ロボット10は、安全柵の設置を前提とするものでも良い。
【0010】
ロボットアーム20は、手先部材21を有している。手先部材21は、ロボットアーム20の先端部つまり手先を構成する部材である。手先部材21は、例えば剛性を有する金属製であって、図2等に示すように中空円筒状のいわゆるフランジ形状の部材で構成することができる。手先部材21の先端面211には、図1に示すように、例えばロボット10に所定の作業を実行させるためのロボットハンドツール91が取り付けられる。また、詳細は図示しないが、手先部材21の内部には、例えばロボットハンドツール91に用いるための電気配線やエア配管等を通すための空間が形成されている。
【0011】
ロボット10は、環状部材30を備えている。環状部材30は、図1に示すように、例えば追加装置92を、ロボットアーム20の手先部材21に着脱可能に取り付ける機能を有する。追加装置92は、例えばカメラやセンサ等、ロボットハンドツール91を用いた作業に対して機能を追加するための装置である。
【0012】
環状部材30は、図2等に示すように、追加装置92を取り付け可能な取付部31を有するとともに、手先部材21に着脱可能に構成されている。そして、環状部材30は、手先部材21に装着された状態で、手先部材21の外周を囲む環状に構成される。本実施形態の場合、環状部材30は、図2及び図5等に示すように、手先部材21に装着された場合に、全体として円環状に構成される。環状部材30が手先部材21に装着された場合、環状部材30の内周面の少なくとも一部は、手先部材21の外周面に接触する。
【0013】
取付部31は、追加装置92を環状部材30に固定する機能を有する。本実施形態の場合、取付部31は、取付面311と、第1雌ねじ部312と、を有して構成されている。取付面311は、追加装置92を取付部31に取り付けた際に追加装置92が接触する面である。取付面311は、例えば円環状の外周面の一部を削ったような平坦面に形成されている。
【0014】
第1雌ねじ部312は、追加装置92を取付面311に固定するための雄ねじ等をねじ込むための雌ねじ穴である。第1雌ねじ部312は、例えば追加装置92を取り付けるための取付用雌ねじ部と称することができる。図5等に示すように、第1雌ねじ部312は、取付面311から取付面311に対して直角方向に向かって形成された雌ねじ穴で構成されている。第1雌ねじ部312は、1つの取付面311に対して複数、この場合2つ設けられている。2つの第1雌ねじ部312は、取付面311に対して直角方向に伸びかつ環状部材30の円環状の中心Pを通る中心線L1を挟んで両側に設けられている。
【0015】
環状部材30は、少なくとも2つの構成部301、302を有している。各構成部301、302は、環状部材30の環状の一部を構成する。本実施形態の場合、環状部材30は、各構成部301、302を組み合わせることで円環状に構成される。すなわち、環状部材30は、各構成部301、302の内側に手先部材21を配置した状態で、手先部材21の外周面の周方向に隣接する各構成部301、302の端部33を相互に接続することで、構成部301、302を閉じて手先部材21を挟み込んで手先部材21に装着可能に構成されている。
【0016】
また、環状部材30は、各構成部301、302の端部33の接続を解除して当該端部33を相互に離すことで各構成部301、302を開くことが可能になり、これにより手先部材21から取り外し可能に構成されている。本実施形態の場合、各構成部301、302は、相互に分離可能に構成されている。この場合、相互に分離されるとは、各構成部301、302が相互に完全に切り離された状態になることを意味する。
【0017】
本実施形態の手先部材21は、環状部材30を固定するための構造を有していない。すなわち、手先部材21は、環状部材30を取り付けるためのボルト等が挿入される雌ねじ穴やいわゆるボスの構造を有してない。本実施形態の場合、環状部材30は、各構成部301、302の端部33を相互に接続することで手先部材21に装着可能に構成されている。すなわち、本実施形態において、環状部材30は、環状部材30の内周面で手先部材21の外周面を締め付けることのみによって手先部材21に固定される。
【0018】
環状部材30は、2つの構成部301、302と、2つの雄ねじ部材41と、を有している。2つの構成部301、302は、それぞれ、構成部301、302の両端部33のうち一方の端部33に第2雌ねじ部331を有し、他方の端部33にボルト等の雄ねじ部材41を通すことが可能な貫通穴332を有している。そして、2つの構成部301、302は、同一形状に構成されている。この場合、2つの構成部301、302は、手先部材21の外周面を囲むようにして、手先部材21の中心Pに対して点対称形に配置されて、各構成部301、302の端部33を接続することで、手先部材21に装着される。
【0019】
第2雌ねじ部331は、各構成部301の端部33を相互に接続するために用いる構成である。このため、第2雌ねじ部331は、例えば接続用雌ねじ部と称することもできる。第2雌ねじ部331は、図5から図7に示すように、構成部301、302の一方の端部33から環状部材30の円環状の接線方向へ向かって掘り下げた雌ねじ形状に形成されている。貫通穴332は、構成部301の他方の端部33から環状部材30の円環状の接線方向へ向かって貫通させた、いわゆる段付きの穴に形成されている。雄ねじ部材41が貫通穴332に挿入された場合、雄ねじ部材41は、貫通穴332の内部において雄ねじ部材41の頭部411が係止されるとともに、構成部301の端部33から雄ねじ部材41が接線方向へ突出する。
【0020】
また、環状部材30は、図3、及び図8から図10に示すように、少なくとも1つの突起部32を有している。本実施形態の場合、環状部材30は、複数の突起部32を有している。突起部32は、環状部材30の内周面から環状部材30の内側つまり中心P側へ向かって突出した形状に形成されている。また、本実施形態の場合、図9にも示すように、突起部32における環状部材30の周方向の長さ寸法Wは、環状部材30の内周面からの突出量H1よりも大きい。
【0021】
また、手先部材21は、突起部32の挿入を受けるための少なくとも1つの受け部212を有している。本実施形態の場合、手先部材21は、2つ以上の受け部212を有している。この場合、手先部材21は、突起部32の数以上の受け部212を有している。受け部212は、手先部材21に設けられており、手先部材21の外周面を、突起部32の外形よりも僅かに大きい形状で中心P側へ窪ませて形成されている。また、図10に示すように、受け部212の深さ寸法H2は、突起部32の突出量H1よりも僅かに大きい。これにより、突起部32と受け部212とは、いわゆる隙間嵌めの関係となっている。
【0022】
環状部材30が手先部材21に装着される際、環状部材30は、突起部32が受け部212に挿入されることにより手先部材21に対する位置が規制される。すなわち、突起部32が受け部212に嵌り込むことで、環状部材30は、手先部材21の周方向への回転、及び手先部材21の軸方向への移動が規制される。
【0023】
また、突起部32は、図10に示すように、環状部材30の両側の表面のうち一方の表面側寄りに設けられている。そして、突起部32の厚み寸法T2は、環状部材30全体の厚み寸法T1よりも小さい。この場合、突起部32の厚み寸法T2は、環状部材30全体の厚み寸法T1の半分以下に設定されている。
【0024】
また、各突起部32は、図8に示すように、環状部材30の内面側において所定ピッチθ又は所定ピッチθの整数倍の間隔で配置されている。これに対し、各受け部212は、環状部材30の外面側において所定ピッチθで配置されている。そして、各突起部32は全て、各受け部212のいずれかに挿入される。このため、環状部材30は、所定ピッチθ刻みで回転させて手先部材21に取り付けることができる。すなわち、環状部材30は、取付部31の位置を、所定ピッチθ刻みで調整可能に構成されている。
【0025】
ユーザは、例えば次のようにして手先部材21に環状部材30を装着することができる。ユーザは、例えば図7に示すように、2つの構成部301、302の内側に手先部材21を配置した状態で、2つの構成部301の両側の端部33を相互に突き合わせる。このとき、各突起部32が各受け部212に嵌り込んでいなければ、各突起部32が各受け部212に嵌り込むまで、構成部301、302を手先部材21の外周面に沿って回転させる。
【0026】
そして、ユーザは、一方の構成部301、302の貫通穴332から雄ねじ部材41を挿入し、その雄ねじ部材41を、他方の構成部301、302の第2雌ねじ部331にねじ込む。このようにして、環状部材30は、手先部材21に装着される。なお、追加装置92は、環状部材30を手先部材21に装着する前に取付部31に取り付けられていても良いし、環状部材30を手先部材21に装着した後に取付部31に取り付けられても良い。
【0027】
また、手先部材21から環状部材30を取り外す場合、ユーザは、各雄ねじ部材41を緩めて第2雌ねじ部331から抜き取る。これにより、環状部材30が2つの構成部301、302に分離可能となり、ユーザは、手先部材21から環状部材30を取り外すことができる。
【0028】
ここで、環状部材30が手先部材21に取り付けられた状態において、対向する端部33同士が接触すると、環状部材30や手先部材21の製造時の公差等によっては、手先部材21の外周面に対し、環状部材30の内周面が周方向の全体に亘って均等に接触しない状態が生じ得る。すなわち、環状部材30や手先部材21の製造時の公差等によって、環状部材30の内径が手先部材21の外径よりも大きくなると、環状部材30の内周面と手先部材21の外周面とにおいて設計上接触すべき部分が接触しない、という状態が生じる。そして、このような状態では、手先部材21に対する環状部材30の固定力が低下して手先部材21にがたつき等が生じ、その結果、環状部材30に取付けされた追加装置92の精度等にも影響が出てしまうことになる。
【0029】
そこで、本実施形態では、各構成部301、302は、図6に示すように、環状部材30が手先部材21に装着された状態において対向する端部33の間に隙間Sが形成されるように設定されている。この場合、各構成部301、302の内周の曲率と手先部材21の外周の曲率とは同一に設定されているとともに、各構成部301、302の内周の周長の合計は手先部材21の外周の周長よりも短く設定されている。また、各構成部301、302は、例えば鉄やステンレス、アルミニウム等の金属若しくはエンジニアリングプラスチック等のように、第2雌ねじ部331に雄ねじ部材41をねじ込んで各端部33を接続しても各構成部301、302が変形しない程度の剛性を有する部材で構成されている。そのため、環状部材30によって手先部材21を締め付けた場合でも、各構成部301、302が延びることなく各端部33間に隙間Sが形成される。
【0030】
これにより、環状部材30が手先部材21に取り付けられた状態においても、各端部33は相互に接触することが抑制される。そのため、環状部材30や手先部材21の製造時の公差等によっても、手先部材21の外周面に対して、環状部材30の内周面を周方向の全体に亘って均等に接触させることができる。これにより、手先部材21に対する環状部材30のがたつき等を抑制でき、その結果、環状部材30に起因した追加装置92の精度の低下等を抑制することができる。
【0031】
なお、隙間Sには、スポンジやゴム若しくは軟性の樹脂等、弾性変形又は塑性変形が可能な部材が設けられていても良い。すなわち、剛性を有する構成部301、302の両端部33に変形可能な部材を設け、この変形可能な部材を潰すことで、環状部材30及び手先部材21の公差を吸収する構成としても良い。剛性を有する構成部301、302の両端部33の間には、実質的に隙間Sが形成される。
【0032】
以上説明した実施形態によれば、ロボット10は、ロボットアーム20の手先を構成する手先部材21と、環状部材30と、を備える。環状部材30は、追加装置92を取り付け可能な取付部31を有するとともに、手先部材21に着脱可能で手先部材21に装着された状態で手先部材21の外周を囲む環状に構成される。
【0033】
また、環状部材30は、少なくとも2つの構成部301、302を有している。各構成部301、302は、それぞれ環状部材30の環状の一部を形成する。また、環状部材30は、構成部301、302の内側に手先部材21を配置した状態で隣接する構成部301、302の端部33を相互に接続することで、構成部301、302を閉じて手先部材21を挟み込んで手先部材21に装着可能に構成されている。そして、環状部材30は、構成部301、302の端部33の接続を解除して当該端部33を相互に離すことで構成部301、302を開いて手先部材21から取り外し可能に構成されている。
【0034】
このような本実施形態によれば、環状部材30は、手先部材21に着脱可能で手先部材21に装着された状態で手先部材21の外周を囲む環状に構成される。このため、従来構成のように、ステー等を用いて追加装置92を手先部材21に取り付ける構成に比べて、環状部材30が手先部材21の外側へ大きく迫り出すことが抑制され、その結果、ロボットアーム20の手先部分の大型化を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、ユーザは、例えば取付部31に追加装置92を取り付けた状態で環状部材30を手先部材21に着脱することで、手先部材21に対する追加装置92の着脱を行うことができる。このため、ユーザは、手先部材21に対して追加装置92を着脱する際に、手先部材21自体を取り外す必要がない。このため、本実施形態では、例えば従来のように追加装置92を着脱するために手先部材21自体を取り外す必要がある場合に比べて、手先部材21に対する追加装置92の着脱作業を簡単なものにすることができる。
【0036】
また、構成部301、302は、図3及び図7に示すように、相互に分離可能に構成されている。これによれば、手先部材21に環状部材30を着脱する際に、各構成部301、302を大きく開くことができるため、各構成部301、302の内側に手先部材21を配置し易くなり、また、各構成部301、302の内側から手先部材21を取り除き易くなる。このため、本実施形態によれば、手先部材21に対する追加装置92の着脱作業に関して作業性の更なる向上を図ることができる。また、手先部材21から環状部材30を取り外した際、例えば構成部301、302を重ねた状態で保管することができるため、保管スペースも抑えることができる。
【0037】
また、環状部材30は、2つの構成部301、302の端部33を相互に接続することで手先部材21に装着可能に構成されている。2つの構成部301、302は、それぞれ、各構成部301、302の両端部33のうち一方の端部33に第2雌ねじ部331を有し、他方の端部33に雄ねじを通すことが可能な貫通穴332を有している。そして、2つの構成部301、302は、同一形状に構成されている、
【0038】
これによれば、2つの構成部301、302を同一形状とすることで、構成部301、302の部品の共通化を図ることができる。その結果、製造コストの削減できるとともに、構成部301、302の部品管理を簡単にすることができる。
【0039】
また、図6に示すように、環状部材30は、手先部材21に装着された状態において2つの構成部301、302の端部33の間に隙間Sが形成されるよう構成されている。すなわち、各構成部301、302が手先部材21に装着された場合に、対向する端部33の間に隙間Sが形成される。これによれば、環状部材30の内面を周方向全体に亘って手先部材21の外周面に密着させることができる。このため、手先部材21に対する環状部材30のがたつき等を抑制でき、その結果、環状部材30に起因した追加装置92の精度の低下等を抑制することができる。
【0040】
更に、手先部材21は、環状部材30を固定するための構造、例えば環状部材30を取り付けるためのボルト等が挿入される雌ねじ穴やいわゆるボスの構造を有してない。このため、手先部材21が大型化することを抑制できる。
【0041】
また、環状部材30は、突起部32を更に有している。突起部32は、環状部材30の内周面から内側へ向かって突出している。また、手先部材21は、受け部212を更に有している。受け部212は、手先部材21に設けられており、突起部32の挿入を受ける。そして、環状部材30は、突起部32が受け部212に挿入さることで手先部材21に対する位置が規制される。すなわち、突起部32が受け部212に嵌り込むことで、環状部材30の周方向への回転、及び手先部材21の軸方向への移動が規制される。
【0042】
これによれば、ロボット10が動作した場合に、その動作によって環状部材30の位置が動いてしまうことを抑制できる。その結果、ロボット10の動作により、手先部材21に対する追加装置92の取付け位置が変化してしまって追加装置92の精度等が低下してしまうことを抑制できる。また、手先部材21に対して環状部材30を着脱した後でも、手先部材21に対する環状部材30の取り付け位置、つまり手先部材21に対する追加装置92の取り付け位置を、簡単に高い精度で再現することができる。その結果、例えば手先部材21に対して追加装置92を着脱した際の追加装置92の調整の手間を極力低減することができる。
【0043】
そして、ロボット10は、少なくとも1つの突起部32と、手先部材21及び環状部材30の周方向に沿って配置された2つ以上の受け部212と、を備えている。本実施形態の場合、突起部32は、環状部材30の内周面に設けられており、受け部212は、手先部材21の外周面に設けられている。
【0044】
これによれば、環状部材30が手先部材21に取り付けられる際、ユーザは、突起部32を挿入する受け部212を変更することで、手先部材21に対して環状部材30を回転させて取り付けることができる。すなわち、これによれば、環状部材30を回転させることで、手先部材21に対する取付部31つまり追加装置92の位置を、環状部材30の回転方向つまり環状部材30の内面及び手先部材21の外面の周方向へ調整することができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図11及び図12を参照して説明する。本実施形態では、環状部材30aの具体的構成が、上記第1実施形態の環状部材30と異なる。なお、本実施形態の環状部材30aにおいて、図11及び図12に図示してない構成は、上記第1実施形態の環状部材30と共通している。
【0046】
本実施形態の環状部材30aは、第1実施形態の環状部材30と同様に、複数この場合2つの構成部303、304を有している。本実施形態の構成部303、304は、両端部33a、33bの具体的構成以外については、上記した構成部301、302と同様に構成されている。各構成部303、304は、各構成部303、304の両端部33a、33bのうち一方の端部33a側を支点に回動することで他方の端部33bが離れる方向及び接近する方向へ開閉可能に構成されている。
【0047】
すなわち、本実施形態において、環状部材30aは、ヒンジ部34を有している。ヒンジ部34は、2つの構成部303、304が回動可能となるように、2つの構成部303、304の隣接する端部33aを相互に接続している。また、各構成部303、304の両端部33a、33bのうち、ヒンジ部34が設けられている端部33aとは反対側の端部33bには、第2雌ねじ部331又は貫通穴332が設けられている。
【0048】
この構成において、環状部材30aを手先部材21に装着する際、ユーザは、まず図12に示すように、2つの構成部303、304を開き、構成部303、304の内側に対して手先部材21を配置する。その後、ユーザは、図11に示すように、2つの構成部303、304を閉じた後、雄ねじ部材41を貫通穴332に通して第2雌ねじ部331にねじ込む。これにより、環状部材30aが手先部材21に固定される。
【0049】
また、ユーザは、上述した手順とは逆の手順で手先部材21から環状部材30aを取り外すことができる。すなわち、ユーザは、まず図11に示す状態において、雄ねじ部材41を緩めて第2雌ねじ部331から抜く。その後、ユーザは、図12に示すように、2つの構成部303、304を開いた後、手先部材21から構成部303、304を抜き取る。これにより、手先部材21から環状部材30aが取り外される。
【0050】
本実施形態によれば、構成部303、304は、回動することで他方の端部33b側が開閉可能に構成されている。すなわち、本実施形態において、環状部材30aは、各構成部303、304が相互に分離されないように構成されている。このため、例えば手先部材21から環状部材30aを取り外した際に、各構成部303、304が分離して紛失してしまう等の不都合を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、環状部材30aを手先部材21に着脱する際、ユーザは、各構成部303、304の端部33a、33bのうち一方の端部33bに対してのみ雄ねじ部材41をねじ込む又は緩める作業を行えば良い。そのため、本実施形態によれば、手先部材21に対する環状部材30aの着脱に関して更なる作業性の向上を図ることができる。
【0052】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図13及び図14を参照して説明する。なお、本実施形態において、図13及び図14に図示してない構成は、上記各実施形態の環状部材30と共通の構成とすることができる。また、本実施形態は、第2実施形態の環状部材30aのように、ヒンジ部34を有した構成にも適用することができる。
【0053】
第3実施形態では、上記各実施形態で説明した突起部32と受け部212との関係が逆になっている。すなわち、本実施形態のロボット10は、上記各実施形態で説明した突起部32及び受け部212に代えて、突起部213及び受け部35を有している。突起部213は、手先部材21に少なくとも1つ設けられており、手先部材21の外周面から外方へ向かって突出している。この場合、手先部材21は、8つの突起部213を有している。そして、8つの手先部材21は、手先部材21の外周面に沿って等間隔で配置されている。
【0054】
受け部35は、環状部材30に少なくとも1つ設けられており、環状部材30の内周面を、突起部213の外形よりも僅かに大きい形状で環状部材30の径方向の外側へ窪ませた形状に形成されている。この場合も、突起部32と受け部212とは、突起部32と受け部212との関係と同様に、いわゆる隙間嵌めの関係となっている。
【0055】
この構成においても、環状部材30が手先部材21に装着される際、環状部材30は、突起部213が受け部35に挿入されて手先部材21に対する位置が規制される。すなわち、突起部213が受け部35に嵌り込むことで、環状部材30の周方向への回転、及び手先部材21の軸方向への移動が規制される。
【0056】
このように、本実施形態の手先部材21は、手先部材21の外周面から外側へ向かって突出した突起部213を有している。また、環状部材30は、環状部材30の内周面に設けられて、突起部213の挿入を受ける受け部212を有している。そして、環状部材30は、突起部213が受け部212に挿入さることで手先部材21に対する位置が規制される。これによれば、上述した各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0057】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図15及び図16を参照して説明する。本実施形態では、環状部材30bの具体的な構成が、上記各実施形態の環状部材30、30aと異なる。なお、本実施形態の環状部材30bにおいて、図15及び図16に図示してない構成は、上記各実施形態の環状部材30と共通の構成とすることができる。また、本実施形態は、第2実施形態の環状部材30aのように、ヒンジ部34を有した構成にも適用することができる。
【0058】
環状部材30bは、構成部305、306、及び取付部36を有している。構成部305、306、及び取付部36は、それぞれ分離可能な別部材で構成されている。構成部305、306は、全体の形状は上述した構成部301、302と概ね同様であるが、取付部31を有していない点、及び複数の第3雌ねじ部37を有している点で、上述した構成部301、302と異なる。
【0059】
この場合、環状部材30bは、構成部305、306を組み合わせることで円環状に構成される。第3雌ねじ部37は、例えば環状部材30bの表面に一定間隔で配置されており、環状部材30bを厚み方向に貫いて形成されている。取付部36は、上述した取付部31と同様の取付面311及び第1雌ねじ部312を有しており、追加装置92が固定される。また、取付部36は、図15に示すように、1又は複数の通し穴361を有している。通し穴361は、取付部36を厚み方向に貫いて形成されている。
【0060】
取付部36は、通し穴361にボルト等の雄ねじ部材42が通されてその雄ねじ部材42が第3雌ねじ部37にねじ込まれることで、環状部材30bに固定される。この場合、ユーザは、取付部36を固定するための通し穴361を変更することで、構成部303、304に対する取付部36の取り付けできる。これにより、ユーザは、手先部材21の周方向に対する追加装置92の取り付け位置を調整することができる。なお、この場合、構成部305、306は、手先部材21に対して回転方向への調整ができない構成、つまり手先部材21に対する構成部305、306の取り付け位置が一意に定まる構成としても良い。
【0061】
この実施形態によっても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0062】
なお、上記各実施形態は、それぞれ一部を組み合わせて適用することができる。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0063】
10…ロボット、20…ロボットアーム、21…手先部材、30、30a、30b…環状部材、301、302、303、304、305、306…構成部、31…取付部、32、213…突起部、33、33a、33b…端部、332…貫通穴、35、212…受け部、36…取付部、92…追加装置、S…隙間
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