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特開2023-175307無線給電装置、およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175307
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】無線給電装置、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20231205BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20231205BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087686
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 正則
(57)【要約】
【課題】共振周波数シフトに起因する無線給電の効率低下を抑制する。
【解決手段】共振回路は、受電装置14に所定の周波数で無線給電を行なうための第二コイル134を含んでいる。制御部137は、前記共振回路の共振周波数において第二コイル134に流れる電流値と前記所定の周波数において第二コイル134に流れる電流値との差分に対応する情報に基づいて、前記無線給電のために前記所定の周波数で第二コイル134に印加される電圧のデューティ比を変更する。前記差分の量と前記デューティ比とは正の相関を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置に所定の周波数で無線給電を行なうためのコイルを含む共振回路と、
前記共振回路の共振周波数において前記コイルに流れる電流値と前記所定の周波数において前記コイルに流れる電流値との差分に対応する情報に基づいて、前記無線給電のために前記所定の周波数で前記コイルに印加される電圧のデューティ比を変更する制御部と、
を備えており、
前記差分の量と前記デューティ比とは正の相関を有する、
無線給電装置。
【請求項2】
前記共振回路のQ値は、前記受電装置における共振回路のQ値よりも高い、
請求項1に記載の無線給電装置。
【請求項3】
前記受電装置が搭載された無線通信に基づき被制御装置を遠隔制御する携帯通信装置を格納する格納部を備えている、
請求項1または2に記載の無線給電装置。
【請求項4】
受電装置に所定の周波数で無線給電を行なうためのコイルを含む共振回路を備えた無線給電装置に搭載される制御部により実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記無線給電装置は、
前記共振回路の共振周波数において前記コイルに流れる電流値と前記所定の周波数において前記コイルに流れる電流値との差分に対応する情報を取得し、
前記情報に基づいて、前記無線給電のために前記所定の周波数で前記コイルに印加される電圧のデューティ比を変更し、
前記差分の量と前記デューティ比とは正の相関を有する、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受電装置に所定の周波数で無線給電を行なうためのコイルを含む共振回路を備えた無線給電装置に関連する。本開示は、当該無線給電装置に搭載されるプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムにも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両に搭載された被制御装置を無線通信に基づき制御する携帯通信装置に対して無線給電を行なうことが可能な構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-197823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
共振周波数シフトに起因する無線給電の効率低下を抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示により提供される態様例の一つは、無線給電装置であって、
受電装置に所定の周波数で無線給電を行なうためのコイルを含む共振回路と、
前記共振回路の共振周波数において前記コイルに流れる電流値と前記所定の周波数において前記コイルに流れる電流値との差分に対応する情報に基づいて、前記無線給電のために前記所定の周波数で前記コイルに印加される電圧のデューティ比を変更する制御部と、
を備えており、
前記差分の量と前記デューティ比とは正の相関を有する。
【0006】
本開示により提供される態様例の一つは、受電装置に所定の周波数で無線給電を行なうためのコイルを含む共振回路を備えた無線給電装置に搭載される制御部により実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記無線給電装置は、
前記共振回路の共振周波数において前記コイルに流れる電流値と前記所定の周波数において前記コイルに流れる電流値との差分に対応する情報を取得し、
前記情報に基づいて、前記無線給電のために前記所定の周波数で前記コイルに印加される電圧のデューティ比を変更し、
前記差分の量と前記デューティ比とは正の相関を有する。
【0007】
上記の各態様に係る構成によれば、制御部は、コイルに流れる電流値に係る差分が大きいほど、当該コイルに印加される電圧のデューティ比を大きくする。これにより、当該コイルから送出される電力が増大する。当該差分が大きいほど、受電装置へ供給可能な電力は低下する。その低下を補うようにコイルに印加される実効電圧が増大されるので、共振周波数シフトに起因する無線給電の効率低下を抑制できる。
【0008】
逆に、制御部は、コイルに流れる電流値に係る差分が小さいほど、当該コイルに印加される電圧のデューティ比を小さくする。これにより、当該コイルから送出される電力が減少する。当該差分が小さいほど無線給電の効率は上昇するので、実効電圧を減少させることによって必要以上の電力消費を抑制できる。
【0009】
加えて、無線給電に使用される周波数は、所定の周波数から変更されない。これにより、無線給電に使用される周波数の変更に伴い外部へ影響を及ぼしうる周波数ノイズの発生を回避できる。当該ノイズ対策を不要にできるので、無線給電システムの構成の複雑化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る遠隔制御システムの構成を例示している。
図2図1の筐体装置の構成の一例を示している。
図3図2における無線給電システムの回路構成を例示している。
図4図2の筐体装置の動作の一例を示している。
図5図2の筐体装置の動作の一例を示している。
図6図3の無線給電システムの周波数特性の一例を示している。
図7図3の無線給電システムの周波数特性の別例を示している。
図8図3の第二コイルに印加される電圧波形の一例を示している。
図9図3の第二コイルに印加される電圧波形の別例を示している。
図10図3の第二コイルに印加される電圧波形の別例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る遠隔制御システム10の構成を例示している。各図においては、例示される各要素を認識可能な大きさとするために、縮尺を適宜に変更している。
【0012】
遠隔制御システム10は、モバイル装置11を含んでいる。モバイル装置11は、ユーザ20により携帯可能な装置である。モバイル装置11の例としては、スマートフォンなどの汎用携帯情報端末が挙げられる。
【0013】
遠隔制御システム10は、電子キー12を含んでいる。電子キー12もまた、ユーザ20による携帯が可能な装置である。電子キー12は、第一無線通信に基づいて車両30に搭載された制御装置31に施解錠装置32の動作制御を行なわせることが可能な無線通信装置である。施解錠装置32は、車両30の車室33を開閉するドア34を施解錠する装置である。
【0014】
車両30は、移動体の一例である。施解錠装置32は、被制御装置の一例である。ドア34は、開閉体の一例である。車室33は、開閉体により開閉される空間の一例である。
【0015】
第一無線通信は、第一周波数帯を用いる第一信号S1と第二周波数帯を用いる第二信号S2の送受信を含んでいる。第一周波数帯と第二周波数帯は相違している。第一周波数帯の例としては、長波(LF)帯が挙げられる。第二周波数帯の例としては、極超短波(UHF)帯が挙げられる。換言すると、電子キー12は、施解錠装置32の制御に必要な情報を出力する。
【0016】
具体的には、車両30における適宜の箇所に配置された通信装置を通じて第一信号S1が送信される。第一信号S1の送信は、連続的になされてもよいし、断続的になされてもよい。電子キー12は、第一信号S1の受信と第二信号S2の送信が可能なアンテナを含む通信装置を備えている。電子キー12は、第一信号S1を受信すると第二信号S2を送信するように構成されている。第二信号S2は、電子キー12の認証に必要な認証情報を含むように構成されている。認証情報は、電子キー12とユーザ20の少なくとも一方を特定可能な情報である。
【0017】
制御装置31は、車両30における適宜の箇所に配置された通信装置を通じて第二信号S2を受信すると、認証処理を実行するように構成されている。具体的には、制御装置31は、第二信号S2に含まれる認証情報を、不図示の記憶装置に予め格納されている電子キー12の認証情報と照合するように構成されている。両情報の一致度が閾値を上回る場合、制御装置31は、電子キー12の認証が成立したと判断する。
【0018】
制御装置31は、電子キー12の認証が成立したと判断されると、施解錠装置32にドア34の施解錠を許可する制御信号CSを出力するように構成されている。この状態でユーザ20が例えばドアハンドルに設けられたタッチセンサに触れると、施解錠装置32はドア34を施解錠する。
【0019】
すなわち、電子キー12を携帯したユーザ20が第一信号S1を受信可能な領域に進入すると、第一無線通信を通じて電子キー12の認証がなされる。認証が成立すると、ユーザ20は、キーをキーシリンダに挿入して回すといった動作を行なうことなく、ドア34を施解錠できる。
【0020】
遠隔制御システム10は、筐体装置13を含んでいる。筐体装置13は、車両30の車室33内における適宜の場所に設置されるように構成されている。当該場所には、車室33内に設置されたグローブボックスやアクセサリボックスなどの収容空間が含まれうる。筐体装置13は、電子キー12を格納できるように構成されている。すなわち、電子キー12は、車室33内に配置されうる。
【0021】
図2に例示されるように、筐体装置13は、筐体131を備えている。筐体131は、少なくとも第二信号S2が透過可能な材料により形成されている。筐体131は、電子キー12が格納される格納部131aを有している。
【0022】
筐体装置13は、アクチュエータ132を備えている。アクチュエータ132は、格納部131aに格納された電子キー12の可動部121を操作可能に構成されている。電子キー12は、可動部121に対して所定の操作がなされると、第一信号S1の受信状態に依らず第二信号S2を送信するように構成されている。可動部121は、ボタンやレバーなどにより実現されうる。アクチュエータ132は、ソレノイド、カム機構、ラックピニオン機構などにより実現されうる。電子キー12に第二信号S2を送信させるための可動部121の操作の例としては、少なくとも一回の押下操作などが挙げられる。
【0023】
筐体装置13は、通信部133を備えている。通信部133は、モバイル装置11と第二無線通信を行なうためのアンテナを備えている。本例においては、第二無線通信は、短距離無線通信である。
【0024】
本明細書において用いられる「短距離無線通信」という語は、標準規格であるIEEE802.15またはIEEE802.11に準拠して行なわれる無線通信を意味する。そのような無線通信を実行可能な技術としては、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth Low Energy(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)などが挙げられる。本明細書における「短距離無線通信」は、読取装置から送信される電波から微小な電力を得てモバイル装置が情報の送信を行なう非接触通信技術を用いる「近接無線通信」とは区別される。近接無線通信を実行可能な技術としては、RF-IDやNFCなどが挙げられる。
【0025】
電子キー12は、第一信号S1に応答して第二信号S2を送信する通信装置に電力を供給するための電池を収容可能な収容部を備えている。収容部は、当該電池に代えて、受電装置14も収容可能に構成されている。
【0026】
受電装置14は、第一コイル141を搭載している。第一コイル141は、軸心141aを有する空芯コイルである。
【0027】
本例に係る筐体装置13は、第二コイル134を備えている。第二コイル134は、軸心134aを有する空芯コイルである。第二コイル134は、格納部131aに格納された受電装置14の第一コイル141を包囲するように配置されている。
【0028】
本明細書で用いられる「第二コイル134が第一コイル141を包囲する」という表現は、第二コイル134の軸心134aに直交する向きから見て第一コイル141と第二コイル134の少なくとも一部が重なっている状態を意味している。
【0029】
本例に係る筐体装置13は、電源135を備えている。電源135は、交流電源である。電源135の動作周波数は、上記の第一信号S1の周波数および第二信号S2の周波数と異なるように、かつ第一信号S1の周波数および第二信号S2の周波数の各々に影響を与えないように定められる。例えば、第一信号S1の周波数および第二信号S2の周波数の各々の逓倍である周波数は使用されない。
【0030】
具体的には、図3に例示されるように、電源135は、第二コイル134およびコンデンサ136とともに給電回路を形成している。第二コイル134とコンデンサ136は、LC直列共振回路を形成している。したがって、筐体装置13は、無線給電装置の一例になりうる。
【0031】
他方、受電装置14においては、第一コイル141が回路部142とともに受電回路を形成している。回路部142は、コンデンサ142a、ダイオード142b、およびコンデンサ142cを含んでいる。第一コイル141とコンデンサ142aは、共振ループ回路を形成している。ダイオード142bは半端整流を行なうために設けられている。コンデンサ142cは、平滑化を行なうために設けられている。
【0032】
筐体装置13に電子キー12が格納された状態で車両30のドア34の解錠を希望するユーザ20は、モバイル装置11に対して所定の操作を入力する。操作入力は、スイッチまたはスイッチ画像の操作、音声指示入力、ジェスチャ入力などによりなされうる。図1に例示されるように、モバイル装置11は、当該所定の操作に基づいて解錠信号ULを送信するように構成されている。
【0033】
図2に例示されるように、筐体装置13は、制御部137を備えている。制御部137は、アクチュエータ132と電源135の動作を制御可能に構成されている。
【0034】
具体的には、図4に例示されるように、制御部137は、通信部133により解錠信号ULが受信されると、電源135に第二コイル134への給電を行なわせるように構成されている。これにより、第二コイル134から第一コイル141への無線給電がなされ、第一コイル141に電磁誘導による起電力が発生する。
【0035】
図3に例示されるように、受電装置14の回路部142は、電圧レギュレータ142dを含んでいる。電圧レギュレータ142dは、無線給電により第一コイル141に生じた電力を所定の値に制限して電子キー12の負荷122へ供給するように構成されている。負荷122は、第二信号S2の送信に必要な要素を含んでいる。
【0036】
加えて、制御部137は、通信部133により解錠信号ULが受信されると、電子キー12に第二信号S2を送信させるための可動部121の操作をアクチュエータ132に行なわせるように構成されている。
【0037】
したがって、図5に例示されるように、通信部133により解錠信号ULが受信されると、無線給電を通じて電子キー12が起動され、アクチュエータ132による可動部121の操作を通じて、電子キー12から第二信号S2が送信される。
【0038】
電子キー12から送信された第二信号S2は、車両30に搭載された制御装置31により受信される。前述の通り、制御装置31は、第二信号S2を受信すると、電子キー12の認証処理を行なう。認証処理が成立すると、制御装置31は、施解錠装置32にドア34を解錠させる制御信号CSを出力する。第二信号S2は、遠隔制御信号の一例である。
【0039】
よって、車室33内に設置された筐体装置13に電子キー12が格納された状態でユーザ20がモバイル装置11から解錠信号ULを送信すると、ドア34を解錠できる。換言すると、ユーザ20は、電子キー12を携帯せずとも、車室33の外からモバイル装置11に対する所定の操作を通じてドア34を解錠できる。
【0040】
なお、本実施形態においては、筐体装置13の第二コイル134から受電装置14の第一コイル141へのみ送電がなされ、第一コイル141から第二コイル134への送電はなされないことを前提としている。
【0041】
図6は、一例に係る給電側の共振回路において第二コイル134に流れる電流I2の周波数特性を示している。符号f0は、当該共振回路について予め設定された共振周波数を表している。理想的な共振回路の場合、電源135の駆動周波数がf0であるときに第二コイル134に流れる電流が最大値I2pをとる。周波数f0は、所定の周波数の一例である。
【0042】
図6は、一例に係る受電側の共振回路において第一コイル141に流れる電流I1の周波数特性も示している。受電側の共振回路における共振周波数f0は、給電側の共振回路における共振周波数f0と一致するように設定されている。したがって、理想的な共振回路の場合、周波数f0で無線給電を受けたときに第一コイル141に流れる電流が最大値I1pをとる。
【0043】
図7は、別例に係る給電側の共振回路において第二コイル134に流れる電流I2の周波数特性を示している。本例においては、電源135の駆動周波数がf1であるときに第二コイル134に流れる電流が最大値I2pをとっている。すなわち、当該共振回路の共振周波数はf1である。実際の共振周波数の予め設定された周波数f0からのシフトは、共振回路部品の公差や、温度変化などの環境条件に起因して生じうる。
【0044】
図7は、別例に係る受電側の共振回路において第一コイル141に流れる電流I1の周波数特性も示している。周波数f0において第二コイル134に流れる電流値I2qは、最大値I2pよりも低い。これにより、第一コイル141に供給される電力が低下するので、周波数f0で無線給電を受けたときに第一コイル141に流れる電流の最大値I1pもまた低下する。この状況は、無線給電の効率が低下していることを意味する。
【0045】
本実施形態に係る筐体装置13の制御部137は、給電側の共振回路について予め定められた共振周波数f0において第二コイル134に流れる電流値と当該共振回路の実際の共振周波数f1において第二コイル134に流れる電流値との差分に対応する情報を取得するように構成されている。
【0046】
具体的には、制御部137は、まず周波数f0で電源135を駆動させ、第二コイル134に流れる電流値I2qを取得する。続いて制御部137は、電源135の駆動周波数を掃引しながら、第二コイル134を流れる電流の最大値I2pを取得する。
【0047】
電流の最大値I2pが既知かつその変動を無視できる場合、駆動周波数の掃引による最大値I2pの取得は省略できる。この場合、電流値I2qが上記の「差分に対応する情報」の一例となりうる。
【0048】
あるいは、制御部137は、電源135の駆動周波数を掃引しながら、第二コイル134を流れる電流値が最大になる周波数f1を特定する。第二コイル134を流れる電流の周波数特性プロファイルが既知かつその変動を無視できる場合、周波数f0と周波数f1の差分に基づいて上記の電流値I2qを特定できる。この場合、予め定められた共振周波数f0と実際の共振周波数f1の差分が、上記の「差分に対応する情報」の一例となりうる。
【0049】
図8から図10に例示されるように、制御部137は、上記の「差分に対応する情報」に基づいて、無線給電のために電源135から第二コイル134に印加される電圧V2のデューティ比を変更するように構成されている。デューティ比の変更は、電圧V2の周波数を維持したままなされる。当該周波数は、給電側の共振回路のついて予め定められた共振周波数f0である。
【0050】
具体的には、制御部137は、第二コイル134に流れる電流値I2qと最大値I2pとの差分が大きいほど、電圧V2のデューティ比を大きくするように構成されている。これにより、実効電圧V2eが増大する。図7を参照して説明したように、当該差分が大きいほど、第一コイル141へ供給可能な電力は低下する。その低下を補うように第二コイル134に印加される実効電圧V2eが増大されるので、共振周波数シフトに起因する無線給電の効率低下を抑制できる。
【0051】
逆に、制御部137は、第二コイル134に流れる電流値I2qと最大値I2pとの差分が小さいほど、電圧V2のデューティ比を小さくするように構成されている。これにより、実効電圧V2eが減少する。当該差分が小さいほど図6に例示した理想条件に近づいて無線給電の効率は上昇するので、実効電圧V2eを減少させることによって必要以上の電力消費を抑制できる。
【0052】
なお、第二コイル134から送出される電力を増減できるのであれば、電流I2のデューティ比が変更されてもよい。
【0053】
加えて、無線給電に使用される周波数は、給電側の共振回路について予め定められた共振周波数f0から変更されない。これにより、無線給電に使用される周波数の変更に伴い外部へ影響を及ぼしうる周波数ノイズの発生を回避できる。当該ノイズ対策を不要にできるので、無線給電システムの構成の複雑化を抑制できる。
【0054】
すなわち、制御部137は、第二コイル134に流れる電流値に係る差分の量と、第二コイル134に印加される電圧V2のデューティ比が正の相関を有するように、変更がなされる。両者の関係は、関数やテーブルの形態で制御部137に予め保持される。両者の関係は、線形あるいは非線形の連続性を有していてもよいし、段階的であってもよい。すなわち、本明細書で用いられる「正の相関を有する」という表現は、全体として正の相関が示されていれば、差分の量とデューティ比の一方が変化している間に他方が一定値をとる区間が局所的に存在する場合を許容する意味である。
【0055】
なお、制御部137によるデューティ比の変更は、初期較正時に一度だけ行なわれてもよいし、所定のタイミングで二度以上行なわれてもよい。所定のタイミングの例としては、筐体装置13の起動時や、ユーザの指示入力時が挙げられる。この場合、環境条件に起因する共振周波数シフトに対して柔軟に対応できる。
【0056】
図6図7に例示されるように、給電側の共振回路のQ値は、受電側の共振回路のQ値よりも高くなるように構成されうる。
【0057】
このような構成によれば、図3に例示される給電側のLC直列共振回路にQ値を下げるための抵抗素子を付加的に直列接続する必要がないので、回路構成を簡略化できるだけでなく、発熱を抑制できる。他方、受電側の共振回路においても部品公差や環境条件に起因する共振周波数シフトが生じうるが、Q値を下げることによりその影響を緩和できる。
【0058】
これまで説明した各機能を有する筐体装置13の制御部137は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの集積回路素子により実現されうる。これまで説明した各処理を実行可能なコンピュータプログラムは、当該専用集積回路に含まれる記憶素子にプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。
【0059】
上記の実施形態は、本開示の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本開示の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更されうる。
【0060】
上記の実施形態においては、筐体装置13の第二コイル134が電子キー12の第一コイル141を包囲するように配置されている。しかしながら、第一コイル141への無線給電を遂行可能であれば、筐体131内における第二コイル134の配置は適宜に変更されうる。
【0061】
上記の実施形態においては、制御装置31と電子キー12との間で行なわれる第一無線通信は、異なる周波数帯を使用している。しかしながら、第一無線通信は、同一の周波数帯を用いる適宜の無線通信規格に基づいて行なわれうる。
【0062】
上記の実施形態においては、モバイル装置11と筐体装置13の通信部133との間で行なわれる第二無線通信は、短距離無線通信である。この場合、車室33内に設置される筐体装置13の配置自由度を高めることができる。しかしながら、第二無線通信は、近接無線通信であってもよい。
【0063】
本開示に係る遠隔制御システム10は、他の移動体にも適用されうる。その他の移動体の例としては、鉄道、航空機、船舶などが挙げられる。当該移動体は、運転者を必要としなくてもよい。電子キー12により遠隔制御される被制御装置の種別は、移動体の仕様に応じて適宜に定められる。
【0064】
上記の実施形態においては、施解錠装置32により施解錠される開閉体として車室33を開閉するドア34が例示されている。ドア34の形態は、図1に例示されるようなヒンジドアであってもよいし、スライドドアであってもよい。車室33を開閉する開閉体は、サンルーフを含みうる。車両30に搭載される開閉体は、トランクやボンネットを含みうる。この場合、トランクやボンネットにより開閉される空間に筐体装置13が配置されてもよい。
【0065】
施解錠装置により施解錠される開閉体は、必ずしも移動体に搭載されることを要しない。住宅や施設における扉や窓もまた開閉体の一例になりうる。電子キー12により遠隔制御される被制御装置の種別は、当該住宅や施設の仕様に応じて適宜に定められる。
【0066】
受電装置14の第一コイル141への無線給電は、筐体装置13を用いて行なわれることを要しない。受電装置14が搭載される機器の仕様に応じて、適宜の構成を備えた無線給電装置が使用されうる。
【符号の説明】
【0067】
12:電子キー、13:筐体装置、131a:格納部、134:第二コイル、137:制御部、14:受電装置、32:施解錠装置、f0、f1:周波数、I2p、I2q:電流値、V2:電圧
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