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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175316
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20231205BHJP
   G01N 21/95 20060101ALI20231205BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G01N21/88 H
G01N21/95 A
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087704
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】301078191
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有馬 英司
(72)【発明者】
【氏名】川村 友人
(72)【発明者】
【氏名】林 知明
【テーマコード(参考)】
2G051
2H149
【Fターム(参考)】
2G051AA71
2G051AB07
2G051BA10
2G051BA11
2G051BB03
2G051BB20
2G051CA03
2G051CB01
2G051CC20
2H149AA22
2H149AB26
2H149BA04
2H149DA05
2H149DA12
2H149EA02
2H149EA10
(57)【要約】
【課題】試料表面の低段差欠陥とうねり欠陥の高さ・ピッチを同時に高感度・高スループットで検査することができる欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る欠陥検査装置は、微分干渉信号を検出する第1センサと照射光学系の瞳面像を検出する第2センサを備え、前記微分干渉信号を用いて段差欠陥を検出し、前記第1センサおよび前記第2センサが検出した信号を用いてうねり欠陥を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を用いて試料を検査する欠陥検査装置であって、
光ビームを出射する光源、
前記光ビームを互いに直交する偏光の第1ビームと第2ビームに分岐する偏光分離素子、
前記試料に対して前記第1ビームと前記第2ビームを細線形状に照射する光学系、
前記試料上における前記第1ビームおよび前記試料上における前記第2ビームそれぞれの照射位置と共役な位置に配置された第1センサ、
前記光学系の瞳面の像を検出可能な位置に配置された第2センサ、
前記第1センサが検出した信号と前記第2センサが検出した信号を用いて前記試料上の欠陥を検出するプロセッサ、
を備え、
前記プロセッサは、前記第1センサが検出した信号を用いて前記第1ビームと前記第2ビームの微分干渉信号を取得するとともに、前記微分干渉信号を用いて前記試料上の段差欠陥を検出し、
前記プロセッサは、前記第1センサが検出した信号と前記第2センサが検出した信号を用いて、前記試料上のうねり欠陥を検出する
ことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記第1センサは、前記試料から反射された前記光ビームの、前記細線形状を有するビームスポットの長手方向に沿って配列された2つ以上の第1検出素子を備え、
前記プロセッサは、前記第1検出素子ごとに前記段差欠陥を検出することにより、1つの前記ビームスポット内に含まれる1つ以上の前記段差欠陥を同時に検出する
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記第2センサは、前記試料に対して照射する前記光ビームが有する前記細線形状のビームスポットの短手方向に沿って配列された2つの第2検出素子を備え、
前記プロセッサは、各前記第2検出素子が検出した信号に基づき前記うねり欠陥の高さと周期を検出する
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記第1センサが検出した第1信号と前記第2センサが検出した第2信号をそれぞれ、前記うねり欠陥の周期ごとに抽出し、
前記プロセッサは、前記抽出した前記第1信号と前記第2信号のうち大きいほうを高さ信号として特定し、
前記プロセッサは、前記特定した前記高さ信号を用いて、前記うねり欠陥の高さを検出する
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記うねり欠陥の高さと前記第1信号の前記周期ごとの強度との間の関係、または、前記うねり欠陥の高さと前記第2信号の前記周期ごとの強度との間の関係を記述した理想高さ曲線データを取得し、
前記プロセッサは、前記第1信号の強度または前記第2信号の強度を用いて、前記理想高さ曲線データが記述している前記関係を参照することにより、前記うねり欠陥の高さを計算する
ことを特徴とする請求項4記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記欠陥検査装置はさらに、前記光源からの前記光ビームを前記試料へ向けて透過させるとともに前記試料からの反射光を前記第1センサへ向けて反射する第1ビームスプリッタを備え、
前記欠陥検査装置はさらに、前記光源からの前記光ビームを前記試料へ向けて透過させるとともに前記試料からの反射光を前記第2センサへ向けて反射する第2ビームスプリッタを備える
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
前記欠陥検査装置はさらに、前記試料を回転させる回転機構を備え、
前記光学系は、前記試料の回転方向に沿って間隔をあけて前記第1ビームと前記第2ビームを前記試料に対して照射し、
前記光学系は、前記回転方向に対して直交する方向に沿って前記第1ビームと前記第2ビームを延伸することにより、前記細線形状を形成する
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記回転方向に沿って周期性を有する前記うねり欠陥を検出する
ことを特徴とする請求項7記載の欠陥検査装置。
【請求項9】
前記欠陥検査装置はさらに、前記第1センサへ向かう光ビームを互いに直交する第1偏光成分と第2偏光成分へ分離する第3ビームスプリッタを備え、
前記第1センサは、前記第3ビームスプリッタが出力する前記第1偏光成分を検出し、
前記欠陥検査装置はさらに、前記第3ビームスプリッタが出力する前記第2偏光成分を検出する第3センサを備え、
前記プロセッサは、前記第1偏光成分と前記第2偏光成分との間の差分を、前記第1偏光成分と前記第2偏光成分の和によって除算した結果を用いて、前記段差欠陥を検出する
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項10】
前記第2センサは、前記試料に対して照射する前記光ビームが有する前記細線形状のビームスポットの短手方向と長手方向それぞれに沿って配列された4つの検出素子を備え、
前記プロセッサは、各前記検出素子が検出した信号に基づき前記うねり欠陥の高さと周期を検出する
ことを特徴とする請求項3記載の欠陥検査装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記短手方向に沿って配列している2つの前記検出素子を用いて、前記短手方向に沿って周期性を有する前記うねり欠陥の高さを検出し、
前記プロセッサは、前記長手方向に沿って配列している2つの前記検出素子を用いて、前記長手方向に沿って周期性を有する前記うねり欠陥の高さを検出する
ことを特徴とする請求項10記載の欠陥検査装置。
【請求項12】
前記第2センサは、前記長手方向に沿って配列している第1検出素子と第2検出素子を備え、
前記第2センサは、前記短手方向において前記第2検出素子と隣接する第3検出素子を備え、
前記第2センサは、前記短手方向において前記第1検出素子と隣接する第4検出素子を備え、
前記プロセッサは、前記第1検出素子が出力する第1検出信号と前記第2検出素子が出力する第2検出信号の和から、前記第3検出素子が出力する第3検出信号と前記第4検出素子が出力する第4検出信号の和を減算した結果を用いて、前記短手方向において周期性を有する前記うねり欠陥を検出し、
前記プロセッサは、前記第1検出信号と前記第4検出信号の和から、前記第2検出信号と前記第3検出信号の和を減算した結果を用いて、前記長手方向において周期性を有する前記うねり欠陥を検出する
ことを特徴とする請求項11記載の欠陥検査装置。
【請求項13】
前記欠陥検査装置はさらに、前記試料を回転させる回転機構を備え、
前記光学系は、前記試料の回転方向に沿って間隔をあけて前記第1ビームと前記第2ビームを前記試料に対して照射し、
前記光学系は、前記回転方向に対して直交する方向に沿って前記第1ビームと前記第2ビームを延伸することにより、前記回転方向が前記短手方向であり前記直交する方向が前記長手方向である前記細線形状を形成し、
前記プロセッサは、前記回転方向に沿って前記うねり欠陥の高さを検出する場合は、前記直交する方向に沿った位置ごとの回転数によってフーリエ変換を実施することにより、前記うねり欠陥の周期に対応する信号強度を抽出し、
前記プロセッサは、前記直交する方向にそって前記うねり欠陥の高さを検出する場合は、前記フーリエ変換を実施することなく、前記うねり欠陥の周期と高さを検出する
ことを特徴とする請求項11記載の欠陥検査装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、検出した前記うねり欠陥および前記段差欠陥それぞれの座標を特定してその結果を出力する
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項15】
前記プロセッサは、検出した前記うねり欠陥の周期及び高さ情報と前記段差欠陥の高さ情報をそれぞれ弁別し、その結果を出力する
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて試料上の欠陥を検出する欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク(HD:Hard Disk)のデータ容量の増大が進むにつれて、HDの表面状態、欠陥サイズ、形状が性能や歩留まりに大きな影響を与えるようになっている。歩留まりを維持・向上させるためには、表面研磨作業や異物混入によってできる低アスペクト比の低段差欠陥(高さが数nm、幅が数十μm程度)やうねり欠陥(周期数十μm、高さ数nm)を検査する必要がある。低アスペクト比の欠陥は、散乱光がほとんど発生しない低段差欠陥である。低段差欠陥を検出するためには、微分干渉顕微鏡の原理を用いた微分干渉コントラスト(DIC:Differential Interference Contrast)検査などの干渉計測が使用されている。うねり欠陥を表面の粗さ(Haze)として、欠陥高さ・周期情報を含まずに検出できる散乱光検査が使用されている。
【0003】
下記特許文献1には、ウェハ表面をレーザ光照明でスキャンすることによって、散乱光検査とDIC検査を同時実施する光学系が開示されている。同文献は、『暗視野(DF)および微分干渉コントラスト(DIC)の同時の検査のための検査装置は、1つの照明源と、試料を固定するように構成された1つの試料ステージを含む。検査装置は、第1のセンサと、第2のセンサと、光学サブシステムを含む。光学サブシステムは、対物レンズと、対物レンズを介して、1つ以上の照明源からの照明を試料の表面に方向付けるように配置された1つ以上の光学素子を含む。対物レンズは、試料の表面から信号を収集するように構成され、収集信号は、試料からの散乱に基づく信号および/または位相に基づく信号を含む。検査装置は、DF信号とDIC信号をそれぞれDF経路とDIC経路に沿って方向付けることによって収集信号をDF信号とDIC信号に空間的に分離するように配置された1つ以上の分離光学素子を含む。』という技術を記載している(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-531162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HDの製造工程における表面研磨に起因して、HD表面には、従来の散乱光検出によっては検出困難な、ランダム周期のうねり欠陥が存在する。HD容量の増加にともない、磁気ヘッドとHD表面との間の距離が近くなり、これまで管理対象外だったうねり欠陥の検査が求められている。さらに、周期性を持たない低段差欠陥の検出も同様に求められている。うねり欠陥・低段差欠陥ともに高感度・高スループットでの検査が必要になる。
【0006】
低段差欠陥を検出するためにはDIC方式の検査装置が適している。そこで、DIC方式の検査装置を用いて、うねり欠陥も検出することができれば、好適である。しかし、うねり欠陥をDIC方式の検査装置によって検出する場合、うねり欠陥の周期(欠陥間の間隔:ピッチ)によってDIC信号強度が変化し、特にシア量×1/nの周期は信号量がゼロまたは非常に微弱であって検出困難である。したがって、DIC方式の光学欠陥検査装置を単に用いて、任意周期のうねり欠陥を検出することは、困難である。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、試料表面の低段差欠陥とうねり欠陥の高さ・ピッチを同時に高感度・高スループットで検査することができる欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る欠陥検査装置は、微分干渉信号を検出する第1センサと照射光学系の瞳面像を検出する第2センサを備え、前記微分干渉信号を用いて段差欠陥を検出し、前記第1センサおよび前記第2センサが検出した信号を用いてうねり欠陥を検出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る欠陥検査装置によれば、試料表面の低段差欠陥とうねり欠陥の高さ・ピッチを同時に高感度・高スループットで検査することができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る欠陥検査装置1の概略構成図である。
図2】ディスク2表面の回転検査について説明する図である。
図3】センサ14とセンサ17それぞれの検出素子配置を示す。
図4】凸欠陥40とうねり欠陥42それぞれの断面図と上面図である。
図5】θ方向に沿ったうねり欠陥と高さ信号の関係を説明する図である。
図6】うねり欠陥の周期に対するシミュレーションによって得られた高さ信号61と高さ信号62それぞれの強度比を示す。
図7】プロセッサ105の機能ブロック図である。
図8】θ方向のうねり欠陥の高さを決定する方法を説明する図である。
図9】欠陥検査装置1が出力するデータを説明する図である。
図10】欠陥検査装置1のシステムブロック図である。
図11】実施形態2に係る欠陥検査装置1の構成図である。
図12】実施形態2におけるプロセッサ105の機能ブロック図である。
図13】実施形態3におけるセンサ17の検出素子の構成を示す。
図14】R方向うねり欠陥142の断面図と上面図である。
図15】実施形態3におけるプロセッサ105の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る欠陥検査装置1の概略構成図である。欠陥検査装置1は、試料に対して光を照射することにより、試料の表面上に存在する段差欠陥とうねり欠陥を検出する装置である。ここでは試料の1例として、ハードディスクの表面欠陥を検査する場合について説明する。欠陥検査装置1が備える図1の各構成要素について以下説明する。
【0012】
光源3は、干渉性のある単一波長レーザによって構成されている。波長が長いと検出レンジが広くとれる。波長が短いと微小な高さに対する感度が高くなる。照明光学系4は、ディスク2に対して照射するビーム形状を最適なものに設定するために配置している。例えば後述する細線形状のビームスポットを実現するために、シリンドリカルレンズを2枚使い、アナモルフィックプリズムを使う、などによって照明光学系4を実現できる。ミラー5は一般的な反射ミラーを想定している。ビームの面内で位相が変化しないように設計した多層膜のものをミラー5として使うのが望ましい。
【0013】
ビームスプリッタ6と7は、ビームを分離するビームスプリッタである。ビームスプリッタ6は、光源3からの光をディスク2に対して透過させ、ディスク2から反射した光をセンサ17へ向けて反射する。ビームスプリッタ7は、光源3からの光をディスク2に対して透過させ、ディスク2から反射した光をセンサ14へ向けて反射するとともにビームスプリッタ6へ向けて透過させる。各ビームスプリッタは、センサ14とセンサ17それぞれにおいて最適な光量が得られるように、適切に強度を配分することが望ましい。ここでは、光源3の光量が十分にあることを前提として、1:1の強度に分離するビームスプリッタを想定している。
【0014】
1/4波長板8は、偏光分離素子9によってビームをP偏光とS偏光に分離する際に、光量を1:1に調整するために配備している。偏光分離素子9は、入射したビームをP偏光とS偏光に分離する。例えば、ノマルスキープリズムやウォラストンプリズムにより、偏光分離素子9を実現できる。
【0015】
集光光学系10は、偏光分離素子9によって分離された光をディスク2に対して集光する光学系である。微分干渉信号を得るために、偏光分離素子9の光の分離点とディスク2の集光点とが焦点になるように設定する。これにより、ディスク2から反射したP偏光とS偏光の光が再度偏光分離素子9によって合成される。実装上の都合から、集光光学系はリレー光学系を用いると設計が容易となる。
【0016】
検出光学系11は、ディスク2上のビームスポットがセンサ14上で結像されるように設定した光学系である。センサ14のサイズに最適となるように倍率変換することを想定している。センサ14は、ディスク2上のビームスポットと共役となる位置に配置することが望ましい。これにより微分干渉信号を精度よく検出することができる。
【0017】
検出光学系16は、集光光学系10の瞳面における像の強度がセンサ17によって検出できるように配備した光学系である。集光光学系10の瞳位置とセンサ17とが共役になるように設定することが望ましいが、集光光学系10の瞳像をセンサ17によって検出可能であればよい。検出光学系16は、センサ17のサイズに合うように倍率変換を実施してもよい。
【0018】
光源3から出力された光はディスク2に向けて照射される。偏光分離素子9によりビームはS偏光とP偏光の2つの光線に分離され、ディスク2表面に対して照射される。ディスク2から反射された光は、センサ14とセンサ17によって検出される。センサ14はS偏光とP偏光の2つの光線の微分干渉信号(DIC信号)を検出する。センサ17は集光光学系10の瞳面における像を検出する。
【0019】
プロセッサ105は、センサ14が検出したDIC信号を用いて、ディスク2表面の微小な低段差欠陥を検出する。さらにプロセッサ105は、センサ17が検出した瞳面ビーム強度とセンサ14が検出したDIC信号を用いて、後述する原理によって、ディスク2表面のうねり欠陥を検出する。
【0020】
瞳面強度は、ディスク2表面のうねり欠陥からの反射光の光線方向において、平坦な表面からの反射光に比べて微小な傾きを持つ。この傾きは結像面においては検出できないほど小さいが、瞳面においては中心から数%の強度比として算出することができる。この強度比はうねり欠陥の高さや周期(ピッチ)に依存している。よってプロセッサ105は、瞳面の強度比を求めることにより、うねり欠陥の高さや周期を算出することができる。
【0021】
図2は、ディスク2表面の回転検査について説明する図である。ディスク2を検査する過程において、ディスク2はステージ103(後述)によってθ方向に回転される。ディスク2表面に対して光ビーム20と光ビーム21が照射される。光ビーム20と21はそれぞれ、図1に示すS偏光とP偏光である。光ビーム20と光ビーム21のうちどちらがS偏光またはP偏光であっても検出される信号に変化はなく、これらは順不同である。光ビーム20と21は半径(R)方向22において長く、θ方向23(回転方向)において短い形状になっている(細線形状)。半径(R)方向に長くすることにより、1度に広範囲で表面欠陥を検出することができ、高スループットで全面検査を可能にしている。
【0022】
ディスク2表面の検査時、光ビーム20と21は動かさず、ディスク2をθ方向矢印23に沿って回転させながら半径方向矢印22に沿って移動させることにより、ディスク2全面を検査する。R方向のビーム径を長くすることにより、小さな欠陥も見逃さず全面検査を可能としている。
【0023】
図3は、センサ14とセンサ17それぞれの検出素子配置を示す。センサ14とセンサ17は、検出する光ビームの性質に応じて、検出面上において図3に示すように検出素子を配置している。
【0024】
センサ14の表面はディスク2と共役な面になっており、観察している領域の結像光30が入射する(集光光がセンサ面において結像している)。センサ14はR方向にセンサ画素S1_1からS1_NまでN画素(N個の検出素子)を配置しており、画素ごとにDIC信号を検出することができる。これにより、画素ごとに検出感度を落とすことなく広い範囲でDIC信号を一度に検出することができる。すなわちディスク2上の小さな段差欠陥を見落としなく検出することができる。
【0025】
センサ17は、集光光学系10の瞳面強度を検出する。ディスク2表面上における細線方向(θ方向)の方がNA(Numerical Aperture)が大きいので、瞳面上においてはθ方向のほうがビームスポット31のサイズが大きい。したがってセンサ17はθ方向に沿って2画素の検出素子を配置している。プロセッサ105(またはセンサ17自身)は、画素S2_1とS2_2との間の信号強度差を検出する。
【0026】
図4は、凸欠陥40とうねり欠陥42それぞれの断面図と上面図である。低段差欠陥としては、凸欠陥40のようにディスク2の表面にある突起した欠陥、図示していないが凹んだ欠陥、などがある。低段差欠陥としては、高さおよび表面サイズが0.1μm~数μmのものを想定している。この欠陥を見逃さないように細線ビームを用いる。うねり欠陥42は、図示したように表面が小さな段差(高さ1nm程度)でうねっているものである。ハードディスクにおいては、うねり周期43(うねりピッチ)が20μm~100μm程度の範囲のものが不良セクタの原因となると言われている。
【0027】
DIC信号は、光ビーム21と20それぞれの照射位置間の位相段差41を検出することができる。位相段差41を検出することにより、凸欠陥40やうねり欠陥42を検出することができる。ただしうねり欠陥42の場合、うねり欠陥の高さ以外に、うねり周期43によっても検出される位相段差が変わる点に注意が必要である。これについて次に説明する。
【0028】
図5は、θ方向に沿ったうねり欠陥と高さ信号の関係を説明する図である。図5上段は、P/S偏光の光ビーム20と光ビーム21とうねりの関係を示すものである。ディスク2は側断面を示している。図中横方向がθ方向に相当する。図5下段は、DICから得られる高さ信号50と、瞳強度分布から得られる高さ信号51それぞれの、θ方向における波形を示している。
【0029】
光ビーム20と光ビーム21との間の間隔(シア量)に対して、うねり周期が逆相の場合(図中左)、図に示すように光ビーム20がうねりのボトムに対して照射されているとき、光ビーム21がうねりのトップに対して照射される。この場合、光ビーム20と光ビーム21がディスク2上で異なる高さとなるので、DIC信号が発生する。つまり高さ信号50は、図のようにディスク位置に相当する信号が発生する。他方で、光ビーム20から得られる瞳強度分布と光ビーム21から得られる瞳強度分布も互いに逆相になる。光ビーム20と光ビーム21は、ディスク2を反射した後、偏光分離素子9によって合成されるので、打ち消しあって図のように高さ信号51の振幅は発生しない。
【0030】
光ビーム20と光ビーム21との間の間隔(シア量)に対して、うねり周期が同相の場合(図中右)、図に示すように光ビーム20がうねりのトップに対して照射されているとき、光ビーム21がうねりのトップに対して照射される。この場合、光ビーム20と光ビーム21とがディスク2上で同じ高さとなるので、DIC信号はゼロとなる。つまり高さ信号50は、図のようにディスク位置に相当する信号が発生しない。他方で、光ビーム20から得られる瞳強度分布と光ビーム21から得られる瞳強度分布も互いに同相になる。光ビーム20と光ビーム21は、ディスク2を反射した後、偏光分離素子9によって合成されるが、同相であるので打ち消しあわない。したがって高さ信号51は、図のようにディスク位置に相当する信号となる。
【0031】
以上のようにDICの高さ信号50と瞳強度分布の高さ信号51は、うねり周期に対して補完関係にある。本発明はこの特徴を利用して、うねり周期に依らないうねり信号検出方法を提供するものである。なお、高さ信号50と高さ信号51それぞれの振幅は、うねりの高さと周期に依存するものであるので、図8において説明する補正方法に基づき、高さ情報に変換することができる。
【0032】
図6は、うねり欠陥の周期に対するシミュレーションによって得られた高さ信号61と高さ信号62それぞれの強度比を示す。高さ信号61はそれぞれDIC信号であり、高さ信号62は光瞳面強度分布信号である。本シミュレーションでは光ビーム20と光ビーム21との間の間隔(シア量)は175μmとし、うねり欠陥は同じ高さで周期のみ変えている。高さ信号61と高さ信号62はそれぞれの検出信号の最大値を1として規格化している。
【0033】
高さ信号61(DIC信号)はうねり欠陥周期63において最大であり、うねり欠陥周期64において最小になっている。うねり欠陥周期63は図5で説明した逆相の状態であり、シア量×2/(2n+1)である(nは自然数)。うねり欠陥周期64は図5で説明した同相の状態であり、シア量×1/nである(nは自然数)。本シミュレーション結果から、うねり欠陥の周期ごとに高さ信号61(DIC信号)が異なることがわかる。それに対して高さ信号62(光瞳面強度信号)においては、うねり周期63は逆相であるので最小になる。うねり周期64は同相の状態であるので高さ信号62が極大値になる。これにより、高さ信号61と高さ信号62をそれぞれ検出すると、周期20~100μmのうねり欠陥をすべて検出できることがわかる。
【0034】
検査装置によって検出される高さ信号50と51は周期ごとに相対強度が変わるが、本シミュレーションによって求めたうねり欠陥の周期ごとの相対強度比を使って、実際の欠陥の高さ信号に補正することができる。
【0035】
図7は、プロセッサ105の機能ブロック図である。センサ14とセンサ17の各受光面からの電流信号は、I/V変換器70とA/D変換器71によりデジタル信号に変換される。I/V変換器70とA/D変換器71は一般技術であるので詳細は割愛するが、検査速度を向上するために、周波数特性に注意して設計するとよい。
【0036】
A/D変換器71によって変換されたDIC信号は、図5で示した高さ信号50のようにある強度レベルで振幅が変化している。オフセット除去部72はその強度レベルを除去して振幅のみを取得する。
【0037】
凹凸評価部73は、取得した振幅のみの信号を使って、微小欠陥を評価する。凹凸評価部73は変化のあった信号を抽出し、振幅が正か負かを見て凹凸を判定する。またθ方向の振幅の長さを計測することにより、欠陥の長さ情報を取得することができる。また、何個の受光面が変化しているかを計測することにより、R方向の欠陥長さ情報も取得することができる。凹凸評価部73は、微小欠陥のR方向およびθ方向の長さ情報とともに振幅情報を凹凸高さ評価部74に対して送る。
【0038】
凹凸高さ評価部74は、振幅と欠陥サイズに基づき、高さ情報を取得する。DICによる高さ情報の取得は、通常技術で判別できるので、詳細は割愛する。以上のようにセンサ14からは微小段差欠陥の凹凸、サイズ、高さを検出することができる。
【0039】
信号加算処理部75は、オフセット除去部72により強度レベルが除去されたすべての受光面情報を加算する。ここでは、ディスク2上のR方向のスポット信号を全てまとめて検出する例を説明するが、スポット信号を個別に評価しても構わない。個別に評価すると、R方向のうねり周期を細かく評価することができる。
【0040】
センサ17が得たデジタル信号は、信号演算部77が以下の演算をすることにより、瞳面強度分布からθ方向のうねり高さに応じた信号Sを出力できる:S=(S2_1)-(S2_2)。
【0041】
FFT処理部76は、信号加算処理部75と信号演算部77から生成された信号をそれぞれディスク2のR方向位置に応じた回転数によりフーリエ変換を実施し、うねり周期に応じた変調度(信号レベル)を算出する。周波数評価部78は、変調度の大きなうねり周期を抽出する。
【0042】
信号選択部79は、抽出されたうねり周期のうち、DICから得られる変調度(センサ14)と、瞳強度分布から得られる変調度(センサ17)とのどちらか大きい方を選択する。θ方向うねり高さ評価部80は、信号選択部79で選択された信号を、後述する理想高さ曲線と比較することにより、変調度を高さ情報へ変換する。以上により、指定のR位置におけるθ方向のうねりの周期と高さを決定することができる。
【0043】
プロセッサ105では、微小段差欠陥の凹凸、サイズ、高さ情報とうねり欠陥の周期と高さ情報を別々に出力することで、微小段差欠陥とうねり欠陥を弁別することができる。
【0044】
図8は、θ方向のうねり欠陥の高さを決定する方法を説明する図である。図8上段は、FFTされた後のDIC信号の変調度を3つのケースについて示す。図8下段は、瞳強度分布から得られる高さ信号の変調度を同じ3つのケースについて示す。各グラフは、横軸はうねりの周波数(ピッチ)、縦軸は変調度を示す。DICにより得られた変調度が高さ信号50であり、瞳面強度分布から得られた変調度が高さ信号51である。
【0045】
ケース1は、θ方向のうねり周期が、光ビーム20と光ビーム21との間の間隔に対して逆相の場合(図5左)である。ケース2は、θ方向のうねり周期が、光ビーム20と光ビーム21との間の間隔に対して同相の場合(図5右)である。ケース3は、両者の中間的ケースである。
【0046】
理想高さ曲線81と理想高さ曲線82は、それぞれ指定の高さの時に得られる理想の高さ信号を示している。各理想高さ曲線は、うねり欠陥の各ピッチ値について、欠陥高さに対する信号レベルの比率を記述している。曲線81はDIC信号について、曲線82は瞳面強度信号についてのものである。高さ評価部80は、信号レベルと理想高さ曲線を比較することにより、うねり欠陥高さを計算できる。各理想高さ曲線を記述したデータは、あらかじめ欠陥検査装置1が備える記憶装置内に格納しておけばよい。
【0047】
ケース1の場合は、逆相であるので、DIC信号の変調度が大きい。したがって信号選択部79は、DIC信号を選択する。高さ評価部80は、理想高さ曲線81と高さ信号50から次式により高さを決定する:Height=Hs1/Hi。
【0048】
ケース2の場合は、同相であるので、瞳強度分布信号の変調度が大きい。したがって信号選択部79は、瞳強度分布信号を選択する。高さ評価部80は、理想高さ曲線82と高さ信号51から次式により高さを決定する:Height=Hs2/Hi。
【0049】
ケース3の場合は、信号選択部79によって、DIC信号と瞳面強度信号のうち大きい方を選択することになる。図8の例においてはDIC信号の変調度のほうが大きい。したがって信号選択部79は、DIC信号を選択する。高さ評価部80は、理想高さ曲線81と高さ信号50から次式により高さを決定する:Height=Hs1/Hi。
【0050】
以上のように、DIC信号と瞳面強度信号のうち変調度の大きい信号を用いることにより、うねり欠陥の周期に依らずうねりの高さと周期を決定することが容易にできる。
【0051】
図9は、欠陥検査装置1が出力するデータを説明する図である。このデータが示す情報は、例えばプロセッサ105がモニタ上に提示するGUI(グラフィカルユーザインターフェース)上で提供することができる。図9左は欠陥マップであり、図9右はθ方向のうねり分布である。
【0052】
欠陥検査装置1は、ディスク2上に高さレベルに応じた欠陥情報がディスク2のどこにあるか表示することができる。図9は、高さやサイズに応じて第1欠陥レベル92、第2欠陥レベル93、第3欠陥レベル94の3レベルを示す例である。例えば、許容範囲外の欠陥レベルをあらかじめ設定しておき、許容範囲外レベルの欠陥のみ表示するようにしてもよい。ディスク基準線91は、ディスク2上には無いが、画面上ではこれを表示することにより、ディスク位置と欠陥サイズと高さを視覚的に分かりやすく表示することができる。ディスク基準線91を設定できない場合は、ディスク半径位置に対する欠陥のサイズと高さを表示してもよい。θ方向のうねりは、横軸にディスクの半径、縦軸にうねりの高さを図示するとよい。また判定レベル95を設けておき、うねり高さ96がそれを超えるとアラームが上がるようにしてもよい。
【0053】
ディスク2表面上における欠陥の位置は、光ビーム20と21を照射するときの座標に基づき特定することができる。プロセッサ105は、その座標を図9のGUI上に反映することにより、画面上で欠陥位置を提示することができる。欠陥座標の数値なども併せて提示してもよい。
【0054】
図10は、欠陥検査装置1のシステムブロック図である。欠陥検査装置1は、コントロールパネル101、コントローラ102、ステージ103、光学系104、光源3、センサ14、センサ17、プロセッサ105、モニタ106を備える。
【0055】
コントロールパネル101は、ホスト100が装置を使いたい際に操作するGUIに相当する。ホスト100が検査した結果を参照する場合、モニタ106上でGUIを提示することにより、参照することができる。コントロールパネル101が受けた指令に基づきコントローラ102に対して検査に必要な情報を送る。
【0056】
コントローラ102は、ステージ103を駆動し、ディスク2を回転させるとともに光源3を点灯させる。ステージ103は、ディスク2の表裏を入れ替える機能と、ディスク2を交換する機能と、搬送する機能も有しており、複数のディスクの表裏を連続して検査することができる。これにより、複数のディスク2の表裏を高速に検査し、微小な低段差欠陥と表面のうねりを検出することができる。
【0057】
光源3は、CW(連続波)で発光を続けてもよいし、消費電力を下げるために、ディスク2を検査する際のみ発光させてもよい。光学系104は、図1に示す各光学系である。光源3から出射したビームは、光学系104によってディスク2へ集光され、ディスク2の欠陥情報がセンサ14と17によって検出される。センサ14と17が検出した検出信号は、プロセッサ105により処理され、欠陥情報を取得する。欠陥情報を取得する手順は上述の通りである。欠陥情報は、モニタ106上に表示される。
【0058】
<実施の形態1:まとめ>
実施形態1に係る欠陥検査装置1において、センサ14が検出するDIC信号によって検出できないうねり欠陥ピッチについては、瞳面と共役になるように設置されたセンサ17によって検出される瞳面強度差信号が最も大きくなる。DIC信号強度が最も大きくなるうねり欠陥ピッチについては、瞳面強度信号によっては検出できない。欠陥検査装置1は、このようなDIC信号と瞳面強度分布信号を相互補完的に組み合わせることにより、段差欠陥を検出するとともに、すべての周期のうねり欠陥を検出することができる。
【0059】
<実施の形態2>
図11は、本発明の実施形態2に係る欠陥検査装置1の構成図である。実施形態1と比較すると、1/2波長板12、偏光ビームスプリッタ13、センサ15を新たに備える。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0060】
1/2波長板12は、入射した偏光を偏光ビームスプリッタ13に対して45°の偏光に変換する機能を有している。偏光ビームスプリッタ13は、P偏光を透過させ、S偏光を反射させる機能を有している。本実施形態2においては、DIC信号をセンサ14とセンサ15の2個のセンサにより検出する。具体的には、偏光分離素子9によってディスク2からの反射光が1つのビームに集光されたものを、偏光の位相を変えることにより再度2個のビームへ分割して検出する。
【0061】
センサ15は、センサ14と同じタイプのセンサであり、図3のように検出素子がN分割されたセンサである。センサ14とセンサ15それぞれにおけるセンサ信号の差と和をとった後に差を和で割り算して信号を生成する。この信号処理をすると、レーザの強度変化に依存しない外乱の強い高さ情報を検出することができる。
【0062】
図12は、実施形態2におけるプロセッサ105の機能ブロック図である。図7と比較すると、センサ15からの検出信号を処理するブロックが新たに追加されている。信号演算部120は、センサ14の信号をS1、センサ15の信号をS3とした場合、以下の演算を実施する:S=(S1-S3)/(S1+S3)。このとき、受光面毎の複数の信号が得られる。信号演算部120は、上記式によって差分を取得するので、オフセット除去部72と同じように強度レベルを除去できる。またセンサ14とセンサ15との間では高さに対する信号が逆位相で発生するので、振幅は2倍になる効果がある。さらにS1とS3を加算した信号で除算するので、レーザの強度情報を除去でき、レーザの強度揺れに依らない信号が得られる。このように実施形態2では、実施形態1に比べて、外乱に強いDIC信号が検出できる。
【0063】
<実施の形態3>
図13は、本発明の実施形態3におけるセンサ17の検出素子の構成を示す。図13に示す素子構成においては、検出素子がθ方向に加えてR方向にも分割されており、合計4分割となっている。センサ画素S4_1とS4_4の和信号、S4_3とS4_2の和信号をそれぞれ算出し、これらの差分を計算することにより、R方向のうねり欠陥の高さと周期信号を検出する。同時に、センサ画素S4_1とS4_2の和信号、S4_4とS4_3の和信号をそれぞれ算出し、これらの差分を計算することにより、θ方向のうねり欠陥の高さと周期信号を検出する。これにより、θ方向のうねり欠陥だけでなく、R方向のうねり欠陥の周期および高さ情報を検出することが可能になる。
【0064】
図14は、R方向うねり欠陥142の断面図と上面図である。R方向うねり欠陥142は、うねり欠陥42と同様に表面が小さな段差(1nm程度)でうねっているものである。ハードディスクにおいては、そのうねり周期143が20μm~100μm程度の範囲のものが不良セクタの原因となると言われている。
【0065】
ディスク2表面上におけるビームスポットはθ方向において互いに離隔しているので(図14中段参照)、θ方向に沿ってうねる欠陥については、高さや周期を実施形態1の構成によって得ることができる。他方でR方向に沿ってうねる欠陥については、ビームスポット間の信号レベルの差がない(図14中段参照)。したがってR方向うねり欠陥142については、光ビーム20と光ビーム21それぞれの照射位置間の位相段差は0となる。すなわち高さ信号140によってR方向うねり欠陥142の高さおよび周期信号を検出することはできない。これに対して、(S4_1+S4_4)-(S4_3+S4_2)から算出された高さ信号141は、R方向に対して変化が生じ、欠陥の高さと周期情報を検出することができる。
【0066】
図15は、実施形態3におけるプロセッサ105の機能ブロック図である。図7と比較すると、信号演算部150と151、R方向うねり高さ評価部152、を新たに備える。信号演算部150が出力する信号は信号演算部77と同等のものであり、FFT処理部76以降は図7と同様である。信号演算部151が出力する信号は、R方向高さ評価部152により、R方向のうねりの周期と高さを決定するために用いられる。R方向のうねり欠陥については、信号強度からうねりの周期および高さを検出できるので、FFT信号処理を実施しなくてもR方向高さ評価部152によって周期と高さ信号を決定することができる。
【0067】
<本発明の変形例について>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0068】
以上の実施形態において、コントローラ102とプロセッサ105は、これらの機能を実装した回路デバイスなどのハードウェアによって構成することもできるし、これらの機能を実装したソフトウェアをCPU(Central Processing Unit)などの演算装置が実行することにより構成することもできる。
【0069】
以上の実施形態においては、半導体などの製造工程において実行する欠陥検査に用いられる検査装置に対して、本発明を適用する場合について説明した。本発明の適用対象はこれに限るものではなく、微小な段差欠陥とうねり欠陥をともに光学的に検出するその他の欠陥検査装置について適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1:欠陥検査装置
9:偏光分離素子
10:集光光学系
14:センサ
17:センサ
105:プロセッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15