(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175320
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】容器及び揮散装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/12 20060101AFI20231205BHJP
B65D 85/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A61L9/12
B65D85/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087708
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】原田 幸一
【テーマコード(参考)】
3E068
4C180
【Fターム(参考)】
3E068AA22
3E068AA35
3E068AB10
3E068AC09
3E068CC01
3E068CE06
3E068CE20
3E068DD06
3E068DD08
3E068DD40
3E068DE02
3E068DE13
3E068DE18
3E068EE31
3E068EE40
4C180AA03
4C180CA09
4C180EB06Y
4C180EB09Y
4C180EB26Y
4C180HH10
4C180LL20
(57)【要約】
【課題】薬液の充填時に泡が溢れ出にくい容器及び揮散装置を提供する。
【解決手段】本発明の容器10は、底部12と、筒状の胴部14と、開口部11と、を有し、薬液を収容する。胴部14は、底部12の外周部13から上方に設けられている。開口部11は、胴部14の底部12と反対側で底部12の上方に対向し、薬液を充填するためのものである。胴部14は、その内面の少なくとも一部に、底部12に届く下端を有する螺旋状の溝部1を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を収容する容器であって、
底部と、
前記底部の外周部から上方に設けた筒状の胴部と、
前記胴部の前記底部と反対側で前記底部の上方に対向した前記薬液を充填するための開口部と、を有し、
前記胴部が、その内面の少なくとも一部に、前記底部に届く下端を有する螺旋状の溝部を有する、
容器。
【請求項2】
前記胴部は、前記底部の前記外周部から上方に向けて拡開する形状を有する、
請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記薬液は、界面活性剤を含む、
請求項1に記載の容器。
【請求項4】
螺旋状の前記溝部は、前記胴部の上下の高さより長い、
請求項1に記載の容器。
【請求項5】
前記底部は、その内面の中央に前記開口部から差し込まれる吸液芯の下端を受け入れる凹部を有し、前記外周部に環状の溝部を有し、且つ、前記凹部から環状の前記溝部につながる放射状の溝部を有する、
請求項1に記載の容器。
【請求項6】
螺旋状の前記溝部は、前記胴部の周方向に並んで複数本あり、
複数本の螺旋状の前記溝部は、その上端に向けて収束するように設けられている、
請求項1に記載の容器。
【請求項7】
請求項1-6のいずれか1項に記載の容器と、
前記容器の中に充填した前記薬液と、
前記開口部を介して前記薬液中に浸漬した吸液芯と、
を有する揮散装置。
【請求項8】
前記底部は、その内面の中央に前記吸液芯の下端を受け入れる凹部を有し、前記外周部に環状の溝部を有し、且つ、前記凹部から環状の前記溝部につながる放射状の溝部を有する、
請求項7に記載の揮散装置。
【請求項9】
螺旋状の前記溝部は、前記胴部の周方向に並んで複数本あり、
複数本の螺旋状の前記溝部は、その上端に向けて収束するように設けられている、
請求項7に記載の揮散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、消臭剤や芳香剤などの揮発性を有する薬液を収容する容器、及びこの容器に薬液を充填して吸液芯を取り付けた揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消臭剤や芳香剤などの薬液を揮散させる揮散装置として、例えば、楕円筒状の容器のほか、筒状の胴部が底部の外周部から上方に向けて拡開したいわゆるすり鉢状の容器を用いた装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-100751号公報
【特許文献2】特開2007-135857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消臭剤や芳香剤の生産に際しては、生産効率を上げるためにできるだけ短い時間で薬液の充填を完了する必要がある。しかし、薬液を勢いよく充填すると、薬液が容器の口から溢れ出てしまう不具合が生じる。特に水を主成分とした消臭剤や芳香剤などの薬液は、疎水性である香料成分を水に溶かすための界面活性剤を含んでいるため、起泡性があり、容器に薬液を充填する際に空気を巻き込んで泡が発生し易く、また、発生した泡は短時間では消えにくい。そのため、薬液を勢いよく充填すると、発生した泡が容器の口から溢れ出てしまう不具合も生じてしまう。すり鉢状の容器ではその傾向がさらに顕著になる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、薬液の充填時に薬液及び泡が溢れ出にくい容器及び揮散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の容器の一態様は、底部と、筒状の胴部と、開口部と、を有し、薬液を収容する。胴部は、底部の外周部から上方に設けられている。開口部は、胴部の底部と反対側で底部の上方に対向し、薬液を充填するためのものである。胴部は、その内面の少なくとも一部に、底部に届く下端を有する螺旋状の溝部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、薬液の充填時に薬液及び泡が溢れ出にくい容器及び揮散装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る揮散装置を示す正面図である。
【
図4】
図4は、
図2の容器を矢印F4方向から見た左側面図である。
【
図5】
図5は、
図2の容器を矢印F5方向から見た右側面図である。
【
図6】
図6は、
図2の容器を矢印F6方向から見た底面図である。
【
図7】
図7は、
図3の容器をF7-F7で切断した上部側の底面の断面図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る揮散装置の容器を示す正面図である。
【
図10】
図10は、
図9の容器をF10-F10で切断した上部側の底面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1に示すように、第1の実施形態に係る揮散装置100は、透明な容器10と蓋体20を有する。容器10は、例えば、ガラスや樹脂など透光性を有する素材により形成することができる。本実施形態では、容器10は、ポリエチレンテレフタレートのインジェクションブロー成形により形成した。蓋体20は、例えば、有色の不透明な樹脂により形成することができる。
【0010】
蓋体20は、複数の揮散孔21を有する。蓋体20は、図示しない揮散体を内部に保持したキャップ形状に形成されている。蓋体20は、
図2に示す吸液芯30の上端31に揮散体の下面が接触するように、容器10に取り付けられる。蓋体20を容器10に取り付けると、蓋体20の下端周縁22が容器10の胴部14と肩部16の間の段部15に係合する。以下の説明では、
図1を揮散装置100を正面から見た図とし、この方向から見て上下前後左右の各方向を規定する。
【0011】
以下、
図2~
図7を参照して、本実施形態の容器10の構造について説明する。
容器10は、底部12、胴部14、肩部16、及び首部18を一体に有するいわゆるボトル形状である。胴部14は、底部12の外周部13から上方に向けて拡開する筒状に形成されている。首部18は、胴部14の底部12と反対の上端側で、底部12の上方に離間対向して配置されている。首部18は、略円筒形であり、容器10の上下に延びた図示しない架空の中心軸と同時に配置されている。肩部16は、首部18の下端から胴部14の上端に向けて拡開するようになだらかに湾曲している。首部18は、その外周面に雄ネジ19を有する。雄ネジ19は、首部18の上端内側にある円形の開口部11(
図3)を塞ぐ図示しない外蓋を螺合するために設けられている。
【0012】
底部12は、その中央が上方に向けてドーム状に膨出している。底部12は、膨出部分の中心に、吸液芯30の図示しない下端を受け入れる略円形の凹部41を有する。凹部41は、底部12の膨出部分の中央を内面側から部分的に凹ませた形状を有する。凹部41を膨出部分の中央に設けたため、凹部41の底は、底部12の下面よりわずかに上方に位置する。
【0013】
また、底部12は、凹部41から外周部13につながる放射状の溝部42を有する。溝部42は、膨出部分を内面側から部分的に凹ませた形状を有する。本実施形態では、放射状の溝部42を凹部41の周方向に略等間隔で3本形成した。なお、底部12がドーム状に膨出しているため、底部12と胴部14の間の外周部13の内面は、環状の溝部43となっている。つまり、底部12の内面には、凹部41から3本の溝部42を通って外周部13の溝部43に至る薬液の流路が形成されている。このような底部12の内面形状により、吸液芯30によって吸い上げられずに容器10内に残留する薬液の量を最小限にすることができる。
【0014】
胴部14は、その内面に、略全周にわたって周方向に並んだ複数本の螺旋状の溝部1(
図7)を有する。複数本の螺旋状の溝部1は、長さ及び形状がそれぞれ異なる。容器10は、インジェクションブロー成形により形成しているため、胴部14の壁厚は溝部1においても略均一である。すなわち、複数本の螺旋状の溝部1の形状と同じ形状の凹凸を設けた成型金型を用いて成型することにより、胴部14の外面に複数本の溝部1にならった凸凹模様を形成し、これにより、胴部14の内面に複数本の溝部1を形成する。よって、各図において胴部14の外面に付した符号1は、胴部14の内面の溝部1を指し示すものとする。なお、胴部14の内面に設けた複数本の螺旋状の溝部1は、それぞれ、その下端が底部12の外周部13の溝部43につながっている。
【0015】
螺旋状の溝部1は、容器10を上方から見て、底部12の外周部13の溝部43から胴部14の上端に向けて時計回り方向に螺旋状にねじれた形状を有する。つまり、全ての溝部1は、同じ方向にねじれて湾曲している。このため、多くの溝部1(全てではない)は、その長さが、胴部14の上下方向の高さより長い。また、本実施形態では、複数本の溝部1がその上端に向けて収束するように溝部1を形成した。
【0016】
薬液は、疎水性の香料成分を水に溶かすための界面活性剤を含む。界面活性剤は、アニオン、カチオン、ノニオン、両性イオンを含む界面活性剤を包含する。特に、ノニオン界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルフェノール・エチレンオキサイド付加物、高級アルコール燐酸エステル等が界面活性剤の一例として挙げられる。界面活性剤を含む薬液は、容器10の開口部11から薬液を充填する際に、空気を巻き込んで泡立ち易い。また、薬液の充填により発生した泡は、比較的長い期間その状態が継続する。このため、薬液の充填時に、容器10内で発生した泡が容器10の開口部11から溢れ出やすい。
【0017】
揮散装置100は、以下の手順で製造することができる。
まず、容器10の開口部11に図示しない充填機のノズルを挿入し、容器10の中に薬液を充填する。薬液を充填した後、
図2に示すように、中央に挿通孔34を有する内蓋32を開口部11に装着し、挿通孔34に吸液芯30を挿通する。吸液芯30の図示しない下端は、底部12の中央にある凹部41の中に挿し入れる。この後、容器10を密閉するため、首部18に図示しない外蓋を螺着する。そして、外蓋により密閉した状態の容器10に蓋体20を取り付ける。
【0018】
揮散装置100の使用時には、利用者が蓋体20を一旦取り外して外蓋を首部18から取外し、蓋体20を再び容器10に取り付ける。これにより、内蓋32の挿通孔34を介して上方に突出した吸液芯30の上端31と蓋体20により保持された揮散体の下面が当接し、吸液芯30により吸い上げられた薬液が揮散体に移動可能となる。揮散体に移動した薬液は、蓋体20の複数の揮散孔21を通して揮散装置100の外部へ揮散する。
【0019】
本実施形態のように、薬液を容器10に充填する場合、ノズルの先端から噴出した薬液が、底部12の内面に当たって容器10の胴部14の内面に沿って勢いよく上昇する。このため、首部18の上端にある開口部11を介して薬液が溢れ出てしまいやすい。特に、本実施形態のようなすり鉢状の容器10に薬液を充填する場合、柱面により胴部を形成した容器と比較して、薬液が開口部11を介して溢れ出やすい。
【0020】
さらに、界面活性剤を含む薬液の場合は、薬液充填時に底部12又は容器10内の液面に衝突して空気を巻き込んで泡が発生し易く、発生した泡は、比較的長い時間(例えば数10秒間)泡が消失しない状態が継続しその形状を維持する。薬液の充填はそれよりも短い時間(例えば10秒以内)で完了するため、発生した薬液の泡が首部18の上端にある開口部11を介して溢れ出る可能性が高い。
【0021】
このような不具合を防止するため、本実施形態の容器10は、胴部14の内面に複数本の螺旋状の溝部1を有する。各溝部1の下端は、底部12の外周部13にある環状の溝部43につながっている。このため、充填時に底部12の内面に当たった薬液は、複数本の螺旋状の溝部1に沿って容器10内を上昇する。このように、複数本の螺旋状の溝部1に沿って薬液を上昇させることにより、螺旋状の溝部1を設けない場合と比較して、充填済の薬液及び容器10の内部で発生した泡を首部18の上端にある開口部11まで押し上げ難くすることができる。
【0022】
つまり、ノズルを介して容器10内に充填される薬液は、底部12の内面に当たって、凹部41、溝部42、及び外周部13の溝部43の順に流れ、複数本の螺旋状の溝部1の下端から上端に向けて上昇する。複数本の螺旋状の溝部1が湾曲しているため、その流路が胴部14の高さより長くされており、溝部1の上端では重力によって薬液の流速が十分に遅くなる。また、同じ方向に渦を巻いた形状の複数本の螺旋状の溝部1を通して薬液を上昇させることにより、容器10内で渦流を生じさせることができ、液面に沿って薬液の渦を形成することができる。複数本の溝部1をその上端に収束させることで、液面に渦を確実に形成することができる。
【0023】
以上のように、本実施形態によると、薬液の充填時における薬液の上昇速度を遅くすることができ、且つ液面において渦流を生じることができるため、充填した薬液が首部18の上端にある開口部11を介して溢れ出る不具合を防止することができる。
【0024】
また、薬液の充填時における薬液の上昇速度が遅くなり、且つ液面に渦流が生じて乱流が整流化することにより、薬液を充填する際に、薬液が容器10内の液面に衝突しても空気を巻き込みにくくなり、発生する泡の量を減らすことができる。このため、容器10内で発生した薬液の泡が首部18の上端にある開口部11を介して溢れ出るという不具合も防止することができる。
【0025】
(第2の実施形態)
図8~
図10に示すように、第2の実施形態に係る揮散装置の容器200は、胴部14の内面の一部に複数本の螺旋状の溝部201を有する。本実施形態の容器200は、胴部14の前側部分と背面側部分に溝部201を有し、側面側には溝部201を有していない。これ以外の構成は、上述した第1の実施形態と略同じであるため、同様に機能する構成には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0026】
図9に示すように、胴部14の背面側部分に設けた複数本の溝部201は、上述した第1の実施形態と同様に、底部12の外周部13の溝部43から胴部14の上端に向けて螺旋状に延びている。これに対し、胴部14の前側部分に設けた複数本の溝部201は、
図8に示すように、必ずしも螺旋状に形成されているとは言えない。しかしながら、各溝部201の下端は、上述した第1の実施形態と同様に、底部12の外周部13の溝部43につながっているため、薬液を充填すると、複数本の溝部201に沿って胴部14の上端に向けて薬液が上昇する。
【0027】
このとき、胴部14の背面側部分に部分的に設けた螺旋状の複数本の溝部201に沿って上昇する薬液の流れによって、容器200の内部で薬液の渦流が生じる。つまり、本実施形態のように、螺旋状の複数本の溝部201を胴部14の内面の少なくとも一部に設けることにより、容器200の内部に渦流を生じることができ、上述した第1の実施形態と同様に、薬液や泡が開口部11から溢れ出る不具合を抑制することができる。このような効果は、容器200の胴部14の内面に少なくとも1本の螺旋状の溝部201を設けることで奏することができる。
【0028】
以上、いくつかの実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1、201…溝部、 10、200…容器、 12…底部、 13…外周部、 14…胴部、 18…首部、 30…吸液芯、 41…凹部、 42…溝部、 43…環状の溝部、 100…揮散装置。