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特開2023-175326検出装置、解析方法及び解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175326
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】検出装置、解析方法及び解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/82 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
G01N27/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087714
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三戸 慎也
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 和紀
(72)【発明者】
【氏名】三原 英治
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA12
2G053AB01
2G053BA03
2G053BA12
2G053BA26
2G053CA01
2G053CB24
2G053DB04
(57)【要約】
【課題】複数のセンサのセンサ値同士の間のなだらかな変化を検出する。
【解決手段】検出装置は、対象物に対して配列配置された複数のセンサから取得されたそれぞれのセンサ値を複数のセンサの配列位置に対応付けたセンサ値配列データに基づいて対象物の状態変化を検出する解析部、を備え、解析部は、センサ値同士が互いに異なる時刻に取得された2つのセンサ値配列データにおいて、2つのセンサ値配列データのセンサ値同士の差分値を複数のセンサの配列位置に対応付けた差分値配列データを生成し、差分値配列データから、互いの要素数が同じであり且つ一部の要素が互いに重複する2つの部分差分値配列データを生成し、2つの部分差分値配列データの差分値同士の類似度に対する閾値判定の結果、及び、差分値配列データの分散値に対する閾値判定の結果に基づいて、差分値配列データ中の差分値のなだらかな変化の有無を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対して配列配置された複数のセンサから取得されたそれぞれのセンサ値を前記複数のセンサの配列位置に対応付けたセンサ値配列データに基づいて前記対象物の状態変化を検出する解析部、
を備え、
前記解析部は、
前記センサ値同士が互いに異なる時刻に前記取得された2つの前記センサ値配列データにおいて、2つの前記センサ値配列データのセンサ値同士の差分値を前記複数のセンサの配列位置に対応付けた差分値配列データを生成し、
前記差分値配列データから、互いの要素数が同じであり且つ一部の要素が互いに重複する2つの部分差分値配列データを生成し、
前記2つの部分差分値配列データの差分値同士の類似度に対する閾値判定の結果、及び、前記差分値配列データの分散値に対する閾値判定の結果に基づいて、前記差分値配列データ中の差分値のなだらかな変化の有無を判定する、
検出装置。
【請求項2】
前記解析部は、前記類似度が閾値以上であり且つ前記分散値が閾値以上である場合に、前記差分値配列データ中の差分値のなだらかな変化が存在すると判定する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記類似度は、相関係数を含む、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記2つの部分差分値配列データのうちの第1の部分差分値配列データは、前記差分値配列データにおける第1の範囲の要素で構成され、
前記2つの部分差分値配列データのうちの第2の部分差分値配列データは、前記差分値配列データにおける第2の範囲の要素で構成され、
前記第2の範囲は、前記第1の範囲に対して、前記差分値配列データの前記差分値に対応付けた前記センサの配列位置の配列方向に所定数の要素分だけずれている、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項5】
前記所定数は1である、
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記解析部は、前記2つのセンサ値配列データのうちの前記取得された時刻が遅い方のセンサ値を有するセンサ値配列データを修正し、修正後の前記センサ値配列データに基づいて、前記対象物の状態変化を検出する、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項7】
前記解析部は、前記修正後の前記センサ値配列データ及び基準センサ値配列データのセンサ値同士の差分値を前記複数のセンサの配列位置に対応付けた第2の差分値配列データを生成し、生成した前記第2の差分値配列データ中の差分値の局所的な変化の有無を判定する、
請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記対象物は、金属製の対象物であり、
前記複数のセンサは、複数の磁気センサであり、
前記対象物の状態変化は、前記対象物の局所腐食の発生を含む、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項9】
前記対象物は、円筒形状を有し、
前記複数のセンサは、円筒座標系の周方向(θ方向)及び軸方向(z方向)に2次元状に配列配置される、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項10】
配列配置された複数のセンサから取得されたそれぞれのセンサ値を前記複数のセンサの配列位置に対応付けたセンサ値配列データを解析する方法であって、
前記センサ値同士が互いに異なる時刻に前記取得された2つの前記センサ値配列データにおいて、2つの前記センサ値配列データのセンサ値同士の差分値を前記複数のセンサの配列位置に対応付けた差分値配列データを生成することと、
前記差分値配列データから、互いの要素数が同じであり且つ一部の要素が互いに重複する2つの部分差分値配列データを生成することと、
前記2つの部分差分値配列データの差分値同士の類似度に対する閾値判定の結果、及び、前記差分値配列データの分散値に対する閾値判定の結果に基づいて、前記差分値配列データ中の差分値のなだらかな変化の有無を判定することと、
を含む、
解析方法。
【請求項11】
コンピュータに、
配列配置された複数のセンサから取得されたそれぞれのセンサ値を前記複数のセンサの配列位置に対応付けたセンサ値配列データを解析する処理を実行させる解析プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記センサ値同士が互いに異なる時刻に前記取得された2つの前記センサ値配列データにおいて、2つの前記センサ値配列データのセンサ値同士の差分値を前記複数のセンサの配列位置に対応付けた差分値配列データを生成する処理と、
前記差分値配列データから、互いの要素数が同じであり且つ一部の要素が互いに重複する2つの部分差分値配列データを生成する処理と、
前記2つの部分差分値配列データの差分値同士の類似度に対する閾値判定の結果、及び、前記差分値配列データの分散値に対する閾値判定の結果に基づいて、前記差分値配列データ中の差分値のなだらかな変化の有無を判定する処理と、
を実行させる、
解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、解析方法及び解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
配列配置された複数のセンサのセンサ値に外乱の影響が現れることがある。外乱を検出するために、画像処理分野で知られているようなパターンマッチングを用いることが考えられる。例えば特許文献1は、検出対象物の特徴的な部分をパターン画像として用意し、そのパターン画像と処理対象の画像との類似度から、処理対象の画像に検出対象物が含まれるかどうかを判定する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-81264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば金属等の局所腐食監視装置では、複数の磁気センサのセンサ値同士の間の局所的な変化が検出される。外乱との区別のために、外乱に起因するセンサ値同士の間の変化を検出する必要もある。外乱には、なだらかな空間分布を有するものも少なくなく、そのような外乱に起因して、複数のセンサ値同士の間になだらかな変化が現れる。変化のパターンが無数に存在するので、すべてのパターンを用意することは難しい。パターンマッチングでは、複数のセンサのセンサ値同士の間のなだらかな変化の検出は困難である。
【0005】
本発明の一側面は、複数のセンサのセンサ値同士の間のなだらかな変化の検出を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面に係る検出装置は、対象物に対して配列配置された複数のセンサから取得されたそれぞれのセンサ値を複数のセンサの配列位置に対応付けたセンサ値配列データに基づいて対象物の状態変化を検出する解析部、を備え、解析部は、センサ値同士が互いに異なる時刻に取得された2つのセンサ値配列データにおいて、2つのセンサ値配列データのセンサ値同士の差分値を複数のセンサの配列位置に対応付けた差分値配列データを生成し、差分値配列データから、互いの要素数が同じであり且つ一部の要素が互いに重複する2つの部分差分値配列データを生成し、2つの部分差分値配列データの差分値同士の類似度に対する閾値判定の結果、及び、差分値配列データの分散値に対する閾値判定の結果に基づいて、差分値配列データ中の差分値のなだらかな変化の有無を判定する。
【0007】
一側面に係る解析方法は、配列配置された複数のセンサから取得されたそれぞれのセンサ値を複数のセンサの配列位置に対応付けたセンサ値配列データを解析する方法であって、センサ値同士が互いに異なる時刻に取得された2つのセンサ値配列データにおいて、2つのセンサ値配列データのセンサ値同士の差分値を複数のセンサの配列位置に対応付けた差分値配列データを生成することと、差分値配列データから、互いの要素数が同じであり且つ一部の要素が互いに重複する2つの部分差分値配列データを生成することと、2つの部分差分値配列データの差分値同士の類似度に対する閾値判定の結果、及び、差分値配列データの分散値に対する閾値判定の結果に基づいて、差分値配列データ中の差分値のなだらかな変化の有無を判定することと、を含む。
【0008】
一側面に係る解析プログラムは、コンピュータに、配列配置された複数のセンサから取得されたそれぞれのセンサ値を複数のセンサの配列位置に対応付けたセンサ値配列データを解析する処理を実行させる解析プログラムであって、コンピュータに、センサ値同士が互いに異なる時刻に取得された2つのセンサ値配列データにおいて、2つのセンサ値配列データのセンサ値同士の差分値を複数のセンサの配列位置に対応付けた差分値配列データを生成する処理と、差分値配列データから、互いの要素数が同じであり且つ一部の要素が互いに重複する2つの部分差分値配列データを生成する処理と、2つの部分差分値配列データの差分値同士の類似度に対する閾値判定の結果、及び、差分値配列データの分散値に対する閾値判定の結果に基づいて、差分値配列データ中の差分値のなだらかな変化の有無を判定する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のセンサのセンサ値同士の間のなだらかな変化の検出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る検出装置100の概略構成の例を示す図である。
図2】検出装置100に含まれるセンサ1の概略構成の例を示す図である。
図3】センサ値配列データ7の例を示す図である。
図4】差分値配列データ8-1の例を示す図である。
図5】部分差分値配列データ9―1及び部分差分値配列データ9-2の例を示す図である。
図6】差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化の例を示す図である。
図7図6の差分値配列データ8-1から生成される部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の類似を模式的に示す図である。
図8】差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVの局所的な変化の例を示す図である。
図9図8の差分値配列データ8-1から生成される部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の類似を模式的に示す図である。
図10】検出装置100において実行される処理(検出方法、解析方法)の例を示すフローチャートである。
図11】検出ユニット2のハードウェア構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ実施形態について説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る検出装置100の概略構成の例を示す図である。図2は、検出装置100に含まれるセンサ1の概略構成の例を示す図であり、図1のII線に沿ってみた断面を模式的に示す。検出装置100は、複数のセンサ1と、検出ユニット2とを含む。複数のセンサ1及び検出ユニット2は、少なくとも各センサ1から検出ユニット2にデータ送信できるように、通信可能に構成される。通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0013】
検出装置100は、例えば対象物の状態変化の検出に用いられる。対象物として、配管50の一部が例示される。配管50は円筒形状を有し、対応する円筒座標系も図示される。θ方向は、配管50の周方向に相当する。z方向は、配管50の軸方向(延在方向)に相当する。r方向は、配管50の径方向に相当する。
【0014】
複数のセンサ1は、配管50に対して配列配置される。この例では、複数のセンサ1は、配管50の側面に沿って、θ方向及びz方向に2次元状に配列配置される。複数のセンサ1を、センサ群Gとも称し図示する。センサ群Gは、複数のセンサ1を用いて配管50の状態の計測を行う計測部として機能する。
【0015】
センサ群G中の1つのセンサ1の位置を基準として、各センサ1の配列位置が特定される。以下では、もっとも左上(r正方向側及びz負方向側)に位置するセンサ1の位置を基準とする。θ正方向における配列番号をmとし、z正方向における配列番号をnとすると、各センサ1の配列位置は、(m,n)として特定される。mは0~Mまでの整数であり、nは0~Nまでの整数であるものとする。θ正方向には、m=0~Mの(M+1個の)センサ1が配置される。z正方向には、n=0~Nの(N+1個の)センサ1が配置される。
【0016】
センサ1の検出値(計測値等)を、センサ値SVと称する。複数のセンサ1それぞれのセンサ値SVは、検出ユニット2に送信される。
【0017】
検出ユニット2は、配管50の状態変化を検出する。一実施形態において、配管50は、金属製の配管であってよい。センサ1は、磁気センサであってよく、センサ値SVは、配管50の周囲に生じる磁場の向き、大きさ等を示す値であってよい。検出ユニット2は、配管50の局所腐食の発生を検出してよい。すなわち、一例として、検出ユニット2を含む検出装置100は、局所腐食検出(又は監視)装置として機能する。とくに説明がある場合を除き、以下では、検出ユニット2は、配管50の局所腐食の発生を検出するものとする。
【0018】
なお、複数のセンサ1及び検出ユニット2のうちの複数のセンサ1は、検出装置100の構成要件であってもよいし、検出装置100の構成要件でなくてもよい。検出ユニット2は、複数のセンサ1の近くに設けられたコンピュータ等であってもよく、センサ1とは例えば図示しないネットワークを挟んで遠隔に設けられたコンピュータ、上位装置等であってもよい。検出装置100は、複数のセンサ1及び検出ユニット2を例えば一体に含む装置であってもよい。
【0019】
図1には、検出ユニット2の機能ブロックも例示される。検出ユニット2は、取得部3と、解析部4と、表示部5と、記憶部6とを含む。
【0020】
先に記憶部6について説明する。記憶部6に記憶される情報として、解析プログラムAP、複数のセンサ値配列データ7、複数の差分値配列データ8及び複数の部分差分値配列データ9が例示される。便宜上、複数のセンサ値配列データ7を、センサ値配列データ7-1、センサ値配列データ7-2等と称し図示する。なお、図1に示される例では、センサ値配列データ7-1は、未だ記憶部6に記憶されていない。複数の差分値配列データ8を、差分値配列データ8-1、差分値配列データ8-2等と称し図示する。複数の部分差分値配列データ9を、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2と称し図示する。解析プログラムAPは、コンピュータを検出ユニット2として機能させるためのプログラム(ソフトウェア)である。センサ値配列データ7、差分値配列データ8、部分差分値配列データ9については後述する。
【0021】
取得部3は、複数のセンサ1それぞれのセンサ値SVを取得する。取得部3によって取得された複数のセンサ値SVが、センサ値配列データ7として扱われる。センサ値配列データ7について、図3を参照して説明する。
【0022】
図3は、センサ値配列データ7の例を示す図である。センサ値配列データ7は、複数のセンサ1それぞれのセンサ値SVを、複数のセンサ1の配列位置に対応付けたデータである。1つのセンサ値SVが、センサ値配列データ7中の1つの要素に対応する。ここでの1つの要素は、センサ値SVとそのセンサ値SVに対応付けたセンサ1の配列位置とから構成(又は特定)される。θ方向には、m=0~Mまでの(M+1個の)センサ値SVが配列される。z方向には、n=0~Nまでの(N+1個の)センサ値SVが配列される。センサ値配列データ7の要素数は、(M+1)×(N+1)個である。
【0023】
図1に戻り、取得部3によるセンサ値配列データ7の取得は、所定周期で繰り返し行われたり、ユーザ操作等に応じた任意のタイミングで行われたりする。所定周期の例は、数時間、数日、数週間等である。取得部3によって取得されたセンサ値配列データ7は、記憶部6に記憶される。これが繰り返されることで、センサ値SV同士が互いに異なる時刻に取得された複数のそれぞれのセンサ値SVを有する複数のセンサ値配列データ7が記憶部6に蓄積される。
【0024】
図1に示されるセンサ値配列データ7-1及びセンサ値配列データ7-2のうち、センサ値配列データ7-1は、取得部3によって今回取得されたセンサ値配列データ7である。センサ値配列データ7-2は、取得部3によって前回取得されたセンサ値配列データ7である。センサ値配列データ7-1の取得時刻は、センサ値配列データ7-2の取得時刻よりも遅い。図1に示される状態では、センサ値配列データ7-1は未だ記憶部6には記憶されておらず、それよりも以前に取得されたセンサ値配列データ7-2等が記憶部6に記憶されている。
【0025】
解析部4は、配管50の状態変化、すなわち局所腐食の発生の有無を検出するために、センサ値配列データ7-1を解析する。具体的に説明する。
【0026】
解析部4は、センサ値配列データ7-1及びセンサ値配列データ7-2の差分を算出することで、差分値配列データ8-1を生成する。差分値配列データ8-1について、図4を参照して説明する。
【0027】
図4は、差分値配列データ8-1の例を示す図である。差分値配列データ8-1は、センサ値配列データ7-1及びセンサ値配列データ7-2のセンサ値SV同士の差分値ΔSVを、複数のセンサ1の配列位置に対応付けたデータである。差分値ΔSV(m,n)は、センサ値配列データ7-2のセンサ値SV(m,n)に対するセンサ値配列データ7-1のセンサ値SV(m,n)の差分値である。1つの差分値ΔSVが、差分値配列データ8―1中の1つの要素に対応する。ここでの1つの要素は、差分値ΔSVとその差分値ΔSVに対応付けたセンサ1の配列位置とから構成される。θ方向には、m=0~Mまでの(M+1個の)差分値ΔSVが配列される。z方向には、n=0~Nまでの(N+1個の)差分値ΔSVが配列される。差分値配列データ8-1の要素数は、(M+1)×(N+1)個である。
【0028】
図1に戻り、配管50の経時劣化等により、配管50に局所腐食が発生する。ここでの局所は、複数のセンサ1が配置されたセンサ群Gの範囲よりも狭い範囲、例えばセンサ群Gの範囲の半分に満たないような狭い範囲を意味する。配管50に局所腐食が発生すると、対応する位置に配置されたセンサ1のセンサ値SVが変化する。この変化は、センサ値配列データ7-1及びセンサ値配列データ7-2のセンサ値SV同士の局所的な差分、すなわち差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVに対応付けたセンサ1の配列位置における局所的な変化として現れる。配管50の局所腐食に起因して生じる差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVに対応付けたセンサ1の配列位置における局所的な変化を検出することで、配管50の局所腐食の発生を検出できる。
【0029】
一方で、複数のセンサ1のセンサ値SVが外乱の影響を受ける場合がある。外乱の要因の例は、磁石の存在等であり、センサ群Gの近傍を除く場所に存在することが多い。このような外乱に起因して、センサ群G中に、なだらかな空間分布を有する磁界が発生する。この分布に沿って、複数のセンサ1それぞれのセンサ値SVが変化する。すなわち、複数のセンサ1のセンサ値SV同士の間になだらかな変化が生じる。この変化は、センサ値配列データ7-1及びセンサ値配列データ7-2のセンサ値SV同士のなだらかな差分、すなわち差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化として現れる。ここでの差分値ΔSVの空間分布がなだらかな変化は、上述の局所的な差分値ΔSVの変化よりも緩やかな変化であり、例えばセンサ群Gの範囲の半分以上或いは大半にわたるような緩やかな変化を意味する。なお、配管50の側面(曲面)に沿った分布を持つ磁界が発生するような外乱の場合には、差分値ΔSVのなだらかな変化が現れない可能性もあるが、そのような例外的な外乱はここでは考慮しなものとする。
【0030】
外乱を区別するために、外乱を検出する必要がある。すなわち、複数のセンサ1のセンサ値SV同士の間のなだらかな変化、より具体的には、差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化を検出する必要がある。冒頭で述べたように、特許文献1のようなパターンマッチングでは対応が難しい。
【0031】
平均値や分散値等の統計値を用いる手法も考えられる。すなわち、外乱に起因して、センサ群G内に同じ方向の磁場が発生すると、差分値配列データ8-1中の複数の差分値ΔSVの平均値が変化する。平均値に対する閾値判定により、外乱を検出できる可能性がある。また、外乱に起因して、センサ群G内にさまざまな方向の磁場が発生すると、分散値が変化する。分散値に対する閾値判定により、外乱を検出できる可能性がある。
【0032】
しかしながら、上述のような統計値だけでは、差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVの局所的な変化となだらかな変化とを区別できず、外乱の検出は難しい。差分値配列データ8-1中の各差分値ΔSVは、正値及び負値のいずれにもなり得るので、平均値は、ゼロも含めたどのような値にもなり得る。差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化を検出することはできない。分散値は大きくなる傾向を示すが、差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVの局所的な変化も同様の傾向を示すため、区別が難しい。
【0033】
そこで、本実施形態では、解析部4は、次に説明する手法により外乱を検出する。まず、解析部4は、差分値配列データ8-1から、互いの要素数が同じであり且つ一部の要素が互いに重複する2つの部分差分値配列データ9を生成する。ここでいう重複する要素は、生成もとの差分値配列データ8-1中の同じ要素を意味している。2つの部分差分値配列データ9のうちの第1の部分差分値配列データ9が、部分差分値配列データ9-1である。第2の部分差分値配列データ9が、部分差分値配列データ9-2である。図5も参照して説明する。
【0034】
図5は、部分差分値配列データ9―1及び部分差分値配列データ9-2の例を示す図である。部分差分値配列データ9-1は、差分値配列データ8-1における第1の範囲の要素で構成される。部分差分値配列データ9-2は、差分値配列データ8-1における第2の範囲の要素で構成される。第2の範囲は、第1の範囲に対して、差分値配列データ8-1の配列方向、より具体的には差分値SVに対応付けた複数のセンサ1の配列位置の配列方向に所定数の要素分だけずれている。所定数は、差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化と局所的な変化を区別できる範囲となる任意の数に定められてよい。配列方向としてθ方向及びz方向が存在するが、θ方向における所定数とz方向における所定数とは、同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0035】
図5に示される例では、所定数はθ方向およびz方向においてそれぞれ1である。差分値配列データ8-1における第1の範囲は、m=0~(M-1)、n=0~(N-1)までの範囲である。θ方向には、m=0~(M-1)までの(M個の)差分値ΔSVが配列される。z方向には、n=0~(N-1)までの(N個の)差分値ΔSVが配列される。部分差分値配列データ9-1の要素数は、(M×N)個である。
【0036】
差分値配列データ8-1における第2の範囲は、m=1~M、n=1~Nまでの範囲である。θ方向には、m=1~Mまでの(M個の)差分値ΔSVが配列される。z方向には、n=1~Nまでの(N個の)差分値ΔSVが配列される。部分差分値配列データ9-2の要素数は、(M×N)個である。
【0037】
解析部4は、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の差分値ΔSV同士の類似度を算出する。類似度の例は、相関係数等である。類似度の算出においては、部分差分値配列データ9-1中の要素(m,n)と、部分差分値配列データ9-2中の要素(m+1,n+1)とが対応するものとして扱われる。
【0038】
<第1の判定>
解析部4は、類似度に対する閾値判定(第1の判定)を行う。例えば、解析部4は、類似度が閾値以上及び閾値未満のいずれであるのかを判定する。ここで、差分値配列データ8-1中に差分値ΔSVのなだらかな変化が存在する場合の類似度は、局所的な変化だけが存在する場合の類似度よりも大きくなる。図6図9を参照して説明する。
【0039】
図6は、差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化の例を示す図である。差分値ΔSVの大きさの分布が、ハッチングで模式的に示される。差分値ΔSVの大きさが小から大になる範囲及び大から小になる範囲の空間分布が広くなだらかに示されている。
【0040】
図7は、図6の差分値配列データ8-1から生成される部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の類似を模式的に示す図である。図6のハッチング部分の輪郭だけが破線で示されるとともに、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2が重ねて図示される。理解されるように、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の重複部分において、差分値ΔSVが同様の傾向で変化する部分が多く存在する。そのため、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の差分値ΔSV同士の類似度は大きくなる。
【0041】
図8は、差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVの局所的な変化の例を示す図である。上述の図6よりも狭い局所的な範囲で、差分値ΔSVが変化している。
【0042】
図9は、図8の差分値配列データ8-1から生成される部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の類似を模式的に示す図である。図8のハッチング部分の輪郭だけが破線で示されるとともに、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2が重ねて図示される。理解されるように、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の重複部分において、差分値ΔSVが同様の傾向で変化する部分が少ない。そのため、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の差分値ΔSV同士の類似度は小さくなる。
【0043】
類似度に対する閾値は、例えば上記の図6及び図7に示されるような差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化と、上記の図8及び図9に示されるような差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVの局所的な変化とを区別できるように設定される。また、閾値は、実環境で使用されるセンサ1のホワイトノイズ、周囲の装置等から発せられるノイズ、環境温度の変化に伴う温度補正誤差を考慮して設定される。
【0044】
<第2の判定>
図1に戻り、解析部4は、第1の判定に加えて、差分値配列データ8-1の分散値に対する閾値判定(第2の判定)を行う。具体的に、解析部4は、差分値配列データ8-1の要素である複数の差分値ΔSVを母集団として、その母集団の分散値を算出する。解析部4は、算出した分散値に対する閾値判定を行う。例えば、解析部4は、分散値が閾値以上及び閾値未満のいずれであるのかを判定する。
【0045】
<第3の判定>
解析部4は、上述の第1の判定の結果及び第2の判定の結果に基づいて、差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化の有無を判定する(第3の判定)。具体的に、解析部4は、第1の判定において類似度が閾値以上であり、且つ、第2の判定において分散値が閾値以上である場合に、差分値配列データ8-1中に差分値ΔSVのなだらかな変化、すなわち外乱が存在すると判定し、そうでない場合、解析部4は、差分値配列データ8-1中に差分値ΔSVのなだらかな変化は存在しないと判定する。このようにして、複数のセンサ1の異なる時刻に取得されたセンサ値SV同士の間のなだらかな変化、すなわち外乱を検出することができる。
【0046】
上記の第1~第3の判定によって外乱の検出が可能な理由について、判定のベースとなる差分値配列データ8-1を以下の3通りに分類して説明する。
分類1:差分値配列データ8-1は、ランダムノイズしか含まない。
分類2:差分値配列データ8-1は、ランダムノイズ、及び、一部の要素にランダムノイズよりも大きな値を含む。
分類3:差分値配列データ8-1は、ランダムノイズ、及び、要素全体にわたってランダムノイズがなだらかな分布となる値を含む。
【0047】
さらに、上記の分類1~分類3に対して、差分値配列データ8-1に含まれるランダムノイズが、例えば実環境や周囲の装置や環境温度から想定される想定値と同等である場合、想定値よりも小さい場合、及び、想定値よりも大きい場合のそれぞれについての第1の判定における類似度及び第2の判定における分散値のふるまいを、下記の表1に示す。これは、判定の閾値が、実環境でセンサ1を使用する場合、センサ1のホワイトノイズに加え、周囲の装置等から発せられるノイズや、環境温度の変化に伴う温度補正誤差を考慮して決定されることから、周囲の状況によっては想定よりもランダムノイズが小さい場合、あるいは大きい場合が存在するためである。なお、表1中の「小」は、類似度や分散値が閾値未満であることを示し、「大」は、類似度や分散値が閾値以上であることを示す。
【表1】
【0048】
上記の表1に示されるように、分類1~分類3のうち、分類3においてのみ、ランダムノイズがいずれのパターンであっても、類似度及び分散値のいずれもが「大」となる。すなわち、第3の判定において、差分値配列データ8-1中に差分値ΔSVのなだらかな変化が存在すると判定される。従って、外乱の検出が可能である。
【0049】
解析部4は、外乱を検出すると、差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化が除去されるように、センサ値配列データ7-1を修正する。例えば、解析部4は、センサ値配列データ7-1のセンサ値SVを、センサ値配列データ7-2のセンサ値SVに置き換える。これにより、センサ値配列データ7-1から、外乱の影響が除去される。なお、修正後のセンサ値配列データ7-1及び(修正していない)センサ値配列データ7-2に基づいて、差分値ΔSVのなだらかな変化が除去された差分値配列データ8-1を実際に生成する必要はない。
【0050】
解析部4は、センサ値配列データ7-1に基づいて、配管50の局所腐食の発生の有無を判定する。ここでのセンサ値配列データ7-1は、上記の修正が行われた場合には、修正後のセンサ値配列データ7-1である。解析部4は、記憶部6に記憶された複数のセンサ値配列データ7の1つを、基準センサ値配列データとして読み出す。基準センサ値配列データは、配管50の局所腐食が発生する前に取得されたセンサ値配列データ7であり、例えば検出装置100のユーザ(配管50の管理者等)によって予め選定される。基準センサ値配列データは、外乱の影響の無いセンサ値配列データ7でもある。
【0051】
解析部4は、センサ値配列データ7-1のセンサ値SVと、基準センサ値配列データのセンサ値SVとの差分値ΔSVを算出することによって、差分値配列データ8-2(第2の差分値配列データ8)を生成する。差分値配列データ8-2の基本的なデータ構造は、差分値配列データ8-1と同様であるので説明は省略する。
【0052】
解析部4は、差分値配列データ8-2中の差分値ΔSVの局所的な変化の有無を判定する。判定手法はとくに限定されないが、例えばパターンマッチングが用いられてよい。差分値配列データ8-2中に差分値ΔSVの局所的な変化が有る場合、解析部4は、配管50に局所腐食が発生していると判定する。そうでない場合、解析部4は、配管50に局所腐食は発生していないと判定する。このようにして、複数のセンサ1の異なる時刻に取得されたセンサ値SV同士の間の局所的な変化、すなわち配管50の局所腐食を検出することができる。
【0053】
表示部5は、解析部4の解析結果を表示する。例えば、配管50の局所腐食の発生の有無を示す情報が、検出装置100のユーザに対して表示される。解析部4の解析結果を、配管50のメンテナンスの要否等の判断等に供することができる。
【0054】
図10は、検出装置100において実行される処理(検出方法、解析方法)の例を示すフローチャートである。具体的な処理はこれまで説明したとおりであるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0055】
ステップS1において、センサ値配列データ7-1が取得される。検出ユニット2の取得部3は、複数のセンサ1から取得されたそれぞれのセンサ値SVを複数のセンサ1の配列位置に対応付けたセンサ値配列データ7-1を取得する。
【0056】
ステップS2において、センサ値配列データ7-2が読み出される。検出ユニット2の解析部4は、記憶部6に記憶されたセンサ値配列データ7-2を読み出す。
【0057】
ステップS3において、差分値配列データ8-1が生成される。検出ユニット2の解析部4は、センサ値配列データ7-1及びセンサ値配列データ7-2のセンサ値SV同士の差分値ΔSVを複数のセンサ1の配列位置に対応付けた差分値配列データ8-1を生成する。
【0058】
ステップS4において、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2が生成される。検出ユニット2の解析部4は、差分値配列データ8-1から、互いの要素数が同じであり且つ一部の要素が互いに重複する部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2を生成する。
【0059】
ステップS5において、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の差分値ΔSV同士の類似度が算出される。検出ユニット2の解析部4は、例えば、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の差分値ΔSV同士の相関係数を算出する。
【0060】
ステップS6において、類似度に対する閾値判定(第1の判定)が行われる。検出ユニット2の解析部4は、上記の類似度が閾値以上及び閾値未満のいずれであるかを判定する。
【0061】
ステップS7において、差分値配列データ8-1の分散値が算出される。検出ユニット2の解析部4は、差分値配列データ8-1の要素である複数の差分値ΔSVを母集団として、その母集団の分散値を算出する。
【0062】
ステップS8において、分散値に対する閾値判定(第2の判定)が行われる。検出ユニット2の解析部4は、上記の分散値が閾値以上及び閾値未満のいずれであるかを判定する。
【0063】
ステップS9において、類似度が閾値以上であり且つ分散値が閾値以上であるか否かの判定(第3の判定)が行われる。検出ユニット2の解析部4は、上記の第1の判定において類似度が閾値以上であり、且つ、上記の第2の判定において分散値が閾値以上であるか否かを判定する。類似度及び分散値がいずれも閾値以上の場合(ステップS9:Yes)、解析部4は、差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化が存在すると判定、すなわち外乱を検出し、ステップS10に処理を進める。そうでない場合(ステップS9:No)、ステップS11に処理が進められる。
【0064】
ステップS10において、外乱の影響が除去されるように、センサ値配列データ7-1が修正される。例えば、検出ユニット2の解析部4は、センサ値配列データ7-1のセンサ値SVを、センサ値配列データ7-2のセンサ値SVに置き換える。
【0065】
ステップS11において、基準センサ値配列データが読み出される。検出ユニット2の解析部4は、記憶部6に記憶された複数のセンサ値配列データ7のうちの1つを、基準センサ値配列データとして読み出す。
【0066】
ステップS12において、局所腐食の発生の有無が判定される。検出ユニット2の解析部4は、センサ値配列データ7-1のセンサ値SVと、基準センサ値配列データのセンサ値SVとの差分値ΔSVを算出することによって、差分値配列データ8-2を生成する。ここでのセンサ値配列データ7-1は、上記の修正が行われた場合は、修正後のセンサ値配列データ7-1である。解析部4は、差分値配列データ8-2中の差分値ΔSVの局所的な変化の有無を判定する。差分値配列データ8-2中の差分値ΔSVの局所的な変化が存在する場合、解析部4は、配管50に局所腐食が発生していると判定する。
【0067】
ステップS13において、センサ値配列データ7-1が記憶される。センサ値配列データ7-1が、記憶部6に記憶され、蓄積される。先のステップS10の処理が実行された場合には、外乱の影響が除去されたセンサ値配列データ7-1が記憶部6に記憶される。
【0068】
ステップS14において、解析結果が表示される。検出ユニット2の表示部5は、解析部4の解析結果を表示する。
【0069】
例えば上記の処理が所定周期で繰り返し実行されることにより、配管50の局所腐食の発生が検出される。配管50の局所腐食監視が行われる。なお、ステップS10~ステップS12の処理の実行は任意である。
【0070】
図11は、検出ユニット2のハードウェア構成の例を示す図である。例示されるようなコンピュータが、これまで説明した検出ユニット2として機能する。コンピュータのハードウェア構成として、バス等で相互に接続される通信装置2a、表示装置2b、記憶装置2c、メモリ2d及びプロセッサ2eが例示される。
【0071】
通信装置2aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他の装置との通信を可能にする。通信装置2aは、検出ユニット2の取得部3に相当し得る。表示装置2bは、検出ユニット2の表示部5に相当し得る。記憶装置2c及びメモリ2dは、検出ユニット2の記憶部6に相当し得る。記憶装置2cの具体例は、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等である。メモリ2dは、記憶装置2cの一部であってよい。
【0072】
プロセッサ2eは、検出ユニット2の解析部4に相当し得る。例えば、プロセッサ2eは、図1の解析プログラムAP等のプログラムを記憶装置2c等から読み込んで(読み出して)メモリ2dに展開することで、検出ユニット2の解析部4による処理をコンピュータに実行させる。
【0073】
プログラムは、インターネットなどのネットワークを介してまとめて又は別々に配布することができる。また、それらのプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体にまとめて又は別々に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み込まれることによって実行することができる。
【0074】
<変形例>
開示される技術は、上記の実施形態に限定されない。いくつかの変形例について述べる。
【0075】
上記実施形態では、複数のセンサ1が2次元状に配列配置される場合を例に挙げて説明した。ただし、複数のセンサ1は、1次元状に配列配置されてもよいし、3次元状に配列配置されてもよい。例えば複数のセンサ1が1次元状に(直線状に)配置される場合、各センサ1の配列位置は、一端を(0)とし、そこからn番目を(n)として特定される。N+1個の要素がある場合、部分差分値配列データ9-1は、(0)~(N-1)の範囲の要素で構成される。部分差分値配列データ9-2は、(1)~(N)の範囲の要素で構成される。部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の差分値ΔSV同士の類似度(相関係数等)の算出においては、部分差分値配列データ9-1の(n)の要素が部分差分値配列データ9-2の(n+1)の要素に対応するものとして扱われる。これまで説明した原理と同様の原理により、複数のセンサ1の異なる時刻に取得されたセンサ値SV同士の間のなだらかな変化、すなわち外乱を検出することができる。3次元状に配列配置された場合も同様である。
【0076】
センサ1は、磁気センサに限定されない。センサ1は、さまざまな物理量を検出することのできる検出手段、計測手段等の意味に解されてよい。センサ1のセンサ値SVは、あらゆる物理量を示すものであってよい。
【0077】
検出装置100の対象物は、配管50に限定されない。検出装置100によって検出される対象物の状態変化は、局所腐食に限定されない。
【0078】
開示される技術は、矛盾の無い範囲において適宜組み合わされてよい。
【0079】
以上で説明した技術は、例えば次のように特定される。開示される技術の1つは、検出装置100である。図1図10等を参照して説明したように、検出装置100は、配管50(対象物)に対して配列配置された複数のセンサ1から取得されたそれぞれのセンサ値SVを複数のセンサ1の配列位置に対応付けたセンサ値配列データ7-1に基づいて配管50の状態変化を検出する解析部4、を備える。解析部4は、センサ値SV同士が互いに異なる時刻に取得されたセンサ値配列データ7-1及びセンサ値配列データ7-2において、センサ値配列データ7-1及びセンサ値配列データ7-2のセンサ値SV同士の差分値ΔSVを複数のセンサ1の配列位置に対応付けた差分値配列データ8-1を生成し、差分値配列データ8-1から、互いの要素数が同じであり且つ一部の要素が互いに重複する部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2を生成し、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の差分値ΔSV同士の類似度(例えば相関係数)に対する閾値判定(第1の判定)の結果、及び、差分値配列データ8-1の分散値に対する閾値判定(第2の判定)の結果に基づいて、差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化の有無を判定する(第3の判定)。例えば、解析部4は、類似度が閾値以上であり且つ前記分散値が閾値以上である場合に、差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化が存在すると判定してよい。このようにして、複数のセンサ1のセンサ値SV同士の間のなだらかな変化、例えば外乱を検出することができる。
【0080】
図5等を参照して説明したように、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2のうちの部分差分値配列データ9-1(第1の部分差分値配列データ9)は、差分値配列データ8-1における第1の範囲の要素で構成され、部分差分値配列データ9-2(第2の部分差分値配列データ9)は、差分値配列データ8-1における第2の範囲の要素で構成され、第2の範囲は、第1の範囲に対して、差分値配列データの差分値ΔSVに対応付けたセンサ1の配列位置の配列方向に所定数(例えば1)の要素分だけずれていてよい。例えばこのように互いに所定数だけずらした部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の差分値ΔSV同士の類似度に対する閾値判定の結果に基づいて、部分差分値配列データ9-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化の有無を検出することができる。
【0081】
図1等を参照して説明したように、解析部4は、センサ値配列データ7-1及びセンサ値配列データ7-2のうちの取得された時刻が遅い方のセンサ値SVを有するセンサ値配列データ7-1を修正し、修正後のセンサ値配列データ7-1に基づいて、配管50の状態変化を検出してよい。例えば、解析部4は、修正後のセンサ値配列データ7-1及び基準センサ値配列データ(センサ値配列データ7の1つ)のセンサ値SV同士の差分値ΔSVを複数のセンサ1の配列位置に対応付けた差分値配列データ8-2(第2の差分値配列データ8)を生成し、生成した差分値配列データ8-2中の差分値ΔSVの局所的な変化の有無を判定してよい。これにより、例えば外乱の影響を除去したうえで、配管50の状態変化を検出することができる。
【0082】
図1等を参照して説明したように、配管50は、金属製の配管であり、複数のセンサ1は、複数の磁気センサであり、配管50の状態変化は、配管50の局所腐食の発生の有無を含んでよい。これにより、検出装置100を、例えば配管50の局所腐食の発生を検出する局所腐食監視装置として用いることができる。
【0083】
図1及び図2等を参照して説明したように、配管50は、円筒形状を有し、複数のセンサ1は、円筒座標系の周方向(θ方向)及び軸方向(z方向)に2次元状に配列配置されてよい。例えばこのように配列配置された複数のセンサ1のセンサ値SV同士の間のなだらかな変化を検出することができる。
【0084】
なお、上述の各特徴のうちの排他的でない特徴は任意に組み合わされてよい。
【0085】
図10等を参照して説明した解析方法も、開示される技術の1つである。解析方法は、配列配置された複数のセンサ1から取得されたそれぞれのセンサ値SVを複数のセンサの配列位置に対応付けたセンサ値配列データ7-1を解析する方法である。解析方法は、センサ値SV同士が互いに異なる時刻に取得されたセンサ値配列データ7-1及びセンサ値配列データ7-2において、センサ値配列データ7-1及びセンサ値配列データ7-2のセンサ値SV同士の差分値ΔSVを複数のセンサ1の配列位置に対応付けた差分値配列データ8-1を生成すること(ステップS3)と、差分値配列データ8-1から、互いの要素数が同じであり且つ一部の要素が互いに重複する部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2を生成すること(ステップS4)と、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の差分値ΔSV同士の類似度に対する閾値判定(第1の判定)の結果、及び、差分値配列データ8-1の分散値に対する閾値判定(第2の判定)の結果に基づいて、差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化の有無を判定する(第3の判定)こと(ステップS6~ステップS9)と、を含む。このような解析方法によっても、これまで説明したように、複数のセンサ1のセンサ値SV同士の間のなだらかな変化を検出することができる。
【0086】
図1及び図11等を参照して説明した解析プログラムAPも、開示される技術の1つである。解析プログラムAPは、コンピュータに、配列配置された複数のセンサ1から取得されたそれぞれのセンサ値SVを複数のセンサ1の配列位置に対応付けたセンサ値配列データ7-1を解析する処理を実行させる。解析プログラムAPは、コンピュータに、センサ値SVが互いに異なる時刻に取得されたセンサ値配列データ7-1及びセンサ値配列データ7-2において、センサ値配列データ7-1及びセンサ値配列データ7-2のセンサ値SV同士の差分値ΔSVを複数のセンサ1の配列位置に対応付けた差分値配列データ8-1を生成する処理と、差分値配列データ8-1から、互いの要素数が同じであり且つ一部の要素が互いに重複する部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2を生成する処理と、部分差分値配列データ9-1及び部分差分値配列データ9-2の差分値ΔSV同士の類似度に対する閾値判定の結果、及び、差分値配列データ8-1の分散値に対する閾値判定の結果に基づいて、差分値配列データ8-1中の差分値ΔSVのなだらかな変化の有無を判定する処理と、を実行させる。このような解析プログラムAPによっても、これまで説明したように、複数のセンサ1のセンサ値SV同士の間のなだらかな変化を検出することができる。また、解析プログラムAPが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、開示される技術の1つである。
【符号の説明】
【0087】
100 検出装置
50 配管(対象物)
1 センサ
2 検出ユニット
3 取得部
4 解析部
5 表示部
6 記憶部
AP 解析プログラム
7 センサ値配列データ
7-1 センサ値配列データ
7-2 センサ値配列データ
8 差分値配列データ
8-1 差分値配列データ
8-2 差分値配列データ
9 部分差分値配列データ
9-1 部分差分値配列データ
9-2 部分差分値配列データ
2a 通信装置
2b 表示装置
2c 記憶装置
2d メモリ
2e プロセッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11