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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175328
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】間欠運転焼却施設及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/44 20060101AFI20231205BHJP
   F23G 5/46 20060101ALI20231205BHJP
   H02S 10/30 20140101ALI20231205BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20231205BHJP
   C07C 1/12 20060101ALI20231205BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
F23G5/44 Z
F23G5/46 Z
H02S10/30
B01D53/62 ZAB
C07C1/12
C07C9/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087716
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000136804
【氏名又は名称】株式会社プランテック
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100209129
【弁理士】
【氏名又は名称】山城 正機
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕史
(72)【発明者】
【氏名】掃部 宏文
(72)【発明者】
【氏名】湯上 浩雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 信
【テーマコード(参考)】
3K065
4D002
4H006
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
3K065AA16
3K065AB01
3K065AC01
3K065BA06
3K065HA02
3K065HA03
3K065JA02
4D002AA09
4D002AC04
4D002BA04
4D002BA13
4D002BA14
4D002BA20
4D002FA01
4H006AA04
4H006AB44
4H006AC11
4H006BE20
4H006BE41
5F151AA08
5F151DA10
5F251AA08
5F251DA10
(57)【要約】
【課題】間欠運転を行う焼却炉を備える間欠運転焼却施設として、被焼却物を燃焼した際に発生する廃熱を無駄にすることなく、施設内で有効利用することが可能な間欠運転焼却施設を提供する。
【解決手段】本発明の間欠運転焼却施設は、一日の中で燃焼運転、立ち下げ運転、休止状態及び立ち上げ運転を行い被焼却物を燃焼する燃焼室を備える焼却炉と、燃焼室に配設され、被焼却物の燃焼に伴い発生する熱を電気エネルギに変換して電力を発生させる発電ユニットと、発電ユニットで発生した電力を水電気分解装置に供給する電力供給手段と、焼却炉から排出される燃焼排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離手段と、水電気分解装置で発生した水素と二酸化炭素分離手段で分離された二酸化炭素を合成してメタンガスを生成するメタンガス生成手段と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一日の中で燃焼運転、立ち下げ運転、休止状態及び立ち上げ運転を行い被焼却物を燃焼する燃焼室を備える焼却炉と、
前記燃焼室に配設され、被焼却物の燃焼に伴い発生する熱を電気エネルギに変換して電力を発生させる発電ユニットと、
前記発電ユニットで発生した電力を水電気分解装置に供給する電力供給手段と、
前記焼却炉から排出される燃焼排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離手段と、
前記水電気分解装置で発生した水素と前記二酸化炭素分離手段で分離された二酸化炭素を合成してメタンガスを生成するメタンガス生成手段と、
を備えた間欠運転焼却施設。
【請求項2】
前記発電ユニットとして、前記燃焼室の内壁に配設されたエミッタと光電変換セルとを具備してなり熱光起電力発電を行うTPV(ThermoPhotoVoltaic)発電ユニットを使用する、
請求項1に記載の間欠運転焼却施設。
【請求項3】
前記発電ユニットとして、前記TPV発電ユニットに加え、前記TPV発電ユニットが配設される位置よりも温度が低くかつ下流の領域に配設される熱電素子を用いた熱電発電ユニットを併用する、
請求項2に記載の間欠運転焼却施設。
【請求項4】
前記燃焼室内で補助燃料を燃焼させる助燃バーナと、
前記メタンガス生成手段で生成されたメタンガスを前記助燃バーナに供給するメタンガス供給手段をさらに備え、
前記発電ユニットで発生させた電力を前記水電気分解装置に供給し、前記メタンガス生成手段で生成されたメタンガスを立ち上げ運転時及び/又は立ち下げ運転時に前記助燃バーナに供給する、
請求項1~3のいずれかに記載の間欠運転焼却施設。
【請求項5】
前記水電気分解装置で発生する酸素を、立ち上げ運転時における酸化剤として前記燃焼室に供給する、
請求項1~3のいずれかに記載の間欠運転焼却施設。
【請求項6】
前記燃焼排ガスから水蒸気を分離する水蒸気分離手段と、
前記水蒸気分離手段で分離した水蒸気を凝縮して復水とする復水器と、
前記復水器で凝縮された復水を前記水電気分解装置に供給する復水供給手段とをさらに備える、
請求項1~3のいずれかに記載の間欠運転焼却施設。
【請求項7】
前記二酸化炭素分離手段は、膜分離又は吸着又は深冷分離によって前記燃焼排ガスから二酸化炭素を分離する、
請求項1~3のいずれかに記載の間欠運転焼却施設。
【請求項8】
一日の中で燃焼運転、立ち下げ運転、休止状態及び立ち上げ運転を行い被焼却物を燃焼する燃焼室を備える焼却炉において酸化剤を用いて被焼却物の燃焼を行うステップと、
前記燃焼室に配設された発電ユニットを用い、被焼却物の燃焼に伴い発生する熱を電気エネルギに変換して電力を発生させるステップと、
前記電力を発生させるステップで発生した電力を用いて水を電気分解するステップと、
前記焼却炉から排出される燃焼排ガスから二酸化炭素を分離するステップと、
前記水を電気分解するステップで発生した水素と前記二酸化炭素を分離するステップで分離された二酸化炭素を合成してメタンガスを生成するステップと、
を備えた間欠運転焼却施設の運転方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物や産業廃棄物などの被焼却物を酸化剤を用いて焼却する焼却炉を有する間欠運転焼却施設及びその運転方法に関し、特に、二酸化炭素の排出を抑制するとともに効率よくエネルギを回収するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ごみや産業廃棄物を処理するにあたり、いわゆるストーカ式の焼却炉が用いられている。ストーカ式焼却炉は、前後又は左右方向に複数配設された火格子の前後の往復運動に伴い、ごみが前方に移動しながら徐々に乾燥及び燃焼する方式の焼却炉であり、比較的単純な構造でありながら、投入されるごみの水分や発熱量によらず大量の廃棄物を処理することができるため、多くの焼却処理施設において採用されている。
【0003】
ところで、厚生労働省は、ごみ焼却施設から排出される燃焼排ガス中に含まれるダイオキシン類に関するガイドラインを定めており、焼却炉で発生する燃焼排ガスを850℃以上の高温で2秒以上保持することによって、ダイオキシン類の前駆物質を分解するとともに燃焼排ガスの温度を概ね200℃以下に冷却して飛灰を捕集することが求められている。
【0004】
また、上記ガイドラインにおいては、焼却炉の24時間運転を行う全連続燃焼式焼却施設を推奨している。この場合、焼却炉を終日稼働させることにより、安定してダイオキシン類の発生を抑止することが可能であるが、休炉する際には、炉内に未燃物を残留させない燃し切り運転を行うことが求められる。
【0005】
このように24時間運転を行う全連続燃焼式の採用は、処理能力が大きくて作業員の確保が比較的容易な都市部の焼却炉においては可能ではあるが、ごみ処理量が多くなく作業員の確保が容易ではない地域においては実現が難しい。そのような地域においては、一日8時間程度の操業である機械化バッチ炉や、16時間操業の准連続燃焼式など、間欠運転を行う焼却施設が採用される場合もある。
【0006】
間欠運転を行う焼却炉においては、一日の中で立ち上げ運転、燃焼運転、立ち下げ運転及び休止状態を伴うため、連続運転を行う焼却炉と比較して立上げ下げの頻度が多くなる。焼却炉の立ち上げ運転時は助燃バーナを用いて補助燃料を燃焼させることにより燃焼室内を昇温し、被焼却物の投入開始後、850℃以上の定常運転に至るまで助燃バーナの使用を継続する。また、立ち下げ運転時においても被焼却物の燃焼室内への投入終了後に助燃バーナを着火し、補助燃料を燃焼させて被焼却物の燃し切りが完了したのちに助燃バーナを停止している。
【0007】
このような助燃バーナに使用するための補助燃料としては、重油や天然ガス等の化石燃料が用いられており、化石燃料の使用に伴う二酸化炭素の排出が問題となる。また、燃焼時だけでなく、化石燃料を購入し施設に搬送する際にも二酸化炭素が排出されるため、助燃バーナで化石燃料を燃焼させることに伴うトータルの二酸化炭素の排出量は膨大なものとなる。
【0008】
また、このような間欠運転を行う焼却施設において、一日の中で、日中に通常の燃焼運転を行い、夜間には休止状態となり、翌朝、再び運転を開始する運転方法を、いわゆるDSS(Daily Startup and Shutdown)運転と呼ぶ。
【0009】
循環型社会と低炭素社会の推進を背景として、焼却施設においては焼却廃熱を利用した熱回収が強く求められているが、DSS運転を行う焼却炉をはじめとして、間欠運転を行う焼却炉は、廃熱を回収するための排熱回収ボイラを有していない。というのも、熱容量が大きく常時熱を回収できるわけではない排熱回収ボイラを持つことが、設備過剰の状態を惹起するためである。そのため、間欠運転を行う焼却炉においては被焼却物の燃焼に伴い発生する熱を回収する有効な手段がなく、そのような場合、熱を無駄にしてしまうこととなる。
【0010】
そこで、近年においては、被焼却物の燃焼に伴い発生する熱を回収する手段の一つとして、燃焼室の内壁に配設されたエミッタと燃焼室外に配設された光電変換セルとを具備するTPV(ThermoPhotoVoltaic)発電ユニットが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第6824500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に開示された発明によると、被焼却物の燃焼に伴い発生した燃焼ガスの輻射熱を受け、燃焼室の内壁に配設されたエミッタから外方に向けて光が放出される。エミッタから放出された光を光電変換セルが受け、光電変換セルが電力を発生する。これがTPV発電ユニットから電力が発生する原理である。
【0013】
TPV発電ユニットが作動する温度領域は800℃程度と比較的高いため、通常運転時においてTPV発電ユニットから発生する電力を回収することで、被焼却物の燃焼に伴い発生する燃焼熱を電力に変換して利用することができる。
【0014】
ここで、TPV発電ユニットで発生する電力が、送電網を介して他の施設に供給できるほどの電力量ではない場合、施設内での有効利用が望まれる。
【0015】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、間欠運転式の焼却施設において被焼却物を燃焼した際に発生する廃熱を無駄にすることなく、施設内で有効利用することが可能であるとともに、立ち上げ運転時や立ち下げ運転時における二酸化炭素排出量を低減することが可能な間欠運焼却施設及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の発明者らは、二酸化炭素と水素からメタンガスを合成する技術に着目し、本発明に至った。
【0017】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0018】
第1の特徴に係る発明は、一日の中で燃焼運転、立ち下げ運転、休止状態及び立ち上げ運転を行い被焼却物を燃焼する燃焼室を備える焼却炉と、燃焼室に配設され、被焼却物の燃焼に伴い発生する熱を電気エネルギに変換して電力を発生させる発電ユニットと、発電ユニットで発生した電力を水電気分解装置に供給する電力供給手段と、焼却炉から排出される燃焼排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離手段と、水電気分解装置で発生した水素と二酸化炭素分離手段で分離された二酸化炭素を合成してメタンガスを生成するメタンガス生成手段と、を備える。
【0019】
第1の特徴に係る発明によれば、間欠運転を行う焼却炉において、燃焼室に配設され、被焼却物の燃焼に伴い発生する熱を電気エネルギに変換して電力を発生させる発電ユニットを用いて電力を発生させるため、排熱回収ボイラを設置しない中小規模の焼却炉であっても、廃熱を電力として回収することができる。
【0020】
そして、回収された廃熱が電気エネルギに変換され、電力として水電気分解装置の作動に用いられるため、回収した電力を有効に活用することができる。
【0021】
さらに、水電気分解装置で発生した水素と、二酸化炭素分離手段を用いて燃焼排ガスから分離した二酸化炭素とを合成してメタンガスを生成するメタンガス生成手段を備えるため、燃料ガスとして利用可能でかつ様々な箇所に供給することができる形状に変換してエネルギを回収することができる。
【0022】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、発電ユニットとして、燃焼室の内壁に配設されたエミッタと光電変換セルとを具備してなり熱光起電力発電を行うTPV(ThermoPhotoVoltaic)発電ユニットを使用する。
【0023】
第2の特徴に係る発明によると、発電ユニットとして、燃焼室の内壁に配設されたエミッタと光電変換セルとを具備した熱光起電力発電を行うTPV(ThermoPhotoVoltaic)発電ユニットを使用するため、高温域にある燃焼室において熱を電気エネルギに変換することができる。
【0024】
第3の特徴に係る発明は、第2の特徴に係る発明であって、発電ユニットとして、TPV発電ユニットに加え、TPV発電ユニットが配設される位置よりも温度が低くかつ下流の領域に配設される熱電素子を用いた熱電発電ユニットを併用する。
【0025】
第3の特徴に係る発明によると、高温域でのみ作動するTPV発電ユニットに加え、TPV発電ユニットよりも低い温度域において作動することが可能な熱電発電ユニットによる発電を併用することで、発電可能な温度域が拡張し、より広い温度域において熱を電気エネルギに変換することができる。
【0026】
第4の特徴に係る発明は、第1から第3のいずれかの特徴に係る発明であって、燃焼室内で補助燃料を燃焼させる助燃バーナと、メタンガス生成手段で生成されたメタンガスを助燃バーナに供給するメタンガス供給手段をさらに備え、発電ユニットで発生させた電力を水電気分解装置に供給し、メタンガス生成手段で生成されたメタンガスを立ち上げ運転時及び/又は立ち下げ運転時に前記助燃バーナに供給する。
【0027】
第4の特徴に係る発明によれば、発生させた電力を水電気分解装置に供給して水素及び酸素を発生させるとともに、メタンガス生成手段でメタンガスを生成し、生成されたメタンガスを立ち上げ運転時及び/又は立ち下げ運転時に助燃バーナに供給することにより、立ち上げ運転時の燃焼室内の昇温に必要な補助燃料を所内で賄うことができる。そのため、重油等の化石燃料を購入し搬送するためのコストや搬送の際の二酸化炭素排出を低減することが可能な間欠運転焼却施設を提供することができる。
【0028】
また、水電気分解装置を作動させた際に余った電力は、施設内各所の補機等の作動用の電力として使用するか、施設外へ供給することもできる。
【0029】
第5の特徴に係る発明は、第1から第3のいずれかの特徴に係る発明であって、水電気分解装置で発生する酸素を、立ち上げ運転時における酸化剤として燃焼室に供給する。
【0030】
第5の特徴に係る発明によると、立ち上げ運転時における酸化剤として空気ではなく酸素を用いることで火炎温度が上昇し、燃焼室内の温度を迅速に所定温度まで上昇させることができる。しかも、酸化剤として使用される酸素として、水電気分解装置で発生した酸素を使用するため、酸素ボンベなど他の供給源を必要としない。そのため、酸素の購入や運搬に伴うコストを低減することができるとともに、それに伴い発生する二酸化炭素の排出量も削減することができる。
【0031】
第6の特徴に係る発明は、第1から第3のいずれかの特徴に係る発明であって、燃焼排ガスから水蒸気を分離する水蒸気分離手段と、水蒸気分離手段で分離した水蒸気を凝縮して復水とする復水器と、復水器で凝縮された復水を水電気分解装置に供給する復水供給手段とをさらに備える。
【0032】
第6の特徴に係る発明によると、水電気分解装置で電気分解される水として、燃焼排ガスから分離された水を用いることができ、水を電気分解するための電力だけでなく、水までも同じ設備内でまかなうことができ、無駄のない有用な間欠運転焼却施設となる。
【0033】
第7の特徴に係る発明は、第1から第3のいずれかの特徴に係る発明であって、二酸化炭素分離手段は、膜分離法又は吸着法又は深冷分離法によって燃焼排ガスから二酸化炭素を分離する。
【0034】
第7の特徴に係る発明によれば、膜分離法又は吸着法によって燃焼排ガスから二酸化炭素を分離することで、高純度の二酸化炭素を回収することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、間欠運転を行う焼却炉を備える間欠運転焼却施設として、被焼却物を燃焼した際に発生する廃熱を無駄にすることなく、施設内で有効利用することが可能な間欠運転焼却施設及びその運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、第一実施形態に係る間欠運転焼却施設の概略系統図である。
図2図2は、第一実施形態に係る間欠運転焼却施設を用いた燃焼方法のフロー図である。
図3図3は、第二実施形態に係る間欠運転焼却施設の概略系統図である。
図4図4は、第四実施形態に係る間欠運転焼却施設の概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0038】
[間欠運転焼却施設の構成]
図1を用いて、本実施形態に係る間欠運転焼却施設の構成を説明する。
【0039】
図1は、第一実施形態にかかる間欠運転焼却施設の概略系統図を示したものであり、当該間欠運転焼却施設は、焼却炉1と、排ガス冷却装置2と、バグフィルタ3と、誘引送風機4と、二酸化炭素分離手段5と、煙突6と、水電気分解装置7と、水素供給手段8と、酸素供給手段9と、メタンガス生成手段10と、メタンガス供給手段11と、制御装置12と、発電ユニット13によって構成される。
【0040】
焼却炉1は、不定形の一般廃棄物や産業廃棄物等の廃棄物を、酸化剤を用いて燃焼、つまり酸化するものである。
【0041】
本実施形態においては、焼却炉1に適用されるものとして、一般廃棄物や産業廃棄物等の廃棄物を焼却処理する竪型ごみ焼却炉や、排ガス処理設備としてろ過式集じん器を例にとって図示しているが、焼却炉1の形式は、ストーカ炉や流動層炉など、他の形式のものであってもよく、排ガス処理設備についても触媒反応塔が追加される場合等他の処理方法でもよい。
【0042】
焼却炉1には、被焼却物を燃焼する燃焼室1a、一次燃焼空気を供給する一次燃焼空気供給手段1b、二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給手段1c、被焼却物を燃焼室1aに投入する投入装置1d、補助燃料を燃焼させる助燃バーナ1e等が配設される。これらは、後述する制御装置12からの信号によって、それぞれの運転状況を変化させることができるよう構成される。
【0043】
一次燃焼空気供給手段1bは燃焼室1aに一次燃焼空気を供給する。一次燃焼空気供給手段1bは送風機、図示しない通風路及び空気予熱器等からなる。
【0044】
二次燃焼空気供給手段1cは燃焼室1aに二次燃焼空気を供給する。二次燃焼空気供給手段1cは送風機及び図示しない通風路等からなり、燃焼室1aに二次燃焼空気を供給することで、一次燃焼空気による燃焼では燃焼しきれなかった可燃ガス成分を燃焼する。
【0045】
投入装置1dは、被焼却物を燃焼室1a内に投入するための装置であり、例えば、被焼却物である廃棄物を一時的に貯留するホッパ及び多重のゲートによって構成される。図示しないごみピットからごみクレーンによって供給された被焼却物を投入装置1dを用いて一時的に貯留し、間欠的に燃焼室1aに投入することができる。
【0046】
助燃バーナ1eは、例えば間欠運転における立ち上げ運転時及び/又は立ち下げ運転時や長期間のメンテナンス後など、燃焼室1aの温度が低下している場合において、補助燃料を燃焼することにより、燃焼室1a内を昇温し運転を補助するものである。このような追加の燃料の使用は、手軽に燃焼室1a内の温度を上げることができる一方で、二酸化炭素排出量の増加、施設運営費の増加を伴うため、なるべく使用しないことが望ましい。
【0047】
排ガス冷却装置2は、焼却炉1から排出された燃焼排ガスをバグフィルタ3に供給可能な温度であって、「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」に記された概ね200℃程度以下まで減温するものであり、例えば、冷却水を噴霧して燃焼排ガスを冷却する減温塔等によって構成される。
【0048】
バグフィルタ3は排ガス冷却装置2で減温された燃焼排ガスをろ過するろ布を備え、燃焼排ガス中に含まれる煤塵や有害成分を除去するものである。バグフィルタ入口における排ガス煙道には、バグフィルタに薬剤を吹き込むための図示しない薬剤供給装置が配設される。薬剤供給装置から供給されるアルカリ薬剤が、バグフィルタ3のろ布上において燃焼排ガス中の酸性成分と中和反応を起こすことにより、燃焼排ガスの浄化が行われる。
【0049】
誘引送風機4は、バグフィルタ3の下流に配設される送風機であり、バグフィルタ3で煤塵や有害成分が除去された燃焼排ガスを吸引して、煙突6から燃焼排ガスを大気に放出するためのものである。
【0050】
二酸化炭素分離手段5は、焼却炉1から排出されバグフィルタ3で浄化された燃焼排ガスから、燃焼排ガス中に含まれる二酸化炭素を選択的に分離するものである。燃焼排ガスから二酸化炭素を分離するための手段としては、分離膜による分離でもよいし、化学吸着や物理吸着、あるいは深冷分離法によるものであってもよい。
【0051】
煙突6は二酸化炭素が分離された燃焼排ガスを大気に放出するものである。
【0052】
水電気分解装置7は、水を電気分解して酸素と水素を発生させるものである。本実施形態における水電気分解装置7は、水を貯留する電解槽、電源、電源の正極と接続される陽極、電源の負極と接続される陰極などによって構成される。
【0053】
水素供給手段8は、水電気分解装置7で生成された水素を、後述するメタンガス生成手段10に供給するものである。
【0054】
酸素供給手段9は、水電気分解装置7で生成された酸素を一時的に貯留するとともに、一次燃焼空気供給手段1bや他の供給先に供給するものである。
【0055】
メタンガス生成手段10は、二酸化炭素分離手段5で燃焼排ガスから分離された二酸化炭素と、水電気分解装置7で生成された水素とを合成してメタンガスを生成するものである。このように、二酸化炭素と水素を用いてメタンガスを合成するものとしては、触媒を介して生じるサバティエ反応を利用したものなどが用いられるが、それに限ったものではない。
【0056】
メタンガス供給手段11は、メタンガス生成手段10で合成されたメタンガスを、一時的に貯留するとともに施設内外の所望の箇所にて燃料として利用するためのものである。メタンガス供給手段11を用いて、後述するように、補助燃料として燃焼室1aに配設される助燃バーナ1eにて利用することもできる。
【0057】
また、本実施形態に係る間欠運転焼却施設は施設全体を制御する制御装置12を有しており、制御装置12は、状況に応じて、焼却炉1において、被焼却物を焼却処理するための燃焼運転、立ち下げ運転、休止状態、及び、休止から復帰して再び燃焼運転に至るための立ち上げ運転を行う間欠運転を制御する。
【0058】
すなわち、本実施形態の焼却炉1には、高温の燃焼室1a内に一次燃焼空気及び二次燃焼空気を供給することで被焼却物を燃焼する燃焼運転と、一次燃焼空気及び二次燃焼空気の供給を実質的に停止し被焼却物を燃焼しない休止状態とがあり、燃焼運転から休止状態に至る期間が立ち下げ運転、休止状態から燃焼運転に至る状態が立ち上げ運転として定義される。
【0059】
本実施形態における制御装置12は、所定の条件に応じて一次燃焼空気供給手段1b、二次燃焼空気供給手段1c、及び、被焼却物の投入装置1dを制御することにより、燃焼運転、立ち下げ運転、休止状態及び立ち上げ運転を繰り返し、間欠運転を制御するものである。
【0060】
また、制御装置12は、各種計測機器で計測された物理量に基づいて、間欠運転焼却施設の各部を制御する。
【0061】
本実施形態における発電ユニット13は、エミッタ13aと光電変換セル13bとを具備するTPV発電ユニットによって構成される。
【0062】
エミッタ13aは、熱を光エネルギに変換する素子であり、燃焼室1aの内壁に配設される。本実施形態におけるエミッタ13aとしては、図示しない光放出面を有する高融点金属からなる平板上の波長選択エミッタが使用される。本実施形態においては、燃焼室1aに複数の開口を設け、各開口にエミッタ13aを嵌め込むことで燃焼室1aの内壁にエミッタ13aを配設している。エミッタ13aは燃焼室1aからの熱を受けて、燃焼室1a内壁とは逆側を向いた光放出面から光エネルギを放出する。エミッタ13aの光放出面には、エミッタ13aの開閉状態を制御する図示しないシャッタ装置が設置されており、制御装置12がシャッタ装置の開閉状態を制御することによって、エミッタ13aからの光エネルギの放出を制御できるようになっている。
【0063】
光電変換セル13bは、光エネルギを電気エネルギに変換する素子であり、燃焼室1a外に配設される。本実施形態における光電変換セル13bとしては、太陽電池セルとして用いられるGaSbセルが使用される。光電変換セル13bは複数のエミッタ13aと対になって配設され、各光電変換セル13bが有する受光面が、エミッタ13aの光放出面と対向するように配設される。
【0064】
〔間欠運転焼却施設を用いたエネルギ回収方法〕
次に、図2を用いて、第一実施形態に係る間欠運転焼却施設を用いたエネルギ回収方法について説明する。
【0065】
図2は、第一実施形態に係る間欠運転焼却施設におけるエネルギ回収手順を説明するフロー図である。
【0066】
〔ステップS100:燃焼室内温度の検出〕
燃焼運転時、立ち上げ運転時及び立ち下げ運転時においては、燃焼室1aに供給される酸化剤を用いて被焼却物が燃焼されることに伴い、熱が発生し、それによって燃焼室1a内の温度が上昇する。そのため、図示しない温度検知手段で燃焼室1a内の温度の検出を行う(ステップS100)。
【0067】
〔ステップS110~S120:燃焼運転時における電力の抽出〕
図示しない温度検知手段で燃焼室1a内の温度が所定値(例えば800℃)以上であることを検知すると(ステップS110においてY)、制御装置12は発電ユニット13を用いて発電を行う(ステップS120)。
【0068】
具体的には、制御装置12は、図示しない温度検知手段で燃焼室1a内の温度が800℃以上であることを検知すると、エミッタ13aに設けられているシャッタ装置を開状態にするよう制御を行う。すると、熱を受けたエミッタ13aの光放出面から熱輻射光が発生し、光電変換セル13bの受光面に入射する。そして、熱輻射光を受けた光電変換セル13bにおける光起電力効果によって光エネルギが電気エネルギに光電変換される。このようにして、発電ユニット13を用いることで、燃焼室1a内で被焼却物を燃焼することによって発生した熱を電気エネルギに変換し、電力として抽出することができる。
【0069】
一方、燃焼室1a内の温度が所定値(例えば800℃)以上でない場合(ステップS110においてN)、発電ユニット13による発電は行わず運転を継続する。
【0070】
〔ステップS130:水の電気分解〕
ステップS120において発電ユニット13で電力が生じると、発生した電力を、送電線などの電力供給手段によって水電気分解装置7に供給し、水電気分解装置7を作動させて水の電気分解を行う(ステップS130)。
【0071】
水電気分解装置7においては、水の電気分解に伴い、陰極では還元反応が生じて水素が生成されるとともに、陽極においては酸化反応が生じて酸素が生成される。
【0072】
〔ステップS140:二酸化炭素の分離〕
被焼却物の燃焼に伴い焼却炉1で発生した燃焼排ガスのうちの一部の燃焼排ガスは、排ガス煙道を流通して二酸化炭素分離手段5に供給され、二酸化炭素分離手段5において二酸化炭素が分離される(ステップS140)。
【0073】
二酸化炭素分離手段5においては、分離膜を用いた方法や、化学吸着や物理吸着など吸着による方法及び深冷分離によって、燃焼排ガスから二酸化炭素が選択的に分離される。
【0074】
〔ステップS150:メタンガスの生成〕
ステップS140において二酸化炭素分離手段5で分離された二酸化炭素は、ステップS130において水電気分解装置7で生成した水素とともにメタンガス生成手段10に供給され、メタンガス生成手段10においてメタンガスが生成される(ステップS150)。あるいは、二酸化炭素は図示しないパイプラインを通じて、もしくは液化させてローリー車輸送する等の手段によって、所外の所望の箇所に供給されるようにしてもよい。
【0075】
メタンガス生成手段10で生成されたメタンガスは、メタンガス供給手段11を通じて図示しないタンクに貯留され、焼却炉1の立ち上げ時や立ち下げ時の補助燃料用など、所内利用のために供される。あるいは、図示しないパイプラインを通じて、もしくは液化させてローリー車輸送する等の手段によって、所外の所望の箇所に供給されるようにしてもよい。
【0076】
このように、メタンガス供給手段11を通じてタンクに貯留されたメタンガスは、当日における立ち下げ運転時や、翌朝における立ち上げ運転時において、補助燃料として助燃バーナ1eに供給される。
【0077】
つまり、間欠運転を行う焼却炉1においては、所定時間(例えば約8時間)の休止時間を経てから立ち上げ運転を実施するため、立ち上げ運転開始時においては、燃焼室1a内の温度が300℃以下にまで低下しており、そのまま被焼却物を燃焼室1a内に投入しても、うまく着火することができない。
【0078】
そのため、立ち上げ運転時においては、助燃バーナ1eに補助燃料を供給して補助燃料を燃焼室1a内で燃焼させて燃焼室1a内の温度を上昇させるが、本実施形態においては、ステップS150においてメタンガス生成手段10で生成されたメタンガスを、立ち上げ運転時にメタンガス供給手段11を用いて助燃バーナ1eに供給して燃焼させる。
【0079】
通常であれば、重油のような化石燃料を助燃バーナ1eで燃焼させるものであるところ、本実施形態においては、間欠運転焼却施設を運転する際に生成するメタンガスを燃焼させる。
【0080】
そのため、重油等の化石燃料を購入し搬送するためのコストや、その際に発生する二酸化炭素の排出量を削減することができる。
【0081】
このように、燃焼室1aに配設され、被焼却物の燃焼に伴い発生する熱を電気エネルギに変換して電力を発生させる発電ユニット13を用いて電力を取り出す構成とすることで、排熱回収ボイラを設置しない中小規模の焼却炉1であっても、廃熱を電力として回収することができる。
【0082】
そして、回収された廃熱が電気エネルギに変換され、所内に配設された水電気分解装置7の作動に用いられるため、他所に送電する際に発生する送電ロスもなく、回収した電力を有効に活用することができる。
【0083】
さらに、水電気分解装置7で発生した水素と、二酸化炭素分離手段5を用いて燃焼排ガスから回収した二酸化炭素とを合成してメタンガスを生成するメタンガス生成手段10を備えるため、燃料ガスとして利用可能でかつ様々な箇所に供給することができる形状に変換してエネルギを回収することができる。
【0084】
しかも、生成したメタンガスを立ち上げ運転時に助燃バーナ1eに供給して燃焼させることで、立ち下げ運転時の補助燃料を所内で生成することができ、重油等の化石燃料を購入し搬送するためのコストや搬送の際の二酸化炭素排出を低減することが可能な間欠運転焼却施設を提供することができる。
【0085】
[第二実施形態に係る間欠運転焼却施設の構成]
図3を用いて、第二実施形態に係る間欠運転焼却施設の構成を説明する。なお、第一実施形態に係る間欠運転焼却施設と共通する点については説明を省略し、第二実施形態に係る間欠運転焼却施設の特徴的な点についてのみ説明する。
【0086】
図3は、第二実施形態にかかる間欠運転焼却施設の概略系統図を示したものであり、当該間欠運転焼却施設は、焼却炉1と、排ガス冷却装置2と、バグフィルタ3と、誘引送風機4と、二酸化炭素分離手段5と、煙突6と、水電気分解装置7と、水素供給手段8と、酸素供給手段9と、メタンガス生成手段10と、メタンガス供給手段11と、制御装置12と、発電ユニット13によって構成される。
【0087】
第二実施形態に係る間欠運転焼却施設が第一実施形態に係る間欠運転焼却施設と異なる点は、発電ユニット13として、エミッタ13aと光電変換セル13bとからなるTPV発電ユニットに加え、両端における温度差を起電力に変換する熱電素子13cを使用した熱電発電ユニットを併用する点にある。なお熱電素子13cは、TPV発電ユニットのエミッタ13aが配設される位置よりも温度が低くかつ燃焼排ガス流れにおいて下流の領域、例えば、500℃程度の中温域となる排ガス冷却装置2の内壁や、その下流の排ガス煙道の内壁に配設される。
【0088】
熱電素子とは、正と負の熱起電力を発生するp型半導体とn型半導体を電気的に接続して構成したもので、一端部を高温に他端部を低温にすることで熱から直接的に電力を抽出することが可能であるが、作動温度がTPV発電ユニットと比較して低い。そのため、TPV発電ユニットと熱電発電ユニットを併用する第二実施形態に係る間欠運転焼却施設においては、高温域である燃焼室1a内においてTPV発電ユニットによる発電を行い、TPV発電ユニットが配設される位置よりも燃焼排ガス流れにおいて下流でかつ低温の領域、例えば500℃程度の中温域となる排ガス冷却装置2やその下流の排ガス煙道において熱電発電ユニットによる発電を行う。
【0089】
TPV発電ユニットについては、図2に示したように、燃焼室1a内の温度が所定値(例えば800℃)より大きい場合に発電を行うよう、制御装置12が切り替えを行う。また、排ガス冷却装置2やその下流の排ガス煙道に設置された熱電発電ユニットにおいては、TPV発電ユニットが発電を行う温度領域よりも低い温度領域において発電を行う。
【0090】
そして、発電ユニット13で発生した電力を用い水電気分解装置7で水の電気分解を行い水素及び酸素を発生させるステップ、二酸化炭素分離手段5で燃焼排ガスから二酸化炭素を分離するステップ、水電気分解装置7で発生させた水素と二酸化炭素分離手段5で分離された二酸化炭素を合成してメタンガスを生成するステップ、及び、生成したメタンガスを補助燃料として立ち上げ運転時及び/又は立ち下げ運転時に助燃バーナに供給するステップを有する点においては、図2に示す第一実施形態のフロー図と同様である。
【0091】
このように、高温域でのみ作動するTPV発電ユニットに加え、中温域において作動することが可能な熱電発電ユニットによる発電を併用することで、発電可能な温度域が拡張し、被焼却物の燃焼に伴い発生する熱をより多く回収することができ、エネルギ効率の高いエネルギ回収方法を提供することができる。
【0092】
また、生成したメタンガスが仮に助燃バーナ1eで使用しきれなかったとしても、メタンガス供給手段11を通じて他所に燃料として供給することができるため、エネルギを無駄にすることがない。もしくは、メタンガスを生成せずに、二酸化炭素として他所に供給するようにしてもよい。
【0093】
[第三実施形態に係る間欠運転焼却施設の構成]
第三実施形態に係る間欠運転焼却施設においては、水電気分解装置7で発生した酸素を燃焼空気供給手段に供給することで、被焼却物を燃焼させるための酸化剤として利用する。
【0094】
一日の中で燃焼運転、立ち下げ運転、休止状態及び立ち上げ運転を行う間欠運転においては、立ち上げ運転時における燃焼室1a内の温度上昇時間を短くすることが重要となる。
【0095】
そこで、立ち上げ運転時において、酸化剤として空気ではなく酸素を用いることで火炎温度が上昇し、燃焼室1a内の温度を迅速に所定温度まで上昇させることができる。
【0096】
このときに使用される酸素として、図2におけるステップS130において水電気分解装置7で発生した酸素を、図1及び図3に示す酸素供給手段9で一次燃焼空気供給手段1bに供給して使用することができるため、酸素ボンベなど他の供給源を必要としない。そのため、酸素の購入や運搬に伴うコストを低減することができるとともに、それに伴い発生する二酸化炭素の排出量も削減することができる。
【0097】
[第四実施形態に係る間欠運転焼却施設の構成]
図4を用いて、第四実施形態に係る間欠運転焼却施設の構成を説明する。なお、第一実施形態に係る間欠運転焼却施設と共通する点については説明を省略し、第四実施形態に係る間欠運転焼却施設の特徴的な点についてのみ説明する。
【0098】
図4は、第四実施形態にかかる間欠運転焼却施設の概略系統図を示したものであり、当該間欠運転焼却施設は、焼却炉1と、排ガス冷却装置2と、バグフィルタ3と、誘引送風機4と、二酸化炭素分離手段5と、煙突6と、水電気分解装置7と、水素供給手段8と、酸素供給手段9と、メタンガス生成手段10と、メタンガス供給手段11と、制御装置12と、発電ユニット13と、水蒸気分離手段14と、復水器15と、復水供給手段16とによって構成される。
【0099】
つまり、第四実施形態に係る間欠運転焼却施設においては、焼却炉1から排出され、排ガス冷却装置2及びバグフィルタ3を経て温度が低下して酸性成分や不純物がろ過された燃焼排ガスから、水蒸気を分離する水蒸気分離手段14を備える。また、水蒸気分離手段14で分離した水蒸気を凝縮して復水とする復水器15を備える。さらに、復水器で凝縮された復水を水電気分解装置7に供給する復水供給手段16を備える。
【0100】
このようにすることで、水電気分解装置7で電気分解される水として、燃焼排ガスから分離された水を用いることができ、水を電気分解するための電力だけでなく、水までも同じ設備内でまかなうことができ、無駄のない有用な間欠運転焼却施設となる。
【0101】
以上、まとめると、本発明の効果は以下の通りとなる。
【0102】
本発明は、一日の中で燃焼運転、立ち下げ運転、休止状態及び立ち上げ運転を行う間欠運転を行い被焼却物を燃焼する燃焼室を備える焼却炉と、燃焼室に配設され、被焼却物の燃焼に伴い発生する熱を電気エネルギに変換して電力を発生させる発電ユニットと、発電ユニットで発生した電力を水電気分解装置に供給する電力供給手段と、焼却炉から排出される燃焼排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離手段と、水電気分解装置で発生した水素と二酸化炭素分離手段で分離された二酸化炭素を合成してメタンガスを生成するメタンガス生成手段とを備える間欠運転焼却施設である。
【0103】
間欠運転を行う焼却炉において、燃焼室に配設され、被焼却物の燃焼に伴い発生する熱を電気エネルギに変換して電力を発生させる発電ユニットを用いて電力を発生させるため、排熱回収ボイラを設置しない中小規模の焼却炉であっても、廃熱を電力として回収することができる。そして、回収された廃熱が電気エネルギに変換され、電力として水電気分解装置の作動に用いられるため、回収した電力を有効に活用することができる。さらに、水電気分解装置で発生した水素と、二酸化炭素分離手段を用いて燃焼排ガスから分離した二酸化炭素とを合成してメタンガスを生成するメタンガス生成手段を備えるため、燃料ガスとして利用可能でかつ様々な箇所に供給することができる形状に変換してエネルギを回収することができる。
【0104】
また、発電ユニットとして、燃焼室の内壁に配設されたエミッタと光電変換セルとを具備してなり熱光起電力発電を行うTPV(ThermoPhotoVoltaic)発電ユニットを使用するため、高温域にある燃焼室において熱を電気エネルギに変換することができる。
【0105】
ここで、例えば燃焼運転時など高温状態において、TPV発電ユニットで電力を発生させて水電気分解装置に供給して水素及び酸素を発生させるとともに、メタンガス生成手段でメタンガスを生成し、生成されたメタンガスを立ち上げ運転時及び/又は立ち下げ運転時に助燃バーナに供給することにより、立ち上げ運転時の燃焼室内の昇温に必要な補助燃料を所内で賄うことができる。そのため、重油等の化石燃料を購入し搬送するためのコストや搬送の際の二酸化炭素排出を低減することが可能な間欠運転焼却施設を提供することができる。また、水電気分解装置を作動させた際に余った電力は、施設内各所の補機等の作動用の電力として使用するか、施設外へ供給することができる。
【0106】
また、発電ユニットとして、TPV発電ユニットに加え、TPV発電ユニットが配設される位置よりも温度が低くかつ下流の領域に配設される熱電素子を用いた熱電発電ユニットを併用するため、発電可能な温度域が拡張し、より広い温度域において熱を電気エネルギに変換することができる。
【0107】
ここで、燃焼室内の温度が所定値以上となる温度域においてTPV発電ユニットで電力を発生させ、さらにTPV発電ユニットが配設される位置よりも下流でかつ低温となる温度域において熱電発電ユニットで電力を発生させることで、高温域の燃焼室だけでなく、例えば500℃程度の中温状態にある排ガス冷却室や排ガス煙道においても電力を発生させることができる。そして、広い温度域において発生させた電力を水電気分解装置に供給して水素及び酸素を発生させるとともに、メタンガス生成手段でメタンガスを生成し、生成されたメタンガスを立ち上げ運転時及び/又は立ち下げ運転時に助燃バーナに供給することにより、立ち上げ運転時の燃焼室内の昇温に必要な補助燃料を所内で賄うことができる。そのため、重油等の化石燃料を購入し搬送するためのコストや搬送の際の二酸化炭素排出を低減することが可能な間欠運転焼却施設を提供することができる。
【0108】
また、水電気分解装置で発生する酸素を、立ち上げ運転時における酸化剤として燃焼室に供給することで燃焼室温度が上昇し、迅速な立上げが可能となる。しかも、酸化剤として使用される酸素として、水電気分解装置で発生した酸素を使用するため、酸素ボンベなど他の供給源を必要としない。そのため、酸素の購入や運搬に伴うコストを低減することができるとともに、それに伴い発生する二酸化炭素の排出量も削減することができる。
【0109】
さらに、燃焼排ガスから水蒸気を分離する水蒸気分離手段と、水蒸気分離手段で分離した水蒸気を凝縮して復水とする復水器と、復水器で凝縮された復水を水電気分解装置に供給する復水供給手段とをさらに備えるため、水電気分解装置で電気分解される水として、燃焼排ガスから分離された水を用いることができ、水を電気分解するための電力だけでなく、水までも同じ設備内でまかなうことができ、無駄のない有用な間欠運転焼却施設となる。
【0110】
また、二酸化炭素分離手段は、膜分離法又は吸着法又は深冷分離法によって燃焼排ガスから二酸化炭素を分離することで、高純度の二酸化炭素を回収することができる。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0112】
また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換しても良い。
【0113】
例えば、図3においては、発電ユニット13として、TPV発電ユニットと熱電発電ユニットとを併用する例について説明しているが、熱電発電ユニットのみからなる発電ユニット13であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0114】
この発明の間欠運転焼却施設及びその運転方法は、種々の被焼却物を燃焼する焼却施設全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
1 焼却炉
1a 燃焼室
1b 一次燃焼空気供給手段
1c 二次燃焼空気供給手段
1d 投入装置
1e 助燃バーナ
2 排ガス冷却装置
3 バグフィルタ
4 誘引送風機
5 二酸化炭素分離手段
6 煙突
7 水電気分解装置
8 水素供給手段
9 酸素供給手段
10 メタンガス生成手段
11 メタンガス供給手段
12 制御装置
13 発電ユニット
13a エミッタ
13b 光電変換セル
13c 熱電素子
14 水蒸気分離手段
15 復水器
16 復水供給手段

図1
図2
図3
図4