(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175337
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A47J27/00 109H
A47J27/00 109R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087734
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】中山 知哉
(72)【発明者】
【氏名】田橋 泰平
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055AA09
4B055BA09
4B055CD04
4B055DB14
4B055GA07
4B055GB03
4B055GB07
4B055GC04
4B055GD02
4B055GD05
(57)【要約】
【課題】炊飯容量に関わらず、鍋内の沸騰を高精度に判断でき、米飯を良好な状態で炊き上げ可能な炊飯器を提供する。
【解決手段】炊飯器10は、炊飯鍋15、コイル26,27、蓋体30、炊飯鍋15内の蒸気を外部に排出するための排気通路40、排気通路40内の蒸気の温度を検出するための蒸気温度センサ52、炊飯鍋15内の温度を検出するための蓋温度センサ51、及び炊飯鍋15内を沸騰温度に昇温させる中ぱっぱ工程を含む炊飯処理を実行する制御部60を備える。中ぱっぱ工程は、蒸気温度センサ52及び蓋温度センサ51のうちいずれかの検出温度Ts,Tcが、定められた移行温度Ty1,Ty2に達すると終了する主加熱ステップを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の炊飯鍋と、
前記炊飯鍋を加熱する加熱部と、
前記炊飯鍋の開口を塞ぐ蓋体と、
前記蓋体に設けられ、前記炊飯鍋内の蒸気を外部に排出するための排気通路と、
前記排気通路内に配置された第1検出部を有し、前記排気通路内の蒸気の温度を検出するための蒸気温度センサと、
前記排気通路外に配置された第2検出部を有し、前記炊飯鍋の開口を塞ぐ隔壁を介して前記炊飯鍋内の温度を検出するための蓋温度センサと、
前記加熱部を制御して、前記炊飯鍋内を沸騰温度に昇温させる昇温工程を含む炊飯処理を実行する制御部と
を備え、
前記昇温工程は、前記蒸気温度センサ及び前記蓋温度センサのうちいずれかの検出温度が、定められた移行温度に達すると終了する主加熱ステップを有する、炊飯器。
【請求項2】
前記移行温度は、前記蒸気温度センサ用の第1移行温度と、前記蓋温度センサ用の第2移行温度とを含み、
前記主加熱ステップは、前記蒸気温度センサによる検出温度が前記第1移行温度に達したことを示す第1条件、及び前記蓋温度センサによる検出温度が前記第2移行温度に達したことを示す第2条件のうち、いずれか一方が成立すると終了する、
請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記第1移行温度は前記第2移行温度よりも高い、請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記昇温工程は、前記主加熱ステップの後に、加熱時間を調整するための調整加熱ステップを有し、
前記制御部は、前記主加熱ステップの開始から終了までの時間によって炊飯容量を判別し、前記調整加熱ステップを終了する温度又は時間を、判別した炊飯容量によって異なるように設定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記隔壁は、前記炊飯鍋の開口を塞ぐ内蓋と、前記内蓋を覆う放熱板とを有し、
前記排気通路は、前記内蓋、前記放熱板、及び前記内蓋と前記放熱板の間をシールする無端状のシール部材によって画定された空間である流入部を有し、
前記第1検出部は、前記シール部材内に配置され、
前記第2検出部は、前記放熱板又は前記内蓋に接触するように、前記シール部材外に配置されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、沸騰温度検出手段として蒸気温度センサと蓋温度センサを配置した炊飯器が記載されている。蒸気温度センサは、内蓋と蓋下面部材の間の空隙部に配置され、空隙部内に流入した蒸気の温度を直接検出する。蓋温度センサは、空隙部外である蓋下面部材の上面に配置され、蓋下面部材を介して空隙部内の温度を間接的に検出する。制御部は、蒸気温度センサ及び蓋温度センサのうち一方の検出結果のみに基づいて鍋内の沸騰を判断し、所定の炊飯処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸気温度センサの検出結果に基づいて鍋内の沸騰を判断する場合、炊飯容量が多いときに蒸気が発生するまでに時間を要するため、沸騰判断に遅れが生じる。蓋温度センサの検出結果に基づいて鍋内の沸騰を判断する場合、炊飯容量が少ないときに鍋内に空間が多く、熱伝達に時間を要するため、沸騰判断に遅れが生じる。つまり、蒸気温度センサ及び蓋温度センサのうち一方の検出結果のみによって沸騰判断を行うと、炊飯容量によっては沸騰判断に遅れが生じるため、飯米に過度な熱量を加えることになる。その結果、米飯の炊き上げ状態が悪くなる。
【0005】
本発明は、炊飯容量に関わらず、鍋内の沸騰を高精度に判断でき、米飯を良好な状態で炊き上げ可能な炊飯器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
昇温工程では、炊飯容量に関わらず、加熱部からの出力は同一(フルパワー)である。そのため、炊飯鍋内の飯米及び水に対する単位容積当たりの加熱量は、炊飯容量が多いときよりも少ないときの方が多くなり、同一温度であっても炊飯鍋内で発生する蒸気量は、炊飯容量が多いときよりも少ないときの方が多くなる。また、炊飯鍋内の水面から蓋体までの距離は、炊飯容量が多いときの方が少ないときよりも短い。そのため、炊飯鍋の加熱による蓋体への熱伝達は、炊飯容量が少ないときよりも多いときの方が速い。つまり、炊飯容量が少ないときには、炊飯容量が多いときと比較して、加熱によって炊飯鍋内で発生する蒸気量は多くなるが、蓋体への熱伝達は遅くなる。また、炊飯容量が多いときには、炊飯容量が少ないときと比較して、加熱によって炊飯鍋内で発生する蒸気量は少なくなるが、蓋体への熱伝達は速くなる。
【0007】
一方、炊飯器は、炊飯処理の実行中に炊飯容量を自動判別する構成が採用されており、その判別時期は必要に応じて変更可能である。そのため、炊飯鍋内を早急に沸騰させるステップの実行時、容量判別が完了している場合と完了していない場合とが存在し得る。
【0008】
本発明は、以上の知見を踏まえ、炊飯容量に関わらず、炊飯鍋内の沸騰を高精度に判断できるようにして、米飯を良好な状態で炊き上げ可能としたものである。
【0009】
具体的には、本発明の一態様は、有底筒状の炊飯鍋と、前記炊飯鍋を加熱する加熱部と、前記炊飯鍋の開口を塞ぐ蓋体と、前記蓋体に設けられ、前記炊飯鍋内の蒸気を外部に排出するための排気通路と、前記排気通路内に配置された第1検出部を有し、前記排気通路内の蒸気の温度を検出するための蒸気温度センサと、前記排気通路外に配置された第2検出部を有し、前記炊飯鍋の開口を塞ぐ隔壁を介して前記炊飯鍋内の温度を検出するための蓋温度センサと、前記加熱部を制御して、前記炊飯鍋内を沸騰温度に昇温させる昇温工程を含む炊飯処理を実行する制御部とを備え、前記昇温工程は、前記蒸気温度センサ及び前記蓋温度センサのうちいずれかの検出温度が、定められた移行温度に達すると終了する主加熱ステップを有する、炊飯器を提供する。
【0010】
本態様では、炊飯容量が少ないとき、つまり炊飯鍋内で発生する蒸気量が多く蓋体への熱伝達が遅いときには、蒸気温度センサによる検出温度が定められた移行温度に達することで、主加熱ステップが終了する。一方、炊飯容量が多いとき、つまり炊飯鍋内で発生する蒸気量が少なく蓋体への熱伝達が速いときには、蓋温度センサによる検出温度が定められた移行温度に達することで、主加熱ステップが終了する。このように、本態様では、炊飯容量に関わらず、炊飯鍋内の沸騰を遅延なく高精度に判断できるため、昇温工程の実行時間を最適化できる。よって、飯米に過度な熱量を与えることを抑制できるため、米飯を良好な状態で炊き上げることができる。
【0011】
前記移行温度は、前記蒸気温度センサ用の第1移行温度と、前記蓋温度センサ用の第2移行温度とを含み、前記主加熱ステップは、前記蒸気温度センサによる検出温度が前記第1移行温度に達したことを示す第1条件、及び前記蓋温度センサによる検出温度が前記第2移行温度に達したことを示す第2条件のうち、いずれか一方が成立すると終了する。
【0012】
この構成により、炊飯容量が少ないときには、炊飯鍋内で発生する蒸気量は多いが蓋体への熱伝達は遅いため、第2条件が成立する前に、蒸気温度センサによる検出温度が第1移行温度に達し、第1条件が成立することで主加熱ステップが終了する。一方、炊飯容量が多いときには、炊飯鍋内で発生する蒸気量は少ないが蓋体への熱伝達は速いため、第1条件が成立する前に、蓋温度センサによる検出温度が第2移行温度に達し、第2条件が成立することで主加熱ステップが終了する。このように、炊飯容量に関わらず炊飯鍋内の沸騰を遅延なく高精度に判断でき、昇温工程の実行時間を最適化できるため、米飯を良好な状態で炊き上げることができる。
【0013】
前記第1移行温度は前記第2移行温度よりも高い。
【0014】
蒸気の温度を直接検出する蒸気温度センサによる検出温度は、炊飯鍋内の温度を隔壁を介して間接的に検出する蓋温度センサによる検出温度よりも早期に高くなる。そのため、第1移行温度を第2移行温度よりも高く設定することで、蒸気温度センサ及び蓋温度センサのうちいずれの検出結果からでも、炊飯鍋内の沸騰を高精度に判断できる。
【0015】
前記昇温工程は、前記主加熱ステップの後に、加熱時間を調整するための調整加熱ステップを有し、前記制御部は、前記主加熱ステップの開始から終了までの時間によって炊飯容量を判別し、前記調整加熱ステップを終了する温度又は時間を、判別した炊飯容量によって異なるように設定する。
【0016】
この構成により、昇温工程全体の実行時間を最適化できるため、昇温工程と沸騰維持工程の実行時間のバランスを向上できる。よって、米飯を良好な状態で炊き上げることができる。
【0017】
前記隔壁は、前記炊飯鍋の開口を塞ぐ内蓋と、前記内蓋を覆う放熱板とを有し、前記排気通路は、前記内蓋、前記放熱板、及び前記内蓋と前記放熱板の間をシールする無端状のシール部材によって画定された空間である流入部を有し、前記第1検出部は、前記シール部材内に配置され、前記第2検出部は、前記放熱板又は前記内蓋に接触するように、前記シール部材外に配置されている。
【0018】
この構成により、蒸気温度センサによって排気通路内の蒸気の温度を確実に検出でき、蓋温度センサによって放熱板と内蓋を介して炊飯鍋内の温度を確実に検出できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の炊飯器では、炊飯容量に関わらず、鍋内の沸騰を高精度に判断でき、米飯を良好な状態で炊き上げ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】誘導加熱するコイルの配置と炊飯器の構成を示すブロック図。
【
図3】少量の場合の炊飯処理の一例を示すタイムチャート。
【
図5】中量の場合の炊飯処理の一例を示すタイムチャート。
【
図7】多量の場合の炊飯処理の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0022】
図1及び
図2を参照すると、本発明の実施形態に係る炊飯器10は、炊飯鍋15、炊飯器本体20、及び蓋体30を備え、炊飯器本体20内に複数のコイル(加熱部)26,27を配置したマルチコイル型である。
【0023】
炊飯器10は更に、鍋温度センサ50、蓋温度センサ51、蒸気温度センサ52、及び制御部60を備える。制御部60は、定められたプログラムに従い、温度センサ50~52による検出温度Tp,Tc,Tsに基づいて、予熱工程、中ぱっぱ工程(昇温工程)、沸騰維持工程(電力制御)、及びむらし工程を備える炊飯処理を行う(
図3、
図5、及び
図7参照)。
【0024】
本実施形態では、中ぱっぱ工程の終了タイミングである炊飯鍋15内の沸騰を、温度センサ51,52による検出温度Tc,Tsと定められた移行温度Ty1,Ty2とで判断することで、飯米に過度な熱量を与えることを抑制し、米飯を良好な状態で炊き上げ可能とする。
【0025】
以下、
図1及び
図2を参照して、炊飯鍋15、炊飯器本体20、及び蓋体30の構成について具体的に説明する。
【0026】
炊飯鍋15は、底壁部16、筒状の周壁部17、及び底壁部16と周壁部17に連なる連続部18を有する有底筒状であり、炊飯鍋15の軸線Aが延びる方向から見て円形状である。炊飯鍋15は磁性材料からなり、プレス加工又は鋳造によって成形されている。但し、炊飯鍋15は、炊飯が阻害されない範囲であれば、軸線Aが延びる方向から見て多角形状であってもよいし、半球状であってもよく、幾何学的に厳密な意味での有底筒状でなくてもよい。
【0027】
炊飯器本体20は、
図1において右側に位置する背部にヒンジ接続軸22を有する外装体21を備える。外装体21の上面には円形状の開口が形成され、この開口の下側に炊飯鍋15を着脱可能に収容する収容部23が形成されている。収容部23は、有底筒状で、炊飯鍋15の平面視形状と対応する円筒状で金属製の内胴24と、内胴24の下端を塞ぐ受皿状で樹脂(非導電性材料)製の保護枠25とで構成されている。収容部23内に炊飯鍋15を配置することで、保護枠25の軸線と炊飯鍋15の軸線Aとが一致する。
【0028】
保護枠25の外面側、つまり外装体21と収容部23の間には、加熱部としてコイル26,27が配置されている。コイル26,27は、複数の巻線を楕円環状に巻回した形状であり、高周波電流が通電されることで渦電流を発生させ、炊飯鍋15を誘導加熱する。内側コイル26は、炊飯鍋15の底壁部16と連続部18を誘導加熱するように保護枠25に配置されている。外側コイル27は、炊飯鍋15の周壁部17と連続部18を誘導加熱するように保護枠25に配置されている。
【0029】
本実施形態では、コイル26,27がそれぞれ3個用いられ、炊飯鍋15の軸線Aまわりの周方向に間隔をあけて配置されている。それぞれ複数の内側コイル26と外側コイル27は周方向の位置が異なるように配置され、複数の内側コイル26のうちの1個と複数の外側コイル27のうちの1個とが、それぞれ径方向に対向している。但し、コイルの配置、数、及び形状等は、必要に応じて変更可能である。また、加熱部は、コイルに限られず、金属板内にヒータを配置した加熱板であってもよい。
【0030】
蓋体30は、それぞれ樹脂製の蓋本体31と蓋カバー32を備え、外装体21のヒンジ接続軸22に回転可能に取り付けられ、炊飯鍋15の開口は勿論、炊飯器本体20の上部を開放可能に覆う。蓋本体31のうち炊飯鍋15を臨む内面側(
図1において下側)には、炊飯鍋15の開口を覆う放熱板33が取り付けられている。放熱板33の下面には、炊飯鍋15の内周面との間をシールするシール部材35を備え、炊飯鍋15の開口を塞ぐ金属製の内蓋34が取り付けられている。内蓋34は、蓋体30に対して着脱可能な構成であってもよいし、取り外しが不可能な構成であってもよい。放熱板33の上面には、放熱板33を介して内蓋34を加熱し、内蓋34に付着した露を蒸発させる蓋ヒータ36が配設されている。
【0031】
蓋体30には、加熱によって上昇した炊飯鍋15内の圧力によって、炊飯鍋15内で発生した蒸気を外部に排出するための排気通路40が形成されている。排気通路40は、炊飯鍋15内に空間的に連なる流入部41と、流入部41に空間的に連なる流出部である蒸気口セット47とで構成されている。
【0032】
流入部41は、放熱板33、内蓋34、及び放熱板33と内蓋34の間をシールする無端状のシール部材44によって画定されている。内蓋34の概ね中央には、排気通路40の入口を構成する通気口42が設けられている。放熱板33には、軸線Aが延びる方向から見て通気口42を含むように、貫通した開口部43が設けられている。シール部材44は、放熱板33の開口部43の縁に取り付けられ、通気口42を取り囲んで内蓋34に圧接されている。このシール部材44によって、放熱板33と内蓋34の間の空隙部は、蒸気が流入可能な流入部41と、蒸気が流入不可能な閉鎖空間部45とに仕切られる。
【0033】
蒸気口セット47は、蓋本体31と蓋カバー32の間に配置されたダクトである。蒸気口セット47は流入部41に接続するための筒状の接続部47aを備え、この接続部47aが蓋本体31に形成された連通口46にシール部材を介して接続されている。蒸気口セット47は排気通路40の出口を構成する筒状の排気部47bを備え、この排気部47bが蓋カバー32の開口に配置され、外部に開放されている。
【0034】
炊飯鍋15内で発生した蒸気は、通気口42、流入部41、連通口46、及び蒸気口セット47を介して外部に流出する。放熱板33と内蓋34の間の空隙部のうち、シール部材44の外側に位置する閉鎖空間部45に蒸気は流入しない。そのため、蒸気によって放熱板33が汚れることを抑制できる。
【0035】
このように構成された炊飯器10には、炊飯鍋15内の温度を検出するために、鍋温度センサ50、蓋温度センサ51、及び蒸気温度センサ52が取り付けられている。また、
図1において左側に位置する正面側には、液晶パネル(表示部)55と複数のスイッチ(入力部)56が取り付けられている。
【0036】
鍋温度センサ50は、炊飯鍋15の周壁部17を介して炊飯鍋15内の温度を検出するために設けられている。鍋温度センサ50は、保護枠25の外面側に配置されており、保護枠25を貫通して炊飯鍋15の外面に接触するように配置された検出部50aを有する。鍋温度センサ50は、本実施形態では周壁部17の下部の温度を検出するサイドセンサであるが、炊飯鍋15のうち底壁部16の温度を検出するセンタセンサであってもよい。
【0037】
蓋温度センサ51は、蓋体30のうち炊飯鍋15の開口を塞ぐ隔壁である放熱板33と内蓋34を介して、炊飯鍋15内の温度を検出するために設けられている。蓋温度センサ51は、放熱板33の上面側に配置されており、放熱板33に接触する検出部(第2検出部)51aを有する。検出部51aは、排気通路40外であるシール部材44の外側、つまり閉鎖空間部45上に位置するように配置されている。但し、蓋温度センサ33を蓋本体31の上面側に配置し、検出部51aは、蓋本体31を貫通して放熱板33の上面に接触するように配置されてもよいし、蓋本体31と放熱板33を貫通して内蓋34の上面に接触するように配置されてもよい。
【0038】
蒸気温度センサ52は、排気通路40内を通る蒸気の温度を検出するために設けられている。蒸気温度センサ52は、蓋本体31の上面側に配置されており、蓋本体31を貫通して流入部41内に配置された検出部(第1検出部)52aを有する。検出部52aは、排気通路40内であるシール部材44の内側に配置されている。但し、検出部52aは、蒸気口セット47内に配置されてもよく、排気通路40内の蒸気温度を直接検出できる構成であればよい。
【0039】
液晶パネル55は、炊飯メニューの選択状態、及び現状の動作状態を表示するために設けられている。液晶パネル55は、本実施形態では炊飯器本体20の正面上部に配置されているが、蓋体30の上面に形成されてもよく、その配置は必要に応じて変更が可能である。炊飯メニューには、「白米」、「白米急速」、「炊きこみ」、「おかゆ」、「玄米」、及び「雑穀米」等が含まれる。また、白米には、さらに「やわらかめ」、「ふつう」、及び「かため」等が含まれる。
【0040】
複数のスイッチ56はいずれも、例えばタクトスイッチからなり、液晶パネル55の周囲に配置されている。複数のスイッチ56には、炊飯メニューを選択するためのメニュースイッチと、炊飯処理を実行するための炊飯スイッチと、保温処理を実行するための保温スイッチと、希望時間に米飯を炊き上げる予約スイッチと、炊飯処理、保温処理、及び選択状態を取り消す(終了する)ためのとりけしスイッチとが含まれる。
【0041】
図1において左側に位置する炊飯器本体20の正面側には、ホルダ58を介して制御基板59が配置されている。制御基板59には、電気部品を制御する制御部60、及びコイル26,27に電力を供給するためのインバータ回路63と切換部64が設けられている。但し、制御部60、インバータ回路63、及び切換部64は、2つ又は3つの制御基板に分けて設けられてもよく、炊飯器本体20と保護枠25の間のうちの配置も必要に応じて変更が可能である。
【0042】
制御部60は、単一又は複数のマイクロコンピュータ、及びその他の電子デバイスにより構成されている。制御部60には、蓋ヒータ36、3つの温度センサ50~52、液晶パネル55、複数のスイッチ56、インバータ回路63、及び切換部64がそれぞれ電気的に接続され、切換部64を介して複数のコイル26,27が電気的に接続されている。制御部60は、メモリ61とタイマ62を備える。メモリ61には、炊飯処理と保温処理を実行するためのプログラム、及びプログラムに用いられる設定値(温度や時間)等が記憶されている。タイマ62は、炊飯処理及び保温処理における所定の工程(ステップ)の実行時間等を計測する。
【0043】
炊飯処理では、制御部60は、3つの温度センサ50~52の検出結果から得られる検出温度Tp,Tc,Tsに基づいて、予熱工程、中ぱっぱ工程、沸騰維持工程、及びむらし工程をこの順で実行し、炊飯鍋15内の飯米を炊き上げる。保温処理では、制御部60は、3つの温度センサ50~52による検出温度Tp,Tc,Tsに基づいて、炊き上げた米飯を定められた温度に温調する。
【0044】
インバータ回路63は、本実施形態では対向する内側コイル26と外側コイル27を一組とし、3つのコイル組に切換部64を介して個別に接続された3つのパワートランジスタ(例えばIGBT)を備える。つまり、インバータ回路63は、コイル26,27の組数に応じて複数設けられている。炊飯鍋15を加熱する火力に対応する、インバータ回路63によるコイル26,27への投入電力は制御部60によってデューティ制御される。
【0045】
切換部64は、制御部60とインバータ回路63に電気的に接続されている。切換部64は、コイル26,27の数に応じて設けられた複数のスイッチ(例えばリレー)によって構成されている。切換部64は、第1組のコイル26,27を電気的に接続して第2組と第3組のコイル26,27を遮断した第1通電状態、第2組のコイル26,27を電気的に接続して第3組と第1組のコイル26,27を遮断した第2通電状態、及び第3組のコイル26,27を電気的に接続して第1組と第2組のコイル26,27を遮断した第3通電状態の順で切り換えられ、この切換動作を繰り返す。つまり、切換部64は、3組のコイル26,27のうちの1組が通電され、残り2組の通電が遮断されるように、定められた順番で通電状態を切り換えられる。
【0046】
次に、制御部60による炊飯処理について具体的に説明する。
【0047】
図3、
図5、及び
図7は、炊飯処理の一例を示すタイムチャートである。そのうち、
図3は白米を少量炊飯したときの炊飯処理1で、
図5は白米を中量炊飯したときの炊飯処理2で、
図7は白米を多量炊飯したときの炊飯処理3である。例えば最大炊飯容量が10Cupの炊飯器10の場合、少量炊飯とは概ね1Cup以上3Cup以下の範囲で、中量炊飯とは3Cupよりも多く7Cup以下の範囲で、多量炊飯とは7Cupよりも多く10Cup以下の範囲である。
【0048】
図3、
図5、及び
図7において、縦軸は温度(℃)と電力(W)であり、横軸は時間(分)である。
図3、
図5、及び
図7において、太い実線は鍋温度センサ50による検出温度Tpで、太い破線は蓋温度センサ51による検出温度Tcで、太い一点鎖線は蒸気温度センサ52による検出温度Tsで、細い実線は、熱電対によって実際の内蓋34の温度を検出した実測温度である。後に詳述する移行温度Ty1,Ty2,Tz1,Tz2は、実測温度を基準として設定されている。
【0049】
図9を併せて
図3、
図5、及び
図7参照すると、炊飯処理は、予熱工程(ステップS1)、中ぱっぱ工程(ステップS2)、沸騰維持工程(ステップS3)、及びむらし工程(ステップS4)を有し、この順でこれらの工程が実行される。この炊飯処理が完了すると、引き続いて保温処理が実行される。
【0050】
予熱工程では、定められた予熱温度(例えば40℃)を維持するように、炊飯鍋15を加熱(温調)して飯米に水を吸収させる。この予熱工程では、複数組のコイル26,27が順番にデューティ制御されるとともに、鍋温度センサ50による検出温度Tpに基づいてオンオフ制御される。予熱工程は、定められた時間が経過(移行条件が成立)すると終了する。例えば移行時間は、通常炊飯の場合には20分であり、予約炊飯の場合には10分である。つまり、予熱工程は、予熱温度に昇温するまでの第1ステップ、及び予熱温度に維持する第2ステップと第3ステップを備え、第3ステップは、通常炊飯の場合には実行され、予約炊飯の場合には実行されない。
【0051】
中ぱっぱ工程では、予熱温度よりも高い沸騰温度になるまで炊飯鍋15を高出力で加熱し、内部の水を早急かつ短時間で沸騰させる。この中ぱっぱ工程では、複数組のコイル26,27が順番に、定格電力の100%の出力(フルパワー)でオン状態を維持するように制御される。中ぱっぱ工程は、開始から終了まで全てフルパワーで電力が投入されるが、
図4、
図6、及び
図8を参照すると、慣らし加熱ステップ、主加熱ステップ、及び調整加熱ステップに細分化して制御されている。炊飯容量は、この中ぱっぱ工程の主加熱ステップの実行時間によって判別される。慣らし加熱ステップ、主加熱ステップ、及び調整加熱ステップについては、後に詳述する。
【0052】
沸騰維持工程は、炊飯容量によって実行するか否かが決定される最初の休止ステップと、炊飯容量に関わらず実行される第1から第3のステップとを有する。
【0053】
図3、
図5、及び
図7を参照すると、休止ステップは、炊飯容量が少量の場合にはスキップされ(実行されない)、炊飯容量が中量又は多量の場合に実行される。休止ステップでは、コイル26,27への電力投入を停止し、中ぱっぱ工程での加熱による炊飯鍋15の余熱によって、炊飯鍋15内の粘り気のある液状物質が排気通路40を通って流出するという「ふきこぼれ」の発生を抑制する。
【0054】
休止ステップを終了又はスキップすると、沸騰温度を維持するように炊飯鍋15を加熱(温調)し、内部の水を無くす(第1ステップ)。この第1ステップでは、複数組のコイル26,27が順番にデューティ制御されるとともに、鍋温度センサ50の検出温度Tpに基づいてオンオフ制御される。鍋温度センサ50による検出温度Tpが定められたドライアップ温度(例えば110℃)を示すと、出力を抑えて炊飯鍋15を弱火で加熱する(第2ステップ)。この第2ステップでは、複数組のコイル26,27が順番にデューティ制御されるとともに、蓋温度センサ51による検出温度Tcに基づいてオンオフ制御される。定められた時間(例えば5分)第2ステップを実行すると、出力を上げて炊飯鍋15を中火で加熱する(第3ステップ)。この第3ステップでは、複数組のコイル26,27が順番に、定格電力の75%の出力でデューティ制御されるとともに、蓋温度センサ51の検出温度Tcに基づいてオンオフ制御される。そして、鍋温度センサ50による検出温度Tpが再び定められたドライアップ温度(例えば110℃)を示すと、沸騰維持工程を終了する。
【0055】
むらし工程では、炊飯鍋15を低出力で温調し、炊き上げた米飯を蒸らす。このむらし工程では、蓋温度センサ51の検出温度Tcに基づいて蓋ヒータ36が制御され、コイル26,27への通電は停止(遮断)される。また、内胴24の径方向外側に銅ヒータを備える場合、銅ヒータがデューティ制御される。中ぱっぱ工程で判別した炊飯容量に基づいて定められたむらし時間が経過すると、むらし工程は終了する。つまり、むらし工程の実行時間は炊飯容量によって異なる。
【0056】
次に、制御部60による中ぱっぱ工程の制御について、より具体的に説明する。
【0057】
まず、中ぱっぱ工程では、炊飯容量に関わらずコイル26,27への投入電力は同一かつフルパワーである。そのため、炊飯鍋15内の飯米及び水に対する単位容積当たりの加熱量は、炊飯容量が多いときよりも少ないときの方が多くなり、同一温度であっても炊飯鍋15内で発生する蒸気量は、炊飯容量が多いときよりも少ないときの方が多くなる。また、炊飯鍋15内の水面から蓋体30までの距離は、炊飯容量が多いときの方が少ないときよりも短い。そのため、炊飯鍋15の加熱による蓋体30への熱伝達は、炊飯容量が少ないときよりも多いときの方が速い。つまり、炊飯容量が少ないときには、炊飯容量が多いときと比較して、加熱によって炊飯鍋15内で発生する蒸気量は多くなるが、蓋体30への熱伝達は遅くなる。また、炊飯容量が多いときには、炊飯容量が少ないときと比較して、加熱によって炊飯鍋15内で発生する蒸気量は少なくなるが、蓋体30への熱伝達は速くなる。
【0058】
そのため、炊飯容量が少ない場合、炊飯鍋15内の温度を間接的に検出する蓋温度センサ51による検出温度Tcを用いるよりも、蒸気の温度を直接検出する蒸気温度センサ52による検出温度Tsを用いる方が、炊飯鍋15内の沸騰を遅延なく高精度に判断できる。一方、炊飯容量が多い場合、蒸気の温度を直接検出する蒸気温度センサ52による検出温度Tsを用いるよりも、炊飯鍋15内の温度を間接的に検出する蓋温度センサ51による検出温度Tcを用いる方が、炊飯鍋15内の沸騰を遅延なく高精度に判断できる。
【0059】
但し、中ぱっぱ工程の実行開始時には、炊飯容量の判別は行われていない。そこで、本実施形態では、蓋温度センサ51による検出温度Tc及び蒸気温度センサ52による検出温度Tsのうち、いずれかが定められた移行温度Ty1,Ty2に達すると、炊飯鍋15内が沸騰したと判断し、以後のステップ及び工程の移行温度、及び実行時間を設定(調整)する構成としている。
【0060】
具体的には、
図4、
図6、及び
図8を参照すると、中ぱっぱ工程は、慣らし加熱ステップ、主加熱ステップ、及び調整加熱ステップを備え、これらのステップがこの順で実行される。
【0061】
慣らし加熱ステップは、温度センサ50~52に対する室内温度等の影響を無くし、温度センサ50~52の温度を庫内温度に馴染ませることで、温度を正確に検出可能とするために設けられている。慣らし加熱ステップは、鍋温度センサ50による検出温度Tpが定められた移行温度Txに達したことを示すと終了する。
【0062】
主加熱ステップは、炊飯鍋15内を沸騰させるための主たる中ぱっぱ工程である。主加熱ステップは、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが第1移行温度Ty1に達したことを示すという第1条件、及び蓋温度センサ51による検出温度Tcが第2移行温度Ty2に達したことを示すという第2条件のうち、いずれかが成立すると終了する。そして、本実施形態では、この主加熱ステップの開始から終了までの時間によって、炊飯鍋15内の炊飯容量を判別する。
【0063】
蒸気の温度を直接検出する蒸気温度センサ52による検出温度Tsは、内蓋34と放熱板33を介して炊飯鍋15内の温度を間接的に検出する蓋温度センサ51による検出温度Tcよりも早期に高くなる。そのため、蒸気温度センサ52用の第1移行温度Ty1は、蓋温度センサ51用の第2移行温度Ty2よりも高く設定されている。
【0064】
調整加熱ステップは、主加熱ステップの後に実行され、中ぱっぱ工程全体の加熱時間を調整するために設けられている。この調整加熱ステップは、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが第1移行温度Tz1に達したことを示すという第1条件、及び蓋温度センサ51による検出温度Tcが第2移行温度Tz2に達したことを示すという第2条件のうち、いずれかが成立すると終了する。主加熱ステップと同様に、蒸気温度センサ52用の第1移行温度Tz1は、蓋温度センサ51用の第2移行温度Tz2よりも高く設定されている。
【0065】
より具体的には、慣らし加熱ステップでの移行温度Txは、炊飯容量及び炊飯メニューに関わらず同じ温度に設定されている。主加熱ステップでの移行温度Ty1,Ty2は、炊飯容量に関わらず同じ温度に設定されるが、炊飯メニューによっては異なる温度に設定され得る。調整加熱ステップでの移行温度Tz1,Tz2は、炊飯容量によって異なる温度に設定され、炊飯メニューによっても異なる温度に設定されている。
【0066】
例えば、炊飯メニューが「白米」で硬さが「ふつう」の場合、移行温度Tx,Ty1,Ty2,Tz1,Tz2は、以下のように設定される。なお、以下の具体的な移行温度Tx,Ty1,Ty2,Tz1,Tz2は、本願の発明者らが実験により見いだしたものであり、温度センサ52,51の配置条件に応じて変更され得る。
【0067】
慣らし加熱ステップでの移行温度Txは60℃に設定される。主加熱ステップでは、蒸気温度センサ52用の第1移行温度Ty1は80℃に設定され、蓋温度センサ51用の第2移行温度Ty2は60℃に設定される。
【0068】
調整加熱ステップでの移行温度Tz1,Tz2は、次のように設定されている。炊飯鍋15内で多くの蒸気が発生する少量炊飯という判別結果の場合、第1移行温度Tz1は110℃に設定され、第2移行温度Tz2は60℃に設定される。少量炊飯よりも発生する蒸気量は少なくなるが炊飯鍋15内の熱伝達は速くなる中量炊飯という判別結果の場合、第1移行温度Tz1は110℃に設定され、第2移行温度Tz2は63℃に設定される。蒸気量は最も少なくなるが炊飯鍋15内の熱伝達は最も速くなる多量炊飯という判別結果の場合、第1移行温度Tz1は80℃に設定され、第2移行温度Tz2は63℃に設定される。調整加熱ステップを終了する移行温度Tz1,Tz2を実行時間にすると、炊飯容量が多くなるに従って実行時間が短くなるように設定されている。なお、調整加熱ステップでは、移行温度Tz1,Tz2の代わりに移行時間を、判別した炊飯容量毎に異なるように設定してもよい。
【0069】
このように、調整加熱ステップでは、蒸気温度センサ52用の第1移行温度Tz1が、主加熱ステップでの第1移行温度Ty1以上に設定され、蓋温度センサ51用の第2移行温度Tz2も、主加熱ステップでの第2移行温度Ty2以上に設定されている。つまり、炊飯容量及び炊飯メニューによっては、主加熱ステップでの第1移行温度Ty1と調整加熱ステップでの第1移行温度Tz1が同じ温度で、主加熱ステップでの第2移行温度Ty2が調整加熱ステップでの第2移行温度Tz2と同じ温度に設定され得る。主加熱ステップの移行温度Ty1,Ty2と調整加熱ステップの移行温度Tz1,Tz2を同じ温度に設定することは、炊飯容量及び炊飯メニューによって中ぱっぱ工程は、調整加熱ステップをスキップし(実行せず)、慣らし加熱ステップと主加熱ステップのみを実行する場合が含まれることを意味する。
【0070】
このように構成した炊飯器10では、中ぱっぱ工程において炊飯鍋15内での沸騰を遅延なく高精度に判断できる。
【0071】
具体的には、
図4に示す少量炊飯の場合、炊飯鍋15内で発生する蒸気量は多いが、蓋体30への炊飯鍋15の熱伝達は遅い。そのため、蓋温度センサ51による検出温度Tcが第2移行温度Ty2に達するという第2条件が成立する前に、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが第1移行温度Ty1に達し、第1条件が成立する。これにより主加熱ステップが終了する。
【0072】
図8に示す多量炊飯の場合、炊飯鍋15内で発生する蒸気量は少ないが、蓋体30への炊飯鍋15の熱伝達は速い。そのため、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが第1移行温度Ty1に達するという第1条件が成立する前に、蓋温度センサ51による検出温度Tcが第2移行温度Ty2に達し、第2条件が成立する。これにより主加熱ステップが終了する。
【0073】
一方、
図6に示す中量炊飯の場合、炊飯鍋15内で発生する蒸気量は、少量炊飯よりも少ないが多量炊飯よりも多くなり、蓋体30への炊飯鍋15の熱伝達は、多量炊飯よりも遅いが少量炊飯よりも速くなる。そのため、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが第1移行温度Ty1に達するという第1条件、及び蓋温度センサ51による検出温度Tcが第2移行温度Ty2に達するという第2条件は、概ね同時期に成立し、第1条件が先に成立する場合と第2条件が先に成立する場合とがある。
図6に示す例では、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが第1移行温度Ty1に達するという第1条件が、先に成立している。これにより主加熱ステップが終了する。
【0074】
このように、主加熱ステップは、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが第1移行温度Ty1に達するという第1条件、及び蓋温度センサ51による検出温度Tcが第2移行温度Ty2に達するという第2条件のうち、いずれか一方が成立すると終了する。これにより、沸騰判断に遅延を生じさせることなく、炊飯鍋15内の沸騰を高精度に判断できる。その結果、飯米に過度に熱量を与えることを抑制できるため、米飯を良好な状態で炊き上げることができる。
【0075】
また、主加熱ステップの後の調整加熱ステップにおいても、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが第1移行温度Tz1に達するという第1条件、及び蓋温度センサ51による検出温度Tcが第2移行温度Tz2に達するという第2条件のうち、いずれか一方が成立すると終了する。よって、中ぱっぱ工程の実行時間を最適化できるため、米飯を良好な状態で炊き上げることができる。
【0076】
次に、制御部60による中ぱっぱ工程の制御について、
図10を参照して説明する。
【0077】
図10において、ステップS10,S11が慣らし加熱ステップで、ステップS12~S17が容量判別を含む主加熱ステップで、ステップS18~S20が調整加熱ステップである。ステップS12~S17のうち、ステップS12,S15~17は容量判別と判別結果による各ステップの移行条件の設定であり、実質的な主加熱ステップはステップS13,S14である。
【0078】
具体的には、中ぱっぱ工程では、制御部60は、ステップS10で、インバータ回路63と切換部64を制御し、コイル26,27に対して定格電力の100%で高周波電流を出力させる。続いて、ステップS11で、鍋温度センサ50による検出温度Tpが移行温度Txに達するまで待機し、検出温度Tpが移行温度Txに達したことを示すとステップS12に進む。
【0079】
ステップS12では、タイマ62をリセットしてスタートした後、ステップS13で、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが第1移行温度Ty1に達したか否かを判断する。そして、検出温度Tsが第1移行温度Ty1に達したことを示す場合にはステップS15に進み、検出温度Tsが第1移行温度Ty1に達したことを示さない場合にはステップS14に進む。ステップS14では、蓋温度センサ51による検出温度Tcが第2移行温度Ty2に達したか否かを判断する。そして、検出温度Tcが第2移行温度Ty2に達したことを示す場合にはステップS15に進み、検出温度Tcが第2移行温度Ty2に達したことを示さない場合にはステップS13に戻る。つまり、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが第1移行温度Ty1に達したことを示すという第1条件、及び蓋温度センサ51による検出温度Tcが第2移行温度Ty2に達したことを示すという第2条件のうち、いずれかが成立するとステップ15に進み、実質的な主加熱ステップを終了する。
【0080】
ステップS15では、タイマ62を停止した後、ステップS16で、タイマ62による計測時間に基づいて炊飯容量を判別する。その後、ステップS17で、判別した炊飯容量に基づいて、調整加熱ステップでの移行温度Tz1,Tz2、沸騰維持工程の休止ステップを実行するか否か、むらし工程の実行時間の設定を行い、ステップS18に進む。
【0081】
ステップS18では、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが第1移行温度Tz1に達したか否かを判断する。そして、検出温度Tsが第1移行温度Tz1に達したことを示す場合にはステップS20に進み、検出温度Tsが第1移行温度Tz1に達したことを示さない場合にはステップS19に進む。ステップS19では、蓋温度センサ51による検出温度Tcが第2移行温度Tz2に達したか否かを判断する。そして、検出温度Tcが第2移行温度Tz2に達したことを示す場合にはステップS20に進み、検出温度Tcが第2移行温度Tz2に達したことを示さない場合にはステップS18に戻る。つまり、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが第1移行温度Tz1に達したことを示すという第1条件、及び蓋温度センサ51による検出温度Tcが第2移行温度Tz2に達したことを示すという第2条件のうち、いずれかが成立するとステップ20に進む。
【0082】
ステップS20では、コイル26,27への出力を停止、つまり炊飯鍋15の加熱を停止し、調整加熱ステップ(中ぱっぱ工程)を終了してリターンする。
【0083】
このように構成された炊飯器10は、以下の特徴を有する。
【0084】
排気通路40内の蒸気温度を検出するための蒸気温度センサ52と、放熱板33と内蓋34を介して炊飯鍋15内の温度を検出するための蓋温度センサ51とを備える。これにより、炊飯容量が少ないとき、つまり炊飯鍋15内で発生する蒸気量が多く蓋体30への熱伝達が遅いときには、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが定められた移行温度Ty1に達することで、主加熱ステップが終了する。一方、炊飯容量が多いとき、つまり炊飯鍋15内で発生する蒸気量が少なく蓋体30への熱伝達が速いときには、蓋温度センサ51による検出温度Tcが定められた移行温度Ty2に達することで、主加熱ステップが終了する。このように、炊飯容量に関わらず炊飯鍋15内の沸騰を遅延なく高精度に判断できるため、中ぱっぱ工程の実行時間を最適化できる。よって、飯米に過度な熱量を与えることを抑制できるため、米飯を良好な状態で炊き上げることができる。
【0085】
具体的には、主加熱ステップは、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが第1移行温度Ty1に達したことを示す第1条件、及び蓋温度センサ51による検出温度Tcが第2移行温度Ty2に達したことを示す第2条件のうち、いずれか一方が成立すると終了する。炊飯容量が少ないときには、炊飯鍋15内で発生する蒸気量は多いが蓋体30への熱伝達は遅いため、第2条件が成立する前に、蒸気温度センサ52による検出温度Tsが第1移行温度Ty1に達し、第1条件が成立することで主加熱ステップが終了する。一方、炊飯容量が多いときには、炊飯鍋15内で発生する蒸気量は少ないが蓋体30への熱伝達は速いため、第1条件が成立する前に、蓋温度センサ51による検出温度Tcが第2移行温度Ty2に達し、第2条件が成立することで主加熱ステップが終了する。このように、炊飯容量に関わらず炊飯鍋15内の沸騰を遅延なく高精度に判断でき、中ぱっぱ工程の実行時間を最適化できるため、米飯を良好な状態で炊き上げることができる。
【0086】
蒸気の温度を直接検出する蒸気温度センサ52による検出温度Tsは、炊飯鍋15内の温度を放熱板33と内蓋34を介して間接的に検出する蓋温度センサ51による検出温度Tcよりも早期に高くなる。そのため、第1移行温度Ty1を第2移行温度Ty2よりも高く設定することで、蒸気温度センサ52及び蓋温度センサ51のうちいずれの検出結果からでも、炊飯鍋15内の沸騰を遅延なく高精度に判断できる。
【0087】
制御部60は、主加熱ステップの開始から終了までの時間によって炊飯容量を判別し、主加熱ステップの後の調整加熱ステップを終了する移行温度Tz1,Tz2又は時間を、判別した炊飯容量によって異なるように設定する。この構成により、中ぱっぱ工程全体の実行時間を最適化できるため、中ぱっぱ工程と沸騰維持工程の実行時間のバランスを向上できる。よって、米飯を良好な状態で炊き上げることができる。
【0088】
蒸気温度センサ52の検出部52aはシール部材44内に配置され、蓋温度センサ51の検出部51aは、放熱板33又は内蓋34に接触するようにシール部材44外に配置されている。この構成により、蒸気温度センサ52によって排気通路40内の蒸気の温度を確実に検出でき、蓋温度センサ51によって放熱板33と内蓋34を介して炊飯鍋15内の温度を確実に検出できる。
【0089】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0090】
例えば、炊飯容量の判別は、中ぱっぱ工程の慣らし加熱ステップで行われてもよいし、予熱工程で行われてもよいし、重量センサを用いて炊飯開始時に行われてもよい。これらの場合、中ぱっぱ工程の主加熱ステップでは、炊飯容量が既に判別されているため、少量の場合には蒸気温度センサ52による検出温度Tsのみを沸騰検出に使用し、中量の場合には蒸気温度センサ52と蓋温度センサ51による検出温度Ts,Tcの両方を沸騰検出に使用し、多量の場合には蓋温度センサ51による検出温度Tcのみを沸騰検出に使用してもよい。また、中量の場合、蒸気温度センサ52の検出結果による沸騰検出と蓋温度センサ51の検出結果による沸騰検出とは、殆ど同時期に判断可能なため、蒸気温度センサ52による検出温度Tsのみを沸騰検出に使用してもよい。
【0091】
炊飯器10は、排気通路40の途中に可動式の弁体を配置し、炊飯鍋15内を大気圧よりも高い圧力まで昇圧可能とした圧力炊飯器であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 炊飯器
15 炊飯鍋
16 底壁部
17 周壁部
18 連続部
20 炊飯器本体
21 外装体
22 ヒンジ接続軸
23 収容部
24 内胴
25 保護枠
26 内側コイル(加熱部)
27 外側コイル(加熱部)
30 蓋体
31 蓋本体
32 蓋カバー
33 放熱板(隔壁)
34 内蓋(隔壁)
35 シール部材
36 蓋ヒータ
40 排気通路
41 流入部
42 通気口
43 開口部
44 シール部材
45 閉鎖空間部
46 連通口
47 蒸気口セット
47a 接続部
47b 排気部
50 鍋温度センサ
50a 検出部
51 蓋温度センサ
51a 検出部(第2検出部)
52 蒸気温度センサ
52a 検出部(第1検出部)
55 液晶パネル
56 スイッチ
58 ホルダ
59 制御基板
60 制御部
61 メモリ
62 タイマ
63 インバータ回路
64 切換部