(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175353
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】光学フィルム、着色層形成用組成物及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20231205BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20231205BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20231205BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20231205BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20231205BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20231205BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20231205BHJP
C09B 23/04 20060101ALN20231205BHJP
C07F 15/06 20060101ALN20231205BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G02B5/22
C09B67/20 F
C08L101/00
C08L33/04
B32B7/023
B32B27/18 Z
C09B23/04
C07F15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087760
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】古川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田上 英恵
(72)【発明者】
【氏名】石川 真也
(72)【発明者】
【氏名】石丸 佳子
【テーマコード(参考)】
2H148
4F100
4H050
4J002
【Fターム(参考)】
2H148BE16
2H148BF05
2H148BF07
2H148BG06
2H148BH01
2H148BH26
2H148CA04
2H148CA14
2H148CA19
4F100AG00A
4F100AH08B
4F100AJ04D
4F100AK21C
4F100AK25B
4F100BA02
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4F100BA04
4F100BA07
4F100CA13B
4F100EH46B
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4F100EJ54B
4F100GB41
4F100JB14B
4F100JD03C
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4F100YY00B
4H050AA03
4H050AB99
4J002AA021
4J002BG041
4J002BG051
4J002BG061
4J002EE036
4J002EE056
4J002EU027
4J002FD097
4J002FD146
4J002GP00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明は、表示装置の低反射率化、高輝度化、薄膜化及び色再現性の向上に有効であり、耐光性に優れる、光学フィルム、着色層形成用組成物及び表示装置を目的とする。
【解決手段】透明基材20と、透明基材20の少なくとも一方面側に積層された着色層10とを備え、着色層10は、色素(A)を含有し、前記色素(A)は、濃度5.0×10
-6Mのアセトン溶液中における吸収極大波長が489~500nm、かつ、極大吸収の半値幅が22nm以下である色材を含有し、前記色材は、特定の構造を有するジピロメテンコバルト錯体を含有し、極大吸収の半値幅が30nm以下である、光学フィルム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、前記透明基材の少なくとも一方面側に積層された着色層とを備え、
前記着色層は、色素(A)を含有し、
前記色素(A)は、濃度5.0×10
-6Mのアセトン溶液中における吸収極大波長が489~500nm、かつ、極大吸収の半値幅が22nm以下である色材を含有し、
前記色材は、下記式(I)で表される構造を有するジピロメテンコバルト錯体を含有し、
極大吸収の半値幅が30nm以下である、光学フィルム。
【化1】
ここで、R
1~R
7は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族炭化水素基、複素環基、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、エステル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一価基を示す。
【請求項2】
前記ジピロメテンコバルト錯体は、下記式(III)で表される構造を有するボロンジピロメテンと、一重項酸素とが反応する下記反応式(II)において、
量子化学計算プログラムGaussian16を用い、計算手法B3LYP、基底関数6-31G(d,p)(ただし、前記式(I)におけるR
5がKrより原子番号が大きな元素には基底関数LanL2DZを割り当てる)にて計算した反応前後の自由エネルギー変化ΔGが、-1.0kcal/mol以上である、請求項1に記載の光学フィルム。
【化2】
【化3】
ここで、式(II)及び式(III)におけるR
1~R
7は、前記式(I)におけるR
1~R
7と各々同一の一価基を示す。
【請求項3】
前記ジピロメテンコバルト錯体は、R5が水素原子である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記ジピロメテンコバルト錯体は、R1~R4がアルキル基であり、R1とR2の炭素数の和が3以上かつR3とR4の炭素数の和が3以上である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記ジピロメテンコバルト錯体は、下記式(I-1)で表される構造を有し、かつ濃度5.0×10
-6Mのアセトン溶液のモル吸光係数が190000L/(mol・cm)以上である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【化4】
ここで、R
1~R
5は前記の通りであり、R
8及びR
9は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を示す。
【請求項6】
前記ジピロメテンコバルト錯体は、R8及びR9が各々独立にメチル基又はエチル基である、請求項5に記載の光学フィルム。
【請求項7】
色素(A)と、光重合性化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含有し、
前記色素(A)は、濃度5.0×10
-6Mのアセトン溶液中における吸収極大波長が489~500nm、かつ、極大吸収の半値幅が22nm以下である色材を含有し、
前記色材は、下記式(I)で表される構造を有するジピロメテンコバルト錯体を含有し、
硬化物における極大吸収の半値幅が30nm以下である、着色層形成用組成物。
【化5】
ここで、R
1~R
7は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族炭化水素基、複素環基、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、エステル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一価基を示す。
【請求項8】
前記ジピロメテンコバルト錯体は、下記式(III)で表される構造を有するボロンジピロメテンと、一重項酸素とが反応する下記反応式(II)において、
量子化学計算プログラムGaussian16を用い、計算手法B3LYP、基底関数6-31G(d,p)(ただし、前記式(I)におけるR
5がKrより原子番号が大きな元素には基底関数LanL2DZを割り当てる)にて計算した反応前後の自由エネルギー変化ΔGが、-1.0kcal/mol以上である、請求項7に記載の着色層形成用組成物。
【化6】
【化7】
ここで、式(II)及び式(III)におけるR
1~R
7は、前記式(I)におけるR
1~R
7と各々同一の一価基を示す。
【請求項9】
前記ジピロメテンコバルト錯体は、R5が水素原子である、請求項7又は8に記載の着色層形成用組成物。
【請求項10】
前記ジピロメテンコバルト錯体は、R1~R4がアルキル基であり、R1とR2の炭素数の和が3以上かつR3とR4の炭素数の和が3以上である、請求項7又は8に記載の着色層形成用組成物。
【請求項11】
前記ジピロメテンコバルト錯体は、下記式(I-1)で表される構造を有し、かつ濃度5.0×10
-6Mのアセトン溶液のモル吸光係数が190000L/(mol・cm)以上である、請求項7又は8に記載の着色層形成用組成物。
【化8】
ここで、R
1~R
5は前記の通りであり、R
8及びR
9は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を示す。
【請求項12】
前記ジピロメテンコバルト錯体は、R8及びR9が各々独立にメチル基又はエチル基である、請求項11に記載の着色層形成用組成物。
【請求項13】
非重合性添加剤(D)をさらに含有する、請求項7又は8に記載の着色層形成用組成物。
【請求項14】
透明基材と、前記透明基材の少なくとも一方面側に積層された着色層とを備え、
前記着色層は、請求項7又は8に記載の着色層形成用組成物の硬化物である、光学フィルム。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の光学フィルムを備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、着色層形成用組成物及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、室内外を問わず、外光が入射する環境下で使用されることが多い。表示装置に入射した外光は、表示装置の表面で反射され、視認性の低下等、表示品位の低下を引き起こす。中でも有機発光表示装置等の自発光表示装置は、電極及びその他多くの金属配線が外光を強く反射し、表示品位の低下が生じやすい。
表示装置を低反射率化し、外光反射を抑制するために、表示装置の表示面側に円偏光板を配置することがある。
【0003】
一方、表示装置には一般に、高い色純度が求められる。色純度とは、表示装置の表示可能な色の広さを示し、色再現範囲とも呼ばれる。よって、高い色純度であることは、色再現範囲が広く、色再現性が良いことを意味する。色再現性の向上手段としては、例えば、表示装置の白色光源に対しカラーフィルタを用いて色分離する手法、単色光源をカラーフィルタで補正して半値幅を狭くする手法が知られている。
【0004】
カラーフィルタとしては、例えば以下のものが提案されている。
・特定の構造を有する第1の色材と、420~480nmの波長域に吸収極大を有する第2の色材とを含む色補正フィルタ(特許文献1)。
・ジピロメテン系色素を含有する樹脂層を有し、前記樹脂が特定のガラス転移温度を有するポリエステル樹脂であるディスプレイ用フィルタ(特許文献2)。
特許文献1では、特定の色材を組み合わせることで、白色光源の色純度の向上が図られている。特許文献2では、色素の最大吸収波長を、光源の種類に応じて適切な値に設定し、光源からの副発光を選択的に吸収することで、色純度の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6142398号公報
【特許文献2】特開2006-251076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、円偏光板を用いる場合には、表示装置から出射した光も円偏光板に吸収され、輝度が大きく低下する。輝度低下を補うために発光強度を高くすると、発光素子の寿命低下を引き起こす。さらに、円偏光板自体の厚みにより、表示装置の薄型化が困難となる問題もある。
従来のカラーフィルタを用いて表示装置の色再現性を向上させる場合には、カラーフィルタの厚膜化や色材の高濃度化が必要となり、画素形状や視野角特性の悪化等、表示品位を低下させる問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、表示装置の低反射率化、高輝度化、薄膜化及び色再現性の向上に有効であり、耐光性に優れる、光学フィルム、着色層形成用組成物及び表示装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
【0009】
[1]透明基材と、前記透明基材の少なくとも一方面側に積層された着色層とを備え、
前記着色層は、色素(A)を含有し、
前記色素(A)は、濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液中における吸収極大波長が489~500nm、かつ、極大吸収の半値幅が22nm以下である色材を含有し、
前記色材は、下記式(I)で表される構造を有するジピロメテンコバルト錯体を含有し、
極大吸収の半値幅が30nm以下である、光学フィルム。
【0010】
【0011】
ここで、R1~R7は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族炭化水素基、複素環基、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、エステル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一価基を示す。
[2]前記ジピロメテンコバルト錯体は、下記式(III)で表される構造を有するボロンジピロメテンと、一重項酸素とが反応する下記反応式(II)において、
量子化学計算プログラムGaussian16を用い、計算手法B3LYP、基底関数6-31G(d,p)(ただし、前記式(I)におけるR5がKrより原子番号が大きな元素には基底関数LanL2DZを割り当てる)にて計算した反応前後の自由エネルギー変化ΔGが、-1.0kcal/mol以上である、[1]に記載の光学フィルム。
【0012】
【0013】
【0014】
ここで、式(II)及び式(III)におけるR1~R7は、前記式(I)におけるR1~R7と各々同一の一価基を示す。
[3]前記ジピロメテンコバルト錯体は、R5が水素原子である、[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
[4]前記ジピロメテンコバルト錯体は、R1~R4がアルキル基であり、R1とR2の炭素数の和が3以上かつR3とR4の炭素数の和が3以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の光学フィルム。
[5]前記ジピロメテンコバルト錯体は、下記式(I-1)で表される構造を有し、かつ濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液のモル吸光係数が190000L/(mol・cm)以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の光学フィルム。
【0015】
【0016】
ここで、R1~R5は前記の通りであり、R8及びR9は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を示す。
[6]前記ジピロメテンコバルト錯体は、R8及びR9が各々独立にメチル基又はエチル基である、[5]に記載の光学フィルム。
【0017】
[7]色素(A)と、光重合性化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含有し、
前記色素(A)は、濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液中における吸収極大波長が489~500nm、かつ、極大吸収の半値幅が22nm以下である色材を含有し、
前記色材は、下記式(I)で表される構造を有するジピロメテンコバルト錯体を含有し、
硬化物における極大吸収の半値幅が30nm以下である、着色層形成用組成物。
【0018】
【0019】
ここで、R1~R7は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族炭化水素基、複素環基、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、エステル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一価基を示す。
[8]前記ジピロメテンコバルト錯体は、下記式(III)で表される構造を有するボロンジピロメテンと、一重項酸素とが反応する下記反応式(II)において、
量子化学計算プログラムGaussian16を用い、計算手法B3LYP、基底関数6-31G(d,p)(ただし、前記式(I)におけるR5がKrより原子番号が大きな元素には基底関数LanL2DZを割り当てる)にて計算した反応前後の自由エネルギー変化ΔGが、-1.0kcal/mol以上である、[7]に記載の着色層形成用組成物。
【0020】
【0021】
【0022】
ここで、式(II)及び式(III)におけるR1~R7は、前記式(I)におけるR1~R7と各々同一の一価基を示す。
[9]前記ジピロメテンコバルト錯体は、R5が水素原子である、[7]又は[8]に記載の着色層形成用組成物。
[10]前記ジピロメテンコバルト錯体は、R1~R4がアルキル基であり、R1とR2の炭素数の和が3以上かつR3とR4の炭素数の和が3以上である、[7]~[9]のいずれかに記載の着色層形成用組成物。
[11]前記ジピロメテンコバルト錯体は、下記式(I-1)で表される構造を有し、かつ濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液のモル吸光係数が190000L/(mol・cm)以上である、[7]~[10]のいずれかに記載の着色層形成用組成物。
【0023】
【0024】
ここで、R1~R5は前記の通りであり、R8及びR9は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を示す。
[12]前記ジピロメテンコバルト錯体は、R8及びR9が各々独立にメチル基又はエチル基である、[11]に記載の着色層形成用組成物。
[13]非重合性添加剤(D)をさらに含有する、[7]~[12]のいずれかに記載の着色層形成用組成物。
【0025】
[14]透明基材と、前記透明基材の少なくとも一方面側に積層された着色層とを備え、
前記着色層は、[7]~[13]のいずれかに記載の着色層形成用組成物の硬化物である、光学フィルム。
【0026】
[15][1]~[6]及び[14]のいずれかに記載の光学フィルムを備える、表示装置。
【発明の効果】
【0027】
本発明の光学フィルム、着色層形成用組成物及び表示装置によれば、表示装置の低反射率化、高輝度化、薄膜化及び色再現性の向上に有効であり、耐光性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光学フィルムの断面図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る光学フィルムの断面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る光学フィルムの断面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る光学フィルムの断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る光学フィルムの断面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る光学フィルムの断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る光学フィルムの断面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る光学フィルムの断面図である。
【
図9】White輝度効率の評価に用いた光源のスペクトルである。
【
図10】色純度の評価に用いた光源のスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[光学フィルム]
以下、本発明の一実施形態に係る光学フィルムについて、
図1に基づき詳細に説明する。
【0030】
図1に示すように、光学フィルム1は、着色層10と、透明基材20と、機能層30と、を有する。機能層30は、低屈折率層31と、ハードコート層32と、を有する。すなわち、光学フィルム1は、着色層10の一方の面に位置する透明基材20を有し、着色層10、透明基材20、ハードコート層32、低屈折率層31が、この順で積層された積層体である。
【0031】
光学フィルム1の厚さは、例えば、10~140μmが好ましく、15~120μmがより好ましく、20~100μmがさらに好ましい。光学フィルム1の厚さが上記下限値以上であると、光学フィルム1の強度をより高められる。光学フィルム1の厚さが上記上限値以下であると、光学フィルム1をより軽量にでき、表示装置の薄型化に有利である。
【0032】
光学フィルム1の極大吸収の半値幅は、30nm以下であり、28nm以下が好ましく、25nm以下がより好ましい。光学フィルム1の極大吸収の半値幅が上記上限値以下であると、輝度効率をより高められる。光学フィルム1の極大吸収の半値幅の下限値は、特に限定されないが、例えば、10nmとされる。
以下、光学フィルム1を構成する各層について説明する。
【0033】
≪着色層≫
着色層10は、色素(A)を含有する。
好ましい一態様において、着色層10は、本発明の着色層形成用組成物の硬化物である。本発明の着色層形成用組成物は、色素(A)と、光重合性化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、を含有する。着色層10が本発明の着色層形成用組成物の硬化物である場合、着色層10は、色素(A)と、光重合性化合物(B)の重合物と、を含有する。
着色層10及び本発明の着色層形成用組成物は、非重合性添加剤(D)をさらに含有していてもよい。本発明の着色層形成用組成物は、溶剤(E)をさらに含有していてもよい。
【0034】
着色層10の厚さは、例えば、0.5~10μmが好ましい。着色層10の厚さが上記下限値以上であると、色純度を向上でき、色純度と輝度効率とを両立できる。着色層10の厚さが上記上限値以下であると、表示装置の薄型化に有利である。
着色層10の厚さは、光学フィルム1の厚さ方向の断面を顕微鏡等で観察することにより求められる。
【0035】
<色素(A)>
色素(A)は、濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液中における吸収極大波長が489~500nm、かつ、極大吸収の半値幅が22nm以下である色材(以下、「第一の色材」とも記す。)を含有する。
第一の色材は、濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液中における吸収極大波長が上記下限値以上であると、青色発光の輝度を低下させにくい。第一の色材は、濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液中における吸収極大波長が上記上限値以下であると、緑色発光の輝度を低下させにくい。このため、吸収波長と吸収強度との制御により、色純度と輝度効率とを両立しやすい。
ここで、アセトン溶液の濃度は、後述するジピロメテンコバルト錯体の濃度を意味する。
【0036】
第一の色材は、濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液中における極大吸収の半値幅が22nm以下であり、20nm以下が好ましく、18nm以下がより好ましい。濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液中における極大吸収の半値幅が上記上限値以下であると、色純度をより高められる。濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液中における極大吸収の半値幅の下限値は、特に限定されないが、例えば、5nmとされる。
ここで、アセトン溶液の濃度は、後述するジピロメテンコバルト錯体の濃度を意味する。
【0037】
第一の色材は、特定のジピロメテンコバルト錯体(以下、「錯体(I)」とも記す。)を含有する。
錯体(I)は、下記式(I)で表される構造を有する。
【0038】
【0039】
ここで、R1~R7は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族炭化水素基、複素環基、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、エステル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一価基を示す。
一価基が炭素原子を有する場合(脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族炭化水素基、複素環基、置換アミノ基、エステル基、アシル基等)、その一価基は置換基を有していてもよい。
【0040】
式(I)中、R1~R7におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
R1~R7における脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基等が挙げられる。
【0041】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、neo-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、cyclo-ペンチル基、n-ヘキシル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、3-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-エチルブチル基、1,2,2-トリメチルブチル基、1,1,2-トリメチルブチル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、cyclo-ヘキシル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,4-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、2,5,5-トリメチルペンチル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、n-オクチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、4-エチルオクチル基、4-エチル-4,5-メチルヘキシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、1,3,5,7-テトラエチルオクチル基、4-ブチルオクチル基、6,6-ジエチルオクチル基、n-トリデシル基、6-メチル-4-ブチルオクチル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、3,5-ジメチルヘプチル基、2,6-ジメチルヘプチル基、2,4-ジメチルヘプチル基、2,2,5,5-テトラメチルヘキシル基、1-cyclo-ペンチル-2,2-ジメチルプロピル基、1-cyclo-ヘキシル-2,2-ジメチルプロピル基等が挙げられる。
これらのアルキル基の1以上の水素原子が、ハロゲン原子、アルコキシ基等の置換基で置換されていてもよい。
アルキル基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよく、環状でもよい。アルキル基の炭素数は、例えば、1~20である。
【0042】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、1-ブテニル基、iso-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、2-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2,2-ジシアノビニル基、2-シアノ-2-メチルカルボキシルビニル基、2-シアノ-2-メチルスルホンビニル基等が挙げられる。
アルケニル基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。アルケニル基の炭素数は、例えば、2~20である。
【0043】
R1~R7におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、iso-ペントキシ基、neo-ペントキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基等が挙げられる。
アルコキシ基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。アルコキシ基の炭素数は、例えば、1~20である。
【0044】
R1~R7におけるアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、iso-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、iso-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、iso-ペンチルチオ基、2-メチルブチルチオ基、1-メチルブチルチオ基、neo-ペンチルチオ基、1,2-ジメチルプロピルチオ基、1,1-ジメチルプロピルチオ基等が挙げられる。
アルキルチオ基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。アルキルチオ基の炭素数は、例えば、1~20である。
【0045】
R1~R7における芳香族炭化水素基としては、例えば、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。芳香族炭化水素基の1以上の水素原子が、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族炭化水素基、複素環基、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、エステル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。
【0046】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ニトロベンジル基、シアノベンジル基、ヒドロキシベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、ジクロロベンジル基、メトキシベンジル基、エトキシベンジル基、トリフルオロメチルベンジル基、ナフチルメチル基、ニトロナフチルメチル基、シアノナフチルメチル基、ヒドロキシナフチルメチル基、メチルナフチルメチル基、トリフルオロメチルナフチルメチル基等が挙げられる。
アラルキル基の炭素数は、例えば、7~20である。
【0047】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ジクロロフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、N,N-ジメチルアミノフェニル基、ナフチル基、ニトロナフチル基、シアノナフチル基、ヒドロキシナフチル基、メチルナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基等が挙げられる。
アリール基の炭素数は、例えば、6~20である。
【0048】
R1~R7における複素環基としては、ヘテロアリール基等が挙げられる。
ヘテロアリール基としては、例えば、ピロリル基、チエニル基、フラニル基、オキサゾイル基、イソオキサゾイル基、オキサジアゾイル基、イミダゾイル基、ベンゾオキサゾイル基、ベンゾチアゾイル基、ベンゾイミダゾイル基、ベンゾフラニル基、インドイル基等が挙げられる。
ヘテロアリール基の炭素数は、例えば、4~20である。
【0049】
R1~R7における置換アミノ基としては、例えば、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アルキルカルボニルアミノ基としては、例えば、アセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ブチルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アルキルカルボニルアミノ基の炭素数は、例えば、2~20である。
アリールカルボニルアミノ基としては、例えば、フェニルアミノカルボニル基、4-メチルフェニルアミノカルボニル基、2-メトキシフェニルアミノカルボニル基、4-n-プロピルフェニルアミノカルボニル基等が挙げられる。
アリールカルボニルアミノ基の炭素数は、例えば、7~20である。
【0050】
R1~R7におけるエステル基としては、例えば、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0051】
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、2,2-ジメチルプロピルオキシカルボニル基、2,4-ジメチルブチルオキシカルボニル基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基の炭素数は、例えば、2~20である。
【0052】
アルケニルオキシカルボニル基としては、例えば、アリルオキシカルボニル基、2-ブテノキシカルボニル基等が挙げられる。
アルケニルオキシカルボニル基の炭素数は、例えば、3~20である。
【0053】
R1~R7におけるアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、n-プロピルカルボニル基、iso-プロピルカルボニル基、n-ブチルカルボニル基、iso-ブチルカルボニル基、sec-ブチルカルボニル基、t-ブチルカルボニル基、n-ペンチルカルボニル基、iso-ペンチルカルボニル基、neo-ペンチルカルボニル基、2-メチルブチルカルボニル基、ニトロベンジルカルボニル基等が挙げられる。
アシル基の炭素数は、例えば、1~20である。
【0054】
R1~R7における一価基が炭素原子を有する場合、その一価基の炭素数は、10以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。炭素数が上記上限値以下であると、錯体(I)の分子量が比較的低い。このため、色素(A)の濃度が低くても、波長489~500nmの光を充分に吸収でき、耐光性をより高められる。
一価基が炭素原子を有する場合の炭素数の下限は、前記した各一価基の説明において示した炭素数の範囲の下限と同様である。
【0055】
式(I)においては、R1~R4がアルキル基であり、R1とR2の炭素数の和が3以上かつR3とR4の炭素数の和が3以上であることが好ましい。この場合、ΔGが大きく耐光性が向上する傾向がある。この理由としては、R1又はR2による立体障害とR3又はR4による立体障害とにより、一重項酸素によるジピロメテン構造のメソ位への攻撃が抑制されることが考えられる。さらに、塗膜を構成する樹脂との相溶性が向上し、塗膜中で安定的に存在することが可能となり、耐光性が向上する。
R1とR2の炭素数の和、R3とR4の炭素数の和はそれぞれ、4以上であることがより好ましい。R1とR2の炭素数の和、R3とR4の炭素数の和それぞれの上限は、例えば、12、さらには8である。
【0056】
式(I)においては、R1~R4のうち少なくとも1つが水素原子又はハロゲン原子であることも好ましい。この場合、ΔGが大きくなり、耐光性が向上する傾向がある。この場合、R1及びR3が各々独立に水素原子又はハロゲン原子であり、R2及びR4が各々独立に炭素数1~4のアルキル基であるか、又は、R1及びR3が各々独立に炭素数1~4のアルキル基であり、R2及びR4が各々独立にハロゲン原子であることがより好ましい。
【0057】
式(I)においては、R5が水素原子であることが好ましい。この場合、ΔGが大きくなり、耐光性が向上する傾向がある。
【0058】
式(I)においては、R6及びR7が各々独立にエステル基であることが好ましい。この場合、ΔGが大きくなり、耐光性が向上する傾向がある。この理由としては、R6及びR7が嵩高い構造であることで、一重項酸素によるジピロメテン構造のメソ位への攻撃が抑制されることが考えられる。
エステル基のなかでも、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基が好ましく、炭素数2~3のアルコキシカルボニル基がより好ましい。この場合、錯体(I)の分子量が比較的低くなり、色素(A)の濃度を低くできる。
【0059】
錯体(I)は、式(I)中のR1~R7を下記反応式(II)に当てはめて計算した反応前後の自由エネルギー変化(以下、「ΔG」とも記す。)が-1.0kcal/mol以上となるようにR1~R7が組み合わされたものであることが好ましい。式(I)で表される構造を有していても、ΔGが-1.0kcal/mol未満のものは、錯体(I)に該当しない。
【0060】
【0061】
ここで、反応式(II)におけるR1~R7は、式(I)におけるR1~R7と各々同一の一価基を示す。
【0062】
反応式(II)は、下記式(III)で表されるボロンジピロメテンと一重項酸素との反応式である。このボロンジピロメテンと一重項酸素との反応前後のΔGは、錯体(I)と一重項酸素との反応前後のΔGと相関性がある。錯体(I)中のR1~R7と同一の置換基を有するボロンジピロメテンを代替構造としてΔGを計算することにより、電子数が多く大きな計算負荷を要するジピロメテンコバルト錯体の構造そのものの構造を用いて計算するよりも短時間でΔGを算出することが可能となる。
【0063】
【0064】
ΔGは、量子化学計算プログラムGaussian16を用い、計算手法B3LYP、基底関数6-31G(d,p)(ただし、周期表においてKrより原子番号が大きな元素には基底関数LanL2DZを割り当てる)にて計算した値である。より詳細には、量子化学計算プログラムGaussian16を用い、計算手法B3LYP、基底関数6-31G(d,p)(ただし、式(I)におけるR5がKrより原子番号が大きな元素には基底関数LanL2DZを割り当てる)にて、式(III)で表されるボロンジピロメテンの構造最適化計算及び振動計算をした結果得られる自由エネルギーの値と、一重項酸素の構造最適化計算及び振動計算をした結果得られる自由エネルギーの値との和を、反応式(II)の右辺の構造最適化計算及び振動計算をした結果得られる自由エネルギーの値から引いて算出する。
【0065】
ΔGは、式(II)中のR1~R7がどのような基又は原子であるかによって異なる。したがって、式(II)中のR1~R7は、ΔGが-1.0kcal/mol以上となるように選択される。
ΔGが-1.0kcal/mol以上であれば、ジピロメテンコバルト錯体が耐光性に優れ、これを含む着色層や光学フィルムも耐光性に優れる。
ΔGは、0.0kcal/mol以上が好ましく、0.3kcal/mol以上がより好ましい。ΔGは大きいほど好ましく、上限は特に限定されない。
【0066】
錯体(I)の好ましい一例として、下記式(I-1)で表される構造を有し、かつ濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液(錯体(I)をアセトンに溶解した溶解液)のモル吸光係数が190000L/(mol・cm)以上であるジピロメテンコバルト錯体が挙げられる。かかるジピロメテンコバルト錯体は、耐光性に優れる。また、分子量が比較的低く、色素(A)の濃度を低くできる。
【0067】
【0068】
ここで、R1~R5は前記の通りであり、R8及びR9は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を示す。R8及びR9は各々独立にメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0069】
上記モル吸光係数が190000L/(mol・cm)以上であれば、耐光性がより優れる傾向がある。
上記モル吸光係数は、200000L/(mol・cm)以上が好ましく、210000L/(mol・cm)以上がより好ましい。上記モル吸光係数の上限は特に限定されないが、例えば、300000L/(mol・cm)である。
上記モル吸光係数は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
上記モル吸光係数は、式(I-1)中のR1~R5、R8及びR9がどのような基又は原子であるかによって異なる。したがって、式(I-1)中のR1~R5、R8及びR9は、上記モル吸光係数が190000L/(mol・cm)以上となるように選択されることが好ましい。
【0070】
錯体(I)の製造方法は、特に限定されず、例えば、特開2002-212456号公報に記載の方法に準じて製造できる。
式(I)におけるR1~R7を適宜選択することにより、錯体(I)の吸収極大波長を制御できる。
【0071】
色素(A)における第一の色材の含有量は、色素(A)の総質量に対して、例えば、10~100質量%が好ましい。色素(A)における第一の色材の含有量が上記数値範囲内であると、光学フィルム1の耐光性をより高められる。
【0072】
色素(A)は、濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液中における吸収極大波長が560~620nmの範囲内にある第二の色材をさらに含有してもよい。色素(A)が、第二の色材を含有することにより、色純度をより高められる。
第二の色材の濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液中における極大吸収の半値幅は、15~55nmであることが好ましい。
【0073】
第二の色材としては、例えば、フタロシアニン色素、ポルフィリン色素等が挙げられる。
色素(A)が第二の色材を含有する場合、色素(A)における第二の色材の含有量は、色素(A)の総質量に対して、例えば、10~60質量%が好ましい。色素(A)における第二の色材の含有量が上記数値範囲内であると、色純度をより高められる。
【0074】
色素(A)は、第一の色材及び第二の色材以外の他の色材をさらに含有していてもよい。
他の色材としては、380~780nmの波長範囲において最も透過率の低い波長が650~780nmの範囲内にある第三の色材が挙げられる。色素(A)が、第三の色材をさらに含有することにより、輝度効率の低下を最小限にし、色純度をさらに向上できる。
【0075】
第三の色材としては、例えば、スクアリウム色素、フタロシアニン色素等が挙げられる。
色素(A)が第三の色材を含有する場合、色素(A)における第三の色材の含有量は、色素(A)の総質量に対して、例えば、10~60質量%が好ましい。色素(A)における第三の色材の含有量が上記数値範囲内であると、色純度をさらに高められる。
【0076】
色素(A)は、ポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造、インジゴ構造のいずれかを有する化合物、又はその金属錯体を含有することが好ましい。色素(A)がこれらの化合物又はその金属錯体を含有すると、色純度と輝度効率とを両立でき、表示品位をより向上できる。
色素(A)は、これらの化合物又はその金属錯体を1種単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。これらの化合物又はその金属錯体は、第一の色材に含まれていてもよく、第二の色材に含まれていてもよく、第三の色材に含まれていてもよく、これらの色材の2種以上に含まれていてもよい。
【0077】
色素(A)の含有量は、着色層形成用組成物の固形分に対して、0.01~5.0質量%が好ましく、0.01~2.0質量%がより好ましい。色素(A)の含有量が上記下限値以上であると、外部光や表示装置の光源からの副発光を効果的に吸収することができ、反射率を低減できる。色素(A)の含有量が上記上限値以下であると、色素の凝集や会合を抑制することができ、色再現性をより高められる。
着色層形成用組成物の固形分は、溶剤(E)以外の全成分の合計である。着色層形成用組成物の固形分に対する色素(A)の含有量は、着色層の総質量に対する色素(A)の含有量とみなすことができる。
【0078】
<光重合性化合物(B)>
光重合性化合物(B)は、紫外線等の活性エネルギー線を照射されると重合し、硬化する化合物である。
光重合性化合物(B)としては、例えば、単官能の(メタ)アクリレート、2官能の(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。光重合性化合物(B)は、2官能以上の(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。
【0079】
単官能の(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイルを1つ有する化合物である。
単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0080】
2官能の(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイルを2つ有する化合物である。
2官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0081】
3官能以上の(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイルを3つ以上有する化合物である。
3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0082】
光重合性化合物(B)として、ウレタン(メタ)アクリレートを使用してもよい。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものが挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0083】
上述した(メタ)アクリレート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上述した(メタ)アクリレート化合物は、着色層形成用組成物中でモノマーであってもよく、一部が重合したオリゴマーであってもよい。
【0084】
光重合性化合物(B)の含有量は、着色層形成用組成物の総質量に対して、50~99質量%が好ましく、70~99質量%がより好ましい。光重合性化合物(B)の含有量が上記下限値以上であると、退色抑制効果をより高められる。光重合性化合物(B)の含有量が上記上限値以下であると、着色層形成用組成物の取扱い性をより高められる。
【0085】
<光重合開始剤(C)>
光重合開始剤(C)としては、例えば、紫外線等の活性エネルギー線が照射された際にラジカルを発生するものが挙げられる。
光重合開始剤(C)としては、例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類等)、フェニルケトン類[例えば、アセトフェノン類(例えば、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン等)、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン等のアルキルフェニルケトン類;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のシクロアルキルフェニルケトン類等]、アミノアセトフェノン類{2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノアミノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1等}、アントラキノン類(アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等)、チオキサントン類(2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノン等)、キサントン類、ホスフィンオキサイド類(例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
光重合開始剤(C)の含有量は、着色層形成用組成物の総質量に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましい。光重合開始剤(C)の含有量が上記下限値以上であると、着色層形成用組成物を充分に硬化できる。光重合開始剤(C)の含有量が上記上限値以下であると、未反応の光重合開始剤(C)が残留しにくく、信頼性の悪化を抑制できる。
【0087】
<非重合性添加剤(D)>
着色層形成用組成物が非重合性添加剤(D)を含有することで、着色層10に種々の機能を付与できる。
非重合性添加剤(D)としては、例えば、ラジカル補捉剤、過酸化物分解剤、一重項酸素クエンチャー、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、光増感剤、防汚剤、導電材料等が挙げられる。非重合性添加剤(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
非重合性添加剤(D)としては、光線、熱等による色素(A)の劣化を防止する機能を有することから、ラジカル補捉剤、過酸化物分解剤及び一重項酸素クエンチャーから選択される1種以上が好ましい。
【0088】
ラジカル捕捉剤は、色素(A)が酸化劣化する際のラジカルを捕捉し、自動酸化を抑制する働きを持ち、色素劣化(退色)を抑制する。ラジカル補捉剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤や芳香族アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等が挙げられ、特に、分子量が2000以上のヒンダードアミン系光安定剤が好適に用いられる。ヒンダードアミン系光安定剤の分子量が2000以上であると、高い退色抑制効果が得られる。これは、ヒンダードアミン系光安定剤が揮発しにくく、着色層10内に留まる分子が多く、充分な退色抑制効果が得られるためであると考えられる。
分子量が2000以上のヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、BASF社製のChimassorb2020FDL、Chimassorb944FDL、Tinuvin622、株式会社ADEKA製のアデカスタブLA-63P等が挙げられる。
【0089】
過酸化物分解剤は、ヒドロペルオキシド(ROOH、Rはアルキル基、Oは酸素原子、Hは水素原子を表す。)をイオン的に分解し、不活性な化合物にさせ、ラジカルの生成を抑制する機能を持つ酸化防止剤の一種である。非重合性添加剤(D)が過酸化物分解剤を含有することで、色素(A)の酸化劣化を抑制でき、着色層10を有する発光素子の長寿命化を図れる。なお、過酸化物分解剤が、後述する一重項酸素クエンチャーに該当する場合、本明細書において、一重項酸素クエンチャーは、過酸化物分解剤から除くものとする。
過酸化物分解剤としては、例えば、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。硫黄系酸化防止剤としては、例えば、3,3’-チオジプロピオン酸ジドデシル、2-メルカプトベンゾイミダゾール等が挙げられる。リン系酸化防止剤としては、例えば、亜リン酸トリヘキシル、亜リン酸トリオレイル、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリス(2-エチルヘキシル)、亜リン酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、亜リン酸トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル)、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリス(2-メチルフェニル)、亜リン酸トリス(4-メチルフェニル)、3,9-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0090】
一重項酸素クエンチャーは、一重項酸素による色素(A)の酸化劣化を抑制する化合物である。非重合性添加剤(D)が一重項酸素クエンチャーを含有することで、色素(A)の酸化劣化を抑制でき、着色層10を有する発光素子の長寿命化を図れる。
一重項酸素クエンチャーとしては、遷移金属錯体、色素類(ただし、色素(A)を除く。)、アミン類、フェノール類、スルフィド類等が挙げられる。一重項酸素クエンチャーとして特に好適に用いられる材料としては、ジアルキルホスフェート、ジアルキルジチオカルバメート、ベンゼンジチオールあるいはこれに類似するジチオールの遷移金属錯体で、中心金属としては、ニッケル、銅又はコバルトが好適に用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、例えば、(株)林原製のNKX1199(ビス[2’-クロロ-3-メトキシ-4-(2-メトキシエトキシ)ジチオベンジル]ニッケル)、NKX113(ビス(ジチオベンジル)ニッケル)、NKX114(ビス[4-(ジメチルアミノ)ジチオベンジル]ニッケル)、東京化成工業(株)製のD1781(ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II))、B1350(ビス(ジチオベンジル)ニッケル(II))、B4360(ビス[4,4’-ジメトキシ(ジチオベンジル)]ニッケル(II))、T3204(テトラブチルアンモニウムビス(3,6-ジクロロ-1,2-ベンゼンジチオラト)ニッケラート)等が挙げられる。
【0091】
非重合性添加剤(D)の含有量は、着色層形成用組成物の固形分に対して、0.1~50質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。非重合性添加剤(D)の含有量が上記下限値以上であると、着色層10に種々の機能を付与できる。非重合性添加剤(D)の含有量が上記上限値以下であると、硬化性を保持しやすい。
【0092】
<溶剤(E)>
溶剤(E)としては、エーテル類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール又はフェネトール等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン又はエチルシクロヘキサノン等が挙げられる。エステル類としては、例えば、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n-ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n-ペンチル又はγ-ブチロラクトン等が挙げられる。セロソルブ類としては、例えば、メチルセロソルブ、セロソルブ(エチルセロソルブ)、ブチルセロソルブ又はセロソルブアセテート等が挙げられる。溶剤(E)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
溶剤(E)の含有量は、着色層形成用組成物の総質量に対して、40~70質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましい。溶剤(E)の含有量が上記数値範囲内であると、色素(A)や非重合性添加剤(D)の溶解性が良好になり、塗液安定性(液体安定性)が維持され、良好な塗工性が得られる。
【0094】
着色層10は、本発明の着色層形成用組成物を用いることで、色純度及び輝度効率を向上させ、色純度と輝度効率とを両立でき、表示品位を向上できる。このため、低反射率化、高輝度化、薄膜化及び色再現性の向上に有効であり、耐光性に優れる。
【0095】
≪透明基材≫
透明基材20は、着色層10の一方の面に位置し、光学フィルム1を形成するシート状部材である。
透明基材20の形成材料としては、透光性を有する樹脂フィルムを採用することができる。例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンコポリマー、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等の透明樹脂や無機ガラスを利用できる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。ポリアクリレートとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられる。この中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)からなるフィルム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)からなるフィルム、PETを除くポリエステルからなるフィルムを好適に利用できる。
透明基材20の透過率としては、例えば、90%以上であることが好ましい。透明基材20の透過率は、分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて測定できる。
【0096】
透明基材20には、紫外線吸収能を付与してもよい。透明基材20の原料となる樹脂に、紫外線吸収剤を添加することで、透明基材20に紫外線吸収能を付与できる。
【0097】
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
透明基材20に紫外線吸収能を付与する場合、紫外線遮蔽率は、85%以上であることが好ましい。ここで、紫外線遮蔽率は、JIS L1925に準拠して測定される値であり、下記式(1)により算出される。
紫外線遮蔽率(%)=100-(波長290~400nmの紫外線の平均透過率(%)) ・・・(1)
紫外線遮蔽率が85%未満の場合、色素(A)の耐光性での退色抑制効果が低くなる。
【0099】
透明基材20の厚さは、例えば、10~100μmが好ましい。透明基材20の厚さが上記下限値以上であると、光学フィルム1の強度をより高められる。透明基材20の厚さが上記上限値以下であると、光学フィルム1をより薄膜にできる。
透明基材20の厚さは、デジタルノギス等を用いて測定することにより求められる。
【0100】
≪機能層≫
機能層30は、着色層10の一方又は他方の面に位置する。光学フィルム1は、機能層30を有することで、種々の機能を発揮できる。
機能層30の機能としては、反射防止機能、防眩機能、酸素バリア機能、帯電防止機能、防汚機能、強化機能、紫外線吸収機能(紫外線吸収能)等が挙げられる。
機能層30は、単層であってもよく、複数の層であってもよい。機能層30は、1種の機能を有していてもよく、2種以上の機能を有していてもよい。
【0101】
光学フィルム1が反射防止機能を有する場合、機能層30は、反射防止層として機能する。反射防止層としては、後述するハードコート層32や防眩層34、透明基材20よりも低い屈折率を呈する低屈折率層31が挙げられる。低屈折率層31は、ハードコート層32や防眩層34、透明基材20の材質よりも屈折率が低い材質を機能層に採用することで形成できる。
低屈折率層31の屈折率調整のため、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、ヘキサフルオロアルミニウムナトリウム(氷晶石、クリオライト、3NaF・AlF3、Na3AlF6)、フッ化アルミニウム(AlF3)等の微粒子や、シリカ微粒子等を配合してもよい。シリカ微粒子としては、多孔質シリカ微粒子や中空シリカ微粒子等の粒子内部に空隙を有するものを用いることが、低屈折率層31の低屈折率化に有効である。また、低屈折率層31を形成する組成物(低屈折率層形成用組成物)には、着色層10で説明した光重合開始剤(C)や非重合性添加剤(D)、溶剤(E)を適宜配合してもよい。
低屈折率層31の屈折率は、1.20~1.55とすることが好ましい。
低屈折率層31の厚さは、特に限定されないが、例えば、40nm~1μmが好ましい。
【0102】
光学フィルム1が防眩機能を有する場合、機能層30は、防眩層34として機能する。防眩層34は、表面に微細な凹凸を有し、この凹凸で外光を散乱させ、映り込みを抑えて表示品位を向上させる層である。低屈折率層31と組み合わされる場合、低屈折率層31と防眩層34とで反射防止層を構成する。
防眩層34には、必要に応じて有機微粒子及び無機微粒子から選択される1種以上が含まれる。
有機微粒子は、表面に微細な凹凸を形成し、外光を散乱させる機能を付与する材料である。有機微粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等の透光性樹脂材料からなる樹脂粒子が挙げられる。屈折率や樹脂粒子の分散性を調整するために、材質(屈折率)の異なる2種類以上の樹脂粒子を混合して使用してもよい。
【0103】
無機微粒子は、有機微粒子の沈降や凝集を調整する材料である。無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子や、金属酸化物微粒子、各種の鉱物微粒子等を使用することができる。
シリカ微粒子としては、例えば、コロイダルシリカや(メタ)アクリロイル基等の反応性官能基で表面修飾されたシリカ微粒子等を使用することができる。
金属酸化物微粒子としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)や酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタニア(二酸化チタン)、ジルコニア(二酸化ジルコニウム)等を使用することができる。
鉱物微粒子としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト等を使用することができる。鉱物微粒子は、天然物及び合成物(置換体、誘導体を含む)のいずれであってもよく、両者の混合物を使用してもよい。鉱物微粒子の中でも、層状有機粘土がより好ましい。
【0104】
層状有機粘土とは、膨潤性粘土の層間に有機オニウムイオンを導入したものをいう。有機オニウムイオンは、膨潤性粘土の陽イオン交換性を利用して有機化することができるものであれば制限されない。鉱物微粒子として、層状有機粘土鉱物を用いる場合、上述した合成スメクタイトを好適に使用できる。合成スメクタイトは、防眩層形成用の塗工液の粘性を増加させ、樹脂粒子及び無機微粒子の沈降を抑制して、防眩層34(機能層30)の表面の凹凸形状を調整する機能を有する。
【0105】
光学フィルム1が酸素バリア機能を有する場合、機能層30は、酸素バリア層33として機能する。酸素バリア層33の酸素透過度は、10cm3/(m2・day・atm)以下であり、5cm3/(m2・day・atm)以下が好ましく、1cm3/(m2・day・atm)以下がより好ましい。酸素バリア層33の酸素透過度が上記上限値以下であると、機能層30に充分な酸素バリア機能を付与できる。酸素バリア層33の酸素透過度の下限値は、特に限定されず、0cm3/(m2・day・atm)であってもよい。
酸素バリア層33の酸素透過度は、酸素透過度測定装置を用いて、30℃、相対湿度60%の条件下で測定される値である。
【0106】
光学フィルム1が帯電防止機能を有する場合、機能層30は、帯電防止層として機能する。帯電防止層としては、例えば、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)等の金属酸化物微粒子、高分子型導電性組成物、4級アンモニウム塩等の帯電防止剤を含有する層が挙げられる。
帯電防止層は、機能層30の最表面に設けられてもよいし、機能層30と透明基材20との間に設けられてもよい。あるいは、上述した機能層30を構成するいずれかの層に帯電防止剤を配合することにより、帯電防止層を形成してもよい。帯電防止層を設ける場合、光学フィルムの表面抵抗値は、1.0×106~1.0×1012(Ω/cm)であることが好ましい。
【0107】
光学フィルム1が防汚機能を有する場合、機能層30は、防汚層として機能する。防汚層は、撥水性及び撥油性の双方又はいずれか一方を付与することにより、防汚性を高めるものである。防汚層としては、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤等の防汚剤を含有する層が挙げられる。
防汚層は、機能層30の最表面に設けられてもよく、上述した機能層30のうち、最表面となる層に防汚剤を配合することにより、防汚層を形成してもよい。
【0108】
光学フィルム1が強化機能を有する場合、機能層30は、強化層として機能する。強化層は、光学フィルムの強度を高める層である。強化層としては、例えば、ハードコート層32が挙げられる。ハードコート層32としては、例えば、単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートを含むハードコート剤で形成された層が挙げられる。
【0109】
光学フィルム1が紫外線吸収能を有する場合、機能層30は、紫外線吸収層として機能する。紫外線吸収層としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール等のトリアジン系、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤を含有する層が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収層を形成する材料の総質量に対して、0.1~5質量%が好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記下限値以上であると、機能層30に充分な紫外線吸収能を付与できる。紫外線吸収剤の含有量が上記上限値以下であると、硬化成分の減少に伴う硬度不足を回避できる。
【0110】
光学フィルム1において、透明基材20及び機能層30の一方又は双方の紫外線遮蔽率は、85%以上が好ましく、90%以上よりが好ましく、95%以上がさらに好ましく、100%であってもよい。紫外線遮蔽率が上記下限値以上であると、耐光性を向上できる。
紫外線遮蔽率は、JIS L1925に記載の方法に準じて測定できる。
紫外線遮蔽率は、透明基材20及び機能層30の一方又は双方に紫外線吸収能を付与することにより調節できる。
【0111】
機能層30の厚さは、例えば、0.04~25μmが好ましく、0.1~20μmがより好ましく、0.2~15μmがさらに好ましい。機能層30の厚さが上記下限値以上であると、光学フィルム1に種々の機能を付与しやすい。機能層30の厚さが上記上限値以下であると、表示装置の薄型化に有利である。
機能層30の厚さは、光学フィルム1の厚さ方向の断面を顕微鏡等で観察することにより求められる。
【0112】
[光学フィルムの製造方法]
本実施形態の光学フィルム1は、従来公知の方法により製造できる。
例えば、透明基材20の一方の面に着色層形成用組成物を塗布し、必要に応じて乾燥(溶剤(E)を除去)し、活性エネルギー線を照射して着色層形成用組成物を硬化することにより着色層10を得る。
活性エネルギー線を照射して着色層形成用組成物を硬化させ、着色層10を形成するための光源は、活性エネルギー線を発生する光源であれば制限なく使用できる。活性エネルギー線としては、放射線(ガンマ線、X線等)、紫外線、可視光線、電子線(EB)等の光エネルギー線が使用でき、通常、紫外線、電子線である場合が多い。例えば、紫外線を放射するランプとして低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を使用できる。照射条件として紫外線照射量は、通常100~1000mJ/cm2である。
【0113】
次に、透明基材20の他方の面にハードコート剤を塗布し、着色層10と同様に活性エネルギー線を照射してハードコート剤を硬化することによりハードコート層32を得る。
得られたハードコート層32上に低屈折率層31を形成することにより、透明基材20の他方の面に機能層30が位置する光学フィルム1が得られる。
低屈折率層31の形成方法に制限はなく、低屈折率層形成用組成物をハードコート層32に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム法、プラズマ気相成長法等を使用できる。
【0114】
[その他の実施形態]
光学フィルムは、
図2に示すように、着色層10の一方の面に位置する透明基材20を有し、着色層10、透明基材20、酸素バリア層33、ハードコート層32、低屈折率層31が、この順で積層された光学フィルム2であってもよい。光学フィルム2では、酸素バリア層33、ハードコート層32、低屈折率層31が機能層30を構成する。酸素バリア層33としては、上述した酸素バリア層と同様の層が挙げられる。この場合、機能層30、透明基材20で紫外線遮蔽率85%以上の紫外線遮蔽性を有することが好ましい。
本実施形態の光学フィルム2は、酸素バリア層33を有するため、光学フィルム1よりも酸素バリア性に優れる。
【0115】
光学フィルムは、
図3に示すように、着色層10の一方の面に位置する透明基材20を有し、着色層10、透明基材20、防眩層34が、この順で積層された光学フィルム3であってもよい。光学フィルム3では、防眩層34が機能層30を構成する。防眩層34としては、上述した防眩層と同様の層が挙げられる。この場合、機能層30、透明基材20で紫外線遮蔽率85%以上の紫外線遮蔽性を有することが好ましい。
本実施形態の光学フィルム3は、防眩層34を有するため、表示品位により優れる。
【0116】
光学フィルムは、
図4に示すように、着色層10の一方の面に位置する透明基材20を有し、着色層10、透明基材20、防眩層34、低屈折率層31が、この順で積層された光学フィルム4であってもよい。光学フィルム4では、防眩層34、低屈折率層31が機能層30を構成する。この場合、機能層30、透明基材20で紫外線遮蔽率85%以上の紫外線遮蔽性を有することが好ましい。
本実施形態の光学フィルム4は、低屈折率層31と防眩層34とを有するため、表示品位により優れる。
【0117】
光学フィルムは、
図5に示すように、着色層10の一方の面に位置する透明基材20と、着色層10の他方の面に位置する機能層30とを有し、透明基材20、着色層10、ハードコート層32、低屈折率層31が、この順で積層された光学フィルム5であってもよい。光学フィルム5では、ハードコート層32、低屈折率層31が機能層30を構成する。この場合、機能層30は、紫外線遮蔽率85%以上の紫外線遮蔽性を有することが好ましい。
本実施形態の光学フィルム5は、透明基材20の一方の面に着色層10と機能層30とを有するため、表示品位により優れる。
【0118】
光学フィルムは、
図6に示すように、着色層10の一方の面に位置する透明基材20と、着色層10の他方の面に位置する機能層30とを有し、透明基材20、着色層10、酸素バリア層33、ハードコート層32、低屈折率層31が、この順で積層された光学フィルム6であってもよい。光学フィルム6では、酸素バリア層33、ハードコート層32、低屈折率層31が機能層30を構成する。この場合、機能層30は、紫外線遮蔽率85%以上の紫外線遮蔽性を有することが好ましい。
本実施形態の光学フィルム6は、酸素バリア層33を有するため、光学フィルム5よりも酸素バリア性に優れる。
【0119】
光学フィルムは、
図7に示すように、着色層10の一方の面に位置する透明基材20と、着色層10の他方の面に位置する機能層30とを有し、透明基材20、着色層10、防眩層34が、この順で積層された光学フィルム7であってもよい。光学フィルム7では、防眩層34が機能層30を構成する。この場合、機能層30は、紫外線遮蔽率85%以上の紫外線遮蔽性を有することが好ましい。
本実施形態の光学フィルム7は、防眩層34を有するため、表示品位により優れる。
【0120】
光学フィルムは、
図8に示すように、着色層10の一方の面に位置する透明基材20と、着色層10の他方の面に位置する機能層30とを有し、透明基材20、着色層10、防眩層34、低屈折率層31が、この順で積層された光学フィルム8であってもよい。光学フィルム8では、防眩層34、低屈折率層31が機能層30を構成する。この場合、機能層30は、紫外線遮蔽率85%以上の紫外線遮蔽性を有することが好ましい。
本実施形態の光学フィルム8は、低屈折率層31と防眩層34とを有するため、表示品位により優れる。
【0121】
以上、本発明の光学フィルムの実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ等も含まれる。
例えば、上記実施形態の光学フィルムは、着色層10の数が1つであるが、着色層の数は2以上であってもよい。
上記実施形態の光学フィルムにおいて、紫外線吸収能は、透明基材20に付与してもよく、ハードコート層32等の機能層30に付与してもよい。
【0122】
本発明の光学フィルムは、濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液中における吸収極大波長が489~500nm、かつ、極大吸収の半値幅が22nm以下である色材を含有する着色層を備える。このため、波長500nm付近の光を選択的かつ効率的に吸収することができる。その結果、光学フィルムの厚さが薄い場合や色材濃度が低い場合でも、波長500nm付近の光を充分に吸収することができる。
従って、本発明の光学フィルムによれば、表示装置の低反射率化、高輝度化、薄膜化、及び色再現性の向上を図ることができる。また、本発明の光学フィルムは、耐光性にも優れる。
【0123】
[表示装置]
本発明の表示装置は、本発明の光学フィルムを備える。
表示装置の具体例としては、例えば、テレビ、モニタ、携帯電話、携帯型ゲーム機器、携帯情報端末、パーソナルコンピュータ、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ヘッドマウントディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤ等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、自動販売機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、個人認証機器、光通信機器、ICカード等が挙げられる。
中でも、金属製の電極や配線により、外光反射の影響を受けやすく、本発明の有用性が高い点で、LED、有機EL、無機蛍光体、量子ドット等の自発光素子を備えた表示装置が好適である。
【実施例0124】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0125】
[使用材料]
<光重合性化合物(B)>
UA-306H:ペンタエリスリトールトリアクリレート ヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製、UA-306H)。
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート。
【0126】
<光重合開始剤(C)>
Omnirad TPO:アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(IGM Resins B.V.社製)。
【0127】
<非重合性添加剤(D)>
Tinuvin249:ラジカル捕捉剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)(BASFジャパン社製、分子量482)。
D1781:一重項酸素クエンチャー、ビス(ジブチルジチオカルバミン酸)ニッケル(II)、製品コードD1781(東京化成工業(株)製)。
【0128】
<溶剤(E)>
MEK:メチルエチルケトン。
酢酸メチル:酢酸メチル。
【0129】
[実施例1~12、比較例1~12]
(ジピロメテンコバルト錯体の合成)
以下の手順で、表1に示すジピロメテンコバルト錯体(化合物1~12、1’~12’)を合成した。
表1中、Meはメチル基、Etはエチル基、nBuはn-ブチル基、Phはフェニル基を示す。
【0130】
<化合物1の合成>
[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチル(2.5g)を反応容器に封入し、メタノール(50mL)に溶解させた後、47%臭化水素酸(37.2g)を添加して、1時間還流を行った。析出した固体を濾別することで、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩(2.28g)を得た。
【0131】
[化合物1の合成]
3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩(0.5g)を反応容器に封入し、メタノール(5mL)、トリエチルアミン(0.12g)、酢酸コバルト(II)四水和物(0.12g)を添加し、2時間還流を行った。析出した固体を濾別することで、化合物1(0.38g)を得た。
【0132】
<化合物2の合成>
[3,3’-ジ-ブチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-5,5’-ジ-エチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸エチルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0133】
[化合物2の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、3,3’-ジ-ブチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-5,5’-ジ-エチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0134】
<化合物3の合成>
[3,3’-ジ-ブチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-5,5’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、4-ブチル-5-ホルミル-2-メチル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0135】
[化合物3の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、3,3’-ジ-ブチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-5,5’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0136】
<化合物4の合成>
[3,3’-ジ-ブチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-5,5’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、4-ブチル-5-ホルミル-2-メチル-1H-ピロール-3-カルボン酸エチルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0137】
[化合物4の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、3,3’-ジ-ブチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-5,5’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0138】
<化合物5の合成>
[5,5’-ジ-ブチル-3,3’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、2-ブチル-4-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0139】
[化合物5の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、5,5’-ジ-ブチル-3,3’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0140】
<化合物6の合成>
[5,5’-ジ-ブチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-3,3’-ジ-エチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、2-ブチル-4-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸エチルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0141】
[化合物6の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、5,5’-ジ-ブチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-3,3’-ジ-エチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0142】
<化合物7の合成>
[5,5’-ジ-ブチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-3,3’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、2-ブチル-5-ホルミル-4-メチル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0143】
[化合物7の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、5,5’-ジ-ブチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-3,3’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0144】
<化合物8の合成>
[5,5’-ジ-ブチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-3,3’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、2-ブチル-5-ホルミル-4-メチル-1H-ピロール-3-カルボン酸エチルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0145】
[化合物8の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、5,5’-ジ-ブチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-3,3’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0146】
<化合物9の合成>
[5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-3,3’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、2-エチル-5-ホルミル-4-メチル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0147】
[化合物9の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-3,3’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0148】
<化合物10の合成>
[3,3’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-5,5’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、4-エチル-5-ホルミル-2-メチル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0149】
[化合物10の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、3,3’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-5,5’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0150】
<化合物11の合成>
[5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-3,3’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、2-エチル-5-ホルミル-4-メチル-1H-ピロール-3-カルボン酸エチルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0151】
[化合物11の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-3,3’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0152】
<化合物12の合成>
[3,3’-ジ-エチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-5,5’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、4-エチル-5-ホルミル-2-メチル-1H-ピロール-3-カルボン酸エチルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0153】
[化合物12の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、3,3’-ジ-エチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-5,5’-ジ-メチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0154】
<化合物1’の合成>
[3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、5-ホルミル-2,4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0155】
[化合物1’の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0156】
<化合物2’の合成>
[3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、5-ホルミル-2,4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボン酸エチルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0157】
[化合物2’の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジ-エトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0158】
<化合物3’の合成>
[3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(2,2-ジメチルプロポキシカルボニル)-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、5-ホルミル-2,4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボン酸2,2-ジメチルプロピルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0159】
[化合物3’の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(2,2-ジメチルプロポキシカルボニル)-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0160】
<化合物4’の合成>
[4,4’-ジ-エチル-3,3’,5,5’-テトラメチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]
上記[3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩の合成]において、4-ブチル-2-エチル-5-ホルミル-1H-ピロール-3-カルボン酸メチルを、3-エチル-5-ホルミル-2,4-ジメチル-1H-ピロールに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0161】
[化合物4’の合成]
上記[化合物1の合成]において、3,3’-ジ-ブチル-5,5’-ジ-エチル-4,4’-ジ-メトキシカルボニル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩を、4,4’-ジ-エチル-3,3’,5,5’-テトラメチル-2,2’-ジピロメテン臭化水素酸塩に変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0162】
<化合物5’の合成>
反応容器に、p-ブロモベンズアルデヒド(0.27g)、2,4-ジメチルピロール-3-カルボン酸エチル(0.50g)、ジクロロメタン(93mL)、トリフルオロ酢酸(0.1mL)を添加し、3時間還流を行った。この溶液に2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(0.33g)を添加し、室温で2時間攪拌した。その後、トリエチルアミン(3.0mL)、酢酸コバルト(II)四水和物(0.18g)を添加し、2時間還流を行った。ジクロロメタンで希釈した後、純水で洗浄し、残った有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過、濃縮を行った後、メタノールを注ぐことで析出した粉末を、吸引ろ過によって回収することで、化合物5’を得た(0.42g)。
【0163】
<化合物6’の合成>
上記<化合物5’の合成>において、p-ブロモベンズアルデヒドを、m-シアノベンズアルデヒドに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0164】
<化合物7’の合成>
上記<化合物5’の合成>において、p-ブロモベンズアルデヒドを、p-ニトロベンズアルデヒドに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0165】
<化合物8’の合成>
上記<化合物5’の合成>において、p-ブロモベンズアルデヒドを、p-ヨードベンズアルデヒドに変更し、2,4-ジメチルピロール-3-カルボン酸エチルを、3-エチル-2,4-ジメチルピロールに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0166】
<化合物9’の合成>
上記<化合物5’の合成>において、p-ブロモベンズアルデヒドを、p-ヨードベンズアルデヒドに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0167】
<化合物10’の合成>
上記<化合物5’の合成>において、p-ブロモベンズアルデヒドを、ベンズアルデヒドに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0168】
<化合物11’の合成>
上記<化合物5’の合成>において、p-ブロモベンズアルデヒドを、アセトアルデヒドに変更し、2,4-ジメチルピロール-3-カルボン酸エチルを、3-エチル-2,4-ジメチルピロールに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0169】
<化合物12’の合成>
上記<化合物5’の合成>において、p-ブロモベンズアルデヒドを、ベンズアルデヒドに変更し、2,4-ジメチルピロール-3-カルボン酸エチルを、2,4-ジメチルピロール-3-カルボン酸-n-ブチルに変更した以外は、同様の手順で合成した。
【0170】
(塗液の調製)
得られたジピロメテンコバルト錯体をMEK/酢酸メチル=50/50(質量比)の混合溶剤に溶解させた。得られた溶液、光重合性化合物(B)としてUA-306H、DPHA及びPETA(UA-306H/DPHA/PETA=70/20/10(質量比))、光重合開始剤(C)としてOmnirad TPO、非重合性添加剤(D)としてTinuvin249及びD1781(Tinuvin249/D1781=70/30(質量比))を混合し、以下の組成の塗液(着色層形成用組成物)を調製した。
ジピロメテンコバルト錯体:塗液の固形分に対して0.4質量%。
光重合性化合物(B):塗液の固形分に対して94質量%。
光重合開始剤(C):塗液の固形分に対して3質量%。
非重合性添加剤(D):塗液の固形分に対して2.6質量%。
溶剤(E):塗液の総質量に対して70質量%。
【0171】
(塗膜の形成)
ガラス基板上に上記塗液をスピンコートし、80℃のオーブンで60秒間乾燥させた。その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmの塗膜(硬化膜)を形成した。
【0172】
(評価基板の作製)
上記硬化膜上に80%ポリビニルアルコール水溶液(PVA117、クラレ社製)を塗布し、乾燥させることで酸素バリア層を形成した。さらに酸素バリア層の上にトリアセチルセルロースフィルム(TG60UL、富士フィルム社製、基材厚60μm)を接着して評価基板を作製した。
【0173】
<反応前後の自由エネルギー変化(ΔG)>
各例のジピロメテンコバルト錯体と同一の置換基を有し、式(III)で表されるボロンジピロメテンについて、量子化学計算プログラムGaussian16を用い、計算手法B3LYP、基底関数6-31G(d,p)(ただし、式(I)におけるR5がKrより原子番号が大きな元素には基底関数LanL2DZを割り当てる)にて、以下の手順に従ってΔG(kcal/mol)を計算した。結果を表2に示す。
(1)各例のジピロメテンコバルト錯体と同一の置換基を有し、式(III)で表されるボロンジピロメテンの構造最適化計算及び振動計算を実施し、振動計算の結果から、上記ボロンジピロメテンの自由エネルギーの値G(III)を得た。
(2)一重項酸素の構造最適化計算及び振動計算を実施し、振動計算の結果から、一重項酸素の自由エネルギーの値GO2を得た。
(3)上記ボロンジピロメテンの構造のメソ位に酸素が付加した構造(反応式(II)の右辺の構造)の構造最適化及び振動計算を実施し、振動計算の結果から、上記ボロンジピロメテンの酸素付加体の自由エネルギーの値G(III)+O2を得た。
(4)下記式に従ってΔGを算出した。
ΔG=G(III)+O2-(G(III)+GO2)
【0174】
[分光特性]
<アセトン溶液の吸収極大波長(λmax)>
ジピロメテンコバルト錯体の濃度5.0×10-6Mのアセトン溶液を調製し、紫外可視分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて吸収スペクトルを測定し、波長範囲470~530nmにおける吸光度が最大となる波長をλmaxとした。結果を表2に示す。
【0175】
<アセトン溶液の極大吸収の半値幅>
上記吸収スペクトルにおいて、波長範囲470~530nmにおける吸光度が最大となるピークの半値幅を算出した。結果を表2に示す。
【0176】
<アセトン溶液のモル吸光係数(ε)>
ジピロメテンコバルト錯体の濃度がそれぞれ異なる3点(濃度5.0×10-6M、濃度7.5×10-6M、濃度1.0×10-5M)のアセトン溶液を調製し、紫外可視分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて吸収スペクトルを測定した。この吸収スペクトルにおいて、波長範囲470~530nmの吸収極大波長(λmax)における吸光度を各濃度に対してプロットしたときの近似直線の傾きをεとした。結果を表2に示す。
【0177】
<塗膜の吸収極大波長(λmax)>
塗膜について、紫外可視分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて吸収スペクトルを測定し、波長範囲470~530nmにおける吸光度が最大となる波長をλmaxとした。結果を表2に示す。
【0178】
<塗膜における半値幅>
塗膜について、紫外可視分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて吸収スペクトルを測定し、波長範囲470~530nmにおける吸光度が最大となるピークの半値幅を算出した。結果を表2に示す。
【0179】
[信頼性評価]
<耐光性>
評価基板の塗膜が形成されている側の面に対し、キセノンウェザーメーター試験機(スガ試験機株式会社製、X75)を用い、キセノンランプ照度60W/cm2(300~400nm)、試験機内温度45℃、湿度50%RHの条件にて120時間、光を照射する試験を行った。試験前後に、紫外可視分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用い、評価基板の透過率測定を行い、波長470~530nmの範囲にて試験前の最小透過率を示す波長での試験前後透過率差(ΔT)を算出した。下記評価基準に基づき、耐光性を評価した。結果を表2に示す。
《評価基準》
A:ΔTが10%未満。
B:ΔTが10%以上、15%未満。
C:ΔTが15%以上。
【0180】
<White輝度効率>
評価基板の透過率を紫外可視分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて測定し、この評価基板の透過率に、
図9に示す、有機EL表示装置(ASUS社製)の白表示時の単独の分光スペクトルを掛け合わせて、評価基板透過後の分光スペクトルを算出した。有機EL表示装置の白表示時の単独でのスペクトル、及び評価基板透過後の分光スペクトルのそれぞれに比視感度をかけてY値を算出し、有機EL表示装置の白表示時の単独でのスペクトルから得られるY値を100とした時の比率をWhite輝度効率とすることで、信頼性評価の指標とした。White輝度効率は、100に近いほど、輝度効率に優れる。結果を表2に示す。
【0181】
<色純度(DCI包含率)>
評価基板の透過率を紫外可視分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて測定し、この評価基板の透過率に、
図10に示す、有機EL表示装置(ASUS社製)の赤色表示、緑色表示、青色表示時の単独スペクトルを掛け合わせて、評価基板透過後のCIE(国際照明委員会:Commission international de l’eclairage)1931表色系の赤、緑、青単色それぞれの色度(x、y)を算出した。次に、得られた赤、緑、青単色の色度を結んで得られる三角形と、DCI(Digital Cinema Initiatives)が提唱するDCI-P3の3原色、赤(x=0.680、y=0.320)、緑(x=0.265、y=0.690)、青(x=0.150、y=0.060)を結ぶ三角形、それぞれと比較して重なり合う面積を求めることでDCI包含率(%)を算出した。DCI包含率は、100%に近いほど、色純度に優れる。結果を表2に示す。
【0182】
[総合評価]
上記[信頼性評価]の結果から、下記評価基準に基づいて総合評価を行った。結果を表2に示す。
《評価基準》
○:耐光性の評価が「A」、White輝度効率が88.0以上、かつ、DCI包含率が96.0%以上。
△:耐光性の評価が「B」、White輝度効率が88.0以上、かつ、DCI包含率が96.0%以上。
×:耐光性の評価が「C」、White輝度効率が88.0未満、又は、DCI包含率が96.0%未満。
【0183】
【0184】
【0185】
表2に示すように、本発明を適用した実施例1~12は、総合評価が「○」で、輝度効率、色再現性及び耐光性に優れていた。
これに対して、アセトン溶液中における吸収極大波長が489nm未満である比較例1~3は、総合評価が「△」だった。アセトン溶液中における極大吸収の半値幅が22nm超である比較例4~12は、総合評価が「×」だった。
【0186】
本発明の着色層用組成物を用いた塗膜は、表示装置の低反射率化、高輝度化、薄膜化及び色再現性の向上に有効であり、耐光性に優れることが分かった。塗膜中におけるジピロメテン金属錯体の濃度を低く抑えることができることは、製造コスト面においても有用である。