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  • 特開-マイクロニードルを備えた薬包袋 図1
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  • 特開-マイクロニードルを備えた薬包袋 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175356
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】マイクロニードルを備えた薬包袋
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A61M37/00 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087764
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 展雄
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA72
4C267CC01
(57)【要約】
【課題】保管時から穿刺する際まで、主薬の力価を保ちつつ、投与直前の溶解の手間を省くことが出来る取扱いが簡便なマイクロニードルを提供する。
【解決手段】一方向に広がる平面状の基体と、前記基体が広がる方向とは交差する方向に伸び、薬剤を含有する穿刺突起部とを有するマイクロニードルと、
前記基体の前記穿刺突起部の周囲に設けられ、前記穿刺突起部が伸びる方向と同一の方向に伸び、前記穿刺突起部を取り囲む骨組と、
前記穿刺突起部の前記基体と接する端とは反対側の端に、前記穿刺突起部を覆うように設けられ、内部の空間に水性媒体を保持する液体収容部と、
を有し、前記穿刺突起部の先端と前記液体収容部とは離間していることを特徴とする薬包袋。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に広がる平面状の基体と、前記基体が広がる方向とは交差する方向に伸び、薬剤を含有する穿刺突起部とを有するマイクロニードルと、
前記基体の前記穿刺突起部の周囲に設けられ、前記穿刺突起部が伸びる方向と同一の方向に伸び、前記穿刺突起部を取り囲む骨組と、
前記穿刺突起部の前記基体と接する端とは反対側の端に、前記穿刺突起部を覆うように設けられ、内部の空間に水性媒体を保持する液体収容部と、
を有し、前記穿刺突起部の先端と前記液体収容部とは離間していることを特徴とする薬包袋。
【請求項2】
前記液体収容部が、2つのフィルムが対向して内部に空間が形成されるように貼り合わされて形成されていることを特徴とする請求項1記載の薬包袋。
【請求項3】
前記マイクロニードルが、薬剤を塗布されていることを特徴とする請求項1記載または請求項2の薬包袋。
【請求項4】
前記マイクロニードルが、薬剤を含有していることを特徴とする請求項1記載または請求項2の薬包袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤の投与に用いるマイクロニードルに関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチン等の薬剤を体内に投与する方法として、マイクロニードルを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1~6参照)。マイクロニードルを皮膚に押し付けて、穿刺突起部で皮膚を穿孔し、薬剤を皮膚の内部に送り込む。穿刺突起部が微細で神経細胞に到達しないため、マイクロニードルを用いる投与は、旧来の注射針を用いる投与に比べ、皮膚が穿孔される際の痛みを軽減することができる。
【0003】
マイクロニードルを用いる投与は、抗原提示細胞が多く存在する皮内に薬剤を投与できるため、薬剤が抗原提示細胞に効率よく接触し、旧来の皮下注射に比べ、薬剤の投与量を低減できる可能性がある。薬剤の投与量の低減は、薬剤の供給が不足気味な際に、より顕著な効果を得られる。
【0004】
旧来の注射針を用いる投与は、一方の手で皮膚を適切につまみ、もう一方の手で注射器のシリンジを操作する手技を要したのに対し、マイクロニードルを用いる投与は、特段の手技を必要とせず、自ら投与することも可能である。
【0005】
初期のマイクロニードルは、成形し易く変形し難い、金属やシリコンで作製されていたが、体内で折れ残る懸念を拭うために、その後、生体適合性の高い素材に移行した。例えば、生分解性プラスチックや、ヒアルロン酸などの生体由来の多糖類を基材とし、その表面に予め薬剤を塗布したマイクロニードルが知られている。また、生分解性プラスチックや、ヒアルロン酸などの生体由来の多糖類の基材に、薬剤を含有させたマイクロニードルが知られている(例えば、特許文献7参照)。
【0006】
ところで、薬剤の保存性には湿度が影響することが知られている。ワクチン等の薬剤を凍結乾燥後させた後、アンプル等に入れて保管する際に、薬剤が吸湿すると、薬効を保持できる年月が著しく短くなることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
また、基材の保存性でも湿度が影響することが知られている。マイクロニードルを保護材から取り外す際に、手が濡れていたり穿刺突起部に触れたりしてはならないことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開番号第2008/020632号
【特許文献2】特許第4913030号公報
【特許文献3】特許第4265696号公報
【特許文献4】特許第4987916号公報
【特許文献5】特開2006-345983号公報
【特許文献6】特開2006-341089号公報
【特許文献7】特開2013-52202号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】沢田哲治ら、凍結および乾燥研究会会誌、17巻
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
生体適合性の高い素材を用いたマイクロニードルは、旧来の注射針と異なり、薬剤とマイクロニードルを一体で保管することが多い。
【0011】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたもので、保管時から穿刺時に渡って、主薬の力価を保ちつつ、投与直前の溶解の手間を省くことができ、投与者にとって、取り扱いが簡便なマイクロニードルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一方向に広がる平面状の基体と、前記基体が広がる方向とは交差する方向に伸び、薬剤を含有する穿刺突起部とを有するマイクロニードルと、前記基体の前記穿刺突起部の周囲に設けられ、前記穿刺突起部が伸びる方向と同一の方向に伸び、前記穿刺突起部を取り囲む骨組と、前記穿刺突起部の前記基体と接する端とは反対側の端に、前記穿刺突起部を覆うように設けられ、内部の空間に水性媒体を保持する液体収容部と、を有し、前記穿刺突起部の先端と前記液体収容部とは離間していることを特徴とする薬包袋である。
である。
【0013】
前記液体収容部が、2つのフィルムが対向して内部に空間が形成されるように貼り合わされて形成されていることを特徴とする薬包袋である。
【0014】
前記マイクロニードルが、薬剤を塗布されていることを特徴とする薬包袋である。
【0015】
前記マイクロニードルが、薬剤を含有していることを特徴とする薬包袋である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保管時から穿刺時に渡って、薬剤の保存性を高めることができる。特に、薬剤の吸湿劣化が激しい場合に顕著な効果を得られる。また、マイクロニードルが保護されるので、穿刺突起部の変形や、薬剤の吸湿もしくは汚染のリスクを低減することができる。さらに、マイクロニードルの保護材を取り外す必要がないので、投与者の指がマイクロニードルに触れてしまうリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】包袋及びマイクロニードルの断面構造を示す説明図。
図2】薬包袋及びマイクロニードルの平面構造を示す説明図。
図3】薬包袋及び薬剤を塗布したマイクロニードルの断面構造を示す説明図。
図4】薬包袋及び薬剤を含有したマイクロニードルの断面構造を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2を参照して、薬包袋の構成について説明する。薬包袋1は、一方向に広がる平面状の基体11と、前記基体11が広がる方向とは交差する方向に伸び、薬剤を含有する穿刺突起部12とを有するマイクロニードルと、前記基体11の前記穿刺突起部12の周囲に設けられ、前記穿刺突起部12が伸びる方向と同一の方向に伸び、前記穿刺突起部12を取り囲む骨組2と、前記穿刺突起部12の前記基体11と接する端とは反対側の端に、前記穿刺突起部12を覆うように設けられ、内部の空間に水性媒体を保持する液体収容部40と、を有し、前記穿刺突起部12の先端と前記液体収容部40とは離間している。
【0019】
薬包袋1は、例えば300nmと薄いため、皮膚の凹凸に密着するほど変形する。骨組2は、生体適合性が高い素材、例えばプルラン、キトサンから成る。骨組み2は、保管時
において穿刺突起部12と袋1との隙間を保持できる程度の変形に抑えられる。薬包袋1は、生体適合性が高く変形し易い素材、例えばプルラン、キトサンから成り、適切な強度や耐性のために積層されている。
【0020】
薬包袋1は、マイクロニードル10を備えている。マイクロニードル10は、板状の基体11と、基体11から突き出た穿刺突起部12を備えている。基体11は、例えば円盤状で、穿刺突起部12の形成された面と、平坦なもう一方の面を有する。穿刺突起部12は、基体11に垂直な向きに500μm突き出ている。穿刺突起部12は複数、例えば400あり、例えば格子状に等間隔200μmで配列している。穿刺突起部12は、皮膚を穿孔するために十分に鋭い先端と、薬剤を皮内に投与するために適切な長さを有する。穿刺突起部12は、先端に向けて断面積が小さくなる形状が好ましく、例えば円錐形状や角錐形状に形成される。マイクロニードル10は、生体適合性が高い素材、例えばコンドロイチン硫酸ナトリウム、デキストリン、麦芽糖、ゼラチン、プルラン、キトサンから成り、望ましくは、皮内での溶解が速い、アルロン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デキストリンから成る。
【0021】
穿刺突起部12は薬剤を含有する。薬剤は穿刺突起部12内に分散して存在してもよく、穿刺突起部12の表面に層として存在してもよく、また、穿刺突起部12が薬剤の成分で形成されていてもよい。薬剤は水溶性の薬剤であるが、水分を含まない乾燥体として穿刺突起部12に含有される。この状態の薬剤を主剤42とする。また、主剤42は水性媒体41に接触することで溶解する性質を有し、空気中の水分を吸収しにくいものであってもよい。
【0022】
液体収容部は、2つのフィルムが対向して内部に空間が形成されるように貼り合わされて形成される。内部の空間には水性媒体が保持される。フィルムは単層フィルムであってもよく、複数のフィルムが積層された積層フィルムであってもよい水性媒体は、主剤42を溶解することができる水性媒体41である。
【0023】
マイクロニードルと骨組と液体収容部40とによって取り囲まれる内部空間は密閉されていてもよく、密閉されて不活性気体が充填されていてもよい。不活性気体とは、主剤42との反応性が低い気体のことである。また、内部空間は水分を含まない状態に維持されていてもよい。水分を含まない状態とは、例えば、25℃における湿度が10%以下であることを意味する。
【0024】
薬包袋1を皮膚に接触させ、マイクロニードル10を用いて、薬包袋1と皮膚を重ねて穿刺すると、穿刺突起部が液体収容部を貫通し、皮膚を穿刺する。穿刺突起部12が液体収容部40を貫通することによって主剤42が水性媒体41と接触し、主剤42は水性媒体41に溶解する。水性媒体に溶解した主剤は、薬剤として皮膚の穿孔から皮内に投与される。
【0025】
本来、注射剤は溶解後に力価が低下しやすいため、主薬と溶剤を別々に分けて保存し、溶解後は速やかに使用する必要がある。主薬の保存性、溶解性、無菌性のために、注射剤には凍結乾燥製剤が多く用いられる。例えば、ペニシリンを始めとする抗生物質、BCGワクチン、酵素、ホルモンや、先端的なバイオテクノロジー技術によって開発された生物学的製剤や酵素製剤などの多くは、溶液状態では安定性に欠けることから、凍結乾燥製剤が増えている。
【0026】
旧来の注射器を用いた投与が、穿刺や送液といった複雑な操作や凍結乾燥製剤必要とするのに対し、マイクロニードルを備えた薬包袋を用いた投与は、簡便な操作である。
【実施例0027】
[実施例1]
図3を参照して、本発明の薬包袋を用いた薬剤投与方法の一実施形態について説明する。薬包袋1は水性媒体41を内包し、主剤42を塗布したマイクロニードル43を備える。主剤42は、例えば凍結乾燥させた生ワクチンであり、水性媒体41は、例えばその溶剤である。穿刺突起部12の周囲は、密封された流動しない気体で、断熱体5として機能し、主剤42は長時間に渡り乾燥保冷状態を保つ。
【0028】
薬包袋1を皮膚に接触させ、主剤42を塗布したマイクロニードル43を用いて、薬包袋と皮膚を重ねて穿刺し、皮膚の穿孔から薬剤を皮内に投与する。
【0029】
[実施例2]
図4を参照して、本発明の薬包袋を用いた薬剤投与方法の一実施形態について説明する。薬包袋1は液状の水性媒体41を内包し、主剤42を含有したマイクロニードル44を備える。主剤42は、例えば凍結乾燥させた生ワクチンであり、水性媒体41は、例えばその溶剤である。穿刺突起部12の周囲は、密封された流動しない気体で、断熱体5として機能し、主剤42は長時間に渡り乾燥保冷状態を保つ。
【0030】
薬包袋1を皮膚に接触させ、主剤42を含有したマイクロニードル44を用いて、薬包袋と皮膚を重ねて穿刺し、皮膚の穿孔から薬剤を皮内に投与する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は医療及び美容分野で利用できる。
【符号の説明】
【0032】
1…薬包袋
2…薬包袋の骨組
5…断熱体
10…マイクロニードル
11…基体
12…穿刺突起部
40…液体収容部
41…水性媒体
43…主薬を塗布したマイクロニードル
44…主剤を含有させたマイクロニードル
図1
図2
図3
図4