(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175357
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】薄型フィルム積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20231205BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20231205BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20231205BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20231205BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231205BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
B32B27/12
A61K8/02
A61K8/73
A61Q19/00
A61L15/24 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087765
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 優一郎
【テーマコード(参考)】
4C081
4C083
4F100
【Fターム(参考)】
4C081AA03
4C081BB06
4C081CA171
4C081DA02
4C083AD332
4C083BB51
4C083DD12
4F100AK41A
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA12B
4F100DC16B
4F100DG02B
4F100DG10B
4F100DG12B
4F100DG15B
4F100EH31A
4F100EH46A
4F100EJ172
4F100EJ82B
4F100GB66
4F100JB11A
4F100JB11B
4F100JC00A
4F100JD05B
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】機能発現に十分な配合量の水溶性有効成分を含み、且つ、薄型フィルム本来の機能を損なうことのない、薄型フィルム積層体を提供する。
【解決手段】 10nm以上5μm以下の厚さを有する非水溶性有機高分子材料を含む薄型フィルムと該薄型フィルムを支持する支持基材とを備える薄型フィルム積層体であって、該支持基材が透水性を有し、且つ該支持基材に水溶性有効成分が担持されていることを特徴とする薄型フィルム積層体である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10nm以上5μm以下の厚さを有する非水溶性有機高分子材料を含む薄型フィルムと該薄型フィルムを支持する支持基材とを備える薄型フィルム積層体であって、該支持基材が透水性を有し、且つ該支持基材に水溶性有効成分が担持されていることを特徴とする薄型フィルム積層体。
【請求項2】
前記水溶性有効成分の支持基材に対する質量割合が0.01%以上5%以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄型フィルム積層体。
【請求項3】
前記支持基材は非水溶性であることを特徴とする請求項1または2に記載の薄型フィルム積層体。
【請求項4】
前記薄型フィルムが生体適合材料を含むことを特徴とする請求項1または3に記載の薄型フィルム積層体。
【請求項5】
前記支持基材が、織物、不織布、紙およびメッシュシートの中から選ばれる1以上を含むことを特徴とする請求項1または4に記載の薄型フィルム積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型フィルムを備える転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
数μm以下の厚さを有する薄型フィルムは、生体の皮膚等の被着体の表面形状に対する高い追従性を有するため、接着剤や粘着剤を用いずとも被着体に密着する。こうした薄型フィルムを、スキンケアやメイクアップ等の美容用途や、創傷の治癒等の医療用途に用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような薄型フィルムは、薄型フィルムを支持する支持基材と積層され、取り扱い性を向上させることで、簡易に薄型フィルムを被着体に転写することが可能である。薄型フィルムの被着体への転写にあっては、水分を用いて、薄型フィルム積層体から支持基材を被着体上で剥離することで、被着体上へ薄型フィルムのみを残留させ、転写する工程が用いられることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記薄型フィルムを美容用途や医療用途に用いる場合、薄型フィルム自体が有するエモリエント効果に加え、さらなる機能が追加されることが期待される。このため、薄型フィルム中に、例えば、美白成分や、スキンケア成分など任意の機能を有する有効成分を添加する手法が提案されている。
【0006】
しかしながら、薄型フィルムはその薄さにより被着体への高い追従性及び接着性を発現するものであるが故に、体積が非常に小さい。従って、有効成分の添加量も非常に少量になってしまうという問題がある。薄型フィルムに対する有効成分の添加量を増やすことで、薄型フィルムによるエモリエント効果、薄型フィルム材料の均一性、また、膜厚均一性や強度が低下することで、本来期待する効果が得られないといった問題もある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、機能発現に十分な配合量の水溶性有効成分を含み、且つ、薄型フィルム本来の機能を損なうことのない、薄型フィルム積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る薄型フィルムは、
10nm以上、5μm以下の厚さを有する非水溶性有機高分子材料を含む薄型フィルムと該薄型フィルムを支持する支持基材とを備える薄型フィルム積層体であって、該支持基材が透水性を有し、且つ該支持基材に水溶性有効成分が担持されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、薄型フィルムを貼付する際に使用する水分により、水溶性有効成分が支持基材から被着体へと移行することで、薄型フィルムの多機能、高機能化が可能となる。また、薄型フィルム積層体中の水溶性有効成分の添加量を装荷させることが可能である。
【0010】
上記構成において、前記水溶性有効成分の支持基材に対する質量割合が0.01%以上5%以下であっても良い。上記構成によれば、有効成分の効果を好適に得ることが可能である。
【0011】
上記構成において、前記支持基材は非水溶性であってもよい。上記構成によれば、薄型フィルムを貼付する際に使用する水分によって、水溶性有効成分のみが被着体への移行するため、水溶性有効成分を効率よく被着体表面に接触させることが可能である。
【0012】
上記構成において、前記薄型フィルムが、生体適合材料を含んでも良い。上記構成によれば、生体への貼り付けに適した薄型フィルムが実現される。
【0013】
上記構成において、前記支持基材が、織物、不織布、紙およびメッシュシートの中から選ばれる1以上を含んでも良い。上記構成によれば、支持基材の透水性を好適に得ることが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機能発現に十分な配合量の水溶性有効成分を含み、且つ、薄型フィルム本来の機能を損なうことのない、薄型フィルム積層体を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態において、薄型フィルム積層体の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、薄型フィルム積層体の一実施形態を説明する。
【0017】
[薄型フィルム積層体の基本構成]
図1が示すように、薄型フィルム積層体10は、薄型フィルム11と、水溶性有効成分13が担持された支持基材12からなる。薄型フィルム11は、被着体に貼り付けられる第1面11fと、第1面11fと反対側の面である第2面11rとを備えている。第2面11rは、薄型フィルム11が被着体に貼り付けられたときに、被着体とは反対側に位置する最外面となる。
【0018】
薄型フィルム11は、当該フィルム単独で被着体に対する接着性を発現する程度に薄い。薄型フィルムの厚さが5μm以下であれば、被着体の表面形状に対する薄型フィルム11の追従性が良好に得られるため、薄型フィルム11と被着体との密着性が高められる。また、被着体が皮膚である場合、厚さが5μm以下であれば、薄型フィルム11の貼付部分にて皮膚が引っ張られるような違和感を使用者が覚えにくい。
【0019】
また、薄型フィルム11の厚さは、10nm以上である。厚さが10nm以上であれば、薄型フィルム11の強度が良好に得られるため、薄型フィルム11に破れ等の欠陥が発生しにくくなる。また、厚さが10nm以上であれば、連続した膜状に薄型フィルム11を形成することが容易である。
【0020】
薄型フィルム11を構成する非水溶性高分子材料としては、公知の材料が用いられる。例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリシロキサン類、セルロースやキチンやキトサン等の多糖類、カゼイン等の各種のたんぱく質、ゴム、これらの高分子化合物の誘導体、変性体、共重合体、混合物である。薄型フィルムを構成する高分子材料は、任意の添加材料、被着体との
親和性、膜の強度や伸び等の物性等を考慮して適宜選択して用いればよい。また、被着体が生体である場合には、薄型フィルム11を構成する高分子材料は生体適合性を有することが好ましい。
【0021】
また本発明の薄型フィルム11には任意の添加剤を加えることが可能である。例えば、被着体が生体である場合、香料、着色料、美白成分、紫外線や近赤外線の遮蔽剤、保湿成分などの化粧料、抗菌剤、保存料やその他の薬剤などを添加することが可能である。しかしながら、薄型フィルム11への添加剤は、上記の通り、薄型フィルムの強度や伸び、透湿性や通気性に対して体積当たりの添加量に比例して影響を与える場合があることや、非水溶性高分子との相溶性により均一な添加が困難な場合があるため、制限を受ける可能性があることに留意すべきである。
【0022】
薄型フィルム11は、公知の薄膜形成法によって形成される。例えば、溶融した材料を押し出して薄膜状に成形する溶融押出法や、材料の溶液を薄膜状に基材に塗布した後に溶媒を蒸発させる溶液キャスト法を用いることができる。形成方法は、材料に応じて選択されればよい。
【0023】
例えば、溶液キャスト法を用いる場合、薄型フィルム11の材料を適宜の溶媒に溶解もしくは分散させることにより塗液を生成し、塗液を樹脂等からなる基材に塗布して塗膜を形成する。塗膜が乾燥により固化されることによって、保持層が形成される。塗布方法としては、例えば、ダイレクトグラビア、リバースグラビア、小径リバースグラビア、マイヤーコート、ダイ、カーテン、スプレー、スピンコート、スクリーン印刷、コンマ、ナイフ、グラビアオフセット、ロールコート等の各種のコーティング方法が使用可能である。
【0024】
支持基材12は、薄型フィルム11の保管時や、薄型フィルム11の使用に際して被着体上まで薄型フィルム11を移動させるときに、薄型フィルム11の変形や破れを抑える機能を有する。支持基材12に支持されていることにより、薄型フィルム11が取り扱いやすくなる。また、支持基材12は水溶性有効成分13を保管時に保持する機能を有する。
【0025】
支持基材12の材料は公知のものを用いることができる。支持基材12は織物、不織布、紙およびメッシュシートの中から選ばれる1以上を含むことが好ましい。上記材料を含むことで好適な透水性を有する。透水性とは、支持基材12に対して水が浸透もしくは透過することができることをいう。上記材料を含むことで水溶性有効成分13を保持し、また、使用の際の水分によって水溶性有効成分13を放出することが可能である。
【0026】
支持基材12が織物、不織布、および紙は、天然繊維もしくは化学繊維から構成される。天然繊維としては、綿、麻、パルプ、毛、絹等を用いることができる。化学繊維としては、ポリエステル、ポリオレフィン、キュプラ、レーヨン、リヨセル、アセテート、ジアセテート、ナイロン、アラミド、アクリル等からなる繊維を用いることができる。また、支持基材21は、天然繊維と化学繊維とが混合された繊維材料から構成されていてもよい。こうした繊維材料からなる支持基材21においては、エンボス加工、穴あけ加工、発泡等による繊維の多孔質化等の加工が施されていてもよい。
【0027】
支持基材12がメッシュシートである場合は、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリシロキサン類、セルロース、カゼイン等の各種のたんぱく質、ゴム、これらの高分子化合物の誘導体、変性体、共重合体、混合物が挙げられる。支持基材12として用いられる高分子フィルムは、エンボス加工、穴あけ加工、発泡等による多孔質化等の加工が施されたフィルムであってもよい。
【0028】
支持基材12が繊維材料からなる場合、支持基材12の目付けは、3g/m2以上200g/m2以下であることが好ましく、10g/m2以上100g/m2以下であることがより好ましい。支持基材12の目付けが上記下限値以上であれば、静電気や気流に起因して縒れ等の変形が生じ難くなる程度の剛性を支持基材12が有するため、薄型フィルム11が取り扱いやすくなる。また、支持基材12に担持させる水溶性有効成分13もその機能を発現するために十分な量となる。
【0029】
支持基材12の目付けが上記上限値以下であれば、支持基材12において繊維が詰まりすぎないため、薄型フィルム積層体の使用に際して、支持基材12を湿潤させて薄型フィルム11と支持基材12とを剥離する転写方法を用いる場合に、支持基材21の吸液が円滑に進み、転写を好適に行うことができる。
【0030】
支持基材12に担持させる水溶性有効成分13は被着体に作用させたい機能を有する公知の材料を用いることが可能である。被着体が皮膚や組織に代表される生体の場合、美白、保湿等を目的とした任意の化粧料や医薬成分を担持することが可能である。例えば、ヒアルロン酸、アセチル化ヒアルロン酸、ヘパリン、ムチン、β-グルカン等の多糖類や、コラーゲン等のたんぱく質、各種アミノ酸、各種ビタミン類、および、上記の誘導体を用いることが可能である。
【0031】
水溶性有効成分13の支持基材12に対する質量割合が0.01%以上5%以下であることが好ましい。より好ましくは0.01%以上3%以下である。質量割合が0.01%未満であると、被着体に移行する水溶性有効成分13の量が微量になり、効果を十分に得ることが困難になり、5%を超えると、被着体に移行する水溶性有効成分13の量が過剰になり、貼付した後に被着体表面の水分が蒸散した際、乾固した水溶性有効成分13が被着体上で粉体状に視認できるようになり、外観上好ましくない。また、支持基材12に担持させた後も、支持基材12に過剰に存在するため、支持基材12から容易に脱落し、粉体として飛散するため外観上好ましくない。
【0032】
水溶性有効成分13を支持基材12に担持させる方法としては公知の方法を用いることが可能である。例えば、支持基材12を、水溶性有効成分13を溶解させた水溶液に浸漬させた上で乾燥させる方法や、各種のコーティング法にて塗布し、乾燥させる方法を用いることが可能である。また、水溶性有効成分13の水溶液は、溶媒の一部や全部をアルコールで構成することも可能である。溶媒の乾燥性の向上や、水溶性有効成分13の溶媒への可溶性を考慮して適宜選択して用いる。
【0033】
また、薄型フィルム積層体10は、薄型フィルム11の第1面11fを覆う保護層を備えていてもよい。保護層を備えることにより、薄型フィルム積層体10の保管時において、薄型フィルム11が保護される。保護層としては、支持基材12として例示した上述の各種の基材を用いることができる。なお、保護層と支持基材12との材料は一致していてもよいし、異なってもよい。
【0034】
なお、平面視における薄型フィルム11および薄型フィルム積層体10の外形形状は、特に限定されない。薄型フィルム11および薄型フィルム積層体10の外形形状は、例えば、矩形等の多角形形状、円形状、楕円形状、これら以外の直線や曲線で囲まれた形状等である。平面視にて、薄型フィルム11と支持基材12の形状は一致していてもよいし、支持基材12は薄型フィルム11よりも大きくてもよい。
【0035】
薄型フィルム積層体10は、成膜用の基材上に形成された薄型フィルム11が支持基材
12上に転写されることによって形成されてもよいし、支持基材12上に薄型フィルム11が成膜されることによって形成されてもよい。成膜用の基材から支持基材12への薄型フィルム11の転写方法としては、圧力や吸引による剥離を利用する方法や犠牲膜を利用する方法等、公知の転写方法が用いられればよい。
【0036】
薄型フィルム積層体10の使用に際しては、まず、被着体と薄型フィルム11の第1面11fとが接するように、被着体上に薄型フィルム積層体10が配置される。そして、薄型フィルム11から支持基材12が剥離される。これにより、薄型フィルム11が被着体に転写される。
【0037】
薄型フィルム積層体10を貼り付ける前の被着体の表面や、薄型フィルム積層体10を貼り付けた後の支持基材12上に、水やローション等の液状体が供給され、薄型フィルム積層体10に液状体を浸透させることで、支持基材12に担持された水溶性有効成分13が溶出して被着体表面に移行する。また、支持基材12と薄型フィルム11との剥離が容易になる。水溶性有効成分13の被着体への移行量を増やすために、上記液状体の供給から、支持基材12の剥離の間に5分から15分程被着体上で薄型フィルム積層体10を静置しても良い。
【0038】
本実施形態の薄型フィルム積層体10は、支持基材12に水溶性有効成分13が担持されているため、薄型フィルム11に添加量の上限や強度の低下といった事実上の物理的制限なく、水溶性有効成分13の効果を十分に得ることができる。
【実施例0039】
上述した薄型フィルム積層体10について、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。
【0040】
[薄膜フィルム積層体の製造方法]
酢酸エチルにポリ-DL-乳酸((株)武蔵野科学研究所製)を溶解させ、固形分が10%となるように調整し、本発明の薄型フィルム形成のための塗液とした。使用したポリ-DL-乳酸の重量平均分子量は10万である。
【0041】
上記薄型フィルム形成のための塗液を、成膜基材であるシート状PETに、ワイヤバーを用いて塗布し、塗膜を形成した。塗膜をオーブンで加熱して乾燥・固化させることにより、成膜用基材上に薄型フィルムを形成した。塗膜の乾燥時の加熱温度は90℃、加熱時間は1分とした。薄型フィルムの厚さは550nmであった。
【0042】
次いで、支持基材として、パルプ系の繊維から構成された不織布を準備した。支持基材の目付けは、50g/m2である。水溶性有効成分としてはヒアルロン酸ナトリウムを選定し、有効性の判断指標としては角層水分量の値の変化を採用した。上記支持基材を任意の濃度のヒアルロン酸ナトリウム水溶液に5分間浸漬し、引き上げ、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液がしたたり落ちない程度になるまで静置した。さらに、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液を含んだ上記支持基材を、70℃で30分間乾燥させて水分を除去することで、支持基材にヒアルロン酸ナトリウムを担持した。
【0043】
次いで、上記ヒアルロン酸ナトリウムを担持した支持基材と、成膜用基材上の薄型フィルムを重ね合わせ、成膜用基材と薄型フィルムと支持基材との積層体を成膜用基材の位置する側からゴムローラーで押圧しつつ、成膜用基材を剥離した。
【0044】
上記の製造方法において、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液の濃度を変えることで、支持基材と水溶性有効成分の質量割合(支持基材への水溶性有効成分の担持割合)の異なる実
施例1~5、比較例1~2の薄型フィルム積層体を形成した。
【0045】
<評価方法>
(外観評価1)
実施例1~5、比較例1~2の各々について、5つずつサンプルを準備した。各サンプルにおいて薄型フィルム積層体、とりわけ支持基材表面へのヒアルロン酸ナトリウムの容易に視認できる程度の析出や指で軽く触る程度の負荷によるヒアルロン酸ナトリウムの脱落がないか確認した。5つすべてのサンプルについて、容易に視認できる程度のヒアルロン酸ナトリウムの析出(以下、析出)や、指で軽く触る程度の負荷によるヒアルロン酸ナトリウムの脱落(以下、脱落)を認めないものを「〇」、3つもしくは4つのサンプルについて、析出や脱落を認めないものを「△」、析出や脱落を認めないサンプルが2つ以下のものを「×」とした。
【0046】
(外観評価2)
被着体としてヒトの前腕内側部皮膚に、500μlの水を供給し、供給した水を指で軽く引き伸ばした。その後、サンプルの薄型フィルム積層体を、薄型フィルムが皮膚に接するように、皮膚上に配置した。次いで、支持基材の上から、3秒間、指でサンプルを押圧した。そして、10分静置後、サンプルの端部から、支持基材を指で剥離した。これにより、皮膚に薄型フィルムが貼り付けられた。
【0047】
貼付後に日常生活を送り、6時間後に、外観を目視にて確認し、5つすべてのサンプルについて、析出を認めないものを「〇」、3つもしくは4つのサンプルについて析出を認めないものを「△」、析出を認めないサンプルが2つ以下のものを「×」とした。
【0048】
(保湿機能の評価)
各実施例および各比較例について、転写シートを、40mmの直径を有する円形状に切り抜いたサンプルを作製した。そして、各サンプルについて、下記(1)~(4)の手順に従い、ヒトの皮膚に薄型フィルム積層体を適用して、保湿機能の評価を行った。
【0049】
(1)被験者の前腕を試験箇所とし、水を用いて試験箇所を洗浄した後、水を拭い取り、20分間、放置する。
(2)試験箇所の角層水分量を、皮膚特性評価装置(インテグラル社製、conurage-khazaka Corneometer CM825)を用いて測定する。測定した値を初期角層水分量とする。
【0050】
(3)試験箇所に500μLの水を供給する。その後、サンプルを貼り付けた状態で15分間静置した。次いで、支持基材を剥がすことにより、試験箇所に薄型フィルムが貼り付けられる。
【0051】
(4)上記(3)の操作後、6時間経過後に、試験箇所から薄型フィルムを剥がす。そして、上記皮膚特性評価装置を用いて、薄型フィルムの貼付箇所貼付箇所との各々の角層水分量を測定する。測定した角層水分量の各々を上記初期角層水分量と比較し、初期角層水分量からの角層水分量の増加量を求める。尚、上記(1)から(4)の操作について、薄型フィルム積層体を適用しない箇所を設け、サンプルを張り付けた個所と同様に角層水分量を測定し、参考例1とした。
【0052】
保湿機能の評価では、サンプルの適用前後において、角層水分量が増加した場合を「〇」、サンプルの未貼付箇所と貼付箇所とで角層水分量の増加量が変化ない、もしくは低下した場合を「×」とした。
【0053】
<評価結果>
表1に支持基材中のヒアルロン酸ナトリウムの担持割合を示すとともに、薄型フィルム積層体の未貼付状態での外観、皮膚へ薄型フィルムの貼付をおこなって6時間経過後の貼付個所の外観、保湿効果および総合評価を示す。総合評価は、各評価がすべて「○」である場合を「○」、各評価に「×」が含まれず「△」が含まれる場合を「△」、各評価に「×」が含まれる場合を「×」とした
【0054】
【0055】
表1が示すように、実施例1から5においてか角層水分量の増加が認められ、且つ、薄型フィルム積層体の未貼付状態の外観および、薄型フィルム積層体の貼付後6時間経過後の外観についても良好な結果を示した。
【0056】
比較例1については、水溶性有効成分としてヒアルロン酸ナトリウム水溶液を含んでいないため、角層水分量の増加が認められなかった。比較例2については有効成分の配合量が過剰であったため、析出、脱落が確認され、良好な結果が得られなかった。
【0057】
参考例1において薄型フィルム積層体を適用しなかった箇所について角層水分量の変化は認められず、環境による影響はないものと判断できる。
【0058】
上記実施例、および、比較例から本発明により、水溶性有効成分の配合量に実質的に制限のない新たな薄型フィルム積層体を提供することが可能である。今回はヒアルロン酸ナトリウムを水溶性有効成分として選定し、角層水分量を指標としたが、前述した他の水溶性有効成分等であっても原理的にそれぞれが有する効果を同様に得られる。評価にあたってはそれぞれの効果に対応した指標を用いるべきである。