IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山洋電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ステータ用絶縁紙およびステータ 図1
  • 特開-ステータ用絶縁紙およびステータ 図2
  • 特開-ステータ用絶縁紙およびステータ 図3
  • 特開-ステータ用絶縁紙およびステータ 図4
  • 特開-ステータ用絶縁紙およびステータ 図5
  • 特開-ステータ用絶縁紙およびステータ 図6
  • 特開-ステータ用絶縁紙およびステータ 図7
  • 特開-ステータ用絶縁紙およびステータ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175360
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ステータ用絶縁紙およびステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
H02K3/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087769
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】松橋 健太
(72)【発明者】
【氏名】松下 孝
(72)【発明者】
【氏名】武田 幸大
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604CC01
5H604CC05
5H604DB15
5H604PB03
(57)【要約】
【課題】ステータコアのスキュー角度に対応したカフス付きのステータ用絶縁紙およびステータを提供する。
【解決手段】回転電機におけるスキューされたステータコア200のスロット内に取り付けられる絶縁紙100であって、スキュー方向の端部が折り返されて形成された第一カフス面10と、第一カフス面10よりもシフト方向の反対側に位置する第二カフス面20とを有し、第二カフス面20のスキュー方向の端部は、第一カフス面10のスキュー方向の端部からスキュー方向と直交する方向に延びる仮想線ILよりもスキュー方向についてステータコア200に近い側に位置している。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機におけるスキューされたステータコアのスロット内に取り付けられるステータ用絶縁紙であって、
前記絶縁紙は、スキュー方向の端部が折り返されて形成された第一カフス面と、前記第一カフス面よりもシフト方向の反対側に位置する第二カフス面とを有し、
前記第二カフス面の前記スキュー方向の端部は、前記第一カフス面の前記スキュー方向の端部からスキュー方向と直交する方向に延びる仮想線よりも前記スキュー方向について前記ステータコアに近い側に位置していることを特徴とする、ステータ用絶縁紙。
【請求項2】
前記第一カフス面と前記第二カフス面の間に、前記スキュー方向について段差が設けられている、
請求項1に記載のステータ用絶縁紙。
【請求項3】
前記絶縁紙は、矩形状の紙から一部が切り落とされた紙を折り返すことで形成されている、
請求項1に記載のステータ用絶縁紙。
【請求項4】
コアがシフト方向にずれて積層されてスキューされたステータコアと、
前記ステータコアのスロット内に取り付けられる絶縁紙と、を有するステータであって、
前記ステータコアのティースは、互いに向かい合う第一側壁と第二側壁と、前記第一側壁と前記第二側壁を接続する突出壁とを有し、第一側壁は第二側壁よりもシフト方向に位置しており、
前記絶縁紙は、
前記第一側壁に向かい合う第一面と、
前記第二側壁に向かい合う第二面と、
前記突出壁に向かい合う第三面と、
スキュー方向の両端部で前記第一面から連続し、前記ティースと反対側に折り返された第一カフス面と、
スキュー方向の両端部で前記第二面から連続し、前記ティースと反対側に折り返された第二カフス面と、を有し、
前記第二カフス面の前記スキュー方向の端部は、前記第一カフス面の前記スキュー方向の端部からスキュー方向と直交する方向に延びる仮想線よりも前記スキュー方向について前記ステータコアに近い側に位置していることを特徴とする、ステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ用絶縁紙およびステータに関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機におけるスキューされたステータコアと、ステータコアに組み付けられるコイルを絶縁するための、ステータコアのスロット内に装着される絶縁体が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、回転電機におけるスキューされたステータコアのスロット内に装着されるインシュレータが開示されている。インシュレータは、複数の絶縁部を有し、各々の絶縁部はスキューされたステータコアの各スロットに嵌合するように、スキュー角度に対応した形状を有する。これにより、スキューされたステータコアのスロット内に容易にインシュレータを装着することができる。
また、特許文献2には、スキューしていないステータコアに長方形の絶縁紙をスロット形状に合わせて折り曲げて装着した状態でコイルを巻回した後、ステータコアをスキューさせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-37092号公報
【特許文献2】特開2008-72838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているインシュレータは、ステータコアのスキュー角度やスロット形状に対応して、一品一様に製造する必要があるため、コストがかかる。
また、特許文献2に開示されている絶縁紙は、スロット内で絶縁紙とコイルをスキュー状に変形させるため、絶縁紙の破損による絶縁不良のリスク、および、インシュレータ方式のようにステータコアから突出するコイル高さを抑制する方式には適さない。
【0006】
そこで、本発明は、ステータコアのスキュー角度に対応したカフス付きのステータ用絶縁紙およびステータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るステータ用絶縁紙は、
回転電機におけるスキューされたステータコアのスロット内に取り付けられる絶縁紙であって、
前記絶縁紙は、スキュー方向の端部が折り返されて形成された第一カフス面と、前記第一カフス面よりもシフト方向の反対側に位置する第二カフス面とを有し、
前記第二カフス面の前記スキュー方向の端部は、前記第一カフス面の前記スキュー方向の端部からスキュー方向と直交する方向に延びる仮想線よりも前記スキュー方向について前記ステータコアに近い側に位置している。
【0008】
本発明の一側面に係るステータは、
コアがシフト方向にずれて積層されてスキューされたステータコアと、
前記ステータコアのスロット内に取り付けられる絶縁紙と、を有するステータであって、
前記ステータコアのティースは、互いに向かい合う第一側壁と第二側壁と、前記第一側壁と前記第二側壁を接続する突出壁とを有し、第一側壁は第二側壁よりもシフト方向に位置しており、
前記絶縁紙は、
前記第一側壁に向かい合う第一面と、
前記第二側壁に向かい合う第二面と、
前記突出壁に向かい合う第三面と、
スキュー方向の両端部で前記第一面から連続し、前記ティースと反対側に折り返された第一カフス面と、
スキュー方向の両端部で前記第二面から連続し、前記ティースと反対側に折り返された第二カフス面と、を有し、
前記第二カフス面の前記スキュー方向の端部は、前記第一カフス面の前記スキュー方向の端部からスキュー方向と直交する方向に延びる仮想線よりも前記スキュー方向について前記ステータコアに近い側に位置している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ステータコアのスキュー角度に対応した絶縁紙およびステータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】参考例に係る絶縁紙の斜視図である。
図2】参考例に係る絶縁紙の展開図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る絶縁紙の斜視図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る絶縁紙の展開図である。
図5】回転電機におけるスキューされたステータコアの内周から見た部分斜視図である。
図6】回転電機におけるスキューされたステータコアの図5のAA水平断面図である。
図7】参考例に係る絶縁紙が取り付けられたステータの、図5に示すBB垂直断面図である。
図8】本発明の第一実施形態に係る絶縁紙が取り付けられたステータの、図5に示すBB垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
本実施形態に係る絶縁紙100の内部構成を説明するために、比較対象として、参考例に係る絶縁紙100’の斜視図を図1に、参考例に係る絶縁紙100’の展開図を図2に示す。
図1に示すように、絶縁紙100’は、第一面1、第二面2、第三面3からなる略コの字型の形状を有する。また、絶縁紙100’は、第一面1、第二面2、第三面3の各々の上端側から折り返されて形成された上端側第一カフス面10、上端側第二カフス面20、上端側第三カフス面30を有する。さらに、絶縁紙100’は、第一面1、第二面2、第三面3の各々の下端側から折り返されて形成された下端側第一カフス面40、下端側第二カフス面50、下端側第三カフス面60を有する。
【0013】
図2に示すように、絶縁紙100’は、展開図において長方形の形状を有する。長方形の上端側からY方向の所定の幅d1だけ、図2の紙面手前側に折り返すことで、上端側第一カフス面10、上端側第二カフス面20、上端側第三カフス面30が形成される。このときの折り返し線は、P5とP8を結ぶ直線である。同様に、長方形の下端側からY方向の所定の幅d2だけ、図2の紙面手前側に折り返すことで、下端側第一カフス面40、下端側第二カフス面50、下端側第三カフス面60が形成される。このときの折り返し線は、P9とP12を結ぶ直線である。
【0014】
さらに、長方形の右端側からX方向の所定の幅d3だけ、図2の紙面奥側に直角に折り返すことで、P7、P8、P12、P11を頂点とした矩形状の第一面1が形成される。このときの折り返し線は、P3とP15を結ぶ直線である。同様に、長方形の左端側からX方向の所定の幅d4だけ、図2の紙面奥側に直角に折り返すことで、P5、P6、P10、P9を頂点とした矩形状の第二面2と、P6、P7、P11、P10を頂点とした矩形状の第三面3が形成される。このときの折り返し線は、P2とP14を結ぶ直線である。
以上の工程により、図1に示す略コの字型の形状を有する絶縁紙100’が形成される。
【0015】
図3は、本発明の第一実施形態に係る絶縁紙100の斜視図である。絶縁紙100は、第一面1、第二面2、第三面3からなる略コの字型の形状を有する。また、絶縁紙100は、第一面1、第二面2、第三面3の各々の上端側から折り返されて形成された上端側第一カフス面10、上端側第二カフス面20、上端側第三カフス面30を有する。さらに、絶縁紙100は、第一面1、第二面2、第三面3の各々の下端側から折り返されて形成された下端側第一カフス面40、下端側第二カフス面50、下端側第三カフス面60を有する。なお、第三面3のX方向の幅をWとする。
【0016】
図1に示す参考例に係る絶縁紙100’と異なり、図3に示す第一実施形態に係る絶縁紙100は、第二面2および第三面3のうち第二面2側の部分と、第一面1および第三面3のうち第一面1側の部分との間に、段差幅dsの段差を有する。
【0017】
図4は、本発明の第一実施形態に係る絶縁紙100の展開図を示す。絶縁紙100は、展開図において矩形状の絶縁紙から、第一面1の下端側の矩形状の領域と、第二面2の上端側の矩形状の領域が切り落とされた形状を有する。なお、上端側の切り落とされた矩形状の領域と下端側の切り落とされた矩形状の領域の各々のY方向の所定の幅d1、d2は同一でもよい。
【0018】
上端側第一カフス面10と下端側第一カフス面40の折り返しのため、M2からM3の直線およびM5からM4の直線に沿って切込みを入れる。その後、図2の参考例に係る絶縁紙100’で説明した折り返し工程により、図3に示す絶縁紙100が形成される。
絶縁紙100は、段差幅dsの段差を有することで、上端側第一カフス面10、上端側第二カフス面20、上端側第三カフス面30、下端側第一カフス面40、下端側第二カフス面50、下端側第三カフス面60が折り返される際に、直角に折られる箇所(直角折り部)が形成される。したがって、絶縁紙100のカフス形状を絶縁紙のみで容易に保持することができる。
【0019】
図5に回転電機におけるスキューされたステータコア200をその内周側から見た部分斜視図を示す。
図5に示すように、ステータコア200は、複数の円状の電磁鋼板(コア)が同一円周上にシフト方向A1に所定の幅だけずらして積層されることにより、スキューされた状態で形成される。ここでシフト方向A1とは、電磁鋼板を中心とした円周方向である。また、スキュー方向A2を、重なり合う複数のティースTのうち下端のティースTから上端のティースTへと向かう方向と定義する。
また、ステータコア200は、複数のティースTを有し、隣接するティースTの間にスロット210を有する。スロット210内には、絶縁紙100が取り付けられて、絶縁紙100を介してコイルが巻回される。図5のシフト方向A1とスキュー方向A2のなす角をスキュー角度θと定義する。
【0020】
図6は、回転電機におけるスキューされたステータコア200の図5におけるAA水平断面図である。
図6に示すように、ステータコア200の各スロット210は、スロット開口部214を有する。また、ステータコア200の各ティースTは、第一側壁211と、第二側壁212と、スロット開口部214と向かい合う突出壁213と、を有する。第一側壁211と第二側壁212は、互いに向かい合っており、突出壁213を介して接続されている。
【0021】
スロット210内に絶縁紙100が取り付けられると、絶縁紙100の第一面1はティースTの第一側壁211と、絶縁紙100の第二面2はティースTの第二側壁212と、絶縁紙100の第三面3はティースTの突出壁213と、それぞれ向かい合うように配置される。
【0022】
図7は、参考例に係る絶縁紙100’が取り付けられたステータ300の、図5に示すBB垂直断面図である。
【0023】
図7に示すように、絶縁紙100’の上端側第一カフス面10をステータコア200の上面に突き当てると、上端側第二カフス面20はスロット210から突出して、ステータコア200の上面から離れるため、絶縁紙100’をスロット210内に保持できない。また、絶縁紙100’の上端側第二カフス面20が突出しているため、絶縁紙100’に巻回するコイルの巻き線と上端側第二カフス面20が干渉する。そのため、ステータ300に巻回するコイル半径が大きくなり、コイルの巻回の作業効率が低下する。さらに、巻回するコイルのコイル高さをインシュレータ方式と同等にするのは困難である。
【0024】
図8は、本発明の第一実施形態に係る絶縁紙100が取り付けられたステータ300の、図5に示すBB垂直断面図である。
【0025】
図8に示すように、上端側第二カフス面20は、上端側第一カフス面10よりもシフト方向A1の反対側に位置する。また、上端側第二カフス面20のスキュー方向A2の端部は、上端側第一カフス面10のスキュー方向A2の端部からスキュー方向A2と直交する方向に延びる仮想線ILよりも、スキュー方向A2についてステータコア200に近い側に位置している。そのため、図7に示す絶縁紙100’と比較して、絶縁紙100の上端部は、スロット210から突出する領域が小さい。したがって、コイルの巻き線が絶縁紙と干渉しにくく、ステータコア200にコイルを容易に巻回することが可能となり、組み立ての作業効率が向上する。さらに、ステータ300に巻回するコイル半径を小さくできるため、コイル高さを低くすることが可能となる。
また、段差幅dsをW/2×tan(90°-θ)と設定することで、上端側第二カフス面20のうちステータコア200の上面から突出する領域と、上端側第一カフス面10のうちステータコア200の上面から突出する領域を、同等にできる。したがって、上端側第一カフス面10の先端と、上端側第二カフス面20の先端が、ティースTのステータコア200の上面に突き当たてられるため、ステータコア200の各スロット内に絶縁紙100を容易に固定することができる。なお、上式のWは第三面3のX方向の幅を表し、θは図5のシフト方向A1とスキュー方向A2とのなす角(スキュー角度)を表す。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0027】
1:第一面
2:第二面
3:第三面
10:上端側第一カフス面
20:上端側第二カフス面
30:上端側第三カフス面
40:下端側第一カフス面
50:下端側第二カフス面
60:下端側第三カフス面
100、100’:絶縁紙
200:ステータコア
210:スロット
214:スロット開口部
211:第一側壁
212:第二側壁
213:突出壁
300:ステータ
T:ティース
θ:スキュー角度
A1:シフト方向
A2:スキュー方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8