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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175362
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087774
(22)【出願日】2022-05-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り http://cyberdoc.jp.ykgw.net/CDCJ/General/CDocJ.htm 横河電機株式会社及び横河ソリューションサービス株式会社らが利用している社内イントラネットにおいて、2022年4月28日付で、刊行物「Enerize E3 工場エネルギー操業支援システム概要」がアップロードされることにより公開。
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠弘
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA34
3C100AA53
3C100AA57
3C100AA58
3C100BB13
3C100BB15
(57)【要約】
【課題】製造プロセスにおいて通常よりも多くのエネルギーが使用されていたロットを短時間で抽出する。
【解決手段】本開示に係る情報処理装置10は、製造実績データ及びユーティリティデータを取得し、ロットごとに、ユーティリティデータを当該ロットの工程開始日時から工程終了日時までの範囲で切り出して切り出しデータを生成し、以前の製造実績データ及び以前のユーティリティデータに基づいて生成された学習モデルを用いて、複数の切り出しデータをクラスタ分析して分類し、クラスタ分析による分類と、製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較して注目ロットを抽出し、注目ロットに基づいて注目ロットリストを生成する、制御部15を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロットの各ロットについて、ロット番号、カテゴリコード、工程開始日時及び工程終了日時の情報を含む製造実績データを取得し、
複数のユーティリティの各ユーティリティについて、エネルギー量の時系列データを含むユーティリティデータを取得し、
前記ロットごとに、前記ユーティリティデータを当該ロットの前記工程開始日時から前記工程終了日時までの範囲で切り出して切り出しデータを生成し、
以前の製造実績データ及び以前のユーティリティデータに基づいて生成された学習モデルを用いて、複数の前記切り出しデータをクラスタ分析して分類し、
クラスタ分析による分類と、前記製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較して注目ロットを抽出し、
前記注目ロットに基づいて注目ロットリストを生成する、制御部、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、クラスタ分析による分類と、前記製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較し、分類結果が一致しないロットを前記注目ロットとして抽出する、情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理装置において、
出力部をさらに備え、
前記制御部は、前記注目ロットリストのうちから選択された注目ロットの前記切り出しデータを前記出力部に表示させる、情報処理装置。
【請求項4】
複数のロットの各ロットについて、ロット番号、カテゴリコード、工程開始日時及び工程終了日時の情報を含む製造実績データを取得し、
複数のユーティリティの各ユーティリティについて、エネルギー量の時系列データを含むユーティリティデータを取得し、
前記ロットごとに、前記ユーティリティデータを当該ロットの前記工程開始日時から前記工程終了日時までの範囲で切り出して切り出しデータを生成し、
複数の前記切り出しデータをクラスタ分析して分類し、
クラスタ分析による分類と、前記製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較して、クラスタ分析の妥当性を判定し、
クラスタ分析が妥当である場合、当該クラスタ分析に用いられたパラメータに基づいて学習モデルを生成する、制御部、
を備える、情報処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、クラスタ分析が妥当でない場合、当該クラスタ分析に用いられるパラメータを調整する、情報処理装置。
【請求項6】
情報処理装置における情報処理方法であって、
複数のロットの各ロットについて、ロット番号、カテゴリコード、工程開始日時及び工程終了日時の情報を含む製造実績データを取得するステップと、
複数のユーティリティの各ユーティリティについて、エネルギー量の時系列データを含むユーティリティデータを取得するステップと、
前記ロットごとに、前記ユーティリティデータを当該ロットの前記工程開始日時から前記工程終了日時までの範囲で切り出して切り出しデータを生成するステップと、
以前の製造実績データ及び以前のユーティリティデータに基づいて生成された学習モデルを用いて、複数の前記切り出しデータをクラスタ分析して分類するステップと、
クラスタ分析による分類と、前記製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較して注目ロットを抽出するステップと、
前記注目ロットに基づいて注目ロットリストを生成するステップと、
を含む、情報処理方法。
【請求項7】
情報処理装置における情報処理方法であって、
複数のロットの各ロットについて、ロット番号、カテゴリコード、工程開始日時及び工程終了日時の情報を含む製造実績データを取得するステップと、
複数のユーティリティの各ユーティリティについて、エネルギー量の時系列データを含むユーティリティデータを取得するステップと、
前記ロットごとに、前記ユーティリティデータを当該ロットの前記工程開始日時から前記工程終了日時までの範囲で切り出して切り出しデータを生成するステップと、
複数の前記切り出しデータをクラスタ分析して分類するステップと、
クラスタ分析による分類と、前記製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較して、クラスタ分析の妥当性を判定するステップと、
クラスタ分析が妥当である場合、当該クラスタ分析に用いられたパラメータに基づいて学習モデルを生成するステップと、
を含む、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場における操業において、異常を早期に発見することは重要である。例えば特許文献1は、プラントに関連する時系列データ群のうちの指定された時系列データをグラフィック表示することによって、プラントに関連する時系列データ群を有効に活用し、異常の早期発見に役立てる技術を開示している。
【0003】
近年、温室効果ガスを低減するための省エネルギー対策の一環として、工場におけるエネルギーマネジメントの重要性が高まっている。
【0004】
省エネルギーの観点からは、工場における製品の製造プロセスにおいて、通常よりも多くのエネルギーが使用されていたロットを抽出し、その原因を調査して対策することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-211377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製造プロセスにおいて通常よりも多くのエネルギーが使用されていたロットを抽出し、対策を行うことは、省エネルギー対策として現在行われている。しかしながら、このようなロットを抽出するために多大な時間がかかるという課題があった。
【0007】
そこで、本開示は、製造プロセスにおいて通常よりも多くのエネルギーが使用されていたロットを短時間で抽出することができる情報処理装置及び情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの実施形態に係る情報処理装置は、複数のロットの各ロットについて、ロット番号、カテゴリコード、工程開始日時及び工程終了日時の情報を含む製造実績データを取得し、複数のユーティリティの各ユーティリティについて、エネルギー量の時系列データを含むユーティリティデータを取得し、前記ロットごとに、前記ユーティリティデータを当該ロットの前記工程開始日時から前記工程終了日時までの範囲で切り出して切り出しデータを生成し、以前の製造実績データ及び以前のユーティリティデータに基づいて生成された学習モデルを用いて、複数の前記切り出しデータをクラスタ分析して分類し、クラスタ分析による分類と、前記製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較して注目ロットを抽出し、前記注目ロットに基づいて注目ロットリストを生成する、制御部を備える。このような情報処理装置によれば、製造プロセスにおいて通常よりも多くのエネルギーが使用されていたロットを短時間で抽出することが可能である。
【0009】
一実施形態に係る情報処理装置において、前記制御部は、クラスタ分析による分類と、前記製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較し、分類結果が一致しないロットを前記注目ロットとして抽出してもよい。これにより、注目ロットを自動的に抽出することができる。
【0010】
一実施形態に係る情報処理装置において、出力部をさらに備え、前記制御部は、前記注目ロットリストのうちから選択された注目ロットの前記切り出しデータを前記出力部に表示させてもよい。これにより、ユーザは、注目ロットの製造に用いられたユーティリティのデータを容易に解析することができる。
【0011】
幾つかの実施形態に係る情報処理装置は、複数のロットの各ロットについて、ロット番号、カテゴリコード、工程開始日時及び工程終了日時の情報を含む製造実績データを取得し、複数のユーティリティの各ユーティリティについて、エネルギー量の時系列データを含むユーティリティデータを取得し、前記ロットごとに、前記ユーティリティデータを当該ロットの前記工程開始日時から前記工程終了日時までの範囲で切り出して切り出しデータを生成し、複数の前記切り出しデータをクラスタ分析して分類し、クラスタ分析による分類と、前記製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類と、を比較して、クラスタ分析の妥当性を判定し、クラスタ分析が妥当である場合、当該クラスタ分析に用いられたパラメータに基づいて学習モデルを生成する、制御部を備える。このような情報処理装置によれば、以前の製造実績データ及びユーティリティデータに基づいて学習モデルを生成することができる。
【0012】
一実施形態に係る情報処理装置において、前記制御部は、クラスタ分析が妥当でない場合、当該クラスタ分析に用いられるパラメータを調整してもよい。これにより、適切な学習モデルが生成できるまでパラメータを調整することができる。
【0013】
幾つかの実施形態に係る情報処理方法は、情報処理装置における情報処理方法であって、複数のロットの各ロットについて、ロット番号、カテゴリコード、工程開始日時及び工程終了日時の情報を含む製造実績データを取得するステップと、複数のユーティリティの各ユーティリティについて、エネルギー量の時系列データを含むユーティリティデータを取得するステップと、前記ロットごとに、前記ユーティリティデータを当該ロットの前記工程開始日時から前記工程終了日時までの範囲で切り出して切り出しデータを生成するステップと、以前の製造実績データ及び以前のユーティリティデータに基づいて生成された学習モデルを用いて、複数の前記切り出しデータをクラスタ分析して分類するステップと、クラスタ分析による分類と、前記製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較して注目ロットを抽出するステップと、前記注目ロットに基づいて注目ロットリストを生成するステップと、を含む。このような情報処理方法によれば、製造プロセスにおいて通常よりも多くのエネルギーが使用されていたロットを短時間で抽出することが可能である。
【0014】
幾つかの実施形態に係る情報処理方法は、情報処理装置における情報処理方法であって、複数のロットの各ロットについて、ロット番号、カテゴリコード、工程開始日時及び工程終了日時の情報を含む製造実績データを取得するステップと、複数のユーティリティの各ユーティリティについて、エネルギー量の時系列データを含むユーティリティデータを取得するステップと、前記ロットごとに、前記ユーティリティデータを当該ロットの前記工程開始日時から前記工程終了日時までの範囲で切り出して切り出しデータを生成するステップと、複数の前記切り出しデータをクラスタ分析して分類するステップと、クラスタ分析による分類と、前記製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較して、クラスタ分析の妥当性を判定するステップと、クラスタ分析が妥当である場合、当該クラスタ分析に用いられたパラメータに基づいて学習モデルを生成するステップと、を含む。このような情報処理方法によれば、以前の製造実績データ及びユーティリティデータに基づいて学習モデルを生成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、製造プロセスにおいて通常よりも多くのエネルギーが使用されていたロットを短時間で抽出することができる情報処理装置及び情報処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来のユーティリティデータを時系列に表示している様子を示す図である。
図2】従来のユーティリティデータを工程開始日時から工程終了日時までの範囲で切り出して比較している様子を示す図である。
図3】一実施形態に係る情報処理装置の概略構成を示す図である。
図4A】ユーティリティデータの一例を示す図である。
図4B】ユーティリティデータの一例を示す図である。
図5】製造実績データの一例を示す図である。
図6】カテゴリマスターデータの一例を示す図である。
図7】注目ロットリストの一例を示す図である。
図8】注目ロットに基づく解析データが表示されている様子を示す図である。
図9】一実施形態に係る情報処理装置による学習モデル生成処理の手順を示すフローチャートである。
図10】一実施形態に係る情報処理装置による注目ロット抽出処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(比較例)
最初に、比較例として、従来技術において、複数のロットのうちから通常よりも多くのエネルギーが使用されていたロットを抽出する場合の一例について説明する。
【0018】
通常、製品はロット単位で製造される。1つのロットに含まれる製品の数量は、製品にもよるが、例えば、数千個~数10万個程度である。
【0019】
工場において製品を製造する際、製造実績データというデータが生成される。製造実績データは、それぞれのロットについて、ロット番号、カテゴリコード、工程開始日時及び工程終了日時などを関連づけたデータである。
【0020】
ロット番号は、ロットを特定するための識別番号である。カテゴリコードは、そのロットがどのカテゴリに含まれるかを分類するコードである。ここで、カテゴリとは、製造プロセスが類似しているロットをまとめてグループ化したものである。例えば、100~250程度のロットを、5~10程度のカテゴリに分類してよい。
【0021】
工程開始日時は、そのロットを製造する工程を開始した日時である。工程終了日時は、そのロットを製造する工程を終了した日時である。
【0022】
また、工場においては、ユーティリティデータが生成される。ユーティリティデータは、製品の製造プロセスに使用される複数のユーティリティのエネルギー量の時系列データを含む。ここで、ユーティリティとは、製品の製造プロセスに必要なものであり、例えば、電力、蒸気、水、圧縮空気などである。
【0023】
図1に、従来技術において、ユーティリティの時系列データをグラフとして表示している場合の一例を示す。図1において、横軸は日時である。また、縦軸はエネルギー量である。図1において、複数のグラフは複数のユーティリティを示している。
【0024】
従来技術においては、製造実績データに含まれている工程開始日時及び工程終了日時に基づいて、ユーティリティデータをロットごとに切り出す。図1に示す例においては、例えば符号101で示している範囲が1ロット分のデータに相当する。
【0025】
従来技術においては、カテゴリごとに、切り出した1ロット分のユーティリティデータを並べて表示する。図2に、あるカテゴリについて、ロットA、ロットB及びロットCの切り出したユーティリティデータのグラフを並べている様子を示す。
【0026】
工場の管理担当者などは、図2のように同一カテゴリで並べられたグラフを見て、他のロットに比べてエネルギー量が多いポイントがあるなどのような特異な特徴があるロットを注目ロットとして抽出する。
【0027】
管理担当者などは、それぞれのカテゴリについて、切り出したユーティリティデータのグラフを比較し、注目ロットを抽出する処理を実行する。
【0028】
従来技術による上述のような注目ロットの抽出方法は、以下のような課題がある。
・切り出したユーティリティデータのグラフを比較して、特異な特徴がある注目ロットを抽出することは誰にでもできることではなく、製造プロセスの知見を有する熟練した管理担当者でなければ実施できない。
・カテゴリの数、ロットの数が多いと注目ロットの抽出作業に非常に時間がかかる。例えば、数ヶ月程度の時間がかかる場合もある。
・注目ロットを抽出した後に、通常よりもエネルギー量が多かったユーティリティについて原因の調査に着手することとなるが、注目ロットの抽出作業に非常に時間がかかるため、原因の調査に着手できるタイミングが遅くなる。原因の調査に着手し、原因を解決するまでの間にも製品の製造は続けられているため、通常よりもエネルギー量が多い状態で製品を製造する期間が長くなる。
・注目ロットを抽出できるまでに長い時間がかかると、工場の操業に関連したデータが十分に残されていない場合、原因の調査が困難となる。
【0029】
(本開示の情報処理装置)
図3は、一実施形態に係る情報処理装置10の概略構成を示す図である。情報処理装置10は、上述した従来技術の課題を解消することを目的とする情報処理装置である。
【0030】
工場においては製品の製造プロセスがロット単位で行われている。通常、製造プロセスが類似しているロットにおいては、製品1個の製造に使用されるエネルギー量は同等程度である。しかしながら、何らかの異常により、製品の製造プロセスに通常よりも多くのエネルギーが使用されているロットが発生することがある。
【0031】
情報処理装置10は、ある期間に製造された複数のロットから通常よりも多くのエネルギーが使用されていた可能性があるロットを抽出する情報処理装置である。以後、製品の製造プロセスの際に通常よりも多くのエネルギーが使用されていた可能性があるロットを、「注目ロット」と称する場合がある。
【0032】
情報処理装置10は、工場に設置されていてもよいし、工場とは別の場所に設置されていてもよい。情報処理装置10は、ワークステーション、パソコンなどのような汎用のコンピュータであってもよいし、本実施形態の用途のために用いられる専用のコンピュータであってもよい。
【0033】
図3を参照して、情報処理装置10の構成について説明する。情報処理装置10は、通信部11と、記憶部12と、入力部13と、出力部14と、制御部15とを備える。
【0034】
通信部11は、有線通信に対応する通信モジュール及び無線通信に対応する通信モジュールの少なくとも一方を含む。情報処理装置10は、通信部11を介して他の装置と通信可能である。
【0035】
記憶部12は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限定されない。記憶部12は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部12は、情報処理装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部12は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び通信部11によって受信された各種情報等を記憶してもよい。記憶部12の一部は、情報処理装置10の外部に設置されていてもよい。その場合、外部に設置されている記憶部12の一部は、任意のインタフェースを介して情報処理装置10と接続されてよい。
【0036】
入力部13は、ユーザ入力を検出して、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力用インタフェースを含む。例えば、入力部13は、物理キー、静電容量キー、出力部14のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又は音声入力を受け付けるマイク等を含むが、これに限定されない。
【0037】
出力部14は、情報を出力してユーザに通知する1つ以上の出力用インタフェースを含む。例えば、出力部14は、情報を画像で出力するディスプレイ、情報を音声で出力するスピーカ等を含むが、これに限定されない。
【0038】
制御部15は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。制御部15は、情報処理装置10の各部を制御しながら、情報処理装置10の動作に関わる処理を実行する。
【0039】
制御部15は、ユーティリティデータ、製造実績データ及びカテゴリマスターデータを取得する。制御部15は、ユーティリティデータ、製造実績データ及びカテゴリマスターデータを、通信部11を介して他の装置から取得してよい。あるいは、制御部15は、ユーティリティデータ、製造実績データ及びカテゴリマスターデータを、ユーザによる入力部13への入力操作によって取得してよい。以後の説明においては、制御部15が、ユーティリティデータ、製造実績データ及びカテゴリマスターデータを、通信部11を介して他の装置から取得するものとして説明する。
【0040】
図4A及び図4Bは、ユーティリティデータの一例を示す図である。図4A及び図4Bに示すユーティリティデータは、列が多くて1枚の図で示すことが困難であるため、2枚の図に亘って示したものである。
【0041】
ユーティリティデータは、複数のユーティリティの各ユーティリティについて、エネルギー量の時系列データを含む。ここで、ユーティリティとは、工場において製品を製造するために必要なものであり、例えば、電力、蒸気、水、圧縮空気などである。なお、ユーティリティデータにおいて、電力量、蒸気量、水量、圧縮空気の量は、エネルギー量に換算されたデータとして格納されている。
【0042】
図4A及び図4Bにおいて、ユーティリティデータは、1時間単位のデータとなっており、1つの行が1時間分のデータを示している。また、E-13102~E-14004は、電力のユーティリティのデータを示しており、1列が1つの電力のユーティリティ設備のデータを示している。例えば、E-13103の列において2020/1/1 0:00のデータが「43」となっているが、これは、E-13103という電力のユーティリティ設備において、2020/1/1の0:00~1:00の間に用いられたエネルギー量が「43」であることを示している。
【0043】
また、S-0034~S-0038は、蒸気のユーティリティのデータを示しており、1列が1つの蒸気のユーティリティ設備のデータを示している。例えば、S-0034の列において2020/1/1 0:00のデータが「0」となっているが、これは、S-0034という蒸気のユーティリティ設備において、2020/1/1の0:00~1:00の間に用いられたエネルギー量が「0」であることを示している。
【0044】
また、W-0042~W-0045は、水のユーティリティのデータを示しており、1列が1つの水のユーティリティ設備のデータを示している。例えば、W-042の列において2020/1/1 0:00のデータが「0.01」となっているが、これは、W-042という水のユーティリティ設備において、2020/1/1の0:00~1:00の間に用いられたエネルギー量が「0.01」であることを示している。
【0045】
図5は、製造実績データの一例を示す図である。製造実績データは、複数のロットについての製造実績のデータを含む。図5に示す例においては、製造実績データは、各ロットについて、ロット番号、ロットサイズ、単位、品目名称、カテゴリコード、カテゴリグループ、工程A開始日時、工程A終了日時、工程B開始日時、工程B終了日時、工程C開始日時、工程C終了日時、品目コード、カテゴリ名称のデータを含む。
【0046】
なお、図5に示した製造実績データは一例であり、製造実績データが含むデータの種類は、図5に示したデータの種類に限定されない。製造実績データは、各ロットについて、少なくとも、ロット番号、カテゴリコード、1つの工程の工程開始日時、1つの工程の工程終了日時を含んでいればよい。
【0047】
ロット番号は、ロットを特定するための識別番号である。ロットサイズは、そのロットに含まれる製品の数量を示す。単位は、そのロットに含まれる製品に用いる単位を示す。品目名称は、そのロットに含まれる製品の名称を示す。カテゴリコードは、そのロットがどのカテゴリに含まれるかを分類するコードである。カテゴリグループは、そのカテゴリに割り当てられた番号であり、カテゴリコードと1対1に対応する。工程A開始日時は、そのロットを製造するための工程Aが開始した日時である。工程A終了日時は、そのロットを製造するための工程Aが終了した日時である。工程B開始日時は、そのロットを製造するための工程Bが開始した日時である。工程B終了日時は、そのロットを製造するための工程Bが終了した日時である。工程C開始日時は、そのロットを製造するための工程Cが開始した日時である。工程C終了日時は、そのロットを製造するための工程Cが終了した日時である。品目コードは、品目名称と1対1に対応するコードである。カテゴリ名称は、カテゴリの名称であり、カテゴリコード及びカテゴリグループと1対1に対応する。
【0048】
ここで、カテゴリとは、製造プロセスが類似しているロットをまとめてグループ化したものである。例えば、100~250程度のロットを、5~10程度のカテゴリに分類してよい。製造実績データにおいて、複数のロットをどのようにしてカテゴリに分類するかは、工場の管理担当者などが任意に設定してよい。
【0049】
図6は、カテゴリマスターデータの一例を示す図である。カテゴリマスターデータは、品目コードに、品目名称、カテゴリコード、カテゴリ名称及びカテゴリグループを関連付けたデータである。カテゴリマスターデータは、品目とカテゴリとの対応を定義するために用いられる。
【0050】
情報処理装置10は、2種類の処理を実行する。1つは、注目ロットを抽出する際に用いられる学習モデルを生成する処理である。もう1つは、学習モデルを用いて注目ロットを抽出する処理である。
【0051】
<学習モデル生成処理>
最初に、情報処理装置10が学習モデルを生成する処理について説明する。
【0052】
情報処理装置10の制御部15は、製造実績データ及びユーティリティデータを、通信部11を介して取得する。制御部15が取得する製造実績データ及びユーティリティデータは、学習モデルを生成するために用いる学習用データであり、以前に製造した製品の製造の際に取得された広い時間範囲のデータであってよい。
【0053】
制御部15は、製造実績データに含まれている各ロットについて、工程開始日時及び工程終了日時を読み出す。制御部15は、ロットごとに、ユーティリティデータを当該ロットの工程開始日時から工程終了日時までの範囲で切り出して、切り出しデータを生成する。以後、「切り出しデータ」との用語を、ユーティリティデータをロットの工程開始日時から工程終了日時までの範囲で切り出したデータの意味で用いる場合がある。
【0054】
制御部15は、製造実績データに含まれている全てのロットの切り出しデータを用いてクラスタ分析を実行する。クラスタ分析が実行されることにより、製造実績データに含まれるロットは、複数のクラスタに分類される。
【0055】
制御部15は、クラスタ分析を実行する前に、前処理として、クラスタ分析に用いるパラメータを調整してよい。クラスタ分析に用いるパラメータの調整とは、例えば、切り出しデータに含まれる各ユーティリティのエネルギー量への重み付けの調整、クラスタ分析のアルゴリズムにおいて設定されるパラメータの調整などであってよい。
【0056】
制御部15は、クラスタ分析に用いるパラメータの調整を、工場の管理担当者などのユーザによる入力部13への入力に基づいて実行してもよいし、自動で実行してもよい。
【0057】
制御部15は、クラスタ分析による分類と、製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較して、クラスタ分析の妥当性を判定する。ここで、製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とは、製造実績データに含まれるロットを、製造実績データに実際に含まれているカテゴリコードごとによって分類する分類である。すなわち、製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類は、正解データであるともいえる。
【0058】
制御部15は、例えば、クラスタ分析による分類と、製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とが所定の閾値以上の割合で一致した場合に、クラスタ分析が妥当であると判定してよい。所定の閾値は、例えば80%であってよい。
【0059】
あるいは、クラスタ分析による分類と、製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較して、クラスタ分析の妥当性を判定することは、情報処理装置10のユーザが、分類結果を比較して行ってもよい。熟練したユーザが判定すれば、知見に基づいて適切にクラスタ分析の妥当性を判定することができる。
【0060】
制御部15は、クラスタ分析が妥当であると判定した場合、当該クラスタ分析に用いられたパラメータに基づいて学習モデルを生成する。生成された学習モデルは、後述の注目ロットの抽出処理において用いられる。
【0061】
制御部15は、クラスタ分析が妥当でないと判定した場合、クラスタ分析に用いられるパラメータを調整し、再度クラスタ分析を実行する。
【0062】
<注目ロット抽出処理>
続いて、情報処理装置10が注目ロットを抽出する処理について説明する。
【0063】
情報処理装置10の制御部15は、製造実績データ及びユーティリティデータを、通信部11を介して取得する。制御部15が取得する製造実績データ及びユーティリティデータは、注目ロットを抽出するための対象となるデータである。
【0064】
制御部15は、製造実績データに含まれている各ロットについて、工程開始日時及び工程終了日時を読み出す。制御部15は、ロットごとに、ユーティリティデータを当該ロットの工程開始日時から工程終了日時までの範囲で切り出して、切り出しデータを生成する。
【0065】
制御部15は、以前の製造実績データ及び以前のユーティリティデータに基づいて上述の学習モデル生成処理によって生成された学習モデルを用いて、複数の切り出しデータをクラスタ分析して分類する。
【0066】
制御部15は、クラスタ分析による分類と、製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較し、分類結果が一致しないロットを注目ロットとして抽出する。ここで、製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類は正解データであるともいえるため、制御部15は、クラスタ分析による分類のうち、正解データと一致しないロットを注目ロットとして抽出するともいえる。
【0067】
制御部15は、抽出した注目ロットに基づいて注目ロットリストを生成する。図7に、注目ロットリストの一例を示す。図7に示される注目ロットリストを、図5に示される製造実績データと対比すると、注目ロットリストは、製造実績データの一部が抽出されたリストとなっていることがわかる。
【0068】
制御部15は、このように、学習モデルを用いたクラスタ分析によって自動的に注目ロットを抽出することができるため、製造プロセスにおいて通常よりも多くのエネルギーが使用されていた可能性があるロットを短時間で抽出することができる。制御部15は、例えば、数時間程度で自動的に注目ロットを抽出することができる。ユーザは、情報処理装置10によって抽出された注目ロットに基づいて、直ちに製造プロセスの改善に着手することができる。
【0069】
また、注目ロットを抽出する際にユーザが実行する動作は、どの製造実績データ及びどのユーティリティデータを情報処理装置10に読み込ませるかを指定することだけである。したがって、ユーザは、簡易な操作で容易に注目ロットを抽出することができる。
【0070】
制御部15は、注目ロットリストに基づくデータを出力部14に表示させることができる。図8に、注目ロットリストに基づく解析データ200が出力部14に表示されている一例を示す。
【0071】
図8に示す例においては、出力部14に表示される解析データ200は、注目ロットリスト201と、ユーティリティ選択画面202と、グラフ203とを含む。
【0072】
注目ロットリスト201は、注目ロットリストを表示している。ユーザは、注目ロットリスト201に表示されている注目ロットリストのうちの1つの注目ロットリストを選択することによって、どの注目ロットの切り出しデータを表示させるかを選択することができる。
【0073】
ユーティリティ選択画面202は、グラフ203に表示させるユーティリティを選択するための画面である。ユーティリティ選択画面202において「表示」の欄がチェックされているユーティリティの切り出しデータがグラフ203に表示される。
【0074】
グラフ203は、注目ロットリスト201のうちの選択された注目ロットについて、ユーティリティ選択画面202で選択されたユーティリティの切り出しデータを表示する。
【0075】
制御部15が、このように解析データ200を出力部14に表示させることができるため、ユーザは、解析データ200を見ることによって、注目ロットの製造に用いられたユーティリティのデータを容易に解析することができる。
【0076】
図9に示すフローチャートを参照して、一実施形態に係る情報処理装置10による学習モデル生成処理の手順を説明する。
【0077】
ステップS101において、情報処理装置10の制御部15は、学習用データとして製造実績データ及びユーティリティデータを、通信部11を介して取得する。
【0078】
ステップS102において、制御部15は、製造実績データに含まれている各ロットについて、工程開始日時及び工程終了日時を読み出し、ロットごとに、ユーティリティデータを当該ロットの工程開始日時から工程終了日時までの範囲で切り出す。
【0079】
ステップS103において、制御部15は、クラスタ分析に用いるパラメータを調整する。
【0080】
ステップS104において、制御部15は、製造実績データに含まれている全てのロットの切り出しデータを用いてクラスタ分析を実行する。
【0081】
ステップS105において、制御部15は、クラスタ分析による分類と、製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較して、クラスタ分析の妥当性を判定する。
【0082】
ステップS105においてクラスタ分析が妥当でないと判定した場合、制御部15は、ステップS103に戻る。
【0083】
ステップS105においてクラスタ分析が妥当であると判定した場合、制御部15は、ステップS106に進む。
【0084】
ステップS106において、制御部15は、ステップS104におけるクラスタ分析に用いられたパラメータに基づいて学習モデルを生成する。
【0085】
図10に示すフローチャートを参照して、一実施形態に係る情報処理装置10による注目ロット抽出処理の手順を説明する。
【0086】
ステップ201において、情報処理装置10の制御部15は、製造実績データ及びユーティリティデータを、通信部11を介して取得する。ここで取得する製造実績データ及びユーティリティデータは、注目ロットを抽出するための対象となるデータである。
【0087】
ステップS202において、制御部15は、製造実績データに含まれている各ロットについて、工程開始日時及び工程終了日時を読み出し、ロットごとに、ユーティリティデータを当該ロットの工程開始日時から工程終了日時までの範囲で切り出す。
【0088】
ステップS203において、制御部15は、製造実績データに含まれている全てのロットの切り出しデータに対し、学習モデル生成処理によって生成された学習モデルを用いてクラスタ分析を実行する。
【0089】
ステップS204において、制御部15は、クラスタ分析による分類と、製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較し、分類結果が一致しないロットを注目ロットとして抽出する。
【0090】
ステップS205において、制御部15は、抽出した注目ロットに基づいて注目ロットリストを生成する。
【0091】
以上のような一実施形態に係る情報処理装置10によれば、製造プロセスにおいて通常よりも多くのエネルギーが使用されていたロットを短時間で抽出することができる。より具体的には、情報処理装置10は、製造実績データ及びユーティリティデータを取得し、ロットごとに、ユーティリティデータを当該ロットの工程開始日時から工程終了日時までの範囲で切り出して切り出しデータを生成し、以前の製造実績データ及び以前のユーティリティデータに基づいて生成された学習モデルを用いて、複数の切り出しデータをクラスタ分析して分類し、クラスタ分析による分類と、製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較して注目ロットを抽出し、注目ロットに基づいて注目ロットリストを生成する、制御部15を備える。したがって、情報処理装置10は、クラスタ分析による分類と製造実績データに含まれるカテゴリコードによる分類とを比較して注目ロットを自動的に抽出することができるため、製造プロセスにおいて通常よりも多くのエネルギーが使用されていたロットを短時間で抽出することができる。
【0092】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。従って、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含される。
【0093】
例えば、上述した各構成部の配置及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の配置及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0094】
例えば、上述した実施形態において、学習モデル生成処理及び注目ロット抽出処理の双方を情報処理装置10が実行する場合を説明したが、学習モデル生成処理を実行する情報処理装置と注目ロット抽出処理を実行する情報処理装置とが別の情報処理装置であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 情報処理装置
11 通信部
12 記憶部
13 入力部
14 出力部
15 制御部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10