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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175374
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】スチームトレー
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/16 20060101AFI20231205BHJP
   A47J 37/06 20060101ALI20231205BHJP
   A47J 37/08 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
F24C15/16 B
A47J37/06 301
A47J37/08 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087790
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(72)【発明者】
【氏名】堀池 正敏
(72)【発明者】
【氏名】角屋 静江
【テーマコード(参考)】
4B040
【Fターム(参考)】
4B040AA02
4B040AC03
4B040AE04
4B040EB20
(57)【要約】
【課題】トースター庫内の汚れを防止しつつ、食パン等の食品を水分や風味を損ねることなく簡単に調理することが可能なスチームトレーを提供すること。
【解決手段】スチームトレー1は、食品を載置可能な天板12と、天板12の周囲を取り囲むように立ち上がる周板13と、天板12と周板13との境界において天板12から窪み、トースターによる加温時に蒸発させるための水を収納可能な水溜めポケット40を備える。食品を加熱調理した際には、食品からでるくずがスチームトレー1により受け止められるため、庫内にくずが散乱して汚れることがないし、水溜めポケットから水蒸気が発生し、トースターの庫内に充満するため、食品中の水分が逃げることが防止され、その食感や風味が良好なものに保たれる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を載せた状態でトースターの庫内に入れられ、その食品を加熱調理するためのスチームトレーであって、
食品を載置可能な天板と、
前記天板の周囲を取り囲むように立ち上がる周板と、
前記天板と前記周板との境界において前記天板から窪み、前記トースターによる加温時に蒸発させるための水を収納可能な水溜めポケットと、を備えるスチームトレー。
【請求項2】
前記天板は、
前記水溜めポケットに向けて並列して延びる天リブを有し、
隣接する天リブと天リブの間には、前記水溜めポケットから蒸発した前記水が浸入可能な溝が形成されている請求項1に記載のスチームトレー。
【請求項3】
前記天板は平面視で矩形であり、
前記水溜めポケットは、矩形の前記天板の短辺に沿って設けられている請求項1または2に記載のスチームトレー。
【請求項4】
矩形の前記天板の長辺に沿って設けられた、前記天板と前記周板との境界において前記天板から窪み、前記水を投入可能な投入口と、
前記投入口から前記水溜めポケットにかけて延び、前記投入口に投入された水を前記水溜めポケットへと導く、前記天板と前記周板との境界において前記天板から窪む水路と、をさらに備える請求項3に記載のスチームトレー。
【請求項5】
前記投入口は、凸状のガイドを有し、
そのガイドは、前記水路に向けて下り勾配に傾斜している請求項4に記載のスチームトレー。
【請求項6】
前記天板は、前記投入口に水を投入することを視覚的に示す投入標識を、前記投入口に隣接して有する請求項4に記載のスチームトレー。
【請求項7】
前記水溜めポケットと前記水路の境界に臨む前記天板の隅部は、
前記天板の平面方向に膨出する支持部となっている請求項4に記載のスチームトレー。
【請求項8】
前記周板は、
前記水溜めポケットおよび前記水路に臨むジグザグ状の周リブを有している請求項4に記載のスチームトレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用トースターにて食パン等の食品を載せて加熱調理するトレーに関する。
【背景技術】
【0002】
食パン等の食品を家庭用トースターで加熱調理する場合、その食品に含まれている水分が失われてしまい、食感や風味を損ねることが多い。
このため、トースター内に、食パン等の食品とともに陶器製のスチーマーを入れる試みがなされている。陶器製のスチーマーとしては、水に浸すことで水分を保持するものや特許文献1のように容器形状で水を収容可能なものが知られている。
また、特許文献2のように水タンクを備えるスチーム機能付きのトースターも知られている。
【0003】
特許文献1および2のいずれの場合も、食パン等の食品の加熱調理中に、水分を蒸発させ、トースターの庫内に水蒸気を充満させることで、食品に含まれている水分や香ばしさが損なわれることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-186902号公報
【特許文献2】特開2021-143828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなスチーマーは、陶器製なので損壊しやすく、水に浸したりする必要があるなど準備に手間がかかる。
また、トースター庫内でスペースを取るため、たとえば食パンを2枚同時に調理したいときなど、食品を庫内に設置する際の邪魔になる。
【0006】
さらに、特許文献2のようなトースターは、構造が複雑であることから、コストが嵩むうえ、水タンクや水路の手入れなどメンテナンスに手間がかかる。
もちろん、スチーム機能が付いていない一般的なトースターには、このような構造を活用することができない。
【0007】
一方、トースターで食パン等の食品を焼く場合の課題として、トースターの庫内に設置される焼き網に食品を直接置いて焼くと、その食品のトースターへの出し入れにともない、食品くずが焼き網から落ちて庫内の底部が汚れることが挙げられる。
【0008】
特に、食品としてパンを焼いた際にはくずが生じやすい。トースターの機種によっては、くず受けが付属されていて、庫内下部に当該トレーを出し入れ自在に設置することでくずを受けることができるものもある。
しかし、そのようなくず受けがある場合でも、通常、トースターの庫内下部にはパンの下側を加熱するためのヒーターが設置されているので、そのヒーターによる加熱の邪魔にならないように、ヒーターよりも下方にトレーが設定されているため、ヒーター部にくずが落ちて汚れたりする。
また、付属のトレーがあったとしても、焼き網自体は汚れるので、トースターの掃除には非常に手間がかかるには変わりない。
【0009】
そこで本発明の解決すべき課題は、トースター庫内の汚れを防止しつつ、食パン等の食品を水分や風味を損ねることなく簡単に調理可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、食品を載置可能な天板と、前記天板の周囲を取り囲むように立ち上がる周板と、前記天板と前記周板との境界において前記天板から窪み、前記トースターによる加温時に蒸発させるための水を収納可能な水溜めポケットと、を備えるスチームトレーを構成したのである。
【0011】
このように構成したので、スチームトレーに食品を載せた状態でトースターの庫内に入れ、食品を加熱調理した際には、食品からでるくずがトレーにより受け止められる。このため、直接焼き網に食品を載せた場合などと比較して、庫内にくずが散乱して汚れることがなくなる。
また、食品を加熱調理する際には、水溜めポケットから水蒸気が発生し、トースターの庫内に充満する。このため、食品中の水分が逃げることが防止され、その食感や風味が良好なものに保たれる。
【0012】
発明にかかるスチームトレーにおいて、前記天板は、前記水溜めポケットに向けて並列して延びる天リブを有し、隣接する天リブと天リブの間には、前記水溜めポケットから蒸発した前記水が浸入可能な溝が形成されている構成を採用することが好ましい。
【0013】
このように構成すると、天板がリブで補強されるとともに、食品の裏面(天板への載置面)にも水蒸気が届くため、その裏面の側の潤いが保たれ、食品の食感や風味が一層優れたものとなる。
【0014】
発明にかかるスチームトレーにおいて、前記天板は平面視で矩形であり、前記水溜めポケットは、矩形の前記天板の短辺に沿って設けられている構成を採用することができる。
【0015】
このように構成すると、スチームトレーの全体形状が、一般的な家庭用トースターの庫内の形状とほぼ合致したものとなるため、その庫内に過不足なく収納することが可能となる。
また、その場合に、一般的な家庭用トースターの庫内は、間口が長く、奥行きが短いため、ここにスチームトレーを設置する際には、間口に長辺が、奥行きに短辺が沿うように設置することとなる。
その場合、スチームトレーの長辺に沿って水溜めポケットを設けた場合には、庫内の手前側に位置することになり(奥側に位置すると水を注げない)、加熱調理の際に水蒸気が庫内の奥にまで十分に届かず、食品の水分を保つ機能が十分に得られない可能性がある。
そこで、水溜めポケットを、トレーの短辺に沿って設けることで、ここから生じた水蒸気が庫内の手前側にも奥側にも行き渡り、食品の水分を保つ機能が十分に発揮される。
【0016】
発明にかかるスチームトレーにおいて、矩形の前記天板の長辺に沿って設けられた、前記天板と前記周板との境界において前記天板から窪み、前記水を投入可能な投入口と、
前記投入口から前記水溜めポケットにかけて延び、前記投入口に投入された水を前記水溜めポケットへと導く、前記天板と前記周板との境界において前記天板から窪む水路と、をさらに備える構成を採用することが好ましい。
【0017】
水溜めポケットがトレーの短辺に沿って設けられている場合、トースターの庫内に入れた場合に手前側に位置しないため、ここに水を注ぐことが難しい。
そこで、トレーをトースターの庫内に入れた場合に、手前側にくる位置に水の投入口を設けることで、水を灌ぐことが容易となる。
投入口に注がれた水は、水路を通じて水溜めポケットへと導かれるため、食品の加熱調理時における水溜めポケットからの水蒸気発生に支障が生じることはない。
【0018】
発明にかかるスチームトレーにおいて、前記投入口は、凸状のガイドを有し、そのガイドは、前記水路に向けて下り勾配に傾斜している構成を採用することが好ましい。
【0019】
このように構成すると、投入口の上から注がれた水は、ガイドの傾斜に沿って水路へとスムーズに案内されるため、投入口に水が滞留せず、速やかに水溜めポケットへと送り込むことが可能となる。
【0020】
発明にかかるスチームトレーにおいて、前記天板は、前記投入口に水を投入することを視覚的に示す投入標識を、前記投入口に隣接して有する構成を採用することができる。
【0021】
スチームトレーを初めて使用する場合、天板の周囲に、水溜めポケット、投入口、水路など複数の窪みが存在し、どこに水を入れれば良いのか理解できないことがある。水を入れる場所を指し示す表示を設けることで、使用方法が一目瞭然となり便利である。
【0022】
発明にかかるスチームトレーにおいて、前記水溜めポケットと前記水路の境界に臨む前記天板の隅部は、前記天板の平面方向に膨出する支持部となっている構成を採用することができる。
【0023】
天板は、水が通る投入口、水路、水溜めポケットと隣接しているため、ここに載置される食品の一部がこれら投入口、水路、水溜め上に臨み、内部の水と接触してしまうおそれがある。食品が水に浸ってしまうと、その食感等が低下してしまう。
天板の隅部を延長する支持部を設けることで、食品の支持面積を大きくし、その一部が投入口、水路、水溜めポケットに向けて垂れさがる等して水に浸ってしまうことが防止される。
【0024】
発明にかかるスチームトレーにおいて、前記周板は、前記水溜めポケットおよび前記水路に臨むジグザグ状の周リブを有している構成を採用することができる。
【0025】
投入口に水を勢いよく注いだ場合、水路や水溜めポケットの板面を乗り越えて、天板に水があふれてしまう恐れがある。そうなると、天板に載置された食品が水に浸って風味が低下してしまう。
周板の水溜めポケットおよび水路に臨む位置に、ジグザグ状の周リブを設けることで、周板を補強するとともに、水が天板へとあふれずに水溜めポケットにきちんと収まるように、水の勢いを殺すことができる。
【発明の効果】
【0026】
発明にかかるスチームトレーを以上のように構成したので、トースター庫内の汚れを防止しつつ、食パン等の食品を水分や風味を損ねることなく簡単に調理することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】スチームトレーの使用状態を示す(a)は側面図、(b)は平面図
図2】スチームトレーの(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図
図3】(a)は図2(b)のA-A断面図、(b)は(a)のB-B断面図
図4】(a)は図2(b)のC-C断面図、(b)は図2(b)のD-D断面図
図5】スチームトレーの水の流れを示す要部拡大平面図
図6】他の例を示す(a)は要部縦断面図、(b)は要部平面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
実施形態のスチームトレー1は、図1のように、食品を載せた状態(図では、食品の例として食パンを2枚並列させた状態を示している)でトースターTの庫内に入れられて、焼網M上に載置のうえ、食品を加熱調理するために用いられる。
加熱調理された食品は水分が失われず風味が保持されており、また庫内のヒーターHや焼網M、くず受けDが食品からでるくずにより汚されることがなく、清潔が保たれる。
【0029】
図2から図5のように実施形態のスチームトレー1は、トレー本体10と、水の投入口20と、水路30と、水溜めポケット40とを備える。
【0030】
図2のように、トレー本体10は、全体が平面視で矩形をなしている。
トレー本体10の材質や製法は特に限定されないが、アルミニウム箔をプレス成形することにより製造することが例示できる。
トレー本体10は、平坦な底板11と、底板11の中央から盛り上がる天板12と、底板11の周縁から立ち上がる周板13と、を有する。
【0031】
図2のように、トレー本体10の天板12は、全体が平面視で矩形をなしており、そのほぼ平坦な面に食品を載置可能となっている。天板12と底板11の境界は、斜面状の内周板となっている。
天板12には、トレー本体10の短辺方向に並列し長辺方向に横断する複数の天リブ12aが形成されている。天リブ12aにより天板12は補強されるとともに、ここに載置した食品Fとの設置面積が減じられるため、食品Fが天板12にへばりつく事態が防止される。
隣接する天リブ12aの間は溝12bとなっている。この溝12bは後述する水溜めポケット40へと通じている。
また、天板12の四隅は天板の平面方向に膨出して支持部12cとなっている。これにより、天板12に載置した食品Fが安定的に支持される。
さらに、天板12の長辺の中程の近傍には、水を投入する場所を視覚的に示す投入標識12dが設けられている。図中では省略されているが、投入標識には「WATER」などの文字を付してもよい。
天板12の、短辺の中程および長辺の中程は、内側へとむけて窪んでいる。
【0032】
天板12の底板11からの高さは特に限定されないが、5mmから10mmであることが好ましい。
高さが5mmを下回ると、食品Fが水溜めポケット40などに収容された水に接触して濡れやすくなり、高さが10mmを上回ると、トレー本体10全体の高さ寸法が大きくなりすぎて、食品Fを載置した状態でトースターTの庫内に収めにくくなる。また、食品FとトースターT内の上部および下部にあるヒーターHとの距離がトースターTの焼網の位置から上方へ上がり過ぎるため、食品Fの上面が焦げやすくなったり食品Fの下面の加熱が不足したりする恐れがある。
また天板12の縦横寸法は特に限定されないが、一般的な大きさの食パンを2枚載置できるものとして、トレー本体10が一般的な寸法のトースターTの庫内に収納可能なものとして、110mm×200mm程度のものが例示できる。
【0033】
図2のように、トレー本体10の周板13は、全体として底板11から広がりつつ傾斜状に立ち上がっている。
周板13の上縁には、縁巻き13aが付属している。
また、周板13には、トレー本体10の短辺に沿って1つずつ、長辺に沿って2つずつ、計6つのギザギザ状の周リブ13bが形成されている。
縁巻き13aや周リブ13bにより、トレー本体10の強度や意匠性が向上している。トレー本体10の強度が向上することで、これにもちや唐揚げなどの比較的重量の大きな食品を問題なく載置することが可能となる。
【0034】
図2および図3のように、水の投入口20は、トレー本体10の両長辺の中程に、天板12と周板13との間において天板12から窪むようにして1つずつ設けられている。投入口20は、周板13と天板12から続く内周板の両斜面と底板11により区画されている。
投入口20は、天板12の投入標識12dに隣接しており、ここに水を投入することが一目でわかるようになっている。
図示のように、水の投入口20は、平面視において天板12に向けて凸の半円形状の形状をしている。このような曲線状の形状をしていることにより、内部の水が流動しやすくなっている。
【0035】
また、図2および図3のように、投入口20の内部には底板11が盛り上がることでガイド21が形成されている。このガイド21はトレー本体10の長辺の左右両端部に向けて下り勾配に傾斜している。
このガイド21の傾斜により、図3の鎖線矢印で示すように、投入口20に投入された水は、トレー本体10の長辺の左右両端部に向けて導かれるようになっている。
【0036】
ここで、ガイド21の高さは特に限定されないが、3mmから10mmであることが好ましく、4mmから8mmであることがより好ましい。
投入口20に投入する水の量は5ccから20cc程度を想定しているところ、ガイド21の高さが3mmを下回ると、全体が水に漬かってしまうなどして、水を左右に案内する効果が得られにくくなる。また、ガイド21の高さが10mmを上回ると、投入口20に投入した水が跳ね返ってトレー外に出てしまう恐れや逆側の食品Fに水が跳ねてしまう虞があり、またプレス成形する際には成形が難しくなる。
【0037】
図2および図4(a)のように、水路30は、一対の投入口20の左右からトレー本体10の長辺に沿ってそれぞれ延び、次いで屈曲して短辺に沿って延び、後述の水溜めポケット40において終端している。
水路30は、天板12と周板13との間において天板12から窪むようにして設けられており、周板13と天板12から続く内周板の両斜面と底板11により区画されている。
投入口20に投入された水は、ガイド21の作用などで水路30に流れ込むようになっている。
【0038】
水路30には、周板13のギザギザ状の周リブ13bが臨んでおり、水路30に勢いよく流れ込んだ水は、周リブ13bの作用で水勢が減じられるようになっている。
図4(a)のように、水路30の幅は投入口20の幅と比較してかなり狭くなっている。これにより、水路30に多量の水が滞留せず、水溜めポケット40へと十分な量の水が供給されることとなる。
【0039】
水路30の幅は特に限定されないが、1mmから10mmであることが好ましく、3から8mmであることがより好ましい。
水路30の幅が1mmを下回ると、水路30を区画する周板13と天板12から続く内周板の両斜面が接近しすぎて成形の際に割れ等が生じやすく成形面で問題があり、10mmを上回ると水が滞留しやすく水溜めポケット40へ十分な量の水を供給することが困難となる。
【0040】
図2および図4(b)のように、水溜めポケット40は、トレー本体10の両短辺の中程に1つずつ設けられている。
水溜めポケット40は、天板12と周板13との間において天板12から窪むようにして設けられており、周板13と天板12から続く内周板の両斜面と底板11により区画されている。
水溜めポケット40の底部はほぼ平坦となっている。
【0041】
図示のように、水溜めポケット40は、平面視において天板12に向けて凸の台形状の形状をしている。このような角ばった形状をしていることにより、内部の水が流動しにくくなっている。
水溜めポケット40は、水路30と接続されているため、水路30を流通する水は水溜めポケット40に流入することになる。
【0042】
水溜めポケット40には、周板13のギザギザ状の周リブ13bが臨んでおり、水路30から流れ込んだ水は、周リブ13bの作用で水勢が減じられ、内部に滞留しやすくなっている。
図4(b)のように、水溜めポケット40の幅は水路30の幅と比較してかなり広くなっている。これにより、水溜めポケット40に十分な量の水が保持できるようになっている。
水溜めポケット40には、天板12の溝12bが連通している。したがって、水溜めポケットから発生した蒸気は、天板12の溝12bにも入り込み、天板12に載置した食品Fの裏側にも回り込むようになっている。
水溜めポケット40は、左右に一対設けられているため、1つしかない場合と比較して蒸散効率が高いものとなっている。
【0043】
実施形態のスチームトレー1の構成は以上のようであり、図1のように、その天板12に食品Fを載置した状態で、スチームトレー1をトースターTの庫内に入れ、焼網M上に設置する。この状態で、図5のように、手前側に位置する投入口20に水Wを投入する。投入された水はガイド21の作用で水路30へと案内され、ついで水溜めポケット40へと流入する。
この状態でトースターTの蓋を閉じて、食品Fの加熱調理を開始すると、加温された水溜めポケット内の水は蒸発して庫内に充満する。このため、食品F内の水分は失われず、いわゆるしっとりとした状態が維持されて、風味豊かなおいしい焼き上がりとなる。
また、加熱調理の際に発生する食品Fのくずはスチームトレー1のトレー本体10に受け止められるため、トースターTの庫内が汚れることもない。
【実施例0044】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の内容を一層明確にする。
【0045】
トースターとして、アイリスオーヤマ社製、EOT-012-W、食品として、食パン(Pasco/超熟/6枚切り)および食パン(Pasco/超熟/4枚切り)を準備し、食品の加熱調理実験をおこなった。
【0046】
(実施例1から実施例4)
トースターの庫内に実施形態のスチームトレーを設置したうえで、その水溜めポケットに水を0cc(実施例1)、5cc(実施例2)、10cc(実施例3)、15cc(実施例4)をそれぞれ投入した。
スチームトレーの天板に食パンを1枚乗せ、1,000W/約2min(パン表面にきつね色の焼き目がつき、サーモスタットが起動する程度)で焼いた。その後食パンの重量変化を測定した。
【0047】
(比較例1)
トースターの庫内に他社陶器製スチーマー(ダイソー社製「オーブントースター用スチーム皿」)を設置したうえで、そのスチーマーに水を10cc投入した。
食パンを他社スチーマーの横に1枚設置し、実施例と同条件で焼き、その後食パンの重量変化を測定した。
(比較例2)
トースターの庫内に食パンだけを設置したうえで、実施例と同条件で焼き、その後食パンの重量変化を測定した。
【0048】
焼く前後の食パンの重量を測定し、重量変化率(%)を測定した。
なお、測定は各実施例および各比較例につき、5回ずつおこない、その平均値を算出した。
結果を次表1および2に示す。表1は食パンが6枚切り(130mm×120mm×20mm)の場合を、表2は食パンが4枚切り(130mm×120mm×30mm)の場合を示す。
表からわかるように、水溜めポケットに水を投入した実施例2から4について、比較例と比して、焼いた後の重量の減少が有意に抑えられていることが確認された。この結果は、実施例2から4について、食品内の水分が失われておらず、食品の口当たりや風味が損なわれていないことを意味すると解される。
また、水溜めポケットに水を投入していない実施例1についても、比較例に比して、若干ながら、焼いた後の重量の減少が抑えられていることが確認された。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
次に、6枚切りの食パンを用いた実施例1、実施例3および比較例2について、トースター下部に設置されたくず受けに落ちたパンくずの重量(g)を測定した。具体的には、食パンを焼く条件は前述の食パンの重量変化率の測定と同条件とし、実施例1、実施例3および比較例2それぞれで10回連続して食パンを焼いた後のパンくずの合計重量を測定した。
結果を次表3に示す。
次表から、実施例においては、トースターの庫内にパンくずがまったく落ちないのに対して、比較例2においては、庫内にパンくずが落ちて汚れることが確認された。
【0052】
【表3】
【0053】
今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものでない。
本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、その範囲内およびこれと均等の意味での、すべての修正と変更を含むものとする。
【0054】
たとえば、実施形態では、天板12の底板11からの高さを、周板13よりも低いものとしたが、これに限定されず、図6(a)のように、周板13とほぼ同じ高さとしてもよい。
また、実施形態では、水溜めポケット40を左右に一つずつ計2個としたが、数や位置はこれに限定されず、図6(b)のように、左右に二つずつ計4個としてもよいし、手前側に一つのみ設けてもよい。
水溜めポケット40が、スチームトレー1をトースターTの庫内に収納した状態で、水を直接注ぎやすいような位置に配置される場合には、投入口20や水路30は省略可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 スチームトレー
10 トレー本体
11 底板
12 天板
12a 天リブ
12b 溝
12c 支持部
12d 投入標識
13 周板
13a 縁巻き
13b 周リブ
20 投入口
21 ガイド
30 水路
40 水溜めポケット
T トースター
M 焼網
H ヒーター
D くず受け
F 食品
W 水
図1
図2
図3
図4
図5
図6