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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175384
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 5/48 20150101AFI20231205BHJP
   H01Q 5/371 20150101ALI20231205BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01Q5/48
H01Q5/371
H01Q1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087805
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000227043
【氏名又は名称】日精株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 勉
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA12
5J046AB07
5J046PA07
5J046UA02
(57)【要約】
【課題】小型化を維持した上で20dB以上のアイソレーションを実現することができるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置は、絶縁基板1の一面に同心円状に形成された半円弧状の第1の外側アンテナ素子2および第1の内側アンテナ素子3と、絶縁基板の他面に同心円状に形成された半円弧状の第2の外側アンテナ素子19および第2の内側アンテナ素子20と、絶縁基板の一面に形成されたアンテナ側結合部17と、絶縁基板の他面に結合部と180度反転する姿勢に形成された給電結合部18とを備えている。第1の外側アンテナ素子と第2の外側アンテナ素子は接続ライン4,10と第1スルーホール15を介してアンテナ側結合部に接合され、第1の内側アンテナ素子と第2の内側アンテナ素子は接続ライン5,11と第2スルーホール14を介してアンテナ側結合部に接合されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる周波数帯に対応する2つのダイポール方式円偏波アンテナが同一の絶縁基板に配置されるアンテナ装置であって、
前記絶縁基板の一面に同一の中心点を中心として異なる半径で半円弧状に形成された第1の外側アンテナ素子および第1の内側アンテナ素子と、
前記絶縁基板の他面に同一の中心点を中心として異なる半径で半円弧状に形成された第2の外側アンテナ素子および第2の内側アンテナ素子と、
前記絶縁基板の前記一面に形成され、前記絶縁基板に設けられたスルーホールを介して前記第1の外側アンテナ素子と前記第2の外側アンテナ素子を接続する第1接続ラインと、
前記絶縁基板の前記一面に形成され、前記絶縁基板に設けられたスルーホールを介して前記第1の内側アンテナ素子と前記第2の内側アンテナ素子を接続する第2接続ラインと、
前記第1接続ラインと前記第2接続ラインが結合するように前記絶縁基板の前記一面に形成された結合部と、
前記結合部に対向するように前記絶縁基板の前記他面に形成された給電結合部と、
を備え、
前記第1の外側アンテナ素子と前記第2の外側アンテナ素子は、平面視で円環状に連続するように同一円上に配置されており、
前記第1の内側アンテナ素子と前記第2の内側アンテナ素子は、平面視で円環状に連続するように同一円弧上に配置されている、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記結合部は、前記第1接続ラインが接続される第1結合素子と、前記第2接続ラインが接続される第2結合素子とを有し、前記第1結合素子と前記第2結合素子は、それぞれ一部が分断された楕円形状に形成されており、前記第2結合素子が前記第1結合素子の内側に間隔を隔てて配置されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第2の内側アンテナ素子に前記第1の内側アンテナ素子の一部と平面的に重なる重畳部が形成されており、前記第2結合素子の内側に分断部を有する楕円形状の第3結合素子が間隔を隔てて配置されていると共に、前記第3結合素子に接合する第3接続ラインが前記絶縁基板に設けられたスルーホールを介して前記重畳部に接続されている、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記給電結合部が前記結合部と平面視で180度反転する姿勢に配置されている、請求項3に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波数帯に対応する円偏波アンテナを備えたアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や無線LAN(Local Area Network)では、MIMO(Multi Input Multi Output)と呼ばれる通信方式により、同一周波数に対応するアンテナが1台の無線機に複数個接続されている。MIMOは送受信の双方を複数のアンテナで構成することで、高いスループットや高信頼性通信を実現する無線通信技術であるが、実際にシステムを設計する段階では、小型化が求められる端末にどのように複数のアンテナを実装するかが問題となる。
【0003】
この種のアンテナ装置の一例として、特許文献1には、第1の円弧状アンテナ素子と第2の円弧状アンテナ素子とを含んで円弧状アンテナ素子が構成され、第1の円弧状アンテナ素子及び第2の円弧状アンテナ素子は、それぞれ、円弧状アンテナ素子の外周部から内周部に向けて、3つの周波数帯に対応する一体アンテナ素子と、一体アンテナ素子と間隔を隔てて配置される1つの周波数帯に対応する単体アンテナ素子と、を有し、第1の円弧状アンテナ素子と第2の円弧状アンテナ素子とがそれぞれ接合される複数の接合器と、複数の接合器が結合される結合部と、を有する基板型アンテナが記載されている。
【0004】
特許文献1に記載されたアンテナ装置は、基板表面に第1の円弧状アンテナ素子である長寸円弧状アンテナ素子と第2の円弧状アンテナ素子である短寸円弧状アンテナ素子とが中心点を中心に同心円状に形成され、これら長寸円弧状アンテナ素子と短寸円弧状アンテナ素子は間隔を隔てて対向するように分割されている。長寸円弧状アンテナ素子と短寸円弧状アンテナ素子はそれぞれ、3つの周波数帯に対応する外側の一体アンテナ素子と、一体アンテナ素子の内側に間隔を隔てて配置された1つの周波数帯に対応する単体アンテナ素子とを有しており、基板表面の中央部には結合器が形成されている。結合器は互いに離間して配置された長円形状の4つの結合素子を有しており、これら結合素子はギャップを介して離間する分断部を有している。そして、長寸円弧状アンテナ素子と短寸円弧状アンテナ素子とが、各結合素子の分断部で個別の接続パターンを用いて接合されている。
【0005】
具体的には、最も外側の結合素子は、1本の接続パターンにより長寸円弧状アンテナ素子の単体アンテナ素子と短寸円弧状アンテナ素子の一体アンテナ素子と接合され、最も内側の結合素子は、別の接続パターンにより長寸円弧状アンテナ素子の一体アンテナ素子と短寸円弧状アンテナ素子の単体アンテナ素子と接合され、残り2つの結合素子は、別の接続パターンにより長寸円弧状アンテナ素子の一体アンテナ素子と短寸円弧状アンテナ素子の一体アンテナ素子と接合されている。このように、長寸円弧状アンテナ素子と短寸円弧状アンテナ素子とは、4本の接続パターンによって結合器の各結合素子と接合されることにより、全体としてダイポール方式の円偏波アンテナとして構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-54525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたアンテナ装置では、基板表面に長寸円弧状アンテナ素子と短寸円弧状アンテナ素子とが分割されて同心円状に対向配置されており、これら長寸円弧状アンテナ素子と短寸円弧状アンテナ素子との合計の長さを調整することにより、アンテナの軸比((AR:Axial Ratio)を円偏波として必要な3dB以下(のアンテナ間アイソレーション15dB以下)に調整することができる。しかしながら、長寸円弧状アンテナ素子の内側の単体アンテナ素子と短寸円弧状アンテナ素子の外側の一体アンテナ素子とを接続パターンで接合した円偏波アンテナと、短寸円弧状アンテナ素子の内側の単体アンテナ素子と長寸円弧状アンテナ素子の外側の一体アンテナ素子とを別の接続パターンで接合した円偏波アンテナとを組み合わせたアンテナ構造であるため、5G携帯電話端末やWi-Fi6(IEEE802.11ax)等で求められているアンテナ間のアイソレーション20dB以上を実現することは困難であった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化を維持した上で20dB以上のアイソレーションを実現することができるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の一形態は、異なる周波数帯に対応する2つのダイポール方式円偏波アンテナが同一の絶縁基板に配置されるアンテナ装置であって、前記絶縁基板の一面に同一の中心点を中心として異なる半径で半円弧状に形成された第1の外側アンテナ素子および第1の内側アンテナ素子と、前記絶縁基板の他面に同一の中心点を中心として異なる半径で半円弧状に形成された第2の外側アンテナ素子および第2の内側アンテナ素子と、前記絶縁基板の前記一面に形成され、前記絶縁基板に設けられたスルーホールを介して前記第1の外側アンテナ素子と前記第2の外側アンテナ素子を接続する第1接続ラインと、前記絶縁基板の前記一面に形成され、前記絶縁基板に設けられたスルーホールを介して前記第1の内側アンテナ素子と前記第2の内側アンテナ素子を接続する第2接続ラインと、前記第1接続ラインと前記第2接続ラインが結合するように前記絶縁基板の前記一面に形成された結合部と、前記結合部に対向するように前記絶縁基板の前記他面に形成された給電結合部と、を備え、前記第1の外側アンテナ素子と前記第2の外側アンテナ素子は、平面視で円環状に連続するように同一円弧上に配置されており、前記第1の内側アンテナ素子と前記第2の内側アンテナ素子は、平面視で円環状に連続するように同一円上に配置されている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアンテナ装置によれば、小型化を維持した上で20dB以上のアイソレーションを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るアンテナ装置のアンテナパターンを示す平面図である。
図2】実施形態に係るアンテナ装置のアンテナパターンを示す裏面図である。
図3図1図2に示すアンテナパターン絶縁基板の上方から見た透視図である。
図4】実施形態に係るアンテナ装置が右旋円偏波アンテナとして動作する場合の説明図である。
図5】実施形態に係るアンテナ装置が左旋円偏波アンテナとして動作する場合の説明図である。
図6図4図5に示す2つのアンテナ装置を近接配置した状態を示す説明図である。
図7図6に示す2つのアンテナの定在波比(VSWR値)を示すグラフである。
図8図6に示す2つのアンテナ間のアイソレーションを示すグラフである。
図9図6に示す2つのアンテナの2.4GHz帯と5GHz帯における利得の最大値と平均値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態に係るアンテナ装置は、Wi-Fi6の2.4GHz帯(2400~2484MHz)、5GHz帯(5150~5250MHz、5250~5350MHz、5470~5725MHz)のMIMOアンテナに対応するアンテナ装置である。
【0014】
図1は本実施形態に係るアンテナ装置のアンテナパターンを示す平面図、図2は該アンテナ装置のアンテナパターンを示す裏面図、図3図1図2に示すアンテナパターンを絶縁基板の上方から見た透視図である。これら図1~3に示すアンテナ装置は、複数のアンテナ素子の最小構成である2つの円弧状アンテナ素子が、絶縁基板の表面と裏面に配置されたWi-Fi6用のダイポール方式円偏波アンテナである。
【0015】
図1に示すように、絶縁基板1の表面1Aには、第1の外側アンテナ素子2と、第1の内側アンテナ素子3と、アンテナ側結合部17とが形成されている。絶縁基板1は、ガラスエポキシ樹脂等の誘電材料から板状体であり、本実施形態では、誘電率4.3のFR-4基板(板厚0.3mm)を用いている。
【0016】
第1の外側アンテナ素子2と第1の内側アンテナ素子3は、同一の中心点Oを中心として異なる半径で半円弧状に形成されている。第1の内側アンテナ素子3は第1の外側アンテナ素子2の内方に間隔を隔てて配置されており、第1の外側アンテナ素子2の円弧長は第1の内側アンテナ素子3の円弧長に比べて十分に長く設定されている。
【0017】
アンテナ側結合部17は中心点Oを囲むように配置された3本の結合素子7,8,9を有しており、これら各結合素子7,8,9は互いに離間して楕円形状に形成されている。3本の結合素子を外側から順に第1結合素子7、第2結合素子8、第3結合素子9とすると、第1乃至第3結合素子7,8,9はそれぞれ一部が分断されてギャップ13を有している。
【0018】
第1の外側アンテナ素子2は、第1接続ライン4を経由して第1結合素子7に接続され、さらに別の第1接続ライン10を経由して第1スルーホール15に接続されている。第1の内側アンテナ素子3は、第2接続ライン5を経由して第2結合素子8に接続され、さらに別の第2接続ライン11を経由して第2スルーホール14に接続されている。第3結合素子9には一対の第3接続ライン6,12が接続されており、これら第3接続ライン6,12は第1の外側アンテナ素子2と第1の内側アンテナ素子3に接続されていないが、一方の第3接続ライン12は第3スルーホール16に接続されている。なお、第1乃至第3スルーホール14,15,16は、絶縁基板1に穿設した貫通孔にメッキ処理を施すことによって形成されている。
【0019】
図2に示すように、絶縁基板1の裏面1Bには、第2の外側アンテナ素子19と、第2の内側アンテナ素子20と、給電結合部18とが形成されている。第2の外側アンテナ素子19と第2の内側アンテナ素子20は、同一の中心点Oを中心として異なる半径で半円弧状に形成されている。
【0020】
第2の外側アンテナ素子19は、絶縁基板1の表面1Aに形成された第1の外側アンテナ素子2と同じ半径の円弧上に配置されている。これら第1の外側アンテナ素子2と第2の外側アンテナ素子19は平面視で真円状となっており、第1スルーホール15が第2の外側アンテナ素子19の端部に接続されている。
【0021】
第2の内側アンテナ素子20は第2の外側アンテナ素子19の内方に間隔を隔てて配置されており、第2の内側アンテナ素子20の円弧長は第2の外側アンテナ素子19の円弧長に比べて十分に長く設定されている。第2の内側アンテナ素子20は、絶縁基板1の表面1Aに形成された第1の内側アンテナ素子3と同じ半径の円弧上に配置されている。これら第1の内側アンテナ素子3と第2の内側アンテナ素子20は平面視で真円状となってとなっており、第2スルーホール14と第3スルーホール16が第2の内側アンテナ素子20の端部側に接続されている。
【0022】
給電結合部18は、中心点Oを囲むように配置された外側給電結合素子21と内側給電結合素子22とを有しており、これら外側給電結合素子21と内側給電結合素子22は、互いに離間して楕円形状に形成されている。外側給電結合素子21と内側給電結合素子22はそれぞれ分断されたギャップ24を有しており、給電結合部18は絶縁基板1の表面1Aに形成されたアンテナ側結合部17と平面視で180度反転する姿勢に配置されている。すなわち、外側給電結合素子21と第1結合素子7が互いに反転した姿勢で重なっており、内側給電結合素子22と第3結合素子9が互いに反転した姿勢で重なっている。また、各給電結合素子21,22のギャップ24を挟んで分断された両端部にそれぞれ給電点25,26が形成されており、後述するように、これら給電点25,26に対して信号ケーブル(同軸ケーブル)の中心導体と外部導体が選択的に接続されるようになっている。
【0023】
図3に示すように、絶縁基板1の表面1Aと裏面1Bに形成されたアンテナパターンを上方から透視して平面的に見たとき、第1の外側アンテナ素子2と第2の外側アンテナ素子19は真円状に配置されている。本実施形態の場合、第1の外側アンテナ素子2と第2の外側アンテナ素子19の円弧上を位相が360度回転するよう長さを調整し、2.4GHz帯の周波数に対応する長さに調整されている。そして、第1の外側アンテナ素子2の一端が第1接続ライン4を経由して第1結合素子7に接続され、さらに第1接続ライン10と第1スルーホール15を経由して第2の外側アンテナ素子19の一端に接続されることにより、2.4GHz帯に対応する第1のダイポール方式円偏波アンテナが構成されている。
【0024】
同様に、第1の内側アンテナ素子3と第2の内側アンテナ素子20も真円状に配置されている。第2の内側アンテナ素子20は、第1の内側アンテナ素子3の一部と平面的に重なる重畳部20aを有しており、この重畳部20aによって第1の内側アンテナ素子3と第2の内側アンテナ素子20の合計の長さが延長されている。本実施形態の場合、第1の内側アンテナ素子3の円弧長と重畳部20aを含む第2の内側アンテナ素子20の円弧上を位相が360度回転するよう長さを調整し、5GHz帯の周波数に対応する長さに調整されている。そして、第1の内側アンテナ素子3の一端が第2接続ライン5を経由して第2結合素子8に接続され、さらに第2接続ライン11と第2スルーホール14を経由して第2の内側アンテナ素子20の一端部近傍に接続されることにより、5GHz帯に対応する第2のダイポール方式円偏波アンテナが構成されている。
【0025】
さらに、第3接続ライン6が第3結合素子9に接続されると共に、第3結合素子9に接続する第3接続ライン12から第3スルーホール16を経由して第2の内側アンテナ素子20の重畳部20aに接続されているため、第2のダイポール方式円偏波アンテナの広帯域化が図られている。
【0026】
また、絶縁基板1の表裏両面にアンテナ側結合部17と給電結合部18が平面視で180度反転する姿勢に対向配置されているため、アンテナ側結合部17と給電結合部18が静電容量結合され、第1のダイポール方式円偏波アンテナと第2のダイポール方式円偏波アンテナが受信した各周波数体の電波による利得が給電結合部18上に生じる。そして、給電結合部18の2つの給電点25,26に信号ケーブルを接続することにより、第1と第2のダイポール方式円偏波アンテナの利得が合成されるのと同時に、インピーダンスが50Ωにマッチングされて信号ケーブルから合成利得が得られる。その際、給電結合部18の2つの給電点25,26に対する信号ケーブルの中心導体と外部導体の接続形態を変えることにより、第1および第2のダイポール方式円偏波アンテナを右旋円偏波アンテナとしても左旋円偏波アンテナとしても動作させることができる。
【0027】
すなわち、図4に示すように、信号ケーブル(同軸ケーブル)29の中心導体を図示左側の給電点25に接続すると共に、GND線となる外部導体を図示右側の給電点26に接続した場合、信号ケーブル29からは右旋円偏波アンテナの利得が得られる。これとは逆に、図5に示すように、信号ケーブル29の外部導体(GND線)を図示左側の給電点25に接続すると共に、中心導体を図示右側の給電点26に接続した場合、信号ケーブル29からは左旋円偏波アンテナの利得が得られる。
【0028】
次に、本実施形態に係るアンテナ装置の作用について、図6図9に基づいて説明する。
【0029】
図6は、図4に示す右旋円偏波アンテナW1と図5に示す左旋円偏波アンテナW2を絶縁基板30に近接配置した状態を示す説明図である。図6に示すように、右旋円偏波アンテナW1と左旋円偏波アンテナW2は両方共に寸法を34×34mmとし、それぞれのアンテナパターン間の距離を6mm(3×2mm)として絶縁基板30に近接配置する。
【0030】
図7は、図6に示す絶縁基板30の表面を板厚2mmのポリカーボネイト樹脂からなるケース蓋の裏側に貼り付けた場合における2つのアンテナW1とW2の定在波比(VSWR値)を示すグラフであり、横軸は周波数、縦軸はVSWR値である。図7に示すように、2つのアンテナW1とW2が図6に示すような寸法で配置されている場合、2.4GHz帯と5GHz帯のVSWR値をいずれも2以下とすることができる。
【0031】
図8は、2つのアンテナW1とW2間のアイソレーションを示すグラフである。図8に示すように、2つのアンテナW1とW2が図6に示すような寸法で配置されている場合、2.4GHz帯と5GHz帯のアイソレーションをいずれも20dB以上とすることができる。
【0032】
図9は、2つのアンテナW1とW2の2.4GHz帯と5GHz帯における利得の最大値と平均値を示すグラフであり、横軸が周波数、縦軸は円偏波における利得である。図9に示すように、2つのアンテナW1とW2が図6に示すような寸法で配置されている場合、2.4GHz帯と5GHz帯における各利得に大きなバラツキがなく、全体として安定した利得の確保ができていることがわかる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係るアンテナ装置は、2.4GHz帯の周波数に対応する第1の外側アンテナ素子2と第2の外側アンテナ素子19が絶縁基板1の表裏両面に振り分けて形成されていると共に、5GHz帯の周波数に対応する第1の内側アンテナ素子3と第2の内側アンテナ素子20が絶縁基板1の表裏両面に振り分けて形成され、これら対をなす2組のアンテナ素子が同一の中心点Oを中心に同心円状に配置されている。そして、第1の外側アンテナ素子2と第2の外側アンテナ素子19が接続ライン4,10と第1スルーホール15を介してアンテナ側結合部17に接合され、第1の内側アンテナ素子3と第2の内側アンテナ素子20が別の接続ライン5,11と第2スルーホール14を介してアンテナ側結合部17に接合されており、各接続ライン4,5,6,10,11,12を互いに交差することなく絶縁基板1上に引き回すことにより、位相差なく真円に近いアンテナ素子を持つ2つのダイポール方式円偏波アンテナが構成されている。
【0034】
また、絶縁基板1の表裏両面にアンテナ側結合部17と給電結合部18が平面視で180度反転する姿勢に対向配置されているため、アンテナ側結合部17と給電結合部18が静電容量結合されることで、第1の円偏波アンテナと第2の円偏波アンテナの利得が給電結合部18上に生じる。そして、給電結合部18の2つの給電点25,26に信号ケーブル29を接続することにより、第1と第2の円偏波アンテナの利得が合成されるのと同時に、インピーダンスが50Ωにマッチングされて信号ケーブル29から合成利得が得られる。その際、給電結合部18の2つの給電点25,26に対する信号ケーブル29の中心導体と外部導体の接続形態を変えることにより、第1および第2の円偏波アンテナを右旋円偏波アンテナとしても左旋円偏波アンテナとしても動作させることができる。
【0035】
さらに、第2の内側アンテナ素子20が第1の内側アンテナ素子3の一部と平面的に重なる重畳部20aを有していると共に、アンテナ側結合部17にギャップ13を有する楕円形状の第3結合素子9が形成されており、この第3結合素子9が第3接続ライン12から第3スルーホール16を経由して重畳部20aに接続されている。このため、第1の内側アンテナ素子3と第2の内側アンテナ素子20の円弧長を調整可能な範囲が広がり、第1の内側アンテナ素子3と第2の内側アンテナ素子によって構成される円偏波アンテナの広帯域化を実現することができる。
【0036】
このように本実施形態に係るアンテナ装置は、ダイポール方式の二分の一波長のアンテナであって、円弧状アンテナ素子の円弧の径を対応する周波数の円偏波位相が360度回転できる長さに調整可能となっている。そして、円弧状アンテナ素子が短い場合には、一方の半円弧状アンテナ素子を絶縁基板の表面側に配置すると共に、もう一方の半円弧状アンテナ素子を絶縁基板の裏面側に配置し、これら半円弧状アンテナ素子間を接続ラインとスルーホールを用いて接続することにより、左右の半円弧状アンテナ素子が互いに接触することなく長さ調整可能となり、アンテナの小型化も実現することができる。
【0037】
また、給電結合部の給電点に接続した信号ケーブルから得られる利得が右旋円偏波アンテナの時に、給電点に対する信号ケーブルの接続を逆にすると、同じアンテナパターンを用いて左旋円偏波アンテナになる。そして、右旋円偏波アンテナの円弧状アンテナ素子(対をなす2つの半円弧状アンテナ素子)を真円に近い形状にすることにより軸比(AR)が2dB以下となり、同様に、左旋円偏波アンテナの軸比も2dB以下となる。また、右旋円偏波と左旋円偏波のアイソレーションの関係は、交差偏波識別度(XPD:Cross Polarization Discrimination)からAR=2dBのときに20dB、AR=1dBのときに25dBとなる。したがって、このようにして作成した右旋円偏波アンテナと左旋円偏波アンテナを最小面積で近接して並設しても、二つの複数アンテナ素子からなる円偏波アンテナは、共に軸比が2dB以下に制御されると、アンテナ間のアイソレーションは20dB以上になる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0039】
例えば、上記実施形態では、給電結合部18が外側給電結合素子21と内側給電結合素子22を有する2本の素子で構成されている場合について説明したが、外側給電結合素子21と内側給電結合素子22を一体化した1本の素子で構成しても良く、あるいは、アンテナ側結合部17の3本の結合素子7,8,9に対応する3本の素子で構成しても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 絶縁基板
2 第1の外側アンテナ素子
3 第1の内側アンテナ素子
4,10 第1接続ライン
5,11 第2接続ライン
6,12 第3接続ライン
7 第1結合素子
8 第2結合素子
9 第3結合素子
13 ギャップ
14 第2スルーホール
15 第1スルーホール
16 第3スルーホール
17 アンテナ側結合部
18 給電結合部
19 第2の外側アンテナ素子
20 第2の内側アンテナ素子
20a 重畳部
21 外側給電結合素子
22 内側給電結合素子
24 ギャップ
25,26 給電点
29 信号ケーブル
W1 右旋円偏波アンテナ
W2 左旋円偏波アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9