IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社テクノアクセルネットワークスの特許一覧 ▶ 株式会社サイバー創研の特許一覧

<>
  • 特開-植物生育監視方法 図1
  • 特開-植物生育監視方法 図2
  • 特開-植物生育監視方法 図3
  • 特開-植物生育監視方法 図4
  • 特開-植物生育監視方法 図5
  • 特開-植物生育監視方法 図6
  • 特開-植物生育監視方法 図7
  • 特開-植物生育監視方法 図8
  • 特開-植物生育監視方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175385
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】植物生育監視方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20231205BHJP
   G06Q 50/02 20120101ALI20231205BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087806
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】516227490
【氏名又は名称】株式会社テクノアクセルネットワークス
(71)【出願人】
【識別番号】501326067
【氏名又は名称】株式会社サイバー創研
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(74)【代理人】
【識別番号】100208708
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100215371
【弁理士】
【氏名又は名称】古茂田 道夫
(74)【代理人】
【識別番号】100187997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 厳輝
(72)【発明者】
【氏名】山内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】有本 和民
(72)【発明者】
【氏名】木下 研作
(72)【発明者】
【氏名】吉川 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】劉 微
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】個々の植物単位の収穫時期及び生育状況を高い精度で推定可能であり、かつデータ処理量が低減された植物生育監視方法の提供。
【解決手段】植物生育監視方法は、カメラを有する無人航空機を用いた植物生育監視方法であって、監視対象である圃場の植物の植え付けマップと、n種(n≧1の整数)の生育パラメータ及びそれらの時間変化を含む上記植物の汎用生育予測情報とを用い、上記無人航空機からの空撮により上記植え付けマップ中の植物の個体情報を取得する第1取得工程と、上記第1取得工程から一定期間経過後に、上記無人航空機からの空撮により上記植え付けマップ中の植物の個体情報を取得する第2取得工程と、上記第1取得工程及び上記第2取得工程で得られた個体情報から上記汎用生育予測情報との差分を特徴量として抽出する特徴量抽出工程と、上記特徴量から各個体の収穫時期及び生育状況を推定する推定工程とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを有する無人航空機を用いた植物生育監視方法であって、
監視対象である圃場の植物の植え付けマップと、n種(n≧1の整数)の生育パラメータ及びそれらの時間変化を含む上記植物の汎用生育予測情報とを用い、
上記無人航空機からの空撮により上記植え付けマップ中の植物の個体情報を取得する第1取得工程と、
上記第1取得工程から一定期間経過後に、上記無人航空機からの空撮により上記植え付けマップ中の植物の個体情報を取得する第2取得工程と、
上記第1取得工程及び上記第2取得工程で得られた個体情報から上記汎用生育予測情報との差分を特徴量として抽出する特徴量抽出工程と、
上記特徴量から各個体の収穫時期及び生育状況を推定する推定工程と
を備える植物生育監視方法。
【請求項2】
上記汎用生育予測情報が、n次元の相関直線で表されており、
上記特徴量が、上記相関直線に対する法線ベクトルで表現されている請求項1に記載の植物生育監視方法。
【請求項3】
上記第1取得工程、上記第2取得工程、上記特徴量抽出工程及び上記推定工程が、複数回繰り返され、
2回目以降の繰り返しにおける上記第1取得工程が、その直前の繰り返しにおける第2取得工程を兼ねている請求項1又は請求項2に記載の植物生育監視方法。
【請求項4】
上記圃場に、その土壌環境を制御する土壌環境制御設備が設けられており、
上記土壌環境制御設備が、近距離無線通信により動作し、上記土壌環境を制御する制御スイッチを有し、
上記無人航空機を、上記制御スイッチの直上へ誘導する誘導工程と、
直上へ誘導された上記無人航空機により、上記推定工程で推定される収穫時期及び生育状況をもとに上記制御スイッチを制御する土壌環境制御工程と
を備える請求項3に記載の植物生育監視方法。
【請求項5】
上記土壌環境制御設備が、上空から識別可能であり、上記無人航空機に上記制御スイッチの位置を伝達する表示装置を有し、
上記表示装置に表示され、上記位置を示すための第1画像要素が、コードが表示されない中空領域を含む2次元バーコードであり、
上記中空領域に上記第1画像要素と相似な第2画像要素が縮小表示される入れ子構造を有している請求項4に記載の植物生育監視方法。
【請求項6】
上記汎用生育予測情報が、気温又は雨量を含む環境パラメータを含む請求項3に記載の植物生育監視方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物生育監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜や果実等の農作物としての植物は、生育すると収穫され出荷される。植物の生長は、種々の自然の要素に左右されるため、日により出荷量は変動し、出荷量が不足する日、過剰となる日が生じ易く、安定供給が難しい場合がある。
【0003】
この農作物の供給を安定化するため、収穫時期や収穫量を予測する試みがなされている(例えば特開2021-179983号公報参照)。この予測方法では、予測対象の野菜が、栽培期間に含まれる複数のステージのいずれに属しているかを判定し、判定したステージに基づいて、気温と日射量とから予測対象の野菜の生育状態を予測するモデルのパラメータを決定し、決定したパラメータが設定されたモデルを用いて、予測対象の野菜の生育状態を予測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-179983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の予想方法は、圃場全体の収穫時期を予測するものであるが、植物の生育には、気温や日射量のほか、植物自体の個体差、個々の植物の置かれた環境の違い等の影響もあり、必ずしも圃場の全ての植物が一斉に収穫時期となるわけではない。一方、個々の植物の置かれた状況に応じて予測モデルを構築することは、データ処理量の観点で現実的ではない。
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、個々の植物単位の収穫時期及び生育状況を高い精度で推定可能であり、かつデータ処理量が低減された植物生育監視方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る植物生育監視方法は、カメラを有する無人航空機を用いた植物生育監視方法であって、監視対象である圃場の植物の植え付けマップと、n種(n≧1の整数)の生育パラメータ及びそれらの時間変化を含む上記植物の汎用生育予測情報とを用い、上記無人航空機からの空撮により上記植え付けマップ中の植物の個体情報を取得する第1取得工程と、上記第1取得工程から一定期間経過後に、上記無人航空機からの空撮により上記植え付けマップ中の植物の個体情報を取得する第2取得工程と、上記第1取得工程及び上記第2取得工程で得られた個体情報から上記汎用生育予測情報との差分を特徴量として抽出する特徴量抽出工程と、上記特徴量から各個体の収穫時期及び生育状況を推定する推定工程とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の植物生育監視方法は、個々の植物単位の収穫時期及び生育状況を高い精度で推定可能であり、かつデータ処理量が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る植物生育監視方法を示すフロー図である。
図2図2は、図1の植物生育監視方法で用いられる無人航空機及び監視対象とする圃場の例を示す模式図である。
図3図3は、図1の植物生育監視方法で用いられる植え付けマップの一例を示すイメージ図である。
図4図4は、図1の植物生育監視方法で用いられる汎用生育予測情報の一例を示すイメージ図である。
図5図5は、図4のt=t2における個体情報の例を示すイメージ図である。
図6図6は、花と葉の相関-時間2次元空間への写像を示すイメージ図である。
図7図7は、図2の表示装置に表示される画像の一例を示す模式図である。
図8図8は、図7の第1画像要素を示す模式図である。
図9図9は、図7の第2画像要素を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本発明の一実施形態に係る植物生育監視方法は、カメラを有する無人航空機を用いた植物生育監視方法であって、監視対象である圃場の植物の植え付けマップと、n種(n≧1の整数)の生育パラメータ及びそれらの時間変化を含む上記植物の汎用生育予測情報とを用い、上記無人航空機からの空撮により上記植え付けマップ中の植物の個体情報を取得する第1取得工程と、上記第1取得工程から一定期間経過後に、上記無人航空機からの空撮により上記植え付けマップ中の植物の個体情報を取得する第2取得工程と、上記第1取得工程及び上記第2取得工程で得られた個体情報から上記汎用生育予測情報との差分を特徴量として抽出する特徴量抽出工程と、上記特徴量から各個体の収穫時期及び生育状況を推定する推定工程とを備える。
【0012】
当該植物生育監視方法では、無人航空機により空撮を行うことで、容易に個々の植物の個体情報を収集することができる。また、当該植物生育監視方法では、一定期間経過後の植物の個体情報をn種の生育パラメータで表現し、その時間変化の差分を特徴量として抽出する。この場合、収穫時期及び生育状況の推定精度を高めるべく生育パラメータの数を増やしたとしても、抽出される特徴量のデータはパラメータ数に比例して大きくなるのみであるので、データ処理用の増加が抑止できる。従って、当該植物生育監視方法は、個々の植物単位の収穫時期及び生育状況を高い精度で推定可能であり、かつデータ処理量が少ない。
【0013】
上記汎用生育予測情報が、n次元の相関直線で表されており、上記特徴量が、上記相関直線に対する法線ベクトルで表現されているとよい。このように上記汎用生育予測情報をn次元の相関直線で表し、上記特徴量を、上記相関直線に対する法線ベクトルで表現することで、特徴量の抽出処理が軽減され、収穫時期及び生育状況が推定し易くなる。
【0014】
上記第1取得工程、上記第2取得工程、上記特徴量抽出工程及び上記推定工程が、複数回繰り返され、2回目以降の繰り返しにおける上記第1取得工程が、その直前の繰り返しにおける第2取得工程を兼ねているとよい。このように繰り返し処理を行うことで、効率的かつ逐次的に収穫時期及び生育状況を推定することができる。
【0015】
上記圃場に、その土壌環境を制御する土壌環境制御設備が設けられており、上記土壌環境制御設備が、近距離無線通信により動作し、上記土壌環境を制御する制御スイッチを有し、上記無人航空機を、上記制御スイッチの直上へ誘導する誘導工程と、直上へ誘導された上記無人航空機により、上記推定工程で推定される収穫時期及び生育状況をもとに上記制御スイッチを制御する土壌環境制御工程とを備えるとよい。このように土壌環境制御工程を備えることで、個々の植物の収穫時期及び生育状況を調整することができる。
【0016】
上記土壌環境制御設備が、上空から識別可能であり、上記無人航空機に上記制御スイッチの位置を伝達する表示装置を有し、上記表示装置に表示され、上記位置を示すための第1画像要素が、コードが表示されない中空領域を含む2次元バーコードであり、上記中空領域に上記第1画像要素と相似な第2画像要素が縮小表示される入れ子構造を有しているとよい。このような入れ子構造を有する2次元バーコードを用いることで、上記無人航空機を上記制御スイッチの直上に正確に誘導することができる。従って、近距離無線通信により確実に制御スイッチを制御できる。
【0017】
上記汎用生育予測情報が、気温又は雨量を含む環境パラメータを含むとよい。このように上記汎用生育予測情報に気温又は雨量を含む環境パラメータを含めることで、収穫時期及び生育状況の推定精度を高められる。
【0018】
ここで、「無人航空機」とは、人が搭乗せず、無線による遠隔操縦又は搭載コンピュータにあらかじめプログラムされたパターンで自律飛行をする航空機の総称であり、典型的には自律航法装置を備えた小型のマルチロータヘリコプタ(ドローン)を指す。「上空」とは、地上の基準点から天頂となす角度が45度以内かつ基準点からの相対高度が5m以内の範囲を指すものとする。
【0019】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る植物生育監視方法について、適宜図面を参照しつつ詳説する。
【0020】
図1に示す植物生育監視方法は、図2に示すように、無人航空機1を用いた圃場2の植物生育監視方法であり、第1取得工程S1と、第2取得工程S2と、特徴量抽出工程S3と、推定工程S4と、誘導工程S5と、土壌環境制御工程S6とを備える。
【0021】
無人航空機1は、カメラ11を有し、圃場2を空撮可能なものである。また、無人航空機1は、後述する土壌環境制御設備21の制御スイッチを制御するための近距離無線通信システムを有している。
【0022】
圃場2には、監視対象の植物20が植えられている。植物20は通常複数であり、例えば100以上1000以下である。植物20としては、市場に出回る果実や野菜が挙げられる。当該植物生育監視方法は、特に出荷時期により値段が大きく左右される高付加価値の果実や野菜の生育に用いることが好ましい。このような果実や野菜としては、温室栽培されているイチゴ等の果実、マンゴー等の高級果実、露地栽培されているほうれん草等の野菜を揚げることができる。
【0023】
また、圃場2には、その土壌環境を制御する土壌環境制御設備21が設けられている。土壌環境制御設備21としては、例えば図2に示すように、土壌の温度を制御する埋め込みヒータ21a、液体肥料等の肥料を供給する追肥装置21b、水を供給する灌水装置21cなどを挙げることができる。
【0024】
埋め込みヒータ21a、追肥装置21b及び灌水装置21cは、それぞれ複数設けられており、各装置は、圃場2の一部の区画の土壌環境を管轄し、設備全体で圃場2全体を制御するように構成されている。より具体的には、埋め込みヒータ21aは、例えば土壌の温度が所定の温度未満となった場合に、所定の温度が保たれるよう土壌を加熱する制御をする。追肥装置21bは、所定の時間間隔で土壌に追肥するようにプログラムされている。灌水装置21cは、所定の時間間隔で土壌に水分を補給するようにプログラムされている。なお、装置や制御は一例であって、土壌環境制御設備21が上記構成に限定されることを意味するものではない。
【0025】
土壌環境制御設備21(埋め込みヒータ21a、追肥装置21b及び灌水装置21cそれぞれ)は、近距離無線通信により動作し、上記土壌環境を制御する制御スイッチを有している。具体的には、埋め込みヒータ21aでは、上記制御スイッチにより、上記所定の温度を変更することができるように構成されており、追肥装置21b及び灌水装置21cでは、上記所定の時間間隔を変更することができるように構成されている。
【0026】
当該植物生育監視方法では、図3に示すような、監視対象である圃場2の植物20の植え付けマップ3と、図4に示すような、n種(n≧1の整数)の生育パラメータ及びそれらの時間変化を含む上記植物の汎用生育予測情報4とを用いる。
【0027】
具体的には、植え付けマップ3には、植え付けマップ3上での圃場2Mにおいて、植物20Mが植え付けられている位置がプロットされている。無人航空機1から空撮された写真と照合することで、監視対象である植物20を特定することができる。当該植物生育監視方法では、時間をおいて圃場2を観察するが、生育状況の把握は、以前に観察した植物20と同じ植物20との比較で行う必要がある。この際、例えば病変で除去された植物20があった場合、雑草等他の植物が新たに存在する場合等、前回の観察とは異なる状況となっているため、以前の観察結果と対応付けできない場合がある。また、圃場2に植物20の位置を示すマークを植物20の近傍に置く方法も考えられるが、植物20の生長にしたがってマークが植物20に覆われ、上空から視認できなくなるおそれがある。これに対し、植え付けマップ3を利用することで、監視対象である植物20を確実に特定することができる。
【0028】
この植え付けマップ3は、例えば植え付け時に作成される。植え付けマップ3は、人手により作成してもよいし、植え付け時に無人航空機1から空撮された写真をもとに、例えば機械学習された予測モデル(いわゆるAI。以降単に「AI」ともいう)を用いて監視対象となる植物20を抽出して、植え付けマップ3を作成してもよい。
【0029】
生育パラメータは、植物20の生育状況の判断に必要なパラメータであり、例えば植物20の背丈、広がり、葉や花のサイズ、数、密度、色の濃淡、実の形や色など多次元にわたる。ここでは、説明のし易さから、花のサイズ(図4のx軸)と葉のサイズ(図4のy軸)との2次元量(n=2)を例にとり説明するが、実際には、nは、予測精度と処理量との関係から、例えば5以上15以下とされる。
【0030】
図4に示すように、汎用生育予測情報4は、n次元の相関直線Lで表されているとよい。植物20の生長において、例えば植え付けから第4週の花のサイズ及び葉のサイズには標準的な大きさが存在する。相関直線Lは、ある時刻tにおける標準的な花のサイズx及び葉のサイズyをプロットした直線を表す。なお、現実の花のサイズや葉のサイズが時間tに対して線形に変化するとは限らないが、その場合でも、適切に座標変換することで、線形化できるので、汎用生育予測情報4を相関直線Lで表すことが可能である。以下は、説明の簡便のため、現実の花のサイズや葉のサイズが時間tに対して線形に変化するものとして説明を続けるが、汎用性を失うものではない。
【0031】
相関直線Lは原点を通る。例えば苗で植え付けがなされる場合、植え付け時点ですでに葉のサイズが0ではないことがあるが、これは例えば植え付け時点の時間を正の適切な値にマッピングすることで不整合を回避できる。また、時間t0において収穫時期を迎え、そのときの花のサイズはx0、葉のサイズはy0となると考えられるから、相関直線Lは(t0、x0、y0)を通る。相関直線Lは、このように決定できる。
【0032】
汎用生育予測情報4は、気温又は雨量を含む環境パラメータを含むとよい。このように汎用生育予測情報4に気温又は雨量を含む環境パラメータを含めることで、収穫時期及び生育状況の推定精度を高められる。
【0033】
環境パラメータを含める場合は、汎用生育予測情報4は、一般的な植物20の生育に加えて、例えば圃場2の過去の記録等から環境パラメータに対する相関を抽出して作成される。この場合、環境パラメータに応じて複数の汎用生育予測情報4を準備し、現実に観測された環境パラメータから適切な汎用生育予測情報4を選択する方法を採用することができる。例えば雨量大、中、小の場合の3つの汎用生育予測情報4を準備しておき、実際の雨量の多寡によって3つの汎用生育予測情報4から1つの汎用生育予測情報4を選択する方法である。あるいは、環境パラメータに応じて時間tの変換係数αを算出し、時間軸tを変換する方法を採用してもよい。例えば雨量が少なく生長が遅くなることが見込まれる場合、α<1の係数を与え、実際の時間tに対して時間軸をαt(<t)で読み替える。例えばt=3/4とすると、実際の時間は4週目であるが、時間軸としてはαt=3週目となり、3週目のデータを参照することで生長が遅くなっていることを反映することができる。
【0034】
あるいは、環境パラメータをAIのバイアス入力として利用し、生育特性に回帰させる方法を採用することもできる。
【0035】
以下、当該植物生育監視方法の各工程について、順に説明する。
【0036】
<第1取得工程>
第1取得工程S1では、無人航空機1からの空撮により植え付けマップ3中の植物20の個体情報を取得する。
【0037】
具体的には、まず無人航空機1は、カメラ11により圃場2を空撮する。この空撮は、少なくとも個々の植物20が識別可能となる倍率で行われる。
【0038】
次に、空撮した画像は、植え付けマップ3と照合され、植え付けマップ3上の個々の植物20Mと、空撮された画像に写っている実際の植物20とが一対一で対応付けられる。
【0039】
この照合は、無人航空機1が通常備えている演算装置により行ってもよいし、無人航空機1が通常備えている通信設備により地上のサーバへ空撮画像を送信して、地上のサーバで行ってもよい。通常は、計算能力の高い地上のサーバを用いることが好ましい。一方、リアルタイムでデータ取得や解析をして、その場で異常個所等の再撮影を行うような場合には無人航空機1で処理を行う方が適している。
【0040】
地上のサーバで処理された場合は、その結果が無人航空機1へ送信されることとなる。以下、全ての演算処理において同様である。なお、少なくとも推定工程S4で推定される各個体の収穫時期及び生育状況の推定結果は、地上のサーバに保管されることになる。
【0041】
上述の照合は、例えばAIを利用して行うことができる。なお、圃場2が広い場合、個々の植物20が識別可能となる倍率で空撮を行うと、圃場2の一部の画像から判断することとなるため、植え付けマップ3との照合が困難となる場合がある。このような場合には、より低倍率で空撮した(個々の植物20が必ずしも識別できない)画像を併用して照合を行ってもよい。
【0042】
最後に、植え付けマップ3の各植物20Mに対応する画像から、植物20の個体情報を取得する。この個体情報は、n種の生育パラメータで表現される。この実施形態においては、花のサイズx及び葉のサイズyである。
【0043】
花のサイズx及び葉のサイズyは、画像中の個々の植物20について、特定の寸法あるいは面積等で代表してもよいし、植え付けから収穫までの進度を例えば10段階の刻みで表現するような形式であってもよい。特に後者の場合は、AIを活用して行うことができる。
【0044】
次工程である第2取得工程S2まで期間が空くため、無人航空機1はその間停止する。また、第2取得工程S2で同一の無人航空機1が空撮するとは限らないため、取得した植物20の個体情報は、地上のサーバに保管することが好ましい。
【0045】
なお、この個体情報の取得は、後述する推定工程S3と同時に行ってもよい。この場合は、例えば空撮された画像が地上のサーバに保管されることとなる。
【0046】
<第2取得工程>
第2取得工程S2では、第1取得工程S1から一定期間経過後に、無人航空機1からの空撮により植え付けマップ3中の植物の個体情報を取得する。
【0047】
個体情報の取得方法は、第1取得工程S1と同様である。
【0048】
上記一定期間は、植物20の生育期間(植え付けから収穫までの標準的な期間)によって適宜決定される。上記一定期間の下限としては、上記生育期間の1/30が好ましく、1/20がより好ましい。一方、上記一定期間の上限としては、上記育成期間の1/5が好ましく、1/10がより好ましい。上記一定期間が上記下限未満であると、第1取得工程S1で得られる個体情報と、第2取得工程S2で得られる個体情報との差が小さく、収穫時期及び生育状況の推定誤差が大きくなるおそれがある。逆に、上記一定期間が上記上限を超えると、後述する土壌環境制御工程S6でタイムリーな制御ができず、環境制御する効果が不十分となるおそれがある。なお、上記一定期間は、具体的には1週間以上4週間以下とされる。また、第1取得工程S1及び第2取得工程S2を繰り返し行う場合にあっては、上記一定期間は繰り返しごとに異なる期間であってもよい。
【0049】
<特徴量抽出工程>
特徴量抽出工程S3では、第1取得工程S1及び第2取得工程S2で得られた個体情報から上記汎用生育予測情報との差分を特徴量として抽出する。
【0050】
例えば植え付け時点を基準として、第1取得工程S1を行った時間をt1、第2取得工程S2を行った時間をt2とすると、ある1つの植物20について、t=t1における花のサイズx1、葉のサイズy1、t=t2における花のサイズx2、葉のサイズy2が個体情報として取得済みであるから、図4に示すように、プロット可能であり、これと上記汎用生育予測情報を示す相関直線Lとの差分から特徴量を抽出可能である。
【0051】
例えば図4においてt=t2の時間における(第2取得工程S2における)プロットをxy平面に投影すると、例えば図5のグラフが得られる。図5のグラフは、P11、P12、P13は個々の植物20のプロット3例を示している。相関直線Lも投影可能であり、xy平面上の相関直線Lxyとして表される。
【0052】
上記特徴量は、相関直線Lxyに対する法線ベクトルn11、n12、n13で表現されているとよい。このように上記特徴量を相関直線Lxyに対する法線ベクトルn11、n12、n13で表現することで、特徴量の抽出処理が軽減され、収穫時期及び生育状況が推定し易くなる。例えばプロットP11、P13では、法線ベクトルn11、n13が左上方向を向いているから、葉のサイズyが花のサイズxより大きく、その長さが大きさの差分の度合いを示す(長いほど葉のサイズyが花のサイズxに対して相対的に大きいことを示す)。プロットP12は、逆に葉のサイズyが花のサイズxより小さい。
【0053】
図6は、花と葉の相関-時間の2次元空間へ写像したグラフを示す。この写像には多次元尺度構成法(MDS)を用いることができる。具体的には、図4の3次元空間でプロットされた各植物20の実点から相関直線Lへ降ろした垂線の足の時間tpを図6の時間軸tの値とし、時間tpにおける相関直線Lxy上の点を起点として引いた図5の法線ベクトルの先端と一致する点をプロットしている。
【0054】
<推定工程>
推定工程S4では、上記特徴量から各個体の収穫時期及び生育状況を推定する。
【0055】
例えば図6のグラフから、各個体の生育の収穫時期及び生育状況を読み取ることができる。図6のグラフから生育状況を読み取ると、例えばP11→P12と変化している個体は生育が遅く、かつ相関直線Ltから上方に外れる傾向があることから、葉の生育が花の生育よりも早い傾向にあることが分かる。P21→P22では生育速度は標準的で、葉が大きい傾向がそのまま踏襲されていることが分かる。さらに、P31→P32では、生育速度は標準的で、葉が小さかった傾向が解消されつつあることが分かる。
【0056】
収穫時期は、例えば個々の植物20のプロットを外挿し、t=t0の直線又はxy=xy0の直線と交わるまでに要する時間として算出可能である。
【0057】
<誘導工程>
誘導工程S5では、無人航空機1を、上記制御スイッチの直上へ誘導する。
【0058】
当該植物生育監視方法では、無人航空機1により土壌環境制御設備21を制御することで、個々の植物20の収穫時期及び生育状況を調整することができる。例えば植物20の生育が遅れている場合、その植物20が植え付けられている付近の土壌の温度を高めることで生育を促進することができる。そのためには、該当する位置の埋め込みヒータ21aの制御温度の設定を変更する必要がある。この設定の変更は、無人航空機1が有している近距離無線通信により行うことができるが、まず無人航空機1を上記制御スイッチの直上へ誘導する必要がある。なお、個々の埋め込みヒータ21a、追肥装置21b及び灌水装置21cのうち、どの場所のどの装置を制御するかは、推定工程S4で推定された収穫時期及び生育状況に基づいて、例えばAI等を活用して決定することができる。
【0059】
無人航空機1を上記制御スイッチの直上(以下、単に「定点」ともいう)へ誘導するため、図2に示すように、土壌環境制御設備21が、上空から識別可能であり、無人航空機1に上記制御スイッチの位置を伝達する表示装置21dを有しているとよい。
【0060】
表示装置21dは、個々の埋め込みヒータ21a、追肥装置21b及び灌水装置21cそれぞれに設けられる。表示装置21dとしては、公知の液晶ディスプレイ等を用いることができる。
【0061】
表示装置21dの形状(表示画面の平面視形状)としては、正方形状又は長方形状(合わせて「方形状」ともいう)とすることができる。表示装置21dの形状を方形状とすることで、既存のディスプレイを容易に用いることができる。また、表示装置21dの形状としては、円形状とすることもできる。表示装置21dの形状を円形状とすることで、その中心を上記定点として利用することで、無人航空機1から上記定点を認識し易くすることができる。
【0062】
表示装置21dの1辺の長さ(表示装置21dが円形状である場合は、その直径の長さ)の下限としては、3cmが好ましく、4cmがより好ましい。一方、表示装置21dの1辺の長さの上限としては、20cmが好ましく、10cmがより好ましい。表示装置21dの1辺の長さが上記下限未満であると、画像5の大きさが制約され、無人航空機1から認識できる距離が短くなるおそれがある。表示装置21dが位置する部分には植物20を植え付けられないため、表示装置21dの1辺の長さが上記上限を超えると、植物20の植え付けに支障が生じるおそれがある。
【0063】
表示装置21dは、調光可能なものが好ましく、またカラー表示可能なものが好ましい。さらに、表示装置21dの最大光量の下限としては、4000LUXが好ましく、4500LUXがより好ましい。表示装置21dの最大光量が上記下限未満であると、画像5の明るさが制約され、無人航空機1から認識できる距離が短くなるおそれがある。一方、表示装置21dの最大光量の上限は、特に限定されないが、消費電力等の観点から、例えば10000LUXとされる。
【0064】
無人航空機1は、この表示装置21dに表示される画像5(図7参照)により誘導される。画像5は、図7に示すように、第1画像要素51と、第2画像要素52と、第3画像要素53と、マーカー54とから構成されている。なお、図7において、矢印は2次元バーコードの向きを示している。
【0065】
(第1画像要素)
第1画像要素51は、表示装置21dに表示され、上記定点(上記制御スイッチの位置)を示すための画像要素である。第1画像要素51は、図8に示すように、コードが表示されない中空領域51xを含む2次元バーコードである。
【0066】
図8に示す第1画像要素51では、2次元バーコードは8×8の正方形状のマトリックスであり、中空領域51xとして、その中央の4×4のマトリックスが不使用である。つまり、中空領域51xの形状は、第1画像要素51の外形と相似形をなしている。なお、この構成は一例であって他の構成を妨げるものではない。
【0067】
2次元バーコードの1マスを構成する正方形の1辺の長さの下限としては、0.3cmが好ましく、0.4cmがより好ましい。一方、上記1辺の長さの上限としては、1.5cmが好ましく、1cmがより好ましい。上記1辺の長さが上記下限未満であると、無人航空機1から認識できる距離が短くなるおそれがある。逆に、上記1辺の長さが上記上限を超えると、表示装置21dに表示できなくなるおそれや、第1画像要素51により無人航空機1に伝達できる情報が不十分となるおそれがある。
【0068】
2次元バーコードは、例えば以下のようにコードを割り付けることができる。なお、これは一例であって、コードの割り付けは任意に決定することができる。
【0069】
前方から第1列には、固定の前方向パターン51aが割り付けられている。また、前方から第5列(最終列)には、固定の後方向パターン51bが割り付けられている。この2つのパターンを参照することで、2次元バーコードの向きを知ることができる。
【0070】
中間に位置する第2列から第7列には、制御情報パターン51cが割り付けられている。この制御情報には、例えば対応する制御スイッチにより制御される土壌環境の種類(埋め込みヒータ21a、追肥装置21b及び灌水装置21cの別)や、現在の設定値などが含まれる。
【0071】
(第2画像要素)
図9に示す第2画像要素52は、第1画像要素51と相似であり、第1画像要素51の中空領域51xに縮小表示される(図7参照)。つまり、第1画像要素51と第2画像要素52とは入れ子構造になっている。
【0072】
第2画像要素52で表示されている2次元バーコードは、第1画像要素51で表示されている2次元バーコードと、値も含め同一である。
【0073】
第2画像要素52の外形と第1画像要素51の中空領域51xの形状とは、図7に示すように、一致していることが好ましい。各形状をこのような関係とすることで、所望の相似比の第1画像要素51及び第2画像要素52を少ない表示領域で表示することができる。
【0074】
第1画像要素51と第2画像要素52との相似比は、1.5:1以上3:1以下が好ましい。上記相似比が上記下限未満であると、中空領域51xを広く取る必要が生じるため、各画像に含められる情報量が制約されるおそれがある。逆に、上記相似比が上記上限を超えると、無人航空機1のスムーズな誘導が困難となるおそれがある。
【0075】
上記入れ子構造は、例えば第1画像要素51及び第2画像要素52のみ(1回のみ)とすることもできるが、このように複数回(図5では2回)繰り返されているとよい。上記入れ子構造を複数回繰り返すことで、段階的に位置精度を高めることができるので、より遠距離から、あるいはより高い精度で無人航空機1を誘導できるようになる。
【0076】
上記入れ子構造の数としては、2以上5以下が好ましい。上記入れ子構造の数が上記下限未満(すなわち1)であると、段階的に位置精度を高める効果は得られない。逆に、上記入れ子構造の数が上記上限を超えると、入れ構造の数を増やすことによる位置精度の向上効果が不十分となるおそれがある。
【0077】
(マーカー)
マーカー54は、上記定点を示す。無人航空機1は、この定点を目標に移動する。
【0078】
マーカー54は、任意の位置に表示することもできるが、中空領域51x(52x)の中心に表示されているとよい。中空領域51xには、第1画像要素51及び第2画像要素52ともにコードを有していないので、この領域の中心にマーカー54を表示することで、無人航空機1から上記定点を認識し易くすることができる。
【0079】
マーカー54の形状は特に限定されないが、円環状又は円形状とすることができる。マーカー54の大きさは、要求される位置精度にもよるが、例えば直径で0.5cm以上1cm以下とすることができる。この場合、誤差1cm程度での制御が可能となる。
【0080】
このような入れ子構造を有する2次元バーコードを用いることで、無人航空機1を上記制御スイッチの直上に正確に誘導することができる。従って、近距離無線通信により確実に制御スイッチを制御できる。
【0081】
無人航空機1は、通常は10m程度の飛行高度で移動している。一方、上記制御スイッチを制御する際には、高度1m程度まで降下し、かつ上記制御スイッチ直上でホバリングしつつ、上記制御スイッチを制御する必要がある。画像5は、無人航空機1がこの上記制御スイッチ直上でのホバリングを正確に行えるように誘導することができる。以下に、その誘導方法を説明する。上記誘導方法は、移動ステップと、降下ステップとを備える。
【0082】
(移動ステップ)
まず、無人航空機1は、例えば植え付けマップ3の情報に基づいて、ターゲットとなる制御スイッチの近傍へ10m程度の飛行高度を維持しつつ移動する。制御スイッチの近傍への移動(移動ステップ)が完了したか否かは、無人航空機1が第1画像要素51の2次元バーコードを認識できるか否かにより判断する。認識できない場合は、移動ステップを継続し、無人航空機1をさらに上記制御スイッチに接近させるか、高度が低いと判断される場合は、無人航空機1の高度を上げて第1画像要素51の視認性を高めてもよい。
【0083】
(降下ステップ)
移動ステップが完了すると、降下ステップに移る。誘導ステップから降下ステップに切り変わる際には、第1画像要素51は認識できるが、第1画像要素51よりも小さい第2画像要素52、第3画像要素53及びマーカー54は認識できないという状態になり得る。しかし、無人航空機1は、最も大きい第1画像要素51を認識できるので、第1画像要素51の情報をもとに、上記定点へのアプローチを続けられる。第2画像要素52以下が認識できないことから、この段階では無人航空機1と上記定点とは遠距離にあり、許容される誤差も大きい。従って第1画像要素51のみの情報でアプローチを続けることが可能である。
【0084】
降下ステップに入った後は、無人航空機1は基本的には第1画像要素51が示す定点に向かってアプローチすればよい。例えば図7に示す画像5に基づく場合、上記定点は第1画像要素51の中空領域51xにあることは既知であるので、仮にマーカー54を無人航空機1が認識できない場合にあっても、この中空領域51xに向かってアプローチしていけばよい。また、無人航空機1は、無人航空機1自体のカメラ11から得られる情報のみでアプローチを続けることが可能である。
【0085】
第1画像要素51に基づいてアプローチを続けていくと、無人航空機1と画像5との距離が縮まり、やがて無人航空機1は、第2画像要素52が認識できるようになる。このとき、無人航空機1は、情報を取得する対象を第1画像要素51から第2画像要素52に切り替える。第2画像要素52は大きさが第1画像要素51よりも小さいため、より小さい目標に対してアプローチすることで、制御誤差を低減できる。第2画像要素52に含まれる情報は、第1画像要素51と同じであるので、飛行制御を断続することなく、あるいは初期化することなく、アプローチを継続できる。また、第2画像要素52は、第1画像要素51の中空領域51xに表示されているので、第1画像要素51から第2画像要素52に切り替えても、カメラ11の向きを変えなくてもよいか、変更を要したとしても微調整ですむ。
【0086】
さらに第2画像要素52に基づいてアプローチを続けていくと、無人航空機1は第3画像要素53を認識できるようになり、情報を取得する対象をこの第3画像要素53に切り替える。最終的には、無人航空機1は、マーカー54を認識し、この無人航空機1のホバリングポイントを示す定点であるマーカー54上でホバリングすることができる。
【0087】
<土壌環境制御工程>
土壌環境制御工程S6では、直上へ誘導された無人航空機1により、推定工程S4で推定される収穫時期及び生育状況をもとに上記制御スイッチを制御する。このように土壌環境制御工程S6を備えることで、個々の植物20の収穫時期及び生育状況を調整することができる。
【0088】
また、上記制御スイッチを無人航空機1からの近距離無線通信で制御する。このように無人航空機1からの近距離無線通信で制御することで、上記制御スイッチ側はパッシブセンサで動作することとなる。つまり、制御信号の送信を常時モニタするということを行わないので、土壌環境制御設備21側の消費電力を最小化できる。
【0089】
<繰り返し>
当該植物生育監視方法では、第1取得工程S1、第2取得工程S2、特徴量抽出工程S3、推定工程S4、誘導工程S5及び土壌環境制御工程S6が複数回繰り返され、2回目以降の繰り返しにおける第1取得工程S1が、その直前の繰り返しにおける第2取得工程S2を兼ねている。
【0090】
つまり、例えば1回目に第1取得工程S1乃至土壌環境制御工程S6を行った後に2回目の工程を行う場合、1回目の第2取得工程S2が、2回目の第1取得工程S1とされる。このため、1回目の土壌環境制御工程S6の後には2回目の第2取得工程S2を行えばよいことになる。なお、誘導工程S5及び土壌環境制御工程S6は毎回行う必要はないため、条件によっては推定工程S4の後に第2取得工程S2に戻ってもよい。
【0091】
このように繰り返し処理を行うことで、効率的かつ逐次的に収穫時期及び生育状況を推定することができる。
【0092】
<利点>
当該植物生育監視方法では、無人航空機1により空撮を行うことで、容易に個々の植物20の個体情報を収集することができる。また、当該植物生育監視方法では、一定期間経過後の植物20の個体情報をn種の生育パラメータで表現し、その時間変化の差分を特徴量として抽出する。この場合、収穫時期及び生育状況の推定精度を高めるべく生育パラメータの数を増やしたとしても、抽出される特徴量のデータはパラメータ数に比例して大きくなるのみであるので、データ処理用の増加が抑止できる。従って、当該植物生育監視方法は、個々の植物単位の収穫時期及び生育状況を高い精度で推定可能であり、かつデータ処理量が少ない。
【0093】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0094】
上記実施形態では、土壌環境制御工程は必須の構成要件ではなく、土壌環境制御工程を備えない植物生育監視方法も本発明の意図するところである。土壌環境制御工程を備えない植物生育監視方法にあっては、例えば近距離無線通信により動作し、上記土壌環境を制御する制御スイッチは省略できる。
【0095】
また、土壌環境制御工程において、土壌環境の制御は近距離無線通信により行わなくともよい。例えば無人航空機と制御スイッチとの間でWiFi等の他の無線通信手段により行ってもよい。あるいは、無人航空機により制御する代わりに、農作業者等が直接制御してもよい。
【0096】
上記実施形態では、第1取得工程、第2取得工程及び特徴量抽出工程が、複数回繰り返される場合を説明したが、繰り返しを行わない植物生育監視方法も本発明の意図するところである。
【0097】
また、複数回繰り返す場合にあっても、2回目以降の繰り返しにおける第1取得工程が、その直前の繰り返しにおける第2取得工程を兼ねていることは必須の構成要件ではなく、改めて第1取得工程から行ってもよい。
【0098】
上記実施形態では、汎用生育予測情報がn次元の相関直線で表され、非線形を有する場合は、適切に座標変換することで線形化する方法を説明したが、汎用生育予測情報を非線形のまま扱うこともできる。この場合は、植物の個体情報をパラメータ変数に対応させて多数取得して、非線形式にフィッティングする方法などを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したように、本発明の植物生育監視方法は、個々の植物単位の収穫時期及び生育状況を高い精度で推定可能であり、かつデータ処理量が少ない。
【符号の説明】
【0100】
1 無人航空機
11 カメラ
2、2M 圃場
20、20M 植物
21 土壌環境制御設備
21a 埋め込みヒータ
21b 追肥装置
21c 灌水装置
21d 表示装置
3 植え付けマップ
4 汎用生育予測情報
5 画像
51 第1画像要素
51a 前方向パターン
51b 後方向パターン
51c 制御情報パターン
51x 中空領域
52 第2画像要素
52x 中空領域
53 第3画像要素
54 マーカー
L、Lxy、Lt 相関直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9