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特開2023-175392AC電圧センサー回路、インバータ回路、および電源回路
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  • 特開-AC電圧センサー回路、インバータ回路、および電源回路 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175392
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】AC電圧センサー回路、インバータ回路、および電源回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231205BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087815
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】塩見 竹史
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770DA01
5H770DA41
5H770JA14Y
5H770JA18Y
5H770JA20Z
(57)【要約】
【課題】従来よりも回路構成が簡素なAC電圧センサー回路を提供する。
【解決手段】AC電圧センサー回路(ACS1)はインバータ回路(INV1)のAC出力部(ACO1)に接続されている。制御回路(CNT1)とインバータ回路(INV1)は絶縁接続され、AC電圧センサー回路(ACS1)はセンス信号絶縁回路を備えている。インバータ回路(INV1)と制御回路(CNT1)との間がAC電圧センサー回路(ACS1)で絶縁接続されている。AC出力部(ACO1)は電源ラインである第1ライン(LIN1)と第2ライン(LIN2)とを備え、インバータ回路(INV1)は基準電圧ノード(GND1)を備えている。AC電圧センサー回路(ACS1)は、「基準電圧ノード(GND1)に対する第1ライン(LIN1)の電圧」と「基準電圧ノード(GND1)に対する第2ライン(LIN2)の電圧」との電圧差を表す信号を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ回路のAC出力部に接続されているAC電圧センサー回路であって、
制御回路と上記インバータ回路とは絶縁接続され、
上記AC電圧センサー回路はセンス信号絶縁回路を備え、
上記インバータ回路と上記制御回路との間が上記AC電圧センサー回路で絶縁接続されており、
上記AC出力部は電源ラインである第1ラインと第2ラインとを備え、
上記インバータ回路は基準電圧ノードを備え、
上記AC電圧センサー回路は、「上記基準電圧ノードに対する上記第1ラインの電圧」と「上記基準電圧ノードに対する上記第2ラインの電圧」との電圧差を表す信号を出力する、AC電圧センサー回路。
【請求項2】
上記AC電圧センサー回路は、第1信号入力端子、第2信号入力端子、基準電圧端子、および上記センス信号絶縁回路を含む絶縁アンプICを備え、
上記第1信号入力端子に第1抵抗を介して上記第1ラインが接続され、
上記第2信号入力端子に第2抵抗を介して上記第2ラインが接続され、
上記基準電圧端子に上記基準電圧ノードが接続され、
上記絶縁アンプICは上記電圧差を表す信号を出力する、請求項1に記載のAC電圧センサー回路。
【請求項3】
請求項2に記載のAC電圧センサー回路を備えたインバータ回路であって、
上記インバータ回路に駆動信号絶縁回路を含むゲート駆動回路が接続されており、
上記ゲート駆動回路の一部が上記基準電圧ノードに接続されており、
上記インバータ回路と上記制御回路との間は上記ゲート駆動回路によって絶縁接続されている、インバータ回路。
【請求項4】
上記インバータ回路は、入力コンデンサ、第1トランジスタ、第2トランジスタ、第3トランジスタ、および第4トランジスタを備えており、
上記入力コンデンサの負極は基準電圧ノードに接続され、
上記第1トランジスタと上記第2トランジスタとの直列回路が上記入力コンデンサに並列接続され、
上記第1トランジスタと上記第2トランジスタとの接続ノードがコイルを介して上記第1ラインに接続され、
上記第3トランジスタと上記第4トランジスタとの直列回路が上記入力コンデンサに並列接続され、
上記第3トランジスタと上記第4トランジスタとの接続ノードが上記第2ラインに接続されており、
上記第1トランジスタまたは上記第2トランジスタは上記ゲート駆動回路に接続され、
上記制御回路は上記ゲート駆動回路を介して上記第1トランジスタまたは上記第2トランジスタを駆動する、請求項3に記載のインバータ回路。
【請求項5】
請求項4に記載のインバータ回路を備えた電源回路であって、
上記電源回路の電源の入力から出力に向けて、DC入力部、DCDCコンバータ回路、上記インバータ回路、および上記AC出力部が順に接続されており、
上記DCDCコンバータ回路は絶縁回路を介して上記制御回路に接続されている、電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、AC電圧センサー回路に関する。
【背景技術】
【0002】
交流(AC:alternating current)出力の電源回路では、この電源回路から出力されるAC電圧を検出するためのセンサー回路が必要となっている。特許文献1にその一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-046622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
但し、このようなAC電圧センサー回路を用いても、なおも改良の余地がある。
【0005】
本開示の一態様は、従来よりも回路構成が簡素なAC電圧センサー回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るAC電圧センサー回路は、インバータ回路のAC出力部に接続されているAC電圧センサー回路であって、制御回路と上記インバータ回路とは絶縁接続され、上記AC電圧センサー回路はセンス信号絶縁回路を備え、上記インバータ回路と上記制御回路との間が上記AC電圧センサー回路で絶縁接続されており、上記AC出力部は電源ラインである第1ラインと第2ラインとを備え、上記インバータ回路は基準電圧ノードを備え、上記AC電圧センサー回路は「上記基準電圧ノードに対する上記第1ラインの電圧」と「上記基準電圧ノードに対する上記第2ラインの電圧」との電圧差を表す信号を出力する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、従来よりも回路構成が簡素なAC電圧センサー回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るAC電圧センサー回路を備えた電源回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(電源回路で使用するAC電圧センサー回路の背景と課題)
小型化要求が増す電源回路において、センサー回路を簡素にすることも必要となっている。特に、AC電圧が出力となっているインバータ回路では、センサー回路が複雑化しやすい課題がある。本実施形態では、AC電圧センサー回路を簡素化する一例を開示する。
【0010】
文書の簡潔化のために、例えば「AC電圧センサー回路ACS1」を、単に「ACS1」とも表記する。
(AC電圧の差動センスが可能なAC電圧センサー回路ACS1の主な構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るAC電圧センサー回路ACS1を備えている電源回路PS1の回路構成を示す図である。図1では、インバータ回路INV1がAC出力部ACO1に接続され、AC電圧センサー回路ACS1がACO1に接続されている。ACO1は、INV1内部へ配線で引き込まれているため、回路的に(すなわち実質的に)INV1に含まれている。この図に示すように、PS1は、ACS1、制御回路CNT1、DCDCコンバータDDC1、直流(DC:Direct Current)入力部DCI1、第1ゲート駆動回路GDR1、第2ゲート駆動回路GDR2、絶縁回路ISOC1を備えている。
【0011】
制御回路CNT1は、INV1を制御する回路である。制御回路CNT1は、INV1に絶縁接続されている。より詳細には、INV1とCNT1との間は、ACS1によって絶縁接続されている。
【0012】
ACS1は、センス信号を絶縁で伝達する為に、センス信号絶縁回路を備えている。さらに、ACO1は、それぞれが電源ラインである第1ラインLIN1と第2ラインLIN2とを備えている。LIN1とLIN2は、INV1に接続されている。INV1は、基準電圧ノードGND1を備えている。
【0013】
ACS1は、「GND1に対するLIN1の電圧」と「GND1に対するLIN2の電圧」との電圧差を表す信号を出力するように構成されている。この電圧差を表す信号は、CNT1に入力される。CNT1は、マイクロコントローラが含まれており、アナログ信号またはデジタル信号の受信および、アナログ信号またはデジタル信号の出力が可能となっている。このため、電源回路PS1の全体を制御することも可能となっている。
【0014】
絶縁接続とは、電気的に繋がっていないが、信号または電力が伝達できる接続である。例えば、フォトカプラを用いた光絶縁回路、静電容量結合を用いた絶縁回路、および磁気結合を使った変圧器(トランス)回路などが挙げられる。これらの回路は、絶縁機能の恩恵として漏れ電流抑制、感電防止、およびノイズ伝搬抑制などが実現出来る。
【0015】
ACS1は、LIN1の電圧とLIN2の電圧の差電圧(差動電圧)を表す信号を出力する。差電圧を表す信号は、ACS1のセンス信号絶縁回路によって、絶縁でCNT1へ伝達できる。電圧差を表す信号の種類としては、アナログ信号およびデジタル信号が挙げられる。デジタル信号の一例としては、デルタシグマ変調信号が挙げられる。
【0016】
(基準電圧ノードGND1を含めたAC電圧の差動センサーの接続構成)
図1に示すように、ACS1は、第1抵抗RS1、第2抵抗RS2、第3抵抗RS3、第4抵抗RS4、および絶縁アンプ集積回路(IC:Integrated Circuit)ISOA1を備えている。ISOA1は、第1信号入力端子INP1、第2信号入力端子INP2、基準電圧端子GNT1、出力端子DIF1、およびセンス信号絶縁回路を備えている。
INP1にはRS1を介してLIN1が接続され、INP2にはRS2を介してLIN2が接続され、GNT1にはGND1が接続されている。更に、INP1はRS3を介してGND1に接続されている。INP2はRS4を介してGD1に接続されている。RS1とRS3によってLIN1の電圧を低電圧化してINP1に入力できる。RS2とRS4によってLIN2の電圧を低電圧化してINP1に入力できる。
【0017】
電圧差を表す信号は、ISOA1の出力端子DIF1から出力される。ISOA1のINP1側とDIF1側とは、電気的に絶縁されている。この絶縁を表すために、図1に示すISOA1の回路記号は、左右2つのブロックに分かれた記述となっている。この様なISOA1は、GND1を基準としてLIN1とLIN2の差電圧が検知可能である。言い換えると、ACS1では、LIN1とLIN2の差電圧が、GND1基準で検知可能となる。信号入力端子が1つの絶縁アンプICでは、GNT1をLIN1またはLIN2へ接続して使用することになるので、後述の共通グランド化が出来ない。
【0018】
(絶縁ゲート駆動回路の基準電圧ノード接続による共通グランド化)
INV1には駆動信号絶縁回路を含む第1ゲート駆動回路GDR1と、駆動信号絶縁回路を含む第2ゲート駆動回路GDR2とが接続されている。GDR1およびGDR2の一部がGND1に接続されている。より具体的には、GDR1およびGDR2のINV1側の基準電圧端子が、GND1に接続されている。INV1とCNT1との間は、GDR1の駆動信号絶縁回路と、GDR2の駆動信号絶縁回路とによって絶縁接続されている。
【0019】
GDR1およびGDR2は後述のトランジスタに接続されている。GDR1およびGDR2はフォトカプラを用いた駆動信号絶縁回路を備えたICである。図1において、GDR1とGDR2との回路図記号の点線はIC内部で絶縁されていることを示している。
【0020】
PS1において、ISOA1、GDR1、およびGDR2のすべてのICが、GND1に接続されている共通グランド接続となっている。この場合には、すべてのICに供給する電源(非図示)は、共通の電源(非図示)を採用することが可能となる。このため、電源(非図示)の共通化も含めて、センサーの回路構成を簡素化できる。さらに、INV1とCNT1とを繋ぐすべての回路が絶縁回路を備えるため、INV1とCNT1との間は絶縁接続となる。
【0021】
ISOA1のGNT1をLIN1またはLIN2へ接続してAC電圧を検出する方法もある。この場合には、GDR1およびGDR2の各接地端子との共通グランド化が困難となるため、ACS1を含めた回路構成が複雑化する課題が残る。
(インバータ回路とAC電圧センサー回路との接続構成)
図1に示すように、INV1は、第1コイルCOI1、第2コイルCOI2、第1トランジスタTRN1、第2トランジスタTRN2、第3トランジスタTRN3、第4トランジスタTRN4、および入力コンデンサCAP1を備えている。CAP1の負極はGND1に接続されている。第1トランジスタTRN1と第2トランジスタTRN2との直列回路は、CAP1に並列接続されている。TRN1とTRN2との接続ノードは、第1コイルCOI1を介してLIN1に接続されている。第3トランジスタTRN3と第4トランジスタTRN4との直列回路は、CAP1に並列接続されている。TRN3とTRN4との接続ノードは、第2コイルCOI2を介してLIN2に接続されている。本インバータ回路では、COI1とCOI2との2つのコイルを使用しているが、どちらか一方でも可能である。
【0022】
TRN1またはTRN2は、GDR1に接続されている。図1では、TRN1およびTRN2が両方ともにGDR1に接続されている回路構成が図示されているが、これはあくまでも一例に過ぎない。TRN1およびTRN2のうち少なくとも一方がGDR1に接続されていればよい。CNT1は、GDR1を介してTRN1またはTRN2を駆動する。REC1またはREC2は、GDR2に接続されている。図1では、REC1およびREC2が両方ともにGDR2に接続されている回路構成が図示されているが、これはあくまでも一例に過ぎない。REC1およびREC2のうち少なくとも一方がGDR2に接続されていればよい。CNT1は、GDR2を介してREC1またはREC2を駆動する。
【0023】
CNT1は、GDR1を介して2つのトランジスタを駆動できる。ゲート駆動回路の数を増やすことで、1つのトランジスタと1つのゲート駆動回路とを1対1で接続してもよい。
【0024】
一般的なインバータ回路では、LIN1とLIN2の両方の各電圧が共にGND1と一致しない回路動作が含まれる。このため、正確にAC電圧を検出するためには、LIN1とLIN2との差動電圧の検出が必要になる。しかしながら、従来の差動電圧検出回路によれば、AC電圧センサーは基準電圧ノードへ接続することが困難であり、電源(非図示)の共通化が難しい課題があった。本開示のACS1を用いることでこれらの課題が解決できる。
(インバータ回路とDCDCコンバータとAC電圧センサー回路ACS1との接続構成)
図1に示すように、電源回路PS1は、電源の入力から出力に向けて、DC入力部DCI1、DDC1、INV1、およびACO1が順に接続されている。INV1に接続されているDDC1は、絶縁回路ISOC1を介してCNT1に接続されている。
【0025】
INV1は、DDC1に非絶縁で接続されている。CNT1は、DDC1と絶縁接続されている。DDC1は、絶縁回路ISOC1を介してCNT1によって制御される。つまり、「INV1およびDDC1」に対するCNT1の接続回路は、全て絶縁回路となっている。この様な回路構成のPS1にACS1を用いることによって、絶縁で差動電圧信号をCNT1へ伝達することが可能となる。さらに、一つのCNT1は、INV1およびDDC1の両方を絶縁で制御できる。
【0026】
また、以上で述べた各数値は、単なる一例であることに留意されたい。また、回路動作の調整のために、回路図の配線上に抵抗の追加や、配線間にコンデンサの追加も適宜実施可能である。
【0027】
〔付記事項〕
本開示の一態様は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本開示の一態様の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成できる。
【符号の説明】
【0028】
ACS1 AC電圧センサー回路
ACO1 AC出力部
CAP1 入力コンデンサ
CNT1 制御回路
COI1 第1コイル
COI2 第2コイル
DCI1 DC入力部
DIF1 出力端子
DDC1 DCDCコンバータ
GDR1 第1ゲート駆動回路
GDR2 第2ゲート駆動回路
GND1 基準電圧ノード
GNT1 基準電圧端子
INP1 第1信号入力端子
INP2 第2信号入力端子
INV1 インバータ回路
ISOC1 絶縁回路
LIN1 第1ライン
LIN2 第2ライン
PS1 電源回路
RS1 第1抵抗
RS2 第2抵抗
RS3 第3抵抗
RS4 第4抵抗
TRN1 第1トランジスタ
TRN2 第2トランジスタ
TRN3 第3トランジスタ
TRN4 第4トランジスタ
図1