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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175399
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
H02K9/19 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087824
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 久芳
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB19
5H609PP01
5H609QQ05
5H609QQ08
5H609RR53
5H609RR55
5H609RR67
(57)【要約】
【課題】モータの発熱量が増加した場合であっても、オイルを効率的に冷却することができ、なおかつ、設置スペースが小さい冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置は、トランスアクスルのハウジングの内部に設置されて、トランスアクスルが内包する電動機を潤滑するオイルを冷却する冷却装置であって、ハウジングの内部を、第1の空間と第2の空間とに分割する仕切部と、仕切部によって分割された第1の空間と第2の空間とを連通する連通部と、第2の空間に設置されて、第1の空間から連通部を通過して流入したオイルを、第2の空間の中で移動させるオイル流路と、第2の空間に、オイル流路と接する領域を含むように設置されて、オイル流路を流れるオイルを冷却する冷却水を循環させる、複数の管状の冷却水路と、オイルを第1の空間と第2の空間との間で循環させるオイルポンプと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスアクスルのハウジングの内部に設置されて、前記トランスアクスルが内包する電動機を潤滑するオイルを冷却する冷却装置であって、
前記ハウジングの内部を、第1の空間と第2の空間とに分割する仕切部と、
前記仕切部によって分割された前記第1の空間と前記第2の空間とを連通する連通部と、
前記第2の空間に設置されて、前記第1の空間から前記連通部を通過して流入した前記オイルを、前記第2の空間の中で移動させるオイル流路と、
前記第2の空間に、前記オイル流路と接する領域を含むように設置されて、前記オイル流路を流れる前記オイルを冷却する冷却水を循環させる、複数の管状の冷却水路と、
前記オイルを前記第1の空間と前記第2の空間との間で循環させるオイルポンプと、を備える、
冷却装置。
【請求項2】
前記冷却水路は、
長円状の断面形状を有して平行に延設された第1群の冷却配管と、隣接する前記第1群の冷却配管を構成する各冷却配管の間に、隙間を有して、前記第1群の冷却配管と隣接する冷却配管の一部が重複するように千鳥状に延設される第2群の冷却配管と、を備える、
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷却装置は、前記トランスアクスルの底部に形成される、
請求項1または請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第1群の冷却配管と前記第2群の冷却配管との間を通過したオイルは、前記第2の空間の内部に形成された空間を隔てて前記オイルポンプに吸い上げられる、
請求項1または請求項2に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、車両の電動化が促進されており、動力源として電気モータを使用するハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車等の電動化車両が実用化されている。このような電動化車両にあっては、電気モータの高出力化に伴って、電気モータの冷却性能の向上が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、モータを内包するハウジングの外部にオイルクーラを備えるモータユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-178485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたモータユニットにあっては、モータおよびギアを収容するハウジングの外側にオイルクーラを設置することによって、モータで暖められたオイルを冷却していた。昨今、モータの高電流化や高出力化に伴い、モータの発熱量が増加している。これに対応するオイルクーラを用意すると、積層段数を増加させる必要があるため、オイルクーラが大型化して、車体スペースを圧迫するおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、モータの発熱量が増加した場合であっても、オイルを効率的に冷却することができ、なおかつ、設置スペースが小さい冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る冷却装置は、トランスアクスルのハウジングの内部に設置されて、トランスアクスルが内包する電動機を潤滑するオイルを冷却する冷却装置であって、ハウジングの内部を、第1の空間と第2の空間とに分割する仕切部と、仕切部によって分割された第1の空間と第2の空間とを連通する連通部と、第2の空間に設置されて、第1の空間から連通部を通過して流入したオイルを、第2の空間の中で移動させるオイル流路と、第2の空間に、オイル流路と接する領域を含むように設置されて、オイル流路を流れるオイルを冷却する冷却水を循環させる、複数の管状の冷却水路と、オイルを第1の空間と第2の空間との間で循環させるオイルポンプと、を備える。
【0008】
この構成によれば、冷却水路と接するオイル流路を形成することによって、モータの発熱量が増加した場合であっても、オイルを効率的に冷却することができる。また、設置スペースが小さい冷却装置を提供することができる。
【0009】
また、本発明における冷却装置において、冷却水路は、長穴状の断面形状を有して平行に延設された第1群の冷却配管と、隣接する第1群の冷却配管を構成する各冷却配管の間に、隙間を有して、第1群の冷却配管と隣接する冷却配管の一部が重複するように千鳥状に延設される第2群の冷却配管と、を備える。
【0010】
この構成によれば、オイル流路と冷却水路との接触面積を拡大することができるため、オイルから冷却水に向かう熱流量を増加させることができる。これによって、オイルの冷却効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る冷却装置は、トランスアクスルの底部に形成される。
【0012】
この構成によれば、冷却装置の内部はオイルで満たされて空気溜まりが出来にくいため、オイルの冷却効率を向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係る冷却装置において、冷却装置を通過したオイルは、第2の空間の内部に形成された空間を隔ててオイルポンプに吸い上げられる。
【0014】
この構成によれば、冷却水路を流れる、異なる温度の冷却水によって冷却されたオイルが混ざり合ってオイルポンプに到達するため、冷却されたオイルの温度を均一にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、モータの発熱量が増加した場合であっても、オイルを効率的に冷却することができ、なおかつ、設置スペースが小さい冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施の形態に係る冷却装置を備えたトランスアクスルの一例を示す外観図である。
図2図2は、実施の形態の冷却装置を備えるトランスアクスルの断面構造の一例を示すXZ断面図である。
図3図3は、実施の形態の冷却装置の詳細構造の一例を示す外観斜視図である。
図4図4は、実施の形態の冷却装置の詳細構造の一例を示す上面図である。
図5図5は、冷却水管を挟んで接するATFと水との間の熱流量を算出する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態)
図1を用いて、本発明の実施の形態の冷却装置について説明する。図1は、実施の形態に係る冷却装置を備えたトランスアクスルの一例を示す外観図である。
【0019】
(トランスアクスルの概略構成)
トランスアクスル10は、ハウジング13の内部に、車両を駆動するモータ14を収容する。なお、トランスアクスル10に収容されるモータ14は1台とは限らない。例えば、エンジンとモータとを共に備えるハイブリッド車両では、エンジンの駆動力によって回転することによって発電を行う発電用モータと、発電用モータが発電した電力を用いて車両を駆動する駆動用モータとが収容される。
【0020】
モータ14は、回転すると熱を発生するため、ATF(Automatic Transmission Fluid)を吹きかけることによって冷却される。なお、ATFは、本開示におけるオイルの一例である。
【0021】
モータ14の熱で暖められたATFは、ハウジング13の底部に設置された冷却装置12で冷却されて、オイルポンプで吸い上げられて、再びモータ14を冷却する。冷却装置12は、トランスアクスル10の外部から、ウォータポンプ22(図4参照)によって供給された冷却水によって、モータ14の熱で暖められたATFを冷却する。冷却装置12の構造について、詳しくは後述する(図2図3図4参照)。
【0022】
(冷却装置の構造)
図2図3図4を用いて、冷却装置20の構造を説明する。図2は、実施の形態の冷却装置を備えるトランスアクスルの断面構造の一例を示すXZ断面図である。図3は、実施の形態の冷却装置の詳細構造の一例を示す外観斜視図である。図4は、実施の形態の冷却装置の詳細構造の一例を示す上面図である。
【0023】
トランスアクスル10の内部には、ハウジング13の内部を、第1の空間16aと第2の空間16bとに区画する仕切板15が設置されている。第1の空間16aは、モータ14を含む空間である。第2の空間16bは、冷却装置12を含む空間である。図2の例では、仕切板15は水平(図2におけるXY平面)に設置されて、上方に形成された第1の空間16aと、下方に形成された第2の空間16bとを区画する。なお、仕切板15は、本開示における仕切部の一例である。
【0024】
仕切板15の一部には、連通孔17が形成されている。連通孔17は、モータ14の発熱によって暖められたATFを、冷却装置12に導入する。なお、連通孔17は、本開示における連通部の一例である。
【0025】
連通孔17から第2の空間16bに導入されたATFは、図2に示すオイル流路29を矢印Aに沿って流れる。即ち、ATFは、X軸に沿って移動しながら、後述する第1群の冷却配管19a、20aと、第2群の冷却配管19b、20bと、に接することによって冷却される。
【0026】
冷却装置12によって冷却されたATFは、オイルポンプ28によって、オイル流出口26から吸い出される。吸い出されたATFは、再び第1の空間16aに戻されて、モータ14の冷却に使用される。
【0027】
冷却装置12には、冷却水が流れる冷却水路18が形成されている。冷却水路18は、第1群の冷却配管19a、20aと、第2群の冷却配管19b、20bと、冷却水路21a、21bと、を備える。第1群の冷却配管19a、20aと第2群の冷却配管19b、20bとは、熱伝導率の高い物質、例えばアルミニウムで構成される。
【0028】
第1群の冷却配管19aは、トランスアクスル10の外部から流入した冷却水を、Y軸負側に向けて流す冷却水路を形成する配管である。第1群の冷却配管19aは、Y軸に沿う複数の冷却配管の束である。第1群の冷却配管19aを構成する全ての冷却配管は、同一の長円状の断面形状を有して、互いに平行に配置される。また、第1群の冷却配管19aは、Z軸正側の端部が、仕切板15に当接するように配置される。
【0029】
第2群の冷却配管19bは、トランスアクスル10の外部から流入した冷却水を、Y軸負側に向けて流す冷却水路を形成する配管である。第2群の冷却配管19bは、Y軸に沿う複数の冷却配管の束である。第2群の冷却配管19bを形成する全ての冷却配管は、第1群の冷却配管19aを構成する冷却配管と同一の断面形状を有して、互いに平行に配置される。また、第2群の冷却配管19bは、Z軸負側の端部が、ハウジング13の底部に当接するように配置される。
【0030】
このように、第2群の冷却配管19bは、第1群の冷却配管19aの隣接する冷却配管の間に、隙間を有して、第1群の冷却配管19aと平行、かつ隣接する第1群の冷却配管19aの一部と重複するように千鳥状に配置される。
【0031】
第1群の冷却配管20aは、第1群の冷却配管19aを流れた冷却水を、ハウジング13の外部に流出させる冷却水路を形成する配管である。第1群の冷却配管20aは、Y軸に沿う複数の冷却配管の束である。第1群の冷却配管20aを構成する全ての冷却配管は、同一の長円状の断面形状を有して、互いに平行に配置される。また、第1群の冷却配管20aは、Z軸正側の端部が、仕切板15に当接するように配置される。なお、第1群の冷却配管20aを構成する各冷却配管は、第1群の冷却配管19aを構成する各冷却配管よりも太く、尚且つ長いものとされる。また、第1群の冷却配管20aを構成する冷却配管の数は、第1群の冷却配管19aを構成する冷却配管の数よりも少ない。このような構成にすることによって、第1群の冷却配管19aから流入する冷却水の流れを滞留させることなく、第1群の冷却配管20aから流出させる。
【0032】
第2群の冷却配管20bは、第2群の冷却配管19bを流れた冷却水を、ハウジング13の外部に流出させる冷却水路を形成する配管である。第2群の冷却配管20bは、Y軸に沿う複数の冷却配管の束である。第2群の冷却配管20bを構成する全ての冷却配管は、同一の長円状の断面形状を有して、互いに平行に配置される。また、第2群の冷却配管20bは、Z軸負側の端部が、ハウジング13の底部に当接するように配置される。なお、第2群の冷却配管20bを構成する各冷却配管は、第2群の冷却配管19bを構成する各冷却配管よりも太く、尚且つ長いものとされる。また、第2群の冷却配管20bを構成する冷却配管の数は、第2群の冷却配管19bを構成する冷却配管の数よりも少ない。このような構成にすることによって、第2群の冷却配管19bから流入する冷却水の流れを滞留させることなく、第2群の冷却配管20bから流出させる。なお、第1群の冷却配管19a及び第2群の冷却配管19bの本数と、第1群の冷却配管20a及び第2群の冷却配管20bの本数とを等しく設定する、即ち、分水部24a(図3参照)に接続される冷却配管の本数と、集水部24b(図3参照)に接続される冷却配管の本数とを等しく設定すれば、第1群の冷却配管20a及び第2群の冷却配管20bの太さを太く、尚且つ長いものにする必要はない。
【0033】
冷却水路21aは、第1群の冷却配管19aのY軸負側に設置されて、第1群の冷却配管19aを構成する各冷却配管と、第1群の冷却配管20aとを接続する。これにより、第1群の冷却配管19aに流入した冷却水は、第1群の冷却配管20aに到達する。
【0034】
冷却水路21bは、第2群の冷却配管19bのY軸負側に設置されて、第2群の冷却配管19bを構成する各冷却配管と、第2群の冷却配管20bとを接続する。これにより、第2群の冷却配管19bに流入した冷却水は、第2群の冷却配管20bに到達する。
【0035】
このように、冷却水路18は、オイル流路29と接する第1群の冷却配管19a、20aと、第2群の冷却配管19b、20bとを含む。
【0036】
図3を用いて、冷却水路18の構造をより詳細に説明する。図3は、図2に示した冷却装置12に形成される冷却水路18の部分のみを示した外観斜視図である。
【0037】
冷却水は、入水管23aを通して分水部24aに流入する。分水部24aには、第1群の冷却配管19aと第2群の冷却配管19bとが接続されている。分水部24aに流入した冷却水は、第1群の冷却配管19aと第2群の冷却配管19bとに分流して、下流側、即ち図3におけるY軸負側に向かって流れる。
【0038】
第1群の冷却配管19aを構成する複数の冷却配管を通過した冷却水は、冷却水路21aに流れ込んで合流する。そして、合流した冷却水は、下流側、即ち図3におけるX軸正側に向かって流れる。
【0039】
第1群の冷却配管19aを構成する複数の冷却配管を通過した冷却水は、図3に非図示の冷却水路21b(図2参照)に流れ込んで合流する。そして、合流した冷却水は、下流側、即ち図3におけるX軸正側に向かって流れる。
【0040】
冷却水路21aを流れた冷却水は、第1群の冷却配管20aに流入する。そして、冷却水は、第1群の冷却配管20aを構成する複数の冷却配管を下流側、即ち図3におけるY軸正側に向かって流れる。
【0041】
同様に、冷却水路21bを流れた冷却水は、第2群の冷却配管20bに流入する。そして、冷却水は、第2群の冷却配管20bを構成する冷却配管を下流側、即ち図3におけるY軸正側に向かって流れる。
【0042】
第1群の冷却配管20a、および第2群の冷却配管20bを流れた冷却水は、集水部24bで合流する。そして、冷却水は、出水管23bを通して、冷却装置12から排出される。
【0043】
即ち、冷却水は、冷却装置12に対して、図3に示す矢印Bの方向に流入する。そして、冷却水は冷却装置12の内部に形成された、前記した冷却水路18を通過して、図3に示す矢印Eの方向に流出する。
【0044】
図4を用いて、冷却装置12の構造を更に詳しく説明する。図4は、冷却装置12をトランスアクスル10の上方から見た上面図である。なお、冷却装置12の上方(Z軸正側)に設置されている仕切板15を取り除いて、仕切板15に形成された連通孔17のみを記載している。
【0045】
図4に示すように、第1群の冷却配管19aと、第2群の冷却配管19bと、第1群の冷却配管20aと、第2群の冷却配管20bとは、Y軸に平行に設置されている。そして、隣接する第1群の冷却配管19aと第2群の冷却配管19bとの間、および隣接する第1群の冷却配管20aと第2群の冷却配管20bとの間には隙間が設けられている。
【0046】
モータ14で暖められたATFは、連通孔17を通過して冷却装置12の内部に進入する。そして、ATFは、隣接する第1群の冷却配管19aと第2群の冷却配管19bとの隙間、および隣接する第1群の冷却配管20aと第2群の冷却配管20bとの間の隙間を通過しながら、X軸正側に移動する。即ち、ATFは、オイル流路29を矢印Aの方向に移動する。このとき、ATFは、第1群の冷却配管19aと第2群の冷却配管19bとを、矢印Cに方向に流れる冷却水、および第1群の冷却配管20aと第2群の冷却配管20bとを、矢印Dに方向に流れる冷却水によって冷却される。冷却水が流れる方向と、ATFが流れる方向とは直交するため、ATFは効率よく冷却される。なお、ATFを効率よく冷却装置12の内部に流入させるために、連通孔17の形状は、例えば、図4に示すように、冷却配管の延設方向に沿う長孔形状とされる。
【0047】
第1群の冷却配管19a,20aと第2群の冷却配管19b,20bとの間を通過したATFは、第2の空間16bの内部に形成されたオイル流出空間25に流出する。オイル流出空間25の一部には、オイル流出口26が形成されている。このオイル流出口26は、オイルポンプ28と接続している。従って、オイル流出空間25に流出したATFは、オイルポンプ28の吸引力によって、オイル流出口26から吸い出される。そのため、オイル流出空間25に流出したATFは、オイル流出口26の方向に向きを変える。このとき、第1群の冷却配管19a,20aと第2群の冷却配管19b,20bとの間を通過したATFは、オイル流出空間25の内部を通過する際に混ざり合うため、ATFの温度が均一になる。
【0048】
第1群の冷却配管20aと第2群の冷却配管20bとを通過してからオイル流出口26に至るまでの間に、オイル流出空間25が形成されているため、第1群の冷却配管20aと第2群の冷却配管20bとを通過したATFに温度のばらつきがあっても、オイル流出空間25からオイル流出口26に至るまでの間にATFが攪拌されるため、ATFの温度のばらつきが低減される。
【0049】
オイル流出口26の設置位置は、図4の例に限定されるものではない。第1群の冷却配管20aと第2群の冷却配管20bとを通過した後にオイル流出空間25が形成されさえすれば、例えば、ハウジング13のX軸正側の壁面にオイル流出口26を形成してもよい。
【0050】
なお、第1群の冷却配管19aを構成する冷却配管の本数と、第2群の冷却配管19bを構成する冷却配管の本数とは、ATFの冷却性能に応じて設定される。即ち、第1群の冷却配管19aを構成する冷却配管の本数と、第2群の冷却配管19bを構成する冷却配管の本数とを増やすほど、ATFと冷却配管との接触面積が増えるため、ATFの冷却性能が向上する。詳しくは後述する(図5参照)。
【0051】
また、第1群の冷却配管20aを構成する冷却配管の本数は、第1群の冷却配管19aを構成する冷却配管の本数に応じて、冷却水の流れを滞留させない本数に設定される。また、第2群の冷却配管20bを構成する冷却配管の本数は、第2群の冷却配管19bを構成する冷却配管の本数に応じて、冷却水の流れを滞留させない本数に設定される。
【0052】
また、第1群の冷却配管19a,20aを構成する冷却配管の長さと、第2群の冷却配管19b,20bを構成する冷却配管の長さは、トランスアクスル10のハウジング13の底面形状に応じて設定される。冷却配管の長さが長いほど、ATFと冷却配管との接触面積が増えるため、ATFの冷却性能が向上する。
【0053】
なお、ここでは、トランスアクスル10のハウジング13の底部に冷却装置12を設置する構成を説明したが、冷却装置12の設置位置は、ハウジング13の底部に限定されるものではない。例えば、冷却装置12が、仕切板15を挟んでモータ14の上方(Z軸正側)に設置されてもよい。また、モータ14と冷却装置12とを、XZ平面に沿う仕切板15を挟んで設置してもよい。即ち、モータ14と冷却装置12とは、仕切板15を挟んで隣接した位置に設置されればよい。
【0054】
(ATFと冷却水との間の熱流量)
図5を用いて、ATF32と冷却水30との間の熱流量Qについて説明する。図5は、冷却水管を挟んで接するATFと水との間の熱流量を算出する方法を説明する図である。
【0055】
冷却水30とATF32とが、第1群の冷却配管19aまたは第2群の冷却配管19b(以下、単に冷却配管19と呼ぶ)を挟んで接触しているものとする。冷却水30と冷却配管19とは接触面積Sで接触しており、ATF32と冷却配管19とは接触面積Sで接触しているものとする。そして、冷却配管19は、冷却水30とATF32との接触方向に対して長さL2を有し、冷却水30とATF32とは、それぞれ接触方向に対して長さL1を有しているとする。
【0056】
このとき、ATF32が温度T1、冷却水30が温度T2であり、ATF32から冷却水30に向かって、熱流量Qが流れるものとする。ATF32から冷却配管19を介して冷却水30に至る経路が、熱抵抗Rを有しているとすると、熱流量Qは式(1)で算出される。
【0057】
Q=(T1-T2)/R・・・(1)
【0058】
冷却水30が熱抵抗R1を有し、冷却配管19が熱抵抗R2を有し、ATF32が熱抵抗R3を有しているとすると、熱抵抗R1、熱抵抗R2、熱抵抗R3は、それぞれ、式(2)、式(3)、式(4)で算出される。なお、冷却水30が熱伝達率h1を有し、冷却配管19が熱伝導率kを有し、ATF32が熱伝達率h2を有しているとする。
【0059】
R1=L1/h1S・・・(2)
【0060】
R2=L2/kS・・・(3)
【0061】
R3=L1/h2S・・・(4)
【0062】
従って、熱抵抗Rは、式(5)で表される。
【0063】
R=L1/h1S+L2/kS+L1/h2S・・・(5)
【0064】
ATF32を効率的に冷却する、即ち、熱流量Qを大きくするためには、式(5)の熱抵抗Rをできるだけ小さくすればよい。ここで、冷却水30の熱伝達率h1と、冷却配管19の熱伝導率kと、ATF32の熱伝達率h2は固定値であるから、熱抵抗Rを小さくするためには、接触面積Sを大きくすればよい。特に、ATF32の熱伝達率h2は、冷却水30の熱伝達率h1よりも大きいから、熱抵抗Rをできるだけ小さくするためには、長さL1、長さL2が一定である場合には、ATF32と冷却配管19との接触面積Sをできるだけ大きくするのが効果的であることがわかる。
【0065】
前述した実施形態の冷却装置12は、このような考え方に基づいて、第1群の冷却配管19a、20aを構成する冷却配管の本数と、第2群の冷却配管19b、20bを構成する冷却配管の本数とを増加することによって、ATF32と冷却水30と冷却配管19との接触面積Sを増大させたものである。
【0066】
(実施の形態の作用効果)
以上説明したように、実施の形態の冷却装置12は、トランスアクスル10のハウジング13の内部に設置されて、トランスアクスル10が内包するモータ14(電動機)を潤滑するATF(オイル)を冷却する冷却装置であって、ハウジング13の内部を、第1の空間16aと第2の空間16bとに分割する仕切板15(仕切部)と、仕切板15によって分割された第1の空間16aと第2の空間16bとを連通する連通孔17(連通部)と、第2の空間16bに設置されて、第1の空間16aから連通孔17を通過して流入したATFを、第2の空間16bの中で移動させるオイル流路29と、第2の空間16bに、オイル流路29と接する領域を含むように設置されて、オイル流路29を流れるATFを冷却する冷却水を循環させる、複数の管状の冷却水路18と、ATFを第1の空間16aと第2の空間16bとの間で循環させるオイルポンプ28と、を備える。したがって、冷却水路と接するオイル流路を形成することによって、モータ14の発熱量が増加した場合であっても、ATFを効率的に冷却することができる。また、設置スペースが小さい冷却装置を提供することができる。
【0067】
また、実施の形態の冷却装置12において、冷却水路18は、長円状の断面形状を有して平行に延設された第1群の冷却配管19a,20aと、隣接する第1群の冷却配管19a,20aを構成する各冷却配管の間に、隙間を有して、第1群の冷却配管19a,20aと隣接する冷却配管の一部が重複するように千鳥状に延設される第2群の冷却配管19b,20bと、を備える。したがって、オイル流路29と冷却水路18との接触面積を拡大することができるため、オイルから冷却水に向かう熱流量を増加させることができる。これによって、オイルの冷却効率を向上させることができる。
【0068】
また、実施の形態の冷却装置12において、冷却水路18とオイル流路29とは直交する。したがって、オイル流路29と冷却水路18との接触面積をより一層拡大することができる。これによって、オイルの冷却効率を更に向上させることができる。
【0069】
また、実施の形態の冷却装置12は、トランスアクスル10の底部に形成される。したがって、冷却装置12の内部はATFで満たされて空気溜まりが出来にくいため、ATFの冷却効率を向上させることができる。
【0070】
また、実施の形態の冷却装置12において、第1群の冷却配管19a,20aと第2群の冷却配管19b,20bとの間を通過したATF(オイル)は、第2の空間16bの内部に形成されたオイル流出空間25を隔ててオイルポンプ28に吸い上げられる。したがって、冷却水路を流れる、異なる温度の冷却水によって冷却されたATFが、オイル流出空間25の内部で混ざり合ってオイルポンプ28に到達するため、オイルポンプ28に戻るATFの温度を均一にすることができる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
10 トランスアクスル
12 冷却装置
13 ハウジング
14 モータ
15 仕切板(仕切部)
16a 第1の空間
16b 第2の空間
17 連通孔(連通部)
18 冷却水路
19 冷却配管
19a,20a 第1群の冷却配管
19b,20b 第2群の冷却配管
21a,21b 冷却水路
22 ウォータポンプ
23a 入水管
23b 出水管
24a 分水部
24b 集水部
25 オイル流出空間
26 オイル流出口
28 オイルポンプ
29 オイル流路
30 冷却水
32 ATF(オイル)
h1,h2 熱伝達率
k 熱伝導率
L1,L2 長さ
Q 熱流量
R,R1,R2,R3 熱抵抗
S 接触面積
T1,T2 温度
図1
図2
図3
図4
図5