(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175401
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20231205BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231205BHJP
C08J 5/14 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24B37/24 A
H01L21/304 622F
C08J5/14 CFF
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087827
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】今野 智之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一則
(72)【発明者】
【氏名】尾関 晃
【テーマコード(参考)】
3C158
4F071
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AA09
3C158AA19
3C158AB04
3C158AC04
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3C158EB29
4F071AA53
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5F057AA14
5F057AA24
5F057BA15
5F057BA21
5F057BB03
5F057CA12
5F057DA03
5F057EB03
5F057EB07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ドレッシングに要する時間が長くなることを抑制でき、しかも、研磨レートの低下を抑制できる研磨パッドを提供する。
【解決手段】本発明に係る研磨パッド1は、ポリウレタン樹脂発泡体を含む研磨パッドであって、研磨面1aを有し、該研磨面が、前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成され、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、ヤング率が600MPa以上900MPa以下であり、空隙率が0%を超えて10%以下であり、80℃におけるtanδが0.2以上0.6以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂発泡体を含む研磨パッドであって、
研磨面を有し、
該研磨面が、前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成され、
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、ヤング率が600MPa以上900MPa以下であり、空隙率が0%を超えて10%以下であり、80℃におけるtanδが0.2以上0.6以下である
研磨パッド。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂発泡体を形成するためのポリウレタン樹脂は、第1のウレタンプレポリマーと第2のウレタンプレポリマーとを含む複数のウレタンプレポリマーに由来する構成単位を含み、
前記第1のウレタンプレポリマーは、ポリオールとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)を有し、
前記第2のウレタンプレポリマーは、ポリオールとして、ポリプロピレングリコール(PPG)を有する
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記ウレタンプレポリマーに由来する構成単位において、
前記第1のウレタンプレポリマーの質量比率は30質量%以上90質量%以下であり、前記第2のウレタンプレポリマーの質量比率は10質量%以上70質量%以下である
請求項2に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドに関する。より詳しくは、本発明は、被研磨物をラッピング加工するために用いられるラッピング用研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハなどの被研磨物の表面を大まかに平滑化するために、ラッピング研磨機を用いて、前記被研磨物の被研磨面を研磨すること、すなわち、前記被研磨物の被研磨面をラッピング加工することが知られている。
前記ラッピング研磨機を用いた前記被研磨物の被研磨面の研磨は、ヘッド及び定盤を備える片面研磨機や対向配置された一対の定盤を備える両面研磨機を用いて実施される。
例えば、前記片面研磨機では、前記被研磨物の被研磨面の研磨は、以下のようにして実施される。
(1)上方にヘッドを備え、下方に定盤を備えるラッピング研磨機において、前記ベッドに備え付けられた保持材に円盤状に切り出した被研磨物(半導体ウェハなど)を貼り付け、前記定盤の上面に円盤状の研磨パッドを貼り付ける。
(2)前記定盤に前記ヘッドを近付けるように移動させて、前記被研磨物の露出面(被研磨面)と前記研磨パッドの露出面(研磨面)とを当接させる。
(3)前記被研磨面と前記研磨面とを当接させた状態で、その当接部分に研磨用スラリーを供給しつつ、前記ヘッド及び前記定盤を回転させることにより、前記研磨パッドの研磨面によって前記被研磨物の被研磨面を研磨する。
なお、上記のごとき、ラッピング研磨機を用いた研磨においては、通常、前記研磨用スラリーとして砥粒と潤滑剤との混合物が用いられる。
【0003】
上記のように、ラッピング研磨機を用いた研磨において、前記研磨パッドとしてポリウレタン樹脂発泡体で構成されたものを用いることが知られている(例えば、下記特許文献1及び2)。
下記特許文献1には、前記ポリウレタン樹脂発泡体の発泡を抑制して、該ポリウレタン樹脂発泡体を高密度でありかつ硬度が高いもの(高硬度のもの)として構成することが記載され、下記特許文献2には、前記ポリウレタン樹脂発泡体の発泡を促進させて、該ポリウレタン樹脂発泡体を低密度でありかつ硬度が低いもの(低硬度のもの)として構成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-117794号公報
【特許文献2】特開2015-134402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
研磨パッドによるラッピングの前には、被研磨物との接触状態を良好にするために研磨パッドの研磨面を研削するドレッシングという工程が実施されている。
上記特許文献1に記載されている研磨パッドのように高密度且つ高硬度な樹脂発泡体で研磨面を構成するとドレッシングに多くの時間を要することになる。
一方で被研磨物を研磨する際には、研磨面における空隙の開口が少なく、研磨面の多くが樹脂で構成されている方が被研磨物に砥粒を当接させるのに有利で、そのような場合の方が被研磨物の研磨レートが高くなる。
そのため、上記特許文献2に記載されている研磨パッドのように低密度且つ低硬度の樹脂発泡体で研磨面を構成するとドレッシングでの研削時間が長くなることを抑制できると見られるものの研磨レートが低下してしまう虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような状況に鑑み、ドレッシングに要する時間が長くなることを抑制でき、しかも、研磨レートの低下を抑制できる研磨パッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る研磨パッドは、
ポリウレタン樹脂発泡体を含む研磨パッドであって、
研磨面を有し、
該研磨面が、前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成され、
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、ヤング率が600MPa以上900MPa以下であり、空隙率が0%を超えて10%以下であり、80℃におけるtanδが0.2以上0.6以下である。
【0008】
斯かる構成によれば、ドレッシングに要する時間が長くなることを抑制でき、しかも、研磨レートの低下を抑制することができる。
【0009】
前記研磨パッドにおいては、
前記ポリウレタン樹脂発泡体を形成するためのポリウレタン樹脂は、第1のウレタンプレポリマーと第2のウレタンプレポリマーとを含む複数のウレタンプレポリマーに由来する構成単位を含み、
前記第1のウレタンプレポリマーは、ポリオールとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)を有し、
前記第2のウレタンプレポリマーは、ポリオールとして、ポリプロピレングリコール(PPG)を有する、ことが好ましい。
【0010】
斯かる構成によれば、ドレッシングに要する時間が長くなることをより一層抑制でき、しかも、研磨レートの低下をより一層抑制できる。
【0011】
前記研磨パッドにおいては、
前記ウレタンプレポリマーに由来する構成単位において、
前記第1のウレタンプレポリマーの質量比率は30質量%以上90質量%以下であり、前記第2のウレタンプレポリマーの質量比率は10質量%以上70質量%以下である、ことが好ましい。
【0012】
斯かる構成によれば、ドレッシングに要する時間が長くなることをより一層抑制でき、しかも、研磨レートの低下をより一層抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ドレッシングに要するが長くなることを抑制でき、しかも、研磨レートの低下を抑制できる研磨パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る研磨パッドの使用状態を示す概略断面図。
【
図2】カットレート及び研磨速度(レート)の測定に用いた試験体の概略平面図。
【
図3】カットレート及び研磨速度(レート)の測定に用いたドレッサーの概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
なお、以下では、本発明の一実施形態を、単に、本実施形態と称することがある。
【0016】
本実施形態に係る研磨パッド1は、
図1に示したように、定盤10及びヘッド20を備える研磨機100において、被研磨物2を研磨するために用いられる。
本実施形態においては、研磨機100は、定盤10及びヘッド20に加えて、研磨スラリーを供給するためのスラリー供給部30を備えている。
また、本実施形態においては、研磨機100のヘッド20は、被研磨物2を保持するための保持材20aを備えている。
本実施形態に係る研磨パッド1は、
図1に示したように、定盤10に貼り付けられた後、研磨パッド1の研磨面1aによって、ヘッド20の保持材20aに貼り付けられた被研磨物2の被研磨面2aを研磨するために用いられる。
なお、
図1では、本実施形態に係る研磨パッド1を、被研磨物2の片面を研磨するための片面研磨機に取り付ける例について説明しているが、本実施形態に係る研磨パッド1は両面研磨機に取り付けて用いられてもよい。
より具体的には、本実施形態に係る研磨パッド1は、対向配置された一対の定盤を備える両面研磨機において、前記一対の定盤のそれぞれに取り付けられて用いられてもよい。
【0017】
本実施形態に係る研磨パッド1は、ポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂発泡体を備えている。
本実施形態に係る研磨パッド1は、先に説明したように、被研磨物2の被研磨面2aを研磨するための研磨面1aを有しており、研磨面1aがポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成されている。
本実施形態の研磨パッド1は、前記研磨面1aと被研磨物の露出面(被研磨面2a)との間に砥粒を含んだ研磨用スラリーを介在させて前記研磨面1aと前記被研磨面2aとが摺接されることで該被研磨面2aを研磨する。
被研磨物2としては、SiウェハやSiCウェハなどが挙げられる。
また、本実施形態に係る研磨パッド1を用いて被研磨物2をラッピング加工するに際しては、前記研磨用スラリーとして、通常、砥粒と潤滑剤との混合物が用いられる。
【0018】
前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面には、空隙部が開口している開口領域と、ポリウレタン樹脂で構成されている樹脂領域とが設けられ、本実施形態の研磨パッド1の研磨面1aでは、前記樹脂領域が連続した1つの領域として設けられ、前記開口領域が点在した複数の領域となって設けられている。
前記被研磨面の研磨には、前記樹脂領域と被研磨面との間に存在する砥粒が大きく影響する。
樹脂領域の割合が少ないと被研磨面に当接させることができる砥粒も減少してしまう。
被研磨面との当接に際して被研磨面から遠ざかる方向に樹脂領域が過度に変形すると砥粒による研磨の効果も低下してしまう。
本実施形態の研磨パッド1では、空隙率が小さく良好なヤング率を有するとともに被研磨物の研磨における摩擦熱などで温度が上がった場合に適度なtanδを示すポリウレタン樹脂発泡体で研磨面1aが構成されている。
そのため、本実施形態の研磨パッド1は、ドレッシングでの研削に長い時間を必要とせず、高い研磨レートで被研磨物の研磨ができる点においても優れている。
【0019】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、ヤング率が600MPa以上900MPa以下である。
前記ヤング率は、620MPa以上であることが好ましく、640MPa以上であることがより好ましい。
前記ヤング率は、880MPa以下であることが好ましく、860MPa以下であることがより好ましい。
前記ヤング率は、以下の手順にしたがって求めることができる。
(1)JIS K 6251に準じて、前記ポリウレタン樹脂発泡体を用いてダンベル状試験片(ダンベル状1号試験片)を作製する。
(2)引張り試験機を用いて、前記ダンベル状試験片を引張速度100mm/minで長さ方向に引張り、複数の試験力の値と各試験力に値に対応する歪みの値とを得た後、これらの値を用いて、試験力をX軸とし歪みをY軸とするグラフを作成する。
(3)前記グラフの試験力0.5Nから15Nの範囲において、最小二乗法により近似直線を求め、該近似直線の傾きをヤング率(単位はMPa)として求める。
【0020】
前記ポリウレタン樹脂発泡体のヤング率は、前記ポリウレタン樹脂の組成を調整したり、前記ポリウレタン樹脂発泡体の空隙率を調整したりすることにより、調整することができる。
まず、組成の調整では、例えば、前記ポリウレタン樹脂中において、ソフトセグメント含量とハードセグメント含量との割合を調整することにより、前記ポリウレタン樹脂発泡体のヤング率を調整することができる。
より具体的には、軟質なポリオールの分子量を小さくして、イソシアネート基の比率を相対的に増やすことにより、前記ポリウレタン樹脂発泡体のヤング率を高くすることができる。
また、ウレタンプレポリマーにおける当量比(NCO/OH当量比)を下げて、硬質なアミン硬化剤の当量比(アミン当量比)を上げることによっても、前記ポリウレタン樹脂発泡体のヤング率を高くすることができる。
次に、空隙率の調整は、発泡剤の量を調整することにより実施することができる。
より具体的には、発泡剤の量を少なくして、空隙率を小さくすることにより、前記ポリウレタン樹脂発泡体のヤング率を高くすることができる。
【0021】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、空隙率が0%を超えて10%以下である。
前記空隙率は、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。
前記空隙率は、9%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、7%以下であることがさらに好ましい。
前記空隙率は、X線CTスキャン装置(例えば、ヤマト科学社製のTDM1000H-I)を用いて、以下のようにして求めることができる。
(1)ポリウレタン樹脂発泡体の測定対象範囲(例えば、0.7mm×1.6mm×1.6mmの部分2つ分)に含まれている、各気泡の体積を測定した後、各気泡の体積を合算して気泡の全体積を求める。
(2)ポリウレタン樹脂発泡体の測定対象範囲の体積に対する、上記(1)で求めた気泡の全体積の比率(百分率)を算出する。
【0022】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、後述するように、前記ポリウレタン樹脂を発泡させることにより得られる。
そして、本実施形態に係る研磨パッドにおいては、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、先に説明したように、10%以下という小さな空隙率を有している。
前記ポリウレタン樹脂発泡体をこのような小さい空隙率を有するものとするに際しては、発泡剤を用いずに前記ポリウレタン樹脂を発泡させることが好ましい。
【0023】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、80℃におけるtanδが0.2以上0.6以下である。
前記80℃におけるtanδは、0.22以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましく、0.28以上であることがさらに好ましい。
前記80℃におけるtanδは、0.58以下であることが好ましく、0.55以下であることがより好ましく、0.52以下であることがさらに好ましい。
前記80℃におけるtanδは、80℃における貯蔵弾性率E’に対する80℃における損失弾性率E’’の比(E’’/E’)を意味する。
80℃における貯蔵弾性率E’及び80℃における損失弾性率E’’は、JIS K7244-4:1999「プラスチック-動的機械特性の試験方法-第4部:引張振動-非共振法」にしたがい、以下の条件で測定することができる。
・測定温度範囲:0℃~100℃
・昇温速度:5℃/min
・周波数:1Hz
・ひずみ:0.5%
【0024】
前記ポリウレタン樹脂発泡体のtanδは、種々の手法により調整することができる。
例えば、前記ポリウレタン樹脂発泡体において、架橋点を増やすことによりtanδの値を低下させることができ、架橋点を減らすことによりtanδの値を上昇させることができる。
より具体的には、硬化剤の水酸基・アミン基に対して過剰なNCO基を反応させてアロファネート結合・ビューレット結合を形成して架橋点とすることで、前記ポリウレタン樹脂発泡体における架橋点を増やすことによりtanδの値を低下させることができる。
これに対し、ウレタンプレポリマー中におけるポリオールの分子量を大きくして、前記ポリウレタン樹脂発泡体において、架橋点を減らして架橋密度を低下させることによりtanδの値を上昇させることができる。
【0025】
本実施形態に係る研磨パッドにおいては、前記ポリウレタン樹脂発泡体が、先に説明したように、ヤング率が600MPa以上900MPa以下であり、空隙率が0%を超えて10%以下であり、かつ、80℃におけるtanδが0.2以上0.6以下であることが重要である。
【0026】
前記ヤング率が600MPa以上900MPa以下であることにより、前記研磨パッドを適度な硬さを有するものとすることができる。
すなわち、前記研磨用スラリー中に含まれる砥粒(遊離砥粒)を前記研磨パッドの研磨面から適度に突出させた状態で前記研磨パッドに埋設させることができる。
前記ポリウレタン樹脂発泡体が軟らか過ぎて前記研磨パッドに前記遊離砥粒が過度に埋設されている場合や、前記ポリウレタン樹脂発泡体が硬すぎて前記研磨パッドに前記遊離砥粒を十分に埋設させることができない場合には、いずれも、前記研磨パッドの研磨面で前記被研磨物の被研磨面を研磨するときに研磨速度(レート)が低下するものの、上記のように、前記研磨パッドの研磨面から適度に突出させた状態で、前記研磨パッドに前記遊離砥粒を埋設させることにより、前記研磨パッドの研磨面で前記被研磨物の被研磨面を研磨するときに研磨速度(レート)が低下することを抑制できる。
また、ヤング率が600MPa以上であることにより、前記研磨パッドの研磨面で前記被研磨物の被研磨面を研磨しているときに、前記研磨パッドの厚さ方向の変形量を比較的小さくすることができる。
これにより、前記被研磨物の被研磨面を研磨した後において、前記被研磨物のエッジ部分においてエッジ・ロールオフ(エッジ部分のだれ)が生じることを抑制できる。
前記空隙率が0%を超えて10%以下であることにより、前記研磨パッドの研磨面から前記遊離砥粒が適度に突出するように、前記研磨パッドに前記遊離砥粒を埋設させることができる。
前記ポリウレタン樹脂発泡体の空隙率が10%を超えるような高い値を示すような場合には、前記研磨パッドに前記遊離砥粒が埋設され過ぎるようになり、前記遊離砥粒と前記被研磨物の被研磨面との接触頻度が低下するようになって、前記研磨パッドの研磨面で前記被研磨物の被研磨面を研磨するときに研磨速度(レート)が低下するようになるものの、前記研磨パッドの研磨面から前記遊離砥粒が適度に突出するように、前記研磨パッドに前記遊離砥粒を埋設させることにより、前記遊離砥粒と前記被研磨物の被研磨面との接触頻度が低下することを抑制できるので、前記研磨パッドの研磨面で前記被研磨物の被研磨面を研磨するときに研磨速度(レート)が低下することを抑制できる。
このように、ヤング率が600MPa以上900MPa以下であり、空隙率が0%を超えて10%以下であることにより、前記研磨パッドの研磨面で前記被研磨物の被研磨面を研磨するときに研磨速度(レート)が低下することを抑制できる。
【0027】
先に説明したように、研磨パッド1を定盤10に貼り付けた後においては、研磨パッド1の外表面(研磨面1a)は、通常、ドレッサーなどを用いて十分な平坦性を有するように研削される。
そして、ドレッサーなどを用いて研磨パッド1の研磨面1aを研削している際には、ドレッサーなどで研削されているときの研磨面1aの温度は、高温(例えば、80℃)に達するようになる。
ここで、前記ポリウレタン樹脂発泡体においては、該ポリウレタン樹脂発泡体に含まれるポリウレタン樹脂によって十分な結晶構造が形成されていると考えられる。
そのため、80℃におけるtanδの値が低すぎると、前記ポリウレタン樹脂発泡体の結晶構造が崩れにくくなり、それに伴って、研磨パッド1の研磨面1aが摩耗されにくくなることが懸念される。
一方で、80℃におけるtanδの値が高すぎると、前記ポリウレタン樹脂発泡体の弾性率が低くなり過ぎて、該ポリウレタン樹脂発泡体は軟らか過ぎるものとなる。
このように、前記ポリウレタン樹脂発泡体が軟らか過ぎるものとなると、研磨パッド1の研磨面1aで被研磨物2の被研磨面2aを研磨するときに研磨速度(レート)が低下し易くなるとともに、エッジ・ロールオフ(エッジ部分のだれ)が生じ易くなる。
しかしながら、本実施形態に係る研磨パッドでは、前記ポリウレタン樹脂発泡体が、80℃におけるtanδが0.2以上0.6以下という適度な値となっている、すなわち、適度な硬度を有しているので、ドレッサーなどで研磨パッド1の研磨面1aを研磨して研磨面1aを平坦化するための研削時間が長くなることを抑制できる。
また、本実施形態に係る研磨パッドでは、前記ポリウレタン樹脂発泡体の樹脂領域の割合が大きかったとしても、研磨面1aが摩耗されにくくなることを抑制できることに加えて、前記ポリウレタン樹脂発泡体が軟らか過ぎることが原因となって研磨速度(レート)が低下し易くなることや、エッジ・ロールオフ(エッジ部分のだれ)が生じ易くなることを抑制できる。
【0028】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、見掛け密度が1.00g/cm3以上であることが好ましく、1.05g/cm3以上であることがより好ましい。
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、見掛け密度が1.20g/cm3以下であることが好ましく、1.10g/cm3以下であることがより好ましい。
前記ポリウレタン樹脂発泡体の見掛け密度は、JIS K 7222:2005に基づいて測定することができる。
【0029】
本実施形態に係るポリウレタン樹脂発泡体に含まれるポリウレタン樹脂は、一般的な研磨パッドに用いられているものと同様のものを採用することができる。
ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物(例えば、分子鎖の両末端にイソシアネート基を有するプレポリマー)と硬化剤とを含む。
すなわち、本実施形態に係るポリウレタン樹脂発泡体は、前記ポリイソシアネート化合物と前記硬化剤とを含む液状の混和物を調製した後、該混和物を硬化させることにより得ることができる。
【0030】
本実施形態に係るポリイソシアネート化合物としては、例えば、構成単位として1又は2種以上のポリオールと1又は2種以上のポリイソシアネートとを含み、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが挙げられる。
本実施形態に係るポリイソシアネート化合物は、複数のウレタンプレポリマーの混合物であってもよく、後段において示すようなポリイソシアネートの1又は2種以上であってもよい。
本実施形態に係るポリイソシアネート化合物は、1又は2種以上のウレタンプレポリマーと1又は2種以上のポリイソシアネートとの混合物であってもよい。
【0031】
本実施形態に係るポリウレタン樹脂は、第1のウレタンプレポリマーと第2のウレタンプレポリマーとを含む複数のウレタンプレポリマーに由来する構成単位を含み、前記第1のウレタンプレポリマーは、ポリオールとして、後述するポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)を有し、前記第2のウレタンプレポリマーは、ポリオールとして、後述するポリプロピレングリコール(PPG)を有する、ことが好ましい。
第1のウレタンプレポリマーは、ポリオールとして、側鎖を有さないPTMGを有するものであることから、このような第1のウレタンプレポリマーを硬化させると比較的緻密な結晶構造が形成されるようになる。
このような比較的緻密な結晶構造が形成されたポリウレタン樹脂発泡体は、硬くなり過ぎるようになる。
ここで、PPGは側鎖にメチル基を有するものであることから、ポリウレタン樹脂が、前記第1のウレタンプレポリマーに加えて、ポリオールとしてPPGを有する第2のウレタンプレポリマーを含むことにより、硬化させたときに結晶構造の形成を緩和させることができる。
そのため、このように、結晶構造の形成が緩和されたポリウレタン樹脂発泡体は、適度な硬度を有するものとなる。
すなわち、このようなポリウレタン樹脂発泡体で構成された研磨パッドは、ドレッシングに要する時間が長くなることを抑制でき、しかも、研磨レートの低下を抑制できるものとなる。
【0032】
前記ウレタンプレポリマーに由来する構成単位において、前記第1のウレタンプレポリマーの質量比率は30質量%以上90質量%以下であり、前記第2のウレタンプレポリマーの質量比率は10質量%以上70質量%以下である、ことが好ましい。
さらに、前記ウレタンプレポリマーに由来する構成単位において、前記第1のウレタンプレポリマーの質量比率は35質量%以上85質量%以下であり、前記第2のウレタンプレポリマーの質量比率は15質量%以上65質量%以下であることがより好ましく、前記第1のウレタンプレポリマーの質量比率は40質量%以上80質量%以下であり、前記第2のウレタンプレポリマーの質量比率は20質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
前記第1のウレタンプレポリマー及び前記第2のウレタンプレポリマーは、末端にイソシアネート基を有するものであってもよい。
【0034】
前記ポリオールとしては、例えば、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族ポリオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の脂肪族ポリオール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添加ビスフェノールA等の脂環族ポリオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多官能ポリオールなどが挙げられる。
【0035】
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリオールポリマーであってもよい。
ポリオールポリマーとしては、ヒドロキシ基を分子中に3以上有する多官能ポリオールポリマーであってもよい。
【0036】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコールなどが挙げられる。
【0037】
前記ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトンポリオールなどのポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物が挙げられ、また、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させて得られた反応生成物をさらに有機ジカルボン酸と反応させた反応生成物も挙げられる。
【0038】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレンオキサイド付加ポリプロピレンポリオールなどが挙げられる。
【0039】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのジオールと、ホスゲン、ジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)又は環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物などが挙げられる。
【0040】
前記ポリイソシアネートは、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネートなどが挙げられる。
【0041】
前記芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートが挙げられる。
また、前記芳香族イソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の変性物なども挙げられる。
【0042】
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の変性物としては、例えば、カルボジイミド変性物、ウレタン変性物、アロファネート変性物、ウレア変性物、ビューレット変性物、イソシアヌレート変性物、オキサゾリドン変性物等が挙げられる。斯かる変性物としては、具体的には、例えば、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(カルボジイミド変性MDI)が挙げられる。
【0043】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。
【0044】
前記脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
本実施形態での前記硬化剤は、例えば、ポリアミンが挙げられる。
【0046】
前記ポリアミンとしては、例えば、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)、4,4’-メチレンジアニリン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾアート)、2-メチル4,6-ビス(メチルチオ)ベンゼン-1,3-ジアミン、2-メチル4,6-ビス(メチルチオ)-1,5-ベンゼンジアミン、2,6-ジクロロ-p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンビス(2,3-ジクロロアニリン)、3,5-ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミン、3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン、トリメチレングリコール-ジ-p-アミノベンゾエート、1,2-ビス(2-アミノフェニルチオ)エタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0047】
前記硬化剤は、前記ポリオールであってもよい。
前記硬化剤は、前記ポリオールと前記ポリアミンとの混合物であってもよい。
【0048】
ここで、本実施形態に係るポリウレタン樹脂発泡体は、上記のごときポリウレタン樹脂を発泡させることにより得られる。
そして、本実施形態に係るポリウレタン樹脂発泡体は、空隙率が0%を超えて10%以下となっている。
空隙率を上記のような範囲とする観点から、本実施形態に係るポリウレタン樹脂発泡体は、発泡剤を用いずにポリウレタン樹脂を発泡させて得られたものであることが好ましい。
なお、前記発泡剤としては、例えば、水などが挙げられる。
【0049】
本実施形態の研磨パッドは、上記のようにして作製される前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面に以下のような処理を施して所望の表面粗さとすることができる。
前記積分値(Rvi)を所望の値(2.00mm2以上)とするための研磨面の処理方法としては、例えば、スライス加工、表面バフ加工、レーザー加工、ブラスト加工のような加工方法が挙げられる。
これらの中でも、スライス加工を採用することが好ましい。
【0050】
本実施形態に係る研磨パッドで研磨する被研磨物としては、先に説明したように、SiウェハやSiCウェハなどが挙げられる。
また、本実施形態に係る研磨パッドは、被研磨物の表面を大まかに平滑化するためのラッピング加工に好適に用いられる。
【0051】
なお、本発明に係る研磨パッドは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る研磨パッドは、上記した作用効果によって限定されるものでもない。さらに、本発明に係る研磨パッドは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例0052】
次に、実施例、及び、比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0053】
(実施例1)
PTMG含有プレポリマーとPPG含有プレポリマーとを下記表1の配合割合で配合した後、70℃で混合することにより、空気が気泡として分散した分散液を得た。
次に、前記分散液に硬化剤を添加した後、前記硬化剤を含む前記分散液を混合して、前記PTMG含有プレポリマーと前記PPG含有プレポリマーとを前記硬化剤によって重合させることにより、実施例1に係るポリウレタン樹脂発泡体、すなわち、実施例1に係る研磨パッドを得た。
なお、前記硬化剤は、PTMG含有プレポリマー及びPPG含有プレポリマーの合計100質量部に対して24.2質量部添加した。
【0054】
前記PTMG含有プレポリマー、前記PPG含有プレポリマー、及び、前記硬化剤は、以下のようなものである。
・PTMG含有プレポリマー
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)と、トリレンジイソシアネート(TDI)とを反応させることにより得られるPTMG含有プレポリマー(末端基としてイソシアネート基(NCO基)を含有するプレポリマー)
・PPG含有プレポリマー
ポリプロピレングリコール(PPG)と、トリレンジイソシアネート(TDI)とを反応させることにより得られるPPG含有プレポリマー(末端基としてイソシアネート基(NCO基)を含有するプレポリマー)
・硬化剤:MOCA(4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン))
なお、実施例1に係るポリウレタン樹脂発泡体は、末端基としてイソシアネート基(NCO基)を含有したものであり、NCO基含有率は、7.99質量%であった。
【0055】
(実施例2)
前記PTMG含有プレポリマーと前記PPG含有プレポリマーとの配合割合を下記表1のようにし、前記PTMG含有プレポリマー及び前記PPG含有プレポリマーの合計量100質量部に対して、前記硬化剤を23.4質量部添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係るポリウレタン樹脂発泡体、すなわち、実施例2に係る研磨パッドを得た。
なお、実施例2に係るポリウレタン樹脂発泡体も、末端基としてイソシアネート基(NCO基)を含有したものであり、NCO基含有率は、7.74質量%であった。
【0056】
(実施例3)
前記PTMG含有プレポリマーと前記PPG含有プレポリマーとの配合割合を下記表1のようにし、前記PTMG含有プレポリマー及び前記PPG含有プレポリマーの合計量100質量部に対して、前記硬化剤を23.4質量部添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係るポリウレタン樹脂発泡体、すなわち、実施例3に係る研磨パッドを得た。
なお、実施例3に係るポリウレタン樹脂発泡体も、末端基としてイソシアネート基(NCO基)を含有したものであり、NCO基含有率は、7.74質量%であった。
実施例3に係るポリウレタン樹脂発泡体は、前記PTMG含有プレポリマーと前記PPG含有プレポリマーとの配合割合が、実施例2に係るポリウレタン樹脂発泡体と同じであったが、得られた物性値(見掛け密度、ヤング率、80℃におけるtanδ、及び、空隙率。表1参照)は、実施例2に係るポリウレタン樹脂発泡体と異なっていた。
【0057】
(比較例1)
PPG含有プレポリマーを用いずにPTMG含有プレポリマーのみを用い、前記PTMG含有プレポリマー100質量部に対して、前記硬化剤を23.9質量部添加し、さらに、発泡剤として水を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係るポリウレタン樹脂発泡体、すなわち、比較例1に係る研磨パッドを得た。
なお、比較例1に係るポリウレタン樹脂発泡体も、末端基としてイソシアネート基(NCO基)を含有したものであり、NCO基含有率は、8.38質量%であった。
また、発泡剤としての水は、PTMG含有プレポリマーの100質量部に対して0.11質量部添加した。
【0058】
(比較例2)
PPG含有プレポリマーを用いずにPTMG含有プレポリマーのみを用い、前記PTMG含有プレポリマー100質量部に対して、前記硬化剤を26.3質量部添加し、さらに、発泡剤として水を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係るポリウレタン樹脂発泡体、すなわち、比較例2に係る研磨パッドを得た。
なお、比較例2に係るポリウレタン樹脂発泡体も、末端基としてイソシアネート基(NCO基)を含有したものであり、NCO基含有率は、9.49質量%であった。
また、発泡剤としての水は、PTMG含有プレポリマーの100質量部に対して0.075質量部添加した。
比較例2に係るポリウレタン樹脂発泡体も比較例1と同様にPTMG含有プレポリマーを用い、発泡剤として水を用いたものであったが、得られた物性値(見掛け密度、ヤング率、80℃におけるtanδ、及び、空隙率。表1参照)は、比較例1に係るポリウレタン樹脂発泡体と異なっていた。
【0059】
(比較例3)
PPG含有プレポリマーを用いずにPTMG含有プレポリマーのみを用い、前記PTMG含有プレポリマー100質量部に対して、前記硬化剤を27.7質量部添加した以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係るポリウレタン樹脂発泡体、すなわち、比較例3に係る研磨パッドを得た。
なお、比較例3に係るポリウレタン樹脂発泡体も、末端基としてイソシアネート基(NCO基)を含有したものであり、NCO基含有率は、9.15質量%であった。
【0060】
(比較例4)
PPG含有プレポリマーを用いずにPTMG含有プレポリマーのみを用い、前記PTMG含有プレポリマー100質量部に対して、前記硬化剤を24.0質量部添加し、さらに、発泡剤として水を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例4に係るポリウレタン樹脂発泡体、すなわち、比較例4に係る研磨パッドを得た。
なお、比較例4に係るポリウレタン樹脂発泡体も、末端基としてイソシアネート基(NCO基)を含有したものであり、NCO基含有率は、8.40質量%であった。
また、発泡剤としての水は、PTMG含有プレポリマーの100質量部に対して0.22質量部添加した。
比較例4に係るポリウレタン樹脂発泡体も比較例1と同様にPTMG含有プレポリマーを用い、発泡剤として水を用いたものであったが、得られた物性値(見掛け密度、ヤング率、80℃におけるtanδ、及び、空隙率。表1参照)は、比較例1に係るポリウレタン樹脂発泡体と異なっていた。
【0061】
【0062】
(見掛け密度)
各例に係るポリウレタン樹脂発泡体について、見掛け密度を測定した。
見掛け密度は、先に説明した方法にしたがって測定した。
その結果を、上の表1に示した。
【0063】
(ヤング率)
各例に係るポリウレタン樹脂発泡体について、ヤング率を測定した。
ヤング率は、先に説明した方法にしたがって測定した。
その結果を、上の表1に示した。
【0064】
(80℃におけるtanδ)
各例に係るポリウレタン樹脂発泡体について、80℃におけるtanδを測定した。
80℃におけるtanδは、先に説明した方法にしたがって測定した。
その結果を、上の表1に示した。
【0065】
(空隙率)
各例に係るポリウレタン樹脂発泡体について、空隙率を測定した。
空隙率は、先に説明した方法にしたがって測定した。
その結果を、上の表1に示した。
【0066】
(カットレート)
各例に係るポリウレタン樹脂発泡体を研磨パッドとして用いて、カットレート(単位は、μm/min)を測定した。
カットレートとは、ドレッサーなどを用いて研磨パッドの研磨面を研削するとき(ドレスするとき)の研削速度のことであり、その値が高いほど研削速度(ドレス速度)が速いことを意味する。
カットレートを測定するための試験体としては、
図2に示したように、各例に係る研磨パッドをドーナツ状(外径:500mm、内径:90mm、厚み:約1.0mm)に加工したものを用いた。
また、前記試験体は、
図2に示したように、内径から外径に向けて等間隔に5mmの貫通孔が6個空けられたものであった。
装置としては、LP-18(ハイテクノス社製)を用いた。
また、パッド溝加工は、2.5mm幅、7.5mmピッチとした。
さらに、定盤温度チラーの設定は、25℃とした。
【0067】
カットレートの測定は、以下の手順にしたがって実施した。
(1)試験体の一方面を前記装置の定盤に貼り付けて、各孔(6個の孔)の深さ(初期深さD
1~D
6)をそれぞれ測定する。
(2)前記試験体の他方面(露出面)に水をかけながら、定盤及びドレッサーを備えたヘッドを回転させて、前記試験体を他方面側から研削した後、各孔(6個の孔)の深さ(研削後深さD’
1~D’
6)をそれぞれ測定する。
(3)各孔について、初期深さから研削後深さを減じた値をそれぞれ求めた後(D
1-D’
1~D
6-D’
6)、これら6個の算出値を算術平均することにより、カットレートを求める。
カットレートの測定においては、研削速度に応じて研削時間を調整し、いずれも試験体についても30μm以上研削した。
各例に係る研磨パッドについて、カットレートを測定した結果を上の表1に示した。
なお、カットレートの測定は、以下の表2に示した条件で実施した。
また、ドレッサーは、円柱状のものを24個準備した。
そして、円柱状のヘッドHの一方面の端縁側に、24個の円柱状のドレッサーDを等間隔に配した(
図3参照)。
具体的には、円柱状のヘッドHの一方面において、外周に沿って等間隔となるように、24個の円柱状のドレッサーDを配した。
なお、ヘッドHの中心とドレッサーDの中心との間の距離は106mmであった。
【0068】
【0069】
(研磨速度(レート))
カットレートを測定した後の各例に係る研磨パッドを用いて、SiCウェハを研磨したときの研磨速度(レート)を測定した。
研磨速度(レート)の測定は、以下の表3に示した条件で実施した。
研磨速度(レート)の測定は、以下の手順にしたがって実施した。
(1)SiCウェハの初期質量W0を測定した後、テンプレートを備えたヘッドにSiCウェハを取り付ける。
(2)SiCウェハの被研磨面に下記表3に示したように調製された研磨スラリー(砥粒 6g/潤滑剤 1L)をかけ流しながら、下記表3に示した荷重、定盤回転数、及び、ヘッド回転数で2min間の研磨(ラッピング)を実施する。
(3)研磨後のSiCウェハをヘッドから取り外して、研磨後質量W1を測定する。
(4)初期質量W0から研磨後質量W1を減じた値(W0-W1)を算出する。
(5)上記(4)で求めた質量変化の算出値を、SiCの比重(3.22g/cm3)、研磨面の面積、及び、研磨時間で除して、単位時間当たりのSiCウェハの厚みの変化量を算出する。そして、上記のように算出された単位時間当たりのSiCウェハの厚み変化量を研磨速度とする。
なお、上記測定は、3個のSiCウェハについて実施した。
そして、3個のSiCウェハについて求められたSiCウェハの研磨速度(すなわち、単位時間当たりのSiCウェハの厚み変化量)を算術平均した値を、各研磨パッドにおける代表値としての研磨速度(レート)(RR)とした。
また、上記測定は、SiCウェハにおけるSi面とC面との両方について実施した。
各例に係る研磨パッドについて、Si面における研磨速度(Si面-RR)及びC面における研磨速度(C面-RR)を測定した結果を上の表1に示した。
【0070】
【0071】
表1より、各実施例に係る研磨パッドでは、カットレートが十分に高い値を示していることが分かる。
このことから、各実施例に係る研磨パッドは、ドレッシングに要する時間が長くなることを抑制できることが分かる。
これに対し、比較例1~3に係る研磨パッドでは、カットレートが低い値を示していることから、ドレッシングに要する時間が長くなると考えられる。
また、各実施例に係る研磨パッドでは、Si面-RR及びC面-RRの値が比較的高い値を示していることが分かる。
このことから、各実施例に係る研磨パッドは、研磨レートの低下を抑制できることが分かる。
これに対し、特に、比較例4に係る研磨パッドでは、Si面-RR及びC面-RRの値が極めて低い値を示していることから、研磨レートの低下を抑制できないと考えられる。