(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175402
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】複合材料および部品
(51)【国際特許分類】
C01B 25/45 20060101AFI20231205BHJP
C04B 35/45 20060101ALI20231205BHJP
C01G 25/00 20060101ALI20231205BHJP
C01G 31/00 20060101ALI20231205BHJP
C01G 33/00 20060101ALI20231205BHJP
C01G 35/00 20060101ALI20231205BHJP
C01G 37/00 20060101ALI20231205BHJP
C01G 45/00 20060101ALI20231205BHJP
C01B 33/20 20060101ALI20231205BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20231205BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C01B25/45 M
C04B35/45
C01B25/45 Z
C01G25/00
C01G31/00
C01G33/00
C01G35/00 C
C01G37/00
C01G45/00
C01B33/20
C08L101/00
C08L63/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087828
(22)【出願日】2022-05-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 日本物理学会2021年秋季大会、令和3年9月20日(発表日) [刊行物等] 日本物理学会2021年秋季大会講演概要集、https://w4.gakkai-web.net/jps_search/2021au/index.html、令和3年9月1日(掲載日) [刊行物等] 日本物理学会2021年秋季大会、令和3年9月22日(発表日) [刊行物等] 日本物理学会2021年秋季大会講演概要集、https://w4.gakkai-web.net/jps_search/2021au/index.html、令和3年9月1日(掲載日) [刊行物等] 日本物理学会2021年秋季大会、令和3年9月22日(発表日) [刊行物等] 日本物理学会2021年秋季大会講演概要集、https://w4.gakkai-web.net/jps_search/2021au/index.html、令和3年9月1日(掲載日)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り [刊行物等] 粉体粉末冶金協会2021年度秋季大会(第128回講演大会)、令和3年11月9日(発表日) [刊行物等] 粉体粉末冶金協会2021年度秋季大会(第128回講演大会)概要集、https://confit.atlas.jp/guide/event/jspm2021a/static/summary、令和3年10月26日(掲載日)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り [刊行物等] 日本物理学会第77回年次大会、令和4年3月16日(発表日) [刊行物等] 日本物理学会第77回年次大会講演概要集、https://onsite.gakkai-web.net/jps/jps_search/2022sp/index.html、令和4年3月1日(掲載日) [刊行物等] 日本物理学会第77回年次大会、令和4年3月16日(発表日) [刊行物等] 日本物理学会第77回年次大会講演概要集、https://onsite.gakkai-web.net/jps/jps_search/2022sp/index.html、令和4年3月1日(掲載日)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り [刊行物等] Applied Physics Letters、第119(2021)巻、第171901頁、令和3年10月25日(発行日) [刊行物等] Applied Physics Letters、第119(2021)巻、第201906頁、令和3年11月16日(発行日) [刊行物等] Applied Physics Express、第15(2022)巻、第025504頁、令和4年1月21日(発行日)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り [刊行物等] 名古屋大学研究成果発信サイト、https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2021/11/post-141.html、令和3年11月24日(掲載日) [刊行物等] 朝日新聞、令和4年3月20日(発行日) [刊行物等] 東京工業大学特別講義、令和3年11月26日~令和3年12月10日(講義日) [刊行物等] TOCKIN’ NAGOYA、GAPファンドプログラム成果報告会、令和4年2月23日(開催日) [刊行物等] 科研費・基盤研究(S)研究会、令和4年4月1日(開催日) [刊行物等] tech-seminar.jp、セミナー「高分子材料の熱膨張メカニズムとその低減、評価」、令和3年9月17日(講演日) [刊行物等] 講義「物理工学セミナー」、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学、令和3年11月19日(講義日) [刊行物等] 第163回ニューガラス研究会オンライン講演会、令和4年5月27日(講演日)
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】竹中 康司
(72)【発明者】
【氏名】岡本 佳比古
(72)【発明者】
【氏名】横山 泰範
(72)【発明者】
【氏名】片山 尚幸
【テーマコード(参考)】
4G048
4G073
4J002
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB01
4G048AC08
4G048AD03
4G048AE05
4G073BA20
4G073BA63
4G073BA75
4G073BD16
4G073CN10
4G073FB01
4G073FB50
4G073FD01
4G073FD23
4G073GA03
4G073UA08
4G073UB11
4G073UB60
4J002CD001
4J002DH006
4J002GM00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】負熱膨張材料を含む新たな複合材料を提供する。
【解決手段】複合材料は、負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、正の線膨張係数を有する正熱膨張材料と、を含む。負熱膨張材料は、一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含む。正熱膨張材料は、樹脂を含む。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、
正の線膨張係数を有する正熱膨張材料と、
を含み、
前記負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含み:
一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);
一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);
一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)、
前記正熱膨張材料は、樹脂を含む
複合材料。
【請求項2】
前記正熱膨張材料は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリルブタジエン樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、およびポリエチレンテレフタレートのうち少なくとも1つを含む
請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、
正の線膨張係数を有する正熱膨張材料と、
を含み、
前記負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含み:
一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);
一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);
一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)、
前記正熱膨張材料は、セラミックを含む
複合材料。
【請求項4】
前記正熱膨張材料は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、およびシリコンカーバイトのうち少なくとも1つを含む
請求項3に記載の複合材料。
【請求項5】
負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、
正の線膨張係数を有する正熱膨張材料と、
を含み、
前記負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含み:
一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);
一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);
一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)、
前記正熱膨張材料は、金属および半導体のうち少なくともいずれかを含む
複合材料。
【請求項6】
前記正熱膨張材料は、アルミニウム、銅、鉄、チタン、真鍮、およびシリコンのうち少なくとも1つを含む
請求項5に記載の複合材料。
【請求項7】
負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、
正の線膨張係数を有する正熱膨張材料と、
を含み、
前記負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含み:
一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);
一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);
一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)、
前記正熱膨張材料は、絶縁体を含む
複合材料。
【請求項8】
前記正熱膨張材料は、ガラス、接着剤、顔料、およびゴムのうち少なくとも1つを含む
請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
前記酸化物は一般式(1)で表される酸化物であり、前記一般式(1)におけるxは、0.05~1.6である
請求項1から8のいずれかに記載の複合材料。
【請求項10】
前記酸化物は一般式(1)で表される酸化物であり、400Kにおける線膨張係数が-10ppm/K以下である
請求項1から8のいずれかに記載の複合材料。
【請求項11】
負の線膨張係数を有する第1の負熱膨張材料と、
負の線膨張係数を有し、前記第1の負熱膨張材料とは異なる第2の負熱膨張材料と、
を含み、
前記第1の負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含む:
一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);
一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);
一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)、
複合材料。
【請求項12】
前記第2の負熱膨張材料は、前記一般式(1)で表される酸化物、前記一般式(2)で表される酸化物および前記一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含む
請求項11に記載の複合材料。
【請求項13】
前記第1の負熱膨張材料と第2の負熱膨張材料とは、同じ一般式で表される酸化物から選択された異なる組成の負熱膨張材料である
請求項12に記載の複合材料。
【請求項14】
前記第1の負熱膨張材料と第2の負熱膨張材料とは、異なる一般式で表される酸化物である
請求項12に記載の複合材料。
【請求項15】
請求項1から8、11から14のいずれかに記載の複合材料を含む部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、負熱膨張材料を含む複合材料および部品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、物質は温度上昇に伴って熱膨張することが知られている。しかしながら、近年における産業技術の高度な発達は、固体材料の宿命とも言える熱膨張すら制御することを求める。長さにして10ppm(10-5)程度の、一般的な感覚からすればわずかな変化率でも、ナノメートルレベルの高精度が求められる半導体デバイス製造や、部品のわずかな歪が機能に大きな影響を与える精密機器などの分野では大きな問題である。また、複数の素材を組み合わせたデバイスでは、構成素材それぞれの熱膨張の違いから、界面剥離や断線といった他の問題も生じることがある。
【0003】
一方、温度上昇に伴って格子体積が減少する(負の熱膨張率を持った)負熱膨張材料も知られている。例えば、広い温度範囲で大きな負熱膨張を示すものとして、結晶構造が単斜晶のβ-Cu1.8Zn0.2V2O7が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記のような負熱膨張材料の特性を活かした複合材料に想到した。
【0006】
本開示はこうした状況に鑑みてなされており、その目的とするところの一つは、負熱膨張材料を含む新たな複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の複合材料は、負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、正の線膨張係数を有する正熱膨張材料と、を含む。負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含む。一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)。正熱膨張材料は、樹脂を含む。
【0008】
本開示の別の態様もまた、複合材料である。この複合材料は、負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、正の線膨張係数を有する正熱膨張材料と、を含む。負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含む。一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)。正熱膨張材料は、セラミックを含む。
【0009】
本開示のさらに別の態様もまた、複合材料である。この複合材料は、負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、正の線膨張係数を有する正熱膨張材料と、を含む。負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含む。一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)。正熱膨張材料は、金属および半導体のうち少なくともいずれかを含む。
【0010】
本開示のさらに別の態様もまた、複合材料である。この複合材料は、負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、正の線膨張係数を有する正熱膨張材料と、を含む。負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含む。一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)。正熱膨張材料は、絶縁体を含む。
【0011】
本開示のさらに別の態様は、複合材料。である。この複合材料は、負の線膨張係数を有する第1の負熱膨張材料と、負の線膨張係数を有し、第1の負熱膨張材料とは異なる第2の負熱膨張材料と、を含む。第1の負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含む。一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)。
【0012】
本開示のさらに別の態様は、部品である。この部品は、上記の複合材料を含む。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、負熱膨張材料を含む新たな複合材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】β-Cu
2P
2O
7およびβ-Cu
2V
2O
7と、Cu
1.8Zn
0.2V
2-yP
yO
7(y=0.1、0.2、0.4、0.6、1.0、2.0)のX線回折パターンを示す図である。
【
図2】β-Cu
2P
2O
7およびβ-Cu
2V
2O
7と、Cu
1.8Zn
0.2V
2-yP
yO
7(y=1.5、1.8)のX線回折パターンを示す図である。
【
図3】Cu
1.8Zn
0.2V
2-yP
yO
7の熱膨張特性を示す図である。
【
図4】Cu
1.5Zn
0.5V
1.4P
0.6O
7の熱膨張特性を示す図である。
【
図5】Cu
2V
2-yP
yO
7(x=0.2、0.6)の熱膨張特性を示す図である。
【
図6】スプレードライ法で作製したCu
1.8Zn
0.2V
1.8P
0.2O
7(ラインL9)のX線回折パターンを示す図である。
【
図7】Zn
2-xMg
xP
2O
7のX線回折パターンを示す図である。
【
図8】Zn
2P
2-yA
yO
7(AはSn、Ge、SiおよびVのいずれか)のX線回折パターンを示す図である。
【
図9】Zn
2-xMg
xP
2O
7(x=0、0.2、0.4、0.6、0.8、2)の熱膨張特性を示す図である。
【
図10】Zn
1.64Mg
0.3Al
0.06P
2O
7の熱膨張特性を示す図である。
【
図11】Zn
2P
2-yA
yO
7(x=0.1、AはSnおよびSiのいずれか)の熱膨張特性を示す図である。
【
図12】Ti
2-xM
xO
3(MはMn、Cr、V、Si、Ta、NbおよびZrのいずれか)のX線回折パターンを示す図である。
【
図13】Ti
2-xM
xO
3(MはCrおよびNbのいずれか)の熱膨張特性を示す図である。
【
図14】Ti
2-xM
xO
3(MはSiおよびAlのいずれか)の熱膨張特性を示す図である。
【
図15】Cu
1.8Zn
0.2V
2-yP
yO
7の色を示す図である。
【
図16】実施の形態に係る複合材料の熱膨張特性を示す図である。
【
図17】実施の形態に係る複合材料の熱膨張特性を示す図である。
【
図18】実施の形態に係る複合材料の熱膨張特性を示す図である。
【
図19】実施の形態に係る複合材料の熱膨張特性を示す図である。
【
図20】実施の形態に係る複合材料のX線回折パターンを示す図である。
【
図21】実施の形態に係る複合材料の熱膨張特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施の形態に係る複合材料は、負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、正の線膨張係数を有する正熱膨張材料とを含む。これにより、様々な正熱膨張材料の特性を有し、温度変化による体積変化を抑えることが可能な複合材料を提供することができる。
【0016】
本開示の別の実施の形態に係る複合材料は、負の線膨張係数を有する第1の負熱膨張材料と、負の線膨張係数を有し、第1の負熱膨張材料とは異なる第2の負熱膨張材料とを含む。これにより、温度変化による体積変化を抑えることが可能な複合材料を提供することができる。
【0017】
まず、本発明者らにより開発された新規な負熱膨張材料について説明する。その後、その負熱膨張材料を含む複合材料について説明する。
【0018】
[新規な負熱膨張材料]
本発明者らは、負熱膨張が発現する物質の候補として、Cu2V2O7系に注目した。結晶構造が直方晶のα-Cu2V2O7は、強誘電と弱常磁性が共存するマルチフェロイック物質として関心が持たれているが、室温を含むそれより高温側の比較的広い温度域で、誘電不安定性に起因すると思われる、結晶格子の異方的な熱変形が見られる。この結果、広い温度範囲で温度の上昇に伴いユニットセル体積が収縮する負熱膨張が出現する。
【0019】
Cu2V2O7は様々な元素で置換することにより、直方晶のα相の他、単斜相のβ相、三斜晶のγ相をとりうる。そこで、本発明者らは、CuサイトやVサイトの一部を他の元素で置換した場合に、従来のα-Cu2V2O7系では実現し得ない負熱膨張特性を発現することを見出し、以下に例示する負熱膨張材料を考案した。
【0020】
また、本発明者らは、負熱膨張が発現する物質のさらなる候補として、Zn2P2O7系に注目した。Zn2P2O7は低温で単斜晶I2/cのα相、高温で単斜晶C2/mのβ相が安定し、温度の上昇によって約405Kで1.68%(格子定数からの計算値)の大きな収縮を伴う転移を示す。本発明者らは、ZnサイトやPサイトの一部を他の元素で置換した場合に、負熱膨張特性を発現することを見出し、以下に例示する負熱膨張材料を考案した。
【0021】
また、本発明者らは、負熱膨張が発現する物質のさらなる候補として、Ti2O3系に注目した。コランダム型Ti2O3は室温、常圧で安定しており、六方晶R-3c(「-」は3の上にある)で、ハニカム格子の積層で構成されている。Ti2O3は400~600Kで金属絶縁体転移を示すモットハバード型絶縁体でもあり、転移の際にユニットセルが異方的な正の熱膨張を示す。本発明者らは、Tiサイトの一部を他の元素で置換した場合に、負熱膨張特性を発現することを見出し、以下に例示する負熱膨張材料を考案した。
【0022】
本開示のある態様の負熱膨張材料は、一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。)で表される酸化物を含む。
【0023】
この態様によると、比較的高価なVを比較的安価なPで置換することで、負熱膨張の特性をある程度維持しつつ、より安価な新たな負熱膨張材料を提供できる。
【0024】
酸化物は、400Kにおける線膨張係数が-10ppm/K以下であってもよい。
【0025】
一般式(1)におけるxは、0<x≦1.6を満たしてもよい。より好ましくは、xは、0.05~1.6である。さらに好ましくは、xは、0.1~1.0である。これにより、CuがRで置換されていないα-Cu2V2O7の線膨張係数よりも絶対値の大きな負の線膨張係数を実現できる。
【0026】
一般式(1)におけるyは、0<y≦1.8を満たしてもよい。より好ましくは、yは、0.05~1.8である。さらに好ましくは、yは、0.1~1.2である。これにより、VがPで置換されていないCu2-xRxV2O7よりも安価な負熱膨張材料を提供できる。
【0027】
酸化物は、単斜晶のβ相を含んでもよい。
【0028】
結晶系が単斜晶の酸化物および結晶系が直方晶の酸化物の少なくとも一方を含んでもよい。また、酸化物は、空間群がC2/c、C2/m、Fdd2から選ばれるいずれかの結晶構造を有してもよい。
【0029】
負熱膨張材料は、100~500Kの温度範囲において負熱膨張を示してもよい。
【0030】
負熱膨張材料は、100~500Kの温度範囲において線膨張係数が-10ppm/K以下であってもよい。
【0031】
負熱膨張材料は、一般式(1)におけるyを変えることによって、色が変化してもよい。この態様によれば、塗料等の熱膨張制御に利用できる。
【0032】
本開示の他の態様の負熱膨張材料は、一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。)で表される酸化物を含む。
【0033】
この態様によると、室温付近で負熱膨張が大きい安価な新たな負熱膨張材料を提供できる。
【0034】
一般式(2)において、x=0、0<y<2、A=Vである酸化物は除いてもよい。
【0035】
一般式(2)におけるxは、0<x≦1.6を満たしてもよい。より好ましくは、xは、0.05~1.6である。
【0036】
一般式(2)におけるyは、0<y≦1.8を満たしてもよい。より好ましくは、yは、0.05~1.6である。
【0037】
負熱膨張材料は、200~400Kの温度範囲において負熱膨張を示してもよい。
【0038】
負熱膨張材料は、200~400Kの温度範囲において線膨張係数が-10ppm/K以下であってもよい。
【0039】
本開示のさらに他の態様の負熱膨張材料は、一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)で表される酸化物を含む。
【0040】
この態様によると、安価な新たな負熱膨張材料を提供できる。
【0041】
一般式(3)におけるxは、0<x≦1.6を満たしてもよい。より好ましくは、xは、0.05~1.6であり、さらに好ましくは、0.1~1.0である。
【0042】
負熱膨張材料は、100~500Kの温度範囲において負熱膨張を示してもよい。
【0043】
負熱膨張材料は、100~500Kの温度範囲において線膨張係数が-10ppm/K以下であってもよい。
【0044】
本開示のさらに他の態様は、負熱膨張材料の製造方法である。この製造方法は、一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。)で表される化合物の原料と有機酸とを含む水溶液を準備する工程を含む。
【0045】
本開示のさらに他の態様もまた、負熱膨張材料の製造方法である。この製造方法は、一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)と(0,2)は除く。)で表される化合物の原料と有機酸とを含む水溶液を準備する工程を含む。
【0046】
[第1の実施形態]
固相反応法を用いてCu2-xRxV2-yPyO7(RはZn)の多結晶焼結体(セラミックス)試料を作製した。具体的には、化学量論比で秤量したCuO、ZnO、V2O3またはV2O5、(NH4)2HPO4または(NH4)H2PO4を、メノウ乳鉢と乳棒により大気中で1時間混合する。次に、混合した粉末をペレット状にプレスし、温度873~953Kの大気中で10時間加熱した。得られた粉末を、スパークプラズマ焼結(SPS)炉(SPSシンテックス株式会社製)を用いて焼結し、酸化物焼結体を得た。焼結は、真空(<10-1Pa)下、グラファイトダイを用いて723Kで5分間行った。なお、出発原料としては、上記に限られるものではなく、P2O5、Zn2P2O7、Cu2P2O7などが使用できる。また、焼結体とは、原料を焼結して得られたものであり、その形態は、粉末や、粉末を凝集して所定形状に加工されたもの等、あらゆる形態を取り得る。
【0047】
その後、それぞれの試料を粉末X線回折(XRD)法(測定温度295K、CuKαの特性X線:波長λ=0.15418nm)および放射光温度変化X線回折法(波長λ=0.06521nm)を用いて結晶構造を評価した。
図1は、β-Cu
2P
2O
7およびβ-Cu
2V
2O
7と、Cu
1.8Zn
0.2V
2-yP
yO
7(y=0.1、0.2、0.4、0.6、1.0、2.0)のX線回折パターンを示す図である。
図2は、β-Cu
2P
2O
7およびβ-Cu
2V
2O
7と、Cu
1.8Zn
0.2V
2-yP
yO
7(y=1.8、1.5)のX線回折パターンを示す図である。なお、β-Cu
2P
2O
7およびβ-Cu
2V
2O
7のX線回折パターンは計算値である。
【0048】
図1および
図2に示すように、β-Cu
2P
2O
7(ラインL1)は、高温相に該当する酸化物焼結体であり、空間群がC2/mの単斜晶の結晶構造を有する。一方、β-Cu
2V
2O
7(ラインL8)も、高温相に該当する酸化物焼結体であるが、空間群がC2/cの単斜晶の結晶構造を有する。なお、いずれの酸化物焼結体も、一部の元素を置換したり、異なる方法で製造したりすることで、空間群がC2/c、C2/m、Fdd2のいずれかの結晶構造を有する場合もあり得る。
【0049】
また、
図1および
図2に示すように、ZnでCuの一部が置換されているCu
1.8Zn
0.2V
2-yP
yO
7(ラインL2~ラインL7、ラインL9、ラインL10)も結晶構造がβ相(単斜晶)である。つまり、一般式(1)Cu
2-xR
xV
2-yP
yO
7において、RがCuを置換する元素を含み、Vの一部をPで置換することで、Cu
2V
2O
7の組成では高温(977K以上)でなければ安定して存在しないβ相が、室温を含む広い温度範囲で安定して存在できることが推察される。なお、本実施の形態に係る負熱膨張材料は、含有する酸化物が必ずしも単斜晶の場合に限られず、結晶系が単斜晶の酸化物および結晶系が直方晶の酸化物の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0050】
図3は、β-Cu
1.8Zn
0.2V
2-yP
yO
7の熱膨張特性を示す図である。縦軸は100Kの長さLを基準とした長さ変化ΔL/Lである。長さ変化は、レーザー熱膨張計(LIX-2:株式会社アルバック製)を用いて算出した線膨張係数αを用いて算出している(測定温度範囲100~500K)。
【0051】
図3に示すように、β-Cu
1.8Zn
0.2V
2-yP
yO
7におけるVを置換したPの割合yの値が0.1、0.4、0.6の場合、100~500Kの温度範囲において負熱膨張を示しており、少なくとも400Kにおける線膨張係数が-10ppm/K以下である。特に、yの値が0.1や0.4の場合、100~500Kの温度範囲において線膨張係数が-10ppm/K以下となり、室温を含む広い温度範囲で大きな負熱膨張を示していることがわかる。
【0052】
なお、本実施の形態ではCuの置換元素としてZnを例に説明しているが、例えば、Cuの一部をMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Sn等の元素で置換した場合も、負熱膨張を示すと推察される。
【0053】
次に、Cuを置換するZnの割合の影響について説明する。
図4は、Cu
1.5Zn
0.5V
1.4P
0.6O
7の熱膨張特性を示す図である。
図4に示すように、Cuを置換するZnの割合xを0.5にした場合でも、100~500Kの温度範囲において負熱膨張を示しており、少なくとも400Kにおける線膨張係数が-10ppm/K以下である。なお、Cuを置換する元素Rの割合xは、0<x≦1.6を満たしてもよい。より好ましくは、xは、0.05~1.6である。さらに好ましくは、xは、0.1~1.0である。これにより、Cuが元素Rで置換されていないα-Cu
2V
2O
7の線膨張係数よりも絶対値の大きな負の線膨張係数を実現できる。
【0054】
図5は、Cu
2V
1.8P
0.2O
7およびCu
2V
1.4P
0.6O
7の熱膨張特性を示す図である。
図5に示すように、Cuを置換せず、VをPで置換した場合でも。100~500Kの温度範囲において負熱膨張を示しており、少なくとも400Kにおける線膨張係数が-10ppm/K以下である。
【0055】
上述のように、本実施の形態に係る負熱膨張材料は、一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。)で表される酸化物焼結体である。これにより、比較的高価なVを比較的安価なPで置換することで、負熱膨張の特性をある程度維持しつつ、より安価な新たな負熱膨張材料を提供できる。また、一般式(1)におけるyは、0<y≦1.8を満たしてもよい。より好ましくは、yは、0.05~1.8である。さらに好ましくは、yは、0.1~1.2である。これにより、VがPで置換されていないCu2-xRxV2O7よりも安価な負熱膨張材料を提供できる。
【0056】
[第2の実施形態]
スプレードライ法を用いてβ-Cu1.8Zn0.2V2-yPyO7の多結晶焼結体(セラミックス)試料を作製した。具体的には、固相反応法で得られたCu2-xZnxV2-yPyO7の試料粉末1gに対して無水クエン酸3g、純水約100mlを加え、試料粉末が全て溶けるまでマグネティックスターラーを用いて撹拌する。
【0057】
その後、得られた水溶液をスプレードライヤー(ヤマト科学ADL-311SA)を用い、噴霧レート2ml/min、温度150℃の条件で、噴霧乾燥し、クエン酸塩の粉末を得る。この粉末をアルミナルツボに入れ、大気中で673K、5~10時間加熱してクエン酸を分解する。得られたものを乳鉢でよく砕き、ペレット状に成型し、アルミナルツボに入れ、電気炉を用いて873~953Kの大気中で、2~10時間焼成する。
【0058】
前述のクエン酸の替わりに酢酸などの有機酸を用いてもよい。また、原料をモル比で混合の後、直接クエン酸と混合して水溶液にしてもよい。なお、クエン酸水溶液の濃度や噴霧乾燥の条件等は前述の限りではない。また、クエン酸の分解過程と化学反応の過程を連続して行ってもよい。また、噴霧乾燥から最終的な化学反応までを連続した工程で行ってもよい。
【0059】
図6は、スプレードライ法で作製したCu
1.8Zn
0.2V
1.8P
0.2O
7(ラインL11)のX線回折パターンを示す図である。ラインL11に示すパターンより、固相反応法で作製したCu
1.8Zn
0.2V
1.8P
0.2O
7(ラインL6)と同じ結晶構造であることがわかる。
【0060】
このように、スプレードライ法を用いて製造したβ-Cu1.8Zn0.2V1.8P0.2O7は、焼成条件を最適化することで、固相反応法を用いて製造したβ-Cu1.8Zn0.2V1.8P0.2O7と同等の大きな線膨張係数を得ることができ、また、少なくとも従来知られているα-Cu2V2O7と同等以上の線膨張係数を得ることができる。
【0061】
前述のように、スプレードライ法による負熱膨張材料の製造方法は、一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。)で表される化合物の原料と有機酸とを含む水溶液を準備する工程を含む。この製造方法によると、CuがZnで置換されていないα-Cu2V2O7の線膨張係数よりも絶対値の大きな負の線膨張係数を有する負熱膨張材料を、低温で扱いが容易な水溶液という形態を利用することで、比較的安価に製造できる。また、Vの一部をPで置換できるため、より安価な負熱膨張材料を提供できる。
【0062】
また、前述の製造方法は、水溶液を用いてスプレードライ法により乾燥、造粒し、有機酸塩の粉末を生成する工程を含んでいる。これにより、高温での造粒や粉砕といった過大なエネルギーや高価な装置を必要とせずに有機酸塩の粉末を製造できる。
【0063】
また、前述の製造方法は、有機酸塩の粉末を加熱し、有機酸を分解する工程と、有機酸が分解された粉末を焼成して酸化物焼結体を生成する工程と、を含んでいる。これにより、比較的低エネルギーで所望の形状の酸化物焼結体を生成できる。
【0064】
上述のように、本開示の実施の形態に係る製造方法で製造された負熱膨張材料は、100~500K程度までの広い温度範囲で、温度変化に対して線膨張係数がほぼ一定であり、材料機能設計が容易である。また、主にCu、Zn、Pといった安価な元素で構成されていること、酸化物で合成温度も低く、製造が容易であること、微粒子が得られること、などの工業的メリットがある。
【0065】
[第3の実施形態]
固相反応法を用いてZn2-xTxP2O7(TはMg)の多結晶焼結体(セラミックス)試料を作製した。具体的には、化学量論比で秤量したZnO、MgO、(NH4)2HPO4または(NH4)H2PO4を、メノウ乳鉢と乳棒により大気中で1時間混合する。次に、混合した粉末をペレット状にプレスし、温度1023~1173Kの大気中で2~10時間加熱した。焼結性が不十分であるときは、得られた試料をメノウ乳鉢と乳棒により大気中で砕いて粉末にし、上記の焼成を再度行うか、スパークプラズマ焼結(SPS)炉(SPSシンテックス株式会社製)を用いて焼結した。SPS焼結は、真空(<10-1Pa)下、グラファイトダイを用いて823~1023Kで5分間行った。なお、出発原料としては、上記に限られるものではなく、P2O5、Zn2P2O7、Mg2P2O7などが使用できる。Pの一部をT(例えばV)で置換するときは、出発原料としてT単体の粉末や、V2O5などTの酸化物を用いることができる。
【0066】
その後、それぞれの試料を粉末X線回折(XRD)法(測定温度295K、CuKαの特性X線:波長λ=0.15418nm)および放射光温度変化X線回折法(波長λ=0.06521nm)を用いて結晶構造を評価した。
図7は、Zn
2-xMg
xP
2O
7のX線回折パターンを示す図である。
図8は、Zn
2P
2-yA
yO
7(AはSn、Ge、SiおよびVのいずれか)のX線回折パターンを示す図である。
【0067】
図7に示すように、Zn
2-xT
xP
2O
7(TはMg)はxが0から2までの全ての組成域で、単相試料として得られることが確認される。室温においては、x=0、0.2、0.4、0.6が空間群I2/c、x=0.8、1.2が空間群C2/m、x=1.6、2が空間群B21/cの結晶構造を有する。
【0068】
図8に示すように、Zn
2P
2-yA
yO
7(AはSn、Ge、SiおよびVのいずれか)は、その主成分がZn
2P
2O
7と同じ空間群の結晶構造を有することを示しており、Aとして様々な元素をとり得ることがわかる。
【0069】
図9は、Zn
2-xMg
xP
2O
7(x=0、0.2、0.4、0.6、0.8、2)の熱膨張特性を示す図である。
図10は、Zn
1.64Mg
0.3Al
0.06P
2O
7の熱膨張特性を示す図である。
図11は、Zn
2P
2-yA
yO
7(x=0.1、AはSnおよびSiのいずれか)の熱膨張特性を示す図である。
図9~
図11共に、縦軸は100Kの長さLを基準とした長さ変化ΔL/Lである。長さ変化は、レーザー熱膨張計(LIX-2:株式会社アルバック製)を用いて算出した線膨張係数αを用いて算出している(測定温度範囲100~500K)。
【0070】
図9に示すように、Zn
2-xMg
xP
2O
7におけるZnを置換したMgの割合xの値が0.2、0.4、0.6、0.8の場合、200~400Kの温度範囲において負熱膨張を示している。特に、xの値が0.6や0.8の場合、室温を含む広い温度範囲で大きな負熱膨張を示していることがわかる。
【0071】
なお、本実施の形態ではZnの置換元素としてMgを例に説明しているが、例えば、Znの一部をAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Bi等の元素で置換した場合も、負熱膨張を示すと推察される。例えば、Znの一部をMgとAlで置換したZn
1.64Mg
0.3Al
0.06P
2O
7も、
図10に示すように、負熱膨張を示す。
【0072】
図11に示すように、Zn
2P
2-yA
yO
7(AはSnおよびSiのいずれか)は、400K付近において負熱膨張を示している。
【0073】
上述のように、本実施の形態に係る負熱膨張材料は、一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。)で表される酸化物焼結体である。これにより、室温付近で負熱膨張が大きい安価な新たな負熱膨張材料を提供できる。また、一般式(2)におけるxは、0<x≦1.6を満たしてもよい。より好ましくは、xは、0.05~1.6である。さらに好ましくは、xは、0.1~1.0である。また、一般式(2)におけるyは、0<y≦1.8を満たしてもよい。より好ましくは、yは、0.05~1.6である。さらに好ましくは、yは、0.5~1.2である。
【0074】
[第4の実施形態]
第2の実施形態と同様の方法で、スプレードライ法でもZn2-xTxP2O7(TはMg)の多結晶焼結体(セラミックス)試料を作製した。すなわち、本実施の形態に係る負熱膨張材料の製造方法は、一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。)で表される化合物の原料と有機酸とを含む水溶液を準備する工程を含む。この製造方法によると、絶対値の大きな負の線膨張係数を有する負熱膨張材料を、低温で扱いが容易な水溶液という形態を利用することで、比較的安価に製造できる。
【0075】
[第5の実施形態]
固相反応によりTi2-xMxO3(MはAl、Mn、Cr、V、Si、Ta、NbおよびZrのいずれか)の多結晶焼結体(セラミックス)試料を作製した。具体的には、化学量論比で秤量したTiO2、Ti、Mの粉末を、メノウ乳鉢と乳棒により大気中もしくはグローブボックス内で1時間混合する。次に、混合した粉末をペレット状にプレスし、石英管に真空封管(<10-3Pa)し、温度1223~1323Kで20~50時間加熱した。焼結性が不十分であるときは、得られた試料をメノウ乳鉢と乳棒により大気中もしくはグローブボックス内で砕いて粉末にし、スパークプラズマ焼結(SPS)炉(SPSシンテックス株式会社製)を用いて焼結した。焼結は、真空(<10-1Pa)下、グラファイトダイを用いて1173Kで2~5分間行った。なお、出発原料としては、上記に限られるものではなく、Cr2O3などが使用できる。
【0076】
その後、それぞれの試料を粉末X線回折(XRD)法(測定温度295K、CuKαの特性X線:波長λ=0.15418nm)および放射光温度変化X線回折法(波長λ=0.06521nm)を用いて結晶構造を評価した。
図12は、Ti
2-xM
xO
3(MはMn、Cr、V、Si、Ta、NbおよびZrのいずれか)のX線回折パターンを示す図である。
【0077】
図12に示すように、Ti
2-xM
xO
3(MはMn、Cr、V、Si、Ta、NbおよびZrのいずれか)は、その主成分がTi
2O
3と同じ空間群の結晶構造を有することを示しており、Mとして様々な元素をとり得ることを示している。
【0078】
図13は、Ti
2-xM
xO
3(MはCrおよびNbのいずれか)の熱膨張特性を示す図である。
図14は、Ti
2-xM
xO
3(MはSiおよびAlのいずれか)の熱膨張特性を示す図である。
図13および
図14共に、縦軸は300Kの長さLを基準とした長さ変化ΔL/Lである。長さ変化は、レーザー熱膨張計(LIX-2:株式会社アルバック製)を用いて算出した線膨張係数αを用いて算出している(測定温度範囲100~700K)。
【0079】
図13および
図14に示すように、Ti
2-xM
xO
3(MはCr、Nb、SiおよびAlのいずれか)は、400~600Kの温度範囲において負熱膨張を示している。
【0080】
なお、本実施の形態ではTiの置換元素としてCr、Nb、SiおよびAlを例に説明しているが、例えば、Tiの一部をMg、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Bi等の元素で置換した場合も、負熱膨張を示すと推察される。
【0081】
上述のように、本実施の形態に係る負熱膨張材料は、一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)で表される酸化物焼結体である。これにより、安価な新たな負熱膨張材料を提供できる。
【0082】
[第6の実施形態]
一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。)で表される負熱膨張材料の色について説明する。
【0083】
図15は、本実施の形態に係る負熱膨張材料であるCu
1.8Zn
0.2V
2-yP
yO
7の色を示す図である。一般式(1)においてR=Zn、x=0.2である負熱膨張材料Cu
1.8Zn
0.2V
2-yP
yO
7は、yを0から2.0まで変化させることにより、赤褐色(y=0)、橙色(y=0.6)、黄色(y=1.0)、黄緑色(y=1.5)、薄緑色(y=1.8)、水色(y=2.0)のように色を変化させることができる。バナジウムとリンの固溶比(y)は任意に変化させることができるので、本図に示した例の間の任意の色の負熱膨張材料を製造することができる。このように、一般式(1)Cu
2-xR
xV
2-yP
yO
7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。)で表される負熱膨張材料は、yを変えることにより色を変化させることができるので、塗料等の熱膨張制御に利用することができる。
【0084】
[複合材料]
本実施の形態に係る複合材料は、負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、正の線膨張係数を有する正熱膨張材料と、を含む。これにより、正熱膨張材料の特性を維持しつつ、温度変化に対する体積変化が抑制された複合材料が実現できる。
【0085】
負熱膨張材料は、上述した一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含んでもよい。複合材料は、負熱膨張材料として、一般式(1)で表される酸化物のみ、一般式(2)で表される酸化物のみ、一般式(3)で表される酸化物のみ、一般式(1)で表される酸化物と一般式(2)で表される酸化物との組合せ、一般式(1)で表される酸化物と一般式(3)で表される酸化物との組合せ、一般式(2)で表される酸化物と一般式(3)で表される酸化物との組合せ、一般式(1)で表される酸化物と一般式(2)で表される酸化物と一般式(3)で表される酸化物との組合せを含んでもよい。複合材料は、同じ一般式で表される酸化物から選択された異なる組成の負熱膨張材料を含んでもよい。複合材料は、更に、Mn-Zn-Sn-N系逆ペロフスカイト型マンガン窒化物、Mn-Zn-Ge-N系逆ペロフスカイト型マンガン窒化物など、一般式(1)、(2)、(3)で表される酸化物以外の任意の種類の負熱膨張材料を含んでもよい。複合材料は、2種以上の負熱膨張材料を含んでもよい。
【0086】
正熱膨張材料は、金属、半導体、絶縁体、樹脂、セラミックなどを含んでもよい。絶縁体は、ガラス、ゴム、接着剤、顔料などを含んでもよい。複合材料は、これらの正熱膨張材料のうち1種のみを含んでもよいし、任意の2種以上の組合せを含んでもよい。
【0087】
本実施の形態に係る複合材料において、正熱膨張材料は樹脂を含んでもよい。正熱膨張材料は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリルブタジエン樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、およびポリエチレンテレフタレートのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0088】
本実施の形態に係る複合材料において、正熱膨張材料はセラミックを含んでもよい。正熱膨張材料は、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、およびシリコンカーバイトのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0089】
本実施の形態に係る複合材料において、正熱膨張材料は金属および半導体のうち少なくともいずれかを含んでもよい。正熱膨張材料は、例えば、アルミニウム、銅、鉄、チタン、真鍮、およびシリコンのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0090】
本実施の形態に係る複合材料において、正熱膨張材料は絶縁体を含んでもよい。正熱膨張材料は、例えば、ガラス、接着剤、顔料、およびゴムのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0091】
本実施の形態に係る複合材料は、負の線膨張係数を有する第1の負熱膨張材料と、負の線膨張係数を有し、第1の負熱膨張材料とは異なる第2の負熱膨張材料と、を含み、第1の負熱膨張材料は、一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含む。これにより、温度変化に対する体積変化が抑制された複合材料が実現できる。
【0092】
複合材料は、第1の負熱膨張材料として、一般式(1)で表される酸化物のみ、一般式(2)で表される酸化物のみ、一般式(3)で表される酸化物のみ、一般式(1)で表される酸化物と一般式(2)で表される酸化物との組合せ、一般式(1)で表される酸化物と一般式(3)で表される酸化物との組合せ、一般式(2)で表される酸化物と一般式(3)で表される酸化物との組合せ、一般式(1)で表される酸化物と一般式(2)で表される酸化物と一般式(3)で表される酸化物との組合せを含んでもよい。
【0093】
複合材料は、第2の負熱膨張材料としても同様に、一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含んでもよい。第1の負熱膨張材料と第2の負熱膨張材料とは、同じ一般式で表される酸化物から選択された異なる組成の負熱膨張材料であってもよい。第1の負熱膨張材料と第2の負熱膨張材料とは、異なる一般式で表される酸化物であってもよい。複合材料は、第2の負熱膨張材料として、Mn-Zn-Sn-N系逆ペロフスカイト型マンガン窒化物、Mn-Zn-Ge-N系逆ペロフスカイト型マンガン窒化物など、一般式(1)、(2)、(3)で表される酸化物以外の任意の種類の負熱膨張材料を含んでもよい。複合材料は、3種以上の負熱膨張材料を含んでもよい。
【0094】
本実施の形態に係る部品は、上記の複合材料を含む。これにより、温度変化に対する体積変化が抑制された部品が実現できる。具体的には、温度による形状や寸法の変化を嫌う精密光学部品や機械部品、プロセス機器・工具、ファイバーグレーティングの温度補償材、プリント回路基板、電子部品の封止材、熱スイッチ、冷凍機部品、人工衛星部品などに利用することができる。特に、正の熱膨張率の大きな樹脂のマトリックス相に負熱膨張材料が分散された複合材料とすることで、樹脂材料においても熱膨張を抑制、制御することが可能となるため、様々な用途での利用が可能となる。
【0095】
図16は、本実施の形態に係る複合材料の熱膨張特性を示す図である。
図16に示す複合材料は、線膨張係数αが-10ppm/K以上のCu
1.8Zn
0.2V
1.6P
0.4O
7を30vol%、線膨張係数αが60ppm/Kのエポキシ樹脂を70vol%、混合したものである。
図16に示すように、本実施の形態に係る複合材料は、エポキシ樹脂単独の場合よりも温度変化に対する熱膨張(体積変化)が大きく抑制されている。エポキシ樹脂の代わりに、エンジニアリングプラスチック、ポリビニルブチラール樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料やアルミニウムのような金属材料を含んでもよい。
【0096】
図17も、本実施の形態に係る複合材料の熱膨張特性を示す図である。
図17に示す3つの複合材料のうち1つは、
図16に示す複合材料である。もう1つは線膨張係数αが-10ppm/K以上のCu
1.8Zn
0.2V
1.0P
1.0Oを30vol%、線膨張係数αが60ppm/Kのエポキシ樹脂を70vol%、混合したものである。残りの1つはCu
1.8Zn
0.2VOを30vol%、線膨張係数αが60ppm/Kのエポキシ樹脂を70vol%、混合したものである。
図16に示す本実施の形態に係る複合材料も、エポキシ樹脂単独の場合よりも温度変化に対する熱膨張(体積変化)が大きく抑制されている。
【0097】
図18も、本実施の形態に係る複合材料の熱膨張特性を示す図である。
図18に示す3つの複合材料は、それぞれ、負熱膨張材料であるZn
2-x-yMg
xAl
yP
2O
7を30vol%、正熱膨張材料であるアルミニウムを70vol%、混合したものである。第1の試料は、x=0.30、y=0.06であり、350℃で2分間焼結したものである。第2の試料は、x=0.30、y=0.06であり、350℃で7分間焼結したものである。第3の試料は、x=0.40、y=0であり、350℃で7分間焼結したものである。いずれの試料においても、アルミニウム単体の場合よりも温度変化に対する熱膨張(体積変化)が大きく抑制されている。
【0098】
図19も、本実施の形態に係る複合材料の熱膨張特性を示す図である。
図19に示す複合材料は、負熱膨張材料であるZn
1.6Mg
0.4P
2O
7を30vol%、正熱膨張材料である銅を70vol%、混合し、475℃で5分間焼結したものである。この試料においても、銅単体の場合よりも温度変化に対する熱膨張(体積変化)が大きく抑制されている。
【0099】
図20は、本実施の形態に係る複合材料のX線回折パターンを示す図である。
図20に示す2つの複合材料は、それぞれ、負熱膨張材料であるZn
1.6Mg
0.4P
2O
7を30vol%、正熱膨張材料であるAl
2O
3を70vol%、混合したものである。第1の試料は、これらを800℃で2分間焼結したものである。第2の試料は、これらを750℃で2分間焼結したものである。いずれの試料においても、負熱膨張材料であるZn
1.6Mg
0.4P
2O
7単独のX線回折パターンと、正熱膨張材料であるAl
2O単独のX線回折パターンが観測されており、複合材料には、負熱膨張材料であるZn
1.6Mg
0.4P
2O
7と、正熱膨張材料であるAl
2O
3が、それぞれ結晶構造を維持したまま含まれていることが分かる。したがって、これらの複合材料は、負熱膨張材料が含まれることによって、Al
2O
3の場合よりも温度変化に対する熱膨張(体積変化)が抑制されることが予測できる。
【0100】
図21は、本実施の形態に係る複合材料の熱膨張特性を示す図である。
図21に示す複合材料は、
図20に示す第2の試料である。
図21に示す本実施の形態に係る複合材料も、Al
2O
3単独の場合よりも温度変化に対する熱膨張(体積変化)が大きく抑制されている。
【0101】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0102】
以上の実施形態により具体化される発明を一般化すると、以下の技術的思想が導かれる。
【0103】
(第1態様)負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、正の線膨張係数を有する正熱膨張材料と、を含み、負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含み:一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)、正熱膨張材料は、樹脂を含む複合材料。
【0104】
(第2態様)正熱膨張材料は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリルブタジエン樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、およびポリエチレンテレフタレートのうち少なくとも1つを含む第1態様の複合材料。
【0105】
(第3態様)負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、正の線膨張係数を有する正熱膨張材料と、を含み、負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含み:一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)、正熱膨張材料は、セラミックを含む複合材料。
【0106】
(第4態様)正熱膨張材料は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、およびシリコンカーバイトのうち少なくとも1つを含む第3態様の複合材料。
【0107】
(第5態様)負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、正の線膨張係数を有する正熱膨張材料と、を含み、負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含み:一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)、正熱膨張材料は、金属および半導体のうち少なくともいずれかを含む複合材料。
【0108】
(第6態様)正熱膨張材料は、アルミニウム、銅、鉄、チタン、真鍮、およびシリコンのうち少なくとも1つを含む第5態様の複合材料。
【0109】
(第7態様)負の線膨張係数を有する負熱膨張材料と、正の線膨張係数を有する正熱膨張材料と、を含み、負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含み:一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)、正熱膨張材料は、絶縁体を含む複合材料。
【0110】
(第8態様)正熱膨張材料は、ガラス、接着剤、顔料、およびゴムのうち少なくとも1つを含む第7態様の複合材料。
【0111】
(第9態様)酸化物は一般式(1)で表される酸化物であり、一般式(1)におけるxは、0.05~1.6である第1態様から第8態様のいずれかの複合材料。
【0112】
(第10態様)酸化物は一般式(1)で表される酸化物であり、400Kにおける線膨張係数が-10ppm/K以下である第1態様から第8態様のいずれかの複合材料。
【0113】
(第11態様)負の線膨張係数を有する第1の負熱膨張材料と、負の線膨張係数を有し、第1の負熱膨張材料とは異なる第2の負熱膨張材料と、を含み、第1の負熱膨張材料は、次の一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含む:一般式(1)Cu2-xRxV2-yPyO7(RはMg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x≦2、0<y<2を満たす。);一般式(2)Zn2-xTxP2-yAyO7(Tは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、Aは、Al、Si、V、Ge、Snから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2、0≦y≦2を満たす。ただし、(x,y)=(0,0)及び(0,2)は除く。);一般式(3)Ti2-xMxO3(Mは、Mg、Al、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、La、Ta、W、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、0≦x<2を満たす。)、複合材料。
【0114】
(第12態様)第2の負熱膨張材料は、一般式(1)で表される酸化物、一般式(2)で表される酸化物および一般式(3)で表される酸化物のうち少なくとも1種の酸化物を含む第11態様の複合材料。
【0115】
(第13態様)第1の負熱膨張材料と第2の負熱膨張材料とは、同じ一般式で表される酸化物から選択された異なる組成の負熱膨張材料である第12態様の複合材料。
【0116】
(第14態様)第1の負熱膨張材料と第2の負熱膨張材料とは、異なる一般式で表される酸化物である第12態様の複合材料。
【0117】
(第15態様)第1態様1から第8態様、第11態様から第14態様のいずれかの複合材料を含む部品。
【0118】
(第16態様)前記酸化物は一般式(1)で表される酸化物であり、前記一般式(1)におけるyは、0.05~1.8である第1態様から第8態様のいずれかの複合材料。
【0119】
(第17態様)前記酸化物は一般式(1)で表される酸化物であり、単斜晶のβ相を含む第1態様から第8態様のいずれかの複合材料。
【0120】
(第18態様)前記酸化物は一般式(1)で表される酸化物であり、結晶系が単斜晶の酸化物および結晶系が直方晶の酸化物の少なくとも一方を含む第1態様から第8態様のいずれかの複合材料。
【0121】
(第19態様)前記酸化物は、空間群がC2/c、C2/m、Fdd2から選ばれるいずれかの結晶構造を有する第18態様の複合材料。
【0122】
(第20態様)前記酸化物は一般式(1)で表される酸化物であり、100~500Kの温度範囲において負熱膨張を示す第1態様から第8態様のいずれかの複合材料。
【0123】
(第21態様)前記酸化物は一般式(1)で表される酸化物であり、100~500Kの温度範囲において線膨張係数が-10ppm/K以下である第1態様から第8態様のいずれかの複合材料。
【0124】
(第22態様)前記酸化物は一般式(2)で表される酸化物であり、前記一般式(2)におけるxは、0.05~1.6である第1態様から第8態様のいずれかの複合材料。
【0125】
(第23態様)前記酸化物は一般式(2)で表される酸化物であり、前記一般式(2)におけるyは、0.05~1.6である第1態様から第8態様のいずれかの複合材料。
【0126】
(第24態様)前記酸化物は一般式(2)で表される酸化物であり、200~400Kの温度範囲において負熱膨張を示す第1態様から第8態様のいずれかの複合材料。
【0127】
(第25態様)前記酸化物は一般式(2)で表される酸化物であり、200~400Kの温度範囲において線膨張係数が-10ppm/K以下である第1態様から第8態様のいずれかの複合材料。
【0128】
(第26態様)前記酸化物は一般式(3)で表される酸化物であり、前記一般式(3)におけるxは、0<x≦1.6を満たす第1態様から第8態様のいずれかの複合材料。
【0129】
(第27態様)前記酸化物は一般式(3)で表される酸化物であり、100~500Kの温度範囲において負熱膨張を示す第1態様から第8態様のいずれかの複合材料。
【0130】
(第28態様)前記酸化物は一般式(3)で表される酸化物であり、100~500Kの温度範囲において線膨張係数が-10ppm/K以下である第1態様から第8態様のいずれかの複合材料。