(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175407
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】免震建物
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
E04H9/02 331D
E04H9/02 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087834
(22)【出願日】2022-05-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年9月9日 一般社団法人日本建築学会主催 2021年度日本建築学会 技術部門設計競技「新時代のレジリエント建築・都市」表彰式にて公開 令和3年11月20日 一般社団法人 日本建築学会発行 建築雑誌2021年11月号第136集・第1755号にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊司
(72)【発明者】
【氏名】津田 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】米津 正臣
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC19
2E139AC41
2E139AC64
2E139BA30
2E139BD02
2E139BD34
2E139CA11
2E139CA16
2E139CC02
2E139CC11
2E139CC13
(57)【要約】
【課題】上方から見て、上部構造体の重心と上部構造体の回転中心とが重なっている場合と比して、地震の発生時には、上部構造体を効果的に回転させて上部構造体が損傷するのを抑制することができる免震建物を得る。
【解決手段】免震建物は、上部構造体と、上方から見て、上部構造体が上部構造体の重心とは異なる位置を中心に回転するように免震支承を介して上部構造体を支持する支持部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造体と、
上方から見て、前記上部構造体が前記上部構造体の重心とは異なる位置を中心に回転するように免震支承を介して前記上部構造体を支持する支持部と、
を備える免震建物。
【請求項2】
前記上部構造体が回転する回転力を減衰させる減衰手段を備える、
請求項1に記載の免震建物。
【請求項3】
前記上部構造体の回転中心には、回転軸を構成すると共に下端部分が井戸水に浸かっている軸部が設けられ、
前記減衰手段は、前記軸部の下端部分に取り付けられ、前記井戸水との間で生じる抵抗力により前記回転力を減衰させる羽根部を備える、
請求項2に記載の免震建物。
【請求項4】
回転する前記上部構造体の回転力によって発電する発電機と、
前記発電機によって発電した電力を蓄電する蓄電池と、
前記蓄電池から供給された電力によって前記井戸水をくみ上げるポンプと、
を備える請求項3に記載の免震建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、免震建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の免震機能を有する回転建造物は、基礎構造体に構築された回転軸の軸線を含む剛質の塔状構造体と、回転軸を中心とした基礎構造体上の凹面軌道に転動手段を介して水平回転自在に載置された外囲回転構造体と、外囲回転構造体を回転駆動する駆動装置とを備え、外囲回転構造体の重心位置は実質的に側周に対しては中心部で上下方向には下半部に存在し、外囲回転構造体の中心頂部は塔状構造体における回転軸上の塔頂部に対してピン接合手段によって係合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の免震建物では、上方から見て、回転する上部構造体(回転建造物)の重心と上部構造体の回転中心とが重なっていた。
【0005】
本開示の課題は、上方から見て、上部構造体の重心と上部構造体の回転中心とが重なっている場合と比して、地震の発生時には、上部構造体を効果的に回転させて上部構造体が損傷するのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る免震建物は、上部構造体と、上方から見て、前記上部構造体が前記上部構造体の重心とは異なる位置を中心に回転するように免震支承を介して前記上部構造体を支持する支持部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
第1態様に係る構成によれば、支持部は、上方から見て、上部構造体が上部構造体の重心とは異なる位置を中心に回転するように免震支承を介して上部構造体を支持している。このため、上方から見て、上部構造体の重心と上部構造体の回転中心とが重なっている場合と比して、地震の発生時には、上部構造体を効果的に回転させて上部構造体が損傷するのを抑制することができる。
【0008】
第2態様に係る免震建物は、第1態様に記載の免震建物でおいて、前記上部構造体が回転する回転力を減衰させる減衰手段を備えることを特徴とする。
【0009】
第2態様に係る構成によれば、免震建物は、上部構造体が回転する回転力を減衰させる減衰手段を備えている。このため、上部構造体が無負荷状態で回転する場合と比して、回転する上部構造体の回転力を減衰させることができる。
【0010】
第3態様に係る免震建物は、第2態様に記載の免震建物でおいて、前記上部構造体の回転中心には、回転軸を構成すると共に下端部分が井戸水に浸かっている軸部が設けられ、前記減衰手段は、前記軸部の下端部分に取り付けられ、前記井戸水との間で生じる抵抗力により前記回転力を減衰させる羽根部を備えることを特徴とする。
【0011】
第3態様に係る構成によれば、地震の発生には、回転する上部構造体の回転軸を構成している軸部も回転する。そして、回転する軸部の下端部分に取り付けられている羽根部と井戸水との間で生じる抵抗力によって、回転する上部構造体の回転力が減衰する。
【0012】
このように、粘弾性ダンパー等を用いることなく、回転する上部構造体の回転力を減衰させることができる。
【0013】
第4態様に係る免震建物は、第3態様に記載の免震建物でおいて、回転する前記上部構造体の回転力によって発電する発電機と、前記発電機によって発電した電力を蓄電する蓄電池と、前記蓄電池から供給された電力によって前記井戸水をくみ上げるポンプと、を備えることを特徴とする。
【0014】
第4態様に係る構成によれば、発電機が回転する上部構造体の回転力によって発電し、蓄電池が発電機によって発電した電力を蓄電する。そして、蓄電池から供給されて稼動するポンプが、井戸水をくみ上げる。このように、例えば、地震が発生することで停電した場合であっても、給水することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、上方から見て、上部構造体の重心と上部構造体の回転中心とが重なっている場合と比して、地震の発生時には、上部構造体を効果的に回転させて上部構造体が損傷するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態に係る免震建物を示した概略断面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る免震建物の上部構造体を示した断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る免震建物の上部構造体を示した斜視図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る免震建物の3階を示した平面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る免震建物の2階を示した平面図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る免震建物の1階を示した平面図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る免震建物の基礎等を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の実施形態に係る免震建物の一例について
図1~
図7を用いて説明する。なお、図中に示す矢印Hは、鉛直方向であって免震建物の上下方向を示し、矢印Wは、水平方向を示し上方から見て円状の上部構造体の径方向を示す。
【0018】
本開示の実施形態に係る免震建物10は、
図1に示されるように、上部構造体20と、免震支承76を介して上部構造体20が回転するように上部構造体20を支持する基礎70と、回転する上部構造体20の回転力を減衰させる減衰装置80とを備えている。
【0019】
さらに、免震建物10は、回転する上部構造体20の回転力によって発電する発電機84と、発電機84によって発電した電力を蓄電する蓄電池88と、蓄電池88から供給された電力によって稼動するポンプ90とを備えている。
【0020】
(上部構造体20)
上部構造体20は、
図2、
図3に示されるように、三階建てあって、上下方向に延びる断面円状の柱部材22と、三階の床を構成する三階床30と、二階の床を構成する二階床40と、一階の床を構成する一階床50とを備えている。柱部材22は、軸部の一例である。
【0021】
〔三階床30、その他〕
三階床30は、例えば集積板を用いて形成され、
図3、
図4に示されるように、上方から見て円状とされ、上下方向に貫通する円状の貫通孔30aが中心に形成されている。この貫通孔30aに柱部材22が挿入されている。つまり、円状の三階床30の中心に上下方向に延びる柱部材22が挿入されている。
【0022】
そして、柱部材22の先端部分に一端が固定され、上方から見て、放射線状に延びて他端が三階床30の外周縁に固定された複数のテンションロッド32(以下単に「ロッド32」)が設けられている。
【0023】
この構成において、複数のロッド32が、三階床30を支持している。また、上方から見て、三階床30の中心と三階床30の重心とは重なっている。換言すれば、上方から見て、柱部材22と三階床30の重心とは重なっている。
【0024】
〔二階床40、その他〕
二階床40は、例えば集積板を用いて形成され、
図3、
図4、
図5に示されるように、上方から見て円状とされている。そして、二階床40の中心は、上方から見て三階床30の中心と重なっており、二階床40の直径は、三階床30の直径と比して大きくされている。また、円状の二階床40の中心を柱部材22が貫通している。
【0025】
そして、三階床30の外周縁に一端が固定され、他端が二階床40の外周縁に固定された複数のテンションロッド42(以下単に「ロッド42」)が設けられている。具体的には、ロッド42の一端が固定された三階床30の固定点と、ロッド42の他端が固定された二階床40の固定点とは、三階床30及び二階床40の周方向に千鳥状となるように配置されている。
【0026】
また、
図3に示されるように、三階床30の外周縁に一端が固定され、他端が二階床40において外周縁と二階床40の中心との中間部に固定された1本のテンションロッド44(以下単に「ロッド44」)が設けられている。
【0027】
さらに、二階床40には、
図5に示されるように、円状の貫通孔40aが2個形成されている。具体的には、二階床40においてロッド44が固定された部位44aと、一方の貫通孔40aの中心と、他方の貫通孔40aの中心とを結ぶ線分は、柱部材22を囲む三角形状となっている。さらに、詳細は後述するが、
図3に示されるように、上下方向に延びる梯子64が一対設けられ、梯子64の上端部が、貫通孔40aの周縁部に下方から夫々取り付けられている。
【0028】
また、柱部材22には、
図2、
図3に示されるように、円盤状の円プレート24が、二階床40の中心部分の下面に接触するように取り付けられている。さらに、二階床40と三階床30との間の部分の柱部材22には、螺旋状に配置された階段46の一端が取り付けられている。そして、この階段46を用いて二階と三階との間を移動するようになっている。
【0029】
この構成において、複数のロッド42、ロッド44、一対の梯子64、及び柱部材22が、二階床40を支持している。また、上方から見て、二階床40の中心と二階床40の重心とは重なっている。換言すれば、上方から見て、柱部材22と二階床40の重心とは重なっている。
【0030】
〔一階床50、その他〕
一階床50は、
図3、
図6に示されるように、上方から見て円状とされている。そして、一階床50の中心は、上方から見て二階床40の中心及び三階床30の中心と重なっており、一階床50の直径は、二階床40の直径と比して小さくされている。
【0031】
また、一階床50は、鉄筋コンクリート製のコンクリート部52と、例えば集積板を用いて形成された木製部54とを含んで構成されている。
【0032】
コンクリート部52は、上方から見て一階床50と同心円とされた円状部52aと、上方から見て円状部52aの外周縁から一階床50の外周縁に達する扇状とされた扇部52bとを含んで構成されている。さらに、コンクリート部52は、図示せぬ接合手段によって柱部材22に接合されている。
【0033】
また、円状部52aの中心を柱部材22が貫通しており、円状部52aには、上面を凹状とすることで後述する井戸水WAが供給される半円状の水場60が形成されている(
図6参照)。
【0034】
木製部54は、一階床50においてコンクリート部52以外の領域を占めており、木製部54の厚さは、コンクリート部52の厚さと比して薄くされている。
【0035】
そして、二階床40の外周縁に一端が固定され、他端が一階床50の外周縁に固定された複数のテンションロッド62(以下単に「ロッド62」)が設けられている。具体的には、ロッド62の一端が固定された二階床40の固定点と、ロッド62の他端が固定された一階床50の固定点とは、二階床40及び一階床50の周方向に千鳥状となるように配置されている。
【0036】
また、コンクリート部52には、
図3に示されるように、一階と二階との間を移動するために設けられた上下方向に延びる一対の梯子64の下端部が夫々取り付けられている。具体的には、一方の梯子64の下端部は、コンクリート部52に取り付けられ、一方の梯子64の上端部は、二階床40の下面において、一方の貫通孔40aの周縁部に取り付けられている。また、他方の梯子64の下端部は、コンクリート部52に取り付けられ、他方の梯子64の上端部は、二階床40の下面において、他方の貫通孔40aの周縁部に取り付けられている。
【0037】
この構成において、上方から見て、一階床50の中心と一階床50の重心とは異なっている。換言すれば、上方から見て、上部構造体20の中心と上部構造体20の重心とは異なっている。さらに換言すれば、上方から見て、柱部材22と上部構造体20の重心とは異なっている。なお、本実施形態では、上方から見て、上部構造体20の重心は、
図6に示す点G近傍となる。
【0038】
〔基礎70、免震支承76〕
基礎70は、
図7に示されるように、断面L字状とされており、上下方向に延びる円筒部72と、円筒部72の下端に接続され、円筒部72の径方向に広がる円盤部74とを含んで構成されている。基礎70は、支持部の一例である。
【0039】
上方から見て、円筒部72の中心は、柱部材22と重なっている。また、円筒部72の上端部分は、地表面から上方へ突出しており、円筒部72の上端部分には、上方を向いた上端面72aが形成されている。そして、この上端面72aには、免震支承76が設けられている。
【0040】
免震支承76は、レール部76aと、レール部76aに噛み合うガイド部76bと、レール部76aとガイド部76bとの間に配置されたベアリング(図示省略)とを備えている。
【0041】
レール部76aは、円筒部72の上端面72aに取り付けられ、上方からみて円環状に配置されている。ガイド部76bは、複数設けられ、一階床50のコンクリート部52の下面に取り付けられ、上方から見て予め決められた間隔をあけて配置されている。
【0042】
この構成において、基礎70は、上方から見て、上部構造体20が柱部材22を中心に回転するように免震支承76を介して上部構造体20を支持している。つまり、基礎70は、上方から見て、上部構造体20が上部構造体20の重心とは異なる位置を中心に回転するように免震支承76を介して上部構造体20を支持している。このように、柱部材22は、上部構造体20の回転中心に配置され、上部構造体20の回転軸を構成している。
【0043】
そして、地震の発生時には、上部構造体20が一方及び他方に回転することで、免震支承76は、地震の揺れが上部構造体20に伝達するを抑制している。
【0044】
〔減衰装置80〕
減衰装置80は、
図7に示されるように、柱部材22の下端部分に取り付けられ、井戸水WAとの間で生じる抵抗力によって回転する上部構造体20の回転力を減衰させる羽根部82を備えている。減衰装置80は、減衰手段の一例である。
【0045】
具体的には、地中には、上方から見て、柱部材22を囲むように上下方向に延びるヒューム管12が埋められている。このヒューム管12の内部に井戸水WAが溜まっており、柱部材22の下端部分が、この井戸水WAに浸かっている。そして、柱部材22において井戸水WAに浸かっている下端部分に、複数の羽根部82が取り付けられている。
【0046】
羽根部82は、板状で、羽根部82の板厚方向は、柱部材22の周方向とされている。また、羽根部82は、柱部材22の周方向から見て、柱部材22の径方向に延びる矩形状とされている。
【0047】
そして、複数の羽根部82は、上方から下方に向けて柱部材22に対する取付角度を変えながら間隔をあけて柱部材22の周面に取り付けられている。
【0048】
この構成において、地震の発生時には、上部構造体20が一方及び他方に回転することで、柱部材22に取り付けられた羽根部82が一方及び他方に回転する。これにより、羽根部82と井戸水WAとの間で生じる抵抗力によって、回転する上部構造体20の回転力が減衰する。
【0049】
〔発電機84、蓄電池88〕
発電機84及び蓄電池88は、
図1に示されるように、免震建物10に設けられ、発電機84は、上部構造体20の回転力によって発電し、蓄電池88は、発電機84によって発電した電力を蓄電する機能を有る。
【0050】
〔ポンプ90、その他〕
ポンプ90は、
図7に示されるように、一階床50のコンクリート部52の下方に配置されている。そして、ポンプ90は、蓄電池88から供給される電力によって稼動するようになっている。
【0051】
具体的には、一階床50のコンクリート部52の下方で、かつ、基礎70の円筒部72に囲まれた領域は、空洞部14とされており、ポンプ90はこの空洞部14に配置されている。そして、ポンプ90をコンクリート部52に吊り下げる吊部材92が設けられている。
【0052】
また、柱部材22の下端部分から柱部材22の内部を流れてポンプ90まで井戸水WAが流れる流路22aと、ポンプ90から柱部材22の内部を流れて上部構造体20の1階に設けられた蛇口26まで井戸水WAが流れる流路22bとが設けられている。さらに、ポンプ90からコンクリート部52に形成された水場60まで井戸水WAが流れる流路22cが設けられている。
【0053】
この構成において、コンクリート部52に吊部材92によって吊り下げられたポンプ90は、コンクリート部52と伴に回転する。
【0054】
また、ポンプ90は、蓄電池88から供給される電力によって稼動し、柱部材22の下端部分の井戸水WAを流路22a及び流路22bを流して蛇口26から流出させる。さらに、ポンプ90は、蓄電池88から供給される電力によって稼動し、柱部材22の下端部分の井戸水WAを流路22a及び流路22cを流して水場60へ流出させる。
【0055】
(作用)
次に、免震建物10の作用について説明する。
地震が発生していない通常時には、
図1に示す免震建物10の一階は、例えば、子供たちの遊び場となる。水場60に井戸水WAが溜められている場合には、子供たちが水遊びをすることができる。
【0056】
また、通常時の免震建物10の二階は、例えば、子供たちの秘密基地となり、さらには、フリーマーケットや盆踊りのステージとなる。
【0057】
さらに、通常時の免震建物10の三階は、例えば、見晴らし台や天体観測スペース、さらには、盆踊りの太鼓スペースとなる。
【0058】
また、一階床50の外周面に取手が設けられている場合には、子供たちが取手を掴んで一階床50の周方向に走ることで、上部構造体20が柱部材22を中心に回転し、子供たちにとって、免震建物10が遊具となる。
【0059】
ここで、上部構造体20は、上部構造体20の重心とは異なる位置を中心に回転するように基礎70によって支持されている。このため、地震の発生時には、上部構造体20は、柱部材22を中心に一方と他方とに効果的に回転する。
【0060】
また、柱部材22が回転することで、柱部材22の下端部分に取り付けられた羽根部82も回転する。これにより、羽根部82と井戸水WAとの間で生じる抵抗力によって、回転する上部構造体20の回転力が減衰する。
【0061】
さらに、地震の発生時には、発電機84は、回転する上部構造体20の回転力によって発電し、蓄電池88は、発電機84によって発電した電力を蓄電する。
【0062】
そして、地震がおさまり、免震建物10が避難所として用いられる非常時には、免震建物10の一階は、例えば、給水ステーションとなる。具体的には、ポンプ90は、図示せぬ制御からの制御によって、蓄電池88から供給される電力によって稼動し、柱部材22の下端部分の井戸水WAを流路22a及び流路22bを流して蛇口26から流出させる。
【0063】
また、非常時の免震建物10の二階は、例えば、地域の災害避難拠点となる。さらに、非常時の免震建物10の三階は、例えば、火の見櫓となる。
【0064】
(まとめ)
以上説明したように、免震建物10においては、基礎70は、上方から見て、上部構造体20が上部構造体20の重心とは異なる位置を中心に回転するように免震支承76を介して上部構造体20を支持している。このため、上方から見て、上部構造体の重心と上部構造体の回転中心とが重なっている場合と比して、地震の発生時には、上部構造体20を効果的に回転させて上部構造体20が損傷するのを抑制することができる。
【0065】
また、免震建物10においては、回転する上部構造体20の回転力を減衰させる減衰装置80が備えられている。このため、上部構造体20が無負荷状態で回転する場合と比して、回転する上部構造体20の回転力を減衰させることができる。換言すれば、地震による上部構造体20の揺れを抑制することができる。
【0066】
また、免震建物10においては、減衰装置80は、地震の発生時に回転する柱部材22と、柱部材22の下端部分に取り付けられ、井戸水WAと間で生じる抵抗力によって回転力を減衰させる羽根部82とを備えている。これにより、粘弾性ダンパー等を用いることなく、回転する上部構造体20の回転力を減衰させることができる。
【0067】
また、免震建物10においては、回転する上部構造体20の回転力によって発電機84が発電し、蓄電池88が発電機84によって発電した電力を蓄電する。そして、蓄電池88から供給されて稼動するポンプ90が、井戸水WAをくみ上げる。このように、地震が発生することで停電した場合であっても、給水することができる。
【0068】
なお、本開示を特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示は係る実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。上記実施形態では、基礎70が、免震支承76を介して上部構造体20を回転可能に支持したが、柱頭が免震支承を介して上部構造体を回転可能に支持してもよい。つまり、柱頭免震構造であってもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、上部構造体が地下階を有していてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、各階の床が円形であったが、矩形状等であってもよく、上部構造体の回転中心と上部構造体の重心とが異なる位置であればよい。
【0071】
また、上記実施形態では、蓄電池88によってポンプ90が稼働したが、例えば、免震建物に設けられた照明等に蓄電池が電力を供給してもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 免震建物
20 上部構造体
22 柱部材(軸部の一例)
70 基礎(支持部の一例)
76 免震支承
80 減衰装置(減衰手段の一例)
82 羽根部
84 発電機
88 蓄電池
90 ポンプ