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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175409
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】弦楽器用ピックアップおよびギター
(51)【国際特許分類】
   G10H 3/18 20060101AFI20231205BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G10H3/18 L
G10H1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087837
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】国本 利文
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478CC13
5D478CC31
5D478NN02
5D478NN05
(57)【要約】
【課題】ピックアップの組み立て精度を高く維持することを課題とする。
【解決手段】ピックアップ10は、ベースプレート3と、ベースプレート3の第1の面に並列に配置された第1ボビン21Aおよび第2ボビン21Bと、第1ボビン21Aに挿入され、ベースプレート3を貫通する第1ポールピース5Aと、第2ボビン21Bに挿入され、ベースプレート3を貫通する第2ポールピース5Bと、ベースプレート3の第1の面とは反対側の第2の面に配置され、第1ポールピース5Aおよび第2ポールピース5Bに接触するマグネット4とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレートの第1の面に並列に配置された第1ボビンおよび第2ボビンと、
前記第1ボビンに挿入され、前記ベースプレートを貫通する第1ポールピースと、
前記第2ボビンに挿入され、前記ベースプレートを貫通する第2ポールピースと、
前記ベースプレートの前記第1の面とは反対側の第2の面に配置され、前記第1ポールピースおよび前記第2ポールピースに接触するマグネットと、
を備える弦楽器用ピックアップ。
【請求項2】
前記ベースプレートは、非磁性体材料を含む、請求項1に記載の弦楽器用ピックアップ。
【請求項3】
前記ベースプレートは、プリント基板を含む、請求項1に記載の弦楽器用ピックアップ。
【請求項4】
前記プリント基板は、ガラスエポキシ樹脂材料を含む、請求項3に記載の弦楽器用ピックアップ。
【請求項5】
前記マグネットには、前記第1ポールピースまたは前記第2ポールピースを挿入するための孔が設けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の弦楽器用ピックアップ。
【請求項6】
前記ベースプレートの前記第1の面とは反対側の第2の面に配置され、前記マグネットと接触し、かつ、前記第1ポールピースまたは前記第2ポールピースが挿入される金属製のプレートをさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の弦楽器用ピックアップ。
【請求項7】
前記ベースプレートには回路パターンが形成され、前記第1ボビンおよび前記第2ボビンに巻回されたコイルワイヤが前記回路パターンと接続される、請求項3または請求項4に記載の弦楽器用ピックアップ。
【請求項8】
前記回路パターンはループ状の経路がカットされる領域を有する、請求項7に記載の弦楽器用ピックアップ。
【請求項9】
前記第1ポールピースまたは前記第2ポールピースは、前記マグネットに面接触する、請求項1~4のいずれか一項に記載の弦楽器用ピックアップ。
【請求項10】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の弦楽器用ピックアップを備えるギター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弦楽器に用いられるピックアップおよびそのピックアップを備えたギターに関する。
【背景技術】
【0002】
エレキギターは、弦の振動を電気信号に変換するピックアップを備える。ピックアップは、一般には、ベースプレート、コイル、マグネットおよびポールピースを有している。ポールピースは、コイルボビンの内部を通過し、マグネットに接触するように配置される。
【0003】
下記特許文献1は、金属ベースプレートの上に、マグネットが配置されたピックアップを開示する。マグネットの上には、さらにコイルボビンが配置される。
【0004】
下記特許文献2は、ベースプレートとしてプリント基板を使用したピックアップを開示する。ベースプレートの上には、マグネットおよびスペーサが配置される。マグネットおよびスペーサの上には、さらにコイルボビンが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開第9,552,802号
【特許文献2】米国特許公開第9,355,630号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属ベースプレートを使用するピックアップは、金属の塑性変形が生じることにより、その組み立て精度が低下する場合がある。具体的には、金属ベースプレートの平面性が確保できず、金属ベースプレートの上に配置される各部品の組み立て精度が低下する。組み立て精度が低下すると、マグネットとポールピースとの接触精度が低下し、磁気抵抗の増大を招く場合がある。磁気抵抗の増大は、ピックアップのゲインの低下の原因となる。
【0007】
また、ベースプレートとコイルとの間にマグネットが配置される構成のピックアップは、組み立てが煩雑であるという問題がある。また、コイルボビンがマグネットとスペーサの上に配置されるため、コイルボビンを水平に保つことが難しく、やはり、ピックアップの組み立て精度が低下するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ピックアップの組み立て精度を高く維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に従う弦楽器用ピックアップは、ベースプレートと、ベースプレートの第1の面に並列に配置された第1ボビンおよび第2ボビンと、第1ボビンに挿入され、ベースプレートを貫通する第1ポールピースと、第2ボビンに挿入され、ベースプレートを貫通する第2ポールピースと、ベースプレートの第1の面とは反対側の第2の面に配置され、第1ポールピースおよび第2ポールピースに接触するマグネットとを備える。
【0010】
本発明の他の局面に従うギターは、上記の弦楽器用ピックアップを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ピックアップの組み立て精度を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態に係るピックアップの分解図である。
図2】第1の実施の形態に係るピックアップの側面図である。
図3】第1の実施の形態に係るピックアップの側面断面図である。
図4】ベースプレートの平面図である。
図5】ベースプレートに形成される渦電流を表した図である。
図6】第2の実施の形態に係るピックアップの分解図である。
図7】第2の実施の形態に係るピックアップの側面図である。
図8】変形例に係るピックアップの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1]第1の実施の形態
{1.ピックアップの全体構成}
図1は、第1の実施の形態に係るピックアップ10を示す分解図である。以下の説明において、各図面のX方向をピックアップ10の上方向、Y方向をピックアップの前方向、Z方向をピックアップ10の右方向であるとして説明する。図2は、ピックアップ10を示す側面図である。図3は、ピックアップ10を示す側面断面図である。図1に示すように、ピックアップ10は、コイル2、ベースプレート3、マグネット4、ポールピース5A(スラグ)およびポールピース5B(スクリュー)を備える。ピックアップ10が備えるそれらの部材は、図2および図3のように組み立てられた上で、ネジ6A,6Bにより固定される。ピックアップ10は、弦楽器に組み込まれる。例えば、ピックアップ10は、エレキギターに組み込まれ、弦の振動を電気信号に変換する。
【0014】
{2.コイルの構成}
図1図3に示すように、コイル2は、コイル2Aおよびコイル2Bを備える。コイル2A,2Bは、それぞれボビン21A,21Bを備える。ボビン21A,21Bには、それぞれコイルワイヤ22A,22Bが巻回される。この実施の形態では、ボビン21Aが本発明に係る第1ボビンの例であり、ボビン21Bが本発明に係る第2ボビンの例である。
【0015】
ボビン21Aには、図1に示すように、6つの孔23Aが等間隔で設けられている。孔23Aは、ボビン21Aを上下方向に貫通する孔である。各孔23Aには、ポールピース5Aが挿入される。ボビン21Bには、図1に示すように、6つの孔23Bが等間隔で設けられている。孔23Bは、ボビン21Bを上下方向に貫通する孔である。各孔23Bには、ポールピース5Bが挿入される。この実施の形態では、ポールピース5Aが本発明に係る第1ポールピースの例であり、ポールピース5Bが本発明に係る第2ポールピースの例である。
【0016】
ポールピース5A,5Bは、スチール製の部材であり、後で説明するマグネット4と接触することで磁力を帯びる。本実施の形態においては、ポールピース5Aは、円筒状のスチールの部材(スラグ)であり、ポールピース5Bは、スチール製のスクリュー(ネジ)である。ポールピース5A,5Bが磁気を帯びることにより、ポールピース5A,5B、ボビン21A,21Bおよびコイルワイヤ22A,22Bにより、2つのコイル2A,2Bが構成される。このように、本実施の形態に係るピックアップ10は、2つのコイル2A,2Bを備えるハムバッカーである。ポールピース5Bはネジ構造を有しているため、ポールピース5Bの上下方向の配置を調整可能である。図1図3に示すように、2つのコイル2A,2Bは、ベースプレート3上で並列に配置される。より具体的には、コイル2A,2Bは、それらの長手方向がZ方向と並行になるようにして並列配置されている。
【0017】
{3.ベースプレートの構成}
図1に示すように、コイル2の下にはベースプレート3が配置される。本実施の形態において、ベースプレート3はプリント基板である。具体的には、ベースプレート3は、ガラスエポキシ樹脂材料により構成されるプリント基板であって、その上面には、回路パターンが形成されている。ベースプレート3の底面にはマグネット4が配置される。
【0018】
図4は、ベースプレート3の平面図である。ベースプレート3には、ポールピース5Aが挿入される6つの孔33Aが等間隔で設けられている。6つの孔33Aは、ボビン21Aの6つの孔23Aに位置を合わせるように設けられている。また、左右両端の孔33Aの内側には、ネジ6Aを挿入するための2つのネジ孔35Aが設けられている。ベースプレート3には、ポールピース5Bが挿入される6つの孔33Bが等間隔で設けられている。6つの孔33Bは、ボビン21Bの6つの孔23Bに位置を合わせるように設けられている。また、左右両端の孔33Bの内側には、ネジ6Bを挿入するための2つのネジ孔35Bが設けられている。
【0019】
図4に示すように、ベースプレート3の上面には、4箇所に回路パターン形成領域31が配置されている。4箇所の回路パターン形成領域31以外の領域32には、回路パターンは形成されていない。つまり、領域32は、ガラスエポキシ樹脂で構成され、導体を含まない領域である。孔33A,33Bおよびネジ孔35A,35Bは、全て回路パターン形成領域31に設けられている。また、回路パターン形成領域31には、複数の端子37a~37hが設けられている。なお、ベースプレート3の上面は、本発明に係るベースプレートの第1の面の例である。ベースプレート3の底面は、本発明に係るベースプレートの第2の面の例である。
【0020】
図1に示すように、リード線36は、端子37eに接続される。端子37eと端子37aとの間は配線38aで接続される。端子37aには、コイルワイヤ22Aの一端(図示省略)が接続される。コイルワイヤ22Aの他端(図示省略)は端子37bに接続される。端子37bと端子37fとの間は配線38bで接続される。端子37fと端子37gとの間は配線38cで接続される。端子37gには、コイルワイヤ22Bの一端22Baが接続される。コイルワイヤ22Bの他端22Bbは端子37hに接続される。端子37hには、リード線39が接続される。このような構成により、リード線36,39間にコイル2A,2Bが並列接続される。リード線36,39は、弦楽器(例えばエレキギター)の制御部に接続される。これにより、ピックアップ10において変換された電気信号が弦楽器の制御部に与えられる。
【0021】
{4.マグネットの構成}
図1に示すように、ベースプレート3の下に配置されるマグネット4は、平面視で略長方形状をしている。マグネット4は、ピックアップ10の組み立て時には、その上面がベースプレート3の底面に接触するよう配置される。また、マグネット4は、ピックアップ10の組み立て時には、ベースプレート3の底面より下の領域において、ポールピース5A,5Bと接触するように配置される。本実施の形態においては、マグネット4として、鉄クロムコバルトマグネット(FCCマグネット)が用いられる。他にも、マグネット4としてアルニコ、フェライト、サマリウムコバルトまたはネオジム等のマグネットが用いられてもよい。
【0022】
マグネット4には、ネジ6Aを挿入するための2つのネジ孔45Aが設けられている。2つのネジ孔45Aは、ベースプレート3に設けられた2つのネジ孔35Aと位置を合わせるように設けられている。マグネット4の前面には、ポールピース5Bの一部を収容可能に6箇所に等間隔で凹部43Bが形成されている。6つの凹部43Bは、ベースプレート3の6つの孔33Bおよびボビン21Bの6つの孔23Bに位置を合わせるように設けられている。凹部43Bが、本発明に係る「第1ポールピースまたは第2ポールピースを挿入するための孔」の例である。また、左右両端の凹部43Bの内側には、ネジ6Bの一部を収容可能に2箇所に凹部45Bが形成されている。2つの凹部45Bは、ベースプレート3に設けられた2つのネジ孔35Bと位置を合わせるように設けられている。
【0023】
{5.組み立て方法}
以上説明したコイル2、ベースプレート3、マグネット4およびポールピース5A,5Bが上下方向に合わさって組み立てられ、ネジ6A,6Bによって締結されることにより、ピックアップ10が構成される。具体的には、ボビン21Aの6つの孔23Aとベースプレート3の6つの孔33Aの位置を合わせた上で、6本のポールピース5Aを孔23A,33Aに挿入する。ボビン21Aおよびベースプレート3を貫通したポールピース5Aは、マグネット4の上面に接触する。また、ボビン21Bの6つの孔23Bとベースプレート3の6つの孔33Bとマグネット4の6つの凹部43Bの位置を合わせた上で、6本のポールピース5Bを孔23B,33Bに挿入する。ボビン21Bおよびベースプレート3を貫通したポールピース5Bは、マグネット4の凹部43Bに接触する。この状態で、ネジ6Aがネジ孔45Aおよびネジ孔35Aに挿入され、さらに、ボビン21Aの底面に形成されたネジ孔(図示省略)に挿入されてネジ止めされる。また、ネジ6Bが凹部45Bおよびネジ孔35Bに挿入され、さらに、ボビン21Bの底面に形成されたネジ孔(図示省略)に挿入されてネジ止めされる。これにより、コイル2A,2B、ベースプレート3およびマグネット4が固定される。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態のピックアップ10は、ベースプレート3の上面にボビン21Aおよびボビン21Bが配置され、ベースプレート3の底面にマグネット4が配置される。これにより、ピックアップ10の組み立て作業の煩雑さが軽減される。つまり、ベースプレート3を挟んで上下にコイル2とマグネット4を固定すればよく、組み立て作業が行い易い。また、ベースプレート3の上面にボビン21Aおよびボビン21Bが直接配置されるので、ベースプレート3の平面に対するボビン21Aおよびボビン21Bの垂直性が向上する。これにより、ベースプレート3の平面に対するポールピース5A,5Bの垂直性が向上し、ポールピース5A,5Bとマグネット4との接触精度が向上する。このように、本実施の形態のピックアップ10は、組み立て精度が高く、ポールピース5A,5Bとマグネット4との接触精度も高いので、高いゲインが得られる。
【0025】
また、本実施の形態のピックアップ10においては、ベースプレート3としてプリント基板が使用される。これにより、ベースプレート3の直線性あるいは平面性が確保されるので、ピックアップ10の組み立て精度が向上する。
【0026】
また、本実施の形態のピックアップ10においては、マグネット4にポールピース5Bを挿入するための凹部43Bが設けられる。これにより、ポールピース5Bの周辺までマグネット4を拡張することができ、マグネット4の体積を増大させることができる。これにより、ポールピース5A,5Bに対して大きな磁力を与えることができる。
【0027】
また、本実施の形態のピックアップ10においては、ベースプレート3に回路パターンが形成され、コイルワイヤ22A,22Bの端部が、ベースプレート3上に形成された回路パターンに接続される。これにより、ピックアップ10の組み立て作業において、配線作業が格段に容易となる。また、ピックアップ10周辺のリード線の長さが短くなり、シンプルな構成とすることができる。
【0028】
さらに、本実施の形態のピックアップ10においては、ベースプレート3上に発生する渦電流を抑制することができる。図5は、ベースプレート3上に発生する渦電流を表した図である。上述したように、ベースプレート3には、回路パターンが形成されない領域32が設けられており、4箇所の回路パターン形成領域31は分断されている。つまり、回路パターンにループ状の経路が極力形成されないよう構成されている。例えば、図5に示したように、2つの回路パターン形成領域31の間には、パターンのカット領域32Sが形成されている。これにより、R1で示されるような渦電流は発生する可能性はあるが、R2で示されるような渦電流は発生しない。このように、本実施の形態のピックアップ10においては、渦電流の発生が抑制され、ピックアップ10のゲインが低下することを防止できるとともに、弦振動から電気信号への変換に与えるノイズの影響を抑制することができる。
【0029】
また、本実施の形態のピックアップ10においては、ポールピース5Aは、その底面がマグネット4の上面と接触するよう組み立てられる。ベースプレート上にマグネットおよびコイルが配置される従来構造では、スラグ構造のポールピースは、マグネットに横方向から線で接触する構造であった。本実施の形態によれば、ポールピース5Aの底面が面でマグネット4の上面に接触するので、ポールピース5Aとマグネット4との接触面積が大きくなり、ポールピース5Aに大きな磁力を与えることができる。
【0030】
[2]第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態に係るピックアップ10Aについて説明する。ピックアップ10Aの構成のうち、コイル2、ベースプレート3およびポールピース5A,5Bの構成は第1の実施の形態と同様である。ピックアップ10Aにおいては、マグネット4Aの構成がピックアップ10とは異なる。図6は、第2の実施の形態に係るピックアップ10Aの分解図である。図7は、ピックアップ10Aの側面図である。
【0031】
図6に示すように、マグネット4Aには、マグネット4のように、凹部43B,45Bは設けられていない。マグネット4Aの前面側には、金属製のプレートであるスペーサ7が配置されている。マグネット4Aおよびスペーサ7は、ピックアップ10の組み立て時には、それぞれの上面がベースプレート3の底面に接触するよう配置される。また、スペーサ7の背面は、ピックアップ10の組み立て時には、ベースプレート3の底面より下の領域において、マグネット4の前面と接触するように配置される。本実施の形態においては、スペーサ7はスチール製である。スペーサ7には、6つの孔73Bが等間隔で設けられている。孔73Bは、スペーサ7を上下方向に貫通する孔である。各孔73Bには、ポールピース5Bが挿入される。あるいは、孔73Bは、スペーサ7を貫通していなくてもよい。また、左右両端の孔73Bの内側には、ネジ6Bを挿入するための2つのネジ孔75Bが設けられている。
【0032】
ピックアップ10Aの組み立て方法は、ピックアップ10の組み立て方法と同様である。ピックアップ10Aにおいては、ネジ6Bは、ネジ孔75Bに挿入された後、ベースプレート3およびボビン21Bに挿入されてネジ止めされる。ポールピース5Bは、ボビン21Bの孔23Bおよびベースプレート3の孔33Bを貫通した後、スペーサ7の孔73Bに挿入される。スペーサ7の孔73Bに挿入されたポールピース5Bには、マグネット4Aの磁力がスチール製のスペーサ7を介して与えられる。
【0033】
[3]実施の形態の特徴と効果
以上説明したように、本実施の形態に係る弦楽器用ピックアップは、ベースプレートと、前記ベースプレートの第1の面に並列に配置された第1ボビンおよび第2ボビンと、前記第1ボビンに挿入され、前記ベースプレートを貫通する第1ポールピースと、前記第2ボビンに挿入され、前記ベースプレートを貫通する第2ポールピースと、前記ベースプレートの前記第1の面とは反対側の第2の面に配置され、前記第1ポールピースおよび前記第2ポールピースに接触するマグネットとを備える。
【0034】
ベースプレートを挟んでボビンとマグネットとが配置されるので、組み立て作業が容易となる。ベースプレートの第1の面に第1ボビンおよび第2ボビンが配置されるので、ベースプレートに対するボビンの軸の垂直性を維持し易い。組み立て性の向上によりピックアップのゲインを増大させることができる。
【0035】
前記ベースプレートは、非磁性体材料を含んでもよい。
【0036】
ベースプレートに発生する渦電流を抑制することができる。
【0037】
前記ベースプレートは、プリント基板を含んでもよい。
【0038】
ベースプレートの直線性(平面性)が確保されるので、ピックアップの組み立て性が向上する。組み立て性の向上によりピックアップのゲインを増大させることができる。
【0039】
前記プリント基板は、ガラスエポキシ樹脂材料を含んでもよい。
【0040】
ベースプレートの強度が向上する。
【0041】
前記マグネットには、前記第1ポールピースまたは前記第2ポールピースを挿入するための孔が設けられてもよい。
【0042】
マグネットの体積を拡張させることができる。
【0043】
前記ベースプレートの前記第1の面とは反対側の第2の面に配置され、前記マグネットと接触し、かつ、前記第1ポールピースまたは前記第2ポールピースが挿入される金属製のプレートをさらに備えてもよい。
【0044】
マグネットを加工することなく、ポールピースを磁化させる構造を構成できる。
【0045】
前記ベースプレートには回路パターンが形成され、前記第1ボビンおよび前記第2ボビンに巻回されたコイルワイヤが前記回路パターンと接続されてもよい。
【0046】
ピックアップの配線作業が容易となる。ピックアップ回りのリード線の長さが短くなり、構造がシンプルとなる。
【0047】
前記回路パターンはループ状の経路がカットされる領域を有してもよい。
【0048】
ベースプレートに発生する渦電流を抑制することができる。
【0049】
前記第1ポールピースまたは前記第2ポールピースは、前記マグネットに面接触してもよい。
【0050】
ポールピースとマグネットの接触面を広くすることができ、ピックアップのゲインを増大させることができる。
【0051】
本実施の形態に係るギターは、上記いずれかに記載の弦楽器用ピックアップを備える。
【0052】
[4]変形例
図8は、変形例に係るピックアップ10Bを示す図である。ピックアップ10Bは、第1の実施の形態のピックアップ10と比べて、ベースプレート3とマグネット4との位置関係が逆になった例である。ポールピース5Aは、孔23Aを貫通した後、マグネット4の上面に接触する。ポールピース5Bは、孔23Bを貫通した後、凹部43Bに収容される。ネジ6Aは、ネジ孔35A,45Aの順に挿入され、ボビン21Aの底面のネジ孔に挿入されてネジ止めされる。ネジ6Bは、ネジ孔35Bおよび凹部45Bに挿入され、さらに、ボビン21Bの底面のネジ孔に挿入されてネジ止めされる。なお、図では、第1の実施の形態と同じベースプレート3を使用しているが、孔33A,33Bは設けなくてもよい。
【0053】
この変形例においても、ベースプレート3としてプリント基板を用いるので、ベースプレート3の平面の精度が高く、ピックアップ10Bの組み立て精度を高くすることができる。これにより、ポールピース5A,5Bとマグネット4との接触精度が向上し、ピックアップのゲインを増大させることができる。
【0054】
[5]その他の実施例
上記実施の形態においては、ベースプレート3としてプリント基板を用いた。ベースプレート3としては、他にも平面の精度を高く維持できる部材を用いることができる。また、ベースプレート3としては非磁性体材料を用いることにより、ベースプレート3上に生じる渦電流を抑制することができる。
【0055】
第1および第2の実施の形態のピックアップ10,10Aにおいては、ベースプレート3の上下にコイル2およびマグネット4,4Aが配置される。つまり、ベースプレート3の上面および底面に、コイル2およびマグネット4,4Aが面接触により組み立てられる。したがって、ネジ6A,6Bの代わりに、接着材料によってこれらの部品を固定する構成とすることもできる。
【0056】
第1の実施の形態において、ポールピース5Bを挿入するための凹部43Bおよびネジ6Bを挿入するための凹部45Bは、いずれも平面視で半円形状をしている。これ以外の実施例として、ポールピース5Bを挿入するための孔およびネジ6Bを挿入するためのネジ孔を平面視で円形状に形成してもよい。これにより、さらに、マグネット4の体積を増大させることができる。
【符号の説明】
【0057】
10,10A,10B…ピックアップ、2,2A,2B…コイル、21A,21B…ボビン、22A,22B…コイルワイヤ、23A,23B…孔、3…ベースプレート、31…回路パターン形成領域、32…(回路パターンが形成されていない)領域、33A,33B…孔、35A,35B…ネジ孔、36…リード線、37a~37h…端子、38a~38c…配線、39…リード線、4…マグネット、43B…凹部、45A…ネジ孔,45B…凹部、6A,6B…ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8