IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎エナジーシステム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-導電性シート 図1
  • 特開-導電性シート 図2
  • 特開-導電性シート 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017541
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】導電性シート
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/00 20060101AFI20230131BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20230131BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230131BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
H01B5/00 Z
B32B7/025
B32B27/18 J
B32B27/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121875
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 真一
【テーマコード(参考)】
4F100
5G307
【Fターム(参考)】
4F100AA08A
4F100AA08B
4F100AA08C
4F100AA08D
4F100AA17D
4F100AA18A
4F100AA18B
4F100AA18C
4F100AA18D
4F100AK00A
4F100AK00B
4F100AK15A
4F100AK15B
4F100AK15C
4F100AK15D
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA04A
4F100CA04B
4F100CA04C
4F100CA04D
4F100CA05C
4F100CA05D
4F100CA21D
4F100CA22A
4F100CA22B
4F100CA22C
4F100DE01D
4F100GB08
4F100JA03A
4F100JA13B
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JG01A
4F100JG01B
4F100JG01D
4F100JG04A
4F100JK12A
4F100JL04A
4F100YY00A
4F100YY00B
5G307AA04
(57)【要約】
【課題】導電性、寸法安定性およびクッション性に優れ、かつ発塵を抑制し得る、導電性シートを提供する。
【解決手段】少なくとも表層12、中間層14およびバック層16をこの順で積層してなる、導電性シート1であって、前記表層12、中間層14およびバック層16は、導電性熱可塑性樹脂組成物からなり、前記導電性シートは、導電カーボンを含み、前記中間層14の比重が1.3~1.8であり、前記導電性シート全体の厚みに対し、前記中間層14の厚みの比率が30~60%であり、かつ繊維質材料を含まない導電性シート1によって上記課題を解決した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表層、中間層およびバック層をこの順で積層してなる、導電性シートであって、
前記表層、中間層およびバック層は、導電性熱可塑性樹脂組成物からなり、
前記導電性シートは、導電カーボンを含み、
前記中間層の比重が1.3~1.8であり、
前記導電性シート全体の厚みに対し、前記中間層の厚みの比率が30~60%であり、
前記導電性シートの硬度が75~85であり、かつ
前記導電性シートは、繊維質材料を含まない、
導電性シート。
【請求項2】
前記導電性熱可塑性樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂をマトリックスとする、請求項1に記載の導電性シート。
【請求項3】
NFPA99に準拠して測定した2点間表面抵抗値が、2.5×10Ω~1.0×10Ωである、請求項1または2に記載の導電性シート。
【請求項4】
NFPA99に準拠して測定した上下間抵抗値が、2.5×10Ω~1.0×10Ωである、請求項1~3のいずれかに記載の導電性シート。
【請求項5】
前記導電性シートの試験片300mm×300mmの2枚あたりの、JIS B9923(タンブリング法)による粒径0.5μm以上の発塵量が100個/ft以下である、請求項1~4のいずれかに記載の導電性シート。
【請求項6】
JIS A1454に準拠して測定した加熱による長さ変化率が、2.0%以下である、請求項1~5のいずれかに記載の導電性シート。
【請求項7】
JIS A1454に準拠して測定したへこみ量が、23℃で0.3mm以上であり、45℃で1.5mm以下である、請求項1~6のいずれかに記載の導電性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、医薬品等を製造するクリーンルームでは、塵埃が製品の品質に大きな影響を及ぼすことが知られている。したがって、クリーンルームにおいては、発塵を極力抑制する必要がある。一例として、クリーンルーム内の床、棚、作業台等で使用される導電性シートには厳重な防塵性が求められる。
【0003】
発塵の抑制を目的とした導電性シートとして、寸法安定性を確保するために繊維質材料を基布とし、その両面に導電性樹脂層を設けた導電性シートが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-303067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された技術では、導電性シートの切断面からの発塵を抑制できないという問題点がある。この発塵は、基布である繊維質材料を由来としている。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、導電性、寸法安定性およびクッション性に優れ、かつ発塵を抑制し得る、導電性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る「導電性シート」は、下記(1)~(7)を特徴としている。
(1)
少なくとも表層、中間層およびバック層をこの順で積層してなる、導電性シートであって、
前記表層、中間層およびバック層は、導電性熱可塑性樹脂組成物からなり、
前記導電性シートは、導電カーボンを含み、
前記中間層の比重が1.3~1.8であり、
前記導電性シート全体の厚みに対し、前記中間層の厚みの比率が30~60%であり、
前記導電性シートの硬度が75~85であり、かつ
前記導電性シートは、繊維質材料を含まない、導電性シートであること。
(2)
上記(1)に記載の導電性シートにおいて、
前記導電性熱可塑性樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂をマトリックスとすること。
(3)
上記(1)または(2)に記載の導電性シートにおいて、
NFPA99に準拠して測定した2点間表面抵抗値が、2.5×10Ω~1.0×10Ωであること。
(4)
上記(1)~(3)のいずれかに記載の導電性シートにおいて、
NFPA99に準拠して測定した上下間抵抗値が、2.5×10Ω~1.0×10Ωであること。
(5)
上記(1)~(4)のいずれかに記載の導電性シートにおいて、
前記導電性シートの試験片300mm×300mmの2枚あたりの、JIS B9923(タンブリング法)による粒径0.5μm以上の発塵量が100個/ft以下であること。
(6)
上記(1)~(5)のいずれかに記載の導電性シートにおいて、
JIS A1454に準拠して測定した加熱による長さ変化率が、2.0%以下であること。
(7)
上記(1)~(6)のいずれかに記載の導電性シートにおいて、
JIS A1454に準拠して測定したへこみ量が、23℃で0.3mm以上であり、45℃で1.5mm以下であること。
【0008】
上記(1)の構成の導電性シートによれば、表層、中間層およびバック層をこの順で積層してなり、表層、中間層およびバック層は、導電性熱可塑性樹脂組成物からなり、前記導電性シートは導電カーボンを含み、前記中間層の比重および厚み、並びに導電性シートの硬度を特定の範囲に定めるとともに、繊維質材料を含まないことから、導電性、寸法安定性およびクッション性に優れ、かつ発塵を抑制し得る、導電性シートを提供できる。
【0009】
上記(2)の構成の導電性シートによれば、前記導電性熱可塑性樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂をマトリックスとするため、寸法安定性およびクッション性をさらに高めることができ、なおかつ発塵もさらに抑制できる、導電性シートを提供できる。
【0010】
上記(3)の構成の導電性シートによれば、NFPA99に準拠して測定した2点間表面抵抗値が特定の範囲であるため、優れた導電性を有する導電性シートを提供できる。
【0011】
上記(4)の構成の導電性シートによれば、NFPA99に準拠して測定した上下間抵抗値が特定の範囲であるため、優れた導電性を有する導電性シートを提供できる。
【0012】
上記(5)の構成の導電性シートによれば、導電性シートの試験片300mm×300mmの2枚あたりの、JIS B9923(タンブリング法)による粒径0.5μm以上の発塵量が100個/ft以下であるため、発塵をさらに抑制できる、導電性シートを提供できる。
【0013】
上記(6)の構成の導電性シートによれば、JIS A1454に準拠して測定した加熱による長さ変化率が、2.0%以下であるため、寸法安定性にさらに優れた、導電性シートを提供できる。
【0014】
上記(7)の構成の導電性シートによれば、JIS A1454に準拠して測定したへこみ量が、23℃で0.3mm以上であり、45℃で1.5mm以下であるため、クッション性にさらに優れた、導電性シートを提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導電性、寸法安定性およびクッション性に優れ、かつ発塵を抑制し得る、導電性シートを提供できる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係る導電性シートの断面図である。
図2図2は、本実施形態に係る導電性シートの断面図である。
図3図3は、本実施形態に係る導電性シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る導電性シートの一実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態に係る導電性シート1は、表層12、中間層14およびバック層16を積層してなる。また、本実施形態に係る導電性シート1は、導電カーボンを含む。導電カーボンは、導電カーボン層13として含まれていてもよいし、上記表層12、中間層14およびバック層16のいずれかの層(導電性熱可塑性樹脂組成物)中に含まれていてもよい。すなわち、図1、2に示すように、本実施形態に係る導電性シート1は、表層12、導電カーボン層13、中間層14およびバック層16を積層してなってもよい。あるいは、図3に示すように表層12、中間層14およびバック層16を積層してなり、いずれかの層(例えば、バック層)中に導電カーボンを含んでもよい。なお、以下では主に導電カーボンが導電カーボン層13として含まれる態様について説明するが、本実施形態に係る導電性シートは当該態様に限定されるものではない。
【0020】
以下各層の特徴を記載する。
表層12は、シート表面に位置する層であり、耐摩耗性、耐傷つき性、耐汚染性を有する。ここで、シート表面に位置する層とは、導電性シートを設置した際に最上層に位置する層を意味する。
導電カーボン層13は、表層とバック層の間に位置し、シートの導電性を高める層であり、導電カーボンを含む。
中間層14は、表層とバック層の間に位置しており、シート全体の物性(クッション性、寸法安定性)に寄与する層である。
バック層16は、シート最下層に位置する層であり、シート表層側への反りを防止する。導電性を高める為に、導電カーボンを含んでもよい。ここで、シート最下層に位置する層とは、導電性シートを設置した際に最下層に位置する層を意味する。
【0021】
また、表層12、導電カーボン層13、中間層14およびバック層16は、導電性熱可塑性樹脂組成物からなる。
導電性熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の各種マトリックスに導電性材料を混合させたものが挙げられる。導電性材料としては、金属粉末、炭素粉末、グラファイト粉末、フェライト粉末等が挙げられる。
【0022】
中でも、さらに寸法安定性およびクッション性に優れ、かつ発塵を抑制できるという観点から、導電性熱可塑性樹脂組成物のマトリックスとしては、塩化ビニル系樹脂が好適である。また、表層12、導電カーボン層13、中間層14およびバック層16がすべて塩化ビニル系樹脂をマトリックスとする導電性熱可塑性樹脂組成物(以下、導電性塩化ビニル系樹脂組成物ともいう)からなるのがさらに好適である。以下、表層12、導電カーボン層13、中間層14およびバック層16がすべて導電性塩化ビニル系樹脂組成物製シートである例について説明するが、本発明は係る形態に制限されるものではない。
【0023】
まず、中間層14のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物について説明する。
導電性塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる塩化ビニル系樹脂としては、とくに制限されないが、例えば、塩化ビニルの単独重合体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体;ポリ塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。前記ポリ塩化ビニル系樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記塩化ビニルモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類等が挙げられる。前記他のモノマーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記塩化ビニル系樹脂のJIS K6720-2に基づく平均重合度は、800~2500が好ましく、1000~2000がさらに好ましい。
【0026】
また、塩化ビニル系樹脂に用いられる可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系{例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジウンデシルフタレート(DUP)等}、トリメリット酸エステル系{例えば、トリオクチルトリメリテート(TOTM)、トリノルマルオクチルトリメリテート(TnOTM)等}、アジピン酸エステル系{例えば、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)}、リン酸系{例えば、リン酸トリエチル、リン酸トリクレシル}、エポキシ系{例えば、エポキシ化大豆油}ポリエステル系等の高分子量可塑剤等が挙げられる。
【0027】
塩化ビニル系樹脂に導電性を付与する導電性材料としては、金属粉末、炭素粉末、グラファイト粉末、フェライト粉末、導電性可塑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
金属粉末としては、例えば銀、ニッケル、銅、金、アルミニウム、鉄、黒鉛等の各粉末が挙げられる。
炭素粉末としては、カーボンブラック等が挙げられる。
導電性可塑剤としては、フタル酸エステル系導電性可塑剤、アジピン酸エステル系導電性可塑剤等が挙げられる。
帯電防止剤としては、アニオン系帯電防止剤(例えばアルキルサルフェート型、アルキルアリルサルフェート型、アルキルホスフェート型、アルキルアミンサルフェート型等)、カチオン系帯電防止剤(例えば第四級アンモニウム塩型、第四級アンモニウム樹脂型、イミダゾリン型等)、非イオン系(例えばソルビタン型、エーテル型、アミンおよびアミド型、エタノールアミド型等)、ベタイン類等が挙げられる。
【0028】
前記導電性材料の配合量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、10~50質量部が好ましく、20~45質量部がさらに好ましい。
【0029】
また塩化ビニル系樹脂組成物には、必要に応じて、公知の無機微粒子(炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、シリカ等)、安定剤、滑剤、難燃剤、架橋剤、加工助剤、着色剤等をさらに配合することができる。またその配合量も本発明の効果を損ねない限り、任意である。
【0030】
また塩化ビニル系樹脂組成物は、公知の混練機を用いて前記各種材料を混練することにより、容易に調製することができる。
【0031】
中間層14は、従来公知の方法である押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法、プレス成形法等を適用し、成形することができる。
【0032】
次に、表層12およびバック層16のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物について説明する。
表層12のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物は、中間層14のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物と同様であるが、耐摩耗性を高める為、中間層14よりも充填剤量が少ないことが好ましい。また、導電性を高めるため、中間層14よりも導電性可塑剤の含有量が多いことが好ましい。組成物の調製方法および成形方法は、前記中間層14と同様である。
また、バック層16のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物は、中間層14のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物と同様であるが、柔軟性を高めるため、中間層14よりも可塑剤量が多いことが好ましい。組成物の調製方法および成形方法は、前記中間層14と同様である。
導電カーボン層13のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物は、中間層14のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物と同様であるが、導電性を高めるために、導電カーボンを含む点で異なる。組成物の調製方法および成形方法は、前記中間層14と同様である。
【0033】
導電カーボンの種類としては、好ましくは、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー等が挙げられる。導電カーボン層13に含まれる前記導電カーボンの割合は、10~30質量%がさらに好ましい。
【0034】
中間層14の厚さは、0.6mm~1.2mmが好ましく、0.8mm~1.0mmがさらに好ましい。
表層12の厚さは、0.2mm~0.5mmが好ましく、0.3mm~0.4mmがさらに好ましい。
バック層16の厚さは、0.3mm~1.0mmが好ましく、0.5mm~0.8mmがさらに好ましい。
導電カーボン層13の厚さは、0.1mm~0.4mmが好ましく、0.2mm~0.3mmがさらに好ましい。
【0035】
ここで本発明では、導電性シート全体の厚みに対し、中間層14の厚みの比率が30~60%であることが必要である。
また、中間層14の比重は、1.3~1.8であることが必要である。
中間層の厚みの比率および比重を前記のように特定範囲に定めることにより、繊維質材料からなる基布を用いずとも、寸法安定性を高めることが可能となる。
【0036】
前記中間層14の厚みの比率は、40~50%がさらに好ましい。
前記中間層14の比重は、1.5~1.7がさらに好ましい。
なお、比重は、JIS K7112に基づき測定される。
【0037】
上述のように、本実施形態に係る導電性シート1は、図1図2に示すように、表層12、導電カーボン層13、中間層14およびバック層16を積層してなってよい。また、図3に示すように、表層12、中間層14および導電カーボンを含むバック層16を積層してなってもよい。積層方法はとくに制限されないが、例えば各層をカレンダー成形し、積層する方法が挙げられる。
【0038】
本発明の導電性シート1の全体の厚さは、1.0mm~2.5mmが好ましく、1.5mm~2.0mmがさらに好ましい。
【0039】
また、本発明の導電性シート1は、JIS K7215に基づき測定された硬度が75~85である。中間層14の比重が高くなると、クッション性が失われる傾向にあるが、導電性シート1の硬度を75~85にすることで、クッション性を悪化させることなく、寸法安定性を高めることができる。
前記硬度は、78~82であるのがさらに好ましい。
【0040】
本発明の好適な形態において、本発明の導電性シート1は、NFPA(National Fire Protection Association)99に準拠して測定した2点間表面抵抗値が、2.5×10Ω~1.0×10Ωであるのが好ましく、1.0×10Ω~1.0×10Ωであるのがさらに好ましい。当該形態では、優れた導電性を有する導電性シートを提供できる。
【0041】
本発明の好適な形態において、本発明の導電性シート1は、NFPA99に準拠して測定した上下間抵抗値が、2.5×10Ω~1.0×10Ωであるのが好ましく、1.0×10Ω~1.0×10Ωであるのがさらに好ましい。当該形態では、優れた導電性を有する導電性シートを提供できる。
【0042】
本発明の好適な形態において、本発明の導電性シート1は、試験片300mm×300mmの2枚あたりの、JIS B9923(タンブリング法)による粒径0.5μm以上の発塵量が100個/ft以下であり、50個/ft以下であるのがさらに好ましい。当該形態では、発塵をさらに抑制した導電性シートを提供できる。
【0043】
本発明の好適な形態において、本発明の導電性シート1は、JIS A1454に準拠して測定した加熱による長さ変化率が、2.0%以下であり、1.5%以下であるのがさらに好ましい。当該形態では、寸法安定性をさらに高めた導電性シートを提供できる。
【0044】
本発明の好適な形態において、本発明の導電性シート1は、JIS A1454に準拠して測定したへこみ量が、23℃で0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上がより好ましい。また、JIS A1454に準拠して測定したへこみ量が、45℃で1.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以下がより好ましい。当該形態では、クッション性をさらに高めた導電性シートを提供できる。
【0045】
なお、前記中間層14の比重は、充填剤量を調整することにより、導電性シート1の硬度は、可塑剤量を調整することにより、調整可能である。
【0046】
また本発明の導電性シート1は、繊維質材料を含まないことを特徴の一つとしている。したがって、繊維質材料の存在に基づく発塵が全く生じない。なお繊維質材料とは、床材等に使用される導電性シートの基布として一般的に使用されている繊維をすべて指し、例えば公知の合成繊維、半合成繊維、天然繊維等が挙げられる。
【0047】
本発明の導電性シート1は、とくに、クリーンルームにおける床材、棚、作業台等に適用するのに好適である。
【実施例0048】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0049】
実施例1~8
実施例1~8は下記表1に示す材料および配合量に基づき、各成分をニーダにて混練し、実施例1~8の、表層用塩化ビニル系樹脂組成物、導電カーボン層用塩化ビニル系樹脂組成物、中間層用塩化ビニル系樹脂組成物およびバック層用塩化ビニル系樹脂組成物をそれぞれ調製した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示す各種材料は以下の通りである。
PVC(塩化ビニル系樹脂):S1001、S1003(株式会社カネカ社製、JIS K6720-2に基づく平均重合度=1030、1300)
可塑剤:ジイソノニルフタレート(DINP)(株式会社ジェイ・プラス製)
導電性可塑剤:C-1000(新日本理化株式会社製)
帯電防止剤:LV-70(株式会社ADEKA製)
安定剤:NPS-500(株式会社ADEKA製)
炭酸カルシウム:エスカロン#1500(三共精粉株式会社製)
導電カーボン:EC600JD(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製)
なお、PVCにつき、表層にはS1003を使用し、その他の層にはS1001を使用した。
【0052】
続いて、各組成物を、表層12、導電カーボン層、中間層14およびバック層16の順でカレンダー成形し、下記表2に示す厚さを有する導電性シートを製造した。
【0053】
前記製造された各種導電性シートについて、下記物性を測定した。
・中間層14の比重(JIS K7112に準拠して測定)
・導電性シートの硬度(JIS K7215に準拠して測定)
・導電性シートの加熱による長さ変化率(JIS A1454に準拠して測定)
・導電性シートの2点間表面抵抗値(NFPA99に準拠して測定)
・導電性シートの上下間抵抗値(NFPA99に準拠して測定)
・導電性シートの発塵量(JIS B9923(タンブリング法)に準拠して測定)
・導電性シートのへこみ量(JIS A1454に準拠して測定)
【0054】
結果を下記表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
各実施例の結果から、実施例の導電性シートは、表層12、中間層14およびバック層16をこの順で積層してなり、前記表層12、中間層14およびバック層16は、導電性熱可塑性樹脂組成物からなり、前記導電性シートは、導電カーボンを含み、前記中間層14の比重が1.3~1.8であり、前記導電性シート全体の厚みに対し、前記中間層14の厚みの比率が30~60%であり、導電性シートの硬度が75~85であり、かつ繊維質材料を含まない導電性シート1によれば、導電性、寸法安定性およびクッション性に優れ、かつ発塵を抑制し得ることが分かった。
【0057】
比較例1~25
下記表3~5に示す厚さおよび物性を有する導電性シートを製造したこと以外は、上記実施例1~8を繰り返した。
実施例1における、表層用塩化ビニル系樹脂組成物、中間層用塩化ビニル系樹脂組成物およびバック層用塩化ビニル系樹脂組成物を元にして、比較例1、9、17を製造した。
実施例2における、表層用塩化ビニル系樹脂組成物、中間層用塩化ビニル系樹脂組成物およびバック層用塩化ビニル系樹脂組成物を元にして、比較例2、10、18を製造した。
実施例3における、表層用塩化ビニル系樹脂組成物、中間層用塩化ビニル系樹脂組成物およびバック層用塩化ビニル系樹脂組成物を元にして、比較例3、11、19を製造した。
実施例4における、表層用塩化ビニル系樹脂組成物、中間層用塩化ビニル系樹脂組成物およびバック層用塩化ビニル系樹脂組成物を元にして、比較例4、12、20を製造した。
実施例5における、表層用塩化ビニル系樹脂組成物、中間層用塩化ビニル系樹脂組成物およびバック層用塩化ビニル系樹脂組成物を元にして、比較例5、13、21を製造した。
実施例6における、表層用塩化ビニル系樹脂組成物、中間層用塩化ビニル系樹脂組成物およびバック層用塩化ビニル系樹脂組成物を元にして、比較例6、14、22を製造した。
実施例7における、表層用塩化ビニル系樹脂組成物、中間層用塩化ビニル系樹脂組成物およびバック層用塩化ビニル系樹脂組成物を元にして、比較例7、15、23を製造した。
実施例8における、表層用塩化ビニル系樹脂組成物、中間層用塩化ビニル系樹脂組成物およびバック層用塩化ビニル系樹脂組成物を元にして、比較例8、16、24、25を製造した。
結果を表3~5に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
比較例1~4は、中間層14の比重が1.2であり、本発明で規定する下限未満であるので、加熱による長さ変化率が悪化した。
比較例5~8は、中間層14の比重が1.84であり、本発明で規定する上限を超えているので、導電性が悪化した。
比較例9~16は、導電性シート全体の厚みに対する、中間層14の厚みの比率が本発明で規定する範囲外であるので、加熱による長さ変化率または導電性が悪化した。
比較例17~24は、導電性シートの硬度が本発明で規定する範囲外であるので、加熱による長さ変化率および/またはへこみ率が悪化した。
比較例25の導電性シートは、実施例8における導電性シートのバック層16側にポリエステル及びレーヨンからなる基布を貼り合せたものであり、繊維質材料を含むため、発塵が著しく多いものであった。
【0062】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0063】
ここで、上述した本発明に係る導電性シートの実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)~(7)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
少なくとも表層(12)、中間層(14)およびバック層(16)をこの順で積層してなる、導電性シート(1)であって、
前記表層(12)、中間層(14)およびバック層(16)は、導電性熱可塑性樹脂組成物からなり、
前記導電性シートが導電カーボンを含み、
前記中間層(14)の比重が1.3~1.8であり、
前記導電性シート全体の厚みに対し、前記中間層(14)の厚みの比率が30~60%であり、
前記導電性シート(1)の硬度が75~85であり、かつ
前記導電性シート(1)は、繊維質材料を含まない、
導電性シート。
(2)
上記(1)の導電性シートにおいて、
前記導電性熱可塑性樹脂組成物が、導電性塩化ビニル系樹脂をマトリックスとする、導電性シート。
(3)
上記(1)または(2)の導電性シートにおいて、
NFPA99に準拠して測定した2点間表面抵抗値が、2.5×10Ω~1.0×10Ωである、導電性シート。
(4)
上記(1)~(3)のいずれかの導電性シートにおいて、
NFPA99に準拠して測定した上下間抵抗値が、2.5×10Ω~1.0×10Ωである、導電性シート。
(5)
上記(1)~(4)のいずれかの導電性シートにおいて、
前記導電性シートの試験片300mm×300mmの2枚あたりの、JIS B9923(タンブリング法)による粒径0.5μm以上の発塵量が100個/ft以下である、導電性シート。
(6)
上記(1)~(5)のいずれかの導電性シートにおいて、
JIS A1454に準拠して測定した加熱による長さ変化率が、2.0%以下である、導電性シート。
(7)
上記(1)~(6)のいずれかの導電性シートにおいて、
JIS A1454に準拠して測定したへこみ量が、23℃で0.3mm以上であり、45℃で1.5mm以下である、導電性シート。
【符号の説明】
【0064】
1 導電性シート
12 表層
13 導電カーボン層
14 中間層
図1
図2
図3