(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017542
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】導電性シート
(51)【国際特許分類】
H01B 5/00 20060101AFI20230131BHJP
B32B 27/22 20060101ALI20230131BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
H01B5/00 Z
B32B27/22
B32B27/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121876
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 真一
【テーマコード(参考)】
4F100
5G307
【Fターム(参考)】
4F100AA08A
4F100AA08B
4F100AA08C
4F100AA08D
4F100AA18A
4F100AA18B
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4F100AA18D
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4F100AK00A
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4F100BA25C
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4F100CA04B
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4F100CA05A
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4F100CA05C
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4F100JG04A
4F100JL04A
4F100YY00A
5G307AA04
(57)【要約】
【課題】導電性およびクッション性に優れ、かつ表層側への反りおよび発塵を抑制し得る、導電性シートを提供する。
【解決手段】表層12、中間層14およびバック層16を積層してなる導電性シート1であって、表層12、中間層14およびバック層16は、熱可塑性樹脂を含む導電性熱可塑性樹脂組成物からなり、導電性シート1は、導電カーボンを含み、表層12を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤量が熱可塑性樹脂100質量部に対し29~47質量部であり、表層12を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物がJIS K6720-2に基づく重合度が、1300以上の塩化ビニル系樹脂をマトリックスとし、導電性シート全体の厚みに対し、表層12の厚みの比率が10~40%であり、バック層16の厚みは、表層12の厚み以下であり、かつ導電性シート1全体の硬度が75~95である、導電性シート1によって上記課題を解決した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表層、中間層およびバック層を積層してなる導電性シートであって、
前記表層、中間層およびバック層は、熱可塑性樹脂を含む導電性熱可塑性樹脂組成物からなり、
前記導電性シートは、導電カーボンを含み、
前記表層を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤量が前記熱可塑性樹脂100質量部に対して29~47質量部であり、
前記表層を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の前記熱可塑性樹脂のJIS K6720-2に基づく重合度が、1300以上であり、
前記導電性シート全体の厚みに対し、前記表層の厚みの比率が10~40%であり、
前記バック層の厚みは、前記表層の厚み以下であり、かつ
前記導電性シート全体の硬度が75~95である、
導電性シート。
【請求項2】
前記導電性熱可塑性樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂をマトリックスとする、請求項1に記載の導電性シート。
【請求項3】
NFPA99に準拠して測定した2点間表面抵抗値が、2.5×104Ω~1.0×107Ωである、請求項1または2に記載の導電性シート。
【請求項4】
NFPA99に準拠して測定した上下間抵抗値が、2.5×104Ω~1.0×107Ωである、請求項1~3のいずれかに記載の導電性シート。
【請求項5】
JIS A1454に準拠した耐摩耗性試験における摩耗量が、0.05mm未満である、請求項1~4のいずれかに記載の導電性シート。
【請求項6】
JIS A1454に準拠した反り試験における前記表層側への反りが、0mmである、請求項1~5のいずれかに記載の導電性シート。
【請求項7】
JIS A1454に準拠して測定したへこみ量が、23℃で0.3mm以上であり、45℃で1.5mm以下である、請求項1~6のいずれかに記載の導電性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、医薬品等を製造するクリーンルームでは、塵埃が製品の品質に大きな影響を及ぼすことが知られている。したがって、クリーンルームにおいては、発塵を極力抑制する必要がある。一例として、クリーンルーム内の床、棚、作業台等で使用される導電性シートには厳重な防塵性が求められる。そのため、導電性シートは耐摩耗性を向上させ、導電性シート表面からの発塵を抑制する必要がある。一方、導電性シートを床材として使用する場合、導電性シート表面側への反りが発生しないこと、並びに良好なクッション性が求められる。
【0003】
発塵の抑制を目的とした導電性シートとして、下記特許文献1には、表面側に体積固有抵抗値1×106~1×1010Ω・cmの防発塵性の合成樹脂層を有する一方、裏面側に抵抗値1×100~1×104Ω・cmの導電性の基材層を有するとともに、合成樹脂層および基材層を有する積層体としての体積固有抵抗値を1×106~1×1010Ω・cmとしたことを特徴とする帯電防止用積層シートが開示されている。この特許文献1に開示された技術では、合成樹脂層の厚みを一定の範囲とすることで、耐摩耗性を改善するとしているが、合成樹脂層の厚みを変えても合成樹脂層自体の耐摩耗性は変化しないため、発塵を抑制するまでの耐摩耗性は得られないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、導電性およびクッション性に優れ、かつ表層側への反りおよび発塵を抑制し得る、導電性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る「導電性シート」は、下記(1)~(7)を特徴としている。
(1)
少なくとも表層、中間層およびバック層を積層してなる導電性シートであって、
前記表層、中間層およびバック層は、熱可塑性樹脂を含む導電性熱可塑性樹脂組成物からなり、
前記導電性シートは、導電カーボンを含み、
前記表層を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤量が前記熱可塑性樹脂100質量部に対して29~47質量部であり、
前記表層を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の前記熱可塑性樹脂のJIS K6720-2に基づく重合度が、1300以上であり、
前記導電性シート全体の厚みに対し、前記表層の厚みの比率が10~40%であり、
前記バック層の厚みは、前記表層の厚み以下であり、かつ
前記導電性シート全体の硬度が75~95である、
導電性シートであること。
(2)
上記(1)に記載の導電性シートにおいて、
前記導電性熱可塑性樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂をマトリックスとすること。
(3)
上記(1)または(2)に記載の導電性シートにおいて、
NFPA99に準拠して測定した2点間表面抵抗値が、2.5×104Ω~1.0×107Ωであること。
(4)
上記(1)~(3)のいずれかに記載の導電性シートにおいて、
NFPA99に準拠して測定した上下間抵抗値が、2.5×104Ω~1.0×107Ωであること。
(5)
上記(1)~(4)のいずれかに記載の導電性シートにおいて、
JIS A1454に準拠した耐摩耗性試験における摩耗量が、0.05mm未満であること。
(6)
上記(1)~(5)のいずれかに記載の導電性シートにおいて、
JIS A1454に準拠した反り試験における前記表層側への反りが、0mmであること。
(7)
上記(1)~(6)のいずれかに記載の導電性シートにおいて、
JIS A1454に準拠して測定したへこみ量が、23℃で0.3mm以上であり、45℃で1.5mm以下であること。
【0007】
上記(1)の構成の導電性シートによれば、導電性熱可塑性樹脂組成物からなる表層、中間層およびバック層を積層してなり、導電カーボンを含み、前記表層の導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤量、前記導電性熱可塑性樹脂組成物中に含まれる熱可塑性樹脂の重合度、前記表層の厚みの比率、前記バック層の厚みの条件並びに導電性シートの硬度を特定化していることから、導電性およびクッション性に優れ、かつ表層側への反りおよび発塵を抑制し得る、導電性シートを提供できる。
【0008】
上記(2)の構成の導電性シートによれば、前記導電性熱可塑性樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂をマトリックスとすることから、クッション性をさらに高めることができ、なおかつ表層側への反りおよび発塵もさらに抑制できる、導電性シートを提供できる。
【0009】
上記(3)の構成の導電性シートによれば、NFPA99に準拠して測定した2点間表面抵抗値が特定の範囲であるため、優れた導電性を有する導電性シートを提供できる。
【0010】
上記(4)の構成の導電性シートによれば、NFPA99に準拠して測定した上下間抵抗値が特定の範囲であるため、優れた導電性を有する導電性シートを提供できる。
【0011】
上記(5)の構成の導電性シートによれば、JIS A1454に準拠した耐摩耗性試験における摩耗量が、0.05mm未満であるため、発塵をさらに抑制できる、導電性シートを提供できる。
【0012】
上記(6)の構成の導電性シートによれば、JIS A1454に準拠した反り試験における前記表層側への反りが、0mmであるため、前記表層側への反りを著しく抑制した、導電性シートを提供できる。
【0013】
上記(7)の構成の導電性シートによれば、JIS A1454に準拠して測定したへこみ量が、23℃で0.3mm以上であり、45℃で1.5mm以下であるため、クッション性にさらに優れた、導電性シートを提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導電性およびクッション性に優れ、かつ表層側への反りおよび発塵を抑制し得る、導電性シートを提供できる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る導電性シートの断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る導電性シートの断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る導電性シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る導電性シートの一実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態に係る導電性シート1は、表層12、中間層14およびバック層16を積層してなる。また、本実施形態に係る導電性シート1は、導電カーボンを含む。導電カーボンは、導電カーボン層13として含まれていてもよいし、上記表層12、中間層14およびバック層16のいずれかの層(導電性熱可塑性樹脂組成物)中に含まれていてもよい。すなわち、
図1、2に示すように、本実施形態に係る導電性シート1は、表層12、導電カーボン層13、中間層14およびバック層16を積層してなってもよい。あるいは、
図3に示すように表層12、中間層14およびバック層16を積層してなり、いずれかの層(例えば、バック層)に導電カーボンを含んでもよい。なお、以下では主に導電カーボンが導電カーボン層13として含まれる態様について説明するが、本実施形態に係る導電性シートは当該態様に限定されるものではない。
【0019】
以下各層の特徴を記載する。
表層12は、シート表面に位置する層であり、耐摩耗性、耐傷つき性、耐汚染性を有する。ここで、シート表面に位置する層とは、導電性シートを設置した際に最上層に位置する層を意味する。
導電カーボン層13は、表層とバック層の間に位置し、シートの導電性を高める層であり、導電カーボンを含む。
中間層14は、表層とバック層の間にあるすべての層であり、シート全体の物性(クッション性、寸法安定性)に寄与する層である。
バック層16は、シート最下層に位置する層であり、シート表層側への反りを防止する。導電性を高める為に、導電カーボンを含んでもよい。ここで、シート最下層に位置する層とは、導電性シートを設置した際に最下層に位置する層を意味する。
【0020】
また、表層12、導電カーボン層13、中間層14およびバック層16は、導電性熱可塑性樹脂組成物からなる。
導電性熱可塑性樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱可塑性樹脂を含む。また、導電性熱可塑性樹脂組成物は、当該熱可塑性樹脂をマトリックスとして含んでおり、当該マトリックス中に導電性材料を混合させたものが挙げられる。導電性材料としては、金属粉末、炭素粉末、グラファイト粉末、フェライト粉末、導電性可塑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0021】
中でも、さらにクッション性に優れ、かつ表層側への反りおよび発塵を抑制し得るという観点から、導電性熱可塑性樹脂組成物のマトリックスとしては、塩化ビニル系樹脂が好適であり、表層12、導電カーボン層13、中間層14およびバック層16がすべて塩化ビニル系樹脂をマトリックスとする導電性熱可塑性樹脂組成物(以下、導電性塩化ビニル系樹脂組成物ともいう)からなるのがさらに好適である。以下、表層12、導電カーボン層13、中間層14およびバック層16がすべて導電性塩化ビニル系樹脂組成物製シートである例について説明するが、本発明は係る形態に制限されるものではない。
【0022】
まず、表層12のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物について説明する。
導電性塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる塩化ビニル系樹脂としては、とくに制限されないが、例えば、塩化ビニルの単独重合体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体;ポリ塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。前記ポリ塩化ビニル系樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記塩化ビニルモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類等が挙げられる。前記他のモノマーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記塩化ビニル系樹脂のJIS K6720-2に基づく平均重合度は、1300以上であることが必要である。平均重合度が1300未満では、耐摩耗性が低下し、発塵量が増加する。前記平均重合度は、1300~2500が好ましく、1300~2000がさらに好ましい。
【0025】
また、塩化ビニル系樹脂に用いられる可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系{例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジウンデシルフタレート(DUP)等}、トリメリット酸エステル系{例えば、トリオクチルトリメリテート(TOTM)、トリノルマルオクチルトリメリテート(TnOTM)等}、アジピン酸エステル系{例えば、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)}、リン酸系{例えば、リン酸トリエチル、リン酸トリクレシル}、エポキシ系{例えば、エポキシ化大豆油}ポリエステル系等の高分子量可塑剤等が挙げられる。
【0026】
塩化ビニル系樹脂に導電性を付与する導電性材料としては、金属粉末、炭素粉末、グラファイト粉末、フェライト粉末、導電性可塑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
金属粉末としては、例えば銀、ニッケル、銅、金、アルミニウム、鉄、黒鉛等の各粉末が挙げられる。
炭素粉末としては、カーボンブラック等が挙げられる。
導電性可塑剤としては、フタル酸エステル系導電性可塑剤、アジピン酸エステル系導電性可塑剤等が挙げられる。
帯電防止剤としては、アニオン系帯電防止剤(例えばアルキルサルフェート型、アルキルアリルサルフェート型、アルキルホスフェート型、アルキルアミンサルフェート型等)、カチオン系帯電防止剤(例えば第四級アンモニウム塩型、第四級アンモニウム樹脂型、イミダゾリン型等)、非イオン系(例えばソルビタン型、エーテル型、アミンおよびアミド型、エタノールアミド型等)、ベタイン類等が挙げられる。
【0027】
前記導電性材料の配合量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、10~55質量部が好ましく、20~50質量部がさらに好ましい。
【0028】
また塩化ビニル系樹脂組成物には、必要に応じて、公知の無機微粒子(炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、シリカ等)、安定剤、滑剤、難燃剤、架橋剤、加工助剤、着色剤等をさらに配合することができる。またその配合量も本発明の効果を損ねない限り、任意である。
【0029】
また塩化ビニル系樹脂組成物は、公知の混練機を用いて前記各種材料を混練することにより、容易に調製することができる。
【0030】
本発明では、表層12を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤量が熱可塑性樹脂100質量部に対して29~47質量部であることが必要である。表層12を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤量が熱可塑性樹脂100質量部に対し29質量部未満であると、耐摩耗性が低下し、発塵量が増加するとともにクッション性が悪化する。逆に表層12を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤量が熱可塑性樹脂100質量部に対して47質量部を超えると、耐摩耗性が低下し、発塵量が増加する。
表層12を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤量は熱可塑性樹脂100質量部に対して33~43質量部がさらに好ましい。
【0031】
表層12は、従来公知の方法である押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法、プレス成形法等を適用し、成形することができる。
【0032】
次に、中間層14およびバック層16のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物について説明する。
【0033】
中間層14のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物は、表層12のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物と同様であるが、寸法安定性を高める為、充填剤量が多いことが好ましい。組成物の調製方法および成形方法は、前記表層12と同様である。
【0034】
また、バック層16のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物は、表層12のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物と同様であるが、柔軟性を高める為、表層12よりも可塑剤量が多いことが好ましい。組成物の調製方法および成形方法は、前記表層12と同様である。
【0035】
導電カーボン層13のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物は、表層12のシートを調製するために用いられる導電性塩化ビニル系樹脂組成物と同様であるが、導電性を高める為、導電カーボンを含む点で異なる。組成物の調製方法および成形方法は、前記表層12と同様である。
【0036】
導電カーボンの種類としては、好ましくは、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー等が挙げられる。導電カーボン層13に含まれる前記導電カーボンの割合は、10~30質量%がさらに好ましい。
【0037】
表層12の厚さは、0.2mm~0.8mmが好ましく、0.3mm~0.7mmがさらに好ましい。
中間層14の厚さは、0.6mm~1.6mmが好ましく、0.8mm~1.4mmがさらに好ましい。
バック層16の厚さは、0.1mm~0.8mmが好ましく、0.2mm~0.7mmがさらに好ましい。
導電カーボン層13の厚さは、0.1mm~0.4mmが好ましく、0.2mm~0.3mmがさらに好ましい。
【0038】
ここで本発明では、導電性シート全体の厚みに対し、表層12の厚みの比率が10~40%であることが必要である。
また、バック層16の厚みは、表層12の厚み以下であることが必要である。
表層12の厚みの比率およびバック層16の厚みの条件を前記のように特定化することにより、クッション性を高めるとともに、耐摩耗性を良化させ、発塵量を減少させることが可能となる。
【0039】
前記表層12の厚みの比率は、15~30%がさらに好ましい。
【0040】
上述のように、本実施形態に係る導電性シート1は、
図1、
図2に示すように、表層12、導電カーボン層13、中間層14およびバック層16を積層してなってよい。また、
図3に示すように、表層12、中間層14および導電カーボンを含むバック層16を積層してなってもよい。積層方法はとくに制限されないが、例えば各層をカレンダー成形し、積層する方法が挙げられる。
本発明の導電性シート1の全体の厚さは、1.0mm~3.0mmが好ましく、1.5mm~2.5mmがさらに好ましい。
【0041】
また、本発明の導電性シート1は、JIS K7215に基づき測定された硬度が75~95である必要がある。導電性シート1の硬度を75~95にすることで、クッション性を高めるとともに、耐摩耗性を良化させ、発塵量を減少させることが可能となる。
前記硬度は、80~90であるのがさらに好ましい。
【0042】
本発明の好適な形態において、本発明の導電性シート1は、NFPA99に準拠して測定した2点間表面抵抗値が、2.5×104Ω~1.0×107Ωであるのが好ましく、1.0×105Ω~1.0×106Ωであるのがさらに好ましい。当該形態では、優れた導電性を有する導電性シートを提供できる。
【0043】
本発明の好適な形態において、本発明の導電性シート1は、NFPA99に準拠して測定した上下間抵抗値が、2.5×104Ω~1.0×107Ωであるのが好ましく、1.0×105Ω~1.0×106Ωであるのがさらに好ましい。当該形態では、優れた導電性を有する導電性シートを提供できる。
【0044】
本発明の好適な形態において、本発明の導電性シート1は、JIS A1454に準拠した耐摩耗性試験における摩耗量が、0.05mm未満であり、0.03mm以下であるのがさらに好ましい。当該形態では、発塵をさらに抑制した導電性シートを提供できる。
【0045】
本発明の好適な形態において、本発明の導電性シート1は、JIS A1454に準拠した反り試験における前記表層側への反りが、0mmであるのがさらに好ましい。当該形態では、導電性シート1の表層側への反りを顕著に抑制した導電性シートを提供できる。
【0046】
本発明の好適な形態において、本発明の導電性シート1は、JIS A1454に準拠して測定したへこみ量が、23℃で0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上がより好ましい。また、JIS A1454に準拠して測定したへこみ量が、45℃で1.5mm以下であることが好ましく、1.2mm以下がより好ましい。当該形態では、クッション性をさらに高めた導電性シートを提供できる。
【0047】
なお、前記表層12の硬度は、塩化ビニル系樹脂の重合度及び可塑剤量を調整することにより、調整可能である。
【0048】
本発明の導電性シート1は、とくに、クリーンルームにおける床材、棚、作業台等に適用するのに好適である。
【実施例0049】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0050】
実施例1~8、比較例1~16
実施例1~8は下記表1に示す材料および配合量に基づき、各成分をニーダにて混練し、表層用塩化ビニル系樹脂組成物、導電カーボン層用塩化ビニル系樹脂組成物、中間層用塩化ビニル系樹脂組成物およびバック層用塩化ビニル系樹脂組成物をそれぞれ調製した。
また、比較例1~16については、実施例1~8と同じ材料を用い、その配合量を適宜変更することにより、表層用塩化ビニル系樹脂組成物、導電カーボン層用塩化ビニル系樹脂組成物、中間層用塩化ビニル系樹脂組成物およびバック層用塩化ビニル系樹脂組成物をそれぞれ調製した。
【0051】
【0052】
PVC(塩化ビニル系樹脂):
S1003(株式会社カネカ社製、JIS K6720-2に基づく平均重合度=1300)
TK-2000E(信越化学工業株式会社、IS K6720-2に基づく平均重合度=2000)
可塑剤:ジイソノニルフタレート(DINP)(株式会社ジェイ・プラス製)
導電性可塑剤:C-1000(新日本理化株式会社製)
帯電防止剤:LV-70(株式会社ADEKA製)
安定剤:NPS-500(株式会社ADEKA製)
炭酸カルシウム:エスカロン#1500(三共精粉株式会社製)
導電カーボン:EC600JD(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製)
【0053】
続いて、各組成物を、表層12、導電カーボン層13、中間層14およびバック層16の順でカレンダー成形し、下記表4~6に示す厚さを有する導電性シートを製造した。
【0054】
前記製造された各種導電性シートについて、下記物性を測定した。
・導電性シートの硬度(JIS K7215に準拠して測定)
・導電性シートの2点間表面抵抗値(NFPA99に準拠して測定)
・導電性シートの上下間抵抗値(NFPA99に準拠して測定)
・導電性シートの耐摩耗性(JIS A1454に準拠して測定)
・導電性シートの表層側への反り(JIS A1454に準拠して測定)
・導電性シートのへこみ量(JIS A1454に準拠して測定)
【0055】
結果を下記表2~4に示す。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
実施例1~8の結果から、実施例の導電性シートは、表層12、中間層14およびバック層16を積層してなり、表層12、中間層14およびバック層16が導電性熱可塑性樹脂組成物から成りを含み、前記導電シートが導電カーボンを含み、表層12を構成する導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤量が熱可塑性樹脂100質量部に対して29~47質量部であり、表層12を構成する導電性熱可塑性樹脂組成物が、重合度が1300以上の塩化ビニル系樹脂をマトリックスとしており、導電性シート全体の厚みに対し表層12の厚みの比率が10~40%であり、バック層16の厚みは表層12の厚み以下であり、かつ導電性シート1全体の硬度が75~95であるため、導電性およびクッション性に優れ、かつ表層側への反りおよび発塵を抑制し得ることが分かった。
【0060】
比較例1は、表層12を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤量が熱可塑性可塑樹脂100質量部に対して49質量部であり、本発明で規定する上限を超えているので、耐摩耗性が低下し、発塵量の上昇が見込まれた。
比較例2は、表層12を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤量が熱可塑性樹脂100質量部に対して27質量部であり、本発明で規定する下限未満であるので、クッション性が悪化した。
比較例3~4は、導電性シート1の硬度が本発明で規定する範囲外であるので、クッション性が悪化した。
比較例5~6は、導電性シート全体の厚みに対し、表層12の厚みの比率が本発明で規定する範囲外であるので、クッション性が悪化した。
比較例7~8は、バック層16の厚みが、表層12の厚みを超えているので、導電性シート1の表層12側への反りが発生した。
比較例9は、表層12を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤量が熱可塑性樹脂100質量部に対し49質量部であり、また導電性熱可塑性樹脂組成物中の塩化ビニル系樹脂の重合度が1000であり、本発明で規定する下限未満であるので、耐摩耗性が低下し、発塵量の上昇が見込まれた。
比較例10は、表層12を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤が熱可塑性樹脂100質量部に対し、27質量部であり、本発明で規定する下限未満であり、また導電性熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の重合度が1000であり、本発明で規定する下限未満であるので、耐摩耗性が低下し、発塵量の上昇が見込まれた。
比較例11は、導電性シート1の硬度が72であり、本発明で規定する下限未満であり、また導電性熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の重合度が1000であり、本発明で規定する下限未満であるので、耐摩耗性が低下し、発塵量の上昇が見込まれるとともに、クッション性が悪化した。
比較例12は、導電性シート1の硬度が97であり、本発明で規定する上限を超え、また導電性熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の重合度が1000であり、本発明で規定する下限未満であるので、耐摩耗性が低下し、発塵量の上昇が見込まれた。
比較例13は、導電性シート全体の厚みに対し、表層12の厚みの比率が本発明で規定する下限未満であり、また導電性熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の重合度が1000であり、本発明で規定する下限未満であるので、耐摩耗性が低下し、発塵量の上昇が見込まれるとともに、クッション性が悪化した。
比較例14は、導電性シート全体の厚みに対し、表層12の厚みの比率が本発明で規定する上限を超え、また導電性熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の重合度が1000であり、本発明で規定する下限未満であるので、耐摩耗性が低下し、発塵量の上昇が見込まれた。
比較例15~16は、バック層16の厚みが、表層12の厚みを超え、また導電性熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の重合度が1000であり、本発明で規定する下限未満であるので、耐摩耗性が低下し、発塵量の上昇が見込まれるとともに、導電性シート1の表層12側への反りが発生した。
【0061】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0062】
ここで、上述した本発明に係る導電性シートの実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)~(7)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
少なくとも表層(12)、中間層(14)およびバック層(16)を積層してなる導電性シート(1)であって、
前記表層(12)、中間層(14)およびバック層(16)は、熱可塑性樹脂を含む導電性熱可塑性樹脂組成物からなり、
前記導電性シート(1)は、導電カーボンを含み、
前記表層(12)を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の可塑剤量が前記熱可塑性樹脂100質量部に対して29~47質量部であり、
前記表層(12)を構成する前記導電性熱可塑性樹脂組成物中の前記熱可塑性樹脂のJIS K6720-2に基づく重合度が、1300以上であり、
前記導電性シート全体の厚みに対し、前記表層(12)の厚みの比率が10~40%であり、
前記バック層(16)の厚みは、前記表層(12)の厚み以下であり、かつ
前記導電性シート(1)全体の硬度が75~95である、
導電性シート。
(2)
上記(1)の導電性シートにおいて、
前記導電性熱可塑性樹脂組成物が塩化ビニル系樹脂をマトリックスとする、導電性シート。
(3)
上記(1)または(2)の導電性シートにおいて、
NFPA99に準拠して測定した2点間表面抵抗値が、2.5×104Ω~1.0×107Ωである、導電性シート。
(4)
上記(1)~(3)のいずれかの導電性シートにおいて、
NFPA99に準拠して測定した上下間抵抗値が、2.5×104Ω~1.0×107Ωである、導電性シート。
(5)
上記(1)~(4)のいずれかの導電性シートにおいて、
JIS A1454に準拠した耐摩耗性試験における摩耗量が、0.05mm未満である、導電性シート。
(6)
上記(1)~(5)のいずれかの導電性シートにおいて、
JIS A1454に準拠した反り試験における前記表層側への反りが、0mmである、導電性シート。
(7)
上記(1)~(6)のいずれかの導電性シートにおいて、
JIS A1454に準拠して測定したへこみ量が、23℃で0.3mm以上であり、45℃で1.5mm以下である、導電性シート。