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特開2023-175420経口物、及び牛のルーメン管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175420
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】経口物、及び牛のルーメン管理システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A01K29/00 D
A01K29/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087851
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嘉山 遥子
(72)【発明者】
【氏名】岸田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悟
(57)【要約】
【課題】酪農家及び畜産農家の本来の作業に負担をかけることなく、個々の牛から排出されるメタンガスの排出量を精度よく測定する。
【解決手段】センサモジュール38は、検出制御部40から指示で、定期的にメタンガス濃度を検出し、検出制御部40では、検出したメタンガス濃度をタイムラインにプロットして逐次記憶する。一定期間のタイムライン上にプロットされた濃度遷移データが作成されると、当該濃度遷移データを通信部42を介して、酪農家側管理サーバー10へ送信する。データ送信は、無線通信で行われるが、牛12を識別する情報(ID等)と共に送信されるため、酪農家側管理サーバー10では、複数の牛12からの濃度遷移データを牛12毎に管理することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛のルーメンのメタンガスの濃度を検出する濃度センサが内蔵されたセンサモジュールと、
前記濃度センサによる検出処理を制御する検出制御部と、
前記検出制御部で検出処理が制御された前記濃度センサによって検出したメタンガス濃度情報を無線送信する通信部と、
前記濃度センサ、前記検出制御部、及び前記通信部を動作させる電源部と、
前記センサモジュール、前記検出制御部、前記通信部、及び前記電源部が収容され、前記牛が飲み込むことが可能であり、かつ前記牛のルーメンに所定期間滞留可能な特定の筐体と、
を有する経口物。
【請求項2】
前記筐体が、牛が反芻によって吐き出すことを防止する錘部材としての役目を兼ね、かつ、前記牛のルーメン内で所定の滞留姿勢を維持する、ことを特徴とする請求項1記載の経口物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の経口物を有し、
前記濃度センサで検出され、前記通信部から無線送信されたメタンガス濃度情報と、前記牛のあい気量とに基づいて、牛から放出されるメタンガス排出量を計算し、計算した牛の排出量を継続的に集約することで得たメタンガスの削減量をカーボンクレジットに換算し、換算したカーボンクレジットを、前記メタンガスの削減量に基づく対価の支払いを業務とするクレジット発行組織へ申請する牛のルーメン管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛に飲み込ませる経口物に関するものであり、詳しくは、牛のルーメン内のメタンガス濃度を検出するセンサを内蔵した経口物、及び、経口物を用いた牛のルーメン管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
牛のルーメンによって発生するメタンガスがあい気(所謂げっぷ)によって放出されることで、温室効果となることが知られており、メタンガスを抑制する効果のある飼料等も開発されているが、酪農家及び畜産農家が積極的に温室効果抑制を推進するためのシステ
【0003】
牛が持つルーメン(第一胃)は、反芻動物自身の消化器官では消化することの出来ない繊維成分を微生物の力を借りて消化するための器官である。牛は、ルーメンの中で、飼料を分解する際に、メタンガスが生成される。メタンガスは、あい気として、外気に排出されることになる。
【0004】
牛は、21世紀前半において、地球上に約15億頭程度存在し、牛1頭あたり1日300~500リットルのメタンガスを排出するため、温室効果排出源に位置付けられている。
【0005】
ところで、農家を対象として、牛の個体データや活動履歴データを一括管理する管理システムが開発されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
特許文献1には、家畜としての牛の活動を一括して管理する活動状況管理システムであり、牛の活動状態管理システムは、管理区域内の牛に装着され、3軸加速度センサを備えた前記活動状態センサモジュールと、牛の複数の活動状態に応じてそれぞれ異なる測定パターンを示す3軸加速度センサの測定値を基に、牛の複数の活動状態を判断する活動状態判断部と、を有することが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、牛の進行速度の異なる疾病を検知可能な牛の健康状態管理システムを提供することを目的として、活動状態管理システムは、3軸加速度センサ及び気圧センサを備えた活動状態センサモジュールと、活動状態センサモジュールに通信ネットワークを介して接続された管理装置と、を備え、管理装置は、活動状態判定部、健康状態判定部、通信部、記憶部、表示部、及びシステム全般の制御を行う制御部を含み、活動状態判定部は、活動状態センサモジュールから受信した牛の活動データに基づいて、特定された牛の活動状態に対応する行動系指標、静止系指標、及び反芻系指標を算出し、健康状態判定部は、算出された牛の行動系指標、静止系指標、及び反芻系指標に基づいて牛の健康状態の異常の有無を所定の判定モデルにより判定し、制御部は,牛の健康状態に異常があると、警告を表示させるための指令を生成するように制御することが記載されている。
【0008】
さらに、参考として、特許文献3には、牛の体内で長期間稼働可能なセンサカプセルを用いて定期的に牛の体温を測定・監視することができる牛監視システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-7613号公報
【特許文献2】特開2019-122368号公報
【特許文献2】開2020-150841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、酪農家及び畜産農家では、牛の個体を管理するシステムが導入されているものの、カーボンニュートラルという観点(メタンガス排出抑制)で牛を飼育することは、酪農本来の作業に負担がかかり、メタンガス排出抑制は難しい。
【0011】
なお、牛からのメタンガスの発生を抑制する飼料等(以下、特定の飼料という)も開発されつつあるが、個々の酪農家及び畜産農家が、SDGs(持続可能な開発目標)の13番目の目標(気候変動の具体的対策)のために、積極的な行動を起こすことは、上記作業負担に加え、経済的な負担も強いることになりかねない。
【0012】
本発明は、酪農家及び畜産農家の本来の作業に負担をかけることなく、個々の牛から排出されるメタンガスの排出量を精度よく測定することができる経口物、及び、経口物を用いた牛のルーメン管理システムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様に係る経口物は、牛のルーメンのメタンガスの濃度を検出する濃度センサが内蔵されたセンサモジュールと、前記濃度センサによる検出処理を制御する検出制御部と、前記検出制御部で検出処理が制御された前記濃度センサによって検出したメタンガス濃度情報を無線送信する通信部と、前記濃度センサ、前記検出制御部、及び前記通信部を動作させる電源部と、前記センサモジュール、前記検出制御部、前記通信部、及び前記電源部が収容され、前記牛が飲み込むことが可能であり、かつ前記牛のルーメンに所定期間滞留可能な特定の筐体と、を有している。
【0014】
第2の態様は、第1の態様に係る経口物において、前記筐体が、牛が反芻によって吐き出すことを防止する錘部材としての役目を兼ね、かつ、前記牛のルーメン内で所定の滞留姿勢を維持する、ことを特徴としている。
【0015】
本発明に第3の態様係る牛のルーメン管理システムは、第1の態様又は第2の態様に記載の経口物を有し、前記濃度センサで検出され、前記通信部から無線送信されたメタンガス濃度情報と、前記牛のあい気量とに基づいて、牛から放出されるメタンガス排出量を計算し、計算した牛の排出量を継続的に集約することで得たメタンガスの削減量をカーボンクレジットに換算し、換算したカーボンクレジットを、前記メタンガスの削減量に基づく対価の支払いを業務とするクレジット発行組織へ申請することを特徴としている。
【0016】
このような構成を具備する本発明によれば、酪農家及び畜産農家の本来の作業に負担をかけることなく、個々の牛から排出されるメタンガスの排出量を精度よく測定することができる。
【0017】
本発明は、従来技術に対し、牛のルーメン内のメタンガス濃度を検出する点が新しく、本来の酪農家及び畜産農家の作業に負担を知ることなく、メタンガス濃度の検出が可能である点で大きく進歩している。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した如く本発明によれば、酪農家及び畜産農家の本来の作業に負担をかけることなく、個々の牛から排出されるメタンガスの排出量を精度よく測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施の形態に係る牛のメタンガス濃度管理システムの全体構成図である。
図2】本実施の形態に係る牛のメタンガス濃度管理システムにおける、酪農家側サーバー及び顧客管理サーバーの制御ブロック図である。
図3】牛に飲み込ませるスマートピルセンサの概略図である。
図4】スマートピルセンサによるデータ出力制御ルーチンを示すフローチャートである。
図5】酪農家側サーバーによる牛の個体管理制御ルーチンを示すフローチャートである。
図6】顧客管理サーバーによるメタンガス削減効果管理制御ルーチンを示すフローチャートである。
図7】(A)は牛の体重と1回のあい気量との関係を示す特性図、(B)は圧力センサを用いた、あい気のカウント図である。
図8】酪農家側サーバーの入出力デバイスの出力系の代表例としてのモニタに表示される画面の正面図であり、(A)は、酪農家側サーバーで独自に管理される複数の牛の通常飼育管理画面、(B)は顧客管理サーバーから提供される、メタンガス削減効果管理画面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施の形態に係る牛の健康状態管理を主体とする酪農家側管理サーバー10を備えた、牛12の第一胃であるルーメン12Aで発生し、あい気によって排出されるメタンガスの排出量を管理する、牛のメタンガス濃度管理システム14の全体構成図である。なお、本実施の形態では、酪農家を対象としたが、畜産農家も同様に対象とすることができる。
【0021】
複数の酪農家側管理サーバー10は、それぞれ、インターネット等のネットワーク16を介して、顧客管理サーバー18に接続されている。また、ネットワーク16には、クレジット発行組織の国内組織の一例である、クレジット事務局に設けられたクレジット事務局管理サーバー20が接続されている(後述)。なお、クレジット発行組織は、国内外問わず、全てのクレジット発行機関、及びクレジット発行団体(例えば、海外のボランタリークレジット発行機関等)を含むものであり、クレジット事務局はその一例である。
【0022】
(酪農家側管理サーバー10)
図1に示される如く、酪農家側管理サーバー10は、ネットワークI/F22、個体管理制御部24、入出力デバイス26、無線中継器28、及び個体管理データベース30を備えている。
【0023】
無線中継器28は、酪農家側管理サーバー10で管理する酪農家で飼育している複数の牛12に飲み込ませ、体内(ルーメン12A)に滞留しているスマートピルセンサ32から送信される情報を中継して受信する役目を有する。スマートピルセンサ32については、詳述するが、基本的機能としては、牛12のルーメン12A(第一胃)で発生するメタンガス濃度を検出し、検出情報を送信する機能を有している。
【0024】
図2に示される如く、酪農家側管理サーバー10の個体管理制御部24は、CPU24A、RAM24B、ROM24C、入出力ポート(I/O)24D、及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス24Eで構成されたマイクロコンピュータである。
【0025】
I/O24Dには、ネットワークI/F22、無線中継器28、入出力デバイス26、及び個体管理データベース30が接続されている。
【0026】
入出力デバイス26は、入力系としては、キーボード、マウス、タッチパネル等が代表的であり、出力系としては、モニタ、プリンタ、スマートフォン、ダブレット等が代表的である。本実施の形態では、牛12の個体管理データ等を、モニタに表示することで(図8に示す画面26A、26B参照)、酪農家に対して、所謂見える化された情報を直覚的に認識させており、酪農家は、煩雑な酪農作業に負担を強いることなく、適切な牛の管理情報を把握することができる。
【0027】
(スマートピルセンサ32)
図3に示される如く、スマートピルセンサ32は、飼料と共に牛12に飲み込ませることで、スマートピルセンサ32は、ルーメン12Aへ導かれるようになっている。なお、スマートピルセンサ32に、適度な錘を取り付ける、又は内蔵させることで、スマートピルセンサ32は、所望の期間、ルーメン12Aに滞留させることが可能である。
【0028】
スマートピルセンサ32は、ルーメン12A内の環境に対応して変形、変質しない材質の筐体34で覆われている。筐体34には、電源部36、センサモジュール38、検出制御部40、及び通信部42が設けられている。
【0029】
センサモジュール38は、ここでは、ルーメン12A内のメタンガス濃度を検出する濃度センサを指すが、後述する圧力センサ(あい気回数検出用)を併設することも可能である。
【0030】
筐体34には、メタンガス濃度検出口34Aが設けられており、センサモジュール38の検出面(すなわち、メタンガス濃度検出面)が対峙しており、ルーメン12A内のメタンガス濃度が検出可能となっている。
【0031】
センサモジュール38、検出制御部40、及び通信部42は、それぞれ電源部36から電源が供給されており、ルーメン12Aに滞留する期間以上、それぞれの機能で動作を継続することが可能となっている。
【0032】
センサモジュール38は、検出制御部40から指示で、定期的にメタンガス濃度を検出し、検出制御部40へ送出される。検出制御部40では、検出したメタンガス濃度をタイムラインにプロットして逐次記憶する。また、検出制御部40では、一定期間のタイムライン上にプロットされた濃度遷移データが作成されると、当該濃度遷移データを通信部42を介して、酪農家側管理サーバー10へ送信する。
【0033】
このデータ送信は、無線通信で行われるが、牛12を識別する情報(ID等)と共に送信されるため、酪農家側管理サーバー10では、複数の牛12からの濃度遷移データを牛12毎に管理することができる。
【0034】
ところで、牛12のルーメン12Aにおいて、消化管発酵で生じるメタンガスは、あい気(ゲップ)として大気中へ排出されるが、この大気排出は、温暖化に影響するばかりでなく、飼料エネルギーの損失となります。
【0035】
そこで、本実施の形態では、顧客管理サーバー18において、牛12のルーメン12Aから排出されるメタンガスの量を管理し、エサ(飼料)の種類に応じた効果測定、健康管理、適切な飼料の提案を実施すると共に、酪農家によるメタンガス軽減の対価としてクレジットの創出による収益をもたらす仕組みを構築した。
【0036】
(顧客管理サーバー18)
図2に示される如く、顧客管理サーバー18は、ネットワークI/F44を備え、ネットワーク16を介して複数の酪農家側管理サーバー10から各種情報を取得する。
【0037】
すなわち、顧客管理サーバー18は、各酪農家側管理サーバー10から、必要な情報として、例えば、牛のあい気から検出されるメタンガス濃度遷移データ、牛の個体データ、活動管理データ、及びスマートピルセンサ32から取得したメタンガス濃度検出情報等を受信するようになっている。
【0038】
牛の個体データとは、ID、身長、体重、年齢等であり、活動履歴データとは、採食、飲水、動向(静止、歩行、走行)、横臥、反芻のそれぞれのタイムライン情報等である。
【0039】
このため、顧客管理サーバー18には、複数の酪農家で飼育されている複数の牛の各種情報が集約されることになる。
【0040】
ネットワークI/F44を介して受信した各種情報は、顧客管理制御部46へ送出される。
【0041】
顧客管理制御部46は、管理情報収集部48、計算処理部50、分析処理部52、効果情報提供部54、クレジット申請部56、及びデータベース58を備えている。
【0042】
顧客管理サーバー18の管理情報収集部48は、受信した各種情報をデータベース58へ格納し、所謂ビッグデータを生成する。
【0043】
顧客管理サーバー18の計算処理部50では、牛12の1日のメタンガス排出量Mを、(1)式に基づき、計算する。
【0044】
M=N×A×Dm・・・(1)
【0045】
ここで、Mは1日のメタンガス排出量、Nは1日のあい気回数、Aは単位あい気量、及び、Dmはメタンガス濃度である。
【0046】
1日のメタンガス排出量Mは、データベース58から取得する牛12の活動履歴データから算出することができる。
【0047】
すなわち、牛12の個体毎の平均回数をあい気回数N(定数)の初期値とし、図7(A)に示される如く、特性図に基づき、成長(体重増加)に従い定数を補正する(N=N+体重増加率×a)。aは牛の個体毎に設定した補正係数である。あい気判定は、図7(B)に示される如く、牛12のルーメン12A内の圧力の変化をしきい値と比較することで、判定することができる。
【0048】
また、1日のあい気回数Nを得るために必要な、あい気回数は、牛12の口元にあい気を検出可能なセンサ(流量センサ等)を設けることで検出可能である。また、図2に示したスマートピルセンサ32に圧力センサを追加で設置し、ルーメン12A内の圧力の変化を、圧力センサで検出するようにしてもよい。図7(B)に示される如く、あい気時の圧力低下を検出し、しきい値と比較することで、あい気回数を検出することができる。
【0049】
単位あい気量Aの設定の具体例としては、牛の個体別管理データベースから、体重を読み出し、予め設定した体重-あい気量特性テーブルに基づき、現在の体重でのあい気量を定数として設定することができる。
【0050】
また、メタンガス濃度Dmの検出の具体例としては、スマートピルセンサ32に設けた濃度センサによる、1日の検出量の平均値又は中間値とすればよい。
【0051】
顧客管理サーバー18の分析処理部52では、上記(1)式の計算結果や、牛12の個体データ、活動履歴データを用いて、メタンガス削減効果の分析処理を実行する。
【0052】
顧客管理サーバー18の効果情報提供部54では、分析処理部52での分析結果に基づき、酪農家側管理サーバー10に対して、メタンガス濃度削減効果データを送出する。
【0053】
メタンガス濃度削減効果データとは、エサの種類に応じた効果測定、適切な飼料の提案、及びクレジット創出&クレジット収益に関する情報を指す。
【0054】
エサの種類に応じた効果測定とは、メタンガス削減量、増体効果、及び健康管理(体温、運動)等、所謂結果情報である。
【0055】
適切な飼料の提案とは、今までの飼料による効果の考察や、今後の飼料の維持、変更、量等を提案する情報である。
【0056】
クレジット創出&クレジット収益に関する情報とは、メタンガス削減によるクレジットの創出(クレジット申請)と、その収益を提示して、酪農家に対して、メタンガス濃度削減の意欲喚起をもたらす情報である。
【0057】
顧客管理サーバー18のクレジット申請部56では、分析処理部52での分析結果に基づき、酪農家毎の努力に対する報酬を具現化するためのクレジットをクレジット事務局管理サーバー20(図1参照)へ申請することで、酪農家側管理サーバー10は、クレジット事務局管理サーバー20から直接、クレジットの対価を受けることができる。
【0058】
以下に、本実施の形態の作用を、図4図6のフローチャートに従い説明する。
【0059】
(スマートピルセンサ32によるデータ出力制御)
図4は、スマートピルセンサ32によるデータ出力制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0060】
ステップ100では、初期設定としてデータクリア(スマートピルセンサ32の検出制御部40内のメモリのクリア)が実行され、次いで、ステップ102へ移行して、濃度検出時期か否かを判断する。
【0061】
このステップ102で肯定判定されると、ステップ104へ移行して、センサモジュール38に取り付けられた濃度センサで牛12のルーメン12Aのメタンガス濃度を検出し、ステップ106へ移行する。
【0062】
ステップ106では、検出したメタンガス濃度をタイムライン上にプロットし、ステップ108へ移行する。
【0063】
また、ステップ102で否定判定された場合は、ステップ108へ移行する。
【0064】
ステップ108では、一定期間経過したか否かを判断する。この一定期間は、タイムラインに相当し、例えば、1日程度が好ましい。
【0065】
このステップ108で否定判定された場合は、ステップ102へ戻り、上記工程を繰り返す。また、ステップ108で肯定判定された場合は、ステップ110へ移行して、一定期間のタイムライン上の濃度遷移データを作成し、次いで、ステップ112へ移行して、作成した濃度遷移データを、牛12の識別情報(ID)と共に、通信部42を介して、酪農家側管理サーバー10へ送信し、ステップ100へ戻る。
【0066】
スマートピルセンサ32では、牛12のルーメン12Aに滞留し、この図4のフローチャート(データ出力制御)を繰り返し実行する。
【0067】
スマートピルセンサ32は、牛12のルーメン12Aに、所望の期間滞留するように錘が取り付けられているので、酪農家は何ら特別な作業を強いられることなく、毎回(本実施の形態では、毎日)、濃度遷移データを受け取ることができる。
【0068】
(酪農家側管理サーバー10による牛12の個体管理制御)
図5は、酪農家側管理サーバー10による牛12の個体管理制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0069】
ステップ120では、活動状態を検出する各種センサから牛12の活動データを受信し、次いで、ステップ122へ移行して、牛12の活動状態に対応する行動系指標、静止系指標、及び反芻系指標を算出し、ステップ124へ移行する。
【0070】
ステップ124では、牛12の健康状態の異常の有無を、所定の判定モデルを用いて判定する。
【0071】
次のステップ126では、スマートピルセンサ32から濃度遷移データを取得し、次いで、ステップ128へ移行して、判定結果、及び、濃度遷移データを個体管理データベース30に格納し、ステップ130へ移行する。
【0072】
ステップ130では、各種情報に基づいて、例えば、図8(A)の画面26Aに示すモニタ表示画面を生成し、次のステップ132では、酪農家の操作指示に基づき、各種情報を入出力デバイス26(モニタ)に表示処理を実行し、このルーチンは終了する。
【0073】
(顧客管理サーバー18によるメタンガス削減効果管理制御)
図6は、顧客管理サーバー18によるメタンガス削減効果管理制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0074】
ステップ150では、酪農家側管理サーバー10から濃度遷移データを取得して、次いで、ステップ152へ移行して、各酪農家側管理サーバー10から牛12の個体データ、活動履歴データを取得して、ステップ154へ移行する。
【0075】
ステップ154では、メタンガス削減効果管理情報として、牛12の個体データ、活動履歴データ、及び、濃度遷移データをそれぞれ格納する。
【0076】
次のステップ156では、各牛12の1日のメタンガス排出量Mを、前述の(1)式に基づき計算する。
【0077】
ここで、Mは1日のメタンガス排出量、Nは1日のあい気回数(図7(A)、(B)参照)、Aは単位あい気量、及び、Dmはメタンガス濃度である。
【0078】
次のステップ158では、メタンガス削減効果の分析処理を実行する。具体的には、牛12のエサの種類に応じた効果測定(メタンガス削減量、増体効果)、牛12の健康管理、並びに、メタンガス削減に関するクレジット創出及びクレジット収益に関する分析を実行する。
【0079】
次のステップ160では、クレジット事務局管理サーバー20に対して、クレジット申請処理(デジタル申請という)を実行し、ステップ162へ移行する。なお、サーバーダウン、ネットワークアクセスエラー等の障害が生じた場合を考慮して、書類による申請も可能としてもよい。障害復旧後は、書類による申請に関する情報を、デジタル申請がなされたと同等に登録することが好ましい。また、クレジット申請処理は、顧客管理サーバー18で実行するが、その対価(報酬)は、クレジット事務局管理サーバー20から酪農家側管理サーバー10へ直接通知が届く。なお、クレジット事務局より付与されたクレジットの売却益の一部を、酪農家及び畜産農家に配分し、顧客管理サーバー18から酪農家側管理サーバー20へ通知を行うようにしてもよい。
【0080】
ステップ162では、各酪農家側サーバーへ分析結果と、適切な飼料の提案を送出し、このルーチンは終了する。
【0081】
(モニタ表示例)
図8は、酪農家側管理サーバー10の入出力デバイス26の出力系の代表例としてのモニタに表示される画面26A、26Bの正面図である。
【0082】
図8(A)に示す画面26Aは、酪農家側管理サーバー10で独自に管理される複数の牛12の通常飼育管理画面であり、個体データを示している。
【0083】
牛12の個体データとして、活動タイムライン領域60が表示されており、1日の牛12の行動(採食、飲水、歩行、横臥、走行、静止、反芻)を視覚的に把握することができる。また、活動タイムライン領域60の右側には、活動評価領域62が設けられ、項目別に適否(◎、○、△、×等)で表示される。
【0084】
また、活動評価領域62の下部には、昨日の活動量領域64が設けられ、活動タイムラインに基づく結果情報が表示されており、採食、飲水、歩行、横臥、走行、静止、反芻の各項目の活動毎の時間が表示される。
【0085】
さらに、昨日の活動量領域64の下部には、各項目の活動推移領域66が設けられ、1か月単位でグラフ化して表示される。
【0086】
なお、各領域(活動タイムライン領域60、活動評価領域62、昨日の活動量領域64、及び、活動推移領域66)に示している文字、数値、グラフ等は、特別な意味を持つものではなく、表示形態の一例として示したものである。また、各領域の項目は一例であり、適宜編集(変更、追加、削除等)してもよい。
【0087】
図8(B)に示す画面26Bは、顧客管理サーバーから提供される、メタンガス削減効果管理画面であり、メタンガス濃度削減効果データを示している。
【0088】
メタンガス濃度削減効果データは、エサの種類に応じた効果測定領域68、適切な飼料の提案領域70、及びクレジット創出&クレジット収益領域72に分類されて表示される。
【0089】
エサの種類に応じた効果測定領域68には、メタンガス削減量、増体効果、及び健康管理(体温、運動)等、所謂結果情報が表示される。
【0090】
適切な飼料の提案領域70には、今までの飼料による効果の考察や、今後の飼料の維持、変更、量等を提案する情報が表示される。
【0091】
クレジット創出&クレジット収益領域72には、メタンガス削減によるクレジットの創出(クレジット申請)と、その収益を提示して、酪農家に対して、メタンガス濃度削減の意欲喚起をもたらす情報が表示される。
【0092】
なお、各領域(効果測定領域68、適切な飼料の提案領域70、及びクレジット創出&クレジット収益領域72)に示している文字、数値、グラフ等は、特別な意味を持つものではなく、表示形態の一例として示したものである。また、各領域の項目は一例であり、適宜編集(変更、追加、削除等)してもよい。
【0093】
このように、酪農家側管理サーバー10の本来の管理機能(周知技術)に加え、新たに、牛12のルーメン12Aで発生するメタンガスの排出量を抑制し、かつ抑制により受ける対価の状況を、逐次報知することで、酪農家のメタンガス削減意欲の喚起を促すことができる。
【符号の説明】
【0094】
10 酪農家側管理サーバー
12 牛
12A ルーメン
14 牛のメタンガス濃度管理システム
16 ネットワーク
18 顧客管理サーバー
20 クレジット事務局管理サーバー(クレジット発行組織)
22 ネットワークI/F
24 個体管理制御部
26 入出力デバイス
28 無線中継器
30 個体管理データベース
32 スマートピルセンサ
24A CPU
24B RAM
24C ROM
24D 入出力ポート(I/O)
24E バス
26A、26B 画面
34 筐体
36 電源部
38 センサモジュール
40 検出制御部
42 通信部
44 ネットワークI/F
46 顧客管理制御部
48 管理情報収集部
50 計算処理部
52 分析処理部
54 効果情報提供部
56 クレジット申請部
58 データベース
60 活動タイムライン領域
62 活動評価領域
64 昨日の活動量領域
66 活動推移領域
68 エサの種類に応じた効果測定領域
70 適切な飼料の提案領域
72 クレジット送出&クレジット収益領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8