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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175427
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】遮光印刷物および積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/102 20140101AFI20231205BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231205BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20231205BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231205BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C09D11/102
B32B27/20 A
B32B27/40
B32B27/00 E
B41M1/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087861
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 京平
(72)【発明者】
【氏名】篭橋 福太郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 淳一
【テーマコード(参考)】
2H113
4F100
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA03
2H113AA06
2H113BA03
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB22
2H113DA03
2H113DA04
2H113DA15
2H113DA43
2H113DA47
2H113DA57
2H113DA62
2H113DA63
2H113EA07
2H113EA10
2H113EA19
2H113FA04
2H113FA09
4F100AA20B
4F100AA20C
4F100AA21B
4F100AA21C
4F100AA21H
4F100AD11C
4F100AD11H
4F100AJ06B
4F100AJ06C
4F100AK03D
4F100AK07A
4F100AK10B
4F100AK10C
4F100AK10H
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK42A
4F100AK46A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK54B
4F100AK54C
4F100AK63D
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100CA13B
4F100CA13C
4F100CA19B
4F100CA19C
4F100CA30B
4F100CA30C
4F100CB03D
4F100EJ38A
4F100EJ55A
4F100GB15
4F100HB31B
4F100HB31C
4F100HB32B
4F100HB32C
4F100HB35B
4F100HB35C
4F100JA07B
4F100JA07C
4F100JC00B
4F100JC00C
4F100JD08
4F100JL10B
4F100JL10C
4F100JL12D
4F100JM01B
4F100JM01C
4F100JN02B
4F100JN02C
4F100YY00B
4F100YY00C
4J039AB07
4J039AB08
4J039AD01
4J039AE04
4J039BA21
4J039BC36
4J039BE01
4J039EA18
4J039EA43
(57)【要約】
【課題】塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を使用しなくても、優れた遮蔽効果が得られ、残留する有機溶剤および塩素の含有量が少ない、遮光印刷物および積層体を提供する。
【解決手段】基材層と、前記基材層上に形成された白色インキ層と、前記白色インキ層上に形成されたグレーインキ層とを有する遮光印刷物であって、白色インキ層は、白色顔料と、所定の条件1を満たすバインダー樹脂を含有する層であり、グレーインキ層は、白色顔料と、黒色顔料と、所定の条件2を満たすバインダー樹脂を含有する層であり、グレーインキ層に含まれる白色顔料と黒色顔料との比率(質量%)は、白色顔料/黒色顔料=95/5~70/30である、遮光印刷物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層上に形成された白色インキ層と、前記白色インキ層上に形成されたグレーインキ層とを有する遮光印刷物であって、
前記白色インキ層は、白色顔料と、下記条件1を満たすバインダー樹脂を含有する層であり、
前記グレーインキ層は、白色顔料と、黒色顔料と、下記条件2を満たすバインダー樹脂を含有する層であり、
前記グレーインキ層に含まれる白色顔料と黒色顔料との比率(質量%)は、白色顔料/黒色顔料=95/5~70/30である、遮光印刷物。
(条件1)
白色インキ層に含まれるバインダー樹脂は、
末端にアミノ基を有するウレタン結合およびウレア結合を有するポリウレタン樹脂(A)と、
ウレタン結合を有し、ウレア結合を有さないポリウレタン樹脂(B)またはセルロースアセテートプロピオネート(C)のうち、少なくともいずれか一方と、を含み、
前記ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびセルロースアセテートプロピオネート(C)の含有割合は、固形分質量比で、(A)/((B)+(C))=95/5~50/50である。
(条件2)
グレーインキ層に含まれるバインダー樹脂は、
末端にアミノ基を有するウレタン結合およびウレア結合を有するポリウレタン樹脂(A)と、
ウレタン結合を有し、ウレア結合を有さないポリウレタン樹脂(B)またはセルロースアセテートプロピオネート(C)のうち、少なくともいずれか一方と、を含み、
前記ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびセルロースアセテートプロピオネート(C)の含有割合は、固形分質量比で、(A)/((B)+(C))=95/5~50/50である。
【請求項2】
前記白色インキ層の膜厚は、2~10μmであり、
前記グレーインキ層の膜厚は、1~5μmである、請求項1記載の遮光印刷物。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂(A)のウレタン基濃度は、0.3~2.4mmol/gであり、
前記ポリウレタン樹脂(B)のウレタン基濃度は、2.0~6.0mmol/gである、請求項1または2記載の遮光印刷物。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂(B)の質量平均分子量は、1000~6000である、請求項1または2記載の遮光印刷物。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂(A)のアミン価は、1.0~15.0mgKOH/gである、請求項1または2記載の遮光印刷物。
【請求項6】
前記ポリウレタン樹脂(A)または前記ポリウレタン樹脂(B)のうち少なくともいずれか一方は、バイオマスポリウレタン樹脂である、請求項1または2記載の遮光印刷物。
【請求項7】
前記白色インキ組成物は、密着性向上剤またはブロッキング防止剤のうち少なくともいずれか一方を含む、請求項1または2記載の遮光印刷物。
【請求項8】
前記密着性向上剤は、ロジン、ロジン誘導体、塩素化ポリプロピレンまたはダンマル樹脂のうち、少なくともいずれか1種を含み、
前記ブロッキング防止剤は、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミドまたは硝化綿のうち、少なくともいずれか1種を含む、請求項7記載の遮光印刷物。
【請求項9】
請求項1または2に記載の遮光印刷物のグレーインキ層上に、シーラント層またはシール層が積層された、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光印刷物および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食料品、洗剤などの各種製品を保存するための包装袋や包装容器等の軟包装製品は、外からの光により、内容物が変化したり、劣化したりおそれがある。そのため、包装製品は、遮光性を付与するために、アルミ箔やアルミニウム蒸着フィルムなどが使用される。しかしながら、アルミ箔等の蒸着フィルムは、耐屈曲性が劣り、ピンホールが発生しやすく、電子レンジで加熱した場合に火花が生じる。また、アルミ箔等の蒸着フィルムは、金属探知機に反応し、異物(金属片など)の検査に支障がある。また、アルミ箔は、アルミニウムの分離が困難であり、焼却処理が困難であり、環境上好ましくない。そこで、印刷により、アルミ箔やアルミニウム蒸着フィルムを代替する製品が提案されている。
【0003】
特許文献1には、基材層の少なくとも一方の層に、バインダー樹脂として、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を含む白色インキ層と、バインダー樹脂として、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を含むグレーインキ層を積層した遮蔽印刷物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6864774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の印刷物は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を使用しており、塩素を多く含む、残留溶剤が多くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を使用しなくても、優れた遮蔽効果が得られ、残留する有機溶剤および塩素の含有量が少ない、遮光印刷物および積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、以下の構成を主に備える。
【0008】
(1)基材層と、前記基材層上に形成された白色インキ層と、前記白色インキ層上に形成されたグレーインキ層とを有する遮光印刷物であって、前記白色インキ層は、白色顔料と、下記条件1を満たすバインダー樹脂を含有する層であり、前記グレーインキ層は、白色顔料と、黒色顔料と、下記条件2を満たすバインダー樹脂を含有する層であり、前記グレーインキ層に含まれる白色顔料と黒色顔料との比率(質量%)は、白色顔料/黒色顔料=95/5~70/30である、遮光印刷物。
(条件1)
白色インキ層に含まれるバインダー樹脂は、
末端にアミノ基を有するウレタン結合およびウレア結合を有するポリウレタン樹脂(A)と、
ウレタン結合を有し、ウレア結合を有さないポリウレタン樹脂(B)またはセルロースアセテートプロピオネート(C)のうち、少なくともいずれか一方と、を含み、
前記ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびセルロースアセテートプロピオネート(C)の含有割合は、固形分質量比で、(A)/((B)+(C))=95/5~50/50である。
(条件2)
グレーインキ層に含まれるバインダー樹脂は、
末端にアミノ基を有するウレタン結合およびウレア結合を有するポリウレタン樹脂(A)と、
ウレタン結合を有し、ウレア結合を有さないポリウレタン樹脂(B)またはセルロースアセテートプロピオネート(C)のうち、少なくともいずれか一方と、を含み、
前記ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびセルロースアセテートプロピオネート(C)の含有割合は、固形分質量比で、(A)/((B)+(C))=95/5~50/50である。
【0009】
このような構成によれば、遮光印刷物は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を使用しなくても、優れた遮蔽効果が得られる。また、遮光印刷物は、残留する有機溶剤および塩素の含有量が少ない。
【0010】
(2)前記白色インキ層の膜厚は、2~10μmであり、前記グレーインキ層の膜厚は、1~5μmである、(1)記載の遮光印刷物。
【0011】
このような構成によれば、遮光印刷物は、白色度が高くなり、隠蔽性が高くなり、文字等の視認性が良くなる。
【0012】
(3)前記ポリウレタン樹脂(A)のウレタン基濃度は、0.3~2.4mmol/gであり、前記ポリウレタン樹脂(B)のウレタン基濃度は、2.0~6.0mmol/gである、(1)または(2)記載の遮光印刷物。
【0013】
このような構成によれば、遮光印刷物は、ポリウレタン樹脂を作製しやすく、かつ、密着性が優れる。
【0014】
(4)前記ポリウレタン樹脂(B)の質量平均分子量は、1000~6000である、(1)~(3)のいずれかに記載の遮光印刷物。
【0015】
このような構成によれば、遮光印刷物は、密着性が優れる。
【0016】
(5)前記ポリウレタン樹脂(A)のアミン価は、1.0~15.0mgKOH/gである、(1)~(4)のいずれかに記載の遮光印刷物。
【0017】
このような構成によれば、インキ組成物は、経時安定性が優れる。また、遮光印刷物は、耐ブロッキング性が優れる。
【0018】
(6)前記ポリウレタン樹脂(A)または前記ポリウレタン樹脂(B)のうち少なくともいずれか一方は、バイオマスポリウレタン樹脂である、(1)~(5)のいずれかに記載の遮光印刷物。
【0019】
このような構成によれば、遮光印刷物は、地球温暖化防止や環境負荷低減に、より貢献し得る。
【0020】
(7)前記白色インキ組成物は、密着性向上剤またはブロッキング防止剤のうち少なくともいずれか一方を含む、(1)~(6)のいずれかに記載の遮光印刷物。
【0021】
このような構成によれば、遮光印刷物は、密着性または耐ブロッキング性がより優れる。
【0022】
(8)前記密着性向上剤は、ロジン、ロジン誘導体、塩素化ポリプロピレンまたはダンマル樹脂のうち、少なくともいずれか1種を含み、前記ブロッキング防止剤は、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミドまたは硝化綿のうち、少なくともいずれか1種を含む、(7)記載の遮光印刷物。
【0023】
このような構成によれば、遮光印刷物は、密着性または耐ブロッキング性がさらに優れる。
【0024】
(9)(1)~(8)のいずれかに記載の遮光印刷物のグレーインキ層上に、シーラント層またはシール層が積層された、積層体。
【0025】
このような構成によれば、積層体は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を使用しなくても、優れた遮蔽効果が得られる。また、積層体は、残留する有機溶剤および塩素の含有量が少ない。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を使用しなくても、優れた遮蔽効果が得られ、残留する有機溶剤および塩素の含有量が少ない、遮光印刷物および積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<遮光印刷物>
本発明の一実施形態の遮光印刷物は、基材層と、基材層上に形成された白色インキ層と、白色インキ層上に形成されたグレーインキ層とを有する。白色インキ層は、白色顔料と、下記条件1を満たすバインダー樹脂を含有する層である。グレーインキ層は、白色顔料と、黒色顔料と、下記条件2を満たすバインダー樹脂を含有する層である。グレーインキ層に含まれる白色顔料と黒色顔料との比率(質量%)は、白色顔料/黒色顔料=95/5~70/30である。以下、それぞれについて説明する。
(条件1)
白色インキ層に含まれるバインダー樹脂は、
末端にアミノ基を有するウレタン結合およびウレア結合を有するポリウレタン樹脂(A)と、
ウレタン結合を有し、ウレア結合を有さないポリウレタン樹脂(B)またはセルロースアセテートプロピオネート(C)のうち、少なくともいずれか一方と、を含み、
前記ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびセルロースアセテートプロピオネート(C)の含有割合は、固形分質量比で、(A)/((B)+(C))=95/5~50/50である。
(条件2)
グレーインキ層に含まれるバインダー樹脂は、
末端にアミノ基を有するウレタン結合およびウレア結合を有するポリウレタン樹脂(A)と、
ウレタン結合を有し、ウレア結合を有さないポリウレタン樹脂(B)またはセルロースアセテートプロピオネート(C)のうち、少なくともいずれか一方と、を含み、
ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびセルロースアセテートプロピオネート(C)の含有割合は、固形分質量比で、(A)/((B)+(C))=95/5~50/50である。
【0028】
(基材層)
基材層は特に限定されない。一例を挙げると、基材層は、樹脂基材層、紙基材層等である。
【0029】
樹脂基材層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ナイロン等のポリアミド等の樹脂フィルム、アルミニウム等の金属層を有する樹脂フィルム、金属蒸着フィルム、バリア層を積層したフィルム等である。
【0030】
紙基材は、コート紙、非コート紙及びそれらに樹脂フィルム等を貼り合わせた紙基材等である。
【0031】
基材層の厚みは特に限定されない。
【0032】
(白色インキ層)
白色インキ層は、基材層上に形成された層であり、白色顔料と、下記条件1を満たすバインダー樹脂を含有する層である。
(条件1)
白色インキ層に含まれるバインダー樹脂は、
末端にアミノ基を有するウレタン結合およびウレア結合を有するポリウレタン樹脂(A)と、
ウレタン結合を有し、ウレア結合を有さないポリウレタン樹脂(B)またはセルロースアセテートプロピオネート(C)のうち、少なくともいずれか一方と、を含み、
前記ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびセルロースアセテートプロピオネート(C)の含有割合は、固形分質量比で、(A)/((B)+(C))=95/5~50/50である。
【0033】
例えば、白色インキ層は、白色インキ組成物をグラビア印刷することにより形成し得る。
【0034】
白色インキ組成物は、白色顔料と、下記条件3を満たすバインダー樹脂と、有機溶剤とを含む。
【0035】
白色顔料は特に限定されない。一例を挙げると、白色顔料は、グラビア印刷インキにおいて通常使用される白色顔料であればよく、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、クレー、タルク等である。これらの中でも、白色顔料は、酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンは、経時安定性が優れる点から、シリカアルミナまたは有機表面処理された酸化チタンであることが好ましい。これらの中でも、酸化チタンは、平均粒子径が0.2~0.3μmであり、吸油量が17~35ml/100gであるルチル型酸化チタンであることが好ましい。
【0036】
白色顔料の含有量は、白色インキ組成物中、30~50質量%であることが好ましい。
【0037】
・バインダー樹脂
バインダー樹脂は、下記条件3を満たす。
(条件3)
白色インキ組成物に含まれるバインダー樹脂は、
末端にアミノ基を有するウレタン結合およびウレア結合を有するポリウレタン樹脂(A)と、
ウレタン結合を有し、ウレア結合を有さないポリウレタン樹脂(B)またはセルロースアセテートプロピオネート(C)のうち、少なくともいずれか一方と、を含み、
ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびセルロースアセテートプロピオネート(C)の含有割合は、固形分質量比で、(A)/((B)+(C))=95/5~50/50である。
【0038】
ポリウレタン樹脂(A)は、末端にアミノ基を有するウレタン結合およびウレア結合を有する。ポリウレタン樹脂(A)は、有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物との反応によりウレタンプレポリマーを合成し、これに必要に応じて鎖伸長剤、反応停止剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂が好適である。
【0039】
有機ジイソシアネート化合物は、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及び、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物等である。これらの中でも、有機ジイソシアネート化合物は、脂環族ジイソシアネートであることが好ましい。
【0040】
上記高分子ジオール化合物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物、アジピン酸、セバシン酸、無水フタル酸等の二塩基酸の1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上を縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物等が挙げられる。
【0041】
さらに、上記高分子ジオール化合物に加えて、1,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のアルカンジオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の低分子ジオール化合物を1種又は2種以上が併用されてもよい。
【0042】
なお、ポリウレタン樹脂の合成時において、後述する有機溶剤として、エステル系溶剤とアルコール系溶剤との混合溶剤系を用いる場合には、高分子ジオール化合物としてポリエーテルジオール化合物、好ましくはポリプロピレングリコールを使用すると、得られるポリウレタン樹脂の溶解性が高くなる傾向があり、階調再現性、かぶり防止性等の印刷適性が良好となる傾向があり、必要とする性能に合わせて幅広くインキの設計が可能となるため好ましい。
【0043】
また、上記有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物とは、イソシアネート基:水酸基の当量比(イソシアネートインデックス)が、1より大きい範囲となるように反応させることが好ましい。
【0044】
鎖伸長剤は、インキ用バインダーとしてのポリウレタン樹脂で利用される既知の鎖伸長剤を使用可能であり、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール化合物等である。
【0045】
鎖伸長剤は、脂環式ジアミン類に、顔料分散性の点より樹脂がゲル化しない範囲のポリアミン類と、再溶解性の点から水酸基を有するジアミン類とを併用することが好ましい。
【0046】
ポリウレタン樹脂の末端に第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基を有する導入する反応停止剤は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類等である。これらの中でも、反応停止剤は、脂環式ジアミン類に、顔料分散性の点より樹脂がゲル化しない範囲のポリアミン類等の第1級アミノ基を有するものが好ましい。
【0047】
ポリウレタン樹脂に水酸基を導入する反応停止剤は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類等である。また、既知の反応停止剤であるモノアミン化合物、モノアルコール化合物も使用し得る。具体的には、反応停止剤は、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン等のモノアルキルアミン類、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類、エタノール等のモノアルコール類等である。
【0048】
ポリウレタン樹脂(A)は、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応させ、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを得た後、鎖伸長剤及び/又は反応停止剤を反応させることにより得られる。
【0049】
ポリウレタン樹脂(A)のウレタン基濃度は、0.3mmol/g以上であることが好ましく、0.5mmol/g以上であることがより好ましい。また、ポリウレタン樹脂(A)のウレタン基濃度は、2.4mmol/g以下であることが好ましく、1.3mmol/g以下であることがより好ましい。ウレタン基濃度が上記範囲内であることにより、ポリウレタン樹脂(A)は、合成しやすく、かつ、遮光印刷物は、密着性が優れる。
【0050】
ポリウレタン樹脂(A)のウレア基濃度は、0.3mmol/g以上であることがい。また、ポリウレタン樹脂(A)のウレア基濃度は、2.0mmol/g以下であることが好ましく、1.5mmol/g以下であることがより好ましく、さらに好ましくは、1.2mmol/g以下である。ウレア基濃度が上記範囲内であることにより、ポリウレタン樹脂(A)は、フィルムに対する印刷適性と密着性を有し、優れたラミネート適性も付与できる。
【0051】
ポリウレタン樹脂(A)の質量平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、15,000以上であることがより好ましく、20,000以上であることがさらに好ましい。また、ポリウレタン樹脂(A)の質量平均分子量は、100,000以下であることが好ましく、80,000以下であることがより好ましく、50,000以下であることがさらに好ましい。質量平均分子量が上記範囲内であることにより、ポリウレタン樹脂(A)は、適度な柔軟性と高いラミネート適性を付与できるという利点がある。
【0052】
ポリウレタン樹脂(A)は、分子の末端に第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基から選ばれる1種以上、特に分子の末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる1種以上を有することが好ましく、水酸基を有することがより好ましい。
【0053】
ポリウレタン樹脂(A)のアミン価は、1.0mgKOH/g以上であることが好ましく、2.0mgKOH/g以上であることがより好ましく、2.5mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。また、ポリウレタン樹脂(A)のアミン価は、15.0mgKOH/g以下であることが好ましく、10.0mgKOH/g以下であることがより好ましく、7.0mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。アミン価が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、経時安定性が低下しにくく、かつ、遮光印刷物は、接着性、ラミネート適性、耐ブロッキング性が優れる。
【0054】
ポリウレタン樹脂(A)は、再溶解性等が優れる点から、水酸基を有することが好ましく、分子末端及び分子内に水酸基を有することがより好ましい。
【0055】
ポリウレタン樹脂(A)の水酸基価は、1.0~15.0mgKOH/gであることが好ましい。
【0056】
なお、本実施形態において、ウレタン基濃度及びウレア基濃度は下記の式により算出される。
(ウレタン基濃度)
ウレタン基濃度={(W1×OH1+W2×OH2+・・・+Wi×OHi)×100
0}/(56100×S)
式において、各々以下の通りである。
複数種のポリオールを使用する場合、各々ポリオール1、ポリオール2~ポリオールiとして算出する。
W1:ポリオール1の質量
OH1:ポリオール1の水酸基価
W2:ポリオール2の質量
OH2:ポリオール2の水酸基価
Wi:ポリオールiの質量
OHi:ポリオールiの水酸基価
S:ウレタン樹脂固形分の質量
(ウレア基濃度)
ウレア基濃度={(X1/M1+X2/M2+・・・+Xi/Mi)×2-(W1×O
H1+W2×OH2+・・・+Wi×OHi)/56100}×1000/S
式において、記号は各々以下の通りである。
X1:ジイソシアネート化合物1の質量
M1:ジイソシアネート化合物1の分子量
X2:ジイソシアネート化合物2の質量
M2:ジイソシアネート化合物2の分子量
Xi:ジイソシアネート化合物iの質量
Mi:ジイソシアネート化合物iの分子量
W1:ポリオール1の質量
OH1:ポリオール1の水酸基価
W2:ポリオール2の質量
OH2:ポリオール2の水酸基価
Wi:ポリオールiの質量
OHi:ポリオールiの水酸基価
S:ウレタン樹脂固形分の質量
【0057】
また、本実施形態において、アミン価は、下記の方法により算出される。すなわち、アミン価は、固形分1gあたりのアミン価を意味し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法(例えば、COMTITE(AUTO TITRATOR COM-900、BURET B-900、TITSTATIONK-900)、平沼産業社製)によって測定した後、水酸化カリウムの当量に換算した値として算出される。
【0058】
ポリウレタン樹脂(A)は、環境面を考慮して、バイオマスポリウレタン樹脂を有することが好ましい。なお、以下のバイオマスポリウレタン樹脂の説明において、上記したポリウレタン樹脂と共通する説明は適宜省略される。
【0059】
バイオマスポリウレタン樹脂は、バイオマス由来(植物由来)の成分を含むポリウレタン樹脂である。バイオマスポリウレタン樹脂は、他の枯渇性資源を用いる場合と比較して地球温暖化防止や環境負荷低減により貢献できる点から、バイオポリオール成分イソシアネート成分との反応によりウレタンプレポリマーを合成し、これに必要に応じて鎖伸長剤、反応停止剤を反応させて得られるバイオマスポリウレタン樹脂であることが好ましく、イソシアネート成分が植物由来のバイオイソシアネートであることがより好ましい。
【0060】
バイオポリオール成分は、炭素数が2~4の短鎖ジオール成分と、カルボン酸成分とを反応させたバイオポリエステルポリオールであることが好ましい。バイオポリオール成分は、短鎖ジオール成分およびカルボン酸成分のうち、少なくともいずれか一方が植物由来であることがより好ましく、両方が植物由来であることがさらに好ましい。
【0061】
植物由来の炭素数が2~4の短鎖ジオール成分は特に限定されない。一例を挙げると、短鎖ジオール成分は、以下の方法により植物原料から得られる、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等であってもよく、これらを併用してもよい。
【0062】
1,3-プロパンジオールは、植物資源(たとえばトウモロコシ等)を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て、製造される。上記発酵法のようなバイオ法で製造された1,3-プロパンジオール化合物は、EO製造法の1,3-プロパンジオール化合物と比較して、乳酸など有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能である。
【0063】
1,4-ブタンジオールは、植物資源からグリコールを製造し発酵することによって得られたコハク酸を水添することにより製造される。また、エチレングリコールは、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造される。
【0064】
植物由来のカルボン酸成分は特に限定されない。一例を挙げると、カルボン酸成分は、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、ダイマー酸等である。これらは併用されてもよい。これらの中でも、カルボン酸成分は、セバシン酸、コハク酸およびダイマー酸からなる群から選択される少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。
【0065】
バイオポリオール成分は、植物由来の短鎖ジオール成分と植物由来のカルボン酸成分とを、適宜縮合反応させることにより、100%植物由来のバイオポリエステルポリオールとして生成される。
【0066】
以上の合成成分を用いてバイオマスポリウレタン樹脂を得るためには、たとえば、ウレタン基濃度0.3~2.4mmol/g、好ましくは、ウレタン基濃度0.5~1.3mmol/gとなるように、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応させ末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを得た後、鎖伸長剤及び/又は反応停止剤を反応させることにより得ることができる。
【0067】
ポリウレタン樹脂(B)は、ウレタン結合を有し、ウレア結合を有さない。
【0068】
ポリウレタン樹脂(B)は、ジイソシアネート化合物、平均質量分子量1000以下の低分子量ポリオール化合物、及び水酸基を2個以上有する低分子量の化合物を反応させて得ることができる末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0069】
ジイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4-シクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物等である。
【0070】
平均質量分子量1000以下の低分子量ポリオール化合物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物、アジピン酸、セバシン酸、無水フタル酸等の二塩基酸の1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上を縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物等のジオール化合物を1種又は2種以上を混合して得ることができる。
【0071】
上記水酸基を2個以上有する低分子量の化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族ポリオール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール等の1種又は2種以上である。
【0072】
以上の合成成分を用いてポリウレタン樹脂(B)を得るためには、ウレタン基濃度が2.0~6.0mmol/g、好ましくは、ウレタン基濃度3.5~5.5mmol/gとなるように、ジイソシアネート化合物と平均質量分子量1000以下の低分子量ポリオール化合物と、水酸基を2個以上有する低分子量の化合物とを末端が水酸基となるように反応させることが好ましい。
【0073】
ポリウレタン樹脂(B)は、環境面を考慮するとバイオマスポリウレタン樹脂を有することが好ましい。なお、以下の説明において、ポリウレタン樹脂(A)に関連して上記したポリウレタン樹脂と共通する説明は適宜省略される。
【0074】
バイオマスポリウレタン樹脂は、バイオマス由来(植物由来)の成分を含むポリウレタン樹脂である。バイオマスポリウレタン樹脂は、他の枯渇性資源を用いる場合と比較して地球温暖化防止や環境負荷低減により貢献できる点から、ジイソシアネート化合物(バイオマスであるジイソシアネート化合物が環境面からより好ましい)、平均質量分子量1000以下のバイオマス低分子量ポリオール化合物を含有する低分子量ポリオール化合物、及び分子量の水酸基を2個以上有する化合物(バイオマスである低分子量の水酸基を2個以上有する化合物が環境面からはより好ましい)を反応させて得ることができるバイオマスポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0075】
平均質量分子量1000以下のバイオマス低分子量ポリオール化合物を含有する低分子量ポリオール化合物は、バイオマスポリエステルポリオール単独、バイオマスポリエステルポリオール以外のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物、アジピン酸、セバシン酸、無水フタル酸等の二塩基酸の1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上を縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物等のジオール化合物を1種又は2種以上を併用してもよい。
【0076】
バイオマスポリエステルポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物、アジピン酸、セバシン酸、無水フタル酸等の二塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類とを縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物等の各種高分子ジオール化合物等である。これらの化合物のうちの1種以上が、植物由来の化合物である。
【0077】
植物由来の短鎖ジオール成分は特に限定されない。一例を挙げると、短鎖ジオール成分は、以下の方法により植物原料から得られる、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール等であってもよい。
【0078】
1,3-プロパンジオールは、植物資源(たとえばトウモロコシ等)を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て、製造される。上記発酵法のようなバイオ法で製造された1,3-プロパンジオール化合物は、EO製造法の1,3-プロパンジオール化合物と比較して、安全性の面から乳酸など有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能である。1,4-ブタンジオールは、植物資源からグリコールを製造し発酵することによって得られたコハク酸を得て、これを水添することにより製造される。
【0079】
エチレングリコールは、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造される。
【0080】
植物由来のジカルボン酸成分は特に限定されない。一例を挙げると、ジカルボン酸成分は、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、リンゴ酸、ダイマー酸等である。これらの中でも、ジカルボン酸成分は、得られる接着剤組成物が軟包装にプリント又は塗布された際に、プリント物の耐ブロッキング性、ラミネート適性がさらに優れる観点から、セバシン酸、コハク酸およびダイマー酸からなる群から選択される少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。
【0081】
バイオマスポリオール成分は、植物由来の短鎖ジオール成分と植物由来のカルボン酸成分とを、従来公知の方法で適宜縮合反応させることにより得ることができる。
【0082】
上記低分子量の水酸基を2個以上有する化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族ポリオール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール等である。低分子量の水酸基を2個以上有する化合物は、環境面から、植物原料から得られる、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール等が好ましい。
【0083】
以上の合成成分を用いてバイオマスポリウレタン樹脂(B)は、ウレタン基濃度が2.0~6.0mmol/g、好ましくは、ウレタン基濃度3.5~5.5mmol/gとなるように、ジイソシアネート化合物(バイオマスであるジイソシアネート化合物が環境面からより好ましい)、平均質量分子量1000以下のバイオマス低分子量ポリオール化合物を含有する低分子量ポリオール化合物、及び水酸基を2個以上有する低分子量の化合物(バイオマスである水酸基を2個以上有する低分子量の化合物が環境面からはより好ましい)を末端がイソシアネート基となるように反応させることにより得られる。
【0084】
ポリウレタン樹脂(B)のウレタン基濃度は、2.0mmol/g以上であることが好ましく、3.5mmol/g以上であることがより好ましい。また、ポリウレタン樹脂(B)のウレタン基濃度は、6.0mmol/g以下であることが好ましく、5.5mmol/g以下であることがより好ましい。ウレタン基濃度が上記範囲内であることにより、ポリウレタン樹脂(B)は、合成しやすく、かつ、遮光印刷物は、密着性が優れる。
【0085】
ポリウレタン樹脂(B)の質量平均分子量は、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましい。また、ポリウレタン樹脂(B)の質量平均分子量は、6,000以下であることが好ましく、5,000以下であることがより好ましい。質量平均分子量が上記範囲内であることにより、遮光印刷物は、密着性が優れる。
【0086】
ポリウレタン樹脂(B)は、アミン価を有さなくてもよい。
【0087】
セルロースアセテートプロピオネート樹脂(C)は、従来、グラビア印刷インキ組成物に使用されている樹脂を使用し得る。
【0088】
セルロースアセテートプロピオネート樹脂(C)は、セルロースを酢酸及びプロピオン酸でトリエステル化した後に加水分解して得られる。セルロースアセテートプロピオネート樹脂(C)の市販品は、一般的にはアセチル化が0.6~2.5質量%、プロピオニル化が42~46質量%、水酸基が1.8~5質量%である樹脂である。具体例としては、セルロースアセテートプロピオネート樹脂(C)の市販品は、関東化学製のセルロースアセテートプロピオネート等である。
【0089】
本実施形態の白色インキ組成物に含まれるバインダー樹脂は、ポリウレタン樹脂(B)またはセルロースアセテートプロピオネート(C)のうち、少なくともいずれか一方を含む。
【0090】
白色インキ組成物全体の説明に戻り、白色インキ組成物において、ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびセルロースアセテートプロピオネート(C)の含有割合は、固形分質量比で、(A)/((B)+(C))=95/5~50/50であることが好ましく、95/5~70/30であることがより好ましい。含有割合が上記範囲内であることにより、白色インキ組成物は、優れた印刷適性と密着性、ラミネート適性を有し、残留溶剤を低減できるという利点がある。
【0091】
白色インキ層は、密着性向上剤またはブロッキング防止剤のうち少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。白色インキ組成物に、密着性向上剤またはブロッキング防止剤のうち少なくともいずれか一方を含有させることにより形成させることができる。
これにより、遮光印刷物は、密着性または耐ブロッキング性がより優れる。
【0092】
密着性向上剤は、ロジン、ロジン誘導体、塩素化ポリプロピレンまたはダンマル樹脂のうち、少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。
【0093】
ロジンは、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等である。一般的にロジンは松から得られる琥珀色、無定形の樹脂であり、天然から得られるため混合物である。ロジンは、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、デヒドロアビエチン酸という構成成分ごとに単離して用いても良く、これらは本実施形態におけるロジンの定義に含まれる。
【0094】
ロジン誘導体は、上記のロジンを変性させた化合物であり、以下のものが挙げられる。
【0095】
水素化ロジン:共役二重結合に水素を付加(水素添加)させて、耐候性を向上させたロジンである。
不均化ロジン:不均化とは、二分子のロジンが反応し、共役二重結合を持った二分子のアビエチン酸が、一方は芳香族へ、もう一方は単独二重結合の分子となる変性である。一般に水添ロジンよりは耐候性が劣るが、未処理のものよりは耐候性が向上する。
ロジン変性フェノール樹脂:オフセット印刷のインキには、メインバインダーとしてロジン変性フェノール樹脂が使われることが多い。ロジン変性フェノール樹脂は公知の製造法で得ることができる。
ロジンエステル:ロジンから誘導されるエステル樹脂であり、古くから粘着・接着剤の粘着付与剤(タッキファイヤー)として用いられる。
ロジン変性マレイン酸樹脂:ロジンに無水マレイン酸を付加反応させたもので、必要に応じてグリセリンなどの水酸基含有化合物を、無水酸基とエステル化させグラフトさせたものも含まれる。
重合ロジン:天然樹脂のロジンから誘導される二量化された樹脂酸を含む誘導体である。
その他、公知のロジン、ロジン誘導体も用いることが可能である。
【0096】
ロジン及びロジン誘導体の酸価は、120mgKOH/g以上であることが好ましく、160mgKOH/g以上であることがより好ましい。これにより、ラミネート強度が向上する。また、ロジンおよびロジン誘導体を配合する際の合計使用量は、白色インキ組成物中、固形分質量%で、0.1~3.0質量%であることが好ましい。
【0097】
塩素化ポリプロピレンは、塩素化度が20~50のものが好ましい。塩素化度が上記範囲内であることにより、塩素化ポリプロピレンは、有機溶剤との相溶性が優れ、かつ、フィルムに対する接着性が優れる。なお、本実施形態において、塩素化度は、塩素化ポリプロピレン樹脂中の塩素原子の質量%で定義される。
【0098】
塩素化ポリプロピレンは、質量平均分子量が5,000~200,000の変性されたまたは未変性の塩素化ポリプロピレンであることが好ましい。質量平均分子量が上記範囲内であることにより、塩素化ポリプロピレンは、接着性が優れ、有機溶剤への溶解性が優れる。
【0099】
塩素化ポリプロピレンの含有量は、白色インキ組成物中、固形分質量%で、0.1~3.0質量%であることが好ましい。
【0100】
ダンマル樹脂は、植物由来の天然樹脂の一種であり、マレーシア、インドネシアなど東南アジアに生育するフタバガキ科またはカンラン科植物から得られる天然樹脂の一種である。ダンマル樹脂は、使用する際には適当な有機溶剤に溶解させてワニスとする。ダンマル樹脂は、塩素を含まない。そのため、ダンマル樹脂は、インキ組成物に塩素化ポリオレフィン樹脂を使用する場合に比べ、塩素を排除したり、低減させたりすることができる。
【0101】
ダンマル樹脂の含有量は、白色インキ組成物中、固形分質量%で、3.0質量%以下であることが好ましい。
【0102】
ブロッキング防止剤は、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、硝化綿等であることが好ましく、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミドまたは硝化綿のうち、少なくともいずれか1種を含むことがより好ましい。ブロッキング防止剤は、顔料の種類によって、セルロースアセテートブチレート、硝化綿をさらに含有させることが好ましい。
【0103】
シリカ粒子は、天然品、合成品、あるいは結晶性、非結晶性、あるいは疎水性、親水性のものなどが挙げられる。
【0104】
シリカ粒子は、平均粒子径が1.0~5.0μmであるものが好ましい。なお、シリカ粒子の平均粒子径は、粒度分布における積算値50%(D50)での粒径を意味し、コールターカウンター法によって求めることができる。
【0105】
シリカ粒子は、表面に親水性官能基を有する親水性シリカであってもよく、親水性官能基をアルキルシラン等で変性して疎水化した疎水性シリカであってもよい。シリカ粒子は、親水性シリカであることが好ましい。親水性シリカ粒子を含むインキ組成物は、重ね印刷時に、インキ組成物の濡れ・広がりを促し、重ね印刷効果(以下「トラッピング性」と記載する場合がある)を向上させる。
【0106】
シリカ粒子の含有量は、白色インキ組成物中、0を超え3.0質量%以下であることが好ましく、0.1~1.0質量%であることがより好ましい。
【0107】
ポリエチレンワックスは、平均粒子径が1.0~20μmの範囲のものが好ましい。なお、平均粒子径は、#1:Honeywell社製 Microtrac UPAにて測定した粒径を意味する。ポリエチレンワックスの粒子径が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、すべり性、耐ブロッキング性が優れ、トラッピング性が優れる。
【0108】
ポリエチレンワックスの含有量は、白色インキ組成物中、0.1~1.5質量%であることが好ましい。ポリエチレンワックスの含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、光沢が優れる。
【0109】
硝化綿は、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られる。硝化綿は、窒素量10~13%、平均重合度35~90のものが好ましい。具体例としては、硝化綿は、SS1/2、SS1/4、SS1/8、TR1/16、NCRS-2、(KOREA CNC LTD社製)等である。
【0110】
硝化綿の含有量は、白色インキ組成物中、0.1~2.0質量%であることが好ましい。
【0111】
セルロースアセテートブチレート樹脂は、セルロースを酢酸および酪酸でトリエステル化した後、加水分解して得られる。セルロースアセテートブチレート樹脂は、一般的にはアセチル化が2~30質量%、ブチリル化が17~53質量%、水酸基が1~5%の樹脂が市販されている。
【0112】
セルロースアセテートブチレート樹脂の含有量は、白色インキ組成物中、0.1~3.0質量%であることが好ましい。
【0113】
脂肪酸アミドは、脂肪酸から酸基を除いた残基と、アミド基とを有するものであれば特に限定されない。脂肪酸アミドは、モノアミド、置換アミド、ビスアミド、メチロールアミド、およびエステルアミド等である。これらの中でも、脂肪酸アミドは、耐ブロッキング性が向上するため、モノアミド、置換アミド、およびビスアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0114】
脂肪酸アミドの含有量は、白色インキ組成物中、0.01~1質量%であることが好ましい。
【0115】
モノアミドは、下記一般式(1)で表される。
一般式(1) R1-CONH2
(式中、R1は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
【0116】
モノアミドの具体例は、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等である。
【0117】
置換アミドは、下記一般式(2)で表される。
一般式(2) R2-CONH-R3
(式中、R2およびR3は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良い。)
【0118】
置換アミドの具体例は、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等である。
【0119】
ビスアミドは、下記一般式(3)または一般式(4)で表される。
一般式(3) R4-CONH-R5-HNCO-R6
一般式(4) R7-NHCO-R8-CONH-R9
(式中、R4、R6、R7、およびR9は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良い。R5およびR8は炭素数1~10のアルキレン基またはアリーレン基を表し、同一でも異なっていても良い。)
【0120】
ビスアミドの具体例は、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等である。
【0121】
メチロールアミドは、下記一般式(5)で表される。
一般式(5) R10-CONHCH2OH
(式中、R10は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
【0122】
メチロールアミドの具体例は、メチロールパルミチン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチロールヒドロキシステアリン酸アミド、メチロールオレイン酸アミド、メチロールエルカ酸アミド等である。
【0123】
エステルアミドは、下記一般式(6)で表される。
一般式(6) R11-CONH-R12-OCO-R13
(式中、R11およびR13は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R12は炭素数1~10のアルキレン基またはアリーレン基を表す。)
【0124】
エステルアミドの具体例は、ステアリルアミドエチルステアレート、オレイルアミドエチルステアレート等が挙げられる。
【0125】
脂肪酸アミドの融点は、50℃~150℃であることが好ましい。
【0126】
脂肪酸アミドを構成する脂肪酸は、炭素数12~22の飽和脂肪酸および/または炭素数16~25の不飽和脂肪酸であることが好ましく、炭素数16~18の飽和脂肪酸および/または炭素数18~22の不飽和脂肪酸であることがより好ましい。飽和脂肪酸は、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸であることが好ましい。不飽和脂肪酸は、オレイン酸、エルカ酸であることが好ましい。
【0127】
・有機溶剤
白色インキ組成物は、有機溶剤を含有する。有機溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、トルエン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤等である。これらの中でも、有機溶剤は、環境面から、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤およびケトン系有機溶剤の混合溶剤であることが好ましく、より環境問題への対応を進めたエステル系有機溶剤、およびアルコール系有機溶剤の混合溶剤であることがより好ましい。
【0128】
白色インキ組成物は、水を含むことが好ましい。水を含むことにより、白色インキ組成物は、静電気による印刷不良を緩和することができ、版かぶりの防止やセル再現性が優れる。
【0129】
水の含有量は、白色インキ組成物中、10質量%以下であることが好ましく、0.1~5.0質量%であることがより好ましい。
【0130】
白色インキ組成物は、さらに顔料分散剤、帯電防止剤、可塑剤、消泡剤等の各種添加剤が添加されてもよい。なお、白色インキ組成物は、シランカップリング剤を含んでもよい。
【0131】
白色インキ組成物の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、白色インキ組成物は、白色顔料、バインダー樹脂、有機溶剤及び必要に応じて顔料分散剤等の混合物を、高速ミキサー、ボールミル、サンドミル、アトライター等を用いて練肉し、さらに所定の添加剤等の材料の残りを添加、混合することにより製造することができる。
【0132】
白色インキ層全体に説明に戻り、白色インキ層の膜厚は、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、白色インキ層の膜厚は、10μm以下であることが好ましく、9μm以下であることがより好ましい。白色インキ層の膜厚が上記範囲内であることにより、遮光印刷物は、遮蔽性が優れ、かつ白色度が高く、文字などの視認性も優れる。
【0133】
(グレーインキ層)
グレーインキ層は、白色インキ層上に形成された層であり、白色顔料と、黒色顔料と、下記条件2を満たすバインダー樹脂を含有する層である。グレーインキ層に含まれる白色顔料と黒色顔料との比率(質量%)は、白色顔料/黒色顔料=95/5~70/30である。
(条件2)
グレーインキ層に含まれるバインダー樹脂は、
末端にアミノ基を有するウレタン結合およびウレア結合を有するポリウレタン樹脂(A)と、
ウレタン結合を有し、ウレア結合を有さないポリウレタン樹脂(B)またはセルロースアセテートプロピオネート(C)のうち、少なくともいずれか一方と、を含み、
前記ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびセルロースアセテートプロピオネート(C)の含有割合は、固形分質量比で、(A)/((B)+(C))=95/5~50/50である。
【0134】
グレーインキ層は、グレーインキ組成物をグラビア印刷することにより形成し得る。
【0135】
例えば、グレーインキ組成物は、白色インキ組成物と、黒色インキ組成物との混合物である。白色インキ組成物は、白色インキ層で記載したものと同一のものが使用できる。
【0136】
黒色インキ組成物は、黒色顔料と、下記条件4を満たすバインダー樹脂と、有機溶剤とを含む。
(条件4)
黒色インキ組成物に含まれるバインダー樹脂は、
末端にアミノ基を有するウレタン結合およびウレア結合を有するポリウレタン樹脂(A)と、
ウレタン結合を有し、ウレア結合を有さないポリウレタン樹脂(B)またはセルロースアセテートプロピオネート(C)のうち、少なくともいずれか一方と、を含み、
ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびセルロースアセテートプロピオネート(C)の含有割合は、固形分質量比で、(A)/((B)+(C))=95/5~50/50である。
【0137】
・黒色顔料
黒色顔料は特に限定されない。一例を挙げると、黒色顔料は、グラビア印刷インキにおいて通常使用される黒色顔料であればよく、カーボンブラック、チタンブラック等である。これらの中でも、黒色顔料は、カーボンブラックであることが好ましい。
【0138】
カーボンブラックは特に限定されない。
【0139】
黒色顔料の含有量は、黒色インキ組成物中、7質量%以上であることが好ましく、9質量%以上であることがより好ましい。また、黒色顔料の含有量は、黒色インキ組成物中、17質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。カーボンブラックの含有量が上記範囲内であることにより、黒色インキ組成物は、優れた印刷適性と優れたラミネート適性とを有する。
【0140】
・バインダー樹脂
バインダー樹脂は、下記条件4を満たす。
(条件4)
黒色インキ組成物に含まれるバインダー樹脂は、
末端にアミノ基を有するウレタン結合およびウレア結合を有するポリウレタン樹脂(A)と、
ウレタン結合を有し、ウレア結合を有さないポリウレタン樹脂(B)またはセルロースアセテートプロピオネート(C)のうち、少なくともいずれか一方と、を含み、
ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびセルロースアセテートプロピオネート(C)の含有割合は、固形分質量比で、(A)/((B)+(C))=95/5~50/50である。
【0141】
ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびセルロースアセテートプロピオネート(C)は、白色インキ組成物に関連して上記したものと同様である。
【0142】
ポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびセルロースアセテートプロピオネート(C)の含有割合は、固形分質量比で、(A)/((B)+(C))=95/5~50/50であることが好ましく、95/5~70/30であることがより好ましい。含有割合が上記範囲内であることにより、黒色インキ組成物は、優れた印刷適性と密着性、ラミネート適性を有し、残留溶剤を低減できる。
【0143】
なお、黒色インキ組成物には、白色インキ組成物に関連して上記した成分(密着性向上剤、ブロッキング防止剤、有機溶剤、水およびその他の任意成分)が同様に含まれ得る。
【0144】
黒色インキ組成物の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、黒色インキ組成物は、黒色顔料、バインダー樹脂、有機溶剤及び必要に応じて顔料分散剤等の混合物を、高速ミキサー、ボールミル、サンドミル、アトライター等を用いて練肉し、さらに所定の添加剤等の材料の残りを添加、混合することにより得ることができる。
【0145】
グレーインキ組成物は、黒色インキ組成物と白色インキ組成物を攪拌混合することにより得ることができる。
【0146】
本実施形態において、グレーインキ組成物を得るための白色インキ組成物に使用する白色顔料と、黒色インキ組成物に使用する黒色顔料との比率(質量%)は、白色顔料/黒色顔料=95/5~70/30である。グレーインキ層は、グレーインキ組成物をグラビア印刷することにより形成し得ることができ、白色顔料と黒色顔料との比率(質量%)は、白色顔料/黒色顔料=95/5~70/30である。白色顔料と黒色顔料との比率が上記範囲内であることにより、遮光印刷物は、高い隠蔽性を保持しつつ、意匠性(視認性)を損なわない。
【0147】
グレーインキ層全体に説明に戻り、グレーインキ層の膜厚は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。また、グレーインキ層の膜厚は、5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。グレーインキ層の膜厚が上記範囲内であることにより、遮光印刷物は、高い隠蔽性を保持しつつ、意匠性(視認性)を損なわない。
【0148】
遮光印刷物全体の説明に戻り、本実施形態の遮光印刷物は、基材層の一方の面に、グイラビア印刷機で白色インキ組成物を1回又は複数回印刷し、次いで白色インキ層上に、グラビア印刷機によりグレーインキ組成物を1回又は複数回印刷することにより作製し得る。得られた遮光印刷物は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を使用しなくても、優れた遮蔽効果が得られる。また、遮光印刷物は、残留する有機溶剤および塩素の含有量が少ない。
【0149】
<積層体>
本発明の一実施形態の積層体は、上記した遮光印刷物のグレーインキ層上に、シーラント層またはシール層が積層された積層体である。
【0150】
シーラント層は、樹脂フィルム等を各種ラミネート加工法によってラミネート加工を施すことにより形成し得る。
【0151】
ラミネート加工法は、グレーインキ層の表面にアンカーコート剤を塗工した後、溶融ポリマーを積層させる押し出しラミネート法、グレーインキ層の表面に接着剤を塗工した後、フィルム状ポリマーを貼合させるドライラミネート法等である。押し出しラミネート法は、グレーインキ層の表面に、必要に応じて、チタン系、ウレタン系、イミン系、ポリブタジエン系等のアンカーコート剤を塗工した後、既知の押し出しラミネート機によって、溶融ポリマーを積層させる方法等である。
【0152】
シーラント層を構成する原料は、ドライラミネート法では、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルムで等、押し出しラミネート法では、低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、低密度ポリプロピレン等の溶融樹脂等である。
【0153】
シーラント層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、シーラント層の厚みは、5~100μmである。
【0154】
シール層は、ヒートシール剤やホットメルト剤を塗工することにより形成される。
【0155】
シール層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、シール層の厚みは、ホットメルト剤を塗工する場合は1~50μmであることが好ましく、ヒートシール剤を塗工する場合は0.01~30μmであることが好ましい。
【0156】
本実施形態の積層体は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を使用しなくても、優れた遮蔽効果が得られる。また、積層体は、残留する有機溶剤および塩素の含有量が少ない。
【実施例0157】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0158】
使用した原料および調製方法を以下に示す。
<ポリウレタン樹脂(A)>
【0159】
(ポリウレタン樹脂ワニスA-1)
攪拌機、温度計、ジムロートおよび窒素ガス導入管を備えた四口フラスコに平均分子量5000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール100質量部、イソホロンジイソシアネート8.9質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら95~105℃で5時間反応させた。冷却後酢酸プロピル196質量部を加えて均一に溶解させ、イソプロピルアルコール65部、イソホロンジアミン2.0部を加えて鎖伸長を行い、さらにモノエタノールアミン0.35部を加えたのちイソホロンジアミン0.51部を加えて反応停止させ、ポリウレタン樹脂ワニスA-1(固形分30%)を得た。
【0160】
(ポリウレタン樹脂ワニスA-2)
攪拌機、温度計、ジムロートおよび窒素ガス導入管を備えた四口フラスコに平均分子量3000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール100質量部、イソホロンジイソシアネート13質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら95~105℃で5時間反応させた。冷却後酢酸プロピル206質量部を加えて均一に溶解させ、イソプロピルアルコール69部、イソホロンジアミン3.2部を加えて鎖伸長を行い、さらにモノエタノールアミン0.35部を加えたのちイソホロンジアミン0.5部を加えて反応停止させ、ポリウレタン樹脂ワニスA-2(固形分30%)を得た。
【0161】
(ポリウレタン樹脂ワニスA-3)
攪拌機、温度計、ジムロートおよび窒素ガス導入管を備えた四口フラスコに平均分子量1000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオールの100質量部、イソホロンジイソシアネート42質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら95~105℃で5時間反応させる。冷却後酢酸プロピル274質量部を加えて均一に溶解させ、イソプロピルアルコール91.4部、イソホロンジアミン13.3部を加えて鎖伸長を行い、さらにモノエタノールアミン0.5部を加えたのちイソホロンジアミン0.74部を加えて反応停止させ、ポリウレタン樹脂ワニスA-3(固形分30%)を得た。
【0162】
(ポリウレタン樹脂ワニスA-4)
攪拌機、温度計、ジムロートおよび窒素ガス導入管を備えた四口フラスコにセバシン酸(ひまし油由来)/コハク酸(植物由来)=70/30(質量比)と1,3-プロパンジオール(植物由来)から得られる平均分子量1000の100質量部、イソホロンジイソシアネート42質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら95~105℃で5時間反応させる。冷却後酢酸プロピル274質量部を加えて均一に溶解させ、イソプロピルアルコール91.4部、イソホロンジアミン13.3部を加えて鎖伸長を行い、さらにモノエタノールアミン0.5部を加えたのちイソホロンジアミン0.74部を加えて反応停止させ、ポリウレタン樹脂ワニスA-4(固形分30%)を得た。
【0163】
(ポリウレタン樹脂ワニスA-5)
攪拌機、温度計、ジムロートおよび窒素ガス導入管を備えた四口フラスコに平均分子量500の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール100質量部、イソホロンジイソシアネート80質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら95~105℃で5時間反応させた。冷却後酢酸プロピル360質量部を加えて均一に溶解させ、イソプロピルアルコール120部、イソホロンジアミン24.5部を加えて鎖伸長を行い、さらにモノエタノールアミン0.69部を加えたのちイソホロンジアミン1.0部を加えて反応停止させ、ポリウレタン樹脂ワニスA-5(固形分30%)を得た。
【0164】
<ポリウレタン樹脂(B)>
(ポリウレタン樹脂ワニスB-1)
攪拌機、温度計、ジムロートおよび窒素ガス導入管を備えた四口フラスコに平均分子量1000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール60質量部、平均分子量400のポリプロピレングリコール13.5質量部、モノエチレングリコール20質量部、プロピレングリコール6.5質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら95~105℃で3時間反応させた。冷却後酢酸プロピル330質量部を加えて均一に溶解させ、イソプロピルアルコール110質量部を加え、ポリウレタン樹脂ワニスB-1(固形分30%)を得た。
【0165】
(ポリウレタン樹脂ワニスB-2)
攪拌機、温度計、ジムロートおよび窒素ガス導入管を備えた四口フラスコにセバシン酸(ひまし油由来)/コハク酸(植物由来)=70/30(質量比)と1,3-プロパンジオール(植物由来)から得られる平均分子量1000のポリエステルポリオール60質量部、平均分子量400のポリプロピレングリコール13.5質量部、モノエチレングリコール20質量部、プロピレングリコール6.5質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら95~105℃で3時間反応させた。冷却後酢酸プロピル330質量部を加えて均一に溶解させ、イソプロピルアルコール110質量部を加え、ポリウレタン樹脂ワニスB-2(固形分30%)を得た。
【0166】
(ポリウレタン樹脂ワニスB-3)
攪拌機、温度計、ジムロートおよび窒素ガス導入管を備えた四口フラスコに平均分子量1000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール75質量部、平均分子量400のポリプロピレングリコール10質量部、モノエチレングリコール5質量部、プロピレングリコール5質量部、イソホロンジイソシアネート42質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら95~105℃で3時間反応させる。冷却後酢酸プロピル248質量部を加えて均一に溶解させ、イソプロピルアルコール83質量部を加え、ポリウレタン樹脂ワニスB-3(固形分30%)を得た。
【0167】
ポリウレタン樹脂(A)ワニス、ポリウレタン樹脂(B)ワニスの性質を以下の表1に示す。
【0168】
【表1】
【0169】
(セルロースアセテートプロピオネート(C))
セルロースアセテートプロピオネート(C)(数平均分子量25000、propionyl43~47%、関東化学社製)20質量部を、イソプロピルアルコール20質量部、酢酸プロピル20質量部、酢酸エチル40質量部を混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分20%のセルロースアセテートプロピオネート(CAP)溶液を得た。
【0170】
(顔料)
酸化チタン(R-960、吸油量18.7ml/100g、デュポン社製)
カーボンブラック(酸性カーボンブラック、粒子径40nm、DBP吸油量47ml/100g、比表面積60m2/g、PH2.8)
(塩化ビニル・酢酸ビニル系樹脂)
塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体(ソルバインTA-3、日信化学工業社製)
(密着性向上剤)
・重合ロジン:酸価160mgKOH/g
・塩素化ポリプロピレン
塩素化度40%、数平均分子量100,000の塩素化ポリプロピレン(固形分50%)40質量部とメチルシクロヘキサン60質量部を混合攪拌し、固形分20%の塩素化ポリプロピレンを得た。
(ブロッキング防止剤)
・シリカ粒子:平均粒子径4.5μm
(ポリエチレンワックス)
ポリエチレンワックス:平均粒子径12μm
(脂肪酸アミド)
エチレンビスステアリン酸アミド
【0171】
(混合液)
質量比で、酢酸エチル/酢酸プロピル/IPA(イソプロピルアルコール)=50/25/25
【0172】
(基材)
OPP:コロナ放電処理した二軸延伸ポリプロピレンフィルム、P-2161、厚さ25μm、東洋紡社製
PET:片面にコロナ放電処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡社、E-5102、厚さ12μm
NY:ナイロンフィルム、N-1102、厚さ15μm、東洋紡社製
【0173】
<実施例の白色インキ組成物(W1~W9)の製造例>
以下の表2に記載の配合量となるように酸化チタン、ポリウレタン樹脂ワニス(A)をレッドデビル社製のペイントコンディショナーを用いて混練し、さらにポリウレタン樹脂ワニス(B)、セルロースアセテートプロピオネート(C)、密着性向上剤、ブロッキング防止剤、混合液、水を加えて、表2に示した実施例の白色インキ組成物を得た。
【0174】
<比較例の白色インキ組成物(W10)の製造方法>
表2に記載の配合量となるように酸化チタン、ポリウレタン樹脂ワニス(A)、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体をレッドデビル社製のペイントコンディショナーを用いて混練し、さらに、密着性向上剤、ブロッキング防止剤、混合液、水を加えて、表2に示した比較例の白色インキ組成物を得た。
【0175】
【表2】
【0176】
<実施例のグレーインキ組成物を作成するための黒色インキ組成物(B1~B9)の製造例>
表3に記載の配合量となるようにカーボンブラック、ポリウレタン樹脂ワニス(A)をレッドデビル社製のペイントコンディショナーを用いて混練し、さらにポリウレタン樹脂ワニス(B)、セルロースアセテートプロピオネート(C)、密着性向上剤、ブロッキング防止剤、混合液、水を加えて、表3に示した実施例のグレーインキ組成物を作成するための黒色インキ組成物を得た。
【0177】
<比較例のグレーインキ組成物を作成するための黒色インキ組成物(B10)の製造方法>
表3に記載の配合量となるようにカーボンブラック、ポリウレタン樹脂ワニス(A)、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体をレッドデビル社製のペイントコンディショナーを用いて混練し、さらに、密着性向上剤、ブロッキング防止剤、混合液、水を加えて、表3に示した比較例のグレーインキ組成物を作成するための黒色インキ組成物を得た。
【0178】
【表3】
【0179】
<実施例、比較例のグレーインキ組成物(G1~G13)の製造方法>
表4に記載の組み合わせと割合となるように、白色インキ組成物と黒色インキ組成物とを攪拌機で攪拌し、グレーインキ組成物を得た。
【0180】
【表4】
【0181】
<評価方法及び評価基準>
以下の評価方法により、残留溶剤(mg/m2)、遮蔽性、白色度、接着性、耐ブロッキング性を評価した。結果を表5に示す。なお、以下の評価において、基材として、OPP、PET、NYフィルムのいずれか1種を使用し、使用しなかった基材に関しても同等な結果が得られることを確認した。
(残留溶剤)
ダイレクト175LPI 28μmのグラビア印刷版を備えたグラビア印刷機を用いて、55℃(風量80%)の熱風で、上記で得られた白色インキ組成物をOPPフィルムに印刷速度100m/分で印刷し、再度、白色インキ層上に、上記と同様の白色インキ組成物を同様に印刷し、白色インキ層上に同様に上記で得られたグレーインキ組成物を印刷した。得られた遮光フィルムの塗工面積が0.2m2になるように裁断し、500mlのフラスコに入れて密閉後、80℃、10分間オーブン中で加熱して印刷物に残存している溶剤を気化させた。フラスコ内の気体を1ml採取し、ガスクロマトグラフィーで単位面積当たりの残留溶剤量(mg/m2)を測定し、下記の評価に基づいて残留溶剤を評価した。
(評価基準)
○:残留溶剤は、10mg/m2未満であった。
△:残留溶剤は、10mg/m2以上で15mg/m2未満であった。
×:残留溶剤は、15mg/m2以上であった。
【0182】
(遮蔽性)
ダイレクト175LPI 28μmのグラビア印刷版を備えたグラビア印刷機を用いて、55℃(風量80%)の熱風で、上記で得られた白色インキ組成物をPETに印刷速度100m/分で印刷し、再度、白色インキ層上に上記と同様の白色インキ組成物を同様に印刷し、白色インキ層上に同様に上記で得られたグレーインキ組成物を印刷した。その後、シーラントであるRXC-22(三井化学東セロ社製)を積層した。得られた各積層物を2cm×3cmの大きさに切り取り取った試料片を3個用意し、JIS K 7361-1・1997に基づきヘイズメーター(HAZE-GARD II、東洋精機製作所社製)を用いて全光線透過率を測定し、その平均値を評価した。
(評価基準)
○:全光線透過率は、3%以下であった。
△:全光線透過率は、3%以上5%未満であった。
×:全光線透過率は、5%以上であった。
【0183】
(白色度)
光線透過率についてはダイレクト175LPI 28μmのグラビア印刷版を備えたグラビア印刷機を用いて、55℃(風量80%)の熱風で、上記で得られた白色インキ組成物をPETに印刷速度100m/分で印刷し、再度、白色インキ層上に上記と同様の白色インキ組成物を同様に印刷し、白色インキ層上に同様に上記で得られたグレーインキ組成物を印刷した。その後、シーラントであるRXC-22(三井化学東セロ社製)を積層し各積層物の基材側に、黒色インキ組成物で日付を印字し、日付が見え具合を目視で判断した。
(評価基準)
○:日付は、はっきり見えた。
△:日付は、よくみれば見えた。
×:日付は、見えなかった。
【0184】
(接着性)
ダイレクト175LPI 28μmのグラビア印刷版を備えたグラビア印刷機を用いて、55℃(風量80%)の熱風で、上記で得られた白色インキ組成物をOPPに印刷速度100m/分で印刷し、再度、白色インキ層上に上記と同様の白色インキ組成物を同様に印刷し、白色インキ層上に同様に上記で得られたグレーインキ組成物を印刷した。各印刷物の印刷直後の印刷面にセロファンテープを貼り付けて、剥がしたときにインキ皮膜が被着体から剥がれる面積の比率から、接着性を評価した。
(評価基準)
○:インキ皮膜は、全く剥がれなかった。
△:インキ皮膜は、剥がれた面積が20%未満であった。
×:インキ皮膜は、剥がれた面積が20%以上であった。
【0185】
(耐ブロッキング性)
175LPI 28μmのグラビア印刷版を備えたグラビア印刷機を用いて、55℃(風量80%)の熱風で、上記で得られた白色インキ組成物をOPPに印刷速度100m/分で印刷し、再度、白色インキ層上に上記と同様の白色インキ組成物を同様に印刷し、白色インキ層上に同様に上記で得られたグレーインキ組成物を印刷した。各印刷物について1日経過した各印刷物の印刷面と、フィルム未処理面とを合わせ、15kg/cm2の荷重をかけて40℃で12時間放置した後、各フィルムを剥がした時の様子から耐ブロッキング性を評価した。
(評価基準)
○:フィルムを剥がす際に全く抵抗が無く、また、印刷面からインキが剥離しなかった。
△:フィルムを剥がす際に抵抗はあったが、印刷面からインキが剥離しなかった。
×:フィルムを剥がす際に抵抗があり、印刷面からインキが剥離した。
【0186】
【表5】
【0187】
表5に示されるように、本発明の遮光印刷物は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を使用しなくても、優れた遮蔽効果が得られ、残留する有機溶剤および塩素の含有量が少なかった。