(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175429
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20231205BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231205BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20231205BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20231205BHJP
C08L 55/02 20060101ALI20231205BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K3/013
C08K3/32
C08L25/04
C08L55/02
C08L53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087864
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】榊 陽一郎
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BG023
4J002BN152
4J002BP012
4J002BP033
4J002CG001
4J002DH046
4J002FD016
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】生物由来無機粉末を含有した消臭性能を有するポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)25~90重量%、スチレン系樹脂(B)5~45重量%、生物由来無機粉末(C)0.5~60重量%およびアクリル系樹脂(D)0~10重量%からなるポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)25~90重量%、スチレン系樹脂(B)5~45重量%、生物由来無機粉末(C)0.5~60重量%およびアクリル系樹脂(D)0~10重量%含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
スチレン系樹脂(B)が、ABS樹脂(b1)およびSEBS樹脂(b2)からなる群から選択される1種以上のスチレン系樹脂である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
SEBS樹脂(b2)が、無水マレイン酸で変性されたSEBS樹脂である請求項2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
スチレン系樹脂(B)として、ABS樹脂(b1)と無水マレイン酸で変性されたSEBS樹脂(b2)を併用し、無水マレイン酸で変性されたSEBS樹脂(b2)の添加量が1~35重量%である請求項3に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
生物由来無機粉末(C)が、卵殻粉末(c1)または貝殻粉末(c2)である請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
貝殻粉末(c2)が、牡蠣殻粉末である請求項5に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
アクリル系樹脂(D)が、アクリル系トリブロック共重合体である請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物を含む樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物由来無機粉末を含有した消臭性能を有するポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は優れた機械的強度、耐熱性、熱安定性等に優れた熱可塑性樹脂であることから、電気電子分野や自動車分野等広く工業的に利用されている。
【0003】
近年、資源循環や環境・廃棄物削減に対する意識の高まりから、生物由来の素材に注目が集まっている。特許文献1~4には、貝殻粉末や卵殻粉末を配合した樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-148758号公報
【特許文献2】特開2018-62579号公報
【特許文献3】WO2019/087363号
【特許文献4】特開2019-034994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単純にポリカーボネート樹脂と貝殻粉末や卵殻粉末等を混合しても十分な消臭性能を発揮しない。また 貝殻粉末や卵殻粉末等は、炭酸カルシウム、酸化カルシウムや水酸化カルシウムを主成分としていることから塩基性を示し、抗菌・消臭性能は塩基性が強いほど効果が高いことが知られているが、これら塩基性の化合物をポリカーボネート樹脂と混合した場合、ポリカーボネート樹脂を分解させる傾向にある。
【0006】
本発明は、生物由来無機粉末を含有した消臭性能を有するポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ポリカーボネート樹脂に、スチレン系樹脂および生物由来無機粉末、必要に応じてアクリル系樹脂を特定量配合することにより、消臭性能を有するポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明(1)は ポリカーボネート樹脂(A)25~90重量%、スチレン系樹脂(B)5~45重量%、生物由来無機粉末(C)0.5~60重量%およびアクリル系樹脂(D)0~10重量%含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
【0009】
本発明(2)は スチレン系樹脂(B)が、ABS樹脂(b1)およびSEBS樹脂(b2)からなる群から選択される1種以上のスチレン系樹脂である本発明(1)に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0010】
本発明(3)は SEBS樹脂(b2)が、無水マレイン酸で変性されたSEBS樹脂である本発明(2)に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0011】
本発明(4)は スチレン系樹脂(B)として、ABS樹脂(b1)と無水マレイン酸で変性されたSEBS樹脂(b2)を併用し、無水マレイン酸で変性されたSEBS樹脂(b2)の添加量が1~35重量%である本発明(3)に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0012】
本発明(5)は 生物由来無機粉末(C)が、卵殻粉末(c1)または貝殻粉末(c2)である本発明(1)~(4)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0013】
本発明(6)は 貝殻粉末(c2)が、牡蠣殻粉末である本発明(5)に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0014】
本発明(7)は アクリル系樹脂(D)が、アクリル系トリブロック共重合体である本発明(1)~(6)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0015】
本発明(8)は 本発明(1)~(7)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を含む樹脂成形品である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、スチレン系樹脂を含有することから、生物由来の無機粉末が有する消臭効果を充分に発現する。また、生物由来の素材を含有することから、化石燃料の使用量を削減でき、資源循環や環境・廃棄物削減に関する問題に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
【0018】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は ポリカーボネート樹脂(A)25~90重量%、スチレン系樹脂(B)5~45重量%、生物由来無機粉末(C)0.5~60重量%およびアクリル系樹脂(D)0~10重量%含有することを特徴とする。
【0019】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0020】
前記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられる。
【0021】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′-ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0022】
さらに、前記ジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプテン、2,4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプタン、1,3,5-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ベンゾール、1,1,1-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン及び2,2-ビス-〔4,4-(4,4′-ジヒドロキシジフェニル)-シクロヘキシル〕-プロパンなどが挙げられる。
【0023】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000~100000、より好ましくは16000~30000、さらに好ましくは19000~26000の範囲である。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0024】
ポリカーボネート樹脂(A)の配合量は、25~90重量%であるが、30~80重量%が好ましい。90重量%を越えると加工性に劣り、25重量%未満では耐熱性に劣ることがあるため好ましくない。
【0025】
スチレン系樹脂(B)とは、芳香族ビニル化合物の(共)重合体や、芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体およびゴム質重合体より選ばれる1種以上を芳香族ビニル化合物と共重合して得られる重合体をいう。具体的には、アクリロニトリルとブタジエンとスチレンとの共重合体であるABS樹脂、アクリロニトリルとスチレンとアクリレートとの共重合体であるASA樹脂、アクリロニトリルとスチレンとの共重合体であるAS樹脂、アクリロニトリルとエチレン-プロピレン-ジエンとスチレンとの共重合体であるAES樹脂、メチルメタクリレートとブタジエンとスチレンとの共重合体であるMBS樹脂、メチルメタクリレートとアクリロニトリルとブタジエンとスチレンとの共重合体であるMABS樹脂、およびスチレンとマレイン酸との共重合体であるSMA樹脂などのスチレン系重合体からなる樹脂、並びにスチレン系熱可塑性エラストマー、例えばスチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体(SEP樹脂)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS樹脂)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS樹脂)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS樹脂)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS樹脂)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS樹脂)、および無水マレイン酸基やアミノ基などの官能基を付与した変性スチレン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。中でも耐熱性、耐衝撃性および生物由来無機粉末との相容性の観点から、ABS樹脂(b1)およびSEBS樹脂(b2)が好ましく、無水マレイン酸変性SEBS樹脂がさらに好ましい。
【0026】
スチレン系樹脂(B)は、2種以上を組合せて使用することもできる。2種以上併用する場合、スチレン系樹脂(B)としてはABS樹脂またはSEBS樹脂を含むことが好ましく、ABS樹脂およびSEBS樹脂を含むことがより好ましい。
【0027】
ABS樹脂としては、市販品を用いても良く、市販品としては、日本エイアンドエル(株)製「クララスチックAT-05(商品名)」や「クララスチックAT-07(商品名)」、Trinseo製「MAGNUM A156(商品名)」などが挙げられる。
【0028】
また、SEBS樹脂としては、旭化成(株)製「タフテックH1041(商品名)」、「タフテックH1051(商品名)」や「タフテックH1043(商品名)」およびKRATON製「KRATON A1535 H Polymer(商品名)」や「KRATON A1536 H Polymer(商品名)」などが挙げられる。
【0029】
さらに、無水マレイン酸変性SEBS樹脂としては、旭化成(株)製「タフテックM1913(商品名)」や「タフテックM1943(商品名)」および、KRATON製「KRATON FG1901 G Polymer(商品名)」やKRATON製「KRATON FG1924 G Polymer(商品名)」などが挙げられる。
【0030】
また、ポリカーボネート樹脂(A)およびスチレン系樹脂(B)として、市販のポリカーボネートとスチレン系重合体とのブレンド品であるポリマーアロイも使用することができる。
【0031】
スチレン系樹脂(B)の配合量は、5~45重量%である。45重量%を越えると耐熱性に劣り、5重量%未満ではバイオマス由来無機粉末との相容性に劣ることがあるため好ましくない。より好ましくは10~40重量%、さらに好ましくは15~30重量%である。
【0032】
スチレン系樹脂(B)を2種以上併合し、たとえば無水マレイン酸変性SEBS樹脂を含む場合、無水マレイン酸変性SEBS樹脂の配合量は、1~35重量%が好ましい。1~35重量%の範囲であれば、耐熱性、耐衝撃性およびバイオマス由来無機粉末との相容性が更に優れる。より好ましくは、3~30重量%、さらに好ましくは、5~20重量%である。
【0033】
生物由来無機粉末(C)とは、生物由来の卵殻および貝殻などを粉砕した無機性の卵殻粉末(c1)または貝殻粉末(c2)などが挙げられる。卵殻の具体例としては白色レグホン、名古屋コーチンおよび烏骨鶏などの各種ニワトリの卵殻が挙げられる。貝殻の具体例としては、牡蠣、ホタテ、アサリおよびハマグリなどの二枚貝の貝殻、サザエおよびアワビなどの巻き貝の貝殻などが挙げられる。中でも、入手が容易な卵殻、ホタテ貝殻および牡蠣殻が好ましい。
【0034】
生物由来の卵殻および貝殻を粉砕して粉末を得る方法としては、特に制限されない。粉砕装置としては、例えば、ハンマーミル、ジェットミルおよびローラーミルなどが挙げられる。また、ジョークラッシャー、コーンクラッシャーおよびハンマークラッシャーなどの粗粉砕装置を用いて、前処理を行ってもよい。また、粉砕して得た粉末は、乾式分級または湿式分級により、粒度分布を調整してもよい。
【0035】
生物由来無機粉末(C)の配合量は、0.5~60重量%である。60重量%を越えると生産性が難しく、0.5重量%未満では消臭効果に劣ることがあるため好ましくない。より好ましくは、1~55重量%、さらに好ましくは、5~51重量%である。
【0036】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、スチレン系樹脂(B)と共に生物由来無機粉末(C)に加え、必要に応じて、アクリル系樹脂(D)が配合され得る。
【0037】
アクリル系樹脂(D)とは、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリロニトリルおよびその誘導体のモノマー単位から選ばれる少なくとも一種を繰り返し単位とする(共)重合体や、これらモノマーと共重合可能な他のビニル単量体およびゴム質重合体より選ばれる1種以上を共重合して得られる重合体をいう。具体的にはポリメタクリル酸メチル(PMMA)やアクリル系トリブロック共重合体などが挙げられる。中でも耐熱性、耐衝撃性および生物由来無機粉末との相容性の観点から、アクリル系トリブロック共重合体が好ましい。
【0038】
アクリル系トリブロック共重合体としては、市販品を用いても良く、市販品としては、(株)クラレ製「クラリティLA2140(商品名)」、「クラリティLA2250(商品名)」、「クラリティLA2270(商品名)」、「クラリティLA2330(商品名)」、「クラリティLA3320(商品名)」などが挙げられる。
【0039】
アクリル系樹脂(D)の配合量は、0~10重量%である。10重量%を越えると生物由来無機粉末との相容性に劣ることがあるため好ましくない。より好ましくは1~7重量%、さらに好ましくは2~5重量%である。
【0040】
更に、実施の形態に係るポリカーボネート樹脂組成物には、本発明における効果を損なわない範囲で、例えば、熱安定剤、他の酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、衝撃性改良剤、充填剤等の各種添加剤、ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマーなどが適宜配合されていてもよい。
【0041】
本発明の実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)および生物由来無機粉末(C)を混合し、必要に応じてアクリル系樹脂(D)、各種添加剤、及びポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等を混合する製造方法を例示することができる。本発明が目的とするポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる限り、その製造方法は特に制限されることはなく、各成分の種類及び量を適宜調整することができる。成分の混合方法も特に制限されることはなく、例えば、タンブラー、及びリボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法を例示できる。これらの方法により、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを容易に得ることができる。
【0042】
前記のごとく得られるポリカーボネート樹脂組成物のペレットの形状及び大きさには特に限定がなく、一般的な樹脂ペレットが有する形状及び大きさであればよい。例えば、ペレットの形状としては、楕円柱状、円柱状等が挙げられる。ペレットの大きさとしては、長さが2~8mm程度であることが好適であり、楕円柱状の場合、断面楕円の長径が2~8mm程度、短径が1~4mm程度であることが好適であり、円柱状の場合、断面円の直径が1~6mm程度であることが好適である。なお、得られたペレット1つずつがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体を形成する全てのペレットがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体の平均値がこのような大きさであってもよく、特に限定はない。
【0043】
本発明の樹脂成形品は、前記ポリカーボネート樹脂組成物を含むことを特徴とする。本発明の樹脂成形品は、前記ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得ることができる。
【0044】
本発明が目的とする成形品を得ることができる限り、成形品の製造方法は特に限定されることはなく、例えば、公知の射出成形法、圧縮成形法等が挙げられる。
【0045】
以上のように、本発明の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【実施例0046】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲においては、任意に変更乃至改変して実施することができる。なお、特に断りのない限り、実施例中の「%」及び「部」は、それぞれ重量基準に基づく「重量%」及び「重量部」を示す。
【0047】
使用した原料の詳細は以下のとおりである。
1.ポリカーボネート樹脂(A):
住化ポリカーボネート株式会社製 SDポリカ200-13(粘度平均分子量21000)
【0048】
2.スチレン系樹脂(B):
(b1)ABS樹脂
日本エイアンドエル株式会社製 クララスチックAT-05
(b2)無水マレイン酸変性SEBS樹脂
旭化成株式会社製 タフテックM1913
【0049】
3.生物由来無機粉末(C):
(c1)卵殻粉末
EPM社製 乾燥卵殻粉
(c2)牡蠣殻粉末
くれブランド社製 牡蠣殻ナノパウダー
【0050】
4.アクリル系樹脂(D):
クラレ社製 クラリティLA2250
【0051】
実施例1~12及び比較例1~5
各原料を、表1~2に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(芝浦機械株式会社製TEM-37SS)を用いて、溶融温度240℃にて溶融混練し、実施例1~12及び比較例1~5の各々の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0052】
<アンモニア消臭性能の評価>
得られたペレットを105℃で4時間以上乾燥した後、圧縮成形機(株式会社神藤金属工業所社製NF-50HH)を用い、温度240℃で100mm×100mm×厚み1mmの試験片を作製した。得られた試験片を用いて、ガス検知管法によるアンモニア消臭性能評価試験を行った。評価は、初期のアンモニア濃度と24時間後のアンモニア濃度を測定し、濃度の減少量から減少率を計算した。24時間後のアンモニア濃度減少率が5%以上を合格(○)とした。
【0053】
<相容性の評価>
得られたペレットを105℃で4時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック株式会社製ROBOSHOT S2000i100A)を用い、シリンダ温度250℃、金型温度50℃、ISO試験法に準じた厚み4mmの試験片を作製した。得られた試験片を用いてISO 527に準じて引張試験を実施した。試験片の破断部分において、表層が剥離しなかったものを合格(○)、表層が剥離したものを不合格(×)とした。
【0054】
表1および表2に、実施例および比較例の原料および配合割合、評価結果を併せて示す。
【0055】
【0056】
【0057】
表1および表2より、ポリカーボネート樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)および生物由来無機粉末(C)、必要に応じてアクリル系樹脂(D)を上述の範囲で配合してなるポリカーボネート樹脂組成物は、アンモニアに対する消臭効果および相容性に優れている。
【0058】
これに対して、比較例1のポリカーボネート樹脂組成物は、スチレン系樹脂(B)の量が少ないので、アンモニアに対する消臭効果に劣る。
【0059】
これに対して、比較例2のポリカーボネート樹脂組成物は、スチレン系樹脂(B)の量が多いので、アンモニアに対する消臭効果に劣る。
【0060】
これに対して、比較例3のポリカーボネート樹脂組成物は、無水マレイン酸変性SEBS樹脂(b2)の量が多いので、相容性に劣る。
【0061】
これに対して、比較例4のポリカーボネート樹脂組成物は、生物由来無機粉末(C)の量が少ないので、アンモニアに対する消臭効果に劣る。
【0062】
これに対して、比較例5のポリカーボネート樹脂組成物は、生物由来無機粉末(C)の量が多いので、サンプル作製不可であった。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、生物由来の素材を含有することから、化石燃料の使用量を削減でき、資源循環や環境・廃棄物削減に関する問題に対応することができる。さらに、消臭効果を有することから、工業的利用価値が極めて高い。